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規制委、九州電力玄海の使用済燃料乾式貯蔵施設で審査書案を取りまとめ
原子力規制委員会は3月17日の定例会合で、九州電力玄海原子力発電所の使用済燃料乾式貯蔵施設に関し、設置許可基準に「適合している」とする審査書案を取りまとめた。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会を経て正式決定となる運び。九州電力は2019年1月、玄海原子力発電所の使用済燃料貯蔵の増強に向け、リラッキング(使用済燃料プール内のラックの材質改良と稠密化を図ることで、貯蔵容量が約1.5倍に増加)および乾式貯蔵施設設置に係る申請を規制委員会に対し行った。そのうち、リラッキングに関しては、2020年3月までに原子炉設置変更許可取得および工事計画認可に至っている。電気事業連合会が7月に発表した「使用済燃料対策への対応状況」によると、2020年3月時点で、九州電力玄海発電所の使用済燃料は、管理容量1,190トンに対し貯蔵量が1,010トンに上っている。同社では、今回審査書案取りまとめに至った乾式貯蔵施設の2027年度運用開始を目指しており、玄海発電所についてはリラッキングと合わせて730トン分の貯蔵能力増強が図られることとなる。この他、17日の規制委員会会合では、日本原子力研究開発機構の研究炉「JMTR」の廃止措置計画認可などが決定した。
- 17 Mar 2021
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福島第一原子力発電所事故発生から10年で東京電力・小早川社長が訓示
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故発生から10年を迎え、東京電力の小早川智明社長は3月11日、社員らに対し訓示を行った(=写真上)。〈動画は こちら〉発災時の14時46分より1分間の黙とうをささげた後、小早川社長は、震災による犠牲者への哀悼の意を述べるとともに、「今なお福島の方々を始め、広く社会の方々に多大なご負担・ご心配をかけていることに心よりお詫び申し上げる」と改めて表明。その上で、社員らに対し、(1)過去から学び実践に移す、(2)常に社会やお客様の目線で考える、(3)全員が主役となって安全性や品質を高め続ける――ことの重要性を強調。事故を振り返り「防ぐことができなかった根本原因や背後要因を省み日常業務に活かして欲しい」と、一人一人の行動姿勢が体現化されることを求めた。さらに、福島県出身の野口英世の名言「過去を変えることはできない。人生で変えることができるのは自分と未来だけ」をあげ、「過去から学び、心一つにして福島の復興、福島の未来のために、それぞれの持ち場で全力を尽くしてもらいたい」と訴えかけた。続いて福島復興本社から、大倉誠代表が訓示に立ち、「福島への責任に立ち向かうことは会社の経営方針」と強調。3月末で現職を退く同氏は、発災後の避難住民の方々への支援活動を振り返りながら、信頼失墜の厳しさを改めて認識した上で、「今から5年先か、10年先か、廃炉を成し遂げたときか、『東京電力は責任に向き合い続けた』と言われる日がきっと来る。3月11日の振り返りを新しい力に」と、社員らの今後の活躍に期待を寄せた。東京電力の取組に対し、電気事業連合会の池辺和弘会長は同日発表のコメントの中で、「安全確保を最優先とした廃炉や、生活環境の再生、産業基盤・雇用機会の創出といった取組を、引き続き全力で支援していきたい」としている。また、原子力規制委員会では、更田豊志委員長が、発災10年の節目に際し同委発足時の「初心を忘れぬよう」として所感を表明(=写真下)。更田委員長は、まず、原子力行政組織における推進と規制との分離を巡り議論となったいわゆる「規制の虜」(規制当局が被規制産業である事業者の利益に傾注する〈国会事故調報告書〉)の再来を危惧。さらに、「世界最高水準」と呼ばれる新規制基準においても「継続的改善を怠ることがあってはならない」と、慢心に陥ることを戒めた上で、改めて「新たな安全神話を生まないよう十分注意していく」との決意を述べた。その上で、原子力規制庁や事業者に対して、現在進めている審査・検査のガイドライン整備などが思考停止をもたらすことを懸念し、「安全を求める戦いは想定外を減らす戦いであって、新たに考え続けることが常に不可欠。時には白紙に戻って考える『ちゃぶ台返し』も必要」と警鐘を鳴らした。〈動画は こちら〉※写真は、いずれもインターネット中継より撮影。
- 11 Mar 2021
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規制委、福島第一事故に係る調査・分析で中間取りまとめ案
原子力規制委員会は1月27日の定例会で、同委の福島第一原子力発電所事故調査に係る検討会による中間取りまとめ案について報告を受けた。取りまとめ案は今後、パブリックコメントを経て、3月上旬にも正式決定となる運び。同検討会は2019年、廃炉作業の進捗に伴う原子炉建屋内へのアクセス性向上、新たな知見・情報の蓄積を踏まえ、約5年ぶりに再開。原子炉格納容器からの放射性物質の放出、原子炉冷却に係る機器の動作状況など、事故のプロセス解明に向け調査・分析を進めてきた。中間取りまとめ案では、事故発生時の2号機のベント(格納容器内の放射性物質を含む気体を外部環境に放出し内部の圧力を降下させる措置)について、原子炉格納容器から排気筒に通じるベントライン中に設置されたラプチャーディスク(外部環境との最終バウンダリ)が破裂しておらず、ラプチャーディスク付近の線量率がベントに2回成功した3号機より3~4桁低かったことから、「一度も成功しなかった」と判断。一方、ベントが行われた1、3号機についてはベントガスの逆流を結論付け、1号機では「水素が原子炉建屋に逆流した可能性がある」とみて、水素爆発との関連性を今後の調査検討課題の一つとしてあげた。また、1~3号機原子炉格納容器上部のシールドプラグ(直径約10m・厚さ60cmの鉄筋コンクリートを3枚重ねた蓋)下方の放射能汚染レベルが高いことを確認したとして、「安全面と廃炉作業面において非常に重要な意味を持つ」などと指摘。特に、2、3号機については、シールドプラグの上から1層目と2層目の間に大量のセシウム137(20~40ペタベクレル)が存在すると結論付けた。3号機水素爆発に係る「多段階事象説」のイメージ(原子力規制委員会発表資料より引用)福島中央テレビ他の技術協力を得て行われた水素爆発の詳細分析で、3号機で発生したものについては、超解像処理(毎秒60コマ)や地震計記録などから、複数の爆発・燃焼が積み重なった「多段階事象」との見方を示した。更田豊志委員長は、定例会終了後の記者会見で、今回の調査・分析を通じて確認されたシールドプラグの汚染状況について、「廃炉戦略に与えるインパクトは非常に大きい。遮蔽の施し方など、簡単ではないだろう」と述べた。
- 27 Jan 2021
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更田規制委員長が年明け後初の会見、コロナ情勢に関し職員の業務体制に懸念
原子力規制委員会の更田豊志委員長は1月6日、年明け後初の記者会見を行った。新型コロナウイルスの新規感染者数が急増し、7日にも首都圏4都県への緊急事態宣言が発令されるとの報道に関し、更田委員長は、不正アクセスに伴い昨秋より通信ネットワークへの支障が継続している状況から、「どのくらい職員のテレワークが円滑にできるか」などと、業務と感染症対策とのバランスが難しい問題となっていることを強調。規制委員会では現在、内閣サイバーセキュリティセンターの支援も仰ぎ、復旧に当たっているところだが、会合の傍聴登録など、外部からの連絡は電子メールが使えず、電話やFAXによる受信となっている。また、検査要員の現地移動に関わる制約から、今後の政府の方針次第で検査対応の遅れがさらに深刻化することに懸念を示した。なお、2020年4月の緊急事態宣言発令時には、会合の開催頻度調整や一般傍聴受付の休止、原子力規制庁職員のテレワーク推進などの対応をとっている。また、6日の定例会合で規制庁より報告された新規制基準適合性に係る審査状況に関し、審査が進展している中国電力島根原子力発電所2号機について、「審査書案」取りまとめの見通しを問われたのに対し、「終盤にあるのは事実だが、まだ見通しをいえる状況にはないと思う」と述べた。規制庁では、審査中の原子力発電プラントについて、約80項目ある審査の細目ごとに、進捗状況を4つのステータスに分類・整理した一覧表を随時委員会に報告しており、現在、島根2号機に関しては、地震動評価や耐津波設計方針などで幾つか論点が残されているものの、ほとんどの項目が最終ステータスの「概ね審査済み」となっている。
- 06 Jan 2021
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規制委、MOX燃料加工工場に関し新規制基準で事業変更許可
原子力規制委員会は12月9日の定例会合で、日本原燃のMOX燃料加工工場(青森県六ヶ所村)に関し、新規制基準に「適合している」として、原子炉等規制法に基づき事業変更許可の発出を決定した。2014年1月の審査申請からおよそ7年を経ての判断。7月には同じく六ヶ所再処理工場が事業変更許可に至った。再処理工場で使用済燃料からウランとプルトニウムを回収し、混合酸化物燃料(MOX燃料)として軽水炉で再利用する(プルサーマル発電)。今回のMOX燃料加工工場に係る決定に際し、規制委は10月7日に「審査書案」を取りまとめ、経済産業相への意見照会、パブリックコメントに付していた。計545件寄せられた一般からの意見では、六ヶ所再処理工場操業の見通し、プルサーマル計画の具体性など、核燃料サイクル政策に関するものが多くを占めた。定例会合終了後の記者会見で、更田豊志委員長は、原子力委員会が示すプルトニウムの需給バランスにも言及し、「再処理とMOX燃料加工はセット。加工することによって安全性、核拡散抵抗性が高まる」と述べ、施設の早急な運用開始の必要性を示唆した。MOX燃料加工工場は六ヶ所再処理工場と同じく2022年度上期のしゅん工が目標となっている。日本原燃は「安全を最優先に建設工事を進め、地域の皆様に安心してもらえるよう、当社社員、グループ会社、一丸となってしゅん工に向けて全力で取り組んでいく」と、電気事業連合会は「原子燃料サイクルの実現に向けた大きな一歩。今後も業界一丸となって日本原燃を支援していく」とのコメントをそれぞれ発表した。〈日本原燃コメントは こちら、電事連コメントは こちら〉
- 09 Dec 2020
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規制委が日本原燃と意見交換、六ヶ所再処理工場に係る工事計画審査や技術力維持など
原子力規制委員会は11月18日の臨時会合で、日本原燃の池辺和弘会長、増田尚宏社長と意見交換を行った(=写真、インターネット中継)。増田社長が意見交換に招かれるのは2019年2月以来2度目。同社の六ヶ所再処理工場が2020年7月に新規制基準に「適合する」として事業変更許可に至ったことから、今後の施設のしゅん工、安全・安定操業に向けた取組を中心に、経営層と現場との意思疎通、技術力の維持などについて話し合われた。六ヶ所再処理工場の規制対応に関しては、引き続き設計・工事計画の認可申請や安全対策工事など、膨大な作業量が見込まれているが、池辺会長は、電気事業連合会会長も務める立場から、「業界一丸となって日本原燃に寄り添いながら、しゅん工・運転に必要な支援に全力をあげる」と強調。増田社長は、設備工事計画の認可申請について、効率的な審査を念頭に、申請対象設備の選定と類型化を図り、12月の第1回申請に向けて全体計画を11月中にまとめる考えを示した。新規制基準適合性審査からさかのぼり、六ヶ所再処理工場は2008年以降、全体の本格的運転(2006年3月に開始したアクティブ試験で発電所の試運転に相当)が長期間行われていないことから、今回の意見交換で増田社長は、特に、フランスの再処理施設「ラ・アーグ工場」での実機訓練など、運転員の技術力維持・向上の取組について説明。委員からは、電力会社との企業文化の違い、自然災害への備え、労働安全確保、セキュリティ対策に関する質問があった。これに対し、増田社長は、若手社員による現場の案内・説明を通じたマイプラント意識の醸成、安全ハンドブックや危険体感施設を活用した安全意識の徹底や、人材育成に関しては、再処理工場の特性から化学プラント関係者の話も参考にしながら取り組むなど、今後のしゅん工・操業に相応しい体制構築を目指すとした。六ヶ所再処理工場は2022年度上期のしゅん工が見込まれている。東日本大震災の発災当時、増田社長は東京電力で福島第二原子力発電所長を務めていたが、これに関し、地震・津波対策の審査を担当する石渡明委員は、「自然災害リスクの話をすれば誰でも聞くと思う」と、同氏の現場指揮に当たった経験が伝承・活用されることを期待した。
- 19 Nov 2020
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規制委、むつ中間貯蔵施設の新規制基準審査で事業変更許可
原子力規制委員会は11月11日の定例会合で、リサイクル燃料貯蔵のむつ中間貯蔵施設(青森県むつ市)に関し、新規制基準に「適合している」として、原子炉等規制法に基づき事業変更許可の発出を決定した。本件については、9月2日に「審査書案」が取りまとめられ、原子力委員会と経済産業相への意見照会、パブリックコメントに付されていた。同施設は、東京電力と日本原子力発電の原子力発電所から発生する使用済燃料を再処理するまでの間、安全に貯蔵・管理するもので、最終的な貯蔵容量は5,000トン(現在の国内貯蔵容量の2割程度)を目指し整備が進められている。2013年には貯蔵建屋(1棟目)が完成。2016年に新規制基準適合性に係る審査が申請され、およそ4年を経て事業変更許可に至った。核燃料サイクル施設に係る新規制基準適合性審査に関しては、日本原燃六ヶ所再処理工場について7月29日に事業変更許可が発出されたほか、同MOX燃料加工工場も10月7日に「審査書案」了承となるなど、進展が見られている。会合終了後の記者会見で、更田豊志委員長は、むつ中間貯蔵施設の審査に関し、「全体的に非常に静的な施設で、安全上の議論になるところはそれほど多くなかったが、非常に時間がかかった」と、所感を述べた。今回の事業変更許可を受け、リサイクル燃料貯蔵は、「安全性向上への取組に終わりはない、という意識のもと、事業開始に向け全力で取り組んでいく」とのコメントを発表した。
- 11 Nov 2020
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規制委が電力4社のCNOを招き意見交換、「安全性向上評価」活用など議論
原子力規制委員会の安全性向上に関する検討チームは10月16日、東京電力、中部電力、関西電力、九州電力の原子力部門責任者(CNO)と意見交換を行った。規制委では、事業者経営トップと安全文化醸成活動で、複数社のCNOを集め技術的課題で意見交換を行っているが、同検討チームは許認可プロセスのあり方なども含め、今後の原子力施設の継続的な安全性向上に向けて有識者を交え幅広く議論するもの。同日の会合で、各社は新規制基準で原子力発電プラントの定期検査ごとに求められる「安全性向上評価」の活用を焦点に意見を表明。その中で、九州電力常務執行役員の豊嶋直幸氏は、再稼働の先陣を切った川内1、2号機を始め、玄海3、4号機で、これまで計8件の「安全性向上評価」届出を行ったとした。それぞれ5、7月に実施した川内1、2号機「安全性向上評価」(リンクは1号機に関する九州電力発表資料)での自主的な安全裕度向上対策として、桜島の火山灰層厚評価を踏まえた燃料取替用水タンク上部における溶接強化工事の実施をあげた上で、「事業者自らの安全性向上対策を実行できる範囲の拡大」に向け、ガイドライン整備の検討を規制委員会に要望。各社とも同様の意見を述べたのに対し、行政法の立場から板垣勝彦氏(横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授)は、「新しい技術を導入する際に、現在の仕組みがディスインセンティブとなっているのでは」と、これらを共通の課題ととらえ議論を深めていく必要性を示唆した。関西電力副社長の松村孝夫氏は、美浜3号機事故後の安全文化醸成活動や、同社系列の原子力安全システム研究所による研修カリキュラム開発などの取組を説明。「トップのコミットメントと現場のマインドは車の両輪」と強調し、協力会社との意思疎通を今後の改善点の一例にあげた。東京電力常務執行役の牧野茂徳氏は、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた安全性向上対策を説明。その中で、「専門性から一歩離れたところから安全性向上に対する気付きを得る取組」の近況として、新入社員も含めた安全性向上コンペで若手から意外な発案が出ることや、女性社員による「クールなでしこパトロール」のメリットをあげ、「現場を見て新たに発見する」重要性を強調。自社の取組に加え、中部電力副社長の倉田千代治氏は、原子力エネルギー協議会(ATENA)と規制委員会による公開の技術的議論に触れ、「全電力で共通する課題があり、議論の成果を個社に展開していくもの」と意義を述べた。 更田規制委員長(インターネット中継)各社から安全性向上の取組に関する説明を受け、関村直人氏(東京大学工学系研究科教授)は、「マネジメントシステムの一つに位置付けられている」と、経営上重点化されていることを評価。焦点となった「安全性向上評価」は再稼働が前提となっているが、同日の意見交換を振り返り、審査中のプラントへの新技術導入に係る議論が不十分だったことを指摘した。更田豊志委員長は、「安全性向上評価」に関し「社会からの信頼を得ることが必要」などと質的向上の重要性を述べたほか、各社に対し、間もなく発生から10年を迎える福島第一原子力発電所事故について改めて振り返るよう求めた。
- 16 Oct 2020
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規制委、新規制基準でMOX燃料工場の審査書案を了承
原子力規制委員会は10月7日の定例会で、日本原燃のMOX燃料工場(青森県六ヶ所村)について、新規制基準に「適合している」とする審査書案を了承した。今後、経済産業相への意見照会、パブリックコメントを経て正式決定となる運び。同施設の新規制基準に係る審査は、2014年1月に、先般事業変更許可に至った六ヶ所再処理工場とともに申請された。原子力規制庁の説明によると、計96回の審査会合と3回の現地調査を行い、立地点を同じくする再処理工場と概ね並行して審査が進められた。重大事故としては、(1)臨界事故、(2)核燃料物質等を閉じ込める機能の喪失――に対して審査を行い、臨界に関しては、操作員による所要の対処などにより「技術的な想定を超えて複数回のMOX粉末の誤搬入を繰り返しても発生は想定できない」とする事業者の評価・対策の妥当性を確認。更田豊志委員長は、定例会終了後の記者会見で、再処理工場も含めた一連の核燃料サイクル施設の審査の進展に関し、原子力発電所と異なる施設の特徴や潜在的リスクから、今後の運用・運転に必要な設計・工事計画認可などに向けて、「より高い山はこれからだと思っている」と強調。また、MOX燃料に関し、技術的観点から「製造後すぐ燃焼した方が使いやすい」と、国産のメリットにも言及した。日本原燃ではMOX燃料工場の2022年度上期しゅん工を目指している。同日の定例会では、四国電力伊方発電所2号機の廃止措置計画の認可も決定。2059年度までを見込む廃止措置期間は4段階に区分されており、今回、第1段階の解体工事準備期間について認可となった。
- 07 Oct 2020
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原子力規制委員の伴氏と山中氏が再任会見、2期目に向け「初心を忘れずに」
9月19日付で再任となった原子力規制委員会の伴信彦委員と山中伸介委員が24日、記者会見を行った。伴委員は2015年、山中委員は2017年にそれぞれ委員に就任している(山中委員は、更田豊志委員の任期中の委員長就任に伴う後任で、今回は残任期間満了による再任)。山中委員は、プラント関係の審査に携わる立場から「福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こしてはならない。微力ながら福島復興の役にも立てるよう努めていきたい」と抱負を語り、5年間の経験を積んだ伴委員は、「本当に自分でいいのか、務まるのかという思いだった」と就任当時を振り返った上で、両委員ともに「初心を忘れずに」と、2期目の職務に当たる決意を述べた。伴委員(インターネット中継)4月に運用を開始した新検査制度に関し、山中委員は、「新型コロナウイルス感染症対策により若干の遅れが生じているが、大きなトラブルもなくスタートできたと思う」とする一方、「1、2年経たないと具体的成果は見えてこない」とも述べ、今後、国民の理解が得られるよう新制度の実効性向上に努めていく考えを強調。伴委員は、「原子力規制庁職員の専門性は決して満足できる状況にはない」として、就任以来懸念を示してきた組織の原子力人材育成の課題に対し、安全研究の拡充などを通じ取り組んでいく考えを改めて述べた。また、最近の案件に関しては、9月23日の定例会合で取り上げられた東京電力柏崎刈羽原子力発電所の新規制基準適合性審査における保安規定および設計・工事計画の認可について、山中委員は、「技術的審査はほぼ終わった」と発言。保安規定には、東京電力が規制委に確約した7項目(福島第一廃炉の完遂、経済性より安全性を優先など)が定められることとなり、山中委員は、「社長の責任が果たせるかを焦点に審査に臨んだ」と振り返った上で、今後も同社の対応を監視していく姿勢を示した。伴委員は、帰還困難区域の放射線防護対策について、「除染は被ばくを少なくする一つの手段。事故から10年目となり当初と比べ線量が下がっている。そのような地点も除染する必要があるのか、状況は変わってきている」などと述べ、自治体やコミュニティの意向も踏まえ柔軟な対応が求められることを強調した。
- 24 Sep 2020
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規制委、四国電力伊方発電所の乾式貯蔵施設で設置変更許可を決定
原子力規制委員会は、9月16日の定例会合で、四国電力伊方発電所の使用済燃料貯蔵対策となる乾式貯蔵施設(=図、四国電力発表資料より引用)の敷地内設置に関し、原子炉等規制法に基づき設置変更許可を発出することを決定した。伊方発電所で発生した使用済燃料を六ヶ所再処理工場へ搬出するまでの間、一時的に貯蔵するもの。同施設の審査は2018年5月に規制委員会に申請された。2020年6月に、乾式貯蔵施設の設置では初のケースとして原子炉等規制法に定める基準に「適合している」とする審査書案の了承となり、原子力委員会および経済産業相への意見照会、パブリックコメントが行われていた。伊方発電所では3号機が稼働中だが、使用済燃料貯蔵容量1,080トンに対し乾式貯蔵施設により貯蔵容量が500トン増強(審査申請時)。使用済燃料を収納する乾式キャスクは、4つの安全機能(閉じ込め、臨界防止、遮蔽、除熱)を有し、使用済燃料を輸送容器に詰め替えることなく発電所外へ搬出できる。2024年度の運用開始を目指す。電力各社では、使用済燃料の貯蔵対策に取り組んでおり、九州電力玄海原子力発電所については、2020年3月にリラッキング(プール内の使用済燃料ラックセルの間隔を狭めることにより貯蔵能力を増強)の工事計画が規制委員会より認可された。乾式貯蔵施設の敷地内設置も、玄海原子力発電所(440トン)、中部電力浜岡原子力発電所(400トン)の審査が進められている。9月2日には、東京電力と日本原子力発電によるリサイクル燃料貯蔵「むつ中間貯蔵施設」(3,000トン)について、新規制基準適合性に係る審査書案が取りまとめられたところだ。
- 16 Sep 2020
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規制委、むつ中間貯蔵施設の審査書案了承
原子力規制委員会は9月2日の定例会合で、リサイクル燃料備蓄センターが新規制基準に「適合している」とする審査書案を了承した。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会、パブリックコメントを経て正式決定となる運び。同施設は、東京電力と日本原子力発電の原子力発電所から発生する使用済燃料を、再処理工場へ運び出すまでの間、専用の鋼鉄製容器(金属キャスク)で安全に貯蔵・管理するもの。いわゆる中間貯蔵施設で、両社が青森県むつ市に設立したリサイクル燃料貯蔵(株)により、2010年に工事が開始され、2013年に燃料貯蔵建屋3,000トン分(最大貯蔵能力:金属キャスク288基)が完成。その後、新規制基準への適合性確認のため、2014年1月に審査の申請がなされ、およそ6年半を経て審査書案の取りまとめに至った。審査では、外部事象に関して、事業者が施設近傍の活断層「横浜断層」(15.4km)を震源とする地震動や、敷地付近の最大津波高さで青森県想定の11.5mに対し大きく保守性を持たせた23mの「仮想的大規模津波」を設定・評価しており、これらを踏まえた設計方針についても妥当性を確認したとしている。また、金属キャスクの臨界防止、遮蔽、閉じ込め、除熱などの機能が基準に適合するものと判断。会合終了後の記者会見で、更田豊志委員長は、「ずいぶん時間がかかった」と、審査の所感を語った。また、同施設の運用開始後に関し「出ていく先がないままキャスクの許容年数が近付く」ことに不安を示し、バックエンド対策全般について長期的視点でとらえておく必要性を強調した。核燃料サイクル施設では、7月29日に日本原燃の六ヶ所再処理工場が、8月26日に同高レベル放射性廃棄物管理施設が、それぞれ新規制基準適合性審査を経て、原子炉等規制法に基づき同社に変更許可が発出されている。同MOX燃料加工工場の審査についても、更田委員長は、「大きな論点はもうない」と述べ、審査書案取りまとめの段階に入りつつあることを示唆した。
- 03 Sep 2020
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帰還困難区域の避難指示解除拡大に向け、土地活用を主目的とした放射線防護対策策定へ
原子力規制委員会は8月26日の定例会合で、帰還困難区域のうち、自治体の計画に基づき線量の低下状況を踏まえ避難指示を解除し居住可能とすることを目指す「特定復興再生拠点区域」以外(拠点区域外)について、今後の土地活用に向けての住民往来を考慮した放射線防護対策を了承。飯舘村による復興公園整備など、拠点区域外の避難指示解除に関わる自治体や与党からの構想・要望を受けた検討の経緯について、内閣府原子力災害対策本部が説明した。今回了承された放射線防護対策は、住民が日常生活を営むことは想定せず、公園利用などの土地活用に対する地元の意向を踏まえたものだが、住民の安全確保の観点から、避難指示解除はこれまでと同様に「年間積算線量が20mSv以下となることが確実であること」が前提。具体的には、土地活用される区域を往来する(1)住民の個人線量の把握・管理、(2)住民の被ばく線量の低減に資する対策、(3)住民にとってわかりやすく正確なリスクコミュニケーション・健康不安対策――を総合的・重層的に講じることとしている。例えば、住民の個人線量の把握・管理については、土地活用される区域の入り口付近に個人線量計の貸出所を設け往来に伴う被ばく線量を住民自らが確認することや、環境整備に従事する作業員の個人線量の活用があげられた。3月に帰還困難区域で避難指示が解除された双葉駅・大野駅でも、個人線量計の貸し出し・希望者への結果通知が行われている。
- 26 Aug 2020
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規制委、新検査制度運用開始で現地事務所長から意見聴取
原子力規制委員会は8月19日の定例会合で、2020年度より運用を開始した新たな検査制度の第1四半期(4~6月)実施状況について、原子力規制庁から報告を受けた。新検査制度は、2016年に受け入れたIAEA総合規制評価サービス(IRRS)による「さらなる実効性を確保すべき」などとする指摘から、事業者の活動全般を、いつでも、どこでも、広く確認・評価し(フリーアクセス)、その結果に応じた措置を講じていくよう従前制度への見直しが図られている。今回の報告によると、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により、本庁の検査官が中心となる「チーム検査」は当初予定されていた18件中、実施は4件に留まった。 複雑な事象への対応は「事業者への刺激」となると強調する山賀氏(インターネット中継)また、事業者の日常的な安全活動を継続的に監視する「日常検査」に関しては、現地原子力規制事務所の所長として、柏崎刈羽の水野大氏(当時)、美浜の山賀悟氏、六ヶ所の服部弘美氏(当時)の3名が所感を述べた。その中で、水野氏は、「検査官の専門知識を活かし、原子力安全を包括した検査ができた」と、一定の評価を示す一方、検査対象の見極めに関し「空振り」よりも「見逃し」の心配をあげ、今後も事例の積み重ねや検査官の知識レベル向上などに努めていく必要性を強調。また、事業者の対応について、「フリーアクセスの実施にも非常に協力的だった」と、新検査制度への理解や考え方の変化を認めた上で、「納得いくものとなるには、まだまだ時間がかかる」などと、規制側・被規制側ともにさらなる継続的改善が図られるべきとした。山賀氏は、美浜3号機の海水ポンプ停止事象に関し事業者自らによる原因分析を深めさせたことに触れ、「スキルアップにつながった」との感触を受けたと評価。服部氏は、所管する核燃料サイクル施設の発電炉との違いに触れ、今後の効率的な検査の維持に向けて「検査官の育成・確保が重要な課題」と指摘した。
- 19 Aug 2020
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規制委、日本原燃の六ヶ所再処理工場に係る新規制基準審査で変更許可を発出
原子力規制委員会は7月29日、日本原燃の六ヶ所再処理工場について、新規制基準に「適合している」との審査書を決定し、同社に対し原子炉等規制法に基づき変更許可を発出。2014年1月の審査申請から約6年半を要した。同案件については、2020年5月13日に審査書案が取りまとめられ、30日間のパブリックコメントが行われていた。また、再処理施設の運転に係る審査は同委として初めてのケースであることから、審査書の決定に際して行われる経済産業相への意見照会では、エネルギー基本計画との整合性を含め意見を求めており、これに対し、原子燃料サイクル推進の基本的方針から、六ヶ所再処理工場のしゅん工に関して「同計画と整合している」との回答があった。29日の規制委員会定例会合で、原子力規制庁の市村知也新基準適合性審査チーム長代理らがパブリックコメント結果について説明。計574件の意見が寄せられたとしている。これを受けて取りまとめられた審査書の最終案を、更田豊志委員長他、4名の委員いずれも決定することで了承した。更田委員長は、同日の定例記者会見で、「品質管理の問題で審査が一旦中断することもあり、共通の理解を得る上で結構な時間がかかった」と、長期にわたった審査を振り返った。今後、六ヶ所再処理工場の運転開始に向けて設備工事計画の審査などが必要となるが、膨大な数の対象機器類を擁することから、更田委員長は「非常にチャレンジングだ」と、かなり難航する見通しを示した。今回の変更許可を受け、日本原燃の増田尚宏社長はコメントを発表し、「再処理工場のしゅん工、その後の安全な操業に向けての大きな一歩」との認識を示した上で、安全性向上対策の確実な実施、継続的な改善に努める決意と、立地地域からの支援に対する謝意を述べた。同社では2021年度上期の再処理工場しゅん工を予定。また、電気事業連合会の池辺和弘会長も「再処理工場のしゅん工に向けた大きな節目であり、大変意義深い」とコメント。原子力発電のベースロード電源としての活用、原子燃料サイクルの重要性を強調し、今後も業界一丸となって日本原燃を支援していくとしている。
- 29 Jul 2020
- NEWS
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村からの脱却
「公益事業を担う電気事業者として今回の問題を大変重く受け止めており、多大なるご心配やご迷惑をお掛けしていることを、同じ電気事業に携わる者として改めて心よりお詫び申し上げる」この発言を聞いた時、率直に言って強い違和感を禁じ得なかった。2019年10月18日、電気事業連合会会長の定例会見における冒頭の挨拶の一部分だ。関西電力の役職員が高浜発電所の立地自治体である福井県高浜町の故森山栄治元助役から多額の金品を受領していたことが判明、電事連会長が交代した直後の会見である。この事件、最初にニュースを聞いた際、原子力発電所の立地自治体の元幹部が電力会社に世間の常識を超える金品を提供した理由がまず全く理解できなかった。関電の第三者委員会が今年3月14日に提出した『調査報告書』を読んで合点が入ったのは、森山氏が原子力発電所に関連した建設事業や警備事業に関わっていたことである。報告書には、「森山氏が社会的儀礼の範囲をはるかに超える多額の金品を提供したのは、その見返りとして関西電力の役職員に、自らの要求に応じて自分の関係する企業へ工事等の発注を行わせ、そのことによってそれらの企業から経済的利益を得る」ことが主たる目的であったと判断するのが、「自然かつ合理的」だと書かれていた。立地自治体に強力な影響力を持ち、関電に対して強い立場にあると同時に、関電から事業を受注する側でもあったわけだ。非常に素晴らしいビジネスモデルと言えるだろう。ただし、金品の提供は1990年代から認められると報告書にある。当時、電力価格は総括原価方式によって市場における競争なく決定されていた。キロワットアワー単位にすれば微々たる額とは言え、電力料金を原資に発注された事業で得られた資金が電力会社の役職員に還流していたとすれば、それは公益事業として大きな問題なのではないか。原子力発電所を建設し、運転して安定的に電力を供給するには、立地自治体との良好な関係が極めて重要であることは想像に難くない。また、地域によって様々な事情もあるだろう。しかし、少なくとも2011年の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故、その後の原子力を取り巻く大きな環境の変化、制度設計の改革は、事故の当事者である東京電力のみならず、原子力に関わる業界にとってそうした古くから慣行を断ち切らなければならない機会だったはずだ。「同額程度の返礼をした」、「返すつもりで保管していた」との申し開きもあったようだが、1)受け取った金品を会社でなく自宅に保管していたこと、2)事件の発覚が金沢国税局による森山氏の関係する会社への税務調査であったこと…の2点により、どのような言い訳も空疎に聞こえてしまう。ちなみに、電事連の会見に違和感を感じたのは、同連合会は電力業界の団体とは言え、本件はあくまで一会員企業の不祥事であるからだ。調査報告書を読む限り、この件について電事連、他の電力会社に責任があるとは思えない。自らの責任の範囲外のことを謝罪するのは、果たして正しいこと、良いことなのだろうか。むしろ、電事連会長がお詫びされたことにより、業界全体にこうした慣行があるのではないかと社会に疑われかねない。原子力発電所を所有・管理・運転する他社にそうした事例がないのであれば、電事連は関電により厳しい姿勢で臨むべきだったと考える。それが、「原子力村」と揶揄される状況からの脱皮だろう。電力・ガスシステム改革により、電力事業は自由化され、電気事業者各社は名実ともに競合になった。業界団体も当然ながらあり方を変えていくべきなのではないだろうか。 立地自治体に権限はあるのか?今回の関電の事件を通じて改めて感じるのは、原子力発電に関する電力会社、国、そして地方自治体の関係の難しさだ。例えば、2016年7月の鹿児島県知事選挙では、新人(当時)の三反園訓前知事が選挙の公約として『6つのお約束』を発表、そのなかには「熊本地震の影響を考慮し、川内原発を停止して、施設の点検と避難計画の見直しを行う」とあった。しかし、立地自治体の首長とは言え、県知事には原子力発電所の稼動に関する法的な権限がない。権限のないことが公職の座を争う選挙の公約とされるのは、冷静に考えれば非常に不思議なことである。改めて書くまでもなく、原子力に関する国の法令で、発電所の稼動・停止に関して地方自治体に何らかの権限を与える規定は存在していない。原子力規制委員会が規制基準に適合していると認めた場合、稼動の判断は事業者、即ち発電所を保有・運営する電力会社に委ねられる。福島第一原子力発電所の事故を背景に原子力に関わる法制、国の組織が一新され、2012年9月19日、国家行政組織法第3条に基づく原子力規制委員会が設立されたが、それ以前の制度でも、それ以後の制度の下でも、立地自治体に発電所の稼働に関する権限がないのは同様だったのである。権限がないと言うことは、即ち法的な責任もないと言うことだ。仮に原子力発電所で事故が起こり、周辺環境に何らかの被害が生じた場合、その責任は専ら国と事業者が負わなければならない。これは、原子力発電所が立地する自治体の首長、議会を守る意味もあると考えられる。そうした法体系の下、立地自治体が原子力発電所の稼動に権限を持つとの解釈があるのは、電力会社と立地自治体の間で締結したいわゆる「安全協定」があるからだろう。この安全協定は、原子力発電所を保有・管理・運転する電力事業者が、立地自治体、場合によっては立地自治体の周辺自治体に対し、安全の確保や放射性廃棄物、核燃料などの厳格な管理、自治体による立入調査の受け入れや事業計画などの報告、住民に損害が生じた場合の賠償、さらには事故・故障時の連絡などに関して約束事項を列記したものであり、言い換えれば立地自治体、周辺自治体との信頼関係を文書にしたものだ。原子力発電は、福島第一原子力発電所の例で衝撃的なまでに実感させられたように、万が一事故があった場合には、立地自治体、周辺自治体に筆舌に尽くし難い大きな負担を強いる。従って、事業者は安全の確保を最優先するだけではなく、それらの自治体に対し日頃から十分な配慮をすべきであると共に、理解を得るための地道な努力が極めて重要であることは間違いない。安全協定は、そのための重要な役割を果たしている。ただし、いかなる私的協定も法令を超えるものではないし、そうした規定は盛り込まれていないはずだ。原子力発電所の起動・運転・停止の決定は、法令上、原子力規制委員会の監督の下、あくまで電力事業者にその責任と権限が与えられているのである。 求められる「果断な政治判断」あってはならないことだが、原子力発電所に再び大きな事故が起こり、周辺の住民に何らかの被害が及んだ場合、法令上、責任を負うのはあくまで国と事業者だ。しかし、立地自治体、周辺自治体がその発電所の稼働に権限を持って同意していた場合、それらの自治体も責任を問われる可能性がある。それは、自治体の役割としては余りにも重過ぎるだろう。だからこそ、法令は自治体に権限を付与していないのである。今後、日本で原子力発電を継続するのであれば、この点を再確認する必要があるのではないか。法令に基づく日本の制度設計では、原子力発電は国と事業者の責任において行うものだ。立地自治体、周辺自治体へ状況を丁寧に説明し、理解を求める努力を惜しんではならないが、既設の発電所に関して再稼働の同意を必須要件とすることは、国のエネルギー政策を極めて不透明にするだけでなく、立地自治体に背負い切れない責任を負わせることにもなりかねない。県道や港湾を管理する自治体が原子力発電所の稼働を妨げる何らかの措置を講じたとしても、日本は法治国家である。一致できない点は、法律に基づいて解決すべきだろう。これは、福島第一原子力発電所に積み上がったトリチウム水の問題にも言えることだ。資源エネルギー庁多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会は、今年2月10日に発表した『報告書』により、トリチウム水について、「社会的影響は大きい」としつつも、「海洋放出」、「水蒸気放出」を「現実的な選択肢」とした。この結論は、4月2日に公表された国際原子力機関(IAEA)による『フォローアップレビュー報告書』において、「包括的・科学的に健全な分析に基づいており、必要な技術的・非技術的及び安全性の側面について検討されている」と評価されている。また、原子力規制委員会の更田豊志委員長は、2018年8月22日の会見において、「規制を満たす形での(トリチウム水の)放出である限り、環境への影響やひいては健康への影響等は考えられない」と説明した上で、記者の「希釈することによって、総和を考慮した上で法令濃度、法令基準を下回れば、規制委員会としては海洋放出については是とするということで良いか」との質問に対し「おっしゃる通り」と回答した。こうした専門家の議論を見る限り、トリチウム水(更田委員長は「処理済水」と呼ぶように促している)の処理は、科学的問題ではなく、優れて政治・経済及び社会的課題と言える。福島第一原子力発電所の事故により、周辺にお住まいであった方々や企業が極めて厳しい状況に追い込まれ、農業関係者や漁業関係者が今も風評被害に苦しんでおられることは深刻な問題だ。一方、福島第一原子力発電所敷地内における処理済水の貯蔵が限界に近付いていることも間違いない。IAEAのフォローアップレビューには、処理済水の処分方針に関し、「安全性を考慮しつつ全てのステークホルダーの関与を得ながら、喫緊に決定すべき」とあった。それは、処理済水の貯蔵が増えれば増えるほど、むしろ管理、処分は難しくなり、法令基準を超える濃度のトリチウム水が環境に漏出するリスクが高まるからだろう。原子力発電所の稼働、福島第一原子力発電所の処理済水の最終処分、こうした問題に直面して、日本の政治は往々にしてコンセンサスの醸成を重視し、迅速性を欠いて結果をより悪いものとする傾向があるように思う。さらに、ステークホルダーを必要以上に増やすことが、森山氏のような人物の影響力を強める要因になっているのではないか。関係する方々の意見や悩みを真摯に聞き、対応策を立てることは極めて重要だ。ただし、その悩みや苦しみを早く緩和するためにも、法令に基づく果断な政治判断が求められているだろう。 過去のしがらみを断つか、原子力を諦めるか原子力を見る社会の目は依然として極めて厳しい。そうしたなか、原子力規制委員会は、昨年6月12日、テロ対策のための「特定重大事故等対処施設」が定められた期限内に完成し、使用前検査に合格しない場合、発電用原子炉施設の使用停止を命じると決定した。その結果、このスケジュールを満たせなかった九州電力川内原子力発電所1、2号機が既に停止、関西電力高浜発電所3、4号機も10月までに停止する見込みだ。規制委員会は、2015年5月、新たな規制基準における特定重大事故等対処施設の設置に関し、「本体施設の工事計画認可から5年間」の猶予期間を設けると決めた。つまり、5年間の時間があったにも関わらず、間に合わなかったわけだ。原子力発電所は堅固な地盤の上に立っており工事が想定外に難渋した、原子力規制委員会の審査に予想外の時間を要したなど、電力会社にしてみれば様々な止むを得ない事情があったのかもしれない。しかし、どのような理由があろうと、与えられた期間に課されたミッションを果たせなかったことは、明らかに電力会社の失態である。約束を守れなかった企業が原子力発電所を運転することについて、社会はそれを容認するだろうか。一方、規制委員会の立場に立つと、ここで電力会社の求めに応じてさらに猶予期間を設けていれば、同委員会の社会的・政治的信頼性が揺らいでいたと見られる。それは、例えば原子力発電所の運転差し止めを求めた仮処分申請、本訴で原子力発電に対する裁判官の目が厳しくなるなど、結果として原子力の未来をより暗いものにしていたであろう。規制委員会の判断は、その担う責任から全く正しいと言え、これは事業者側の立場に寄り過ぎた過去の原子力安全行政との決別を示す好例の1つになったと考えられる。また、去る6月15日、関西電力は、森山氏から金品の提供を受けていた5名の元同社取締役に対し、善管注意義務違反があるとして、総計19億3,600万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたと発表した。判断は司法に委ねられるが、これは同社が原子力村のしがらみを断ち、社会の信頼を回復する上で非常に重要な一歩になるのではないか。お叱りを恐れずに書けば、原子力事業を継続するためには、法令に基づかない古い慣行やシステムからの脱却が最重要課題の1つと言える。政府についても、コンセンサスの醸成に努力する一方で、ある段階に達した時はより果断な政治判断が必要なのではないか。官民ともにそれができなければ、様々なステークホルダーの利害調整が優先され、時間の経過が不祥事の温床となり、結局、原子力不要論が世の中の大勢になりかねないだろう。
- 28 Jul 2020
- STUDY
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規制委福島第一事故検討会が水素爆発映像の分析へ、テレビ局の協力も得て
原子力規制委員会の福島第一原子力発電所事故に関する検討会は、1、3号機で発生した水素爆発の映像を用いた調査分析に着手する。6月25日の同検討会会合に、映像を提供する福島中央テレビ/日本テレビが出席し説明に臨んだ。福島中央テレビによると、爆発の瞬間をとらえたカメラ(富岡町)は、福島第一、第二発電所から南西の方向に、それぞれ約17km、約10kmの距離にあり、JCO事故を受けて同局が2000年に設置したもの。その後、機材の高度化・増設が進められ、東日本大震災発生当時はバックアップ用となっていたが、山側の電源ルートを使用していたことにより停電を免れ唯一発電所の状況を撮影できた。爆発発生当時について、「原子炉建屋で白い煙が上がった」ことを確認し、放送中の番組を中断して映像を流し「いち早く発信することで報道としての責任を果たした」などと振り返った上で、「事故を検証し後世に伝えていくべき」と、映像提供の意義を強調。また、福島中央テレビと日本ニュースネットワーク(NNN)でつながる日本テレビの森田公三報道局長は、テレビが与えるインパクトの強さを改めて述べた上で、今回の映像提供に関し「事故の真相解明は極めて大事な責務」として、画像鮮明化などの技術面で引き続き規制委員会に協力していく姿勢を示した。同委検討会は昨秋5年ぶりに再開。前回までの会合で原子炉格納容器破損時の水素挙動が論点の一つとしてあがっていた。今後、水素爆発発生時の映像を用い、建物の変形、爆煙の広がり方、飛散物など、さらに調査分析を進め、年内を目途に一定の取りまとめがなされる見通し。
- 26 Jun 2020
- NEWS
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規制委、伊方発電所の使用済燃料乾式貯蔵で審査書案を了承
原子力規制委員会は6月24日の定例会で、四国電力伊方発電所における使用済燃料乾式貯蔵施設の設置について、原子炉等規制法で定める許可基準に「適合している」とする審査書案を了承した。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会、パブリックコメントを経て正式決定となる運び。乾式貯蔵施設の設置に係る審査書案了承は同委として初のケース。同施設は、伊方発電所で発生した使用済燃料を再処理工場へ搬出するまでの間一時的に貯蔵するもので、輸送・貯蔵兼用の使用済燃料貯蔵容器(乾式キャスク、高さ5.2m、直径2.6m)45基分の貯蔵容量を持つ。輸送・貯蔵兼用の乾式キャスクは、4つの安全機能(閉じ込め機能、臨界防止機能、遮蔽機能、除熱機能)を有し、使用済燃料を別の輸送容器に詰め替えることなく発電所外へと搬出できる。四国電力では乾式貯蔵施設を2023年度より運用開始する予定。原子力発電所を有する電力各社では、使用済燃料の貯蔵能力拡大に取り組んでおり、その一つとなる発電所敷地内の乾式貯蔵の審査は、2018年5月に申請された伊方発電所の他、九州電力玄海原子力発電所、中部電力浜岡原子力発電所について進行中。資源エネルギー庁が同年12月に発表した資料によると、乾式貯蔵施設を設置することで、使用済燃料貯蔵の余裕年数(同一サイト内で廃炉を除く全プラントの一斉稼働を仮定)が、伊方では11年から36年、玄海では3年から10年、浜岡では2年から8年へとそれぞれ延長すると試算されている。規制委員会の更田豊志委員長は、定例会終了後の記者会見で、東日本大震災に見舞われた福島第一原子力発電所内の乾式貯蔵施設について触れ、「あれだけの地震・津波にもかかわらず燃料に対する影響はまったくなかった」ことから、一定の冷却が進んだ使用済燃料は再処理までの間乾式貯蔵されることを改めて推奨した。
- 24 Jun 2020
- NEWS
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規制委、事業者の自主的・継続的な安全性向上を促す新たなアプローチの検討へ
原子力規制委員会は、事業者による自主的・継続的な安全性向上に向けた取組をより円滑かつ効果的なものとすべく新たなアプローチの検討を開始する。法令などに基づき事業者が講ずべき措置を具体的に示す、いわゆる「規制」に加え、安全確保上の目標を設定しインセンティブにより事業者の目標達成を促す枠組み・制度のあり方を検討するもの。〈規制委発表資料はこちら〉原子力発電所に係る法令に基づく対応としては、事業者に対し定期検査終了後6か月以内に安全性向上に向けた取組の実施状況や有効性について調査・評価させ、結果の届出を求める「安全性向上評価」(FSAR)がある。新規制基準施行後、再稼働の先陣を切った九州電力川内1号機については、5月に3回目の「安全性向上評価」が規制委員会に提出された。その中で、自主的な安全性向上対策として、桜島からの降灰に関する厳しい評価を実施し安全性に影響がないことを確認した上で、さらなる安全裕度の確保に向けて、燃料取替用水タンクの溶接部強化工事を計画するなどしている。規制委員会では、こうした「安全性向上評価」や、既に許認可を受けた施設が新知見に基づく規制要求に適合することを確認する「バックフィット」など、これまでの取組における制度面・運用面での改善点を抽出し、新たなアプローチに向けて考え方を示すべく、今後外部専門家も含めた検討チームを7月にも始動し、概ね1年程度で検討結果を取りまとめる。更田豊志委員長は6月10日の定例記者会見で、事業者が自らの言葉で施設の安全性を語る重要性を改めて述べた上で、「これまでインセンティブを起源とする取組が少なかった」として、検討チームにおける有意義な議論に期待を寄せた。
- 10 Jun 2020
- NEWS
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規制委、新規制基準でHTTRの原子炉設置変更許可
原子力規制委員会は6月3日、日本原子力研究開発機構の高温工学試験研究炉「HTTR」(茨城県大洗町、高温ガス炉、熱出力3万kW)が新規制基準に「適合している」との審査書を決定し、同機構に原子炉設置変更許可を発出した。本件は、3月25日の審査書案取りまとめを受け、原子力委員会と文部科学相への意見照会、パブリックコメントが行われていたもの。2014年11月の審査申請から約5年半を要した。HTTRの燃料体構造(原子力機構発表資料より引用)高温ガス炉は、電気出力100万kW 規模が主流の軽水炉に比べ小型だが、原子炉出口温度850~950度C(軽水炉は約300度C)の高温熱は、水素製造、海水淡水化、地域暖房など、幅広い利用が可能。また、原子炉から熱を取り出す冷却材には高温でも化学的に安定なヘリウムガスを用いているほか、1,600度Cにも耐える放射性物質の閉じ込め性能を持った「セラミックス被覆燃料」からなる燃料体構造などから、安全性にも優れている。原子力機構では今後、「HTTR」の2020年度内の運転再開を目指し、安全対策工事を着実に進めていく。運転再開後はまず、OECD/NEAの枠組みによる安全性実証試験「炉心強制冷却喪失(LOFC)プロジェクト」を実施。同プロジェクトでは、2010年度までの第1段階試験(30%出力、ガス循環機停止)で高温ガス炉の自然停止・冷却などの安全特性が示されており、今後も原子炉にとって厳しい条件を付加した試験を行い、得られた成果を通じ高温ガス炉に関する安全基準の国際標準化に向け貢献していく。
- 04 Jun 2020
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