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設立10周年のJANSIが年次大会
原子力安全推進協会(JANSI)は3月15日、「JANSI Annual Conference 2023」を都内で開催。オンライン視聴も含め約500名が参加した。JANSIは2012年に、「福島第一原子力発電所事故のような過酷事故を二度と起こさない」という原子力産業界の強い決意のもと、米国原子力発電運転協会(INPO)をモデルに設立された自主規制組織で、現場観察やヒアリングによる評価を通じ規制適合だけに満足せず自主的な安全性向上活動を促す「ピアレビュー」などを実施している。開会挨拶に立ったウィリアム・エドワード・ウェブスター・ジュニア会長は、昨秋、JANSIが設立10周年を迎えたことについて「単なる通過点に過ぎない」との認識を示し、「引き続き自主的な改善に努めていく」と強調した。続いて、原子力規制委員会の山中伸介委員長、INPOのロバート・フレデリック・ウィラードCEO、電気事業連合会の池辺和弘会長が挨拶。山中委員長(ビデオメッセージ)は、JANSIに対し、「民間の原子力規制機関と考えており、人員規模は原子力規制委員会にも匹敵する」と、組織の有する意義・リソースの大きさを明言した上で、技術情報の共有、継続的な安全性の向上、検査制度の実効性向上、安全・セキュリティ文化の醸成、人材育成において、産業界を牽引する指導的取組を図っていくよう期待した。ウィラードCEO(ビデオメッセージ)は、JANSI設立10周年の節目に際し祝意を表した上で、「INPOはTMI事故、JANSIは福島第一原子力発電所事故、どちらも国内の原子力が危機にさらされている中で設立された」としたほか、設立から10年時点のINPOを振り返り、会員企業に対する懸命な理解活動など、困難の克服に挑んだ経緯を回顧。JANSIに対し「国際的な原子力産業の視点から見ても、価値の高いプログラムが評価されている」とする一方、「過去の成果に決して甘んじてはいけない」と述べ、原子力の安全性・信頼性のパフォーマンス向上に向け、JANSIと引き続き協力していく姿勢を示した。池辺会長は、事業者を代表する立場から「JANSIが自主規制組織として果たす役割の重要性はますます高まっている」と強調。昨秋、JANSIの「ピアレビュープログラム」が世界で初めて、世界原子力発電事業者協会(WANO)によるものと「同等」と認定されたことなど、最近のJANSIに対する国際的評価に言及。「10年間の成果が目に見える形で表れている」とする一方、今後に向け「JANSIを含む産業界全体が『運命共同体である。“We are in the same boat”』の精神のもと、緊密に連携する必要がある」と述べ、慢心せず自主的・継続的に安全性向上に取り組んでいく姿勢を示した。基調講演を行った米国エナジー・ノースウェスト社CEOのロバート・シュッツ氏は、コロンビア原子力発電所(ワシントン州)を例に、米国原子力産業界における安全性向上の取組を紹介。INPOの取組に関しては、会員企業のCEOが集まる年次総会で行う改善活動の相互比較をあげ、「最下位となった企業のCEOは他社から批判的コメントを受ける」と説明。その上で、「学ぶべきことは『われわれは互いに説明し合う義務がある』ことで、これこそが自主規制の神髄だ」と強調した。パネルディスカッションには、山下ゆかり氏(日本エネルギー経済研究所常務理事、座長)、シュッツ氏、山口彰氏(原子力安全研究協会理事)、ビクター・マクリー氏(ニュークリーダー・コンサルティング社オーナー兼プリンシパル・オペレーティング・オフィサー)、森望氏(関西電力社長)、JANSIからウェブスター会長と山﨑広美理事長が登壇。JANSIの今後10年に向けた展望、日本の原子力産業が目指すべき方向性などをテーマに意見交換が行われた。
- 16 Mar 2023
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柏崎刈羽の命令解除判断「5月初旬から中旬」
会見を行う原子力規制委員会・山中委員長(インターネット中継)原子力規制委員会の山中伸介委員長は3月8日の定例記者会見で、同日の定例会合で議題となった東京電力柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に係る不適切事案を受け同社に対し実施している追加検査に関し、「5月初旬から中旬を目途に報告書の議論に入る」との見通しを示した。核物質防護機能の一部喪失などの事案発生を受け、規制委員会は2021年3月に柏崎刈羽原子力発電所の規制上の対応区分を「第4区分」(事業者が行う安全活動に長期間にわたる、または重大な劣化がある状態)に変更。同4月、東京電力に対し、規制上の対応区分が「第1区分」(事業者の自律的な改善が見込める状態)に改善するまで、事実上、運転が不可能となる是正措置命令を発出。合わせて追加検査を開始した。現地には、昨年末以降、2023年2月までに、山中委員長他、4名の委員が視察に訪れており、3月3日には原子力規制庁の柏崎刈羽原子力発電所追加検査チームが小早川智明社長へのヒアリングを行っている。会見で、山中委員長は、命令解除の可否に関し「公開の場で結論を出したい」と明言。検査で確認された課題として、ハード面では検知器の問題、ソフト面では協力会社も含めた気付き事項の取り上げや「改善措置を一過性にしない」仕組みが不十分なことを指摘し、現時点での命令解除は「なかなか難しい」との見通しを示した。追加検査は計3,300時間に及んでいるが、現在、関連法案が国会で審議中の「事業者が予見しがたい事由による停止期間に限り、60年の運転期間のカウントから除外」とする規定の適用に関して問われたのに対し、山中委員長は「資源エネルギー庁が判断すること」と応えるに留めた。
- 08 Mar 2023
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規制委が東京電力本社でヒア 柏崎刈羽
原子力規制委員会は3月3日、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所における核物質防護に係る不適切事案に関し、同社・小早川智明社長へのヒアリングを行った。柏崎刈羽原子力発電所では、2020年以降、核物質防護機能の一部喪失などの事案が発生。規制委員会は、「組織的な管理機能が低下」、「核物質防護上、重大な事態になり得る状況であった」と指摘し、2021年3月に同所の規制上の対応区分を「第4区分」(事業者が行う安全活動に長期間にわたる、または重大な劣化がある状態)に変更。同4月、東京電力に対し、柏崎刈羽原子力発電所に係る規制上の対応区分が「第1区分」(事業者の自律的な改善が見込める状態)に改善するまで、事実上、運転が不可能となる是正措置命令を発出。合わせて同所に係る追加検査を開始した。豪雪の中、柏崎刈羽発電所を視察する原子力規制委員会・山中委員長(原子力規制委員会提供)現地には、昨年末以降、2023年2月までに、山中伸介委員長他、4名の委員が視察に訪れている。今回のヒアリングは、その追加検査の一環として行われたもの。原子力規制庁の柏崎刈羽原子力発電所追加検査チーム長・古金谷敏之氏(長官官房緊急事態対策監)らが東京電力(本社)を訪れ、同社による改善措置活動の状況について説明を受けた。冒頭、小早川社長は、「自ら現場を確認する」ことの重要性を強調。設備のパフォーマンス向上などの取組状況を述べた上、引き続き「社長である私の責任で着実に対応していく」姿勢を示した。ヒアリング終了後、取材に応じた古金谷氏は、東京電力との間の認識に関し「大きなズレはなかった」と、課題に対する取組・成果を認める一方、CAP((小さな気付きを広く収集し改善につなげる取組))の不十分さなど、まだ改善の余地があることを指摘。今回のヒアリングに関し「結論ありきのものではない」と述べ、追加検査の終了や是正措置命令解除に向けた具体的見通しについては言及しなかった。また、小早川社長は、「是正措置命令を受けてから2年間取り組んできた中身についてお話しした」と説明。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関しては、「セキュリティとセイフティがしっかりと健全な状態になって初めて再稼働の時期について言及」する姿勢を示した上で、「スケジュールありきではなく、まずは改善」との考えを強調した。原子力規制庁の柏崎刈羽原子力発電所追加検査チームは3月6日、現地にて稲垣武之所長らからのヒアリングを行う。
- 06 Mar 2023
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規制委 高経年化炉の安全規制で検討チーム始動
原子力規制委員会は2月22日、「高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チーム」の初会合を行った。利用政策側(資源エネルギー庁)による運転期間見直しに向けた検討を踏まえ、同委では、昨秋からの議論の末、2月13日に高経年化炉に係る新たな安全規制の概要および関連の原子炉等規制法案を了承。運転開始後30年を超えて運転する場合、事業者に対し10年以内ごとに施設の劣化を管理するための「長期施設管理計画」の策定を義務付け、認可を受けなければ運転できないというもの。新制度の実施は関連法案の成立が前提だが、施行後の遅滞ない運用を図るべく同チームにおいて詳細な規則・ガイド類の整備に向け検討を行うこととなった。検討チームは、プラント審査を担当する杉山智之委員が中心となり、原子力規制庁職員らで構成。必要に応じ事業者からの意見聴取も行う。初会合の冒頭、杉山委員は、「新しい制度にスムーズに移行するため、何を決めなければいけないか。どのように高経年化したプラントの安全を確保していくかを議論していきたい」と、口火を切った。同チームの新制度に係る検討事項として、原子力規制庁は、基本的な枠組み新たな技術的検討(運転開始後60年以降の評価など)わかりやすい情報発信手法(1か月程度で概要をまとめる)――に大別。新制度においても、現行の劣化評価の技術的内容は運転開始後60年までは引き続き実施し、「40年+20年」の運転延長認可の際に実施されていた「特別点検」も同様に維持するとの原則を示した。いわゆる「設計の古さ」に関して、原子力規制庁原子力規制技監の市村知也氏は、これまでの新規制基準適合性に係る審査対応を振り返り、事業者によるシビアアクシデント対策、材料の改善などの事例をあげ、劣化管理との関連性やバックフィット(既に許認可を受けた施設が新知見に基づく規制要求に適合することを確認する)による対応可否を整理することを示唆。原子炉安全工学の立場から、杉山委員は、「着工後、相当な時間が経っているがまだ運転に至っていない炉は今でも『ゼロ歳』と扱われている」などと、「一旦設置許可を受けた炉は差し当たり40年間の運転は保証される」という考え方に疑問を呈し、運転されない間に進む劣化も重要な観点であることを指摘した。初会合には、杉山委員の他、田中知委員、伴信彦委員、石渡明委員が出席。自然ハザードに係る審査を担当する石渡委員は、海外における長期運転認可の状況に触れながら、サイト周辺の環境変化に関し「60年もたてば、洪水で川の流れが変わったり、田んぼの真ん中だったのが周りに家が建ち並んだり、ガラッと変わってくる」と述べ、今回の新制度設計における環境影響評価に係る観点の欠如を指摘した。検討チームでは今後、作業の進捗を見ながら、月2、3回程度のペースで会合を開く予定。
- 24 Feb 2023
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「12年間のプラント停止は非常識」エネ研が原子力規制でシンポ
日本エネルギー経済研究所(エネ研)は2月21日、都内のホテルで、「原子力規制のベストプラクティス」をテーマにシンポジウムを開催「原子力規制のベストプラクティス」をテーマにシンポジウムを開催。OECD原子力機関(NEA)のW.マグウッド事務局長をはじめ、カナダ、英国の原子力規制専門家が登壇し、「合理的な規制」のあるべき姿について議論した。シンポジウムは対面式で開催され、多くの関係者が詰めかけた。マグウッド氏は、世界規模で原子力発電の新規導入が検討されている中で、最も重要なことは「スキルを備えた力強い規制当局」の存在だと強調。世界の規制分野で、優秀な規制人材の確保が課題となっていると述べた。そして規制当局の意思決定に関しては、透明性を持ちつつ “誰が見てもわかる明確な原則” を示すことで、信頼を得ることができるとし、規制者側にも「自らに対しても批判的である」よう求めた。また福島第一事故以降、日本の規制当局がとってきた対応を「緊急性の高い危機対応であり、妥当」と一定の評価をしつつも、「もはや危機は脱した」として、これまでの規制対応などのアプローチ自体を「見直す時期に来ている」と指摘。規制当局にはイノベーションを受け入れる姿勢が大切だとした上で、AI等の最新手法を貪欲に取り入れ、“reasonable(合理的)” かつ実用的な安全性向上へ取り組むべきだと訴えた。そして私見としながらも、規制当局の意思決定は、将来に渡ってリピートされる模範例となることが大事だとし、規制当局のグローバル規模での連携により、より良い規制が生まれるのではないかと、規制当局間のコミュニケーション強化を呼びかけた。CNSCの上席副長官兼最高規制業務責任者を務めるジャマル氏カナダ原子力安全委員会(CNSC)や米原子力規制委員会(U.S.NRC)の委員を歴任したR.ジャマル氏は、カナダでの規制事例を紹介。その規制手法は柔軟であり、常に原子力安全規制分野の変化に対応できるよう心掛けているとした。そして規制にあたって最も重要視すべきこととして、「合理的でないリスク防止策」を除外することを挙げた。これは、原子炉を停止してしまえば簡単にリスクは防止できるが、そうした安易な手法は取らず、さまざまなリスク情報を分析した上で対応するということで、こうした姿勢も、規制当局にそれだけの力量があってはじめて可能になると強調した。英国のR.キャンベル氏は、英原子力規制庁(ONR)等で30年以上のキャリアを積んだベテラン。今回が初来日となった。同氏は規制において「タイムスケールの透明性」が不可欠だと指摘。申請から認可までいかに迅速に結論を出せるかがカギであり、「法律や規則で決まっているものではないが、規制当局としてのサービスの一環として示す必要がある」と強調した。また、事業者と規制当局は常に対話を継続するべきだとした上で、規制当局は「外部からどのように見られているかを常に意識しなければならない」との認識を示した。モデレーターを務めたエネ研の村上朋子・研究主幹が質疑の中で、「規制プロセスとプラント利用率向上のバランス」について問い掛けたところ、3者とも「設備利用率は事業者の管轄であり、規制当局は関知しない」と断言。また「規制当局は電力供給の安定性も考慮すべきなのでは?」との会場からの声に対し、これも3者とも「規制当局は電力の供給に責任を持つものではない」との考えで一致した。ただし、「優れた規制当局は、どこで何が起きているかを把握しなければならない。場合によっては規制当局は、状況を踏まえて意思決定を行なうこともある。必ずしもプラントを今すぐ止めなければならない問題でなければ、当局も相応の対応が取れるはずだ」(マグウッド氏)、「国民のwell-being(幸福)のためという目標を忘れてはならず、graded approach(リスクに見合った規制)を適用すべきだ」(ジャマル氏)──等のコメントがあった。昨年ONRを退任したばかりのキャンベル氏一方、「合理的な規制とは?」との問いに関しては、マグウッド氏とジャマル氏が「安全目標に照らし合わせ、それを十分に達成した状態でプラントが稼働することが基本」と、バランスを取りながら合理性を判断するとしたのに対し、キャンベル氏は「合理性とは、余計なコストをかけないこと」と即答。規制当局としてはリスクが十分に低ければ、合理性の観点から十分にacceptable(受容可能)であり、わずかなリスクを下げるために過大なコストを投じることは馬鹿げていると指摘した。キャンベル氏は日本のプラントが置かれた状況にも言及。「再稼働を目指すというが、12年間の停止期間は非常識。これは全てイチからやり直すようなもので、人材が足りないだけでなく、数多くのトラブルが起きることが目に見えている。規制当局を納得させることは難しいだろう」と指摘した。その上で、そこまでして旧いプラントを再稼働させるよりも「最新知見を結集した新型炉にリプレースする方が、明らかに合理的」との考えを明らかにした。
- 24 Feb 2023
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「ATENAフォーラム2023」開催
開会挨拶に立つATENA・魚住理事長原子力エネルギー協議会(ATENA)は2月16日、「ATENAフォーラム2023」を都内ホールで(オンライン併用)開催した。ATENAは2018年7月、電力会社に加えメーカーなども含む産業界全体で原子力の自主的安全性向上を図る組織として発足。知見・リソースを効果的に活用しながら、原子力発電の安全性に関する共通的な技術課題に取り組んでいる。ATENAの取組について発信するフォーラムの開催は今回で5回目となる。来賓挨拶に立つ原子力規制委員会・山中委員長来賓挨拶に立った原子力規制委員会の山中伸介委員長は、ATENAの取組に関し「個別事業者としては言い得ないような意見を拾い上げ、原子力規制委員会・規制庁に対する異論・反論も含めた事業者の意見・提言の発信がより強く期待できる」と、その意義を強調。一例として、事故耐性燃料の導入に向けた事業者との技術的議論の進展などに言及した上で、今後も原子力発電所の長期サイクル運転におけるリスク情報の活用など、技術課題に係る様々な提案が寄せられるよう、ATENAのリーダーシップ発揮に期待した。また、昨今の原子力施設におけるトラブル多発を背景に、「技術力・現場力の低下が生じているのではないか。大学などにおいても原子力を学ぶ学生数が減少し、実験装置を自ら作成するという体験が少なくなっている」として、将来の原子力人材育成に向け真剣に考えるべきと明言。ATENAに対し、「メーカーも含む」という強みに触れ、「これまでの発想とはまったく異なった若手人材の育成に取り組んで欲しい」と述べた。講演を行う米NEI・コースニック理事長続いて基調講演(ビデオメッセージ)を行ったM.コースニック米国原子力エネルギー協会(NEI)理事長兼CEOはまず、昨今の世界的なエネルギー危機・政情不安に言及。その上で、「各国の指導者たちは今、気候危機への対応が自国の経済やエネルギー安全保障に直結していることを認識している。その多くは、出力の大規模化が容易で信頼性が高く、安価でクリーンなエネルギー源として原子力を推進する明確な政策を打ち出している」と述べ、英国、フランス、カナダ、ポーランド、オランダ、ブルガリア、チェコにおける最近の原子力開発に向けた動きを紹介した。同氏は、米国の原子力推進に係る法案提出状況にも触れ、「10年前は州レベルで12本もあれば良い方だったが、最近では100本以上にも上っている」と、関心の高まりを強調。運転期間の見直しや次世代革新炉の開発・建設など、日本の原子力政策の動きに関しては、「強固なサプライチェーンと経験豊富な人材が必要」と指摘するとともに、「『今こそ原子力に全力投球すべき』ことは明らか」と述べ、NEIとATENAとのパートナーシップを強めていく姿勢を示した。パネルディスカッションの模様(スクリーン上はアポストラキス氏)パネルディスカッションでは、山口彰氏(原子力安全研究協会理事、モデレーター)、ジョージ・アポストラキス氏(電力中央研究所原子力リスク研究センター所長)、金城慎司氏(原子力規制庁原子力規制企画課長)、水田仁氏(関西電力原子力事業本部長代理)、山本章夫氏(名古屋大学工学部教授)、富岡義博氏(ATENA理事)が登壇。安全性と経済性の両立を巡るリスクコミュニケーションツールの活用、産業界と規制当局との対話などをテーマに意見が交わされた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 21 Feb 2023
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規制委 高経年化プラントの評価に関し検討チームを設置
原子力規制委員会は2月15日の定例会合で、高経年化した原子力発電プラントの安全規制に関する検討チームの設置を決定した。同委では昨秋より、資源エネルギー庁による運転期間見直しに係る検討を見据え、高経年化プラントの安全規制に関する新たな制度設計を議論。去る2月13日の臨時会合で、新制度の概要および関連法改正案について決定した。新制度は、運転期間の規定にかかわらず、運転開始から30年を超える際、事業者に対し、10年以内ごとに、安全上重要な機器類の劣化を管理するための「長期施設管理計画」(仮称)の策定を義務付け、認可を受けなければ運転延長できないというもの。一方、資源エネルギー庁では昨年末、「現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、一定の停止期間(東日本大震災以降の法制度の変更など、事業者が予見しがたい事由によるもの)に限り、追加的な延長を認める」(いわゆる「時計を止める」)との方向性を示している。規制委員会が新設する検討チームは、プラント審査を担当する杉山智之委員を中心に、原子力規制庁の職員らで構成。具体的な検討スケジュールについては示されていないが、原則、一般公開のもと、事業者からのヒアリングも行いながら議論していく。15日の会合後の記者会見で、山中伸介委員長は、同検討チームの始動に当たり、「まずは劣化とはどのような物理的性質が重要なのかをきちんと整理し、運転期間にかかわらず、今までに取得されてきたデータ・評価手法がどのようなもので、何をどこまで評価すべきか、チーム内で共通認識を持つ」と強調。わかりやすい情報発信に努めていく考えも述べた。山中委員長は核燃料工学が専門だが、運転開始から60年以降の評価に関し、「個人の意見」として、「運転開始50年と60年でそれほど物理的特性が大きく変わるものではない」との見方を示した上で、関連法案の成立までにある程度の技術的大枠を固める考えを述べた。13日の会合で自然ハザードに係る審査担当の石渡明委員は、運転期間に関する規制委員会の見解を巡り、新制度および関連法改正案の決定に反対。続く15日の会合でも、検討チームの設置について、「必要あれば参加する」としたものの反対を表明した。山中委員長は、今後の技術的議論の中で、引き続き石渡委員に新制度に対する理解を求めていくとしている。
- 16 Feb 2023
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規制委が高経年化原子力発電所の安全規制で新制度案を決定
原子力規制委員会は2月13日に臨時会合を行い、高経年化した原子力発電プラントに関する安全規制について新たな制度案を取りまとめた。資源エネルギー庁において運転期間見直しの検討が進められていることを踏まえ、昨秋より議論してきたもの。運転期間の規定にかかわらず、運転開始から30年を超える際、事業者に対し、10年以内ごとに、安全上重要な機器類の劣化を管理するための「長期施設管理計画」(仮称)の策定を義務付け、認可を受けなければ運転できないという仕組み。〈規制委発表資料は こちら〉総合資源エネルギー調査会では昨年末、「現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、一定の停止期間(東日本大震災発生後の法制度の変更など、事業者が予見しがたい事由によるもの)に限り、追加的な延長を認める」(いわゆる、審査期間中は「時計を止める」)との方向性を示しており、2月10日閣議決定の「GX実現に向けた基本方針」にも盛り込まれている。今回の規制委による新制度案取りまとめにより、運転期間見直しに係る利用政策側と規制側、双方の考え方が出そろい、今後、2月下旬にも関連法案が閣議決定される見通し。規制委員会では、12月22日より新たな制度案に対するパブリックコメントを実施。去る2月8日の定例会合で約1,700件寄せられた提出意見に対する考え方を整理した上で、決定が諮られたが、石渡明委員の反対により継続審議となった。13日の臨時会合では、関連法改正案の条文も合わせて再度決定が諮られたが、同委員は運転期間のあり方に関して「規制委員会が意見を述べる事柄ではない」ことを明記した委員会見解(2020年7月)の決定プロセスに係る疑義などを主張し反対。他4名の委員長・委員による賛成多数で決定となった。石渡委員は、審査の長期化に伴う機器類の劣化進展や事業者との対応における公正さ維持に懸念を示したほか、運転開始から60年以降の規制に係る方針が不明確なことも指摘。今回、新制度案の取りまとめに際し事業者との意見交換を主導した杉山智之委員は、「規制の全体像に対する整理・説明が足りなかった」と、議論の進め方の拙速さを内省。原子炉安全工学専門でプラント審査を担当する立場から、今後、詳細な技術基準の策定を着実に進めていくとともに、審査期間の引き延ばしなど、審査の公正さに対する支障をきたさぬよう厳正な姿勢で臨む考えを示した。山中伸介委員長は、「運転期間がどうあれ、われわれの任務は安全規制をしっかり行っていくこと」と述べ、個々のプラントごとに厳正な技術的判断を行う規制委員会としての姿勢を改めて強調。運転開始から60年以降の規制に関しては、「今後、10年ごとの審査で精度を上げていく」とし、必要な物理的データの取得・評価で担保できるとの考えを示した。会合終了後の記者会見で、新制度案について、地質学が専門で自然ハザードに係る審査を担当している石渡委員の賛同が得られなかったことについては、「分野の違いが原因ではない」と明言。引き続き同委員に対し理解を求めていくとした。また、「運転期間は安全規制ではない」との考えを強調。今回、示された関連法改正案で、40年の運転期間および延長認可に関しては、原子炉等規制法から電気事業法(経済産業相の認可事項)に移管されている。
- 14 Feb 2023
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高経年化炉の安全規制で新たな仕組み 運転期間延長見据え
原子力規制委員会は12月21日の定例会合で、高経年化した原子力発電プラントに関する新たな安全規制の仕組みを取りまとめた。資源エネルギー庁による運転期間の見直しに係る検討を受け、現行の「40年+20年」の上限を超えて運転する可能性を見据え、今後必要となる安全規制の整備について定例会合の場で集中議論を行ってきたもの。〈規制委発表資料は こちら〉新たな安全規制の仕組みは、現行の高経年化技術評価と運転期間延長認可の両制度を統合するもので、運転開始後30年を超えて運転しようとする場合、先々10年以内ごとに、施設の劣化を管理するための「長期施設管理計画」(仮称)の策定を事業者に義務付け、規制委員会が認可。同計画に従って講ずべき措置の実施状況は規制検査の対象とする。今後、パブリックコメントに付すとともに、26日を皮切りに事業者との意見交換を実施した上で正式決定し、原子炉等規制法改正案が年明けの通常国会に提出となる運び。運転期間の見直しについては、16日に行われた総合資源エネルギー調査会において、「現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、新規制基準適合性審査に伴う停止期間などを除外し、追加的な延長を認める」との考え方が示されている。また、同定例会合では、IAEAの国際核物質防護サービス(IPPAS)ミッションの2024年半ば頃の受入れをIAEAに対し正式要請することが了承された。IPPASは、IAEA加盟国からの要請に基づき、核セキュリティに関する視察・ヒアリングを実施し助言などを行うもので、日本では2015、18年の受入れ実績がある。山中伸介委員長は就任から1か月後の10月26日、今後の重点的取組の一つとして、国際機関による外部評価を掲げている。
- 21 Dec 2022
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規制委とOECD/NEA 「福島第一原子力発電所事故後10年の規制活動」でシンポ
「福島第一原子力発電所事故後10年の規制活動」について話し合う原子力規制委員会とOECD/NEAによるシンポジウムが11月28日、都内ホテルで開幕した。国内外の政府・規制当局、電力事業者、大学・学会、地方自治体などから約200名が参集。29日までの2日間、原子力規制を巡り、自然災害への対応、信頼構築・透明性確保、ジェンダーバランスなど、今後取り組むべき課題について議論する。開会に際し基調講演を行った規制委員会の山中伸介委員長は、2012年の発足から9月で10年を迎えた同委のこれまでの活動を振り返り、「信頼回復のための10年だったといっても過言ではない」と強調。規制の継続的改善に関し、2016年のIAEA総合規制評価サービス(IRRS)受入れを踏まえ自身が主導した新検査制度の導入を例示しながら、「ゴールなどない」と述べ、今後も怠りなく取り組んでいく姿勢を示した。また、OECD/NEAのウィリアム・マグウッド事務局長は、福島第一原子力発電所事故後の世界における原子力規制の改善に関し、「既に延べ何百万時間にも及ぶ様々な努力が注がれ、本当に時代が転換した」と振り返った。同事故から得た自然ハザードに備えレジリエンスを図る教訓を、「『起こらない』と思ったことが来週にも起きるかもしれない。想定しておくことが大事なのだ」と強調。さらに、「人間が最後の深層防護」とも述べ、規制に係るヒューマンリソースやステークホルダー関与の重要性も訴えかけた。今回のシンポジウムには、日本の他、カナダ、フィンランド、フランス、ドイツ、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国の規制機関が参集。マグウッド事務局長は、「原子力規制で一番変革したのは、世界中の規制者が連携するようになったことだ」と述べ、2日間の議論が有意義なものとなるよう期待した。
- 28 Nov 2022
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原子力規制委員会・山中委員長が日本記者クラブで会見
原子力規制委員会の山中伸介委員長は11月21日、日本記者クラブで記者会見を行い、9月に2012年の発足から10年を迎えた同委のこれまでの取組と今後のあり方について述べた。山中委員長はまず、2011年に発生した福島第一原子力発電所事故に関し、「長年、原子力に携わってきたものとして、『痛恨の極み』であり、『なぜあのような事故を防ぐことができなかったのか』という大いなる後悔と反省の気持ちを今も持ち続けている」と述べ、これを原点に原子力規制のさらなる改善に向けて「変化を恐れず」に取り組んでいく考えを強調。続けて、新規制基準の策定・適合性審査、新検査制度の運用開始、福島第一原子力発電所事故の調査・分析など、10年間の取組について説明。福島第一原子力発電所の廃炉については、これまでの緊急措置的な対応から今後の10年に向け、「放射性物質で汚染された様々な物質の分析・分類・保管を着実にかつ安全に、社会的影響にも十分配慮して進めていく必要がある」と述べた。原子力発電所の運転期間延長に関して、山中委員長は、規制委員会が2020年7月に示した「運転期間のあり方は、原子力利用に関する政策判断にほかならず、当委員会が意見を述べるべき事柄ではない」との見解を改めて明言。これを前提に規制側として、「必要な安全規制を継続して実施できるようにする」ための制度設計に向けて準備を進めているとし、現在、検討中の新たな安全規制制度案について説明した。現行の高経年化技術評価制度と運転期間延長認可制度を統合するもので、規制委員会が運転開始から10年以内ごとに事業者に対し策定を義務付ける「長期施設管理計画」を審査し認可されたプラントが運転を継続できるよう法整備を図る。運転期間延長に関する記者からの質問に対し、山中委員長は、「高経年化した原子炉の規制に抜けがあってはならない」と、独立した立場から厳正に審査を行う考えを繰り返し強調。海外の原子力発電所の実績にも鑑み長期運転に係るデータの信頼性について指摘されたのに対し、「各国で様々な取組があるが、われわれ独自の安全規制を図っていきたい」と応えた。
- 22 Nov 2022
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規制委 高経年化プラントの安全規制で新たな制度案示す
原子力規制委員会は11月2日の定例会合で、高経年化した原子力発電プラントに関する安全規制の検討に向け、現行の運転期間延長認可と高経年化技術評価の2者を統合する新たな制度案を示した。運転期間の延長が「原子力政策の今後の進め方」((8月24日GX実行会議に経済産業相提出の「日本のエネルギーの安定供給の再構築」に記載))の中で課題の一つにあがったことから、現在、総合資源エネルギー調査会で検討が進められているが、今後、60年を超えて運転する可能性も見据え、規制側として制度設計の準備を進めるもの。規制委員会は10月15日の定例会合で、資源エネルギー庁よりヒアリングを行い、「運転期間に係る方針は利用政策側の法体系の中で検討される。規制側としては、高経年化した原子炉の安全確認のための規制について明確化する」ことを確認。原子力規制庁に対し今後の制度設計に係る指示を出していた。国内発電炉の経年数一覧(原子力規制庁発表資料より引用)新たな制度案では、運転開始から30年以降、10年を超えない期間ごとに、安全上重要な機器の劣化状況を把握し経年劣化に関する技術的評価を行うとともに、その評価結果に基づいて施設の劣化を管理する「長期施設管理計画」を策定することを事業者に対し義務付ける。同計画の認可を受けずに運転した場合は設置許可取り消しもあり得るというもの。運転期間の上限については言及していない。委員・規制庁の間では、経年劣化といわゆる「設計の古さ」との相違や、新規制基準に未適合のプラントの扱いに関して議論となり、引き続き検討を深めていくこととなった。山中伸介委員長は、会合終了後の記者会見で、「現行制度よりはるかに厳しい高経年化炉に対する規制となる」と繰返し強調。制度の大枠については年内に固める考えを述べた。
- 04 Nov 2022
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原子力委員会と規制委員会が意見交換 現委員長で初
原子力委員会と原子力規制委員会との意見交換が10月28日に行われた。両者が公開の場で意見交換を行うのはおよそ5年ぶり、3回目で、それぞれ上坂充委員長、山中伸介委員長の就任後では初となる。〈配布資料は こちら〉意見交換ではまず、原子力委員会側が2017年に閣議決定された「原子力利用の基本的考え方」の改定に向けた検討状況、および2022年5月に同委が取りまとめた「医療用等ラジオアイソトープ(RI)製造・利用推進アクションプラン」について説明。上坂委員長は、規制委員会に対し、審査の効率化に向けた取組の継続や、原子炉の長期運転、次世代革新炉の開発、医療用RI国産化・利用推進に係る規制対応を求めるとともに、質問事項として、安全確保と国民便益のバランスの観点における規制効率化の位置付け外部組織とのコミュニケーションに係る現状認識事業者による自主的な安全性向上の取組に対する評価安全審査におけるリスク情報の活用に関する現状認識と取組状況原子力規制庁職員の人材確保・育成――を提示。これに対し、山中委員長はまず、厳正に規制を行う立場から「『効率化』という言葉には慎重を期しており、『改善』と呼ぶようにしている」と、表現上、誤解を招かぬよう努めていることを繰り返し強調。外部組織との対話については、学協会が提示する技術基準の評価などに関し「できる限り進めていきたい」と、真摯に対応していく考えを示した。また、事業者による自主的な安全性向上の取組については、「安全に対する第一義の責任は事業者にある」とした上で、「自主的な取組をできるだけ促せるようなバックフィット(既に許認可を受けた施設が新知見に基づく規制要求に適合することを確認する)など、今後の安全確保のあり方を考えていきたい」と応えた。人材確保の関連で、原子力委員会の岡田往子委員は、規制庁におけるジェンダー・バランスの改善状況について、最近のOECD/NEAによる調査に言及しながら質問。先の規制委員会定例会合で議題となった「今後の規制委員会の運営方針」の中でも同様の問題意識を示した同委の伴信彦委員は、「一機関だけの努力でできるものではないが、働きやすい職場づくりなど、身近なできることを一つ一つ積み重ねていくこと。現在『小さなことでも形にしていこう』という段階にある」と応えた。次世代革新炉に関する規制対応については、原子力委員より先を見据えた人員の配分・増員を求める意見もあったが、プラント審査を担当する杉山智之委員は「まだ個別に考えることはできない状況。まずは事業者が次にどのようなものを具体的に考えているのか、情報待ちの段階」との認識を示した。
- 31 Oct 2022
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規制委、エネ庁より運転期間延長についてヒア
原子力規制委員会は、10月5日の定例会合で、現在、総合資源エネルギー調査会で検討が進められている原子力政策に関する課題のうち、運転期間延長と廃炉円滑化についてヒアリングを行った。会合では、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の松山泰浩氏が同調査会の原子力小委員会における検討状況を説明。同小委員会では9月22日、原子力政策に関する今後の課題を、再稼働への関係者の総力結集運転期間の延長など、既設原子力発電所の最大活用次世代革新炉の開発・建設再処理・廃炉・最終処分のプロセスの加速化原子力発電所の設備容量見通し(資源エネルギー庁発表資料より引用)――に整理。現行の運転期間制度は、原子炉等規制法上「原子力発電所の運転期間は40年とし、1回に限り、20年延長できる」とされている。松山氏は、現行制度を前提とした場合の原子力発電所の設備容量見通しを図示し、40年運転では2070年に、60年運転でも2090年にはゼロとなることから、「将来的に電力の安定供給に支障をきたす」との懸念を示した。2022年6月には国際エネルギー機関(IEA)が、「安全な形で可能な限り長期に運転を継続するために、既存の原子力発電所の運転延長を承認すべき」との政策勧告を発表している。こうした状況をとらえ、同氏は、「原子力の価値の中で『安全』が一番大事という原則のもとで、運転期間の延長に対応する規制についても見直しが必要」との見方を示した。原子力規制委員会・杉山委員(インターネット中継)これを受け、原子炉安全工学を専門とする杉山智之委員は、「必要性を背景とした運転期間延長が議論されているが、それを根拠として60年超運転などの『お墨付き』を与える規制であってはならない。安全性が確保されなければ、40年プラス20年の運転延長であっても認められない」と指摘。さらに、高経年化評価に関し、「必ずしも個々の材料について性能を確認すればよいのではなく、システムとして、設計のコンセプト自体が古くなっているのをどう見ていくか」などと述べ、今後、不確実性を伴う多くの技術的課題について議論していく必要性を示唆した。山中伸介委員長は、会合終了後の記者会見で、資源エネルギー庁より「運転期間に係る方針は利用政策側の法体系の中で検討される」ことが確認できたとした上で、今後、規制側として、「高経年化した原子炉の安全確認のための規制について明確化する。運転期間にかかわらず、厳正な規制が歪められないよう抜けのない法的仕組みを整備する」と、繰返し強調。原子力規制庁に対し制度設計に向けて指示を出したことを明らかにした。一方、廃炉円滑化について資源エネルギー庁は、原子力小委員会下の廃炉等円滑化ワーキンググループで議論されている中間報告に、2020年代半ば以降の原子力発電所の廃止措置本格化を見据え、日本全体の廃止措置の総合的なマネジメント事業者共通の課題への対応資金の確保・管理・支弁――を担う認可法人の設立を盛り込む見通しであることを説明した。
- 05 Oct 2022
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規制委・山中新委員長が抱負、前代が築いた「信頼回復の山」をさらに
原子力規制委員会の山中伸介委員長が9月26日、就任会見を行い抱負を述べた。同氏は、2017年9月に委員に就任し、主にプラント関係の審査や検査制度の見直しを担当。2012年9月に発足した同委の初代委員長・田中俊一氏、前任の更田豊志氏を引き継ぎ3代目委員長に就任したのに際し、「前代の2人が築いてきた原子力規制の信頼回復に向けた土台は非常に大きいもので、絶対に潰してはならない。今後も原子力規制庁の職員とともに、その土台の上に新たな信頼回復の山が少しでも築いていきたい」と語った。山中委員長は、「『福島第一原子力発電所事故を決して忘れない』という強い気持ちを持ち、独立性・透明性を堅持し、厳正な原子力規制を遂行していく方針に何ら変わりはない」と、規制委員会の組織理念を繰り返し強調。さらに、「『原子力に100%の安全はない』ということを肝に銘じ、慢心することなく謙虚に規制業務を遂行していく」、「原子力規制のさらなる高みを目指し、変化を恐れることなく改善を続ける」と、常に問いかける姿勢を示した上で、今後の規制委員会の運営に向け、情報発信と対話現場重視の規制規制に関する人材育成――について、近く議論を開始することを明言。また、任期中に核セキュリティと原子力安全に関し、国際機関による外部評価を受ける意向を示した。直近の課題である東京電力柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に係る不適切事案については、組織文化・マネジメントの改善状況に係る見極めの難しさに言及。その上で、「およそ半年程度で委員会での議論ができるのでは」と、同発電所に関し発出されている是正措置命令の解除に向けた見通しを示した。現在、設計・工事計画認可の審査が大詰めとなっている日本原燃六ヶ所再処理工場に関しては、事業者による審査対応の改善を認めつつも、これまで繰り返されてきたしゅん工時期の延期などから、「スケジュール管理に甘さがあるのでは」と指摘。審査完了時期については「見通せない」とした。福島第一原子力発電所の廃炉に向けては、「汚染物の処理・安定化が非常に大事な作業となる。燃料デブリの取り出しは、まず状態を知ることが第一歩」などと述べ、今後、分析作業に係る取組が重要となるものと認識。昨今のエネルギー政策に係る動きに関連し、山中委員長は、「安全に係る第一義的責任は事業者にある。事業者による自主的な改善の取組を阻害する規制であってはならない」、さらに、「エネルギー安全保障を進める『車の両輪』のうち、原子力規制は原子力施設を安全に運用するための『片輪』だと考える」と述べ、推進側とは別に規制側として厳正な姿勢で臨むことを改めて強調した。会見を行う杉山委員また、委員長の交替に伴い、新たに杉山智之委員が就任(山中委員長の就任に伴う委員としての後任で、残任期間〈2025年9月まで〉が任期となる)。同氏は、日本原子力研究開発機構で約30年にわたり主に原子炉の安全性に係る研究に従事し、原子力規制庁への出向経験もある。規制委員会について「2012年の発足当初からずっと経緯を見てきた」とする杉山委員は、既成路線の踏襲とともに「技術的に原子力規制を発展させる」必要性を明言。一例として、事故耐性燃料の導入を「自身の経験を活かせる分野」としてあげる一方、海外の研究炉でしか照射試験が行われてこなかった経緯に忸怩たる思いを述べるなど、国内の安全研究基盤を強化する必要性を示唆した。事故耐性燃料は、燃料の被覆管を金属でコーティングすることなどにより、事故時の事象進展を遅らせ水素発生を抑える安全性を高めた燃料で、国内外で開発が進められている。〈委員長・各委員のプロフィールは こちら〉
- 27 Sep 2022
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規制委・更田委員長が最終会見、発足からの10年間を振り返る
原子力規制委員会の更田豊志委員長が9月21日をもって任期満了となり、同日の定例会合後の委員長記者会見(毎週水曜午後に開催)が折しも最後の会見となった。日本原子力研究開発機構で原子炉の安全研究に従事し、旧原子力安全・保安院の高経年化ワーキンググループなどにも参画していた同氏は、委員会発足時の2012年9月、「原子炉に最も近い立場」として委員に選任。主にプラント関係の審査を担当した後、2017年9月に初代委員長の田中俊一氏を引き継いで2代目委員長に就任。都合10年間にわたり委員・委員長を務めた更田委員長は、退任に当たっての所感を問われたのに対し、「率直なところ実感がない。任期を終えるまで、一旦事故が起きれば自身が指揮を執らねばならない。振り返れるようになるのは退任してから」と繰り返し述べ、後任の委員長となる山中伸介委員に常時携行する「防災携帯電話」を引き渡すまで、緊張感を緩めず職務を全うする姿勢を示した(新委員長就任は認証の関係で26日の予定)。規制委員会は9月19日に発足から10年を迎えている。更田委員長は、同委発足時から持ち続けていた意識として、「『規制の虜』になってはならない」、「『安全神話』の復活を許してはならない」の2点をあげ、「その姿勢を貫くことはできたが、緩んだらまた逆戻りする。ずっと注意し続けることが必要」と強調。さらに、委員に就任してから最初の1、2年を振り返り、「新規制基準の策定およびこれに基づく適合性審査を開始した頃(2013年7月)、時間的にも仕事の密度的にも最も厳しい時期ではあったが、自身にとって最も印象に残っている」とした。これまでに審査が申請された原子力発電プラントは計27基で、そのうち再稼働に至ったのは10基。現在も10基が審査途上にあり、新規制基準策定当初から約9年の審査期間を経過したプラントもあるが、更田委員長は「基数を斟酌するものではない」と、予断を持たずに審査に当たってきたこと明言した。直近の課題である東京電力柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に係る不適切事案に関しては、セキュリティ上、情報公開が限られる特殊性にも言及し、「規制側も改めるところが多々あることに気付かされた」と述べ、一例として、追認に甘んじず常に問いかけ続けることの重要性を、「『ちゃぶ台返し』を恐れてはいけない」と、改めて強調。同発電所については現在、法令に基づく是正措置命令を発出し追加検査を進めているが、更田委員長は、「トップマネジメントに関しては明らかに改善の兆しがみられる。是非、この危機感を組織全体に浸透させ改善を進めて欲しい」と期待した。また、今後の課題として、現行の運転期間制度に関連し、審査期間をカウントしないいわゆる「時計を止める」に関して問われたのに対し、「個々の炉によって耐震性など、様々な条件が異なる。高経年化対策の有効性は個別にみるしかない」と回答。次世代革新炉の規制に向けては、各国の動向をウォッチしているとしながらも、「まだ日本では事業者からの発信は何もない。炉型によって千差万別で、まったくアプローチが異なる。個別の炉型に係る提案があって要求水準の策定に当たることとなる」とした。さらに、現在、設計・工事計画認可の審査が進められている日本原燃六ヶ所再処理工場に関連し、使用済燃料の発生量などを踏まえ、将来的に第二再処理工場を検討する必要性を示唆。福島第一原子力発電所の廃炉については、固体廃棄物の保管管理を例に「まだまだこれから難しい問題が残っている」と述べ、引き続き注視していく考えを示した。規制に携わる人材確保に関し、更田委員長は、「技術的能力は最も重要な『基本中の基本』で、発足時に比べ格段に伸びている」とする一方、原子力界全体の課題として採用の難しさを憂慮。「事故の分析を続けることも若手を惹きつける一つの有効な手段」と述べ、地道に取り組んでいく必要性を強調した。
- 22 Sep 2022
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規制委、審査の効率化に向け対応方針示す
原子力規制委員会は9月7日の定例会合で、今後の新規制基準適合性審査に係る審査効率化に関し、事業者から示された提案も踏まえ、できるだけ早い段階での確認事項や論点の提示公開の場における「審査の進め方」に関する議論および共有審査会合における論点や確認事項の書面による事前通知原子力規制委員または原子力規制庁職員の現地確認の機会を増加基準や審査ガイドの内容の明確化――を図っていく対応方針を概ね了承した。規制委員会では、公開の場において事業者の経営トップらを招き安全性向上に係る取組について意見交換を順次実施。2022年度は、4月に北海道電力と、その後、4か月のブランクを挟んで8月以降、東北電力、電源開発、中部電力、北陸電力と、主に審査の効率化を焦点に意見交換を行っている。審査に関しては、2013年に新規制基準が策定された後、これまでに計27基についてその適合性に係る申請がなされており、現在10基が審査中。最も新しい中国電力島根3号機でも8月10日に申請から4年が経過したところだ。審査をクリアし再稼働したのは10基。7基が設置変更許可に至るも安全・防災対策や地元の理解などが対応途上のため再稼働していない状況。8月以降に行われた同委との意見交換で、東北電力は、女川2号機(2020年2月設置変更許可)の約6年間にわたった審査を振り返り、東京電力柏崎刈羽6・7号機、日本原子力発電東海第二に係る集中審査に伴い中断期間が生じたことをあげ、「自ら提示したスケジュール通りに審査資料の準備・提出ができなかった」、「審査対象の早期決定と審査リソースの充実化が課題」などと問題提起。電源開発は大間(建設中)の審査効率化に向け、厳しい気象条件や交通事情について懸念が示されたが、「現地状況の認識の共有は、審査において理解促進につながる」として、現地確認の活用を要望。中部電力は浜岡3・4号機の並行審査の合理性を主張した。事業者との意見交換の中で、地震・津波関連の審査を担当する石渡明委員は、地質調査に関し「掘ってみなければわからない」として、サイトごとに異なる審査の予見可能性確保の難しさを指摘。更田豊志委員長は、7日の会合で、自然ハザードに係る対応に関し、審査過程で新たな立証材料が求められる可能性を繰り返し強調した上で、「なぜ審査期間が伸びるのかを詳らかにすべき」などと述べた。審査の効率化に向けて、審査会合の柔軟な設定も改善の方向性として委員間で概ね一致したが、基準や審査ガイドの内容の明確化について、更田委員長は予断を持った審査に陥ることに危惧を示した。
- 07 Sep 2022
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2023年度政府概算要求が出揃う
2023年度の政府概算要求が8月31日までに各省庁より出揃った。経済産業省は、エネルギー対策特別会計として、対前年度比15%増となる8,273億円を計上。「原子力の安全性向上に資する技術開発事業」で32.5億円(対前年度比39%増)、「原子力産業基盤強化事業」で24.0億円(同約2倍)、「高速炉に係る共通基盤のための技術開発委託費」で55.9億円(同29%増)と、いずれも増額の要求。引き続き、原子力産業の人材・技術・産業基盤の維持・強化、米仏との協力を通じた高速炉などの基盤技術開発を進めていく。今後の予算編成過程で金額の検討を行う事項要求としては、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策関連で「長期にわたるALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の海洋放出に伴う水産業における影響を乗り越えるための施策」などがあげられた。文部科学省は、原子力分野の研究開発・人材育成に関する取組として、対前年度比24%増となる1,826億円を計上。高温ガス炉に係る研究開発の推進など、革新的な技術開発に向けた取組で235億円(対前年度比約2.5倍)、バックエンド対策で676億円(同23%増)を要求。原子力科学技術に係る多様な研究開発の推進では53億円(同38%増)を計上しており、日本原子力研究開発機構の「JRR-3」と「常陽」を活用した医療用ラジオアイソトープの製造技術開発・実証にも取り組む。原子力規制委員会は、対前年度比22%増となる721億円を計上。「原子力発電施設等緊急時対策通信設備等整備事業」、「放射線監視等交付金」で、いずれも前年度より30億円超の大幅な増額要求となっている。この他、環境省は除染に伴い発生する土壌・廃棄物の中間貯蔵関連事業として1,786億円(対前年度比10%減)、内閣府は原子力防災対策の充実・強化として166億円(同58%増)をそれぞれ計上している。
- 02 Sep 2022
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三菱原子燃料、PWR燃料加工施設の運転再開へ
三菱原子燃料は8月23日、PWR燃料集合体などを製造する同社の加工施設(最大処理能力440トンU/年、東海村)に係る新規制基準適合性審査において、再稼働に向けた最終段階となる使用前検査合格証および使用前確認証を19日に原子力規制委員会より受領したと発表した。今後、生産に向けて準備を進め燃料製造を再開する。〈三菱原子燃料発表資料は こちら〉三菱原子燃料は2014年1月に規制委員会に対し本件の審査を申請。2017年11月に事業変更許可を取得した。2021年6月には設計・工事計画認可に係る審査が完了したが、2022年5月に分析装置に関する原子力検査に対する不適切な対応が発覚し運転再開に向けた動きが滞っていた。燃料集合体を組み立てる成型加工施設としては、他に新規制基準適合性審査が行われているグローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン、原子燃料工業東海事業所、同熊取事業所に先んじ、初の運転再開となりそうだ。三菱重工グループでは、「燃料加工施設における安全性向上に取り組み、燃料供給を通じて国内における原子力発電プラントの安定運転に引き続き貢献していく」とコメントしている。
- 24 Aug 2022
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規制委、柏崎刈羽6・7号機の特重施設で原子炉設置変更を許可
原子力規制委員会は8月17日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6・7号機のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)に係る原子炉設置変更許可を正式決定した。BWRでは日本原子力発電東海第二発電所に続き2例目となる。本件は、7月13日に「審査書案」が了承され、経済産業相と原子力委員会への意見照会、およびパブリックコメントに付せられていた。新規制基準で要求される特重施設は、プラント本体施設に係る設計・工事計画認可から5年間が整備猶予期間。現在、柏崎刈羽6、7号機は、いずれも新規制基準のもとで再稼働していないが、7号機については2020年10月、プラント本体施設に係る設計・工事計画認可に至っており、2025年10月に特重施設の整備期限を迎える。一方で、柏崎刈羽原子力発電所では2020年以降、核物質防護に係る不適切事案が発覚したことから、規制委員会は2021年4月、原子炉等規制法に基づき東京電力に対し同発電所における是正措置命令を発出。東京電力では、第三者評価や他電力・業界の外部専門家の指導も取り入れつつ、徹底的な根本原因の究明とともに、核物質防護体制の再構築に努めている。是正措置命令の解除には、柏崎刈羽原子力発電所における規制上の対応区分が「第4区分」((各監視領域における活動目的は満足しているが、事業者が行う安全活動に長期間にわたるまたは重大な劣化がある状態))から「第1区分」((各監視領域における活動目的は満足しており、事業者の自律的な改善が見込める状態))に回復する必要がある。これに関し、更田豊志委員長は、17日の定例記者会見で、9月の任期満了に伴う自身の退任前に公開の場で議論する可能性を示唆した。
- 18 Aug 2022
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