キーワード:METI
-
総合エネ調革新炉WG 人材育成を中心に議論
総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)は11月2日の会合で、次世代革新炉の建設に向けた人材育成や国民理解の促進を中心に意見交換を行った。〈配布資料は こちら〉同WGは、前回10月24日の会合で、「革新炉開発に関する検討の深掘り」として、今後の論点を、事業環境整備開発体制・司令塔組織サプライチェーン・人材の維持・強化研究基盤整備――に整理。その中で、原子力サプライヤの実態に関し、資源エネルギー庁は今回の会合で、「中核技術を持つ一方で、政府支援が行き届かないまま、原子力事業から撤退する例がみられた過去の反省を踏まえ、重要企業を把握し必要な支援策を講じる体制構築が必要」との問題意識から、新たな原子力サプライチェーン新体制を提案。地域の関係機関と連携し日頃から中小企業などへの支援を行う地方経済産業局のネットワークを活用した「原子力サプライチェーンプラットフォーム」を立上げ、支援策の検討・拡充が継続する仕組みを構築していくもの。資源エネルギー庁の説明によると、原子力を支えるサプライヤは全国に約400社点在しており、原子力事業以外を柱とする企業が多くを占めている。人材育成については、「原子力人材育成ネットワーク」((産業界、学術界、地方自治体、行政庁からなる国内外の人材育成のプラットフォーム))の戦略WG主査を務める吉村真人氏(日立製作所)が産業界における現状と課題について発言。同ネットワークの戦略ロードマップ改定において議論している10年後を見据えた人材構成上の課題の一つとして、建設や運転期間延長に係る人材の維持・育成を指摘。国内における建設空白期間の長期化が及ぼす影響に関し、設計、製造、調達、建設、試験・検査の各分野で「新規建設を通じてのみ習得可能な技能があるのだが、教える側も既に建設の経験がない世代になっている」などと懸念を示した。「ANEC」のカリキュラム受講学生では就職先にとして原子力分野への関心の高まりがみられている(2022年度北大拠点でのアンケート結果、文科省発表資料より引用)さらに、文部科学省研究開発局原子力課長の新井知彦氏は人材育成の取組として、2020年度から進めている複数の大学・研究機関、企業などが連携したコンソーシアムを形成し教育資源・機能の結集・相互補完を図る「ANEC」(Advanced Nuclear Education Consorsium for the Future Society)を紹介。「ANEC」をリードする北海道大学拠点のオープンカリキュラム・実習の受講学生からは「就職先として原子力・放射線分野に関心を持った」という声も多く聞かれているという。これに対し、高等教育に携わる立場から高木直行委員(東京都市大学大学院総合理工学研究科教授)は、原子力関係学科への進学を巡る学生の志望意識低下や親の反対など、厳しい現状を述べ、「もう大学だけの努力ではどうにもならない。これでは原子力産業の低下は不可避」と憂慮。その一方で、全学対象の原子力関連講座に多くの学生が集まっている近況を、最近の革新炉開発関連の報道などによる効果ととらえ、国においても「予見性あるビジョン」が示されることを求めた。人材育成・教育に関しては、初等中等教育・高等教育との相互連携やリテラシー向上を求める意見、サプライチェーンの維持・強化に関しては、海外プロジェクトへの支援の有効性に係る指摘もあった。また、国民理解の関連では、教育との結び付きとともに、「情報を発信して終わるのではなく、体験学習など、得た情報をもとに思考を深めてもらう機会が重要となってくる」など、今後の新規建設を見据えた意見も出された。
- 02 Nov 2022
- NEWS
-
太田経産副大臣が訪米 IAEA閣僚会議や日米原子力産業対話に出席
太田房江経済産業副大臣は10月25~28日、米国・ワシントンD.C.に出張し、IAEA主催の「21世紀の原子力に関する国際閣僚会議」、および「日米原子力産業対話」に出席した。〈経産省発表資料は こちら〉「21世紀の原子力に関する国際閣僚会議」(10月26~28日)は、IAEAが持続可能な発展への原子力エネルギーの貢献、原子力エネルギーの今後の課題などについてハイレベルで議論を行うため、通例4年ごとに開催している閣僚級会合で、今回は5回目となる。併せて、米国原子力エネルギー協会(NEI)が主催する日米の原子力産業界が集うサイドイベントも開催された。太田副大臣は、26日の各国演説で、岸田首相のリーダーシップのもと、グリーンエネルギー中心の経済、社会、産業構造の実現に取り組んでおり、現在、既存原子力発電所の運転期間延長や次世代革新炉の開発・建設の検討を進めるとともに、IAEAの協力を得ながら福島第一原子力発電所の廃炉と処理水の海洋放出に向けた準備を進めていることなど、日本の現状について報告。加えて、ウクライナの原子力施設の安全確保や戦災からの復興に関し、IAEAの取組に敬意を示すとともに、日本としても全力で支援すると表明。さらに、世界各国における小型モジュール炉(SMR)を含む原子力発電の導入を支援していく考えにも言及した。また、26日に行われた「日米原子力産業対話」では、日本原子力産業協会とNEIとの間で合意された「未来の原子力に向けた日米産業共同声明」の署名に同席〈既報〉。太田副大臣は、原子力を活用していく上で日米を始めとする価値観を共有する国々が連携し信頼性の高いサプライチェーンを維持・強化していく重要性などについて、日米双方の産業界関係者に対し訴えかけた。なお、新興国における原子力導入支援に関し、米国国務省(DOS)は26日、同閣僚会議の場で日米両国がガーナへのSMR導入に向けパートナーシップを結んだと発表している。
- 01 Nov 2022
- NEWS
-
総合エネ調革新炉WG 検討の深掘りに向け論点整理
総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合科学研究所教授)の会合が10月24日に行われ、今後の検討の深掘りに向け論点を整理した。〈配布資料は こちら〉同WG は、「原子力発電の新たな社会的価値を再定義し、わが国の炉型開発に係る道筋を示す」ことを目的として4月に検討を開始。8月には、その中間論点整理がWG上層となる原子力小委員会において、「カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の実現に向けた革新炉開発の技術ロードマップ」(骨子案)として取りまとめられたのに続き、政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で西村康稔経済産業相が報告した「日本のエネルギーの安定供給の再構築」の中で、次世代革新炉の開発・建設が検討課題の一つとして盛り込まれた。さらに、文部科学省においても、次世代革新炉の開発に向けた基盤インフラの整備に関する検討会が10月17日に始動している。24日のWG会合ではまず、三菱重工業が9月に発表した革新軽水炉「SRZ-1200」(電気出力120万kW級)の開発を始めとする同社のカーボンニュートラルに向けた原子力事業の取組について説明。原子力の意義を「エネルギーの安定供給とともに、『2050年カーボンニュートラル』の実現に向けて活用は必至」と強調した上で、短期・中期・長期の視点からの開発ロードマップを披露した。革新軽水炉「SRZ-1200」については、開発コンセプトとして、超安全・安心地球に優しく大規模な電気を安定供給――を掲げ、「現行の規制基準に適合すべく設計しており、既に実用化が見通せる段階。2030年代半ばの実用化を目指す」と表明。委員から工期に関する質問があったのに対し、「先進工法の採用により、5年位での建設を目指す」などと説明した。また、同日の会合では、資源エネルギー庁が今後の議論の深掘りに向けて、事業環境整備開発体制・司令塔組織サプライチェーン・人材の維持・強化研究基盤整備――を論点として提示。事業環境整備については、欧米諸国の財政支援に係る事例とともに、総合エネ調下、電力需給に関する作業部会で検討中の容量市場導入や長期脱炭素電源オークション(いずれも投資回収の予見性を高める制度設計)などを、「原子力発電だけに特化するものではない」参考案件として紹介した。さらに、過去の開発における反省として、「ふげん」や「もんじゅ」に携わった関係者からのヒアリングを踏まえたプロジェクトマネジメント、予算管理、地元との信頼関係に係る課題を列挙。その中で、「まず国でしっかりとした組織・体制をつくるべき」との意見に関連し、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)における体制を、「現場に配慮しながら、一連の関連分野を統括する開発体制が全体としてシステマティックにできている」良好事例として示唆した。その上で、革新炉開発体制を検討する要件として、強力なリーダーシップによって、開発、設計から建設、安定的な運転に至るまでの一連の工程を指揮・命令できるマネジメント体制長期間にわたる予算措置とそれを適切に管理・配分を行う機能立地地域との適切なコミュニケーションの下での協力体制――を示し、さらに議論を深めていくこととなった。
- 25 Oct 2022
- NEWS
-
総合エネ調原子力小委、安全性向上の取組に関しヒア
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)は10月13日、安全性向上の取組を中心に松久保肇委員(原子力資料情報室事務局長)他よりヒアリングを行った。同委員会は、前回9月22日の会合で示した中間論点整理の中で、「『安全性が最優先』との共通原則の再確認」を第一に掲げている。〈配布資料は こちら〉松久保委員は、現在、同委員会下のワーキンググループで検討中の革新炉が備える受動的安全機能(炉心冷却にポンプを使わないなど、動的機器によらず自然法則を安全機能に採用する概念)の有効性に関し、福島第一原子力発電所事故発生時の1号機非常用復水器(IC)による冷却機能が喪失したことを例に、見直す必要性を示唆。既設原子力発電所の運転期間延長に関しては、「安全最優先の原則に照らして古い炉を使う妥当性を考えるべき」と指摘するとともに、設備利用率向上の面からも近年の原子力発電所の稼働状況低迷から高経年プラントの活用に疑問を呈した。また、専門委員の電気事業連合会・松村孝夫原子力開発対策委員長(関西電力副社長)は、新たな安全マネジメント改革の取組として、電力各社のCNO(原子力部門の責任者)らで構成する「安全マネジメント改革タスクチーム」の設置について紹介。事業者ごとに組織文化や組織構成が異なる状況に鑑み、業界横断的な情報共有・横展開を強化すべく、「各社のCNO同士で議論しトップが関与することで迅速な改善につなげていく」という設置目的を強調した。さらに、原子力安全推進協会(JANSI)の山崎広美理事長は、原子力産業界の自主規制組織として取り組むピアレビューなどの活動状況を紹介。同氏は、「今、原子力発電に対する大きな期待が寄せられているが、安全性・信頼性のあくなき追求なくしてこの期待に応えることはできない」との認識のもと、引き続き福島第一原子力発電所事故の教訓を忘れず、自主的・継続的な安全性向上に向けた取組が緩まぬよう事業者を厳しく牽引していく姿勢を示した。電事連やJANSIによる取組に関し、専門委員として出席した原産協会の新井史朗理事長は、「自主的・継続的な安全性向上に向け、事業者同士の連携、独立した外部組織との連携は大変有効」と発言。他の委員からは、運転期間延長に伴う経年劣化評価におけるIoT(Intrnet of Things、モノのインターネット)の活用、JANSIの活動に係わる情報発信・指標の設定などに関し意見が出された。松久保委員が昨今のウクライナ情勢にも鑑み損害賠償の法体系にも言及しながら「原子力関連施設への攻撃は想定外とはいえない時代にある」と危惧したのに対し、委員からは、事業者と国家防衛組織との連携体制に係る情報公開の要望、次期G7議長国として日本が重要インフラに対する攻撃阻止に関し対応をリードすべきとの意見があった。
- 13 Oct 2022
- NEWS
-
三菱重工、電力と共同で革新軽水炉「SRZ-1200」開発へ
三菱重工業は9月29日、PWRを運転する4つの電力会社(北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力)と共同で、将来にわたる日本のエネルギー安定供給に向けて、従来のPWRよりもさらなる安全性向上が図られた革新軽水炉「SRZ-1200」のプラントのコンセプトを確立し、今後、基本設計を進めていくと発表した。〈三菱重工発表資料は こちら〉同社の発表によると、「SRZ-1200」は120万kW級の発電炉で、安全系設備の強化、地震・津波などの自然災害への耐性、テロ・不測事態に対するセキュリティ強化といった安全性・信頼性向上について新規制基準を踏まえ開発を進めている。新たな安全メカニズムとしては、プラントの状態に応じて自動作動する設備(パッシブ設備)となる三菱重工独自の高性能蓄圧タンク(窒素ガス加圧による自動炉心注水)やコアキャッチャー(溶融デブリを格納容器内に確実に保持・冷却する設備)を設置するほか、万一重大事故が発生しても放出される放射能量を低減し影響を発電所敷地内に留めるためのシステム設計にも取り組む。さらに、再生可能エネルギーなど、他電源の電力量変化に柔軟に対応可能な出力調整運転や水素製造も視野に入れていく。開発を進める革新軽水炉の名称“SRZ”には、S:Supreme Safety(超安全)、Sustainability(持続可能性)R:Resilient(しなやかで強靭な)Z:Zero Carbon(CO2排出ゼロ)の意味が込められている。三菱重工が標榜する原子力技術開発の展望(三菱重工発表資料より引用)三菱重工では、これまでも原子力技術の継続的な利用に向け、既設軽水炉の再稼働推進とともに、次世代軽水炉、将来炉(小型炉、高温ガス炉、高速炉、マイクロ炉)、核融合炉の開発・実用化を目指し、短・中・長期にわたる開発計画を策定し取り組んできた。総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会では8月に、「カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の実現に向けた革新炉開発のロードマップ」(骨子案)を取りまとめ、2050年以降を見据えた革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉の各炉型に係る研究開発、建設・運転に向けた技術ロードマップとともに、原子力サプライチェーンによる市場獲得戦略を示している。原産協会の新井史朗理事長は、30日に行われた月例の記者会見で、次世代炉の開発に関し、中長期も見据え「原子力を最大限活用していく」ことへの意義を強調した。
- 30 Sep 2022
- NEWS
-
総合エネ調基本政策分科会、エネ供給の再構築に向け議論開始
総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)が9月28日に開かれ、エネルギー供給体制の見直しに向け、議論を開始した。これは、岸田文雄首相の指示を受け8月の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で西村康稔経済産業相が報告した「日本のエネルギーの安定供給の再構築」を受けたもの。〈配布資料は こちら〉冒頭、挨拶に立った西村経産相はまず、「世界のエネルギー情勢はロシアのウクライナ侵略によって一変した」などと、昨今のエネルギーを取り巻く地政学的状況の変化を強調。さらに、「今後、エネルギーの争奪戦が激化する」との危機感に立ち、「エネルギーの安定供給の再構築を行うことが経産省の最重要ミッション」との強い使命感を認識した。その上で、「日本のエネルギーの安定供給の再構築」で示した今冬の厳しい電力需給見通しを見据えた「足元の対応」や、原子力の安全第一での運転期間延長や次世代革新炉の開発・建設などを課題としてあげた「中長期の対応」について、年末までの具体的結論に向け検討を加速化していくことを改めて明言。委員らに対し忌憚のない意見を求めた。2030年度エネルギーミックスの進捗状況(資源エネルギー庁発表資料より引用)基本政策分科会では、昨夏にかけて「第6次エネルギー基本計画」(2021年10月閣議決定)の原案取りまとめに向けて議論。今般、資源エネルギー庁は、新たな議論の皮切りに際し、昨今のエネルギーを巡る状況を説明。その中で、立地地域のステークホルダーなどから現行のエネルギー基本計画の早期見直しを求める意見も出ていることを述べた上で、エネルギー政策の基本的視点となる「S+3E」(安全性、安定供給、経済効率性、環境への適合)を踏まえた「2030年度エネルギーミックス」の進捗状況を図示した。また、日本エネルギー経済研究所とデロイトトーマツコンサルティングがそれぞれ、2050年までの脱炭素化に向けたモデル試算、電力コストの変化がもたらす経済的影響について発表。エネ研は、将来の原子力発電設備容量として、現状の10基に留まるケース、2030年までに現時点で新規制基準をクリアした全17基が運転するケース、建設中のプラントも含めた全36基が運転するケースの他、2050年に向けては全36基が80年まで運転期間を延長するケースも想定し試算。その上で、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて、「原子力発電所の運転期間延長の他、変動性再生可能エネルギー(太陽光、陸上・洋上風力)の発電単価をいかに低減させ得るかがエネルギーシステム全体の経済性に大きく影響する」と指摘した。デロイトトーマツは、長期エネルギー分析プログラム「D-TIMES」により2030年までの発電コストへの影響度を化石燃料、原子力、太陽光について感度分析するエネルギーシミュレーションを紹介。脱炭素化の実現と経済活性化の両立に向けて「電力価格の低減のためには電源の多様化を図ることが必要」などと提言した。これを受けて、原子力技術開発の必要性を度々訴えてきた隅修三委員(東京海上日動火災保険相談役)は、先般の六ヶ所再処理工場のしゅん工延期を、核燃料サイクル事業の早期確立の観点から厳しく非難。また、「電力需給がひっ迫したらGXどころではない。大型電源の新設こそが電力の安定供給に不可欠」と、エネルギーインフラに係るスケールメリットの重要性を主張した。総合資源エネ調査会の原子力小委員会では、9月22日の会合で、先の「日本のエネルギーの安定供給の再構築」に関し、原子力政策に係る今後の検討事項として、再稼働への関係者の総力結集運転期間の延長など、既設原子力発電所の最大活用次世代革新炉の開発・建設再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化――をあげ議論を開始している〈既報〉。今後、基本政策分科会では、同調査会下の各小委員会における議論も吸い上げながら、年末の「GX実行会議」への報告に向け検討を進める方針だ。
- 30 Sep 2022
- NEWS
-
原子力小委、GX実行会議を踏まえ今後の検討事項を整理
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)が9月22日に開かれ、8月の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」(議長=岸田文雄首相)で西村康稔経済産業相が示した「日本のエネルギーの安定供給の再構築」を踏まえ、原子力政策に関する今後の検討事項を、再稼働への関係者の総力結集運転期間の延長など、既設原子力発電所の最大活用次世代革新炉の開発・建設再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化――に整理し議論した。〈配布資料は こちら〉杉本達治委員(福井県知事)は、昨秋に策定されたエネルギー基本計画を早急に見直す必要性に言及した上で、「今後、GX実行会議で決めていく内容を、わが国のエネルギー政策にどう位置付けていくべきか、政府の考えを明確にすべき」と主張。福井県内では昨夏に国内初の40年超運転として関西電力美浜3号機が再稼働。折しも22日には、同高浜3、4号機の40年以降運転に向けた特別点検の実施が発表されたが、同氏は原子力発電所の運転期間延長に関し、「科学的・技術的な根拠をもとに、規制当局も含め十分に議論すべき」と述べた。また、六ヶ所再処理工場の度重なるしゅん工延期に対し「原子力政策全体への不信につながりかねない」と危惧。「核燃料サイクルの中核を担う施設」の着実な稼働に向け、審査対応を含め政府全体での取組を求めた。運転期間の延長に関し、資源エネルギー庁は今世紀末頃までを見据えた原子力発電所の設備容量の見通しを図示。60年間までの運転期間を想定しても、このままでは設備容量が2045年以降、急激に減少し、2090年にはゼロとなる見通しだ。こうした現状を踏まえ、安全性最優先を大前提とした原子力利用政策の観点から、運転期間など、規制面の制度のあり方に関して、原子力規制委員会に対しコミュニケーションを図っていく方向性が示された。朝野賢司委員(電力中央研究所社会経済研究所副研究参事)は、「革新炉の商用運転には相当の期間を要する」ことから、国際エネルギー機関(IEA)による勧告も踏まえ、運転期間の延長に係る意思決定を第一に据え、既に建設が進められているプラントの運転開始、新増設・リプレースと、時間軸を考慮した進め方を提唱。専門委員として出席した原産協会の新井史朗理事長は、早期再稼働、運転期間の延長、新増設・リプレースについて意見を陳述。運転期間の延長に関し、「取替困難な機器の劣化状況に着目し、科学的・技術的に評価し見極めるもの」とした上で、安定供給確保とともに最も経済的なCO2削減策として「既存の原子炉を最大限に活用する」必要性を強調した。〈発言内容は こちら〉また、同じく電気事業連合会の松村孝夫原子力開発対策委員長(関西電力副社長)は、六ヶ所再処理工場のしゅん工を支援する「サイクル推進タスクフォース」の設置について紹介した。
- 22 Sep 2022
- NEWS
-
政府、核融合と高速炉の実用化に向け新たな戦略示す
会見を行う高市内閣府科学技術相(内閣府ホームページより引用)総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会で8月、革新炉開発の技術ロードマップ(骨子)が取りまとめられたが、内閣府、経済産業省の会議体は9月13日までにそれぞれ核融合、高速炉の実用化に向けた戦略案を相次いで示している。内閣府の統合イノベーション戦略推進会議(議長=松野博一官房長官)は9月12日、核融合の開発促進に向けて、同会議のもと、産業界からの参画も得た有識者会議を設置し検討を進める新たな戦略を決定。高市早苗内閣府科学技術政策担当大臣は、13日の閣議後記者会見で、「研究開発から産業育成を含む推進方策について検討を行い、来春を目途にわが国の戦略を取りまとめていく」と述べた。ITER計画などの国際的取組も進んでいるが、高市大臣は、「既に協調から競争の時代に入っている」と、海外動向に係る認識を示した上で、核融合開発を通じ諸外国に対する日本の技術的優位性を確保し産業競争力につなげるとともに将来のエネルギー安全保障に資することの重要性を強調した。ITERの次段階として発電を行う原型炉に関しては、現在、文部科学省の戦略タスクフォースで検討が行われている。〈内閣府発表資料は こちら〉翌13日、経産省の高速炉開発に係る戦略ワーキンググループ(資源エネルギー庁、文部科学省、三菱重工業、電気事業連合会、日本原子力研究開発機構により構成)はナトリウム冷却高速炉を「最も有望」な概念と位置付けた上で、2028年頃に実証炉の基本設計・許認可の開始への移行判断を行うとする新たな高速炉開発に係る「戦略ロードマップ」を策定する方向性を示した。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉2016年に「もんじゅ」(ナトリウム冷却高速炉)を廃炉とする政府方針が決定。これを受けて、現行の「戦略ロードマップ」は2018年に、同WGでの議論を踏まえ、「2024年以降に採用する可能性のある見込みのある技術の絞り込みを、政策実現性を確認する国、技術的知見を有する原子力機構、最終ユーザーであり事業化の見通しを判断する電気事業者が、技術的実現性に責任を有するメーカーの協力を得て実施する」として関係閣僚会議により策定された。13日のWG会合では、高速炉開発に係る有識者委員会の委員長を務める山口彰氏(原子力安全研究協会理事)がナトリウム冷却高速炉、軽水炉冷却高速炉、溶融塩高速炉について、「技術の成熟度と必要な研究開発」、「実用化された際の市場性」、「具体的な開発体制と国際的な連携体制」、「実用化される際の規制対応」の4つの評価軸に沿った各技術の評価結果を説明。その中で、ナトリウム冷却高速炉が、プラントの重要要素技術について技術成熟度が高く、これまで「常陽」、「もんじゅ」の設計・建設・運転・保守などで蓄積されてきた国内技術・知財の有効活用が可能で、「2024年からの概念設計開始が可能な見通し」と評価した。なお、原子力小委員会が取りまとめた革新炉開発の技術ロードマップで、高速炉については、2040年代半ばの実証炉運転開始が目標となっている。
- 14 Sep 2022
- NEWS
-
経産省が革新炉の海外市場獲得に意欲、原子力委ヒア
原子力委員会は9月6日の定例会で、8月末に取りまとめられた2023年度概算要求の原子力関連施策について、経済産業省、文部科学省、内閣府よりヒアリングを行った。その中で、経産省は、「原子力の国際協力と人材・技術・産業基盤」として、主に革新炉技術開発の取組について説明。今後、海外プロジェクトへの効果的な参画を目指し、革新炉向けの機器や部素材の設計・開発・実用化に挑戦する炉型ごとの国内サプライヤチームを「革新サプライヤコンソーシアム」として認定し、官民で支援する仕組みを構築する方向性を明らかにした。〈経産省発表資料は こちら〉革新炉開発に関しては、8月に総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会で、革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉について、導入に向けた技術ロードマップが取りまとめられている。6日の原子力委員会定例会では、資源エネルギー庁原子力政策課の遠藤量太課長が経産省の概算要求について説明。軽水炉の安全性向上技術開発、高速炉開発、革新的技術開発など、原子力産業・技術支援に関しては、前年度より軒並み増額要求している。一方で、同氏は、革新炉予算について、福島第一原子力発電所事故以前、約100億円あったものの、ここ10年で半分以下に落ち込み、人材・技術基盤の維持が困難になっている現状を憂慮。今後の課題として、「民間企業を取り込んだプロジェクト組成・管理の知見蓄積が必要」と強調した。その上で、海外の市場獲得に向けて、炉型ごとに日本原子力研究開発機構やプラントメーカー等の主幹事を定め、参入ポテンシャルのあるサプライヤを見極め、官民で情報提供原産協会等と連携し、想定サプライヤの実績や技術的強みを海外プレーヤーに発信政府系金融機関と連携し、ファイナンスによる輸出の後押し経産省から、海外規格への対応や設備改修に加え、革新炉に対応した機器・部素材の研究開発や性能検証を支援――する仕組み「革新サプライヤチャレンジ」を構築する方向性を示した。炉型ごとに「革新サプライヤコンソーシアム」を組成するもので、例えば、高温ガス炉であれば原子力機構、「BWRX-300」(カナダで進められるBWR型小型モジュール炉のプロジェクト)であれば日立GEがリーダー企業となることが考えられている。経産省では今後、原子力委員会からの意見も踏まえ、研究開発や海外展開に係る司令塔機能が発揮されるよう、具体化に向けて検討を進めていく。革新炉関連では、文科省が取り組む高温ガス炉の研究開発や原子力人材育成に関しても議論が交わされ、上坂充委員長は、「国内で閉じてしまうことがないように」と強調し、米国エネルギー省(DOE)、IAEA、OECD/NEAなどとも連携が図られるよう求めた。
- 08 Sep 2022
- NEWS
-
2023年度政府概算要求が出揃う
2023年度の政府概算要求が8月31日までに各省庁より出揃った。経済産業省は、エネルギー対策特別会計として、対前年度比15%増となる8,273億円を計上。「原子力の安全性向上に資する技術開発事業」で32.5億円(対前年度比39%増)、「原子力産業基盤強化事業」で24.0億円(同約2倍)、「高速炉に係る共通基盤のための技術開発委託費」で55.9億円(同29%増)と、いずれも増額の要求。引き続き、原子力産業の人材・技術・産業基盤の維持・強化、米仏との協力を通じた高速炉などの基盤技術開発を進めていく。今後の予算編成過程で金額の検討を行う事項要求としては、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策関連で「長期にわたるALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の海洋放出に伴う水産業における影響を乗り越えるための施策」などがあげられた。文部科学省は、原子力分野の研究開発・人材育成に関する取組として、対前年度比24%増となる1,826億円を計上。高温ガス炉に係る研究開発の推進など、革新的な技術開発に向けた取組で235億円(対前年度比約2.5倍)、バックエンド対策で676億円(同23%増)を要求。原子力科学技術に係る多様な研究開発の推進では53億円(同38%増)を計上しており、日本原子力研究開発機構の「JRR-3」と「常陽」を活用した医療用ラジオアイソトープの製造技術開発・実証にも取り組む。原子力規制委員会は、対前年度比22%増となる721億円を計上。「原子力発電施設等緊急時対策通信設備等整備事業」、「放射線監視等交付金」で、いずれも前年度より30億円超の大幅な増額要求となっている。この他、環境省は除染に伴い発生する土壌・廃棄物の中間貯蔵関連事業として1,786億円(対前年度比10%減)、内閣府は原子力防災対策の充実・強化として166億円(同58%増)をそれぞれ計上している。
- 02 Sep 2022
- NEWS
-
総合エネ調WG、廃炉の円滑化に向け認可法人設置の方向性示す
総合資源エネルギー調査会の廃炉等円滑化ワーキンググループ(座長=山内弘隆・武蔵野大学経営学部特任教授)は8月31日の会合で、国内における原子炉廃止措置全体の総合的なマネジメントに向けて、新たな認可法人を設置する方向性を示した。次回会合で取りまとめに入る中間報告書に、今後の具体的な制度設計に係る詳細事項が盛り込まれる見込み。同WGでは、2020年代半ば以降、国内原子炉の廃止措置プロセスが本格化することを踏まえ、6月より廃止措置を着実に実施していくための課題と対応策について検討を開始した。現在、国内の商業用原子炉60基(建設中含む)のうち、18基(福島第一を除く)が廃炉を決定済みで、今後、廃炉プロセスのうち、比較的濃度の高い放射性廃棄物が発生する「第3段階」(原子炉領域設備解体)が本格化する見通しだ。前回会合では、電気事業連合会と日本原子力発電より意見を聴取。今回の会合では、廃炉が決定した原子炉7基(「ふげん」、「もんじゅ」を含む)を立地する福井県の吉川幸文地域戦略部長、日本原子力研究開発機構の目黒義弘バックエンド推進部長が招かれ、それぞれエネルギー(Energy)をカギとする地域振興計画「嶺南Eコースト計画」などを通じた廃炉ビジネス、研究施設のバックエンド対策に係る取組状況を説明。クリアランスの推進も今後の課題としてあげられた。これまでの議論を踏まえ、資源エネルギー庁は「着実かつ効率的な廃止措置の実現に向けた政策の方向性」を提示。廃止措置の実施体制に関し、「共通する知見・ノウハウを蓄積した上で、わが国の廃止措置全体を総合的にマネジメントし、計画的・効率的な廃止措置を実現するための主体」として、事業計画の認可、解散の制限など、国の関与・監督が及ぶ認可法人を設置することが適切との方向性が示された。新たに設置する法人は、我が国全体の廃止措置に統括・マネジメント機能を担うとともに、安全かつ効率的な廃止措置に向けた研究開発、地域理解の促進、廃止措置に必要な資金の確保・支弁などの事業を実施。原子力事業者は、各々が有する原子力発電所の廃止措置を実施するとともに、同法人の運営に必要な資金を拠出金として納付。国は、同法人の事業継続が困難になるなど、不測の事態が生じた場合には適切な措置を講じる責任を負う。なお、資源エネルギー庁所管の認可法人としては、原子力発電環境整備機構(NUMO)、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)、電力広域的運営推進機関(OCCTO)、使用済燃料再処理機構(NuRO)などがある。
- 31 Aug 2022
- NEWS
-
西村経産相、今後のエネルギー政策に向け「S+3Eが大原則」と強調
会見を行う西村経産相(インターネット中継)西村康稔経済産業相は8月26日の閣議後記者会見で、「S+3E」(安全性、安定供給、経済性、環境への適合)を大原則とすることなど、今後のエネルギー政策に対する取組姿勢を改めて示した。西村大臣は、24日に総理官邸で開催された経済・社会・産業構造の脱炭素化に向けた検討を行う「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、「日本のエネルギー安定供給の再構築」として、今後の再生可能エネルギーや原子力に係る政策の進め方を示している。会見で、西村大臣は、「将来にわたってわが国のエネルギー安定供給に万全を期していくため、原子力を含め、あらゆる選択肢を確保していくことが重要」と強調。今後、関係の審議会で具体的な施策について議論を進めるに当たり、「開かれた形で専門家の意見も聴きながら検討を進めていくと同時に、国民の皆様にも理解を深めてもらえるよう、できる限り丁寧に分かりやすい形で説明していきたい」と述べた。「GX実行会議」で示された今後の原子力政策の進め方では、2030年までの再稼働加速化について基数を明記した形で記載しているほか、次世代革新炉の開発・建設に関しても年末までに具体論を取りまとめるとされた。これに関し、西村大臣は、昨秋策定のエネルギー基本計画の掲げる「可能な限り原発依存度を低減」、「2030年に発電電力量の20~22%を目指す」ことなど、現在のエネルギー政策との整合性については「何ら矛盾しない」と明言。今後のエネルギー政策に向けて、「『S+3E』の大前提のもとで進めることに変わりはない」と、繰り返し強調した。また、次世代革新炉の開発・建設の関連では、先般、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会が骨子案を示した革新炉開発の技術ロードマップに言及。ロードマップの中で、2030年代前半の製作・建設、同後半以降の運転開始など、商用炉の開発工程が示された革新軽水炉について、西村大臣は、「半地下型構造やシビアアクシデント対策となるコアキャッチャー(溶融炉心を保持・冷却する)など、研究開発の状況やサプライチェーンの製造能力といった様々な要素を勘案しながら議論を進めていく」と述べた。かつて通商産業省(現経産省)の職員として、石油関連の施策の他、1992年にブラジル・リオデジャネイロで行われた国連環境開発会議「地球サミット」にも関わった西村大臣は、当時を振り返りながら、「エネルギー安定供給と気候変動への対応、この2つを両立せねばならない」と述べ、自身の経験を活かし今後の施策に取り組んでいく意気込みを示した。
- 26 Aug 2022
- NEWS
-
政府・GX実行会議が原子力政策の進め方示す、再稼働の加速など
「2050年カーボンニュートラル」の目標達成に向けて、経済社会の変革に係る施策について検討する政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」(議長=岸田文雄首相)が8月24日、2回目の会合を開催。その中で、西村康稔経済産業相(GX実行推進担当相)は、「日本のエネルギーの安定供給の再構築」として、エネルギーを巡る世界情勢や日本におけるエネルギー政策の遅滞に係る課題を整理した上で、原子力政策については、2030年までを見据え官民で再稼働の加速を図るべく今秋にも対応策を取りまとめるとした。〈配布資料は こちら〉前回、7月27日に行われた初回会合で、岸田首相は、電力・ガスの安定供給に向けて、「政治の決断が求められる項目」を明確に示すよう指示。これに対し、今回の会合で西村経産相は、原子力政策について、再稼働への関係者の総力結集安全第一での運転期間延長次世代革新炉の開発・建設の検討再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化――などの検討課題を提示した。国内原子力発電所の立地と再稼働に向けた現状(来夏・来冬に向けて破線囲みの7基の再稼働を目指す、資源エネルギー庁発表資料より引用)再稼働の加速化については、今冬、既に再稼働している計10基のうち、最大9基の稼働確保に向けて、工事期間短縮の努力や定期検査スケジュールの調整などを通じ設備利用率の向上を図るとともに、来夏・来冬に向けては、それ以外の新規制基準適合性審査をクリアした計7基に係る安全工事の円滑実施(高浜1・2号機、女川2号機、島根2号機)や地元の理解確保(柏崎刈羽、東海第二)が進むよう国が前面に立って対応していく。さらに、再稼働の先の展開を見据え、次世代革新炉の開発・建設、運転期間延長のあり方などに関し、年末までに具体論を取りまとめる。同日の議論を踏まえ、岸田首相は、「電力需給ひっ迫という足元の危機克服のため、今年の冬のみならず今後数年間を見据えてあらゆる施策を総動員し不測の事態にも備えて万全を期していく」と強調。さらに、再生可能エネルギーや原子力に関しては「GXを進める上で不可欠な脱炭素エネルギー」との認識を改めて示し、今後の制度設計や国民理解に係る方策の検討を加速化するとした。原子力政策に係わる政治の動きとしては、自由民主党の「原子力規制に関する特別委員会」(委員長=鈴木淳司衆議院議員)が5月に提言をまとめており、その中で、審査に伴うプラント停止期間の長期化に鑑み、審査の効率化とともに40年運転制のあり方について検討すべきなどと述べられている。今回、GX実行会議で「政治の決断が求められる項目」が示されたことに関し、翌25日に行われた総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)で、杉本達治委員(福井県知事)は「立地地域の立場から評価したい」と述べ、今後、国が責任を持って原子力の将来像を明確にすべきと要望した。山下ゆかり委員(日本エネルギー経済研究所常務理事)は、再稼働の加速化に関して「短期的な電力供給の確保と2030年に向けたエネルギー政策の立て直しにとって重要」と評価するとともに、次世代革新炉の開発についても、「石油危機後、原子力技術はわが国のエネルギー安定供給の多様化を支えてきた」と期待。一方で、バックエンド対策や核燃料サイクルについて、「国が前面に立ち、長期的な整合性を念頭に方針を再確認すべき」と指摘した。同委員会では、前回9日の会合に続き、「原子力の開発・利用に当たっての『基本原則』の再確認」など、5項目からなる中間論点整理案が示された。専門委員として出席した原産協会の新井史朗理事長は、「原子力の価値を再確認しておくことは政策の安定性を図る意味で重要」と強調。さらに、ものづくり基盤やサプライチェーンを維持する上で未稼働プラントの長期停止が続く現状に懸念を示し、産業競争力確保の観点から、停止プラントの早期再稼働や新規プラントの早期建設開始の必要性を訴えた。〈発言内容は こちら〉
- 25 Aug 2022
- NEWS
-
西村経産相、「危機を乗り越え、強靭で柔軟な日本の経済・社会を」と抱負
第2次岸田改造内閣発足に伴い就任した西村康稔経済産業相が8月12日、エネルギー、自動車、鉄鋼、繊維などの産業専門紙の記者団によるインタビューに応じた。1985年に「日本の将来を担う中心的な官庁」との思いから通商産業省(当時)に入省し、1999年の退官後、「より大きな視点で仕事をしたい」との決意から国政入りを目指した(2003年に衆議院議員に初当選)という西村大臣は、まず「この2つの初心をもう一度思い起こす」と強調。その上で、「コロナ禍とロシアのウクライナ侵略という2つの危機を乗り越え、強靭で柔軟な日本の経済・社会を作っていくため、今は非常に大事な局面にある。そのためのイノベーションを起こし、制度改革を行っていく。この先の5年は正に勝負だ。これまでの経験を活かし全力で取り組んでいきたい」と抱負を述べた。エネルギー需給を巡る課題に関し、西村大臣は、「燃料の着実な調達、再生可能エネルギー、原子力、火力を含め、あらゆる手を尽くしてしっかりと安定供給に努めていかねばならない」と、その重要性を改めて強調。加えて、現在、総合資源エネルギー調査会で検討が進められている電力・ガス小売全面自由化にも言及し、「総合的に取り組んでいく必要がある」とした。原子力については、「この冬に向けて、安全性の確保を大前提に、安全対策工事の加速、定期検査期間の調整などを進めながら、岸田首相の指示した『最大9基の稼働』を確保できるよう、事業者とも連携しながら着実に取り組んでいく」と明言。三井物産・三菱商事による新ロシア法人への参画に係る判断が注目されている「サハリン2プロジェクト」(日本のLNG需要量の約9%、総発電量の3%に相当)については、「権益を維持する方針は今後も変わりはない」とした上で、ロシア政府による決定の詳細を確認し意思疎通を図りながら具体的対応を検討していく考えを示した。この他、西村大臣は、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた電気自動車普及や水素還元製鉄の実用化、環境に配慮した繊維製品の社会実装を通じた日本の魅力「クールジャパン」発信などに言及。通産省勤務時代の石川県商工課長在任を契機とした地元とのつながりが今でも活きていることに触れ、地域産業の技術力支援やブランド化にも意気込みを示した。西村大臣は、内閣府経済財政政策担当相在任中(2019年9月~21年10月)、2020年3月からは安倍晋三首相(当時)の指示によりコロナ対策に係る政府対応をリードした。
- 16 Aug 2022
- NEWS
-
総合エネ調原子力小委、革新炉WGより報告受け議論
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)は8月9日、同委員会下に置かれる革新炉ワーキンググループが7月29日に取りまとめた中間整理案について報告を受け意見交換。同WGは、「原子力発電の新たな社会的価値を再定義し、わが国の炉型開発に係る道筋を示す」ことを目的とし、4月より議論してきた。〈配布資料は こちら〉冒頭、挨拶に立った経済産業省の細田健一副大臣は、革新炉開発に関し、「今後のわが国の原子力技術の発展のため必要不可欠」と述べ、活発な議論を期待。同WG座長の黒﨑健氏(京都大学複合原子力科学研究所教授)が中間整理案「カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の実現に向けた革新炉開発の技術ロードマップ」(骨子案)について説明した。2050年以降を見据えた革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉の導入に向けた技術ロードマップ、これらの技術に係る原子力サプライチェーンによる市場獲得戦略などを整理したもの。これを受け委員から、杉本達治氏(福井県知事)は、「将来の原子力規模と道筋」の明確化を要望するとともに、折しも8月9日に美浜発電所3号機事故から18年を迎えたことに際し、当時の状況を、「西川一誠知事のもと、大変緊張して対策に取り組んだ」と振り返りながら、立地地域として改めて「原子力発電は安全確保が最優先」と強く訴えた。メディアの立場から、伊藤聡子氏(フリーキャスター)も、福島第一原子力発電所事故を経験した日本として、「安全性の確保のためにも革新炉を開発するということをしっかり発信していくべき」と主張。また、技術的視点から、原子力小委員会委員長代理の竹下健二氏(東京工業大学科学技術創成研究員特任教授)は、革新炉WGによる中間整理案に関し、「色々な評価軸から俯瞰的にものを見る大変貴重な成果だ」と評価。その上で、既存炉の廃炉ラッシュも見据え、「新型炉の導入は現実的な政策」と述べるとともに、MOX燃料再処理や天然ウランの必要量など、核燃料サイクルにおける定量的評価にも言及し、「技術開発課題をパッケージ化した長期的に整合性ある原子力政策」が策定されるよう求めた。同WGの中間整理案と合わせ、今回の原子力小委員会では、資源エネルギー庁が同委の中間論点整理案として、原子力の開発・利用に当たっての「基本原則」の確認将来を見据えた研究開発態勢の再構築産業界の能動的な取組に向けた予見性の向上原子力ものづくり基盤の強化と戦略的な市場獲得立地地域との共生および国民各層とのコミュニケーションの深化――の各項目について整理。専門委員として出席した原産協会の新井史朗理事長は、原子力の持続的活用・長期的な利用に関する国からの明確なメッセージ発出建設中を含めまだ再稼働していないプラントの早期稼働の実現と新増設・リプレースの検討開始原子力発電への国民理解・信頼獲得に関係者が一丸となって取り組むこと――を要望。〈発言内容は こちら〉同じく全国電力関連産業労働組合総連合の坂田幸治会長は、「既設炉の再稼働と長期安定運転の実現なくして、革新炉開発の道筋を切り拓くことは困難」と指摘。原子力事業による地域経済の活性化や雇用創出にも言及し、「人材・技術やサプライチェーンの維持・強化、そのための事業環境整備の必要性を強く打ち出すことが重要」と強調した。
- 09 Aug 2022
- NEWS
-
革新炉WG、炉型ごとの技術ロードマップ示す
総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)は7月29日の会合で、これまでの議論の中間整理となる「カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の実現に向けた革新炉開発の技術ロードマップ」(骨子案)を概ね取りまとめた。近く同WGの上層となる原子力小委員会に報告される。〈配布資料は こちら〉同WGは、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた海外動向や原子力全体のサプライチェーン維持・強化の必要性を踏まえ、「原子力発電の新たな社会的価値を再定義し、わが国の炉型開発に係る道筋を示す」ことを目的に、4月より国内研究機関・メーカーの他、米国の原子力規制委員会(NRC)や原子力エネルギー協会(NEI)とも意見交換をしながら検討を行ってきた。中間整理案では、革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉について、2040~50年以降を見据え、導入までの時間軸をイメージした開発工程(研究開発、設計、製作・建設、運転など)を示す技術ロードマップを提示。また、これまでの議論から、「開発の方向性(時間軸)が不明瞭」、「具体的プロジェクトの不在、予算・制度支援の不足」、「開発体制の不備、サプライチェーンの脆弱化」、「開発活動の低下」という革新炉開発を巡る「悪循環」を指摘。その対応として、革新炉開発に係る方向性の明瞭化開発予算・施設の整備革新炉開発を支える事業環境の整備開発の司令塔機能の強化サプライチェーンの維持・強化――をあげた。委員からは、小野透氏(日本経済団体連合会資源・エネルギー対策委員会企画部会長代行)が、先般首相官邸で開かれた「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」など、エネルギー安定供給を巡る議論の高まりにも言及しながら、「新増設・リプレースに取り組む上でも、安全性向上が期待される次世代炉は国民の安心感向上につながる」と主張。その上で、革新炉開発に向けて、安全性に係る国民理解の醸成や諸外国に遜色のない予算措置を図っていくべきとした。また、高木直行氏(東京都市大学大学院総合理工学研究科教授)は、原子力人材育成に関わる立場から、革新炉開発の技術ロードマップに一定の評価を示す一方で、「バラバラ感」があると指摘。溶融塩炉などの研究開発にも関わった経験を持つ同氏は、炉型による燃料濃縮度の違いなどに言及し、他炉型を相互に関連させた導入シナリオやバックエンド政策を検討していく必要性を強調した。この他、新増設・リプレースとの関連性、次世代層への理解促進、司令塔機能における国・研究機関・企業の役割に関する意見が出された。これに続き同日は、高速炉開発会議の戦略ワーキンググループが、2018年12月の「戦略ロードマップ」決定以来、およそ3年半ぶりに会合を開催。戦略WGでは、安全性・信頼性経済性環境負荷低減性資源有効利用性核不拡散抵抗性、柔軟性・その他市場性――に係る高速炉サイクルの開発目標を提示。今後の議論に資するものとして革新炉WGの中間整理が参考配布された。
- 29 Jul 2022
- NEWS
-
総合エネ調革新炉WG、米専門家招き意見交換
総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)は7月1日の会合(オンライン開催)で、米国原子力規制委員会(NRC)原子炉規制局ディレクターのモハメド・シャムズ氏、同原子力エネルギー協会(NEI)シニアディレクターのマーク・ニコル氏を招き意見交換を行った。〈配布資料は こちら〉シャムズ氏は、革新炉技術に係る許認可申請の増加に備えたNRCの取組を紹介。リスク情報などを活用した「許認可近代化」を標榜し、組織の体制強化や国際協力を図っているとした。ニコル氏は北米において計画・検討されている20件以上の革新炉プロジェクトの展望を紹介。革新炉の持つ安全性、経済性を強調するとともに、2030年までに多くのプロジェクトで運転が開始されるとの見通しを示した上で、規制の効率化、強固なサプライチェーンの確立などを課題としてあげた。これに対し、同WG上層となる原子力小委員会の委員長を務める山口彰委員(原子力安全研究協会理事)が規制を向上させていく重要性を述べた上で、米国の革新炉開発における産業界と規制の関わり、国立研究機関の規制への関与について質問。ニコル氏は、許認可申請前の審査活動が一定のガイドラインの下で行われていることに関し、「申請の質も上がり、産業界としても歓迎している」とするとともに、「NRCはコンサルタントではない。規制の独立性は重要」と強調。シャムズ氏も「産業界とはある意味でパートナーシップだが、適切な独立性をキープする必要がある」と、同感の意を述べたほか、規制における国立研究機関の役割に関して、ガイドライン作成、設計のレビューなどを担っており「非常に重要だ」とした。この他、WG会合では、革新炉開発におけるサプライチェーンの維持・強化に関連し、原産協会、助川電気工業、TVE(旧東亜バルブエンジニアリング)がプレゼンテーション。原産協会からは、昨秋に154社を対象として実施したサプライチェーン調査の結果や、会員企業への海外展開支援活動の事例が紹介された。「常陽」、「もんじゅ」への電磁ポンプなどの納入実績を持つ助川電気工業は、震災を受けた原子力・エネルギー関係の売上げ減少が「転換期」となったという。同社技術の医療や自動車産業への転用例を披露した上で、再稼働が進まぬ状況下、「新たなテーマを掲げて原子力技術の活性化を」と訴えた。TVEは、バルブの主要サプライヤーとしてPWR、BWRともに多くの納入実績を持つが、新増設・リプレースによる安定的な需要が望めない見通しとともに、バルブ鋳鋼用の木型製造技術者の高齢化・後継者不足から、製造技術の維持、人材育成・技術伝承を課題としてあげた。委員からは、職人技を適切に評価する制度設計に係る要望、大学の研究施設の老朽化が人材育成に及ぼす影響を懸念する声があがったほか、革新炉開発に向けては、規制の予見性確保、海外展開に伴う多様なニーズに対応した政府の支援策、投資計画に関連して商業化を見据えた議論の必要性などに関する意見が出された。
- 01 Jul 2022
- NEWS
-
原子力小委、地域共生と国民理解の促進について議論
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)は6月30日、地域との共生と国民理解の促進について議論。今回の議論に関連し、同調査会委員の他、全国原子力発電所立地市町村協議会(全原協)の渕上隆信会長(敦賀市長)が出席した。〈配布資料は こちら〉地域との共生に関し、資源エネルギー庁が立地自治体の人口動態、産業構造、課題、地域振興に関する取組支援例について整理。立地地域から2019~21年に寄せられた要望書をもとにした分析によると、原子力発電所の稼働状況にかかわらず、「再生可能エネルギー導入を含めた地域振興の取組支援」、「避難道路など、原子力防災対策の充実」、「原子力政策の明確化・推進」に関する要望が多く、再稼働に係る許可前では審査の効率化、許可後ではバックエンド対策や国民理解に関する要望が多くなっていた。全国紙5紙の原子力発電に関する世論調査の推移比較(資源エネルギー庁発表資料より引用)また、国民理解に関し、資源エネルギー庁が原子力発電に関する世論調査結果の推移から「福島第一原子力発電所事故以降、原子力発電の再稼働について、最近、肯定意見が増加し否定意見が減少」との分析を示したのに対し、渕上会長は、「理解が進んているようにも感じるが、特に電力消費地における理解は十分とはいえない」と懸念を表明。安全確保に厳しい目を向けている立地地域の一方で、消費地・遠隔地の人たちに対しては、「安心を担保し不安を払しょく」するよう、インスタグラム、YouTube、漫画なども活用したわかりやすい理解活動の有効性を示唆した。情報発信に関し、越智小枝委員(東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座准教授)は、SNSやホームページを通じた発信について、それぞれ「感情をあおる記事だけが拡散することがある」、「調べようとする人にしか伝わらない」などと、信頼や関心を醸成する上での難しさを指摘。さらに、「過剰に不安を払拭しようとすることが却って不信感につながる」などと危惧した上で、目的や世代に応じた細やかな情報発信戦略のデザイニングがなされる必要性を訴えかけた。また、松村孝夫専門委員(電気事業連合会原子力開発対策委員長/関西電力副社長)は、事業者によるコミュニケーション活動・地域共生の取組について紹介。地域共生と理解促進の双方に関連し、伊藤聡子委員(フリーキャスター)は、「原子力発電所に従事する人を通じて『地域の美味』などを発信することで、『地域愛』も含め信頼関係が醸成されるのでは」と提案した。政策立案プロセスにも関連し、消費者の立場から村上千里委員(日本消費者生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会理事)が「民意を反映した意思決定」を主張。一方で、エネルギー安全保障の観点から遠藤典子委員(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)は、「国民の賛同だけが判断基準であってはならない」と指摘した。地域振興の関連では、先般、立地自治体、国、事業者の参画による「福井県・原子力発電所の立地地域の将来像に関する共創会議」(2021年6月創設)が、「ゼロカーボンを牽引する地域」、「スマートで自然を共生する持続可能な地域」を将来像に掲げ、水素・アンモニア供給拠点など、40の取組に係る工程表を取りまとめたところだ。これについて、杉本達治委員(福井県知事)は、「嶺南地域の将来像を描く意義深いもの」と評価し、他の立地地域への水平展開にも期待を示した。新井史朗専門委員(原産協会理事長)は、立地自治体も含まれる会員組織やメディアを通じた情報提供・意見交換、地域組織とも連携した立地地域相互間の情報共有などの取組を紹介。原子力発電所の運営に地域が深く関わっている現状から、「地域産業全体の技術力向上や経済波及効果のメリット」を踏まえた原子力政策が示されるよう求めた。また、学生向けのエネルギーに関する出前講座の経験から、「答えの押し付けではなく、データを提供して考えてもらう双方向の取組が理解の向上につながる」と強調した。〈発言内容は こちら〉
- 30 Jun 2022
- NEWS
-
規制委、HLW地層処分に関しエネ庁・NUMOよりヒア
原子力規制委員会は6月29日の定例会合で、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の松山泰浩氏、原子力発電環境整備機構(NUMO)の近藤駿介理事長らを招き、高レベル放射性廃棄物(HLW)の地層処分に係る取組についてヒアリングを行った。規制委員会では、処分地選定に向けた寿都町・神恵内村における文献調査開始など、地層処分に係る動きを受け、文献調査に続くプロセスとなる概要調査、精密調査、施設建設(いずれも地域の意見に反して先へは進まない)の地区選定時における「安全確保上少なくとも考慮されるべき事項」(考慮事項)の検討に1月より着手。定例会合の場で随時、集中的に議論し、6月8日には、避けるべき断層、火山、鉱物資源の鉱床などについて整理した考慮事項の案文を取りまとめた。エネ庁・松山電力・ガス事業部長29日の会合で、松山氏は、高レベル放射性廃棄物の地層処分について、「原子力発電を持続的に活用していく上で、必ず解決せねばならない重要な課題」との認識から、NUMOと連携し着実に進めていく姿勢を改めて強調。さらに、「非常に長期間にわたる廃棄物管理を安全かつ実施可能な形で行わねばならない」と、処分事業の特徴を述べた上で、「地域固有の文献データに基づく調査と並行し地域の方々との対話を深めている」と、現状を説明。考慮事項案に関しては、「処分事業に係る安全性評価は地域の安心感の観点からも非常に重要」として、意義あるものとの認識を示した。NUMO・近藤理事長また、近藤理事長は、地層処分に関係する地域の科学的特性を色分けした全国地図「科学的特性マップ」公表(2017年)を契機とする全国での広報活動を引き続き実施し、寿都町・神恵内村においては「対話の場」を通じ情報提供・意見交換に努めていると説明。海外の安全規制機関の取組についても議論となる現状から、日本の規制機関として考慮事項案が示されたことに関し「ありがたく受け止める」と述べた。これに対し、更田豊志委員長は、「これから先、まだまだ長いプロセス。社会とのコミュニケーションは大変重要」と強調。先行する欧州諸国の安全規制機関の動きも参考に「この問題に相応しい関わり方をしていきたい」などと述べた。考慮事項については、7月8日までパブリックコメントに付されている。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 29 Jun 2022
- NEWS
-
原産協会が定時社員総会開催、今井会長「原子力の最大活用」を強調
原産協会は6月16日、日本工業倶楽部(東京千代田区)で定時社員総会を開催した。開会に際し、今井敬会長(日本経済団体連合会名誉会長)が挨拶。今井会長は、昨今のウクライナ情勢に伴うエネルギー需給ひっ迫への懸念も示し、「エネルギーの危機的な状況を、原子力の最大活用によって一刻も早く改善していかねばならない」と強調。さらに、5月に政府が「クリーンエネルギー戦略」策定に向けた中間整理を取りまとめ、その中で「再生可能エネルギーと並んで、原子力を最大限活用する」ことが明記されたことに触れ、改めて「再稼働の着実な進展や、既設炉の徹底活用、将来の新増設・リプレースなど、原子力の最大限活用について強く訴えていきたい」と述べた。また、原子燃料サイクルの中核として2022年度上期にしゅん工が予定される六ヶ所再処理工場については、「今回こそは無事にしゅん工することを願っている」と期待を寄せた上で、「わが国における原子燃料サイクルの一日も早い確立と、最終処分事業の着実な進展に一層の努力をしていきたい」と表明。この他、高品質なサプライチェーンの維持、優秀な人材の育成と確保、原子力に係る社会全体の理解の必要性を述べた上で、原産協会として、「国民理解の促進」、「人材の確保・育成の推進」、「国際協力の推進」を3本柱に、原子力産業の再生に向けて取り組んでいく姿勢を示した。続いて、来賓挨拶に立った経済産業省の岩田和親大臣政務官はまず、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策、福島の復興を最重要課題に位置付け取組を進めていくことを改めて強調。さらに、昨今のウクライナ情勢や3月の東日本における電力需給ひっ迫を振り返り、「原子力を含め、わが国のエネルギー安定供給の重要性を再確認するきっかけとなった」とした上で、2022年度の厳しい電力需給見通しを踏まえた政府による対策に関し、参集した会員企業らに対し理解・協力を求めた。再稼働の円滑な進展に向けては、「産業界と連携し的確な安全審査対応をサポートするとともに、国も前面に立ち、立地自治体、関係者、社会全体の理解と協力を得られるよう粘り強く取り組んでいく」と述べた。また、文部科学省研究開発局長の真先正人氏が末松信介大臣の挨拶を代読。「原子力イノベーションの創出に向け産業界と一体となって取り組んでいく」などと、原子力人材・技術基盤の維持・強化に向けた姿勢を示した。島田新副会長が総会後の会員交流会で就任挨拶今回の総会では7名の理事交替を決定。副会長については、宮永俊一氏(三菱重工業会長)が退任し、島田太郎氏(東芝社長)が就任した。
- 17 Jun 2022
- NEWS