高温工学試験研究炉「HTTR」(原子力機構発表資料より引用)日本原子力研究開発機構は9月5日、英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)より、同国国立原子力研究所(NNL)とともに、新型炉開発プログラムの予備調査を行う実施事業者として選定されたと発表した。英国が2030年代初頭までに高温ガス炉(HTGR)の実証を目指す「先進的モジュール式原子炉(AMR、高温ヘリウムガスなど軽水以外を冷却材として利用する)研究開発・実証プログラム」のフェーズA(基本設計関係の予備調査)に参画するもの。〈原子力機構発表資料は こちら、海外NEWS 既報 もご覧下さい〉BEISは2021年12月、AMR技術の一つとして、高温ガス炉を正式に選択。AMR研究開発・実証プログラムでは、その開発スケジュールについて、2022年以降のフェーズA、2023年以降のフェーズB(詳細設計の基礎となる基本設計調査)、2025年以降のフェーズC(サイトや建設・運転の許認可活動)の3段階のアプローチを想定。フェーズAでは、高温ガス炉の実証炉概念をまとめるほか、研究開発上の課題などを特定し、その実行可能性を検討するため、原子炉実証と燃料実証の2分野で総額最大250万ポンド(約4億円)の支援を図る。原子力機構は、2022年4月にBEISがフェーズAを実施する事業者の公募を開始後、高温ガス炉技術分野で協力関係にあるNNLからの要請を受けて、AMR研究開発・実証プログラムに応募した。実施事業者として選定されたのを受け、同機構は今後、プログラムへの参画を通して、高温工学試験研究炉「HTTR」の建設・運転を通じて培った高温ガス炉技術の高度化、その英国での実証を進め国際協力の強化を図っていく。高温ガス炉の核となる技術は国産(原子力機構発表資料より引用)「HTTR」は新規制基準適合性審査をクリアし2021年7月に運転を再開。これまで国内大手メーカーによる設計・建設・運転経験が蓄積されてきたほか、原子力用構造材として世界最高温度(950℃)で使用できる金属材料、高い閉じ込め性能を有するセラミックを用いた燃料被覆(軽水炉の約3倍の燃焼度)、高強度・高熱伝導・耐照射性を持つ黒鉛材料には、国内サプライチェーンの技術力が活かされている。今回の発表に関し、西村康稔経済産業相は、6日の閣議後記者会見で、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月策定)を踏まえエネルギー基本計画に明記された原子力産業に係る「海外の開発プロジェクトに高い製造能力を持つ日本企業も連携して参画する」との記述に言及。日本が有する高温ガス炉技術が評価されたとの認識を示した上で、「革新炉の研究開発・人材育成は国際連携の成果も活用しながら進めていきたい」と強調した。
06 Sep 2022
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日本原子力研究開発機構は9月2日、ナトリウム冷却高速炉などの次世代原子力システムに適用可能な水平方向と上下方向の地震力を低減するユニット型の3次元免震装置を開発したと発表した。富山県立大学、東京電機大学、日本原子力発電、三菱FBRシステムズ、大林組、川金コアテック、平和発條、ブリヂストンとの協力によるもの。〈原子力機構発表資料は こちら〉原子力機構によると、高速炉の機器設計要求では、構造物の厚さが耐熱設計の観点からは薄肉構造に、耐震設計の観点からは厚肉構造になるという相反する傾向があるため、薄肉構造でも耐震設計が成立するよう、地震荷重の大幅低減に着眼した原子炉建屋への3次元免震システムの導入が検討されてきた。3次元免震システムには、支持機能、復元機能、減衰機能の3つの機能があり、そのうちの水平方向の減衰機能については、昨秋に従来の約2倍以上の許容速度を持つ高性能オイルダンパを開発している。今回開発されたユニット型の3次元免震装置は、主に支持機能と水平方向の復元機能を積層ゴム(ブリヂストン製作)が、上下方向の復元機能を皿ばね(平和発條製作)が担うとともに、水平免震機能と上下免震機能を持つ機器を1つに統合して建屋下部に設置することで、設置の簡便化とメンテナンスの容易さも格段に向上。同研究成果は、精密機器工場やデータセンターなど、一般建築物の耐震性向上への応用も期待されている。
05 Sep 2022
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2023年度の政府概算要求が8月31日までに各省庁より出揃った。経済産業省は、エネルギー対策特別会計として、対前年度比15%増となる8,273億円を計上。「原子力の安全性向上に資する技術開発事業」で32.5億円(対前年度比39%増)、「原子力産業基盤強化事業」で24.0億円(同約2倍)、「高速炉に係る共通基盤のための技術開発委託費」で55.9億円(同29%増)と、いずれも増額の要求。引き続き、原子力産業の人材・技術・産業基盤の維持・強化、米仏との協力を通じた高速炉などの基盤技術開発を進めていく。今後の予算編成過程で金額の検討を行う事項要求としては、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策関連で「長期にわたるALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の海洋放出に伴う水産業における影響を乗り越えるための施策」などがあげられた。文部科学省は、原子力分野の研究開発・人材育成に関する取組として、対前年度比24%増となる1,826億円を計上。高温ガス炉に係る研究開発の推進など、革新的な技術開発に向けた取組で235億円(対前年度比約2.5倍)、バックエンド対策で676億円(同23%増)を要求。原子力科学技術に係る多様な研究開発の推進では53億円(同38%増)を計上しており、日本原子力研究開発機構の「JRR-3」と「常陽」を活用した医療用ラジオアイソトープの製造技術開発・実証にも取り組む。原子力規制委員会は、対前年度比22%増となる721億円を計上。「原子力発電施設等緊急時対策通信設備等整備事業」、「放射線監視等交付金」で、いずれも前年度より30億円超の大幅な増額要求となっている。この他、環境省は除染に伴い発生する土壌・廃棄物の中間貯蔵関連事業として1,786億円(対前年度比10%減)、内閣府は原子力防災対策の充実・強化として166億円(同58%増)をそれぞれ計上している。
02 Sep 2022
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総合資源エネルギー調査会の廃炉等円滑化ワーキンググループ(座長=山内弘隆・武蔵野大学経営学部特任教授)は8月31日の会合で、国内における原子炉廃止措置全体の総合的なマネジメントに向けて、新たな認可法人を設置する方向性を示した。次回会合で取りまとめに入る中間報告書に、今後の具体的な制度設計に係る詳細事項が盛り込まれる見込み。同WGでは、2020年代半ば以降、国内原子炉の廃止措置プロセスが本格化することを踏まえ、6月より廃止措置を着実に実施していくための課題と対応策について検討を開始した。現在、国内の商業用原子炉60基(建設中含む)のうち、18基(福島第一を除く)が廃炉を決定済みで、今後、廃炉プロセスのうち、比較的濃度の高い放射性廃棄物が発生する「第3段階」(原子炉領域設備解体)が本格化する見通しだ。前回会合では、電気事業連合会と日本原子力発電より意見を聴取。今回の会合では、廃炉が決定した原子炉7基(「ふげん」、「もんじゅ」を含む)を立地する福井県の吉川幸文地域戦略部長、日本原子力研究開発機構の目黒義弘バックエンド推進部長が招かれ、それぞれエネルギー(Energy)をカギとする地域振興計画「嶺南Eコースト計画」などを通じた廃炉ビジネス、研究施設のバックエンド対策に係る取組状況を説明。クリアランスの推進も今後の課題としてあげられた。これまでの議論を踏まえ、資源エネルギー庁は「着実かつ効率的な廃止措置の実現に向けた政策の方向性」を提示。廃止措置の実施体制に関し、「共通する知見・ノウハウを蓄積した上で、わが国の廃止措置全体を総合的にマネジメントし、計画的・効率的な廃止措置を実現するための主体」として、事業計画の認可、解散の制限など、国の関与・監督が及ぶ認可法人を設置することが適切との方向性が示された。新たに設置する法人は、我が国全体の廃止措置に統括・マネジメント機能を担うとともに、安全かつ効率的な廃止措置に向けた研究開発、地域理解の促進、廃止措置に必要な資金の確保・支弁などの事業を実施。原子力事業者は、各々が有する原子力発電所の廃止措置を実施するとともに、同法人の運営に必要な資金を拠出金として納付。国は、同法人の事業継続が困難になるなど、不測の事態が生じた場合には適切な措置を講じる責任を負う。なお、資源エネルギー庁所管の認可法人としては、原子力発電環境整備機構(NUMO)、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)、電力広域的運営推進機関(OCCTO)、使用済燃料再処理機構(NuRO)などがある。
31 Aug 2022
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福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の取扱いに関して検討する関係閣僚会議は8月30日、「風評を生じさせないための仕組みづくり」、「風評に打ち勝ち、安心して事業を継続・拡大できる仕組みづくり」などを強化・拡充した新たな行動計画を決定した。2021年4月に政府は「2年程度後にALPS処理水の海洋放出を開始する」ことなどを盛り込んだ基本方針を決定し、12月には、基本方針の着実な実行に向けた行動計画を策定。今回の新たな行動計画は、風評を最大限抑制するための処分方法の徹底モニタリングの強化・拡充国際機関等の第三者による監視および透明性の確保安心が共有されるための情報の普及・浸透国際社会への戦略的な発信安全性等に関する知識の普及状況の観測・把握安全証明・生産性向上・販路拡大等の支援全国の漁業者に対する事業継続のための支援万一の需要減少に備えた機動的な対策風評の被害者の立場に寄り添う賠償風評を抑制する将来技術の継続的な追及の各対策について、これまで/今後1年間/中長期――の取組を整理。今秋には流通・小売事業者を対象に広くモニタリングの取組・データを知ってもらうシンポジウムを開催するほか、消費者の理解向上に向けて全国地上波のテレビCMなども活用し情報発信の強化を図る。松野博一官房長官は、同日午前の記者会見で、「風評影響の払拭に向けて、徹底した安全性の担保とその見える化、全国大での安全・安心の理解醸成、事業者が安心して事業継続・拡充できると確信を深められるための支援、放出前後を通じ変わらずに地元産品の取引が継続される体制の構築などの対策を、政府一体となって早急かつ確実に進めていく」と述べた。
30 Aug 2022
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産業技術総合研究所は8月24日、福島第一原子力発電所事故に伴う除去土壌最終処分の社会受容性に関する調査結果を発表した。除染で取り除いた土や放射性物質に汚染された廃棄物などは、最終処分するまでの間、中間貯蔵施設(大熊町・双葉町)で安全に管理・保管。中間貯蔵開始後30年以内(2045年3月まで)に福島県外で最終処分を行うこととなっているが、輸送対象物量は約1,400万㎥(東京ドーム約11杯分)にも上ることから、県外最終処分量を低減するため、環境省を中心として除去土壌の減容・再生利用やその理解活動に向けた取組が進められている。今回の調査は、「県外最終処分は国民的な課題であり、どのような条件が社会受容性が高いのかを知ることは重要」との考えのもと、同研究所地圏資源環境研究部門の研究グループが大阪大学、北海道大学、国立環境研究所などと共同で、福島県民を除く全国4,000名を対象にインターネットを通じてアンケートを実施したもの。アンケートでは、最終処分場に係る4つの属性受入れを決めた経緯処分される物質の量と濃度自分の住んでいる場所と処分場との距離・位置関係全国に設置される処分場の数――のそれぞれについて条件を定めた「ケースA」と「ケースB」の2つの選択肢を例示し、回答者に「より望ましい方」を選択させる形式で行われた。除去土壌と焼却灰の最終処分場に関する各属性の選好(産総研発表資料より引用)その結果、回答者は、受入れを決めた経緯として「トップダウン型」(住民の意見を収集せず首長が決定)よりも「意見反映型」を、全国に設置される処分場の数としては「1か所」よりも「46か所」を選ぶ傾向にあり、処分場の選定に関し、手続き的公正さや分配的公正さが高く評価されることが示された。また、自分の住んでいる場所と処分場との距離・位置関係に関しては、「地域内(近所)」、「市町村内」、「都道府県内」と、エリアが広がるにつれ選好(受入れを容認する傾向)が高くなっていたことから、「最終処分場が居住地近くにできることだけでなく、居住地近くが全国唯一の処分場となることに否定的」、「負担の分担という視点を持ち、複数箇所で最終処分を検討することで、社会受容が高くなることが示唆された」と分析している。処分される物質の量と濃度に関しては有意な差はみられなかった。研究グループでは、今後、社会受容性とともに、合意形成フレームワークに関する研究も推進していく。
30 Aug 2022
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会見を行う西村経産相(インターネット中継)西村康稔経済産業相は8月26日の閣議後記者会見で、「S+3E」(安全性、安定供給、経済性、環境への適合)を大原則とすることなど、今後のエネルギー政策に対する取組姿勢を改めて示した。西村大臣は、24日に総理官邸で開催された経済・社会・産業構造の脱炭素化に向けた検討を行う「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、「日本のエネルギー安定供給の再構築」として、今後の再生可能エネルギーや原子力に係る政策の進め方を示している。会見で、西村大臣は、「将来にわたってわが国のエネルギー安定供給に万全を期していくため、原子力を含め、あらゆる選択肢を確保していくことが重要」と強調。今後、関係の審議会で具体的な施策について議論を進めるに当たり、「開かれた形で専門家の意見も聴きながら検討を進めていくと同時に、国民の皆様にも理解を深めてもらえるよう、できる限り丁寧に分かりやすい形で説明していきたい」と述べた。「GX実行会議」で示された今後の原子力政策の進め方では、2030年までの再稼働加速化について基数を明記した形で記載しているほか、次世代革新炉の開発・建設に関しても年末までに具体論を取りまとめるとされた。これに関し、西村大臣は、昨秋策定のエネルギー基本計画の掲げる「可能な限り原発依存度を低減」、「2030年に発電電力量の20~22%を目指す」ことなど、現在のエネルギー政策との整合性については「何ら矛盾しない」と明言。今後のエネルギー政策に向けて、「『S+3E』の大前提のもとで進めることに変わりはない」と、繰り返し強調した。また、次世代革新炉の開発・建設の関連では、先般、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会が骨子案を示した革新炉開発の技術ロードマップに言及。ロードマップの中で、2030年代前半の製作・建設、同後半以降の運転開始など、商用炉の開発工程が示された革新軽水炉について、西村大臣は、「半地下型構造やシビアアクシデント対策となるコアキャッチャー(溶融炉心を保持・冷却する)など、研究開発の状況やサプライチェーンの製造能力といった様々な要素を勘案しながら議論を進めていく」と述べた。かつて通商産業省(現経産省)の職員として、石油関連の施策の他、1992年にブラジル・リオデジャネイロで行われた国連環境開発会議「地球サミット」にも関わった西村大臣は、当時を振り返りながら、「エネルギー安定供給と気候変動への対応、この2つを両立せねばならない」と述べ、自身の経験を活かし今後の施策に取り組んでいく意気込みを示した。
26 Aug 2022
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「2050年カーボンニュートラル」の目標達成に向けて、経済社会の変革に係る施策について検討する政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」(議長=岸田文雄首相)が8月24日、2回目の会合を開催。その中で、西村康稔経済産業相(GX実行推進担当相)は、「日本のエネルギーの安定供給の再構築」として、エネルギーを巡る世界情勢や日本におけるエネルギー政策の遅滞に係る課題を整理した上で、原子力政策については、2030年までを見据え官民で再稼働の加速を図るべく今秋にも対応策を取りまとめるとした。〈配布資料は こちら〉前回、7月27日に行われた初回会合で、岸田首相は、電力・ガスの安定供給に向けて、「政治の決断が求められる項目」を明確に示すよう指示。これに対し、今回の会合で西村経産相は、原子力政策について、再稼働への関係者の総力結集安全第一での運転期間延長次世代革新炉の開発・建設の検討再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化――などの検討課題を提示した。国内原子力発電所の立地と再稼働に向けた現状(来夏・来冬に向けて破線囲みの7基の再稼働を目指す、資源エネルギー庁発表資料より引用)再稼働の加速化については、今冬、既に再稼働している計10基のうち、最大9基の稼働確保に向けて、工事期間短縮の努力や定期検査スケジュールの調整などを通じ設備利用率の向上を図るとともに、来夏・来冬に向けては、それ以外の新規制基準適合性審査をクリアした計7基に係る安全工事の円滑実施(高浜1・2号機、女川2号機、島根2号機)や地元の理解確保(柏崎刈羽、東海第二)が進むよう国が前面に立って対応していく。さらに、再稼働の先の展開を見据え、次世代革新炉の開発・建設、運転期間延長のあり方などに関し、年末までに具体論を取りまとめる。同日の議論を踏まえ、岸田首相は、「電力需給ひっ迫という足元の危機克服のため、今年の冬のみならず今後数年間を見据えてあらゆる施策を総動員し不測の事態にも備えて万全を期していく」と強調。さらに、再生可能エネルギーや原子力に関しては「GXを進める上で不可欠な脱炭素エネルギー」との認識を改めて示し、今後の制度設計や国民理解に係る方策の検討を加速化するとした。原子力政策に係わる政治の動きとしては、自由民主党の「原子力規制に関する特別委員会」(委員長=鈴木淳司衆議院議員)が5月に提言をまとめており、その中で、審査に伴うプラント停止期間の長期化に鑑み、審査の効率化とともに40年運転制のあり方について検討すべきなどと述べられている。今回、GX実行会議で「政治の決断が求められる項目」が示されたことに関し、翌25日に行われた総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)で、杉本達治委員(福井県知事)は「立地地域の立場から評価したい」と述べ、今後、国が責任を持って原子力の将来像を明確にすべきと要望した。山下ゆかり委員(日本エネルギー経済研究所常務理事)は、再稼働の加速化に関して「短期的な電力供給の確保と2030年に向けたエネルギー政策の立て直しにとって重要」と評価するとともに、次世代革新炉の開発についても、「石油危機後、原子力技術はわが国のエネルギー安定供給の多様化を支えてきた」と期待。一方で、バックエンド対策や核燃料サイクルについて、「国が前面に立ち、長期的な整合性を念頭に方針を再確認すべき」と指摘した。同委員会では、前回9日の会合に続き、「原子力の開発・利用に当たっての『基本原則』の再確認」など、5項目からなる中間論点整理案が示された。専門委員として出席した原産協会の新井史朗理事長は、「原子力の価値を再確認しておくことは政策の安定性を図る意味で重要」と強調。さらに、ものづくり基盤やサプライチェーンを維持する上で未稼働プラントの長期停止が続く現状に懸念を示し、産業競争力確保の観点から、停止プラントの早期再稼働や新規プラントの早期建設開始の必要性を訴えた。〈発言内容は こちら〉
25 Aug 2022
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三菱原子燃料は8月23日、PWR燃料集合体などを製造する同社の加工施設(最大処理能力440トンU/年、東海村)に係る新規制基準適合性審査において、再稼働に向けた最終段階となる使用前検査合格証および使用前確認証を19日に原子力規制委員会より受領したと発表した。今後、生産に向けて準備を進め燃料製造を再開する。〈三菱原子燃料発表資料は こちら〉三菱原子燃料は2014年1月に規制委員会に対し本件の審査を申請。2017年11月に事業変更許可を取得した。2021年6月には設計・工事計画認可に係る審査が完了したが、2022年5月に分析装置に関する原子力検査に対する不適切な対応が発覚し運転再開に向けた動きが滞っていた。燃料集合体を組み立てる成型加工施設としては、他に新規制基準適合性審査が行われているグローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン、原子燃料工業東海事業所、同熊取事業所に先んじ、初の運転再開となりそうだ。三菱重工グループでは、「燃料加工施設における安全性向上に取り組み、燃料供給を通じて国内における原子力発電プラントの安定運転に引き続き貢献していく」とコメントしている。
24 Aug 2022
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原子力発電環境整備機構(NUMO)の地層処分事業に係る広報の一環として、8月19日に日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センター(北海道幌延町)を紹介するマイナビニュースとのタイアップ番組が配信された。〈動画は こちら〉マイナビニュースが昨秋よりTwitterで配信しているシリーズ番組「竹山家のお茶の間で団らん」の最新号。同番組は、「竹山家」の父、母、娘をそれぞれタレントのカンニング竹山さん、篠田麻里子さん、越智ゆらのさんが演じ、話題となっている場所やトレンドをゲスト出演者を交えたトークなどを通じ掘り下げていく内容だ。今回配信された番組は、「竹山家の夏休み」と題し、カンニング竹山さんと篠田麻里子さんが「夫婦二人旅」を楽しむもの(越智ゆらのさんがナレーション)。高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発について学ぶ「大人の社会科見学」に臨むとともに、「ほろのべトナカイ観光牧場」での動物たちとのふれあい、植物園「ノースガーデン」に咲く希少なブルーポピー、トナカイソーセージやサロベツ合鴨の味など、道北観光の魅力も紹介している。幌延深地層研究センターでは、地層処分技術を実際の地質環境に適用して確認わが国固有の地質環境を理解深地層を体験・理解する場を整備――するための研究を、瑞浪深地層研究所(岐阜県瑞浪市)とともに行っており、放射性廃棄物を持ち込むことや使用することはなく、研究終了後は地下施設をすべて埋め戻すこととなっている。同センターを訪れた2人はまず、PR施設「ゆめ地創館」で核燃料サイクルとこれに伴い発生する高レベル放射性廃棄物、地層処分の必要性・システムについて説明を聞く。その後、地下350mに造られた研究施設に潜入。お笑い系のカンニング竹山さんは「人生の中で大江戸線(東京を走る地下鉄、最深部で約40m)が一番深いと思ってた」とギャグを飛ばす。坑道を歩きながら、同行する原子力機構職員からは、地下と地表に設置した地震計の観測比較で「地表の揺れに対して小さくなっている。地下は地震に対して安定な環境」と説明を受け、地層処分の安全性について理解。見学を終え、篠田麻里子さんは、「夏休みといわず、北海道に来たら是非行ってもらいたい」と、家族旅行の行き先として勧める。見学についてはウェブ上で紹介されている。
24 Aug 2022
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日本原子力学会は8月18日、教科書のエネルギー・環境・原子力・放射線関連の記述に係る調査報告書を発表した。同学会の教育委員会が毎年、小中高校で用いられる教科書を対象に実施しているもので、今回は、新学習指導要領に基づき2022年度から使用されている高校の地理歴史、公民、理科、保健体育、家庭、工業の各教科の検定済み教科書計72点を調査し、エネルギー・環境・原子力・放射線に関連した記述(写真、図・グラフも含む)、これに対するコメント・修文例を整理。エネルギーや原子力に関する教育の改善につながるよう意見・提言をまとめた。高校の新学習指導要領は、2022年度入学生から学年進行で実施されており、今回、調査した教科では現在、地理歴史の地理総合と歴史総合(近現史、旧課程の世界史A・日本史Aに概ね相当)、公民科の公共(旧課程の現代社会に概ね相当)の新設科目を含む計11科目が履修されている。地理総合では、今回調査した教科書6点中5点が資源・エネルギー問題について取り上げており、発展的学習として、国ごとのエネルギー事情の比較、日本の電源別発電量の推移など、資料を提示した上で、エネルギーの将来についてディスカッションを通じ考えさせる記述もあった(二宮出版「わたしたちの地理総合 世界から日本へ」)。そこでは、「従来通り、化石燃料を中心におく」、「原子力発電との共存を図る」、「再生可能エネルギーに迅速に移行する」の3つの主張をあげ、自身と意見の異なるグループとのディスカッションを経て「自分の意見はどう変わったか」を考えさせる内容となっており、今回の報告書では「理解を深め考察を促す効果的な内容」と評価している。歴史総合では、12点中11点がチェルノブイリ((本紙では「チョルノービリ」と表記しているが、実際の教科書の記述にならった))原子力発電所事故について取り上げていた。これに関し、報告書では、「『ウクライナ』、『ロシア』、『ソ連』の関係が今の生徒にはわかりにくい」と指摘し、「ウクライナ」の記載に関しては、「ソ連」との関係性を明確にするため、「ウクライナ(旧ソ連)」と記載するよう提案。また、戦後50年の国内外の動きを振り返る記述の中で、高速増殖炉「もんじゅ」の所在地を「大洗」と記載した誤りもあった(正しくは福井県敦賀市)。公共では、「これからの日本の発電エネルギーはどうあるべきか」をテーマとした市民、専門家、自治体職員、経営者によるロールプレイを通じた議論の事例を紹介した教科書があり、報告書では、「重大な問題を多角的に考える姿勢を育成する意味で大変好ましい」と高く評価(帝国出版「高等学校 公共」)。また、エネルギー問題の複雑さから、公共の教科書に関しては、新エネルギーのメリットとデメリットを紹介し理解しやすくする工夫を図るとともに、供給の安定性、安全性、環境への配慮、経済性も含めた総合的な観点、長期的な視点から言及するよう要望している。福島第一原子力発電所事故に関しては、化学基礎と「科学と人間生活」を除くほぼすべての教科書が記述。「カーボンニュートラル」については、地理総合と物理基礎の計4点の教科書が取り上げていた。電力の需給バランスについては、2018年の北海道胆振東部地震に伴う大規模停電を例をあげ、「火力発電・水力発電・原子力発電に加え、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーなどをふくめたうえで、電力の需給バランスを維持する必要がある」などと記述し、詳細に説明している教科書があり、報告書では「大変適切」と評価(啓林館「高等学校 科学と人間生活」)。高レベル放射性廃棄物の処分問題を取り上げた教科書も多くあったが、「科学的特性マップ」に触れていたのは1点のみだった(実教出版「地学基礎」)。
22 Aug 2022
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原子力規制委員会は8月17日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6・7号機のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)に係る原子炉設置変更許可を正式決定した。BWRでは日本原子力発電東海第二発電所に続き2例目となる。本件は、7月13日に「審査書案」が了承され、経済産業相と原子力委員会への意見照会、およびパブリックコメントに付せられていた。新規制基準で要求される特重施設は、プラント本体施設に係る設計・工事計画認可から5年間が整備猶予期間。現在、柏崎刈羽6、7号機は、いずれも新規制基準のもとで再稼働していないが、7号機については2020年10月、プラント本体施設に係る設計・工事計画認可に至っており、2025年10月に特重施設の整備期限を迎える。一方で、柏崎刈羽原子力発電所では2020年以降、核物質防護に係る不適切事案が発覚したことから、規制委員会は2021年4月、原子炉等規制法に基づき東京電力に対し同発電所における是正措置命令を発出。東京電力では、第三者評価や他電力・業界の外部専門家の指導も取り入れつつ、徹底的な根本原因の究明とともに、核物質防護体制の再構築に努めている。是正措置命令の解除には、柏崎刈羽原子力発電所における規制上の対応区分が「第4区分」((各監視領域における活動目的は満足しているが、事業者が行う安全活動に長期間にわたるまたは重大な劣化がある状態))から「第1区分」((各監視領域における活動目的は満足しており、事業者の自律的な改善が見込める状態))に回復する必要がある。これに関し、更田豊志委員長は、17日の定例記者会見で、9月の任期満了に伴う自身の退任前に公開の場で議論する可能性を示唆した。
18 Aug 2022
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第2次岸田改造内閣発足に伴い就任した西村康稔経済産業相が8月12日、エネルギー、自動車、鉄鋼、繊維などの産業専門紙の記者団によるインタビューに応じた。1985年に「日本の将来を担う中心的な官庁」との思いから通商産業省(当時)に入省し、1999年の退官後、「より大きな視点で仕事をしたい」との決意から国政入りを目指した(2003年に衆議院議員に初当選)という西村大臣は、まず「この2つの初心をもう一度思い起こす」と強調。その上で、「コロナ禍とロシアのウクライナ侵略という2つの危機を乗り越え、強靭で柔軟な日本の経済・社会を作っていくため、今は非常に大事な局面にある。そのためのイノベーションを起こし、制度改革を行っていく。この先の5年は正に勝負だ。これまでの経験を活かし全力で取り組んでいきたい」と抱負を述べた。エネルギー需給を巡る課題に関し、西村大臣は、「燃料の着実な調達、再生可能エネルギー、原子力、火力を含め、あらゆる手を尽くしてしっかりと安定供給に努めていかねばならない」と、その重要性を改めて強調。加えて、現在、総合資源エネルギー調査会で検討が進められている電力・ガス小売全面自由化にも言及し、「総合的に取り組んでいく必要がある」とした。原子力については、「この冬に向けて、安全性の確保を大前提に、安全対策工事の加速、定期検査期間の調整などを進めながら、岸田首相の指示した『最大9基の稼働』を確保できるよう、事業者とも連携しながら着実に取り組んでいく」と明言。三井物産・三菱商事による新ロシア法人への参画に係る判断が注目されている「サハリン2プロジェクト」(日本のLNG需要量の約9%、総発電量の3%に相当)については、「権益を維持する方針は今後も変わりはない」とした上で、ロシア政府による決定の詳細を確認し意思疎通を図りながら具体的対応を検討していく考えを示した。この他、西村大臣は、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた電気自動車普及や水素還元製鉄の実用化、環境に配慮した繊維製品の社会実装を通じた日本の魅力「クールジャパン」発信などに言及。通産省勤務時代の石川県商工課長在任を契機とした地元とのつながりが今でも活きていることに触れ、地域産業の技術力支援やブランド化にも意気込みを示した。西村大臣は、内閣府経済財政政策担当相在任中(2019年9月~21年10月)、2020年3月からは安倍晋三首相(当時)の指示によりコロナ対策に係る政府対応をリードした。
16 Aug 2022
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日本原子力研究開発機構は8月8日、新型転換炉「ふげん」(敦賀市)の廃止措置計画の変更を発表した。原子炉本体の解体に向けた技術開発の必要が生じたことによるもので、廃止措置の完了時期を2033年度から2040年度へ7年延期する。〈原子力機構発表資料は こちら〉多様な核燃料の効率的利用を目指す新型転換炉の原型炉として開発された「ふげん」は、2003年の運転終了までの25年間、発電実績とともに、計772体のMOX燃料の装荷実績(運転終了時で単一炉としては世界最多)を積むなど、日本の核燃料サイクル推進に資する多大な成果をあげた。2007年度に始まる「ふげん」の廃止措置工程は、「重水系・ヘリウム系等の汚染の除去」、「原子炉周辺設備解体撤去」、「原子炉本体解体撤去」、「建屋解体」の4期間に大別。現在は「原子炉周辺設備解体撤去」の期間にあり、当初の計画では2023年度より「原子炉本体解体撤去」に入る予定だった。原子炉本体の解体は、運転に伴う放射化の影響が大きいことなどを考慮し、解体時の放射線遮蔽や切断時の粉じん拡散の抑制のため、原子炉本体上部に解体用プールを設置し、水中で解体を行う計画だ。これに向けて、解体用プールを含む遠隔解体装置の詳細検討、解体工法の安全性確認を2020年度より実施した結果、さらなる安全性向上を図るため、解体時に原子炉本体からプール水が漏えいするリスクを大幅に低減させる工法に変更することとなった。具体的には、解体用プールの底板を原子炉本体に直接溶接することで漏えいリスクに対応。工法の変更に伴い、今後、溶接・検査を遠隔かつ自動で行うための技術開発、その検証・評価に7年間かけて取り組み、2030年度より「原子炉本体解体撤去」に入る予定。産学官による廃炉技術開発の取組を支援する「スマデコ」(原子力機構ホームページより引用)原子力機構では、「ふげん」の廃止措置に係る技術開発に関し、廃止措置ビジネスの確立と関連企業群の育成にもつなぐべく、敦賀市内に「ふくいスマートデコミッショニング技術実証拠点」(スマデコ)を2018年より運用している。スマデコでは、遠隔水中ロボットを用いたレーザー切断工法のモックアップ試験などが行われており、今後進みつつある軽水炉の廃止措置への適用も期待されている。
10 Aug 2022
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)は8月9日、同委員会下に置かれる革新炉ワーキンググループが7月29日に取りまとめた中間整理案について報告を受け意見交換。同WGは、「原子力発電の新たな社会的価値を再定義し、わが国の炉型開発に係る道筋を示す」ことを目的とし、4月より議論してきた。〈配布資料は こちら〉冒頭、挨拶に立った経済産業省の細田健一副大臣は、革新炉開発に関し、「今後のわが国の原子力技術の発展のため必要不可欠」と述べ、活発な議論を期待。同WG座長の黒﨑健氏(京都大学複合原子力科学研究所教授)が中間整理案「カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の実現に向けた革新炉開発の技術ロードマップ」(骨子案)について説明した。2050年以降を見据えた革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉の導入に向けた技術ロードマップ、これらの技術に係る原子力サプライチェーンによる市場獲得戦略などを整理したもの。これを受け委員から、杉本達治氏(福井県知事)は、「将来の原子力規模と道筋」の明確化を要望するとともに、折しも8月9日に美浜発電所3号機事故から18年を迎えたことに際し、当時の状況を、「西川一誠知事のもと、大変緊張して対策に取り組んだ」と振り返りながら、立地地域として改めて「原子力発電は安全確保が最優先」と強く訴えた。メディアの立場から、伊藤聡子氏(フリーキャスター)も、福島第一原子力発電所事故を経験した日本として、「安全性の確保のためにも革新炉を開発するということをしっかり発信していくべき」と主張。また、技術的視点から、原子力小委員会委員長代理の竹下健二氏(東京工業大学科学技術創成研究員特任教授)は、革新炉WGによる中間整理案に関し、「色々な評価軸から俯瞰的にものを見る大変貴重な成果だ」と評価。その上で、既存炉の廃炉ラッシュも見据え、「新型炉の導入は現実的な政策」と述べるとともに、MOX燃料再処理や天然ウランの必要量など、核燃料サイクルにおける定量的評価にも言及し、「技術開発課題をパッケージ化した長期的に整合性ある原子力政策」が策定されるよう求めた。同WGの中間整理案と合わせ、今回の原子力小委員会では、資源エネルギー庁が同委の中間論点整理案として、原子力の開発・利用に当たっての「基本原則」の確認将来を見据えた研究開発態勢の再構築産業界の能動的な取組に向けた予見性の向上原子力ものづくり基盤の強化と戦略的な市場獲得立地地域との共生および国民各層とのコミュニケーションの深化――の各項目について整理。専門委員として出席した原産協会の新井史朗理事長は、原子力の持続的活用・長期的な利用に関する国からの明確なメッセージ発出建設中を含めまだ再稼働していないプラントの早期稼働の実現と新増設・リプレースの検討開始原子力発電への国民理解・信頼獲得に関係者が一丸となって取り組むこと――を要望。〈発言内容は こちら〉同じく全国電力関連産業労働組合総連合の坂田幸治会長は、「既設炉の再稼働と長期安定運転の実現なくして、革新炉開発の道筋を切り拓くことは困難」と指摘。原子力事業による地域経済の活性化や雇用創出にも言及し、「人材・技術やサプライチェーンの維持・強化、そのための事業環境整備の必要性を強く打ち出すことが重要」と強調した。
09 Aug 2022
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全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)の渕上隆信会長(敦賀市長)と栁澤重夫副会長(御前崎市長)は8月2日、原子力委員会の定例会合に招かれ、立地自治体の立場から原子力政策に対する意見を述べた。同委が1月より公開の場で随時行っている「原子力利用に関する基本的考え方」の改定検討に向けたヒアリングの一環。全原協は、原子力発電所の立地によって生じる諸問題を結束して解決し住民の安全確保と地域発展を目指すことを目的として1968年に発足。現在、周辺自治体や核燃料サイクル施設の立地自治体なども含め国内28市町村が会員となっている。渕上会長は、国際的な脱炭素化の潮流、昨今のウクライナ情勢に伴う資源価格の高騰、電力需給ひっ迫など、原子力政策を巡る現状を述べた上で、「エネルギー政策はわが国の行く末を左右する最重要政策だ。資源を持たない日本が貿易立国として国際競争力を高め生き残っていくため、原子力発電を選択した当時を思い出してもらいたい」と強調。さらに、「今般の日本の厳しいエネルギー事情を鑑みれば、低廉で安定した電力供給を果たすため、原子力発電は欠くことができない」とも述べ、昨秋策定されたエネルギー基本計画策定に関し、昨今の著しい情勢変化から、「法令に定める3年ごとの期限を待たず早急に見直しを行うべき」と主張した。また、原子力発電に関する世論調査の経年変化を踏まえ、「特に電力消費地における理解はまだ十分とはいえない」と指摘。原子力人材確保の課題にも触れた上、「現実的で力強いエネルギー政策、原子力政策を明確に示すことが国の責務」と訴えた。〈発表資料は こちら〉栁澤副会長は、御前崎市内に立地する中部電力浜岡原子力発電所3、4号機に係る新規制基準適合性審査が長期化していることに関し、市民の安全に対する不安市政運営や市内経済への影響浜岡3号機は2027年で法令で定める運転開始40年に到達(このまま運転期間延長も含め、審査が進まなければ実質23年の運転で廃炉)現場技術力の低下――との課題を指摘。市民からの「地震や津波に対する中部電力の想定が甘いのでは」、「国は再稼働させないようとしているのではないか」といった不安の声が上がっていることや、原子力防災に関する課題にも触れた上で、長期的視点に立った原子力政策が図られる必要性を訴えた。〈発表資料は こちら〉委員との間では、高レベル放射性廃棄物の処分地選定、将来のエネルギー安全保障確保や人材育成に関し意見交換。渕上会長は、国民理解の促進に向けて、「教科書への掲載が一般の理解につながる」としたほか、漫画やYou Tubeなどの活用を提案。上坂充委員長は、先般刊行した原子力白書について「大学の講義でも使えるよう編集した」としたほか、世代間倫理の課題にも言及しながら、初等中等教育段階からの理解促進に関しても、学会などの知見を活用し取り組んでいく考えを示した。全原協の渕上会長らは、6月30日開催の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会でも同様の意見陳述を行っているほか、7月26日には経済産業省を訪れ、萩生田光一大臣、細田健一副大臣と会談し、「原子力発電等に関する要請書」を提出している。同要請書は、3年ぶりの対面開催として5月に行われた同協会の定例総会で、会員市町村からの意見も踏まえ採択された。
04 Aug 2022
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ALPS処理水取扱い設備に関する事前了解文書を手渡す内堀福島県知事(中央、福島県ホームページより引用)東京電力は8月3日、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水(トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水)の希釈放出設備および関連施設の設置工事を4日から行うと発表。同施設の設置に関しては、7月22日に原子力規制委員会より認可がなされた後、26日に県の廃炉安全監視協議会で「妥当」との判断が得られ、8月2日には福島県、大熊町、双葉町から事前了解を得た。〈東京電力発表資料は こちら〉8月2日夕刻、福島県の内堀雅雄知事、大熊町の吉田淳町長、双葉町の伊澤史朗町長は、県庁にて、東京電力の小早川智明社長らに対し、県の技術検討会が要求事項として示したALPS処理水に含まれる放射性物質の確認ALPS処理水の循環・かくはんにおける適切な運用管理希釈用海水に含まれる放射性物質の管理トラブルの未然防止に有効な保全計画異常時の環境影響拡大防止のための対策短縮された工期(補正申請により工事期間が当初計画より2か月短縮)における安全最優先の工事処理水の測定結果等のわかりやすい情報発信放射線影響評価等のわかりやすい情報発信経産省内で職員・来庁者向けに販売される福島産水産物「常磐もの」を用いた弁当(左より、サバスモークのボカディージョ、真ダコのシーフードパエリア、アンコウのイカスミパエリア、経産省twitterより引用)――の確実な実施とともに、廃炉・汚染水対策に関し、新たに発生する汚染水のさらなる低減、汚染水処理に伴い発生する二次廃棄物の安全な処理・処分に取り組むよう意見を付して、了解する旨を回答。3首長は翌3日朝に萩生田光一経済産業相を訪れ、本件に係る報告および福島県産品の風評払拭に向けた要望を行っている。東京電力は、これらの意見に対する真摯な対応、着実な取組を図り、2023年春頃の設備設置を目指し、ALPS処理水希釈設備の工事を安全最優先で行い、その状況を適時公開するとともに、自治体による安全確認やIAEAのレビューなどに真摯に対応し、客観性・透明性を確保することで、国内外から信頼されるよう取り組んでいくとしている。福島第一廃炉推進カンパニープレジデントの小野明氏は、3日午後の記者会見で、工事計画について説明するとともに、わかりやすい情報発信に関し、「地域の方々一人一人が持つ不安・懸念にしっかり向き合い説明していくことに尽きる」と、対話の重要性を繰返し強調した。
03 Aug 2022
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長崎大学核兵器廃絶研究センターは、8月1日よりニューヨーク国連本部で開幕する核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議で、26日までの全日程をカバーすべく同センタースタッフを現地に派遣する。会期中、論点整理や課題、意義などを簡潔にレポートする「NPTブログ2022」をウェブ上に掲載すると発表した。開幕に先立ち、7月29日には、「第0号ブログ」として、NPT運用検討会議の注目ポイントなどを掲載。冒頭、昨今のロシアによるウクライナへの軍事侵攻により「核兵器使用リスクの急激な高まりは世界中の人々に不安と衝撃を与えている」と、危惧を示している。最終文書採択を含む8月24~26日にブログを担当する同センター副センター長の鈴木達治郎教授は、7月28日に長崎大学内で行われた記者会見で、核物質防護に関する議論に期待を寄せ、「原子力施設への攻撃禁止について、是非合意文書に入れてもらいたい」と述べた。今回のNPT運用検討会議には、日本の首相としては初めて岸田文雄首相が出席し、一般討論演説などを行う。外務大臣在任中にも、2015年NPT運用検討会議に出席。折しも広島・長崎被爆70年の節目の年だったが、最終文書の合意には至らなかった。岸田首相は、就任後初となる2021年10月の国会における所信表明演説で、「核兵器のない世界」を目指し、「核兵器国と非核兵器国との橋渡しに努める」としている。これに関し、8月1~9日に主に核軍縮関連の議論でブログを担当する同センターの中村桂子准教授は、「岸田首相の演説を切り口に、これまでの枠を超えるような軍縮外交が展開されることを期待する」と述べた。「ナガサキ・ユース代表団」の学生たち(長崎大ホームページより引用)長崎大学の核兵器廃絶研究センターは、2012年の設立以来、「長崎を最後の被爆地に」との想いから、核兵器廃絶に焦点を当てた研究・教育の拠点として政策提言などを行ってきたほか、人材育成や市民交流にも取り組んでいる。同センターでは、今回、NPT運用検討会議でサイドイベントなどに参加する学生ら「ナガサキ・ユース代表団」によるブログも掲載していく。
01 Aug 2022
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総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)は7月29日の会合で、これまでの議論の中間整理となる「カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の実現に向けた革新炉開発の技術ロードマップ」(骨子案)を概ね取りまとめた。近く同WGの上層となる原子力小委員会に報告される。〈配布資料は こちら〉同WGは、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた海外動向や原子力全体のサプライチェーン維持・強化の必要性を踏まえ、「原子力発電の新たな社会的価値を再定義し、わが国の炉型開発に係る道筋を示す」ことを目的に、4月より国内研究機関・メーカーの他、米国の原子力規制委員会(NRC)や原子力エネルギー協会(NEI)とも意見交換をしながら検討を行ってきた。中間整理案では、革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉について、2040~50年以降を見据え、導入までの時間軸をイメージした開発工程(研究開発、設計、製作・建設、運転など)を示す技術ロードマップを提示。また、これまでの議論から、「開発の方向性(時間軸)が不明瞭」、「具体的プロジェクトの不在、予算・制度支援の不足」、「開発体制の不備、サプライチェーンの脆弱化」、「開発活動の低下」という革新炉開発を巡る「悪循環」を指摘。その対応として、革新炉開発に係る方向性の明瞭化開発予算・施設の整備革新炉開発を支える事業環境の整備開発の司令塔機能の強化サプライチェーンの維持・強化――をあげた。委員からは、小野透氏(日本経済団体連合会資源・エネルギー対策委員会企画部会長代行)が、先般首相官邸で開かれた「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」など、エネルギー安定供給を巡る議論の高まりにも言及しながら、「新増設・リプレースに取り組む上でも、安全性向上が期待される次世代炉は国民の安心感向上につながる」と主張。その上で、革新炉開発に向けて、安全性に係る国民理解の醸成や諸外国に遜色のない予算措置を図っていくべきとした。また、高木直行氏(東京都市大学大学院総合理工学研究科教授)は、原子力人材育成に関わる立場から、革新炉開発の技術ロードマップに一定の評価を示す一方で、「バラバラ感」があると指摘。溶融塩炉などの研究開発にも関わった経験を持つ同氏は、炉型による燃料濃縮度の違いなどに言及し、他炉型を相互に関連させた導入シナリオやバックエンド政策を検討していく必要性を強調した。この他、新増設・リプレースとの関連性、次世代層への理解促進、司令塔機能における国・研究機関・企業の役割に関する意見が出された。これに続き同日は、高速炉開発会議の戦略ワーキンググループが、2018年12月の「戦略ロードマップ」決定以来、およそ3年半ぶりに会合を開催。戦略WGでは、安全性・信頼性経済性環境負荷低減性資源有効利用性核不拡散抵抗性、柔軟性・その他市場性――に係る高速炉サイクルの開発目標を提示。今後の議論に資するものとして革新炉WGの中間整理が参考配布された。
29 Jul 2022
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2021年度版原子力白書が7月29日の閣議で配布された。前日28日に原子力委員会で決定されたもの。今回の白書では、「2050年カーボンニュートラルおよび経済成長の実現に向けた原子力利用」を特集。原子力委員会・上坂委員長白書の冒頭、今回の特集に関し、同委・上坂充委員長は、「エネルギーは人間のあらゆる活動を支える基盤であり、誰にとっても他人事ではない」と、原子力を含むわが国の今後のエネルギー利用のあり方について指摘。白書を通じ、国民一人一人が「じぶんごと」として捉え考える必要性を訴えている。特集では、世界におけるカーボンニュートラルに向けた取組状況を整理。「電力消費が多いカーボンニュートラル宣言国の多くでは、将来も原子力エネルギー利用を継続する見通し」、「原子力エネルギーを利用せず、カーボンニュートラルを目指す国・地域もある」と、大別し各国・地域のエネルギーを巡る現状や政策について述べている。その上で、「カーボンニュートラル達成には、様々な手段を組み合わせて投入していく必要がある。どのような手段にも、メリットと課題がある。その両方を正しく把握することが、手段を適切に組み合わせていく上でも重要」と述べ、原子力エネルギーのメリットとして、発電時に温室効果ガスを排出しない気象条件等による発電電力量の変動が少ない準国産エネルギー源として安定供給できる発電コストと統合コストがともに低いカーボンフリーな水素製造や熱利用等への展開が見込める――ことをあげた。一方で、課題として、社会的信頼の回復組織文化等、関連機関に内在する本質的な課題解決安全性向上、核セキュリティの追求廃炉や放射性廃棄物処分等のバックエンド問題への対処エネルギー源としての原子力の活用を継続するための高いレベルの原子力人材・技術・産業基盤の維持、強化――が必要と指摘。社会的要請を踏まえた原子力エネルギー利用に向けて(原子力白書より引用)これらを踏まえ、社会的要請を踏まえた原子力エネルギー利用に向けて、国や事業者を始めとするすべての関係者に対し、「福島第一原子力発電所事故の原点に立ち返った責任感ある真摯な姿勢や取組を通じ、社会的信頼の回復に努める」必要性を改めて強調。さらに、「集団思考や集団浅慮、同調圧力、現状維持志向が強いことや、組織内での部分最適に陥りやすいことなど、わが国の原子力関連機関に内在する本質的な課題についても、引き続き解決に向けた取組が必要」と、改善を求めている。原子力委員会としては、「原子力エネルギーを取り巻く状況や位置付け等について、良い面も悪い面も、光も影も、中立的な立場で積極的にわかりやすく発信するよう努めていく」との姿勢を示している。
29 Jul 2022
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6月30日に特定復興再生拠点区域((帰還困難区域のうち、市町村作成・国認定の計画に基づき居住を目指し除染やインフラ整備を推進する地域))の避難指示が解除された大熊町で、7月22日、「町の今後を担う新しい産業・雇用の創出を目的に、企業誘致エリアの整備を進める」との町政方針のもと、新しく起業するベンチャー企業などへの支援を行う「大熊インキュベーションセンター」が開所した。「インキュベーション」(incubation)は「卵の孵化」の意。〈大熊町発表資料は こちら〉同施設は、その名のごとく、企業の育成・促進の場を提供し将来的に「孵化し羽ばたかせる」ことを目的としている。町内の大野小学校校舎を活用したもので、入居企業や町民の交流スペースを整備するとともに、会議室は生徒が使っていた机を残し、「町民らが懐かしさを感じ集える場」としての利用も期待されている。大熊町の学校教育については、幼保小中一体化施設「大熊町立 学び舎 ゆめの森」が2023年度に開校予定。次世代太陽電池「ペロブスカイト」のイメージ(東芝ESS発表資料より引用)また大熊町では、2021年2月に「大熊町ゼロカーボンビジョン」を策定し、2040年のCO2排出実質ゼロとの目標を掲げ、再生可能エネルギーの地産地消に係る取組を進めている。7月には地元企業で福島第一原子力発電所の廃炉作業にも参画するエイブルと連携協定を締結。9月に地域新電力「大熊るるるん電力」が設立された。最近では、2022年7月22日に大熊町と東芝エネルギーシステムズ社との間で「ゼロカーボン推進による復興まちづくりに関する連携協定書」が締結された。同社は、冬季も降雪が少なく日照に恵まれた大熊町の気象条件を活かし、大川原地区において軽量・フレキシブルな次世代太陽電池「ペロブスカイト」の開発・実証に取り組むこととしている。〈東芝ESS発表資料は こちら〉
28 Jul 2022
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中高生対象の映画制作WSで指導に当たる監督ら(内閣府他発表資料より引用)内閣府・経済産業省は7月26日、映像・芸術文化の誘致を通じ新たな地域の独自性を創出する復興の取組「福島浜通り映像・芸術文化プロジェクト」の立上げを発表。その皮切りとして、映画に着目し、8月に双葉町(産業交流センター・伝承館)で、若手映画監督、脚本家、俳優、映像制作に関わる学生、地域住民などが集う映画制作イベントが開催されることとなった。同イベントでは、全国の中高生を対象に、プロの制作スタッフがサポートし、ロケハン、脚本作り、撮影、編集、ポスター作りなど、短編映画制作のプロセスを体験する合宿形式のワークショップも行われる。映像・芸術文化と福島浜通りが秘めるシナジー・独自性のポテンシャルとして、内閣府・経産省では、(1)芸術家にとって、開かれた環境で集中して創作活動に取り組める、新たな活動を自由に行えるといった点で、魅力的な場所となりうる(2)国際的な関心が高まることで、新たな独自の魅力になりうる(3)この地域を「新たな挑戦のフィールド」と捉える潜在的移住者にとっての魅力となりうる――ことを列挙した。新たな魅力に惹かれる若者が集う流れを作り出すためにも、同プロジェクトを通じ、映画・演劇、芸術文化に関わる人々が地域と交流し、インフルエンサーによる発信が図られることが期待される。双葉北小学校で撮影を行う東放学園映画専門学校の学生たち(内閣府他発表資料より引用)既に、先行プロジェクトとして、東京藝術大学や東放学園映画専門学校の学生による浜通り地域を舞台とした映像制作が5月に行われた。学生からは、「同年代の双葉町出身の人たちを中心に映画づくりをしたい」、「ネット情報では感じ取れない、住民の思いなどに触れて、脚本執筆の参考になった」といった感想が寄せられている。萩生田光一経産相は、今回のプロジェクト始動に当たって、「国内外に発信できる新しいまちづくり・映画づくりの仕組みを実現すべく検討を進めていく。今後は、演劇、音楽、現代アートなどにも取組を広げていきたい」と強い意気込みを見せている。
28 Jul 2022
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日本赤十字社は7月25日、ウクライナにおける医療活動を支援するため、同国赤十字社に可搬型のX線撮影装置を寄贈するとともに、放射線技師を派遣したと発表した。ウクライナでは現在、国際赤十字社・赤新月社連盟による安全管理のもと、各国赤十字社の協力で仮設診療所の開設が進められている。このほどX線撮影装置が寄贈されたのは、ザカルパッティア州の山岳地帯にあるタチブという町に開設予定(7月下旬)の診療所。〈日赤発表資料は こちら〉今回のX線撮影装置に係る現地スタッフ指導のためウクライナ西部のウジュホロド(6月に仮設診療所が開設)に派遣された日赤愛知医療センター名古屋第二病院の診療放射線技師・大島隆嗣氏によると、「輸送するためには、多くの書類や手続きが必要で、無事ウクライナ国内に入るには2か月程度を要した」という。さらに、「現地に装置が到着したことを確認して日本を出発したのだが、装置の最終的な移動に再度許可が必要となり、現地の赤十字社の幹部が当局に事情を説明し、ようやく倉庫から装置を搬出することができた」と、機器の現地搬入までにも困難があったことを述べている。この可搬型のX線撮影装置は、海外救援時の医療支援用機材として以前より使用されてきたもので、多くの国内避難民が住むウクライナ西部各地では結核などの感染症の懸念があることから、同国赤十字社は日赤に対し装置に係る支援を要請していた。日赤では、「ウクライナ国内では、医療施設への攻撃が報道されており、人々が医療を受ける機会の喪失にもつながっている。現在、1,200万人以上が医療支援を必要としている状態だ」と懸念。ウェブ上で随時、ウクライナにおける日本人医療スタッフの活躍などを紹介し、「ウクライナ人道危機救援金」への理解・協力を呼びかけている。
27 Jul 2022
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政府・原子力災害対策本部は7月26日、福島県双葉町に設定されている避難指示を8月30日午前零時をもって一部解除することを決定した。〈原子力災害対策本部発表資料は こちら〉今回、避難指示が解除されるのは、双葉町に設定された帰還困難区域のうち、国が認定した計画に基づき除染やインフラ整備が進められる特定復興再生拠点区域約555ha(同町面積全体の約1割)。帰還困難区域における避難指示解除は、2020年3月に双葉町・大熊町・富岡町内の3駅を含むJR常磐線周辺で行われているが、居住を前提としたものは、2022年6月12日の葛尾村、同30日の大熊町に続いて3例目となる。内閣府原子力被災者生活支援チームでは、「双葉町はこれまで帰還者ゼロが続いていたが、初めての住民帰還・居住を実現するものとなる」と説明。大熊町、双葉町、葛尾村の他、帰還困難区域内に特定復興再生拠点区域が設定されている富岡町、浪江町、飯舘村では、2023年春頃の避難指示解除に向けて準備宿泊などが進められている。萩生田光一経済産業相は、26日の閣議後記者会見で、「避難指示解除はゴールではなく復興に向けたスタート。引き続き安心して帰還できる環境整備に取り組んでいく」と述べた。
26 Jul 2022
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