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規制委とOECD/NEA 「福島第一原子力発電所事故後10年の規制活動」でシンポ
「福島第一原子力発電所事故後10年の規制活動」について話し合う原子力規制委員会とOECD/NEAによるシンポジウムが11月28日、都内ホテルで開幕した。国内外の政府・規制当局、電力事業者、大学・学会、地方自治体などから約200名が参集。29日までの2日間、原子力規制を巡り、自然災害への対応、信頼構築・透明性確保、ジェンダーバランスなど、今後取り組むべき課題について議論する。開会に際し基調講演を行った規制委員会の山中伸介委員長は、2012年の発足から9月で10年を迎えた同委のこれまでの活動を振り返り、「信頼回復のための10年だったといっても過言ではない」と強調。規制の継続的改善に関し、2016年のIAEA総合規制評価サービス(IRRS)受入れを踏まえ自身が主導した新検査制度の導入を例示しながら、「ゴールなどない」と述べ、今後も怠りなく取り組んでいく姿勢を示した。また、OECD/NEAのウィリアム・マグウッド事務局長は、福島第一原子力発電所事故後の世界における原子力規制の改善に関し、「既に延べ何百万時間にも及ぶ様々な努力が注がれ、本当に時代が転換した」と振り返った。同事故から得た自然ハザードに備えレジリエンスを図る教訓を、「『起こらない』と思ったことが来週にも起きるかもしれない。想定しておくことが大事なのだ」と強調。さらに、「人間が最後の深層防護」とも述べ、規制に係るヒューマンリソースやステークホルダー関与の重要性も訴えかけた。今回のシンポジウムには、日本の他、カナダ、フィンランド、フランス、ドイツ、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国の規制機関が参集。マグウッド事務局長は、「原子力規制で一番変革したのは、世界中の規制者が連携するようになったことだ」と述べ、2日間の議論が有意義なものとなるよう期待した。
- 28 Nov 2022
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原子力規制委員会・山中委員長が日本記者クラブで会見
原子力規制委員会の山中伸介委員長は11月21日、日本記者クラブで記者会見を行い、9月に2012年の発足から10年を迎えた同委のこれまでの取組と今後のあり方について述べた。山中委員長はまず、2011年に発生した福島第一原子力発電所事故に関し、「長年、原子力に携わってきたものとして、『痛恨の極み』であり、『なぜあのような事故を防ぐことができなかったのか』という大いなる後悔と反省の気持ちを今も持ち続けている」と述べ、これを原点に原子力規制のさらなる改善に向けて「変化を恐れず」に取り組んでいく考えを強調。続けて、新規制基準の策定・適合性審査、新検査制度の運用開始、福島第一原子力発電所事故の調査・分析など、10年間の取組について説明。福島第一原子力発電所の廃炉については、これまでの緊急措置的な対応から今後の10年に向け、「放射性物質で汚染された様々な物質の分析・分類・保管を着実にかつ安全に、社会的影響にも十分配慮して進めていく必要がある」と述べた。原子力発電所の運転期間延長に関して、山中委員長は、規制委員会が2020年7月に示した「運転期間のあり方は、原子力利用に関する政策判断にほかならず、当委員会が意見を述べるべき事柄ではない」との見解を改めて明言。これを前提に規制側として、「必要な安全規制を継続して実施できるようにする」ための制度設計に向けて準備を進めているとし、現在、検討中の新たな安全規制制度案について説明した。現行の高経年化技術評価制度と運転期間延長認可制度を統合するもので、規制委員会が運転開始から10年以内ごとに事業者に対し策定を義務付ける「長期施設管理計画」を審査し認可されたプラントが運転を継続できるよう法整備を図る。運転期間延長に関する記者からの質問に対し、山中委員長は、「高経年化した原子炉の規制に抜けがあってはならない」と、独立した立場から厳正に審査を行う考えを繰り返し強調。海外の原子力発電所の実績にも鑑み長期運転に係るデータの信頼性について指摘されたのに対し、「各国で様々な取組があるが、われわれ独自の安全規制を図っていきたい」と応えた。
- 22 Nov 2022
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規制委 高経年化プラントの安全規制で新たな制度案示す
原子力規制委員会は11月2日の定例会合で、高経年化した原子力発電プラントに関する安全規制の検討に向け、現行の運転期間延長認可と高経年化技術評価の2者を統合する新たな制度案を示した。運転期間の延長が「原子力政策の今後の進め方」((8月24日GX実行会議に経済産業相提出の「日本のエネルギーの安定供給の再構築」に記載))の中で課題の一つにあがったことから、現在、総合資源エネルギー調査会で検討が進められているが、今後、60年を超えて運転する可能性も見据え、規制側として制度設計の準備を進めるもの。規制委員会は10月15日の定例会合で、資源エネルギー庁よりヒアリングを行い、「運転期間に係る方針は利用政策側の法体系の中で検討される。規制側としては、高経年化した原子炉の安全確認のための規制について明確化する」ことを確認。原子力規制庁に対し今後の制度設計に係る指示を出していた。国内発電炉の経年数一覧(原子力規制庁発表資料より引用)新たな制度案では、運転開始から30年以降、10年を超えない期間ごとに、安全上重要な機器の劣化状況を把握し経年劣化に関する技術的評価を行うとともに、その評価結果に基づいて施設の劣化を管理する「長期施設管理計画」を策定することを事業者に対し義務付ける。同計画の認可を受けずに運転した場合は設置許可取り消しもあり得るというもの。運転期間の上限については言及していない。委員・規制庁の間では、経年劣化といわゆる「設計の古さ」との相違や、新規制基準に未適合のプラントの扱いに関して議論となり、引き続き検討を深めていくこととなった。山中伸介委員長は、会合終了後の記者会見で、「現行制度よりはるかに厳しい高経年化炉に対する規制となる」と繰返し強調。制度の大枠については年内に固める考えを述べた。
- 04 Nov 2022
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原子力委員会と規制委員会が意見交換 現委員長で初
原子力委員会と原子力規制委員会との意見交換が10月28日に行われた。両者が公開の場で意見交換を行うのはおよそ5年ぶり、3回目で、それぞれ上坂充委員長、山中伸介委員長の就任後では初となる。〈配布資料は こちら〉意見交換ではまず、原子力委員会側が2017年に閣議決定された「原子力利用の基本的考え方」の改定に向けた検討状況、および2022年5月に同委が取りまとめた「医療用等ラジオアイソトープ(RI)製造・利用推進アクションプラン」について説明。上坂委員長は、規制委員会に対し、審査の効率化に向けた取組の継続や、原子炉の長期運転、次世代革新炉の開発、医療用RI国産化・利用推進に係る規制対応を求めるとともに、質問事項として、安全確保と国民便益のバランスの観点における規制効率化の位置付け外部組織とのコミュニケーションに係る現状認識事業者による自主的な安全性向上の取組に対する評価安全審査におけるリスク情報の活用に関する現状認識と取組状況原子力規制庁職員の人材確保・育成――を提示。これに対し、山中委員長はまず、厳正に規制を行う立場から「『効率化』という言葉には慎重を期しており、『改善』と呼ぶようにしている」と、表現上、誤解を招かぬよう努めていることを繰り返し強調。外部組織との対話については、学協会が提示する技術基準の評価などに関し「できる限り進めていきたい」と、真摯に対応していく考えを示した。また、事業者による自主的な安全性向上の取組については、「安全に対する第一義の責任は事業者にある」とした上で、「自主的な取組をできるだけ促せるようなバックフィット(既に許認可を受けた施設が新知見に基づく規制要求に適合することを確認する)など、今後の安全確保のあり方を考えていきたい」と応えた。人材確保の関連で、原子力委員会の岡田往子委員は、規制庁におけるジェンダー・バランスの改善状況について、最近のOECD/NEAによる調査に言及しながら質問。先の規制委員会定例会合で議題となった「今後の規制委員会の運営方針」の中でも同様の問題意識を示した同委の伴信彦委員は、「一機関だけの努力でできるものではないが、働きやすい職場づくりなど、身近なできることを一つ一つ積み重ねていくこと。現在『小さなことでも形にしていこう』という段階にある」と応えた。次世代革新炉に関する規制対応については、原子力委員より先を見据えた人員の配分・増員を求める意見もあったが、プラント審査を担当する杉山智之委員は「まだ個別に考えることはできない状況。まずは事業者が次にどのようなものを具体的に考えているのか、情報待ちの段階」との認識を示した。
- 31 Oct 2022
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規制委、エネ庁より運転期間延長についてヒア
原子力規制委員会は、10月5日の定例会合で、現在、総合資源エネルギー調査会で検討が進められている原子力政策に関する課題のうち、運転期間延長と廃炉円滑化についてヒアリングを行った。会合では、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の松山泰浩氏が同調査会の原子力小委員会における検討状況を説明。同小委員会では9月22日、原子力政策に関する今後の課題を、再稼働への関係者の総力結集運転期間の延長など、既設原子力発電所の最大活用次世代革新炉の開発・建設再処理・廃炉・最終処分のプロセスの加速化原子力発電所の設備容量見通し(資源エネルギー庁発表資料より引用)――に整理。現行の運転期間制度は、原子炉等規制法上「原子力発電所の運転期間は40年とし、1回に限り、20年延長できる」とされている。松山氏は、現行制度を前提とした場合の原子力発電所の設備容量見通しを図示し、40年運転では2070年に、60年運転でも2090年にはゼロとなることから、「将来的に電力の安定供給に支障をきたす」との懸念を示した。2022年6月には国際エネルギー機関(IEA)が、「安全な形で可能な限り長期に運転を継続するために、既存の原子力発電所の運転延長を承認すべき」との政策勧告を発表している。こうした状況をとらえ、同氏は、「原子力の価値の中で『安全』が一番大事という原則のもとで、運転期間の延長に対応する規制についても見直しが必要」との見方を示した。原子力規制委員会・杉山委員(インターネット中継)これを受け、原子炉安全工学を専門とする杉山智之委員は、「必要性を背景とした運転期間延長が議論されているが、それを根拠として60年超運転などの『お墨付き』を与える規制であってはならない。安全性が確保されなければ、40年プラス20年の運転延長であっても認められない」と指摘。さらに、高経年化評価に関し、「必ずしも個々の材料について性能を確認すればよいのではなく、システムとして、設計のコンセプト自体が古くなっているのをどう見ていくか」などと述べ、今後、不確実性を伴う多くの技術的課題について議論していく必要性を示唆した。山中伸介委員長は、会合終了後の記者会見で、資源エネルギー庁より「運転期間に係る方針は利用政策側の法体系の中で検討される」ことが確認できたとした上で、今後、規制側として、「高経年化した原子炉の安全確認のための規制について明確化する。運転期間にかかわらず、厳正な規制が歪められないよう抜けのない法的仕組みを整備する」と、繰返し強調。原子力規制庁に対し制度設計に向けて指示を出したことを明らかにした。一方、廃炉円滑化について資源エネルギー庁は、原子力小委員会下の廃炉等円滑化ワーキンググループで議論されている中間報告に、2020年代半ば以降の原子力発電所の廃止措置本格化を見据え、日本全体の廃止措置の総合的なマネジメント事業者共通の課題への対応資金の確保・管理・支弁――を担う認可法人の設立を盛り込む見通しであることを説明した。
- 05 Oct 2022
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規制委・山中新委員長が抱負、前代が築いた「信頼回復の山」をさらに
原子力規制委員会の山中伸介委員長が9月26日、就任会見を行い抱負を述べた。同氏は、2017年9月に委員に就任し、主にプラント関係の審査や検査制度の見直しを担当。2012年9月に発足した同委の初代委員長・田中俊一氏、前任の更田豊志氏を引き継ぎ3代目委員長に就任したのに際し、「前代の2人が築いてきた原子力規制の信頼回復に向けた土台は非常に大きいもので、絶対に潰してはならない。今後も原子力規制庁の職員とともに、その土台の上に新たな信頼回復の山が少しでも築いていきたい」と語った。山中委員長は、「『福島第一原子力発電所事故を決して忘れない』という強い気持ちを持ち、独立性・透明性を堅持し、厳正な原子力規制を遂行していく方針に何ら変わりはない」と、規制委員会の組織理念を繰り返し強調。さらに、「『原子力に100%の安全はない』ということを肝に銘じ、慢心することなく謙虚に規制業務を遂行していく」、「原子力規制のさらなる高みを目指し、変化を恐れることなく改善を続ける」と、常に問いかける姿勢を示した上で、今後の規制委員会の運営に向け、情報発信と対話現場重視の規制規制に関する人材育成――について、近く議論を開始することを明言。また、任期中に核セキュリティと原子力安全に関し、国際機関による外部評価を受ける意向を示した。直近の課題である東京電力柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に係る不適切事案については、組織文化・マネジメントの改善状況に係る見極めの難しさに言及。その上で、「およそ半年程度で委員会での議論ができるのでは」と、同発電所に関し発出されている是正措置命令の解除に向けた見通しを示した。現在、設計・工事計画認可の審査が大詰めとなっている日本原燃六ヶ所再処理工場に関しては、事業者による審査対応の改善を認めつつも、これまで繰り返されてきたしゅん工時期の延期などから、「スケジュール管理に甘さがあるのでは」と指摘。審査完了時期については「見通せない」とした。福島第一原子力発電所の廃炉に向けては、「汚染物の処理・安定化が非常に大事な作業となる。燃料デブリの取り出しは、まず状態を知ることが第一歩」などと述べ、今後、分析作業に係る取組が重要となるものと認識。昨今のエネルギー政策に係る動きに関連し、山中委員長は、「安全に係る第一義的責任は事業者にある。事業者による自主的な改善の取組を阻害する規制であってはならない」、さらに、「エネルギー安全保障を進める『車の両輪』のうち、原子力規制は原子力施設を安全に運用するための『片輪』だと考える」と述べ、推進側とは別に規制側として厳正な姿勢で臨むことを改めて強調した。会見を行う杉山委員また、委員長の交替に伴い、新たに杉山智之委員が就任(山中委員長の就任に伴う委員としての後任で、残任期間〈2025年9月まで〉が任期となる)。同氏は、日本原子力研究開発機構で約30年にわたり主に原子炉の安全性に係る研究に従事し、原子力規制庁への出向経験もある。規制委員会について「2012年の発足当初からずっと経緯を見てきた」とする杉山委員は、既成路線の踏襲とともに「技術的に原子力規制を発展させる」必要性を明言。一例として、事故耐性燃料の導入を「自身の経験を活かせる分野」としてあげる一方、海外の研究炉でしか照射試験が行われてこなかった経緯に忸怩たる思いを述べるなど、国内の安全研究基盤を強化する必要性を示唆した。事故耐性燃料は、燃料の被覆管を金属でコーティングすることなどにより、事故時の事象進展を遅らせ水素発生を抑える安全性を高めた燃料で、国内外で開発が進められている。〈委員長・各委員のプロフィールは こちら〉
- 27 Sep 2022
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規制委・更田委員長が最終会見、発足からの10年間を振り返る
原子力規制委員会の更田豊志委員長が9月21日をもって任期満了となり、同日の定例会合後の委員長記者会見(毎週水曜午後に開催)が折しも最後の会見となった。日本原子力研究開発機構で原子炉の安全研究に従事し、旧原子力安全・保安院の高経年化ワーキンググループなどにも参画していた同氏は、委員会発足時の2012年9月、「原子炉に最も近い立場」として委員に選任。主にプラント関係の審査を担当した後、2017年9月に初代委員長の田中俊一氏を引き継いで2代目委員長に就任。都合10年間にわたり委員・委員長を務めた更田委員長は、退任に当たっての所感を問われたのに対し、「率直なところ実感がない。任期を終えるまで、一旦事故が起きれば自身が指揮を執らねばならない。振り返れるようになるのは退任してから」と繰り返し述べ、後任の委員長となる山中伸介委員に常時携行する「防災携帯電話」を引き渡すまで、緊張感を緩めず職務を全うする姿勢を示した(新委員長就任は認証の関係で26日の予定)。規制委員会は9月19日に発足から10年を迎えている。更田委員長は、同委発足時から持ち続けていた意識として、「『規制の虜』になってはならない」、「『安全神話』の復活を許してはならない」の2点をあげ、「その姿勢を貫くことはできたが、緩んだらまた逆戻りする。ずっと注意し続けることが必要」と強調。さらに、委員に就任してから最初の1、2年を振り返り、「新規制基準の策定およびこれに基づく適合性審査を開始した頃(2013年7月)、時間的にも仕事の密度的にも最も厳しい時期ではあったが、自身にとって最も印象に残っている」とした。これまでに審査が申請された原子力発電プラントは計27基で、そのうち再稼働に至ったのは10基。現在も10基が審査途上にあり、新規制基準策定当初から約9年の審査期間を経過したプラントもあるが、更田委員長は「基数を斟酌するものではない」と、予断を持たずに審査に当たってきたこと明言した。直近の課題である東京電力柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に係る不適切事案に関しては、セキュリティ上、情報公開が限られる特殊性にも言及し、「規制側も改めるところが多々あることに気付かされた」と述べ、一例として、追認に甘んじず常に問いかけ続けることの重要性を、「『ちゃぶ台返し』を恐れてはいけない」と、改めて強調。同発電所については現在、法令に基づく是正措置命令を発出し追加検査を進めているが、更田委員長は、「トップマネジメントに関しては明らかに改善の兆しがみられる。是非、この危機感を組織全体に浸透させ改善を進めて欲しい」と期待した。また、今後の課題として、現行の運転期間制度に関連し、審査期間をカウントしないいわゆる「時計を止める」に関して問われたのに対し、「個々の炉によって耐震性など、様々な条件が異なる。高経年化対策の有効性は個別にみるしかない」と回答。次世代革新炉の規制に向けては、各国の動向をウォッチしているとしながらも、「まだ日本では事業者からの発信は何もない。炉型によって千差万別で、まったくアプローチが異なる。個別の炉型に係る提案があって要求水準の策定に当たることとなる」とした。さらに、現在、設計・工事計画認可の審査が進められている日本原燃六ヶ所再処理工場に関連し、使用済燃料の発生量などを踏まえ、将来的に第二再処理工場を検討する必要性を示唆。福島第一原子力発電所の廃炉については、固体廃棄物の保管管理を例に「まだまだこれから難しい問題が残っている」と述べ、引き続き注視していく考えを示した。規制に携わる人材確保に関し、更田委員長は、「技術的能力は最も重要な『基本中の基本』で、発足時に比べ格段に伸びている」とする一方、原子力界全体の課題として採用の難しさを憂慮。「事故の分析を続けることも若手を惹きつける一つの有効な手段」と述べ、地道に取り組んでいく必要性を強調した。
- 22 Sep 2022
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規制委、審査の効率化に向け対応方針示す
原子力規制委員会は9月7日の定例会合で、今後の新規制基準適合性審査に係る審査効率化に関し、事業者から示された提案も踏まえ、できるだけ早い段階での確認事項や論点の提示公開の場における「審査の進め方」に関する議論および共有審査会合における論点や確認事項の書面による事前通知原子力規制委員または原子力規制庁職員の現地確認の機会を増加基準や審査ガイドの内容の明確化――を図っていく対応方針を概ね了承した。規制委員会では、公開の場において事業者の経営トップらを招き安全性向上に係る取組について意見交換を順次実施。2022年度は、4月に北海道電力と、その後、4か月のブランクを挟んで8月以降、東北電力、電源開発、中部電力、北陸電力と、主に審査の効率化を焦点に意見交換を行っている。審査に関しては、2013年に新規制基準が策定された後、これまでに計27基についてその適合性に係る申請がなされており、現在10基が審査中。最も新しい中国電力島根3号機でも8月10日に申請から4年が経過したところだ。審査をクリアし再稼働したのは10基。7基が設置変更許可に至るも安全・防災対策や地元の理解などが対応途上のため再稼働していない状況。8月以降に行われた同委との意見交換で、東北電力は、女川2号機(2020年2月設置変更許可)の約6年間にわたった審査を振り返り、東京電力柏崎刈羽6・7号機、日本原子力発電東海第二に係る集中審査に伴い中断期間が生じたことをあげ、「自ら提示したスケジュール通りに審査資料の準備・提出ができなかった」、「審査対象の早期決定と審査リソースの充実化が課題」などと問題提起。電源開発は大間(建設中)の審査効率化に向け、厳しい気象条件や交通事情について懸念が示されたが、「現地状況の認識の共有は、審査において理解促進につながる」として、現地確認の活用を要望。中部電力は浜岡3・4号機の並行審査の合理性を主張した。事業者との意見交換の中で、地震・津波関連の審査を担当する石渡明委員は、地質調査に関し「掘ってみなければわからない」として、サイトごとに異なる審査の予見可能性確保の難しさを指摘。更田豊志委員長は、7日の会合で、自然ハザードに係る対応に関し、審査過程で新たな立証材料が求められる可能性を繰り返し強調した上で、「なぜ審査期間が伸びるのかを詳らかにすべき」などと述べた。審査の効率化に向けて、審査会合の柔軟な設定も改善の方向性として委員間で概ね一致したが、基準や審査ガイドの内容の明確化について、更田委員長は予断を持った審査に陥ることに危惧を示した。
- 07 Sep 2022
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2023年度政府概算要求が出揃う
2023年度の政府概算要求が8月31日までに各省庁より出揃った。経済産業省は、エネルギー対策特別会計として、対前年度比15%増となる8,273億円を計上。「原子力の安全性向上に資する技術開発事業」で32.5億円(対前年度比39%増)、「原子力産業基盤強化事業」で24.0億円(同約2倍)、「高速炉に係る共通基盤のための技術開発委託費」で55.9億円(同29%増)と、いずれも増額の要求。引き続き、原子力産業の人材・技術・産業基盤の維持・強化、米仏との協力を通じた高速炉などの基盤技術開発を進めていく。今後の予算編成過程で金額の検討を行う事項要求としては、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策関連で「長期にわたるALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の海洋放出に伴う水産業における影響を乗り越えるための施策」などがあげられた。文部科学省は、原子力分野の研究開発・人材育成に関する取組として、対前年度比24%増となる1,826億円を計上。高温ガス炉に係る研究開発の推進など、革新的な技術開発に向けた取組で235億円(対前年度比約2.5倍)、バックエンド対策で676億円(同23%増)を要求。原子力科学技術に係る多様な研究開発の推進では53億円(同38%増)を計上しており、日本原子力研究開発機構の「JRR-3」と「常陽」を活用した医療用ラジオアイソトープの製造技術開発・実証にも取り組む。原子力規制委員会は、対前年度比22%増となる721億円を計上。「原子力発電施設等緊急時対策通信設備等整備事業」、「放射線監視等交付金」で、いずれも前年度より30億円超の大幅な増額要求となっている。この他、環境省は除染に伴い発生する土壌・廃棄物の中間貯蔵関連事業として1,786億円(対前年度比10%減)、内閣府は原子力防災対策の充実・強化として166億円(同58%増)をそれぞれ計上している。
- 02 Sep 2022
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三菱原子燃料、PWR燃料加工施設の運転再開へ
三菱原子燃料は8月23日、PWR燃料集合体などを製造する同社の加工施設(最大処理能力440トンU/年、東海村)に係る新規制基準適合性審査において、再稼働に向けた最終段階となる使用前検査合格証および使用前確認証を19日に原子力規制委員会より受領したと発表した。今後、生産に向けて準備を進め燃料製造を再開する。〈三菱原子燃料発表資料は こちら〉三菱原子燃料は2014年1月に規制委員会に対し本件の審査を申請。2017年11月に事業変更許可を取得した。2021年6月には設計・工事計画認可に係る審査が完了したが、2022年5月に分析装置に関する原子力検査に対する不適切な対応が発覚し運転再開に向けた動きが滞っていた。燃料集合体を組み立てる成型加工施設としては、他に新規制基準適合性審査が行われているグローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン、原子燃料工業東海事業所、同熊取事業所に先んじ、初の運転再開となりそうだ。三菱重工グループでは、「燃料加工施設における安全性向上に取り組み、燃料供給を通じて国内における原子力発電プラントの安定運転に引き続き貢献していく」とコメントしている。
- 24 Aug 2022
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規制委、柏崎刈羽6・7号機の特重施設で原子炉設置変更を許可
原子力規制委員会は8月17日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6・7号機のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)に係る原子炉設置変更許可を正式決定した。BWRでは日本原子力発電東海第二発電所に続き2例目となる。本件は、7月13日に「審査書案」が了承され、経済産業相と原子力委員会への意見照会、およびパブリックコメントに付せられていた。新規制基準で要求される特重施設は、プラント本体施設に係る設計・工事計画認可から5年間が整備猶予期間。現在、柏崎刈羽6、7号機は、いずれも新規制基準のもとで再稼働していないが、7号機については2020年10月、プラント本体施設に係る設計・工事計画認可に至っており、2025年10月に特重施設の整備期限を迎える。一方で、柏崎刈羽原子力発電所では2020年以降、核物質防護に係る不適切事案が発覚したことから、規制委員会は2021年4月、原子炉等規制法に基づき東京電力に対し同発電所における是正措置命令を発出。東京電力では、第三者評価や他電力・業界の外部専門家の指導も取り入れつつ、徹底的な根本原因の究明とともに、核物質防護体制の再構築に努めている。是正措置命令の解除には、柏崎刈羽原子力発電所における規制上の対応区分が「第4区分」((各監視領域における活動目的は満足しているが、事業者が行う安全活動に長期間にわたるまたは重大な劣化がある状態))から「第1区分」((各監視領域における活動目的は満足しており、事業者の自律的な改善が見込める状態))に回復する必要がある。これに関し、更田豊志委員長は、17日の定例記者会見で、9月の任期満了に伴う自身の退任前に公開の場で議論する可能性を示唆した。
- 18 Aug 2022
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規制委、福島第一ALPS処理水の取扱いに係る実施計画を認可
原子力規制委員会は7月22日の臨時会議で、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水(トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水)の取扱いに伴う希釈放出設備および関連施設に係る実施計画の変更認可を決定した。ALPS処理水取扱いに係る設備の概要(原子力規制委員会発表資料より引用)同計画は、測定・確認用設備、希釈設備、放水設備からなり、測定・確認用設備では、測定・確認用のタンク群の放射性核種の濃度を均一にした後、試料採取・分析を行い、ALPS処理水であることを確認。ALPS処理水を海水と混合しトリチウム濃度を1,500ベクレル/ℓ(環境へ放出される際の規制基準値の40分の1)未満に希釈した上で放水設備に排水し、沿岸から約1km離れた沖合に放出するというもの。本件に関し、東京電力は2021年12月に規制委員会に対し審査を申請。これを受け、同委では、(1)原子炉等規制法に基づく規制基準を満たすものである(2)ALPS処理水の処分に関する政府方針(2021年4月決定)に則ったものである――との方針に従い、審査・確認を行ってきた。2022年5月18日に審査書案を了承した後、1か月間のパブリックコメントを実施。計1,233件の意見(廃炉工程全般、海洋放出の是非、風評被害の懸念、大学・研究機関が取り組むトリチウム除去技術の可能性など、審査案件に直結しないものも含む)が寄せられ、これら意見への考え方を整理した上で、審査書の正式決定に至った。規制委員会の認可を受け、東京電力は、「引き続き、IAEAのレビュー等に真摯に対応するとともに、実施計画に基づく安全確保や、人と環境への放射線影響など、科学的根拠に基づく正確な情報の国内外への発信、放射性物質のモニタリング強化等、政府の基本方針を踏まえた取組をしっかりと進めていく」とコメント。2023年4月中旬頃の設置完了を目指し、ALPS処理水の取扱いに係る設備の現地据付・組立に着手する運び。また、原産協会は、「事業者はもとより国も環境影響についての対応をわかりやすく丁寧に説明を続けるとともに、国内外に向けては風評の防止のために理解醸成ならびに懸念の解消に努めて欲しい」とする理事長メッセージを発信した。
- 22 Jul 2022
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原子力規制庁・片山長官が就任会見、「初心を忘れず」と
7月1日付で原子力規制庁長官に就任した片山啓氏(前・同次長兼原子力安全人材育成センター所長)が4日、記者会見を行い、「規制委員会の意思決定のサポート、原子力規制の確実な遂行に全力で取り組んでいく」と抱負を述べた。2012年9月の原子力規制委員会・原子力規制庁発足から間もなく10年を迎えるのに際し、片山長官は、新規制基準策定や新検査制度導入など、これまでの取組を振り返った上で、次の10年に向けて、「初心を忘れず、現状に安住せず、変化を恐れず、規制の立場から継続的な原子力の安全性向上を追求していきたい」と強調。同氏は、規制庁の原子力安全人材育成センター所長を3年間務めていたが、「最も大切なリソースは人」と、原子力規制人材の育成・確保を図るとともに職員一人一人が服務規律を遵守し使命感を持って職務に当たる重要性を改めて述べた。福島第一原子力発電所事故発生時、旧原子力安全・保安院で企画調整課長として事故の対応に当たったという片山氏は、(1)情報を集約しプラントの状態を把握した上で、東京電力をサポートすることができなかった(2)マニュアル・システムはあったものの、実効的な住民の防護措置の立案・実行につながらなかった(3)地震・津波による被害に比して、被災した住民を支援する体制の立上げに手間取った――ことを当時の反省点として列挙。「今でも発災時の緊迫した状況がフラッシュバックすることがある」と語る同氏は、「判断を求められたときにジャッジできることが一番大事」と述べ、厳しい事態を想定した意思決定訓練を継続的に実施していく必要性を強調した。座右の銘は学生時代に寄せ書きで記したという「初志貫徹」と、趣味は「私の仕事になっている」としながら休みの日に家族に料理をふるまうことと語った。
- 05 Jul 2022
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規制委、HLW地層処分に関しエネ庁・NUMOよりヒア
原子力規制委員会は6月29日の定例会合で、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の松山泰浩氏、原子力発電環境整備機構(NUMO)の近藤駿介理事長らを招き、高レベル放射性廃棄物(HLW)の地層処分に係る取組についてヒアリングを行った。規制委員会では、処分地選定に向けた寿都町・神恵内村における文献調査開始など、地層処分に係る動きを受け、文献調査に続くプロセスとなる概要調査、精密調査、施設建設(いずれも地域の意見に反して先へは進まない)の地区選定時における「安全確保上少なくとも考慮されるべき事項」(考慮事項)の検討に1月より着手。定例会合の場で随時、集中的に議論し、6月8日には、避けるべき断層、火山、鉱物資源の鉱床などについて整理した考慮事項の案文を取りまとめた。エネ庁・松山電力・ガス事業部長29日の会合で、松山氏は、高レベル放射性廃棄物の地層処分について、「原子力発電を持続的に活用していく上で、必ず解決せねばならない重要な課題」との認識から、NUMOと連携し着実に進めていく姿勢を改めて強調。さらに、「非常に長期間にわたる廃棄物管理を安全かつ実施可能な形で行わねばならない」と、処分事業の特徴を述べた上で、「地域固有の文献データに基づく調査と並行し地域の方々との対話を深めている」と、現状を説明。考慮事項案に関しては、「処分事業に係る安全性評価は地域の安心感の観点からも非常に重要」として、意義あるものとの認識を示した。NUMO・近藤理事長また、近藤理事長は、地層処分に関係する地域の科学的特性を色分けした全国地図「科学的特性マップ」公表(2017年)を契機とする全国での広報活動を引き続き実施し、寿都町・神恵内村においては「対話の場」を通じ情報提供・意見交換に努めていると説明。海外の安全規制機関の取組についても議論となる現状から、日本の規制機関として考慮事項案が示されたことに関し「ありがたく受け止める」と述べた。これに対し、更田豊志委員長は、「これから先、まだまだ長いプロセス。社会とのコミュニケーションは大変重要」と強調。先行する欧州諸国の安全規制機関の動きも参考に「この問題に相応しい関わり方をしていきたい」などと述べた。考慮事項については、7月8日までパブリックコメントに付されている。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 29 Jun 2022
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萩生田経産相、福島第一ALPS処理水に係る規制委「審査書案」了承受け発言
萩生田光一経済産業相は、5月20日の閣議後記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水(トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水)の取扱いに係る設備・関連施設の基本設計について原子力規制委員会が同18日に「審査書案」を了承したことに関し発言。今後のALPS処理水の処分に向け、萩生田経産相は、「国際的専門機関であるIAEAに客観的立場から厳正に確認してもらい、高い透明性をもってその確認結果を発信するとともに、生産者から流通・消費者に至るまで、サプライチェーン全体に対し繰り返し丁寧に説明していく」と述べ、地元を始めとする国民の理解醸成に政府一丸で取り組んでいく姿勢を改めて示した。東京電力では来春のALPS処理水希釈放出設備・関連施設の設置完了を目指している。ALPS処理水の海洋放出開始に関し、萩生田経産相は、「肌感覚で理解度を深めていくものであって、アンケートで『何%の方々が了解した』からとか、投票で決めるといった性格のものではない。一人一人心配している項目は違う」などと述べ、事故発生から11年にわたり積み重ねられた復興の取組が無にならぬよう、風評対策にきめ細かな対応を図っていく考えを繰り返し強調した。規制委員会では、2021年12月に東京電力からの審査申請を受け、原子炉等規制法とALPS処理水の処分に係る政府基本方針(2021年4月決定)に則って審査を実施。18日に了承した「審査書案」については現在、1か月間の意見募集に入っており、寄せられた意見を踏まえ7月中にも正式決定となる運び。東京電力は、「自治体の安全確認、IAEAのレビュー等に真摯に対応するともに、安全を確保した設備設計や運用、科学的根拠に基づく正確な情報の国内外への発信、モニタリング強化など、政府の基本方針を踏まえた取組をしっかりと進めていく」としている(東京電力発表資料は こちら)。また、原産協会の新井史朗理事長は、20日夕方の記者会見で、「東京電力には引き続き安全を確保しながら設備の設計・運用を進めるとともに、周辺地域の方々の不安や懸念を解消してもらうよう努めてもらいたい」とコメントした。
- 20 May 2022
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春の叙勲、桐花大綬章を伊吹文明氏が受章
政府は4月29日、春の叙勲受章者を発表。桐花大綬章を元衆議院議長の伊吹文明氏が受章する。伊吹氏は、2006~07年に文部科学大臣(第1次安倍内閣)を、2007~08年に財務大臣(福田内閣)を務めるなど、政府要職を歴任。資源エネルギー庁で「原子力立国計画」が策定され原子力のプレゼンス向上の機運が高まっていた文科大臣在任当時、高速増殖炉の実証ステップや第二再処理工場の検討など、核燃料サイクルの推進を文教・科学技術行政の立場からリード。2012~14年には衆院議長を務め、2014年11月の解散時、議員らの万歳のタイミングをたしなめたことで話題になった。旭日大綬章を受章する田中氏(2012年、文科省記者団とのインタビューにて)旭日大綬章は、元内閣府科学技術政策担当大臣の竹本直一氏、元文科大臣の田中眞紀子氏、元環境大臣兼内閣府原子力防災担当大臣の山本公一氏他、計11名が受章。竹本氏は内閣府大臣在任中の2020年2月、就任間もないIAEAグロッシー事務局長との会談に臨んだ。田中氏は科学技術庁(現文科省)長官、文科大臣などを歴任。1994~95年の科学技術庁長官在任中、フランスから青森県六ヶ所村への高レベル放射性廃棄物返還輸送の開始(1995年4月)に際し地元対応に尽力。1995年7月には電気事業連合会より要請された新型転換炉(ATR)実証炉計画の見直しに理解を示すなど、原子力政策に係る大きな節目で手腕を発揮した。旭日重光章は、元原子力規制委員会委員長の田中俊一氏、元総務大臣の片山善博氏ら、瑞宝重光章は、元文部科学審議官の林幸秀氏らが受章。田中氏は、2007~09年に原子力委員会委員長代理を、2012~17年には原子力規制委員会の初代委員長を務め、福島第一原子力発電所事故後の原子力安全行政を軌道に乗せた。1967年に日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)に入所した同氏は、東海研究所副所長在任時、JCO臨界事故(1999年9月)の収束で対応に当たった経験がある。片山氏は、総務大臣就任前の1999~2007年に鳥取県知事を務め、同県東郷町(現湯梨浜町)における日本原子力研究開発機構のウラン残土問題で2006年に文科大臣、同県三朝町長、原子力機構理事長との協定書を締結し解決を図った。林氏は、1996~98年の科学技術庁原子力局政策課長在任時、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)のアスファルト固化処理施設火災爆発事故が発生(1997年3月)。その後の法人改革などで手腕を発揮した。この他、原子力関係では、瑞宝中綬章を長崎大学名誉教授の朝長万左男氏、元徳山工業高専校長の天野徹氏、元文科省科学技術政策研究所長の和田智明氏が受章。朝長氏は被爆者医療に尽力するとともに、日本の被爆経験を踏まえた核攻撃に関する調査結果を発表するなど、国内外に向け核兵器の非人道性を訴え続けている。天野氏は科学技術庁原子力局政策課長在任時にJCO臨界事故が発生。その後の原子力行政の建て直しに取り組んだ。和田氏は科学技術行政の経験を活かし「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の日本コーディネーターとして活躍中だ。ルース米国大使(左)と野田首相(2011年〈肩書は当時〉、官邸ホームページより引用)また、外国人では、旭日大綬章を元駐日米国大使のジョン・ビクター・ルース氏が、旭日中綬章を「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR)事務局長のマルコム・クリック氏が受章。ルース氏は2010年8月、駐日米国大使として初めて広島原爆死没者慰霊式・平和祈念式に参列。同氏は東日本大震災後の復興支援にも注力し、日米間の関係強化・友好親善に寄与した。クリック氏は、科学的・中立的な立場から福島第一原子力発電所事故による放射線の影響に関する報告書をまとめ、福島県内での説明会も行うなど、日本の放射線理解促進に寄与した。
- 02 May 2022
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規制委、柏崎刈羽の核物質防護問題で中間取りまとめ
原子力規制委員会は4月27日の定例会合で、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に係る不適切事案に対する追加検査の中間取りまとめについて審議した。同発電所で2020年以降に発生したIDカード不正使用および核物質防護設備の機能一部喪失について、規制委員会は2021年3月、東京電力に対し、(1)直接原因、(2)根本的な原因、(3)安全文化および核セキュリティ文化要素の劣化兆候――の特定、それを踏まえた改善措置活動の計画を報告するよう求め、合わせて約2,000人・時間を目安とする追加検査を行うことを決定。東京電力では、経営層の主体的関与のもと、本社・発電所が一体となった調査体制を敷くとともに、独立検証委員会による第三者評価を実施し、同年9月に一連の不適切事案に対する改善措置報告をまとめている。原子力規制庁からの報告を受け、検査を担当する山中伸介委員は、「人の力に依存しない」高いレベルの核セキュリティの担保とそれに対する検査のあり方を検討していく必要性を強調。核セキュリティを担当する田中知委員は核物質防護管理者のスキル向上を課題としてあげ、組織文化の劣化を懸念する伴信彦委員は改善状況に対する客観的な評価に努めるべきとした。東京電力に対応を求める事項には、防護設備の経年化に伴う不具合頻発や悪天候による機能喪失も含まれ、誤報に関する原因分析や設置環境対策などが評価の視点となっている。自然ハザードに係る審査を担当する石渡明委員は、冬季の積雪・雷や砂塵など、柏崎刈羽原子力発電所の置かれる過酷な自然条件にも十分配慮した防護設備のメンテナンス・更新がなされているかも着実に確認すべきとした。会合終了後の記者会見で、更田豊志委員長は、柏崎刈羽原子力発電所の原子力規制検査に係る対応区分の変更(法令により発出された是正措置命令に基づき「第4区分」から「第1区分」となる必要がある)に関し、自身の任期満了時期(2022年9月)にも言及しながら「年内に判断できれば」との見通しを示したほか、核セキュリティにおける機微情報を扱うが故の閉鎖性を懸念した上で、「社会、メディアとの間で良い緊張関係が築かれる必要がある」とも述べた。
- 27 Apr 2022
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規制委と電力がBWR「10×10燃料」導入に関し意見交換
原子力発電の安全な長期運転のため、電力会社では燃料の高度化に係る取組を進めている。4月19日に行われた原子力規制委員会と事業者との意見交換会(CNO会議)では、BWRの新型燃料導入に向けた規制対応がテーマとなった。CNO会議は、2016年度以降、規制委員会が実質的な審査案件とは別に個々の技術的課題に関し、事業者の原子力部門責任者を招いて随時行っているもの。10×10燃料(GNF製、電力発表資料より引用)今回のCNO会議では、BWRを有する電力会社を代表し、東京電力原子力・立地本部長の福田俊彦氏が新型燃料「10×10燃料」について説明した。現在、BWRで用いられている「9×9燃料」は20年以上前に導入されたものだが、同氏は、「10×10燃料」のメリットに関し、(1)燃料棒の本数を増やすことで1本当たりの熱的負荷が緩和され安全性が向上する、(2)使用済燃料の発生量低減にも寄与する、(3)海外では既に1990年代から導入が進められ現在の主流となっている――とポイントを述べ、「BWRの再稼働後、速やかに対応すべき課題。地元とも対話を行い導入準備を進めていきたい」と強調。その上で、実際の導入までの道筋を見据え、燃料体の設計に関する型式証明やトピカルレポート制度を活用した合理的・効率的な審査が行わるよう求めた。〈電力発表資料はこちら〉メーカーが審査を申請する機器類の型式証明は、使用済燃料輸送容器の審査で既に行われているが、福田氏によると、「10×10燃料」に関し燃料メーカーでは2022年度下期中、早い時期での申請が検討されているという。法令上、原子力施設に係る審査は原則、設置者(電力会社など)による許可申請が前提。その中で、トピカルレポート制度は、電力会社やメーカーからの求めに応じ、特定の安全審査事項についてまとめた技術文書をあらかじめ評価することにより、同一トピックの繰返し審査を割愛し審査の実効性・効率性を高めるもので、旧原子力安全・保安院の頃、評価条件・方法などを盛り込んだ内規が定められた。米国では定着している制度だ。電力からの提案を聴く原子力規制委員会・更田委員長(インターネット中継)福田氏の説明を受け、規制委員会側との間で、指針類の体系や解釈の仕方、学協会による技術基準の利用など、審査の進め方に関する模索的なやり取りがなされ、まずは型式証明の雛形を手始めに、原子力規制庁の技術基盤グループと原子力エネルギー協議会(ATENA)とで実務的な意見交換を行うことで概ね一致した。「10×10燃料」の導入に関し、更田豊志委員長は20日の定例記者会見で、「安全裕度が大きくなることから、導入はよいこと」としたほか、評価手法を国際的な流れに整合させていく必要性にも言及した上で、「さらに事業者とのやり取りを進めていく必要がある」と述べた。
- 21 Apr 2022
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原子力機構・東大、事故耐性燃料の国産化目指しWS開催
原子力発電の安全性をより高めるため、事故耐性燃料の開発が国内外で進んでいる。福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、燃料の被覆管を金属でコーティングすることにより、事故時の事象進展を遅らせ、かつ水素発生を抑えるものだ。海外では、既に米国で事故耐性燃料の試験装荷が行われているほか、欧州委員会(EC)が2月にドラフト案を承認したEUタクソノミー(EUが気候変動緩和・適合のサステナビリティ方針に資する経済活動の認定基準とする、いわば「グリーン・リスト」)の中で、原子力発電については2025年までの事故耐性燃料装荷が適合条件の一つとされるなど、実用化に向けた動きが出始めている。こうした世界の開発状況に鑑み、資源エネルギー庁、文部科学省の委託事業で事故耐性燃料の研究開発プロジェクトにそれぞれ取り組む日本原子力研究開発機構と東京大学大学院工学系研究科は、「原子力事故への耐性が高い国産の新型炉燃料で安全性向上を目指す」技術ワークショップを3月11日にオンラインにて開催。約230名の参加者を集めた。事故耐性燃料の開発状況(資源エネルギー庁発表資料より引用)事故耐性燃料には、コーティング被覆管、改良ステンレス鋼被覆管、炭化ケイ素燃料被覆管、事故耐性制御棒があるが、材料の脆性やデータ不足など、実用化までにはそれぞれ課題を有している。そのうち、国内では、三菱重工業他によるコーティング被覆管の開発が最も進んでおり2030年代前半の実用化が見込まれている。これは、表面に金属クロムなどの被覆をコーティングすることにより耐酸化性の向上や水素発生の抑制を図るもの。原子力機構・山下氏(ZOOM撮影)今回のWSでは、東京大学大学院工学系研究科教授の阿部弘亨氏、原子力機構原子力基礎工学研究センターの山下真一郎氏らが講演を行いその開発状況を紹介。阿部氏は原理実証から実用化に至るまでの技術成熟度(TRL)を海外と対比させながら、また、山下氏は2015年頃からの開発経緯や民間事業者による要素技術開発を振り返り、それぞれ国内外を通じた連携体制強化の重要性を示した。原子力機構・杉山氏(ZOOM撮影)続くパネルディスカッションでは、阿部氏、山下氏の他、原子力機構安全研究センターの杉山智之氏、三菱原子燃料の佐藤大樹氏らが登壇し、事故耐性燃料の国内導入に係る課題をテーマに討論。研究機関として基盤技術開発に係る立場から、山下氏は、国内で試験を行う施設が限られる状況を懸念し、「海外の研究炉で得られた試験データを有効活用する」必要性を繰返し強調。杉山氏は、規制支援機関としての取組を紹介した上で、「事故耐性燃料は、原子炉施設の安全評価、リスク評価、機器設計、新設炉の設計、防災計画などにも影響を及ぼしうる重要な技術だ」と述べた。東大・阿部氏(ZOOM撮影)佐藤氏は、日本原子力学会の炉心燃料分科会メンバーとして、事故耐性燃料に係る3つの専門ワーキンググループの活動を紹介。学協会による規格基準類策定に関し、同分科会の主査を務めている阿部氏は、科学的・技術的な根拠に基づいた検討を貫くアカデミアとしての姿勢を強調する一方で、企業の経営判断が新技術導入のネックとなる可能性にも言及し、メーカー・ユーザーや規制サイドも含めた総合的理解が必要なことを示唆した。事故耐性燃料導入のベネフィットとして、参加者からは、事故時対応の裕度向上の他、制御棒の長寿命化による定期検査期間の短縮など、経済的・副次的効果に関しても指摘があった。今回のWS開催に際して原子力機構軽水炉研究推進室長の川西智弘氏が取材に応じ、「事故耐性燃料は、短期的な経済合理性だけならば、開発が先行する米国から購入する方法もあるが、中長期的に技術基盤・人材の維持・確保を考えた場合、自主開発が必要」と話している。
- 19 Apr 2022
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「ATENAフォーラム」開催、規制機関と産業界の信頼関係をテーマに議論
原子力の安全性向上に産業界が総力を挙げて取り組む組織「原子力エネルギー協議会」(ATENA)による「ATENAフォーラム2022」が2月17日、オンラインで開催された。今回は、「規制機関と原子力産業界の信頼関係の構築に向けて」をテーマにパネルディスカッション。ATENA・魚住理事長開会に際し挨拶に立ったATENAの魚住弘人理事長は、2018年7月の設立から3年半、ATENAが取り組んできた技術課題への対応実績を振り返った上で、安全性向上に向けた現在の重点項目として、(1)デジタル技術を始めとする新技術への対応、(2)自然現象への備え、(3)再稼働後の長期運転に向けた経年劣化管理――を列挙。今回フォーラムのテーマに関し、ATENAがミッションとする産業界を代表した規制当局との対話について、「対等で率直な議論を戦わせるにはまだ途半ば」と述べ有意義な議論に期待を寄せた。原子力規制委員会・更田委員長続いて、原子力規制委員会の更田豊志委員長が来賓挨拶(ビデオメッセージ)。同氏は、これまで審査に携わってきた経験を振り返り、自然現象やシビアアクシデントへの対応における不確かさ、事業者による投資判断の難しさから、リスク情報活用の有用性に触れ、幾つかの事例を通じ技術に関する正しい理解の重要性を説いた。また、「新しい技術開発を促すことも規制側の重要な役割の一つ」として、小型モジュール炉(SMR)の規制に係る国際動向への関心を表した上で、国内においても産業界が先行し議論が進むことを期待。規制委員会では事業者の経営トップらを招いた意見交換を順次行っているが、「規制機関と産業界との信頼関係はそれぞれに対する社会の信頼があって初めて構築できるもの」と、フォーラム開催の意義を強調した。パネルディスカッションには、「Kマトリックス」代表の近藤寛子氏(モデレータ)、中部電力原子力本部長の伊原一郎氏、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授の遠藤典子氏、原子力規制庁原子力規制企画課長の大島俊之氏、PHP総研主席研究員の亀井善太郎氏、OECD/NEA事務局長のウィリアム・マグウッド氏、読売新聞論説委員の山田哲朗氏、ATENA理事の酒井修氏が登壇。OECD/NEA・マグウッド事務局長議論に先立ち基調講演(ビデオメッセージ)を行ったマグウッド氏はまず、2021年のCOP26を振り返り、「原子力が世界的に大きな役割を果たさない限り、気候変動対策の目標を達成することは非常に難しい」と強調。新しい原子力技術の活用を期待し、その導入に向けて、規制当局、産業界、一般市民との信頼関係は「極めて重要なトライアングルだ」とするとともに、「規制当局は産業界が進歩するための障害ではなく、解決策の一部でなければならない」とも述べ、OECD/NEAが取り組む放射性廃棄物処分に係る対話活動の実績の他、航空機産業における良好事例についても紹介し議論に先鞭をつけた。これを受け、電気事業者としてATENA設立にも関わった伊原氏は、技術に通じたプラントメーカーも含むという電気事業連合会とは異なる存在意義を述べた上で、「成果を出し、まず世の中に認めてもらうことが信頼関係の構築につながる」と強調。規制の立場から大島氏は、「それぞれのメンバーがどのように活動し、外から透明性をもって見られているのか。批判的な声も聴き入れ、議論が外に向かって発信されているのか」と指摘。安全性向上に関する規制委員会の検討チームに参画した亀井氏は「組織を背負った対話」の難しさからアカデミアが果たすべき役割に言及し、また、メディアの立場から山田氏は国民のリテラシー向上の重要性などを訴えた。エネルギー政策について研究する遠藤氏は審査期間の長期化から生じる経済への影響を課題としてあげ、国会の関与にも期待。酒井氏は、「技術論をしっかり戦わすことが求められている」と、ATENAが産業界を率いて総合力を発揮させるよう意欲を示した。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 24 Feb 2022
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