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地層処分文献調査 NUMOが適地公表
総合資源エネルギー調査会の地層処分技術ワーキングループ(委員長=德永朋祥・東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)の会合が2月13日に行われ、原子力発電環境整備機構(NUMO)が、北海道の寿都町・神恵内村における高レベル放射性廃棄物の処分地選定に向けた文献調査の報告書案について説明。両町村ともに、文献調査に続く概要調査の候補地となることが示された。〈配布資料は こちら〉文献調査は、最終処分法で定められる処分地選定に向けた3段階の調査(文献調査:2年程度、概要調査:4年程度、精密調査:14年程度)の最初のプロセスとして行うもので、地質図や鉱物資源図など、地域固有の文献・データをもとにした机上での調査となる。次段階の概要調査に進む場合には、北海道知事および両町村長の同意が必要だ。NUMOは、2020年10月に寿都町・神恵内村からの応募を受け、同年11月に文献調査を開始。2021年4月以降は、住民との「対話の場」を設け情報提供に努めてきた。一方で、両町村以外に文献調査を受入れる自治体が現れないことから、政府は2023年4月に最終処分基本方針の改定を閣議決定し、候補地を募るべく国の関与を強化している。今回のWG会合では、冒頭、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の久米孝氏が挨拶に立ち、両町村による地層処分事業への理解、文献調査の受入れに対し、あらためて謝意を表明。その上で、「全国初の調査であり、今後、別の地域で調査が行われる際の参考事例ともなりうる」として、今後のプロセスを丁寧に進めていく考えを述べた。両町村における文献調査の報告書案については、NUMO技術部長の兵藤英明氏が、同WGの上層となる特定放射性廃棄物小委員会が昨秋取りまとめた「文献調査段階の評価の考え方」に基づく評価および検討プロセスの全体像を説明。技術的観点から、地震・活断層・火山などの地質特性、鉱物・地熱資源の存否や、経済社会的観点からの各評価結果、概要調査を実施する場合の論点を整理。神恵内村に隣接する積丹町には、第四紀火山の積丹岳(約250~240万年前に活動)が存在し、その山頂15km圏内(境界は明確ではないが、処分地選定の適性を色分けした科学的特性マップで「好ましくない範囲」とされる)に村の陸域大部分が入ることから、「火道・火口等に関する情報を拡充し、活動中心を再度検討する必要がある」としている。これらの技術的検討結果を踏まえ、寿都町は町全域を、神恵内村は南端部(陸域3~4平方km)を概要調査地区の候補としてあげた。報告書案に対し、同WGでは、成案取りまとめに向けて、今後、数回にわたり会合を行い、技術的立場から引き続き検討を行っていく。なお、北海道の鈴木直道知事は、今回の文献調査報告案公表に関し、概要調査への移行には「反対の意見を述べる」との意向を表明した上で、「説明会を通じて、こうした北海道の状況を広く全国に知ってもらい、最終処分事業の理解促進が進むことを期待している」とのコメントを発表した。
- 15 Feb 2024
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使用済燃料対策推進協議会が2年8か月ぶりに開催
経済産業省の「使用済燃料対策推進協議会」が1月19日、2年8か月ぶりに開かれた。同協議会は、原子燃料サイクル事業の推進について、事業者と話し合う場として、2015年以来、行われている。今回は、齋藤健経産相他、資源エネルギー庁幹部、電力11社および日本原燃の各社社長が出席した。〈資料は こちら〉冒頭、齋藤経産相は、先般の能登半島地震に関し発言。被災地の発送電設備の復旧に向け、北陸電力を始めとする電力各社の尽力に謝意を表した上で、原子力発電所の安全確保について「高い緊張感をもち、安全最優先で対応に当たるとともに、地元や社会の皆様に不安を与えぬよう、速やかに信頼が得られるよう、丁寧に情報を発信して欲しい」と、要請した。これに対し、電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)はまず、電事連ホームページ上に特設サイト「能登半島地震による各原子力発電所への影響について」を開設し、一般からの疑問・不安に対応していることを説明。続けて、原子燃料サイクルの早期確立に向けた事業者の取組として、第一に、六ヶ所再処理工場およびMOX燃料加工工場の早期しゅん工の重要性をあらためて強調し、「日本原燃の活動を全面的に支援していく」とした。使用済燃料対策については、関西電力の森望社長が、昨秋に策定した「使用済燃料対策ロードマップ」に基づく具体的取組状況を説明。同社は、高浜3・4号機でMOX燃料を装荷しているが、使用済MOX燃料の再処理実証研究のため、2027~29年度にかけて、約200トンの使用済MOX燃料をフランス・オラノ社に搬出するとともに、その積み増しも検討していく計画だ。「使用済燃料対策ロードマップ」の根幹となる同社の「使用済燃料対策推進計画」で、福井県外における使用済燃料貯蔵施設の計画地点確定時期として記されていた「2023年末まで」の文言は、今回、削除の上、同計画を改訂。同施設の操業開始時期については、引き続き「2030年頃」を目指している。六ヶ所再処理工場のしゅん工・操業に向けた取組については、日本原燃の増田尚宏社長が説明。昨年12月に最終となる設計・工事計画認可の原子力規制委員会への申請を行い、現在、2024年度上期のできるだけ早期のしゅん工に向けて、「大詰めの段階にきている」とした。今後、本格化する使用前検査について、設備数が原子力発電所の6~7基分にも上ることから、体制・マネジメントの強化を図るなど、「一層の審査の効率化に努めていく」と強調。六ヶ所再処理工場は、2008年のアクティブ試験(原子力発電所でいう試運転)中断後、東日本大震災を挟み、15年が経過。同社では、既にアクティブ試験の経験がない社員が半数を超えている現状だ。しゅん工後の安全・安定運転に備え、フランスの再処理施設「ラ・アーグ工場」への派遣などを通じ、実機運転に係る技術維持に努めているとした。事業者からの説明を受け、齋藤経産相は、「エネルギー政策に責任を持つ政府として、事業者とともに前面に立って、関係者の理解に取り組んでいく」と強調。さらに、使用済燃料対策として、貯蔵容量の拡大については、「核燃料サイクルの柔軟性を高める上で極めて重要」と述べ、事業者全体による一層の連携強化を求めた。今回、電事連がとりまとめたところによると、国内の原子力発電所における使用済燃料貯蔵量は、管理容量22,960トンに対し、約5年後には19,680トン(前回協議会開催時の見通しより250トン増)に達する見通しだ。
- 19 Jan 2024
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原子力小委 サプライチェーンの維持・強化など議論
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)が12月19日、5か月ぶりに開催され、COP28での共同宣言など、原子力政策を巡る内外動向についてあらためて整理し議論した。〈資料は こちら〉冒頭、挨拶に立った資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の久米孝氏は、今夏の関西電力高浜1・2号機の運転再開に伴い、国内の再稼働炉が12基に上り、来年は東北電力女川2号機、中国電力島根2号機と、新たにBWRの再稼働も見込まれていると期待。国内の原子力発電を巡る状況につき「足下では再稼働が着実に進んでいる」との見方を示した。先のCOP28(UAE・ドバイ)で12月2日に発表された日本を含む20国超による「2050年までに2020年比で世界全体の原子力発電設備容量を3倍にする」旨の共同宣言にも言及し、日本の「第三国の革新炉導入支援や同志国と連携したサプライチェーンの強靭化などの取組を通じ、世界全体の原子力発電容量の増加に貢献する」姿勢を示した。また、サプライチェーンの維持・強化に関して、資源エネルギー庁原子力政策課は、去る3月の「原子力サプライチェーンプラットフォーム」(NSCP)の設立および日本原子力産業協会との共催によるシンポジウム開催についてあらためて紹介。9月のNSCPウェブサイト開設や今後のシンポジウム開催検討にも言及し、議論に先鞭をつけた。原子力エネルギー協議会(ATENA)からは、自主的な安全性向上に関する取組について報告があり、2018年設立以降の評価、今後の課題・方向性について説明。委員からは、原子力安全推進協会(JANSI)との役割分担の明確化に関し意見があった。専門委員として出席した原産協会の新井史朗理事長は、サプライチェーンの維持・強化に関連し、世界最大級の原子力展示会「WNE2023」(11月28~30日、フランス・パリ)へのブース出展について紹介。「WNE2023」には約780社の出展、24,000人の来場があったと述べ、「海外とのチャンネルをつくるよい機会」と強調した上で、今後、会員企業の海外市場展開を支援していきたいと述べた。ATENAによる自主的安全性向上の取組については、「リスク情報を活用した安全性の維持向上とプラントのパフォーマンス向上の両立を図って欲しい」と述べた。〈発言内容は こちら〉この他、遠藤典子委員(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)は、「新増設を進めないとサプライチェーンは続かない」と強調。ファイナンスや地域の産業力調整も含め、次世代炉の開発に向けた国の関与に期待した。また核不拡散の観点からプルサーマル計画の推進にも言及している。
- 19 Dec 2023
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齋藤経産相が就任 「待ったなしの課題が山積」と
就任会見を行う齋藤経産相西村康稔経済産業相が12月14日に退任したのに伴い、後任として衆議院議員の齋藤健氏が就任。同日晩、就任記者会見を行い、抱負を述べた。同氏は、安倍内閣で農林水産相などを歴任している。その中で、齋藤経産相はまず、経産省が取り組む政策分野に関し、「通商産業、エネルギー、そして災害対応と、大変幅広く、それぞれの分野で多くの課題に直面している」との問題意識を示した。さらに、東日本大震災から12年以上が経過した福島の復興、GXの具体化に向けた取組、大阪・関西万博の準備を重点課題にあげ、「待ったなしの課題が山積している」と強調。さらに、通商産業省(当時)に職員として勤務した経験を持つ同氏は、40年程前の就職当時を「あの頃、『通商産業政策を命がけでやる』という気持ちで門をくぐった」と、振り返りながら、「今、初心に立ち返りもう一度、しっかりやっていく」と、就任に際しての決意を述べた。エネルギー・環境政策については、「再稼働や核燃料サイクル含めた原子力政策、再生可能エネルギーの拡大、GXの実現など、一つ一つ確実に対応していく」と明言。福島の復興や福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策に関しては、「8月に開始したALPS処理水の海洋放出について、政府として全責任をもって取り組んでいく」としたほか、「帰還困難区域の避難指示解除に向けて、交流人口の拡大などを通じ、被災地の復興を着実に進めていく」と述べた。近々議論が本格化するとみられる次期エネルギー基本計画の策定については、自身の資源エネルギー庁課長職時代の勤務経験も活かし、「まずはしっかりと現状を把握し取り組んでいきたい」と強調した。なお、齋藤経産相は、翌15日の閣議後記者会見で、COP28(11月30日~12月13日、UAE・ドバイ)が採択したUAEコンセンサスに関連し、日本の化石燃料からの脱却に向けた取組について問われたのに対して、再生可能エネルギーや原子力など、脱炭素電源への転換を進め、2050年カーボンニュートラル実現を目指す姿勢から、「整合的なものである」と明言。また、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関しては、一連の核物質防護事案に鑑み、「予断を持って発言することは差し控えたい」とした上で、事業者に対する徹底した指導の他、「安全確保を大前提に、発電所の必要性や意義について新潟県など、地域の理解が得られるよう引き続き丁寧に説明していく」と述べた。
- 15 Dec 2023
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総合エネ調革新炉WGが1年ぶりに開催
総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所所長)が12月11日、およそ1年ぶりに会合を開催し、高速炉・高温ガス炉の実証炉、サプライチェーン・人材を中心とした次世代革新炉の今後の検討課題について整理、議論した。〈配布資料は こちら〉今会合では初めに、資源エネルギー庁が2023年2月の「GX実現に向けた基本方針」閣議決定以降の次世代革新炉の動向について、海外の動向も紹介しつつ、整理。同方針では、革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉について、2050年頃までを見据えた「目標・戦略」、「GX投資」、「規制・制度」、「国際戦略」に係る各行程が示され、「安全性の確保を大前提として、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む」とされている。また、高速炉、高温ガス炉の実証炉開発に向けては、「GX経済移行債」による投資促進策として、今後3か年で高速炉に460億円、高温ガス炉に431億円を措置し、研究開発を加速していくこととなったほか、いずれも今夏には中核企業として三菱重工業が選定されている。こうした状況変化をふまえ、高速炉・高温ガス炉を中心とした次世代革新炉の技術ロードマップのさらなる具現化に向け、本WGは再開された。今回、資源エネルギー庁は、高速炉、高温ガス炉の実証炉開発における技術的検討に向け、設計段階による実証炉の仕様決定規格・基準の整備燃料製造施設のあり方その他、各炉型に係る要素技術開発――といった論点を提示。また、国内サプライチェーンの維持・強化、人材に係る課題をあらためて示した。委員からは、国内サプライチェーンの現状について、田村多恵委員(みずほ銀行産業調査部次長)が、ウクライナ侵攻以降のエネルギー自給率の重要性を鑑み、非化石電源である原子力の重要性をふまえ、「GX経済移行債を活用しながら、原子力技術の維持・強化に資する取組への支援を行う」ことを評価。人材育成に関しては、高木直行委員(東京都市大学原子力安全工学科教授)が、「意欲的な学生は増えているが、まだまだ魅力的な分野というには程遠い」と述べ、次世代層への啓発の必要性を強調した。また、小伊藤優子委員(日本原子力研究開発機構高速炉・新型炉研究開発部門)からは、サプライチェーンや人材の課題だけでなく、国民理解の観点から、「革新炉による経済や他産業への波及効果に関する議論も併せて行っていくべき」との意見も出された。一方、遠藤典子委員(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)は、「新増設に関する政策的な議論の深化が見られない」ことに言及、革新軽水炉開発に向けた政策推進が急務との認識を示したほか、永井雄宇委員(電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)は、「次世代革新炉への投資活性化には、現在検討中の長期脱炭素電源オークションや非化石電源比率義務では不十分」としたうえで、費用回収リスクが発電事業者に偏らない仕組みの整備の必要性を主張した。また、産業界の立場から参加している大野薫専門委員(日本原子力産業協会)は、今後の次世代革新炉の展開の時間軸をふまえ、審査基準策定における規制当局間の国際連携、協力の必要性を提起した。今後、これら意見をふまえ、技術ロードマップの具体化や次世代革新炉の建設に向けた課題について検討していく。
- 12 Dec 2023
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2022年度エネルギー需給実績 最終消費が2年ぶり減少
資源エネルギー庁は11月29日、2022年度のエネルギー需給実績(速報)を発表した。それによると、最終エネルギー消費は11,897PJ((ペタ〈10の15乗=千兆〉ジュール)))で、対前年度比2.9%減。部門別にみると、企業・事業所他部門は物価上昇や海外景気悪化などで生産活動が鈍化したことにより減少、運輸部門はコロナ禍からの回復により2年連続で増加、家庭部門は微増となった。2022年度、一次エネルギー国内供給は18,283PJで同2.3%減。そのうち、化石燃料は同1.9%減となった一方、再生可能エネルギー(水力を含む)は10年連続で増加。原子力は同21.7%減で、非化石燃料の同4.4%減に大きく影響した。同年度内は、計10基の原子力発電プラントが稼働。新たな再稼働プラントはなかった。また、関西電力大飯3・4号機、九州電力玄海3・4号機のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」の設置期限が年度内に到来。それぞれ同施設整備のための停止期間があった。発電電力量は1兆82億kWhで同2.5%減。非化石発電率は27.3%で同0.1ポイント増となった。発電電力量の構成は、再生可能エネルギー(水力を含む)が21.7%で同1.4ポイント増、原子力が5.6%で同1.3ポイント減、火力(バイオマスを除く)が72.7%で同0.1ポイント減。また、エネルギー起源CO2排出量は9.6億トンで、同2.9%減、2013年度比22.5%減と、1990年度以降で最少となった。CO2排出量は、リーマンショック後の経済回復と東日本大震災後の原子力発電所停止などの影響で2013年度まで4年連続で増加したが、その後のエネルギー消費減、再生可能エネルギーの普及や原子力発電所の再稼働により減少傾向にあった。2021年度は対年度比2.0%増となったが、2022年度は企業・事業所他のエネルギー消費減が影響して2年ぶりに減少した。電力のCO2原単位は、0.46kg-CO2/kWhで、同1.8%減となった。
- 04 Dec 2023
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青森県・エネ庁 原子力施設共生の将来像を検討する会議が始動
「青森県・立地地域等と原子力施設共生の将来像に関する共創会議」(資源エネルギー庁)の初会合が11月28日、青森市内で開かれた。〈配布資料は こちら〉今夏、青森県の宮下宗一郎知事が核燃料サイクル政策について県と関係閣僚らが意見交換を行う「核燃料サイクル協議会」で政府に早期設置を要請していたもの。県内には、建設中も含め、東北電力および東京電力の東通原子力発電所(東通村)、電源開発大間原子力発電所(大間町)、日本原燃六ヶ所再処理工場(六ヶ所村)、リサイクル燃料貯蔵使用済燃料中間貯蔵施設(むつ市)が立地。同会議は、国・立地自治体、事業者らが一体となり地域と原子力施設が共生していく将来像についてともに考え、築き上げていく場として、資源エネルギー庁が立ち上げた。今後、実務レベルのワーキンググループを設置し、来夏を目途にその取組の工程表が策定される運び。立地地域と原子力施設の共創会議については、2021年に福井県を対象に立ち上げられており、昨夏、将来像の実現に向けた基本方針を取りまとめている。青森県の共創会議は、立地自治体として、青森県、むつ市、六ヶ所村、大間町、東通村の各首長、事業者として、日本原燃、東北電力、東京電力、電源開発、リサイクル燃料貯蔵、電気事業連合会の各代表者の他、県の商工団体代表者、有識者らがメンバー。議論に先立ち、資源エネルギー庁が、立地4市町村の産業構造について整理。2045年に向け「生産年齢人口が大きく減少し、経済の担い手が減少」との問題意識を示した上で、むつ市は商業施設が多く卸売業・小売業が、六ヶ所村は原子力施設関連の製造業が、大間町と東通村は建設業や漁業が、それぞれ主要産業となっているなどと、各市町村の特徴を分析。宮下知事は、むつ市長在任時代にリードしていた立地市町村懇談会における検討の経緯も振り返り、「未だに立地地域に光が当たっていない」と憂慮し、「地域がまとまり国と連携し県全体が自立的に発展していく仕組みづくり」が図られるよう、共創会議での有意義な議論を期待した。立地市町村を代表し、むつ市の山本知也市長は、「運転期間延長や廃炉が進む福井県とは異なり、事業との共生、リスクとの共生が実質的にこれから始まる地域」とした上で、4市町村の共通課題として、防災安全対策と地域振興策の充実・強化を提示。六ヶ所村の戸田衛村長は、むつ小川原開発から続く産業振興策の歴史を振り返り、「先人たちがどのような思いで原子燃料サイクル施設を了承したのか。現在の六ヶ所村は、当時先人たちが描いていた未来への『道半ば』」とあらためて問題提起。大間町の野﨑尚文町長、東通村の畑中稔朗村長は、いずれも将来の町村人口の減少を懸念し、それぞれ、「建設の早期再開・本格稼働は重要」と、原子力開発の地域振興における役割を、600年の歴史を有する「下北の能舞」他、地元文化財を通じた観光振興の可能性などを強調した。これを受け、事業者として、日本原燃の増田尚宏社長は、六ヶ所再処理工場の「2024年度上期のできるだけ早期」のしゅん工を目指しオールジャパン体制で審査・工事に取り組んでいるとした上で、「地域とともに発展していくための取組」として、地元企業の活用、人材育成、地域産業の活性化をあげ、「当社事業は地域の皆様の信頼と支えなくして成り立たない」と強調した。
- 29 Nov 2023
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秋の叙勲 元文科相の中山氏が旭日大綬章
旭日大綬章を受章する中山氏(2005年10月、原子力機構設立記念式典にて)政府は11月3日、秋の叙勲受章者を発表した。旭日大綬章を、元文部科学相の中山成彬氏、元石川県知事の谷本正憲氏、元経済産業相の鉢呂吉雄氏らが受章する。中山氏は、2004~05年に文科相を務め、科学技術行政では、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の法人統合による日本原子力研究開発機構設立、むつ市の中間貯蔵施設立地計画に係る地元対応、ITER(国際熱核融合実験炉)計画を国内施設での研究開発を通じ補完・支援する「幅広いアプローチ(BA)」活動の推進などで尽力。原子力機構法案の国会審議では、「エネルギー資源の乏しいわが国において、高速増殖炉を中核とする核燃料サイクル事業は重要であり、立地地域の協力を得ながら、円滑に進めていきたい」と、明言した。谷本氏は、石川県知事を1994~2022年、7期・28年(期数では京都府・蜷川虎三知事〈1950~78年在任〉と並び歴代都道府県知事で3位)にわたり務め、在任中は、中部電力他より申し入れられた珠洲原子力発電所建設計画の凍結や、2007年に発覚した北陸電力志賀原子力発電所1号機における臨界事故など、原子力利用に係る厳しい局面にも対応しながら、地域の産業振興に尽力。鉢呂氏は、2011年の東日本大震災発生後、経産相を務め、福島第一原子力発電所の事故収束で指揮を執ったほか、エネルギー政策の建て直しに先鞭をつけた。この他、旭日重光章を元鹿児島県知事の伊藤祐一郎氏、瑞宝重光章を元文部科学審議官の田中壯一郎氏、元文部科学事務次官の森口泰孝氏らが受章する。会談に臨む伊藤鹿児島県知事(左)と今井原産協会会長(いずれも肩書は2007年当時)伊藤氏は、2004~16年に鹿児島県知事を務め、九州電力川内原子力発電所に係る安全・防災対策で地元の立場から指導力を発揮。2007年には日本原子力産業協会の今井敬会長(当時)と、将来の原子力開発の展望を巡り会談を行ったことがある。森口氏は、旧科学技術庁で動力炉開発課長として、「もんじゅ」事故後の原子力行政建て直しで手腕を発揮。2001年の中央省庁再編後は、文科省の科学技術関連部局の審議官・局長などを歴任し、事務次官退任後は、東京理科大学副学長として高等教育の発展にも貢献した。
- 06 Nov 2023
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ALPS処理水海洋放出後初 IAEAレビュー終了・年内に報告書
福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出に関するIAEAレビューミッションが10月27日、4日間の日程を終了した。今回のミッションは、2022年2月以来、6回目で、2023年8月24日に海洋放出が開始されてからは初となる。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉日本を訪れたIAEAタスクフォースチームは、リディ・エヴラール事務次長、グスタボ・カルーソ氏(原子力安全・核セキュリティ局調整官)を含む、7名のIAEA職員の他、アルゼンチン、英国、カナダ、韓国、中国、フランス、ベトナム、マーシャル諸島、ロシアの9名の国際専門家で構成。日本滞在中、経済産業省、原子力規制委員会、外務省、東京電力との会合を通じ、海洋放出開始後のモニタリング状況、放出設備の状況などについて説明を受け、意見交換を行うとともに、25日には現地調査を実施。ALPS処理水の海洋放出の安全性について、IAEA国際安全基準に基づき技術的議論を行った。今回のミッションに関しては、年内に報告書をまとめる予定。レビュー開始に先立ち、23日にフォーリン・プレスセンターで外国人記者団らとの会見に臨んだエヴラール事務次長はまず、7月にIAEAが公表したALPS処理水の安全性レビューに係る包括報告書に言及。海洋放出計画に関し、「国際安全基準に合致しており、人および環境に対して無視できるほどの放射線影響だ」と、あらためて強調した上で、IAEAとして、海洋放出中・放出後を通じ、引き続き安全性評価にコミットしていく姿勢を示した。同氏は、ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長と上川陽子外相が9月の国連総会に伴う渡米中、署名したALPS処理水に係る日本・IAEA間の協力覚書についても紹介。IAEAによる確認・評価に関する枠組みを設定したもので、専門家の日本駐在、独立した裏付け(サンプリング・分析)、アウトリーチ・広報活動などを盛り込んでいる。会見には、ドイツ、フランス、スペイン、ロシア、シンガポール、韓国、中国の外国人記者が参加。エヴラール事務次長は、「独立性、客観性、透明性を確保することで、国内外の信頼醸成につながるものと考える」と、IAEA安全性レビューのスタンスを強調したALPS処理水の海洋放出は、10月23日に2回目が終了。11月2日に3回目の放出が始まる予定。
- 30 Oct 2023
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NUMO「対話の場」実施状況報告 エネ調廃棄物小委
高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定に向け文献調査が進む寿都町、神恵内村では、現在、地域住民の間で議論を深める「対話の場」が行われている。原子力発電環境整備機構(NUMO)および、寿都町、神恵内村で第三者の立場からそれぞれ「対話の場」ファシリテーターを務める竹田宜人氏(北海道大学大学院工学研究院客員教授)、大浦宏照氏(「NPO法人 市民と科学技術の仲介者たち」代表理事)は10月13日、総合資源エネルギー調査会の特定放射性廃棄物小委員会(旧放射性廃棄物WG、委員長=髙橋滋・法政大学法学部教授)で報告を行った。〈配布資料は こちら〉同小委ではまず、資源エネルギー庁が、両町村における文献調査の今後の流れについて説明。技術的観点も踏まえた「文献調査段階における評価の考え方」の取りまとめ状況とともに、NUMOが今後、作成する「文献調査報告書」に関し、縦覧期間・説明会の実施期間を現行の1か月から延長するよう関係規則を改正する方向性が示された。寿都町で開催された初の「対話の場」(2021年4月、インターネット中継)「対話の場」は、両町村とも2021年4月に始動し、2023年9月までに、寿都町、神恵内村でそれぞれ17、16回開催されている。NUMOでは、その総括に向けて、「地域の多様な声を集めて、地域対話の専門家・有識者の意見を聴き、客観性を確保しつつ、総括作業を進めていく」方針だ。寿都町で「対話の場」ファシリテーターを務める竹田氏は、これまでを振り返り、まず、「自由に話せる」、「記録する」、「まとめる」、「公開する」ことの重要性を強調。初回、自身が準備したテーブルワークでの意見交換に反論があったため、「意見・質問を付箋に書き模造紙に貼付けてもらい、回答を書いていくという作業を地道に続け、それを公開、発信した」と、工夫を凝らしたプロセスを紹介するともに、地域住民にとって「生活の一部」となるテーマであることから、人権への配慮にも言及した。また、地層処分に関する勉強会の企画・運営に長く取り組んできた神恵内村の大浦氏は、「予め答えが決まっている場には関わらない」、「答えを誘導するような行為には関わらない」と、10年前から堅持している中立性の方針をあらためて強調。同村における独自の取組として、「対話の場」の生の声を地域住民に発信すべく発行・全戸配布している広報誌「オスコイ通信」を紹介。同氏も意見・疑問を拾い上げてきた効果を振り返り、「『対話の場』のアウトプットは、これまで模造紙に貼られてきた800枚の付箋だ」と述べた。両ファシリテーターからの報告を受け、社会学の立場から寿楽浩太委員(東京電機大学工学部教授)は、先般、文献調査を受入れない考えを表明した対馬市の事例から、より早い段階からの住民意見反映の仕組みを検討する必要性を指摘。また、織朱實委員(上智大学大学院地球環境学研究科教授)は、英国における理解活動を視察した経験から、「食卓の話題として語れるような土壌作りが必要」と、地層処分を身近な問題として考える必要性を指摘したほか、交付金に関し「金額が足かせになってはいないか」とも述べ、自治体にとって10億円オーダーの高額が調査受入れの圧力となることを懸念した。
- 20 Oct 2023
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電事連 新テレビCM放映開始
電気事業連合会は、電気の安定的な供給確保の必要性とカーボンニュートラルの取組を紹介する2種類の新テレビCM、「持続可能な電気の供給」篇と「効率的な電気の利用」篇(各30秒)を、10月1日より全国で放映開始した。〈電事連発表資料は こちら〉新CMは、電事連が昨秋に制作したテレビCMに続き、若手女優の今田美桜さんを起用。今回は、「エネルギーから、明日をおもう。」というキャッチコピーのもと、明治時代と現代の教師に扮した2人の今田さんが、各篇CMで、「持続可能な電気の供給」、「効率的な電気の利用」をテーマに、教室の黒板やプロジェクターを使って、過去と現在の電気の価値や使われ方の違いを説明する。「持続可能な電気の供給」篇では、「今では、暮らしに欠かせない存在に」と、電気の重要性を強調。エネルギー資源の8割を海外に頼る日本の電力供給の現状から、安全確保を大前提とした原子力、火力、再生可能エネルギーをバランスよく活用する必要性を円グラフ「2030年エネルギーミックス」を通じて説く。2つのCMを通じ、「私たちの暮らしに欠かせない電気を、より身近に感じもらう」のがねらい。また、電事連では、新CMに加え、若い世代への関心喚起に向け、今田さんをモデルに日々の生活の視点から電力安定供給や地球温暖化対策の取組をPRするWEBコンテンツ「ふつうの日々」も9月29日より公開している。今夏は記録的な暑さとなり、特に東京エリアで電力需給ひっ迫が心配されたが、追加供給力対策や節電効果により乗り切ることができた。9月27日に行われた総合資源エネルギー調査会の電力・ガス基本政策分科会では、今冬の電力需給見通しについて、最も厳しい北海道、東北、東京の各エリアでも、予備率が1月は5.2%、2月は5.7%と、全国エリアで安定供給に必要な3%を確保できる見込みが示されている。
- 02 Oct 2023
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エネ庁長官「再び大きな危機・転換点」
資源エネルギー庁の村瀬佳史長官がこのほど、記者団のインタビューに応じ、今後の資源・エネルギー行政の推進に向け抱負を語った。この7月、折しもエネ庁設立から半世紀となる節目の年に就任した村瀬長官は、1973年の第一次石油危機を振り返りながら、「同じように、エネルギー安全保障という意味で、大きな危機・転換点を迎えている時期に着任した。正に歴史を感じており、非常に重いミッションを負っている」と強調。その上で、エネルギー政策における最大の課題として、「日本が再び50年来の大きな危機に瀕している中で、エネルギーの安定供給をいかに確保していくのか」と指摘。加えて、ロシアによるウクライナ侵攻に関連し、「従来の常識では考えられないような国際経済上のリスクが明らかとなっており、エネルギーを巡る国際的な構造は大転換を迎えている」と、あらためて危機感をあらわにした。さらに、同氏は、「カーボンニュートラルへの挑戦」を標榜。「各省庁が推進する取組を総動員し、産業・国民生活のあり方自体を変革しなければならない」とした上で、第一次石油危機時の省エネ対策を例に、「まったく新しい大きな挑戦を求められている。今後、大胆な政策を進めていく」と、意気込みを示した。丁度50年前、1973年秋に公表されたエネルギー白書では、石油の量的確保の不安定性と環境面の制約から、省エネ対策について述べており、「入手ないし使用可能なエネルギーをできる限り有効活用することによって、国民経済活動におけるエネルギー消費量の相対的引き下げを図ること」と、位置付けている。また、村瀬長官は、電力システム改革に関し、「競争するというのは事業者の体力を奪うことではなく、競争を通じて切磋琢磨されていく中で、世界と戦えるエネルギー産業が生まれるようにすること」と強調。官民連携による取組を通じ、「日本発の技術、強い企業」が台頭することに期待を寄せた。原子力政策に関しては、「安全確保を大前提とした原子力の活用」の必要性をあらためて強調。既設炉の最大限活用を始め、核燃料サイクルの推進、放射性廃棄物対策など、原子力特有の問題にも取り組むとともに、小型モジュール炉(SMR)の開発など、革新技術にもチャレンジしていくとした。次年度にも本格化する次期エネルギー基本計画の検討に際しては、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、「あらゆる手段・可能性を追求することは必須」などと、資源小国である日本におけるエネルギー需給の厳しさを再認識。水素・アンモニア、CCUS(CO2の回収・有効活用・貯留)の導入促進など、あらゆる新技術を手掛け、「柔軟性をもった検討をしていきたい」と述べた。内閣府政策統括官(経済財政運営)から資源・エネルギー行政を担う要職に移り、今後、多くの政策課題をリードする村瀬長官。座右の銘としては、夏目漱石の文学観とされる「則天去私」をあげ、「正しいことをしっかり行う」と、行政マンとして使命を果たす姿勢を強調。最近はテニスに興じ、「『国難を乗り切る』体力を養っている」と、顔をほころばせた。現在56歳。
- 20 Sep 2023
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水産業支援 基金総額1,000億円超へ
福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出を理由に、一部の国・地域が輸入規制を実施している。それに対抗するため、政府は9月5日、水産業への緊急支援に向け、2023年度予備費から207億円の充当を閣議決定した。既存の基金800億円と合わせ、総額1,007億円の予算措置が図られることとなる。ALPS処理水の海洋放出が8月24日に開始され、東京電力は同日、これに伴う外国政府からの禁輸指示に対する国内事業者への賠償について発表。政府としては、全国の水産業支援に万全を期すべく、既に800億円の基金で対応している。岸田文雄首相は8月31日、それらに加え、特定の国・地域に依存した輸出市場の分散、世界の和食ブームをとらえた生業・事業の発展を促すべく、関係閣僚に対し、水産業を守る支援策について、政策パッケージの取りまとめを指示した。これを受け、農林水産省、経済産業省、復興庁、外務省は9月4日、国内消費拡大・生産持続対策風評影響に対する内外での対応輸出先の転換対策国内加工体制の強化対策迅速かつ丁寧な賠償――を5本柱とする政策パッケージを発表。このほど閣議決定された207億円の予算措置は、この政策パッケージの一部で、輸出減が顕著な品目の一時買取り・保管や新規販路の開拓、加工・流通業者の機器導入、人材活用の支援などに充てられる。2022年の水産物輸出額は総額3,873億円。国・地域別には、中国(食用)が836億円、香港(同)が498億円で、この2か国・地域(同)で全体の3割を占めている。そのうち、中国で輸出額の大半を占めるホタテは、中国で殻むき加工後、米国や東南アジアに輸出されている量も多いことから、今回の予算措置を通じ、国内における殻むき機の導入支援や、その人員確保など、加工体制を整備し直接販売できるようにする。この他、ふるさと納税を活用した国内消費拡大運動の展開などにも充てられる見通し。松野博一官房長官は、9月5日の記者会見で、日本産食品について、「安全性は科学的に証明されている」と強調し、輸入規制を講じている国に対し早期撤廃を求めていく考えをあらためて述べた。
- 05 Sep 2023
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来年度政府概算要求が出揃う
2024年度の政府概算要求が8月31日までに出揃った。文部科学省では、原子力分野の取組として、対前年度比28%増の1,883億円を計上。2月に閣議決定された「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」などを踏まえ、「原子力分野における革新的な技術開発によるカーボンニュートラルへの貢献」として、同2.6倍となる276億円を要求した。高温工学試験研究炉「HTTR」を活用した高温ガス炉の安全性実証や水素製造に必要な技術開発、高速炉技術開発の基盤となる実験炉「常陽」運転再開に向けた取組を推進するとともに、革新炉開発に資するシミュレーションシステムの開発などを進める。また、核融合研究開発の推進では、同37.3%増の292億円を計上。ITER計画などの国際枠組みによる技術開発に加え、競争的資金「ムーンショット型研究開発制度」を活用し「ゲームチェンジャーとなりうる小型化・高度化等を始めとする独創的な振興技術の支援を強化する」ため、新規に20億円を要求。この他、3GeV高輝度放射光施設「Nano Terasu」の2024年度の運用開始に向け38億円、大型放射光施設「SPring-8」の高度化で3億円がそれぞれ新規に計上されている。経済産業省では、エネルギー対策特別会計で対前年度比11%増の7,820億円を計上。最重要課題とされる「福島復興のさらなる加速」では、廃炉・汚染水・処理水対策事業費176億円など、対前年度比21%増の910億円の要求額となっている。原子力規制委員会では、対前年度比25%増の730億円を計上。高経年化対策に係る審査・検査体制などの強化に向け、安全規制管理官(課長レベル)1名設置の機構要求の他、計66名の定員要求も盛り込まれている。
- 01 Sep 2023
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核燃料サイクル協議会 宮下青森県政で初開催
青森県・宮下知事©青森県核燃料サイクル政策について青森県と関係閣僚らが意見交換を行う「核燃料サイクル協議会」が8月29日、総理官邸でおよそ3年ぶりに開かれた。6月に就任した青森県・宮下宗一郎知事の要請により開催されたもの。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉同協議会は、1997年以来、核燃料サイクル政策の節目をとらえ、これまで12回行われてきた。8月25日には日本原燃の六ヶ所ウラン濃縮工場が約6年ぶりに生産運転を再開。28日にはリサイクル燃料貯蔵のむつ中間貯蔵施設に係る保安規定変更が原子力規制委員会により認可されるなど、核燃料サイクル事業の進展がみられた。両施設とも、新規制基準への適合性に関し、それぞれ2017年、2020年に審査に合格(設置変更許可)している。今回の協議会には、宮下知事の他、松野博一官房長官、高市早苗・内閣府科学技術担当相、西村明宏・同原子力防災担当相、永岡桂子文部科学相、西村康稔経済産業相、電気事業連合会の池辺和弘会長らが出席した。宮下知事は、関係閣僚および電事連に対し、原子力・核燃料サイクル政策の推進原子力施設の安全性確保高レベル放射性廃棄物等の最終処分と搬出期限の遵守地域振興と立地地域との共生原子力防災対策使用済燃料対策――について、確認・要請。これに対し、政府側は、核燃料サイクルについて、「エネルギー基本計画の通り、わが国の基本的方針として引き続き堅持していく」との方針のもと、六ヶ所再処理工場やMOX燃料加工工場のしゅん工目標達成と操業に向けた準備を官民一体で進めていくと回答。歴代の青森県知事と約束してきた「青森県を最終処分地にしない」ことも引き続き遵守するとした。また、使用済燃料対策については、むつ中間貯蔵施設の事業開始に向け「地域をあげて協力してもらいたい」と要請。地域振興と立地地域との共生に向けては、方策を検討する会議体を早期に設置するとした。資源エネルギー庁では、福井県と、立地地域の将来像について検討する共創会議を2021年に立ち上げており、これを参考に会議体の具体化を図っていくものとみられる。
- 29 Aug 2023
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「三陸・常磐もの」消費拡大へ 食べて応援
三陸・常磐地域(青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉)の水産業支援に向け産品の消費拡大を図る「三陸・常磐ものウィークス」が、7月15日~9月30日の日程で実施されている。昨年末、経済産業省が復興庁・農林水産省と協力し立ち上げた官民連携の枠組み「魅力発見!三陸・常磐ものネットワーク」(全国約1,000の企業・自治体・政府関係機関等が参加)によるもので、2023年2~3月に続く第2弾。同ネットワークでは、期間中、参加企業らの社内食堂のメニュー提供、弁当購入、キッチンカー巡回などを通じた地域産水産物「三陸・常磐もの」の積極的な消費を支援している。同ネットワークが参加企業らの会議・懇談会向けに紹介している「三陸・常磐もの」を使用した弁当は、一般の人も購入が可能。例えば、野村哲郎農水相が執務室で賞味した「福島産ホッキ貝入りほっき飯御膳」は、東京23区内を配達エリアとするデリバリー「すし割烹 赤酢と鮨」が販売しておりウェブサイト上でも購入できる。「やみつきカレーうどん(鹿島灘しらす入り)と岩手県産本わらび餅」などを提供するデリバリー「Haco chef」は、全国に個別配送が可能で、在宅でのオンライン親睦会にも利用できる。幹事が各地の参加者から好みの店・メニューを集約・一括注文し、指定時間に個別に配達する新しいタイプのデリバリーだ。都内の石油会社では、7月に渋谷区内のエスニック料理「TOMBOY」との協力でキッチンカーを出店(社内・近隣ビル向け)し、「常磐ものパッタイ」、「伊達鶏のグリーンカレー」などを提供。同社のキッチンカー出店は5、6月に続き3回目となる。「TOMBOY」では、港区赤坂、渋谷区道玄坂の各店舗で、9月30日まで「常磐ものグルメフェア」を開催している。「下町上野ふるさと盆踊り大会」で楽しめる福島の美味(東京電力発表資料より引用)東京下町の意気込みも注目される。葛飾区に店舗を置く「SOMY’S DELI」では、宮城県金華サバなどの「三陸・常磐もの」を使用した10種類の弁当を用意しており、いずれもコンパクトな容器に簡素な盛付けでアウトドア用にもうってつけ。東京23区内への配達の他、店舗での購入も可能。また、上野松坂屋では、8月22日まで、地下の食品売り場イベントスペースで「ふくしまフェア」を開催中。福島県産の野菜・果物、米、地酒の他、ご当地グルメ「なみえ焼そば」などを販売。これに合わせ、18~20日には、JR御徒町駅南口駅前広場で「下町上野ふるさと盆踊り大会」が予定されており、出来立ての福島の美味・お酒を楽しめる屋台群「『おいしいふくしま』てんこ盛り!」も出店される。
- 18 Aug 2023
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新増設に「待ったなし」 原子力小委
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)が7月26日、およそ7か月ぶりに行われた。〈配布資料は こちら〉前回の開催以降、原子力委員会「原子力利用に関する基本的考え方」の改定や、「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」における議論などを踏まえ、4月に「今後の原子力政策の方向性と行動指針の概要」が閣議決定。今回の会合では、資源エネルギー庁が「今後の原子力政策の方向性と行動指針の概要」の示す再稼働への総力結集既設炉の最大限活用次世代革新炉の開発・建設バックエンドプロセス加速化サプライチェーンの維持・強化国際的な共通課題の解決への貢献――の6つの柱に沿い、原子力政策に関する直近の動向、今後の取組について説明し、意見交換を行った。次世代革新炉の開発・建設に関しては、高速炉、高温ガス炉の実証炉開発を行う中核企業として、それぞれ7月12日、25日に、いずれも三菱重工業が選定され、今後、開発の司令塔となる組織の具体化に向け検討を進めていく。サプライチェーンの維持・強化に向けては、3月に「原子力サプライチェーンプラットフォーム」が設立されており、全国約400社の関連企業に対し、(1)戦略的な原子力人材の育成・確保、(2)部品・素材の供給途絶対策や事業承継、(3)海外プロジェクトへの参画支援――など、サプライチェーン全般に対する支援態勢を強化していく。これに関し、遠藤典子委員(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)は、韓国で躍進する重工業メーカーの視察経験を踏まえ、「日本も新増設を急がないとサプライチェーンは消滅してしまう」と危機感を示し、早急な建設具体化の必要性を強調した。また、今回の会合から、同小委員会の革新炉ワーキンググループで座長を務める黒﨑健委員(京都大学複合原子力科学研究所所長)が議論に参加。同氏は、次世代革新炉の開発・建設に向け、立地地域とのコミュニケーションの観点にも触れ、「どこに作るかをそろそろ考える時期」と訴えた。今回、資源エネルギー庁は、脱炭素電源への新規投資を対象とした入札制度「長期脱炭素電源オークション」(初回応札を2024年1月に実施予定)に、既設原子力発電所の安全対策投資を対象とする方向性を提示。これに関し、田村多恵委員(みずほ銀行産業調査部次長)は、事業環境整備の観点から、「原子力の安全対策投資に関しては、立地条件ごとにかなり個別性が高い」と述べ、工事費用など、様々な論点で丁寧な議論の必要性を指摘した。専門委員として出席した電気事業連合会の伊原一郎原子力開発対策委員長(中部電力原子力本部長)は、最近の取組として、既設炉の早期再稼働、原子燃料サイクルの推進、革新軽水炉開発に向けた規制委との対話などについて説明。同じく原産協会の新井史朗理事長は、(1)既設炉の早期再稼働と最大限活用、(2)電力市場自由化の中での事業環境整備、(3)サプライチェーンの維持・強化――について発言。原子力発電プラントの建設に係わる技術の国内集積から、「高品質の機器製造・工事保守の供給は必須であり、そのためには早期の再稼働や新規建設着手が必要」と、強調した。
- 26 Jul 2023
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高速炉実証炉の開発 三菱重工が中核企業に
資源エネルギー庁は7月12日、高速炉実証炉の開発に向け、三菱FBRシステムズ(國嶋茂社長、MFBR)が提案する「ナトリウム冷却タンク型高速炉」を概念設計対象に、将来的にその製造・建設を担う中核企業として三菱重工業を選定した。〈資源エネルギー庁WG発表資料は こちら〉2022年末、原子力関係閣僚会議は高速炉開発の戦略ロードマップを改訂。「常陽」、「もんじゅ」を経て、民間企業による研究開発が進展し、国際的にも導入が進んでいることから、ナトリウム冷却型高速炉を「今後開発を進めるに当たって最有望」と評価した。資源エネルギー庁では、2023年度から開始する「高速炉実証炉開発事業」(GX支援対策費)として、新規予算76億円を計上。2024年以降の概念設計を開始するに当たって最有望となるナトリウム冷却型高速炉について、その炉概念の仕様・中核企業選定のための公募を3月より行っていた。12日に行われた資源エネルギー庁の高速炉開発会議戦略ワーキンググループで、その選定結果を、技術評価委員会委員長の山口彰氏(原子力安全研究協会理事)が説明。選定されたMFBRが提案する「ナトリウム冷却タンク型高速炉」は、設計成立性と経済性について、設計の実現と開発目標達成に向けた工程を見込むことができる耐震性向上やシビアアクシデント対策、コスト低減、基準整備などの課題に対応できる十分な計画性を有する中型の出力(電気出力65万kW)とすることで、大型炉のスケールメリットか小型炉の初期投資リスク抑制を選択し実用化につなげることができる大型炉を選択する場合、他電源と競合できるレベルであることが提示されており、実用化された際の市場性を具体的に展望できる開発が可能となる――ことから、概念設計の対象として適当と評価。また、その製造・建設を担う中核企業として、三菱重工は、高速炉のエンジニアリング会社として、MFBRと協働し日本原子力研究開発機構が行う研究開発と十分に連携した概念設計が可能である国内サプライチェーンの現状の脆弱性を具体的に整理し把握しており、その維持・拡充を図る中心となり、わが国産業全体の実力涵養に貢献できる総合的エンジニアリング能力を蓄積、継承してきており、原子力事業における設計から建設・試運転までをグループ各社で分担するプロジェクト遂行力によって高速炉開発に責任をもって取り組むことができる――ことから、適当と評価した。今回、概念設計対象として選定された「ナトリウム冷却タンク型高速炉」は、同じナトリウム冷却型でもループ型の高速増殖原型炉「もんじゅ」とは異なる仕様だが、フランス、中国、インドなど、海外では多く採用されている。今後、資源エネルギー庁では、高速炉開発の司令塔となる組織のあり方について検討していく。三菱重工は、高速炉実証炉の設計・開発を担う中核企業に選定されたことを受け、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減、エネルギー資源の有効活用などの観点にも言及し、「これまで培ってきた技術と経験を活かし、MFBRとともに実証炉の概念設計ならびに設計に必要となる研究開発を開始し、高速炉の実用化に向けた取組を進めていく」とのコメントを発表した。三菱重工は、2006年に総合資源エネルギー調査会が取りまとめた「原子力立国計画」で示された高速増殖炉サイクル早期実用化の方針のもと、2007年に高速増殖炉開発のエンジニアリング中核企業に選定された経緯がある。また、日本原子力産業協会の新井史朗理事長は、「今後の高速炉開発に伴う関係産業の全体の実力涵養とともに、若者の原子力技術への興味を高め、人材育成にも寄与するものとして大いに期待したい」とする理事長メッセージを発表した。
- 13 Jul 2023
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基本政策分科会 半年ぶりに
総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)が6月28日に開かれ、「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」と関連法成立を受けた今後のエネルギー政策のあり方について意見交換を行った。同分科会の開催は半年ぶり。〈配布資料は こちら〉その中で、杉本達治委員(福井県知事)は、GX脱炭素電源法(脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律)の成立に関し「国の責務や基本的施策が示され、原子力政策の明確化に向けた大きな一歩となった」と評価。一方で、「将来の原子力の必要な規模とその確保に向けた道筋についてはまだ明らかになっていない」と述べ、エネルギー基本計画の見直しをできるだけ早期に検討するよう求めた。現行のエネルギー基本計画(第6次)は2021年10月に閣議決定。エネルギー政策基本法で少なくとも3年ごとの見直しが求められている。この他、原子力技術の重要性を訴え続けてきた隅修三委員(東京海上日動火災保険相談役)は、「地域間の電力価格格差の最大要因は原子力が稼働しているかだ」と指摘し、再稼働の促進に向け国が前面に立った取組を切望。遠藤典子委員(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)は、原子力発電所部材製造現場の内外視察経験にも言及し、日本の国際競争力停滞やサプライチェーン消滅の危惧から「新増設に向けた具体的制度設計が急務」と強調した。また、最近のエネルギー戦略の動きから、水素・アンモニアの導入促進、浮体式洋上風力発電による産業競争力強化への期待や、エネルギー政策と雇用対策・産業政策・資源循環政策との連携、脱炭素化における企業評価に関する意見、今後のエネルギー基本計画見直しに向けては、科学的レビューや国民対話を求める意見も出された。
- 30 Jun 2023
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GX推進が具体化へ エネ庁も組織見直し
政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」が6月27日に開かれ、同会議の議長を務める岸田文雄首相は、GXの推進について「わが国の成長戦略の中核であるのみならず、経済安全保障の上でも大きな役割を果たす」と、政策の重要課題に位置付けられることを改めて強調。西村康稔経済産業相を中心に、関係府省庁が連携し前例にとらわれない大胆な政策の具体化を図るよう閣僚らに指示した。同会議の開催は、昨年末の「GX実現に向けた基本方針」決定以来、半年ぶり。会議終了後、記者会見を行った西村経産相は、GX推進の体制整備を見据えた7月4日付の幹部人事、資源エネルギー庁の組織見直しを発表。人事では、多田明弘事務次官の後任に、「脱炭素社会成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)の総括責任者で経済産業政策の新機軸を牽引してきた飯田祐二経済産業政策局長兼首席エネルギー・環境・イノベーション政策統括官を充てる。また、平井裕秀経済産業審議官の後任に保坂伸資源エネルギー庁長官が、同長官の後任には村瀬佳史内閣府政策統括官(経済財政運営)がそれぞれ就く。一連の幹部人事に関し、西村経産相は、「通商政策、GX推進法の詳細な制度設計、半導体・蓄電池戦略といった様々な重要施策の継続性に万全を期していく」などと述べた。資源エネルギー庁の組織見直しについては、省エネルギー・新エネルギー部に水素およびアンモニアに特化して需要と供給の両面での政策を担う「水素・アンモニア課」を、資源・燃料部にGXを見据えた資源外交戦略を担う「国際資源戦略室」をそれぞれ新設。また、資源・燃料部では、石油・天然ガス課を「資源開発課」に、石油精製備蓄課と石油流通課を統合し「燃料供給基盤整備課」に、鉱物資源課と石炭課を統合し「鉱物資源課」にそれぞれ改組。課室名から石油、天然ガス、石炭の名が消え、カーボンニュートラル時代を見据えた大幅な体制見直しとなる。西村経産相は、「時代の大きな変化を感じている。新しい時代に向けてエネルギー政策をしっかり推進していきたい」と、決意を新たにした。
- 27 Jun 2023
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