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規制委福島第一事故検討会が水素爆発映像の分析へ、テレビ局の協力も得て
原子力規制委員会の福島第一原子力発電所事故に関する検討会は、1、3号機で発生した水素爆発の映像を用いた調査分析に着手する。6月25日の同検討会会合に、映像を提供する福島中央テレビ/日本テレビが出席し説明に臨んだ。福島中央テレビによると、爆発の瞬間をとらえたカメラ(富岡町)は、福島第一、第二発電所から南西の方向に、それぞれ約17km、約10kmの距離にあり、JCO事故を受けて同局が2000年に設置したもの。その後、機材の高度化・増設が進められ、東日本大震災発生当時はバックアップ用となっていたが、山側の電源ルートを使用していたことにより停電を免れ唯一発電所の状況を撮影できた。爆発発生当時について、「原子炉建屋で白い煙が上がった」ことを確認し、放送中の番組を中断して映像を流し「いち早く発信することで報道としての責任を果たした」などと振り返った上で、「事故を検証し後世に伝えていくべき」と、映像提供の意義を強調。また、福島中央テレビと日本ニュースネットワーク(NNN)でつながる日本テレビの森田公三報道局長は、テレビが与えるインパクトの強さを改めて述べた上で、今回の映像提供に関し「事故の真相解明は極めて大事な責務」として、画像鮮明化などの技術面で引き続き規制委員会に協力していく姿勢を示した。同委検討会は昨秋5年ぶりに再開。前回までの会合で原子炉格納容器破損時の水素挙動が論点の一つとしてあがっていた。今後、水素爆発発生時の映像を用い、建物の変形、爆煙の広がり方、飛散物など、さらに調査分析を進め、年内を目途に一定の取りまとめがなされる見通し。
- 26 Jun 2020
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規制委、伊方発電所の使用済燃料乾式貯蔵で審査書案を了承
原子力規制委員会は6月24日の定例会で、四国電力伊方発電所における使用済燃料乾式貯蔵施設の設置について、原子炉等規制法で定める許可基準に「適合している」とする審査書案を了承した。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会、パブリックコメントを経て正式決定となる運び。乾式貯蔵施設の設置に係る審査書案了承は同委として初のケース。同施設は、伊方発電所で発生した使用済燃料を再処理工場へ搬出するまでの間一時的に貯蔵するもので、輸送・貯蔵兼用の使用済燃料貯蔵容器(乾式キャスク、高さ5.2m、直径2.6m)45基分の貯蔵容量を持つ。輸送・貯蔵兼用の乾式キャスクは、4つの安全機能(閉じ込め機能、臨界防止機能、遮蔽機能、除熱機能)を有し、使用済燃料を別の輸送容器に詰め替えることなく発電所外へと搬出できる。四国電力では乾式貯蔵施設を2023年度より運用開始する予定。原子力発電所を有する電力各社では、使用済燃料の貯蔵能力拡大に取り組んでおり、その一つとなる発電所敷地内の乾式貯蔵の審査は、2018年5月に申請された伊方発電所の他、九州電力玄海原子力発電所、中部電力浜岡原子力発電所について進行中。資源エネルギー庁が同年12月に発表した資料によると、乾式貯蔵施設を設置することで、使用済燃料貯蔵の余裕年数(同一サイト内で廃炉を除く全プラントの一斉稼働を仮定)が、伊方では11年から36年、玄海では3年から10年、浜岡では2年から8年へとそれぞれ延長すると試算されている。規制委員会の更田豊志委員長は、定例会終了後の記者会見で、東日本大震災に見舞われた福島第一原子力発電所内の乾式貯蔵施設について触れ、「あれだけの地震・津波にもかかわらず燃料に対する影響はまったくなかった」ことから、一定の冷却が進んだ使用済燃料は再処理までの間乾式貯蔵されることを改めて推奨した。
- 24 Jun 2020
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規制委、事業者の自主的・継続的な安全性向上を促す新たなアプローチの検討へ
原子力規制委員会は、事業者による自主的・継続的な安全性向上に向けた取組をより円滑かつ効果的なものとすべく新たなアプローチの検討を開始する。法令などに基づき事業者が講ずべき措置を具体的に示す、いわゆる「規制」に加え、安全確保上の目標を設定しインセンティブにより事業者の目標達成を促す枠組み・制度のあり方を検討するもの。〈規制委発表資料はこちら〉原子力発電所に係る法令に基づく対応としては、事業者に対し定期検査終了後6か月以内に安全性向上に向けた取組の実施状況や有効性について調査・評価させ、結果の届出を求める「安全性向上評価」(FSAR)がある。新規制基準施行後、再稼働の先陣を切った九州電力川内1号機については、5月に3回目の「安全性向上評価」が規制委員会に提出された。その中で、自主的な安全性向上対策として、桜島からの降灰に関する厳しい評価を実施し安全性に影響がないことを確認した上で、さらなる安全裕度の確保に向けて、燃料取替用水タンクの溶接部強化工事を計画するなどしている。規制委員会では、こうした「安全性向上評価」や、既に許認可を受けた施設が新知見に基づく規制要求に適合することを確認する「バックフィット」など、これまでの取組における制度面・運用面での改善点を抽出し、新たなアプローチに向けて考え方を示すべく、今後外部専門家も含めた検討チームを7月にも始動し、概ね1年程度で検討結果を取りまとめる。更田豊志委員長は6月10日の定例記者会見で、事業者が自らの言葉で施設の安全性を語る重要性を改めて述べた上で、「これまでインセンティブを起源とする取組が少なかった」として、検討チームにおける有意義な議論に期待を寄せた。
- 10 Jun 2020
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規制委、新規制基準でHTTRの原子炉設置変更許可
原子力規制委員会は6月3日、日本原子力研究開発機構の高温工学試験研究炉「HTTR」(茨城県大洗町、高温ガス炉、熱出力3万kW)が新規制基準に「適合している」との審査書を決定し、同機構に原子炉設置変更許可を発出した。本件は、3月25日の審査書案取りまとめを受け、原子力委員会と文部科学相への意見照会、パブリックコメントが行われていたもの。2014年11月の審査申請から約5年半を要した。HTTRの燃料体構造(原子力機構発表資料より引用)高温ガス炉は、電気出力100万kW 規模が主流の軽水炉に比べ小型だが、原子炉出口温度850~950度C(軽水炉は約300度C)の高温熱は、水素製造、海水淡水化、地域暖房など、幅広い利用が可能。また、原子炉から熱を取り出す冷却材には高温でも化学的に安定なヘリウムガスを用いているほか、1,600度Cにも耐える放射性物質の閉じ込め性能を持った「セラミックス被覆燃料」からなる燃料体構造などから、安全性にも優れている。原子力機構では今後、「HTTR」の2020年度内の運転再開を目指し、安全対策工事を着実に進めていく。運転再開後はまず、OECD/NEAの枠組みによる安全性実証試験「炉心強制冷却喪失(LOFC)プロジェクト」を実施。同プロジェクトでは、2010年度までの第1段階試験(30%出力、ガス循環機停止)で高温ガス炉の自然停止・冷却などの安全特性が示されており、今後も原子炉にとって厳しい条件を付加した試験を行い、得られた成果を通じ高温ガス炉に関する安全基準の国際標準化に向け貢献していく。
- 04 Jun 2020
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原子力委が六ヶ所再処理の平和利用担保を「妥当」、規制委審査の意見照会で
原子力委員会は6月1日、原子力規制委員会より新規制基準適合性審査の中で意見を求められていた日本原燃六ヶ所再処理工場(青森県六ヶ所村)で行われる事業の平和利用の担保について、「妥当」とする答申を決定した。六ヶ所再処理工場では、原子力発電所の使用済燃料から再利用できるウランとプルトニウムを取り出し、そこで回収されたウラン・プルトニウム混合酸化物はMOX燃料加工工場へと送られる。原子力委員会は2018年に、原子力平和利用の透明性をより高めるため、「わが国におけるプルトニウム利用の基本的考え方」を改定し、プルサーマル発電の着実な実施、それに必要なだけの再処理を行うことにより「プルトニウム保有量を減少させる」とする日本の姿勢を示した。今回の原子力委員会の答申は、これを踏まえた日本原燃による事業方針・計画、および規制委員会による判断の妥当性が確認されたもの。一方、規制委員会では、5月13日に六ヶ所再処理工場について新規制基準に「適合している」との審査書案を取りまとめたのを受け、現在、正式決定に向け6月12日までパブリックコメントを実施中。1日にはテレビ会議で規制委員会と日本原燃とを結び、同じく新規制基準適合性審査が大詰めとなっているMOX燃料加工工場に関する審査会合が行われ、その中で、今後六ヶ所再処理工場が運転するために必要となる設計・工事計画の認可申請についても質疑応答があった。原子力規制庁の新規制基準適合性審査チームは、「建屋だけでも20近くあり、安全上重要な機器も1万を超える」などと、再処理工場の審査に係る膨大な物量を懸念し、全体的な計画が示される必要性を指摘。日本原燃は、審査の効率性も考慮した上で、設計・工事計画の認可申請を当初の22分割から4分類程度に大括りで整理し直すとし、秋口頃に説明を行う見通しを示した。
- 02 Jun 2020
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規制委、六ヶ所再処理工場について新規制基準に「適合」との審査書案まとめる
原子力規制委員会は5月13日の定例会合で、日本原燃の六ヶ所再処理工場が新規制基準に「適合している」とする「審査書案」(概要版はこちら)まとめた。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会、パブリックコメントを経て、正式決定となる運び。経済産業相に対しては、再処理施設の運転に係る判断が同委として初めてとなることを踏まえ、「エネルギー基本計画」との整合性も含め意見を求める。日本原燃は2014年1月に六ヶ所再処理工場の審査を申請。「審査書案」取りまとめまで6年以上を要した。申請から5年が経過した2019年2月に規制委員会は、主な論点の確認をほぼ終了したことから、重大事故対策に係る審査方針の明確化を図り、同3月に「審査書案」取りまとめに向けた討議用資料を作成。日本原燃からの既出書類に対する補正申請を確認しながら、航空機落下の影響など、残る論点に関し審査の詰めに入った。今回取りまとめられた「審査書案」では、施設の敷地近傍を横断し「地震動評価に与える影響が大きい」とされる出戸西方断層(11km)に関し、日本原燃による調査結果・評価の妥当性を確認。また、設計方針では、航空機落下による損傷防止について、再処理の主要工程(使用済み燃料受入れ・貯蔵、前処理、分離、精製、ウラン・プルトニウム混合脱硝、高レベル廃液固化)ごとの標的面積・落下確率に関する評価から「追加的な防護措置は不要」とした。再処理施設特有のものとしては、化学薬品の漏えいによる損傷防止対策などを確認。更田豊志委員長は、会合終了後の記者会見で、「品質管理の問題で中断となった期間、審査体制の組み直しもあった」と、審査が長期にわたった要因を振り返った上で、「終盤にかかって議論も密になり今回まとめることができた」などと、所感を述べた。また、六ヶ所再処理工場の運転開始に向け、「検査の対象機器も多いことから、技術的な精密さをどれだけ日本原燃が押さえられるかがカギ」として、長期的な対応となる見込みを示唆した。日本原燃は、六ヶ所再処理工場の2021年度上期しゅん工を目指している。同社は、「審査書案」取りまとめを受け、「大きな前進であり、引き続き審査合格に向けて全力で取り組んでいく」とのコメントを発表した。
- 13 May 2020
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規制委が審査会合をテレビ会議へ、新型コロナ拡大防止で
原子力規制委員会は4月8日の定例会合で、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた対応として、当面の審査会合などをテレビ会議・電話会議での開催を基本とすることとした。ウェブサイトでのライブ中継もこれまで通り実施する。現在通信試験のための模擬会合が行われており、最終的なチェックを経て運用を開始するが、審査会合については原則火・木曜の開催となる見通し。テレビ会議は、3月に福島第一原子力発電所に関する監視・評価検討会で、東京の本庁と現地原子力規制事務所と発電所サイトとを結んで行われたことがある。地震・津波関係の審査など、事業者が会場で図面を示しながら議論することが必要な会合については、サイト担当者が東京に出向くことを極力避けるよう、個別に人数を限定した審査会合の開催を検討する。また、セキュリティの観点からテレビ会議が利用できないテロ対策の「特定重大事故等対処施設」に関する審査や、判断・指示事項が明らかな案件については、委員の了解を得て書面審査とし、機微情報へのマスキングを施した上で文書を公開。規制委員会の新規制基準適合性に係る審査会合は、概ね日に1回程度開催されていたが、3月27日を最後に中断となっている。前回4月1日の定例会合で、審査を総括する原子力規制庁の山形浩史氏は、「審査に遅れが生じないように努めていく」として、早急に今後の審査会合の進め方をまとめる考えを示していた。7日には新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言が7都府県に発令されたが、更田豊志委員長は8日の定例会合終了後の記者会見で、実施期間中の留意事項として、原子力施設にトラブルが生じた際の緊急時対応体制の維持の他、医療用放射性同位元素に係る申請への対応も重要などと述べた。なお、定例会合は当面これまでの毎週から隔週の開催となる。
- 08 Apr 2020
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更田規制委員長、新型コロナ拡大防止対策に伴う規制庁の体制を説明
原子力規制委員会の更田豊志委員長は4月1日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策に関し「最も注意を払っている」とした上で、当面の原子力規制庁の特別な勤務体制について質疑に応じた。原子力規制庁では、3月30日~4月10日の間、業務内容に応じた必要最小限の人数のみの登庁とし原則在宅勤務としている。これに関し、更田委員長は、「さらに状況が進んだときにも緊急時対応体制は確実に維持しなければならない」として、課室ごとに職員を2チームに分け、接触をできるだけ避けることにより、万が一の際にも「共倒れにならないよう」対応すると述べた。また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う国際協力への影響については、来日中の米国検査官の急きょ帰国や海外研究機関との情報交換の予定がすべてキャンセルとなったことなどをあげた。一方で、IAEAによる保障措置の査察活動には「規制庁も同行せざるをえない」として、世界的な混乱の最中「どさくさに紛れた盗取」を許さぬためにも、核セキュリティの確保に向けた対応が変わらず重要なことを強調。1日の規制委員会定例会合では、新規制基準適合性に係る審査の進捗状況が報告された。その中で、原子力規制庁新規制基準適合性審査チーム長の山形浩史氏は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策を踏まえた今後の審査会合の進め方について、ウェブ会議・TV会議を基本とし書面審議も併用しながら必要最小限の関係者を来場させるなどと、準備状況を説明し、「審査に遅れが生じないように努めていく」と述べた。
- 01 Apr 2020
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規制委が原子力機構の高温ガス炉で「審査書案」まとめ
原子力規制委員会は3月25日の定例会合で、日本原子力研究開発機構の高温ガス炉「HTTR」(茨城県大洗町、熱出力30,000kW、=写真<原子力機構発表資料より引用>)が新規制基準に「適合している」とする「審査書案」をまとめた。今後、原子力委員会と文部科学相への意見照会、パブリックコメントを経て正式決定となる運び。施設の位置、構造に関し、「HTTR」は標高36mの高台に設置され取水設備を設置しておらず、原子力機構はこれらを踏まえ不確かさを十分に考慮した津波評価を行っており、審査では、津波により安全機能を損なうおそれがないことを確認。また、事故の想定・進展に関する評価の中で、炉心構造材の黒鉛が酸化し一酸化炭素が発生しても燃焼する濃度には至らず、また、原子炉格納容器の閉じ込め機能喪失の対策として、建屋の目張り処置で放射性物質放出の影響緩和が可能などとしており、複合的な事故発生に対しても拡大防止に向けた対策・体制が図られることを確認した。950度Cの熱を取り出せる「HTTR」は、水素製造、発電、海水淡水化など、幅広い利用が期待されるほか、高温でも放射性物質の閉じ込め機能を保つ直径約1mmのセラミックス被覆燃料、化学的に安定なヘリウム冷却材、耐熱温度2,500度Cの黒鉛構造材を有する特徴から安全性にも優れている。1998年の初臨界後、2004年には定格熱出力で原子炉出口温度950度Cを、 2010年には連続50日の950度C運転を達成。2014年11月に新規制基準適合性に係る審査が申請された。原子力機構では、24日に原子炉安全性研究炉「NSRR」が耐震工事を終え運転再開しており、その他の研究炉についても早急な運転再開を目指すとしている。
- 25 Mar 2020
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規制委、女川1号機と玄海2号機の廃止措置計画を認可
原子力規制委員会は3月18日の定例会合で、東北電力女川原子力発電所1号機と九州電力玄海原子力発電所2号機の各廃止措置計画の認可を決定した。廃止措置期間は、女川1号機が2053年度まで、玄海2号機が2054年度までとなっており、いずれも「解体工事準備期間」から「建屋等解体撤去期間」までの4段階に分けられ、そのうちの第1段階に実施する具体的事項について2019年に申請されていたもの。女川発電所では、2月26日に2号機について新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可が出されており、審査において、2号機の設備工事により津波発生時も敷地への流入防止が図られ1号機使用済み燃料の冷却機能が維持できることを確認したとしている。女川1号機の使用済み燃料プールには、使用済み燃料821体、新燃料40体が貯蔵されており、廃止措置の第2段階開始(2027年度以降)までに、それぞれ3号機使用済み燃料プール、加工施設へ搬出される予定。一方、玄海2号機については、作業スペースの有効活用による工期短縮や作業安全向上などのため、既に廃止措置実施中の1号機と工程が並行するよう、両機に係る廃止措置計画の認可となった。また、18日の会合では、九州電力川内原子力発電所について、テロに備えた「特定重大事故等対処施設」に係る保安規定の変更申請に関し、「審査基準を満足している」との取りまとめが示された。近く同施設に係る初の保安規定変更認可となる見通し。川内1号機は「特定重大事故等対処施設」の設置期限を迎え3月16日に定期検査入りしており、検査期間中に新規制基準が要求する同施設や直流電源設備(3系統目)の設置工事などが行われる。
- 18 Mar 2020
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福島第一原子力発電所事故から9年、東京電力・小早川社長が訓示
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から9年を迎え、東京電力の小早川智明社長は3月11日、社員に訓示を行った。発災時刻の14時46分に合わせ1分間の黙とうを行った後、小早川社長はまず、「震災で亡くなった方々のご冥福を祈るとともに、ご遺族の皆様に深い追悼の意を表したい。今なお福島の皆様、広く社会の皆様に多大なご負担・ご心配をかけていることに心からお詫び申し上げる」と述べた。その上で、先般の双葉町、大熊町、富岡町の一部地域での避難指示解除、14日には常磐線の全線開通、26日には東京オリンピック聖火リレーの「Jヴィレッジ」スタートが予定されるなど、福島の復興に向けた動きをあげ、「今後は『復興と廃炉の両立』が大きなテーマ」、「地域の皆様に信頼してもらえるよう取り組んでいく」と強調。福島第一原子力発電所の廃炉に関わる産業創出などを通じた復興へのさらなる貢献に意欲を示した。また、福島第一原子力発電所事故の反省に立ち、「原点は福島。安全に終わりはない」と社員らに訓示。「福島への思いを新たに日々の業務にしっかりと取り組み、一丸となって福島への責任を果たしていく」と強調した。同日、原子力規制委員会では、更田豊志委員長が原子力規制庁職員に訓示を行った。「多くの方々の人生を変え、いまだに多くの方々が不自由な生活を余儀なくされている」と、福島第一原子力発電所事故の及ぼした影響を強調し、職場で事故について考え話し合う時間を持って欲しいと述べた。また、業務への取組姿勢に関して、「人間には現状維持を望む傾向がある」と危惧し、4月からの新検査制度導入も踏まえ、既存の文書や前例に過剰に依存することなく、「そもそもどうあるべきか」に立ち返って考えるよう職員らに求めた。
- 11 Mar 2020
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女川オフサイトセンターが震災後9年を経て再建
内閣府(原子力防災)は3月4日の原子力規制委員会定例会合で、東北電力女川原子力発電所に係るオフサイトセンターの概要を説明し同委に意見を求めた。オフサイトセンターは、原子力災害発生時に現地対策本部が設置され、国、地方自治体、事業者、関係機関が参集し、モニタリング、被ばく医療、避難、住民への情報発信などを指揮する拠点となるものだが、女川オフサイトセンターは東日本大震災に伴う津波で壊滅的な被害を受け使用不能となったため、発電所から約53km離れた仙台市内の旧消防学校校舎を暫定的に使用してきた。津波で崩壊した旧女川オフサイトセンター(内閣府発表資料より引用)内閣府では2017~18年度、女川オフサイトセンターの再建事業として総額27億円を計上し宮城県に費用を交付。このほど、発電所の北西約7km、海抜約39mの地点に、免震構造3階建ての鉄筋コンクリート建屋が完成した。TV会議システム、電話・FAX装置、統合原子力防災ネットワークなど、所要の通信設備、合同対策協議会や報道対応に供する各種スペースを備えているほか、隣接する学校のグラウンドに大型ヘリの離発着が可能。また、複合災害に備え、仙台市と大崎市の発電所からそれぞれ約54km、約49kmの地点に2か所の代替オフサイトセンターが指定されている。内閣府の説明を受け、地震・津波関連の審査を担当する石渡明委員は、発電所周辺の道路が急峻で蛇行していることを踏まえ、「複数のルートを確保しておくことが大事」と強調。さらに更田豊志委員長は、今後のオフサイトセンター整備に関し、「県庁からの距離が、島根発電所のように近い場合もあるし、女川発電所のように遠い場合もある」などと地域特性をあげた上で、自治体の機能についても合わせて検討する必要性を指摘した。新たな女川オフサイトセンターは、3月2日より暫定運用を開始しているが、今回の原子力規制委員会への意見照会を踏まえ、近く正式に政府より指定を受ける運び。
- 04 Mar 2020
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規制委、女川2号機の新規制基準審査で原子炉設置変更許可
原子力規制委員会は、2月26日の定例会合で、東北電力の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)が新規制基準に「適合している」とする審査結果を決定し、同社に対し原子炉設置変更許可を発出した。同案件については、11月に「審査書案」を了承し、原子力委員会と経済産業相への意見照会、パブリックコメントが行われていた。新規制基準適合性に係る審査をクリアしたプラントは16基となり、BWRでは4基目。同機の審査は、2013年12月に申請され、過去に大地震を経験してきた地理的特性から、地質・地震動評価や耐震設計に関して慎重な審査が行われた。定例会合終了後の記者会見で、更田豊志委員長は、「東北電力には概ねきちんと対応してもらえた」と、6年以上に及んだ審査を振り返った。東北電力の原田宏哉社長は、2月4日に行われた規制委員会が随時実施する事業者意見交換の後、記者団の取材に応じ、「審査が合格となりモチベーションも上がっている」と、女川2号機の再稼働に向けた現場の意識高揚を強調した。同社では、2020年度の工事完了を目指し、海抜約29mの防潮堤建設などの安全対策工事を進めていく。
- 26 Feb 2020
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更田規制委員長、六ヶ所再処理工場他の「審査書案」取りまとめ見通しを述べる
原子力規制委員会の更田豊志委員長は、2月19日の定例記者会見で、大詰めを迎えている日本原燃の六ヶ所再処理工場などの新規制基準適合性審査の状況について質疑に応じた。六ヶ所再処理工場については、記者より18日に行われたプラントに関する審査会合で「概ね議論が終了した」として、「審査書案」取りまとめの見通しを問われると、更田委員長は、現状で示すことは「時期尚早」と述べた。六ヶ所再処理工場の審査は2014年1月の申請から6年が経過。日本原燃の増田尚宏社長は、同31日の記者会見で、最終の申請書類について「これまでの審査会合における指摘事項を反映し、早期に提出できるよう作業を進めている」としている。2月21日には地震・津波関連の審査会合が行われる予定。また、更田委員長は、同じく申請から6年が経過した使用済み燃料貯蔵施設の審査に関し、記者から「17日の審査会合でプラントに関する議論が実質終了した」として、「審査書案」の取りまとめ時期を問われたが見通しは示さなかった。審査が長期化した理由について、耐津波設計に関する論点で、「駄目出しは早めに出すべきだった」と、規制側としての反省点も明言。11月に「審査書案」が取りまとめられた東北電力女川2号機については、「パブリックコメントの取りまとめ結果を見せてもらってはいる。それほど長くかからない時期に委員会に報告されるだろう」と述べ、年度内にも同案件に関わる原子炉設置変更許可の発出となる見込みを示唆した。
- 20 Feb 2020
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ATENAフォーラム開催、米NEIのコーズニック会長が講演
原子力事業者・メーカー・関係団体で構成される「原子力エネルギー協議会」(ATENA、理事長=門上英・三菱重工業特別顧問)が活動状況を報告し今後の課題について話し合う「ATENAフォーラム2020」が2月13日に都内で開催された。ATENAは、原子力発電のさらなる安全性向上に向けて産業界全体で知見結集・共通課題の抽出を図る組織として2018年7月に設立された。フォーラムで門上理事長は、(1)原子力発電所の共通課題への対応、(2)規制当局との積極的な対話、(3)様々なステークホルダーとのコミュニケーション――を柱とする活動方針のもとに実施されているATENAのこれまでの活動について説明。ATENAでは現在15件の技術課題に取り組んでいるが、その中で発足間もない2018年9月に作業を開始した「サイバーセキュリティ対策導入ガイドライン」作成については、2020年1月までにドラフト版に関する原子力規制委員会との対話も行われており、今後、自主ガイドとして発行し事業者・メーカーへと展開することとなっている。今回のフォーラムに来賓として訪れた原子力規制委員会の更田豊志委員長(=写真下)は挨拶の中で、「ATENAは申請者でも被規制者でもない。意見や反論が寄せられることを期待する」と、ATENAとの対話に積極的な姿勢を示したほか、原子力災害発生時の防護措置準備・実施に向けプラントの状況に応じて定める緊急時活動レベル「EAL」を例に、「現場を持つ事業者の知見が不可欠」とも述べた。ATENAは海外の原子力関係組織との連携も行っており、去る6月には米国原子力エネルギー協会(NEI)と技術協力協定を締結するなど、知見・技術の収集・活用に努めている。今回のフォーラムには、NEIのマリア・コーズニック会長が出席し講演を行った。その中で、コーズニック会長は、まず「気候変動は世界で喫緊の課題」として、地球温暖化問題の解決につながるクリーンエネルギーとして原子力に取り組む日米両組織による協力の意義を強調。さらに、「原子力以上に明るい未来に対応できる産業はない」とも述べ、米国における小型モジュール炉(SMR)の開発状況や、原子力規制委員会(NRC)による許認可の合理化に向けた動きなどを紹介した。コーズニック会長を交え、遠藤典子氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)をモデレータとして行われたパネルディスカッション(=写真上)には、加藤顕彦氏(日本電機工業会原子力政策委員長)、倉田千代治氏(電気事業連合会原子力開発対策委員長)、山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)、山﨑広美氏(原子力安全推進協会理事長)、玉川宏一氏(ATENA理事)が登壇。意見交換の後、玉川氏は、「しっかりと受け止め、今後のATENAの活動に活かしていきたい」と、引き続き安全性向上に向けて取り組んでいく姿勢を示した。
- 14 Feb 2020
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規制委と東北電力が意見交換、原田社長「再出発に向けた大きな節目」
原子力規制委員会は2月4日の臨時会合で、東北電力の原田宏哉社長らと意見交換を行った。同委が事業者の経営層を順次招き実施しているもの。原田社長は、11月に女川原子力発電所2号機について新規制基準に「適合する」との「審査書案」が取りまとめられたことから、「再出発に向けた大きな節目が近付いている」と、運転段階に向けた意識のシフトを述べた。その上で、「発電所の運営管理」、「災害への備え」、「地域との信頼関係」を軸に、経営トップとしてリーダーシップ発揮していく姿勢を示した。東日本大震災以降プラントが長期間停止していることから、「技術力の継承」、「生きたプラントから学ぶ」、「新たな設備の習熟」、「褒める活動」に力点を置いた人材育成強化の取組を説明。技術の継承としては、ベテラン社員による勉強会開催、シミュレーターを活用した教育訓練の実施、OBの活用などが紹介され、委員との意見交換の中で、原田社長は「技術力は一定のレベルに達している」と述べた。この他、委員からは、4月から本格運用を開始する新検査制度に関連して、事業者が小さな気付きを広く収集し改善につなげる取組「CAP」について、より拡充を求める意見などがあった。取材に応じる原田社長意見交換終了後、原田社長は記者団の取材に応じ、女川2号機の再稼働に向けて「工事計画認可、保安規定認可と、まだまだプロセスを踏まねばならないが、6年間に及んだ審査が合格となりモチベーションも上がっている」と、現場の意識高揚を強調。また、「運転経験のない社員が3割を占めており、感受性、技術力を養っていかねばならない」と、人材育成の重要性を改めて述べた。東北電力では、2020年度の完了を目指し同機の安全対策工事を進めることとしている。
- 05 Feb 2020
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規制委が原電と意見交換、村松社長「パイオニア精神」を強調
原子力規制委員会は1月29日の臨時会合で、日本原子力発電の村松衛社長らと意見交換を行った。同委が事業者の経営トップを順次招き実施しているもの。村松社長は、「安全に対するモチベーション向上は当社の重要な経営課題」として、安全文化の育成に向けたレベルアップ活動など、自主的安全性向上の取組の強化について説明。その中で、「現場力の維持・向上」に関して、約9年間のプラント停止により、運転の経験者が減少・高齢化してきたほか、保修部門についても、福島第一原子力発電所事故後3年間の新卒採用中断を受け、若手とベテラン社員とがペアを組む教育訓練「現場ブラザーシスター制度」で年齢ギャップが生じていることをあげ、技術伝承の困難さを示唆した。2018年12月に東海第二発電所で発生した作業員の感電死亡事故を踏まえた対策としては、中堅社員による若手工事監理員への指導や協力会社とのコミュニケーション推進などを通じ、再発防止の徹底を図っているとした。東海第二発電所は2018年11月にBWRでは初めて運転期間の20年間延長が認可されており、村松社長は、委員との質疑応答の中で、国内初の商業炉である東海発電所(GCR:ガス冷却炉)の廃止措置とともに、「パイオニア精神を発揮していく」との姿勢を改めて示した。東海第二発電所については、2022年12月の完了を目指し安全性向上対策工事が進められている。また、村松社長は、原電の取組として、米国のエナジーソリューションズ社やエクセロン社との交流を通じたプラントの経年劣化や廃止措置、小型モジュール炉(SMR)開発に関する知見取得など、海外事業者との連携について紹介。「新しいものに関心を持つことは、若手のモチベーションにつながる」と強調した。これに対し、更田豊志委員長は、IAEAからSMRに関する規制の枠組への参加を求められたことを述べ、北米におけるSMR開発の進展状況などを尋ねた。この他、地震・津波に関する審査担当の石渡明委員が昨秋の大型台風を踏まえた気象災害への備えを、バックエンド担当の田中知委員はGCRの炉解体に関する英国の知見活用を指摘した。
- 30 Jan 2020
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規制委、大飯3、4号機の特重施設で審査結果まとめる
原子力規制委員会は1月29日の定例会合で、関西電力大飯発電所3、4号機(=写真)のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)について、設置許可基準に適合するとの審査結果をまとめた。本件に関しては、24日の同委臨時会合(セキュリティ上非公開)で技術的事項に関する「審査書案」が決定しており、今回の定例会合では、これに加えて平和利用の担保や工事資金調達などに係る妥当性を合わせた審査結果が取りまとめられた。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会を行い正式決定となる運び。新規制基準で求められる特重施設については、プラント本体の工事計画認可から5年間の設置猶予期間が設けられており、大飯3、4号機では2022年8月にその期限を迎える。2019年4月時点で、工事に要する期間はこれを約1年超過する見通し。2015年に先陣を切って再稼働した九州電力川内1、2号機は、それぞれ特重施設の設置期限が3月17日、5月21日と迫っており、同社はいずれも期限前日からの定期検査入りを昨秋発表。1月29日には、関西電力も現在定期検査中の高浜3、4号機について、同設置期限である8月3日、10月8日のそれぞれ前日から、次の定期検査を開始することを発表した。
- 29 Jan 2020
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IAEA「総合規制評価サービス」日程終了、規制委に産業界とのコミュニケーションを指摘
日本の原子力規制に関する制度や組織について評価を行うため来日していたIAEAの専門家チーム「総合規制評価サービス」(IRRS)のミッションが1月21日、8日間の日程を終え、チームリーダーのラムジー・ジャマール氏(カナダ原子力安全委員会上席副長官)は、原子力規制委員会の更田豊志委員長とともに合同記者会見を行った。今回のIRRSミッションは、2016年1月に来日したミッションで指摘された勧告・提言への対応状況についてレビューを行う「フォローアップミッション」と位置付けられるもの。IAEAのガイドラインでは、本ミッションの2~4年後が実施の目安とされている。前回のミッションで、2つの良好事例とともに、13の勧告と13の提言が示されたのを受け、規制委員会では、明らかとなった課題について対応方針を取りまとめ、検査制度の見直しや放射線源規制の強化に関わる法整備などに取り組んできた。会見で、ジャマール氏は「日本は相当な改善を成し遂げている」と、更田委員長は「大変活発な議論が行われた」と、それぞれ所感を述べた。検査制度に関して、規制委員会では、前回ミッションでの指摘を受け、検査官の施設へのアクセス権限を確保した制度設計や、能力向上のため、米国原子力規制委員会への派遣や教育訓練課程の開設などを図ってきた。2020年度からの新検査制度の本格運用開始に向けて、ジャマール氏は「検査官がしっかり訓練を受けていることを確認した」と評価。一方で、「規制組織の独立性を損なうことがあってはならないが、産業界とのコミュニケーションは原子力安全に資する」とも述べ、カナダの事例にも言及しながら、規制組織が産業界による技術的革新や改善活動などを知る重要性を繰り返し強調した。今回の「フォローアップミッション」の最終報告書は概ね3か月後に公開される運び。更田委員長は、福島第一原子力発電所事故の教訓として「継続的改善を怠ることは決して許されない」と述べ、「報告書提示を待たずに課題解決に取り組んでいく」姿勢を示した。
- 21 Jan 2020
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規制委が東京電力・小早川社長らと意見交換、福島第一の現場対応など
原子力規制委員会は1月16日の臨時会議で、東京電力ホールディングスの小早川智明社長らと意見交換を行った。同委が原子力事業者の経営層を順次招き実施しているもの。小早川社長は、福島第一原子力発電所の廃炉作業に関わる最近のトラブル事例に関し、「現場/現物を徹底的に把握できていない」との共通要因が存在すると分析。その上で、分析結果は、昨秋に規制委員会の現地事務所が指摘した「現場に目が行き届いておらずトラブルが多発」などの背景となっているとして、今後のプロジェクト遂行と安全・品質向上に適した組織改編と合わせ、本社から現場へ70~90名の要員シフトを図る考えを示した。これを受け、更田豊志委員長は、「現場へのリソース投入」の必要性を繰り返し述べ、トラブルを受けて進められている改善活動がインセンティブを与えるものとなるよう切望。小早川社長は、協力企業と協働した現場/現物の徹底把握を通じ無事故・無災害を達成したフランジ型タンク解体工事の事例を紹介し、「改善活動が効果を上げた事例を活かしていきたい」と強調。さらに、2018年に発生した3号機使用済み燃料プールからの取り出しに用いる燃料取扱い設備のクレーン不具合を振り返り、部品の海外調達にも鑑み「標準化の重要性を感じている」として、品質管理上の問題への対応も含め、改善活動は広範囲にわたる認識を示した。12月末に福島第一廃炉の中長期ロードマップが改訂され、2号機からの燃料デブリ取り出しが明記されたが、小早川社長とともに意見交換に出席した福島第一廃炉推進カンパニープレジデントの小野明氏は、「今後は分析業務が重要となってくる」として、現場の変化に応じた人材確保・技術力向上に努めていく考えを強調した。
- 16 Jan 2020
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