原産協会の新井史朗理事長は7月27日、記者会見を行い、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水((多核種除去設備(ALPS)等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を下回るまで浄化した水。海水と混合し、トリチウム濃度を1,500ベクレル/リットル(告示濃度限度の40分の1)未満に希釈した上で放水する))の海洋放出に関して、粘り強く国際社会へ訴えていく考えを明らかにした。新井理事長は、IAEAが4日に公表したALPS処理水の安全性レビューに関する包括報告書の示す「海洋放出へのアプローチ、並びに東京電力、規制委員会、日本政府による活動は国際的な安全基準に合致している」、「計画されている海洋放出が人および環境に与える放射線の影響は無視できる水準である」との結論について、「グローバルスタンダードな評価として、わが国にとって大変心強いものだ」と強調。一方で、放出完了までに長い期間を要することから、「的確な運転操作の継続と設備の劣化などへの対応も必要」として、高い透明性の確保に加え、中長期的な課題に対する検証、国内外にある様々な不安や懸念に向かい合い続けることの重要性をあらためて述べた。中国における海洋放出を理由とした日本からの輸入水産物の放射性物質検査を強化する動きに関し、「運転中プラントからの放出と同様、環境や人に影響しない科学的根拠に基づく放出であることを、粘り強く国際社会に訴えていかねばならない」と強調。ウェブサイトを通じた情報発信や、中国、韓国、台湾の原子力産業団体で構成する「東アジア原子力フォーラム」を通じた対話など、原産協会によるこれまでの取組に言及し、今後も「原子力産業界をあげて、廃炉と復興の両立を支援していく」との姿勢を示した。海洋放出への社会の理解について問われた新井理事長は、廃炉と復興の両立と、再稼働した原子力発電所の地道な安全・安定運転が信頼回復の一歩と述べた。風評被害対策に関しては、電気事業連合会による全国大の水産加工品消費・売上げ振興策に言及した。この他、高温ガス炉実証炉の基本設計を担う中核企業として資源エネルギー庁より25日に三菱重工業が選定されたことについて、高温熱を用いた水素製造の可能性や立地の課題に関し質疑応答がなされた。〈理事長メッセージは こちら〉なお、三菱重工は、2030年代の運転開始を目指す高温ガス炉実証炉の建設に向け、研究開発および設計、建設までを一括して取りまとめていく。同社は、日本原子力研究開発機構の高温工学試験研究炉「HTTR」による水素製造の実証試験を進めており、今回の中核企業への選定を受け、「これまでの高温ガス炉開発における当社の豊富な実績や研究開発への積極的な取組、高い技術力などが評価された」と、コメントしている。
28 Jul 2023
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原子力規制委員会は7月26日の定例会合で、日本原子力研究開発機構の高速炉「常陽」(茨城県大洗町、ナトリウム冷却型、熱出力100MW)について、新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可を決定した。原子力機構は、2017年3月に「常陽」の新規制基準適合性に係る審査を規制委員会に提出。規制委では、炉心設計・熱出力に係る申請内容の補正に伴い、およそ1年半の審査保留を挟み、6年余の審査期間を経て、2023年5月24日に審査書案を了承。その後、原子力委員会と文部科学相への意見照会、パブリックコメントを経て、原子炉設置変更許可となった。「常陽」は、高速増殖炉の基礎・基盤の実証、燃料・材料の照射試験、将来炉のための革新技術検証を使命に、1977年に初臨界に達した後、約71,000時間の運転実績を積んできた。実験装置のトラブルが生じ、2007年5月の定期検査入り以降、運転を停止中。原子力機構は、「常陽」の原子炉設置変更許可取得を受け、運転再開後、高速炉実証炉のための研究開発やがん治療への高い効果が期待されている医療用アイソトープの製造実証に活用していくとしている。〈原子力機構発表資料は こちら〉
28 Jul 2023
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)が7月26日、およそ7か月ぶりに行われた。〈配布資料は こちら〉前回の開催以降、原子力委員会「原子力利用に関する基本的考え方」の改定や、「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」における議論などを踏まえ、4月に「今後の原子力政策の方向性と行動指針の概要」が閣議決定。今回の会合では、資源エネルギー庁が「今後の原子力政策の方向性と行動指針の概要」の示す再稼働への総力結集既設炉の最大限活用次世代革新炉の開発・建設バックエンドプロセス加速化サプライチェーンの維持・強化国際的な共通課題の解決への貢献――の6つの柱に沿い、原子力政策に関する直近の動向、今後の取組について説明し、意見交換を行った。次世代革新炉の開発・建設に関しては、高速炉、高温ガス炉の実証炉開発を行う中核企業として、それぞれ7月12日、25日に、いずれも三菱重工業が選定され、今後、開発の司令塔となる組織の具体化に向け検討を進めていく。サプライチェーンの維持・強化に向けては、3月に「原子力サプライチェーンプラットフォーム」が設立されており、全国約400社の関連企業に対し、(1)戦略的な原子力人材の育成・確保、(2)部品・素材の供給途絶対策や事業承継、(3)海外プロジェクトへの参画支援――など、サプライチェーン全般に対する支援態勢を強化していく。これに関し、遠藤典子委員(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)は、韓国で躍進する重工業メーカーの視察経験を踏まえ、「日本も新増設を急がないとサプライチェーンは消滅してしまう」と危機感を示し、早急な建設具体化の必要性を強調した。また、今回の会合から、同小委員会の革新炉ワーキンググループで座長を務める黒﨑健委員(京都大学複合原子力科学研究所所長)が議論に参加。同氏は、次世代革新炉の開発・建設に向け、立地地域とのコミュニケーションの観点にも触れ、「どこに作るかをそろそろ考える時期」と訴えた。今回、資源エネルギー庁は、脱炭素電源への新規投資を対象とした入札制度「長期脱炭素電源オークション」(初回応札を2024年1月に実施予定)に、既設原子力発電所の安全対策投資を対象とする方向性を提示。これに関し、田村多恵委員(みずほ銀行産業調査部次長)は、事業環境整備の観点から、「原子力の安全対策投資に関しては、立地条件ごとにかなり個別性が高い」と述べ、工事費用など、様々な論点で丁寧な議論の必要性を指摘した。専門委員として出席した電気事業連合会の伊原一郎原子力開発対策委員長(中部電力原子力本部長)は、最近の取組として、既設炉の早期再稼働、原子燃料サイクルの推進、革新軽水炉開発に向けた規制委との対話などについて説明。同じく原産協会の新井史朗理事長は、(1)既設炉の早期再稼働と最大限活用、(2)電力市場自由化の中での事業環境整備、(3)サプライチェーンの維持・強化――について発言。原子力発電プラントの建設に係わる技術の国内集積から、「高品質の機器製造・工事保守の供給は必須であり、そのためには早期の再稼働や新規建設着手が必要」と、強調した。
26 Jul 2023
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原子力分野で国際的に活躍できるリーダーの育成を目的として毎夏開催される「世界原子力大学・夏季研修」(WNU-SI)が6月25日~7月28日の日程で、初めて日本で開講。5週間にわたる研修プログラムは、終盤を迎えている。WNUは、世界原子力協会(WNA)が、国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)、世界原子力発電事業者協会(WANO)他の協力によって2003年に設立した国際教育訓練パートナーシップ。WNU-SIは、2005年の米国を皮切りに、毎年、世界各地で開催されてきた。これまで16回の開催で、延べ90か国・1,270名の研修実績を持つ。日本原子力産業協会では、産官学で形成される「原子力人材育成ネットワーク」の枠組みのもと、WNU-SIの日本開催を実現すべく、準備委員会を組織し取り組んできた。日本初開催となった今回のWNU-SIでは、大阪市内のホテルをメイン会場に講義・ワークショップが行われているほか、福島、福井へのテクニカルツアーなどを実施。30か国・地域から将来のリーダー候補となる30歳前後の実務経験者ら約70名が参加し、各国原子力産業界や国際機関の現役リーダー・OBらが指導に当たる。6月26日に行われた開講式では、原産協会の新井史朗理事長が、特別講義を行い、福島第一原子力発電所の廃炉、再稼働の進捗、エネルギー基本計画など、日本の原子力発電をめぐる現状について紹介。加えて、ウクライナ情勢に伴う世界のエネルギー危機、地球温暖化対策の喫緊化など、世界規模の課題にも言及し、「原子力の価値」(3E:Energy Security, Environment, Economic Efficiency)の重要性を強調。その上で、「原子力の価値」を活かすため、日本における必要なアクションとして、(1)早期再稼働、(2)運転期間の延長、(3)新増設・リプレース、(4)バックエンドの推進、(5)研究・開発――を提示。さらに、そのアクションを着実に進めていくため、(1)予見性、(2)ものづくり基盤とサプライチェーン、(3)海外での原子力発電見直しの機会、(4)若い年代層とのコミュニケーション――が重要なカギとなると述べた。WNU-SIの参加者は、研修プログラム第1~4週の7月21日まで、リーダーシップと国際社会、原子力発電の導入と安全確保、イノベーション、長期運転、核燃料サイクルに関する講義・ワークショップや、福島第一/第二原子力発電所、大飯発電所他の見学に臨んだ。24日からの最終週は、廃止措置に関する講義・ワークショップに充てられており、最終日の28日にはグループによる発表、修了式が行われ、閉幕となる運び。原産協会ではこれまで、向坊隆記念国際人育成事業を通じて、WNU-SIへの日本人受講生派遣を支援してきた。今回も日本人7名が参加しており、参加費の助成や事前研修などの支援を行っている。新井理事長は、6月23日の定例記者会見で、「研修受講後、所属組織に戻って、国際的に活躍し、10年、20年後、研修の成果や研修で得たネットワークを原子力産業界に還元してくれることを期待する」と述べている。WNU-SIは、単に知識を修得するのではなく、原子力に関連する課題について、少人数での議論、プレゼンテーションなど通じ、リーダーシップと課題解決能力を養うとともに同世代間のネットワーク構築を図るのが特長だ。原産協会が例年行っている日本人参加者による事後の報告会では、「ストレス耐性とリーダーシップを養う戦略ゲーム形式のグループワークは、社内の研修でもこれまで経験がなく、今後の業務に活かせると感じた」(電力)、「研修終了後も、他国の参加者との交流が続いており、人のネットワークは財産だ」(メーカー)といった声も聞かれている。
25 Jul 2023
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資源エネルギー庁は、エネルギー政策をめぐる様々な話題をわかりやすく解説するウェブサイト上の記事シリーズ(スペシャルコンテンツ)で、核燃料サイクルに関するテーマを相次いで取り上げている。原子力発電所の再稼働・運転期間延長、高レベル放射性廃棄物の処分地選定、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策など、昨今メディアで多く取り上げられる話題と比べ、忘れられがちな再処理、使用済燃料貯蔵、MOX燃料利用計画、クリアランス制度((放射能濃度が基準値以下であることが確認されたものを再利用または一般の産業廃棄物として処分できる制度))の「今」を平易に紹介。さらに詳しく知りたい人のために、過去に掲載した記事へのリンクも設定している。7月18日には、スペシャルコンテンツ「使用済燃料を有効活用!『核燃料サイクル』は今どうなっている?」を公開。折しも同日の原子力委員会会合で、2022年末時点、日本が保有するプルトニウムは、関西電力高浜4号機へのMOX燃料装荷などにより、前年末比で約0.7トン減少していることが報告されている。同コンテンツでは、核燃料サイクルを確立するため、解決すべき課題として、(1)再処理工場の稼働、(2)使用済燃料の貯蔵、(3)MOX燃料利用の推進――をあげ、それぞれの現状を説明。六ヶ所再処理工場については、2022年内に主要な安全対策工事が概ね終了し、2024年度上期のできるだけ早期のしゅん工に向け、大詰めの段階。使用済燃料貯蔵については、全施設の管理容量合計約2.4万トンに対し、貯蔵総量は約1.9万トンと、約80%までに達しており、現在、約4,600トン相当の貯蔵容量拡大に向けて、サイト内の乾式貯蔵施設、むつ市の中間貯蔵施設など、具体的な取組が進展している。MOX燃料については、現状の4基から2030年度までには少なくとも12基へと、利用先の拡大に向け、地元への理解活動や事業者間連携の強化が図られていく見通しだ。また、7月21日には、スペシャルコンテンツ「リサイクルで活用する原子力発電の“ゴミ”~『クリアランス制度』の今」を公開。同コンテンツでは、クリアランス制度のもとで進められている廃棄物再利用について、最近の活用事例を紹介している。例えば、中部電力では、浜岡原子力発電所地元の鋳造所に委託して、クリアランス金属を再利用した側溝用のグレーチング(すのこ状の蓋)を製造し、発電所敷地内の道路で活用。また、福井県内では、クリアランス物の再利用に関する実証事業により、公共施設のサイクルラック(自転車を停めておく器具)の他、高校生らがクリアランス制度について学んだ上でデザインした照明灯が使われている。クリアランス対象物は現状で年間約1,000トン発生しているが、既に廃炉が決まっている原子力発電所の数から、約10年後には10倍に増加する見通し。廃炉のスムーズな進行や資源の有効活用の観点から、今後は、電力業界内に限らず、クリアランス物の積極的な利用を進めていくことが必要と指摘している。
24 Jul 2023
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岸田文雄首相のアラブ首長国連邦(UAE)訪問を契機に、同国企業と日本企業・組織との間で原子力・放射線利用分野の覚書締結が行われている。7月21日までに、東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)、量子科学技術研究開発機構(QST)がそれぞれ、UAEの原子力発電所の運転・保守を行うNAWAH社、医療技術企業「M42」と覚書を締結した。岸田首相は7月17日、UAEのムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領と会談。UAEからの長年にわたる原油の安定供給に謝意を表明し、脱炭素化やクリーンエネルギーに関する協力の強化や、本年、同国が開催国となるCOP28の成功に向け、国際社会における気候変動対策に向けた行動をともに主導することで一致。また、日本貿易振興機構(JETRO)とUAE経済省が主催する「日・UAE・ビジネス・フォーラム」に出席し、UAEの政府・企業関係者に対し、「UAEの経済多角化と産業発展の実現に向けて、日本の官民の力を積極的に活用して欲しい」と強調している。東芝ESSは21日、NAWAH社と、保守管理、サプライチェーンの強化、産業育成、カーボンニュートラル達成に向けた協力関係の推進に焦点を当て覚書を締結したと発表。UAEでは現在、バラカ原子力発電所のプラント3基(140万kWの韓国製PWR「APR1400」)が商業運転中で、4基目も運転準備段階にある。UAEの原子力会社(ENEC)の合弁子会社であるNAWAH社は、サプライチェーンおよび同発電所の安全な運転を強化する計画を推進している。東芝ESSは、こうした計画をサポートし、発電所の継続的な安定操業につなげていく。同社は、アラブ初の商業炉バラカ1号機(2021年4月営業運転開始)に蒸気タービン・発電機を納入した実績を有している。また、QSTは18日、「M42」と重粒子線がん治療研究分野において研究協力覚書を締結したと発表。QSTの小安重夫理事長は「重粒子線がん治療の普及が一層進み、がん死亡ゼロ健康長寿社会の実現にまた一歩近付く」とコメントしている。
21 Jul 2023
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日本原子力研究開発機構(JAEA)と英国国立原子力研究所(NNL)が共同で、英国の高温ガス炉実証炉用の燃料製造技術開発に取り組むこととなった。JAEAが7月19日に発表した。〈海外NEWS 既報 もご覧下さい〉多様な熱利用の可能性や優れた安全性を有する高温ガス炉は、ポーランド、中国、韓国、米国など、各国で開発が進められており、かつて英国でも1960~70年代に実験炉「Dragon」(熱出力20MW)が建設・運転されたことがある。英国では脱炭素化に向けた原子力利用の最有力候補として高温ガス炉に着目。2030年代初頭までの実証を目指している。2022年9月に英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、英国高温ガス炉実証炉プログラムの実施事業者として、JAEA 、NNL他、英国企業からなるチームを選定した。〈JAEA発表資料は こちら〉同プログラムは、フェーズA:事前概念検討(2022年9月~23年2月)フェーズB:基本設計、採算性評価(~2025年3月)フェーズC:許認可、建設、詳細エンジニアリング・運転(2030年代初期)――での3段階で行われる。このほど、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ、2023年2月にBEISの担ってきたエネルギー政策を引き継いだ)は、JAEAとNNLとのチームをフェーズBの事業者として選定し、合わせて、高温ガス炉実証炉用の燃料開発プログラムの開始を発表した。フェーズBとして1,500万ポンド(約27億円)、燃料開発プログラムのステップ1として1,600万ポンド(約29億円)の予算額がそれぞれ投じられる運び。JAEAは、高温工学試験研究炉「HTTR」(熱出力30MW、2021年7月に再稼働)の開発実績を有する。「HTTR」の核となる技術は世界有数の国産技術で、例えば、原子力用構造材として世界最高温度950℃で使用できる金属材料は国内メーカーによるもの。高温ガス炉は国産技術のみで建設可能だ。今後、JAEAは、NNLと連携した燃料製造技術開発を通じ、日本の高温ガス炉技術の国外実証、英国における社会実装を進め、これらの成果を国内の高温ガス炉実証炉計画に活かしていく。
20 Jul 2023
2020
日立製作所は7月19日、高精度X線治療装置「線形加速器システム OXRAY」(オクスレイ)の販売を開始した。〈日立発表資料は こちら〉新製品「線形加速器システム OXRAY」は、装置の回転に自由度を高めた「O-リング型ガントリー構造」が特長で、正常組織へのダメージを低減しターゲットに対して高い精度で治療用X線を照射することが可能。また、患者寝台を動かすことなく多方向から連続的に照射でき、線量分布の改善とともに、患者の精神的・身体的負担の軽減にもつながる。日立では、放射線治療領域において、粒子線とX線の両方で事業を展開。粒子線治療では、これまでに陽子線がん治療システムで多くの海外納入実績を積んでおり、呼吸に伴う臓器の動きを捉える動体追跡技術や、がんの形状に合わせて照射できるスポットスキャニングなど、革新的な技術を開発し市場に投入してきた。今回の「線形加速器システム OXRAY」を契機に、同社では、広く普及しているX線治療装置を新たに自社開発し市場投入を目指す。今後も「『がんの恐れのない社会』に向けて、患者一人一人に寄り添った、低侵襲かつ経済性に優れた放射線治療システムを提供し、QOL(生活の質)の維持・向上とがん治療のさらなる発展に貢献していく」としている。
19 Jul 2023
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東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)は7月11日、同社が取り組む「カーボンニュートラルやエネルギー安定供給に貢献する原子力技術」をテーマに、報道関係者らと意見交換を行う「東芝技術サロン」を開催。その中で、革新軽水炉「iBR」のコンセプトが紹介された。冒頭、薄井秀和取締役(原子力技師長)は、火力、原子力、再生可能エネルギー、水素エネルギー、電力流通、医療分野の技術(重粒子線治療装置など)と、同社の手掛けるエネルギー事業領域を掲げ、「多くの事業で世界トップレベルの技術力を持っており、これまで数多くの実績を残している」と強調。その上で、電気を「つくる」、「おくる」、「ためる」、「かしこくつかう」ことを通じ、「将来のエネルギーのあり方そのものをデザインし社会に貢献していく」と、東芝グループのカーボンニュートラルやエネルギー安定供給に対する取組姿勢をあらためて示した。原子力発電所の設計・工事の効率化、再稼働、稼働率向上に向けては、軽水炉技師長の松永圭司氏が説明。東芝独自の技術により、例えば、東北電力女川2号機のサプレッションチェンバ(原子炉格納容器下部を囲むドーナツ型の容器)の耐震強化工事では、実物大のモックアップを用いた溶接員の習熟訓練などに努め、厳しい精度が要求される工事が工程・予算通りに進められてきたという。この他、現在・過去・未来の現場状況をパノラマ化する「3Dプラントビューア」、現場作業エリア管理をデジタル化する「エリア管理システム」などを紹介。東芝が培ってきた技術力の強みをアピールし、「デジタル技術を組み合わせることで付加価値の高いサービスを提供していく」と強調した。革新炉開発については、パワーシステム事業部シニアフェローの坂下嘉章氏が、革新安全軽水炉「iBR」のコンセプトを紹介。堅牢な建屋、静的メカニズムを取り入れた安全システムを採用し、さらなる安全性向上と安全設備・建屋の合理化を同時に達成するほか、再循環流量の加減により原子炉出力を容易に調整するABWRの特性を活かし再生可能エネルギーとの共存も図る。また、同氏は、将来の原子力のあるべき姿を多様な部門の幅広い年齢層の社員で討議してまとめた「原子力発電所Vision」を披露。「私たちの原子力発電所は、安全、安心はもちろんのこと、その技術の先進性をもって、発電所の存在が、関わる人々にとって心身ともに快適であり、誇りであり、将来の人々の営みにエネルギーを送り続けることで、豊かな生活の実現に貢献する」というもの。東芝は「iBR」の開発を通じ「新たな社会との共生の関係を築きあげる」ことを目指している。
18 Jul 2023
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EUは7月13日、福島第一原子力発電所事故後に導入した日本産食品に対する輸入規制を撤廃すると発表した。同日に行われた岸田文雄首相、シャルル・ミシェル欧州理事会議長およびウァズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長との日EU定期首脳協議(ベルギー・ブリュッセル)で明らかにされたもの。日本はこれまでも、EUに対し首脳レベルの会合を通じ、日本産食品に係る輸入規制措置の早期撤廃を要請してきた。東日本大震災後の日本産食品に対する輸入規制の現状(外務省ホームページより引用)発災後、55の国・地域で行われていた日本産食品の輸入規制は、今回の撤廃によって、11の国・地域に減少する。松野博一官房長官は14日の記者会見で、「一部の国・地域において規制が維持されていることは残念。また、ALPS処理水((多核種除去設備(ALPS)等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を下回るまで浄化した水。海水と混合し、トリチウム濃度を1,500ベクレル/リットル(告示濃度限度の40分の1)未満に希釈した上で放水する))の海洋放出を理由に一部において規制強化の動きがみられることは大変遺憾」と憂慮し、引き続き日本産食品の安全性を科学的見地から丁寧に説明していく考えを述べた。また、これまでも福島県の食品・観光のトップセールスに努めてきた同県・内堀雅雄知事は、EUによる輸入規制撤廃の発表を受け、「EUにおける輸入規制の撤廃は、加盟する27か国すべてに適用されるものであり、その波及効果は非常に大きい」とする歓迎のコメントを発表。引き続き「さらなる輸入規制の撤廃に向け全力で取り組んでいく」と強調している。
14 Jul 2023
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資源エネルギー庁は7月12日、高速炉実証炉の開発に向け、三菱FBRシステムズ(國嶋茂社長、MFBR)が提案する「ナトリウム冷却タンク型高速炉」を概念設計対象に、将来的にその製造・建設を担う中核企業として三菱重工業を選定した。〈資源エネルギー庁WG発表資料は こちら〉2022年末、原子力関係閣僚会議は高速炉開発の戦略ロードマップを改訂。「常陽」、「もんじゅ」を経て、民間企業による研究開発が進展し、国際的にも導入が進んでいることから、ナトリウム冷却型高速炉を「今後開発を進めるに当たって最有望」と評価した。資源エネルギー庁では、2023年度から開始する「高速炉実証炉開発事業」(GX支援対策費)として、新規予算76億円を計上。2024年以降の概念設計を開始するに当たって最有望となるナトリウム冷却型高速炉について、その炉概念の仕様・中核企業選定のための公募を3月より行っていた。12日に行われた資源エネルギー庁の高速炉開発会議戦略ワーキンググループで、その選定結果を、技術評価委員会委員長の山口彰氏(原子力安全研究協会理事)が説明。選定されたMFBRが提案する「ナトリウム冷却タンク型高速炉」は、設計成立性と経済性について、設計の実現と開発目標達成に向けた工程を見込むことができる耐震性向上やシビアアクシデント対策、コスト低減、基準整備などの課題に対応できる十分な計画性を有する中型の出力(電気出力65万kW)とすることで、大型炉のスケールメリットか小型炉の初期投資リスク抑制を選択し実用化につなげることができる大型炉を選択する場合、他電源と競合できるレベルであることが提示されており、実用化された際の市場性を具体的に展望できる開発が可能となる――ことから、概念設計の対象として適当と評価。また、その製造・建設を担う中核企業として、三菱重工は、高速炉のエンジニアリング会社として、MFBRと協働し日本原子力研究開発機構が行う研究開発と十分に連携した概念設計が可能である国内サプライチェーンの現状の脆弱性を具体的に整理し把握しており、その維持・拡充を図る中心となり、わが国産業全体の実力涵養に貢献できる総合的エンジニアリング能力を蓄積、継承してきており、原子力事業における設計から建設・試運転までをグループ各社で分担するプロジェクト遂行力によって高速炉開発に責任をもって取り組むことができる――ことから、適当と評価した。今回、概念設計対象として選定された「ナトリウム冷却タンク型高速炉」は、同じナトリウム冷却型でもループ型の高速増殖原型炉「もんじゅ」とは異なる仕様だが、フランス、中国、インドなど、海外では多く採用されている。今後、資源エネルギー庁では、高速炉開発の司令塔となる組織のあり方について検討していく。三菱重工は、高速炉実証炉の設計・開発を担う中核企業に選定されたことを受け、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減、エネルギー資源の有効活用などの観点にも言及し、「これまで培ってきた技術と経験を活かし、MFBRとともに実証炉の概念設計ならびに設計に必要となる研究開発を開始し、高速炉の実用化に向けた取組を進めていく」とのコメントを発表した。三菱重工は、2006年に総合資源エネルギー調査会が取りまとめた「原子力立国計画」で示された高速増殖炉サイクル早期実用化の方針のもと、2007年に高速増殖炉開発のエンジニアリング中核企業に選定された経緯がある。また、日本原子力産業協会の新井史朗理事長は、「今後の高速炉開発に伴う関係産業の全体の実力涵養とともに、若者の原子力技術への興味を高め、人材育成にも寄与するものとして大いに期待したい」とする理事長メッセージを発表した。
13 Jul 2023
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群馬大学重粒子線医学推進機構の研究グループは7月11日、咳などにより発生する空気中の汚れの状況を調べ、狭あいな治療室など、閉鎖空間における影響を明らかにしたと発表した。新日本空調の独自技術「微粒子可視化システム」を用い、空気中の汚れを「見える化」するもので、感染症全般のまん延防止に役立つことが期待される。〈群大発表資料は こちら〉重粒子線治療を行う同研究グループによると、放射線治療を受ける患者は仰向けでの治療が一般的で、体を固定する装具は頭から首までを覆うことが多く、装着時に患者はマスクを外す必要があり、人によっては首が圧迫され咳が誘発されやすい。特に、放射線治療室は一般的に狭い密室空間であることから、医療スタッフにも感染リスクが高まる可能性がある。新型コロナウイルスを始めとした感染症への対応も喫緊な中、「がん治療に関連する医療スタッフへの感染対策として、放射線治療室内の汚れ具合の実態調査は急務」との考えから研究に着手したもの。今回の研究では、クリーンルーム(飛沫の動きのみを観察するために、背景に存在する無数の粒子の可及的除去が可能な装置を搭載)で、「微粒子可視化システム」を用いて、模擬患者から発生した飛沫の動きや到達点を「見える化」。クリーンルームでは、(1)通常の発声(2m程度の距離で聞こえる範囲の声の大きさ)、(2)大声による発声、(3)咳――の3種類で評価。その結果、通常の発声と比較して、大声と咳では、口の位置から垂直方向と、頭と足側から水平方向のいずれも飛沫の到達距離が大きく、特に口から70cm周囲が汚染されていた。実際の放射線治療室でも医療スタッフの立ち位置による汚染度合の比較を行っている。同研究成果は、今秋の日本放射線腫瘍学会で発表・議論され、有効な感染症防御対策の開発に寄与していく見通し。なお、同研究に協力した新日本空調は、原子力空調設備での施工実績を数多く有するほか、昨今の感染症対策への関心の高まりから、独自技術の「微粒子可視化システム」や「飛沫計測技術」を用いて、オーケストラの演奏者・聴衆の飛沫感染リスク低減に関する検証を行うなど、注目を集めている。
12 Jul 2023
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日本原子力産業協会は7月7日、都内で、IAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長(7月4~7日に日本滞在)による講演会を開催(日本経済団体連合会共催、外務省後援)。グロッシー事務局長は、産業界から集まった約70名の参加者に、IAEAが途上国の支援に向け実施している活動への理解および経済的支援を強く呼びかけた。IAEAでは、発電分野にとどまらず、保健・医療、食料、農業、環境保全、水資源管理など、多分野の放射線利用に係る取組に注力しており、加盟各国からの関心も高まっている。今回の講演会は、「IAEAがSDGsや気候変動といった『グローバルアジェンダ』に対し、いかに幅広く貢献しているのか」について紹介し、IAEAと日本企業との関係構築の一助とするもの。グロッシー事務局長はまず、「IAEAをパートナーとして見て欲しい。われわれが取り組む世界的な活動のどこかに皆さんが『ともに参加できる領域』がある」と述べ、日本の産業界と今後も連携していく意向を示した。その中で、グロッシー事務局長は、「アフリカでは人口の7割が放射線治療にアクセスできない」と、途上国のがん患者をめぐる状況を危惧し、自身が音頭を取って1年半前、放射線治療施設が欠陥・不足している20以上の加盟国を支援するイニシアティブ「Rays of Hope」を立ち上げたことを紹介。その他、医療分野では感染症を媒介する虫の根絶に、農業分野ではかんばつに強い作物の品種開発で放射線技術が用いられ、開発途上国の経済発展に寄与していると述べた。また、最近、関心が高まっている取組として、海洋プラスチック問題に対応するイニシアティブ「NUTEC Plastic」を紹介。「同位体トレーシング」と呼ばれる技術により、プラスチックの再利用をより環境に優しく実現するもので、インドネシアなどでパイロットプラントが立ち上がっているという。「Rays of Hope」も「NUTEC Plastics」も日本政府が拠出金による支援を行っている。一方で、グロッシー事務局長は、「今、われわれが取り組んでいる問題の規模は巨大で、民間企業のダイナミックな力も必要だ」と強調し、産業界に対しIAEAが進めるプロジェクトへの理解・支援をあらためて求めた。グロッシー事務局長は、地球温暖化に伴い原子力エネルギーが世界中で大きな関心を集めている点にも言及。講演後、参加者との間で、浮体式原子力発電所の将来性、一方で、規制対応、産業界の標準化、ファイナンス面での課題についても質疑応答がなされた。また、若手女性研究者を支援する「IAEAマリー・キュリー奨学金」に関連し、参加者から学生向けプログラムの導入を求める声があったのに対し、グロッシー事務局長は、「今回の来日で、福島を訪問した際、生徒たちに原子力について説明したいという地元の高校の先生に会った。次回、福島を訪れた際には、高校生たちと対話したい」などと、微力ながら応えていく姿勢を示した。
10 Jul 2023
1998
原子力規制委員会は7月7日、東京電力に、福島第一原子力発電所のALPS処理水((多核種除去設備(ALPS)等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を下回るまで浄化した水。海水と混合し、トリチウム濃度を1,500ベクレル/リットル(告示濃度限度の40分の1)未満に希釈した上で放水する。))の海洋放出に係る移送/希釈/放水の各設備について、使用前検査終了証を交付した。ALPS処理水の海洋放出設備は、(1)測定・確認用設備、(2)移送設備、(3)希釈設備、(4)放水設備――で構成。そのうち、(1)については、3月に使用前検査終了証が交付されており、今回、(2)~(4)の検査が完了し、規制委による使用前検査はすべて完了したこととなる。ALPS処理水の海洋放出設備は、2022年7月に規制委員会より福島第一原子力発電所に係る実施計画変更認可を受け、8月に設置工事が開始された。2023年4月26日には放水トンネル(長さ約1km)が完成。6月26日にすべての施設の設置が終わり、同30日に最終の使用前検査が実施された。ALPS処理水の処分に関する関係閣僚会議は2023年1月に、「海洋放出設備工事の完了、工事後の規制委員会による使用前検査、IAEAの包括的報告書等を経て、具体的な海洋放出の時期は、本年春から夏頃を見込む」との見通しを示している。ALPS処理水の安全性レビューに関するこの包括的報告書は7月4日に日本政府に提出されており、今回の使用前検査終了により、海洋放出開始に向け設備・保安上の準備は整ったこととなる。東京電力は、「ALPS処理水希釈放出設備および関連設備の保守管理に努めるとともに、同設備を的確に運用するため、引き続き、運転操作訓練・警報対応訓練を行なうなど、現場での安全に係る品質向上について積極的に取り組んでいく」とするコメントを発表した。
07 Jul 2023
2034
新堀会長©原子力学会日本原子力学会の会長に就任した新堀雄一氏(東北大学大学院工学研究科教授)が7月4日、記者会見を行い、抱負を述べた。新堀会長は6月開催の同学会通常総会で選任された。新堀会長は、就任挨拶の中で、昨今の国際情勢や環境問題を背景としたGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた取組を、「原子力の利用において大きな追い風になり、いわゆる次世代革新炉についての議論も一層盛んになっている」と歓迎。一方で、「着実な軽水炉の再稼働」を第一に、核燃料サイクルの早期実現、廃止措置や廃棄物の管理・処分を着実に進めていく必要性を強調。その上で、今後、重点を置く取組として、 福島第一原子力発電所事故に係る学術的提言の発信、復興に向けた学協会連携の活動 会員の持つ専門知を多様な考え方を持つ人々に伝えていくこと 未来に向けた原子力学会のあり方について学際的に議論を深めること――をあげた。福島の復興と廃炉の推進に向け現在、36の学協会が連携して活動する「福島復興・廃炉推進に貢献する学協会連絡会」(ANFURD)については、引き続き幹事学会として、理工系の学協会だけでなく、社会科学系の学協会もメンバーとする体制拡大を検討。未来に向けた原子力学会のあり方については、同学会の若手連絡会・学生連絡会とも連携を図る。新堀会長は、原子力分野の幅広い専門知識・用語に関連し、専門家間でも依然と「言葉が通じないことがある」と指摘。その中で、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関し、「移行抑制」という言葉が専門分野によって認識が異なることを一例にあげた上で、一般の人たちの理解も見据え、「専門家同士が対等に議論し合える」素地を築くべく、特別専門委員会で検討していく考えを述べた。
06 Jul 2023
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福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水((多核種除去設備(ALPS)等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を下回るまで浄化した水。海水と混合し、トリチウム濃度を1,500ベクレル/リットル(告示濃度限度の40分の1)未満に希釈した上で放水する))の取扱いの安全性に係るレビューを総括するIAEA包括報告書〈要旨仮訳は こちら〉が7月4日、ラファエル・グロッシー事務局長より岸田文雄首相に手交された。2021年7月に日本政府とIAEAとの間で署名された「ALPS処理水の取扱いに係るレビューの包括的な枠組みに関する付託事項」に基づき、IAEAが行ってきた一連のレビューを総括するもの。IAEA包括報告書では、ALPS処理水の海洋放出へのアプローチ、並びに東京電力、原子力規制委員会および日本政府による関係する活動は国際的な安全基準に合致している東京電力が現在計画しているALPS処理水の海洋放出が人および環境に与える放射線の影響は無視できる水準――と結論付けている。今回、グロッシー事務局長が来日したのは、2022年5月以来、3度目。来日初日の7月4日には、岸田首相の他、林芳正外相、西村康稔経済産業相、山中伸介原子力規制委員会委員長と会談を行った。グロッシー事務局長と面会した岸田首相は、包括報告書の受取りに際し、これまでのIAEAによる協力に謝意を表した上で、「科学的根拠に基づいて、高い透明性をもって国内外に丁寧に説明していきたい」と強調。グロッシー事務局長は、「科学的かつ中立的で、日本が次のステージに進むに当たって決断を下すのに必要な要素がすべて含まれている」と述べた。包括報告書は、ALPS処理水の海洋放出について「あくまで決定するのは日本政府であり、この報告はその方針を推奨するものでも、支持するものでもない」としている。会談後、グロッシー事務局長は日本記者クラブで記者会見に臨み、海外からの不安に関する質問に対し「われわれは科学的に健全な評価ができたと確信している」と、包括報告書の意義を強調。また、海洋放出前・中・後を通じモニタリング・評価を継続すべく、福島第一原子力発電所構内にオフィスを立ち上げ、職員を常駐させる考えを表明した。グロッシー事務局長は5日、福島に赴き、午前中、政府・原子力災害対策本部が設置する地元との意見交換の場「廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会」(いわき市)に出席。IAEA包括報告書について説明した上で、ALPS処理水の安全性の理解に関し「魔法の杖はない。皆さんの声に耳を傾けることが何よりも大事」と、対話の重要性を強調した。午後からは、福島第一原子力発電所を視察する。IAEA包括報告書の公表を受け、東京電力は、「内容をしっかりと確認し、ALPS処理水の放出に係る安全・品質の確保・向上に活かしていく」とのコメントを発表した。
05 Jul 2023
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7月に入り、資源エネルギー庁では、東京エリアに8月末までの2か月間、需要対策として「無理のない範囲での節電の協力」を呼びかけるなど、電力需給見通しは依然と予断を許さぬ状況にある。こうした中、「みんなで一緒に考える」を理念に生活者の視点で活動する「フォーラム・エネルギーを考える」(神津カンナ代表)は、パンフレット「暮らしの中のエネルギー 2023」を制作し、エネルギー問題に関する知識の普及・啓発に努めている。パンフレットは、「地球環境問題」、「世界のエネルギー事情」、「日本のエネルギー事情」の3部構成。グラフ・図表を中心としたわかりやすさが特長で、教育現場での活用も期待できそうだ。パンフレットの大半を占める「日本のエネルギー事情」では、まず、日本における2050年までの年齢別人口の将来推計などから、少子高齢化時代到来の実態を示している。その上で、「1世帯当たりの人員が減り続ける一方、世帯数は年々増えている。世帯数が増えると電気製品や自家用車などが増え、エネルギー消費量も増加する」と説明。さらに、1975年度以降のデータから、産業部門のエネルギー消費は横ばいなのに対し、民生部門(家庭など)や運輸部門では増加傾向にあることを示し、「暮らしとエネルギー」について問題提起。例えば、家庭のエアコン普及率は1980年度の約40%が2020年度には約96%に、パソコンの普及率は1986年度の約15%が約79%に急増し、「省エネ技術は進むが、大型化・多機能化で消費電力は増加傾向」と指摘している。省エネについては、1970~90年の大幅なエネルギー消費効率(最終エネルギー消費/実質GDP)の改善実績を図示。実質GDP当たりの一次エネルギー消費量は世界平均の約4割(2019年)で、世界の中でも「省エネ先進国」といわれるまでになったものの、1人当たりのエネルギー消費量は世界平均の約1.7倍(2020年)と依然として多いことから、「引き続きエネルギー消費効率のさらなる改善を目指し、省エネに徹底して取り組むことが必要」と述べている。エネルギーの安定供給に関しては、太陽光・風力、揚水式水力、石油火力、天然ガス・LPガス、石炭火力、原子力、一般水力、地熱の各電源の特性を整理。「S+3E」(安全性、安定供給、経済性、環境保全)の観点から、エネルギー資源の多様性を確保してバランスよく組み合わせる「エネルギーミックス」の重要性を説いている。原子力については、「燃料調達の安定性、経済性に優れており、ベース供給力として活用できる」と評価。世界の動向、福島第一原子力発電所事故を踏まえた新規制基準、核燃料サイクル、放射性廃棄物の処理・処分のあらましとともに、放射線の基礎知識も紹介している。
04 Jul 2023
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福島県の浜通り地域への移住をテーマとした連続ドラマ「姪のメイ」(青野華生子企画・プロデュース、清水康彦監督、本郷奏多・大沢一菜主演)がテレビ東京で9月7日より放送される(毎週木曜深夜24時30分~)。ドラマの制作には、2021年に福島県が県内12市町村(田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村)への移住・定住を促進すべく設置した「ふくしま12市町村移住支援センター」が協力。ロケも現地で行い、「前向きに生きる地元の人たち」の生の姿を映し出す。〈同センター発表資料は こちら〉ドラマのあらすじは、東京在住の中小企業会社員・小津(本郷奏多)が、両親を事故で亡くした姪っ子のメイ(大沢一菜)を一時的に引き取り、夏休みの1か月間だけ楢葉町に仮住まいを決め、リモートワークをしながらメイとの絆を深めていくというもの。都会で育った現代的な思考を持つ32歳の独身男子と芸術家肌で達観した12歳の少女というミスマッチな2人のひと夏の出来事を、地元の温かい人間模様を背景に描くヒューマンコメディ。小津を演じる本郷奏多さんは、これまで映画「GANTZ」シリーズ、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」など、数々の話題作に出演。メイを演じる大沢一菜さんは今回、テレビドラマ初出演となる。本郷さんは「広大な自然と穏やかな風景が広がる福島というロケーションも大きな見どころ」と、大沢さんは「福島で暮らす個性的な近所のみんなとの絆がどんどん深まっていく姿を見て前向きな気持ちになってもらえたら嬉しい」と、それぞれコメントしている。
03 Jul 2023
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総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)が6月28日に開かれ、「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」と関連法成立を受けた今後のエネルギー政策のあり方について意見交換を行った。同分科会の開催は半年ぶり。〈配布資料は こちら〉その中で、杉本達治委員(福井県知事)は、GX脱炭素電源法(脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律)の成立に関し「国の責務や基本的施策が示され、原子力政策の明確化に向けた大きな一歩となった」と評価。一方で、「将来の原子力の必要な規模とその確保に向けた道筋についてはまだ明らかになっていない」と述べ、エネルギー基本計画の見直しをできるだけ早期に検討するよう求めた。現行のエネルギー基本計画(第6次)は2021年10月に閣議決定。エネルギー政策基本法で少なくとも3年ごとの見直しが求められている。この他、原子力技術の重要性を訴え続けてきた隅修三委員(東京海上日動火災保険相談役)は、「地域間の電力価格格差の最大要因は原子力が稼働しているかだ」と指摘し、再稼働の促進に向け国が前面に立った取組を切望。遠藤典子委員(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)は、原子力発電所部材製造現場の内外視察経験にも言及し、日本の国際競争力停滞やサプライチェーン消滅の危惧から「新増設に向けた具体的制度設計が急務」と強調した。また、最近のエネルギー戦略の動きから、水素・アンモニアの導入促進、浮体式洋上風力発電による産業競争力強化への期待や、エネルギー政策と雇用対策・産業政策・資源循環政策との連携、脱炭素化における企業評価に関する意見、今後のエネルギー基本計画見直しに向けては、科学的レビューや国民対話を求める意見も出された。
30 Jun 2023
2000
文部科学省は6月28日、「核融合の挑戦的な研究の支援のあり方に関する検討会」(主査=足立正之・堀場製作所社長)を始動した。内閣府による「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」策定(2023年4月)を受け、核融合の未来の可能性を拓くイノベーションへの挑戦的な研究支援のあり方を検討するもの。今回の会合で、「ムーンショット型研究開発制度」((超高齢化社会や地球温暖化問題など、重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標を国が設定し、大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進するプログラム。現在、2040、50年を標榜し9つの目標が設定されている。2023年度予算で約30億円計上。))を活用することで概ね一致した。〈配布資料は こちら〉検討会のキックオフに際し、竹永秀信委員(量子科学技術研究開発機構六ヶ所研究所長)が核融合エネルギーの原理・特徴、実現への道筋について説明。ITER(国際熱核融合実験炉)計画に続き、約64万kWの発電実証を行う産学連携による日本独自の原型炉設計の取組を紹介した上で、将来の実用炉との「技術ギャップ」に関し、「経済性の向上」に向けた小型化、高稼働率化、簡素化をカギとしてあげた。さらに、「技術ギャップ」を埋めるための研究開発について、「研究機関、大学などがそれぞれで実施しており系統的なものとなっていないが、まだ潜在的なアイデアもあるのでは」と指摘。今後の進め方として、竹永委員は、幅広いアカデミアや産業界からのアイデア活用、全体を統括する「プログラムディレクター」を設置する必要性などを主張した。また、核融合エネルギーのベンチャー企業「京都フュージョニアリング」の設立に携わった武田秀太郎委員(九州大学都市研究センター准教授)は、まず世界で核融合エネルギー実現に取り組むスタートアップ企業の過去20年間の推移を図示。「2000年代にはほぼ1、2社だったのが、今や35社にまで上っており、2021年単年でも約5,000億円の投資を集め、民間投資だけでも累計で7,500億円を超えると推定」と、その躍進ぶりを強調。特に、米国では、2021年に民間からの投資額が政府予算をおよそ5倍相当で初めて上回り、業界に活力を与えているという。世界のスタートアップ企業について、武田委員は「3社に2社が2035年以前の初送電を見込んでいる」と、核融合実現に掲げる目標の短さを特筆事項にあげた。その上で、核融合スタートアップの技術的革新に向けた軸として、革新的な閉じ込め方式(代表的とされるトカマク、ヘリカル、レーザー以外の方式)革新的な要素技術革新的な社会実装――を提示。革新的な要素技術に関しては、先進材料やAIの開発・活用などを通じ小型化・低コスト化を目指す欧米の取組を紹介。革新的な社会実装に関しては、宇宙輸送、核医学、水素製造、熱供給など、発電以外の応用を例に、将来のニーズ・市場からバックキャスト(目標とする未来像を描き、それを実現する道筋を未来から現在へとさかのぼり政策を立案する手法)した研究により社会・産業構造の変革に取り組むべきとした。核融合の研究開発に向け活用する方向性が示された「ムーンショット型研究開発制度」では、現在、社会・環境・経済の諸課題の解決に向け9つの目標を設定し、挑戦的な研究が推進されている。吉田善章委員(自然科学研究機構核融合科学研究所長)は「幅広い科学技術分野を巻き込んでいくことで色々なイノベーション生まれてくる」と、学際的な取組の重要性を強調。高校時代から国の競争的資金に採択され研究に取り組んでいる村木風海委員(炭素回収技術研究機構代表理事)は「埋もれている個人の才能を引き出す施策も今後必要」と、萌芽的研究を支援していく必要性を示唆した。
28 Jun 2023
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政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」が6月27日に開かれ、同会議の議長を務める岸田文雄首相は、GXの推進について「わが国の成長戦略の中核であるのみならず、経済安全保障の上でも大きな役割を果たす」と、政策の重要課題に位置付けられることを改めて強調。西村康稔経済産業相を中心に、関係府省庁が連携し前例にとらわれない大胆な政策の具体化を図るよう閣僚らに指示した。同会議の開催は、昨年末の「GX実現に向けた基本方針」決定以来、半年ぶり。会議終了後、記者会見を行った西村経産相は、GX推進の体制整備を見据えた7月4日付の幹部人事、資源エネルギー庁の組織見直しを発表。人事では、多田明弘事務次官の後任に、「脱炭素社会成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)の総括責任者で経済産業政策の新機軸を牽引してきた飯田祐二経済産業政策局長兼首席エネルギー・環境・イノベーション政策統括官を充てる。また、平井裕秀経済産業審議官の後任に保坂伸資源エネルギー庁長官が、同長官の後任には村瀬佳史内閣府政策統括官(経済財政運営)がそれぞれ就く。一連の幹部人事に関し、西村経産相は、「通商政策、GX推進法の詳細な制度設計、半導体・蓄電池戦略といった様々な重要施策の継続性に万全を期していく」などと述べた。資源エネルギー庁の組織見直しについては、省エネルギー・新エネルギー部に水素およびアンモニアに特化して需要と供給の両面での政策を担う「水素・アンモニア課」を、資源・燃料部にGXを見据えた資源外交戦略を担う「国際資源戦略室」をそれぞれ新設。また、資源・燃料部では、石油・天然ガス課を「資源開発課」に、石油精製備蓄課と石油流通課を統合し「燃料供給基盤整備課」に、鉱物資源課と石炭課を統合し「鉱物資源課」にそれぞれ改組。課室名から石油、天然ガス、石炭の名が消え、カーボンニュートラル時代を見据えた大幅な体制見直しとなる。西村経産相は、「時代の大きな変化を感じている。新しい時代に向けてエネルギー政策をしっかり推進していきたい」と、決意を新たにした。
27 Jun 2023
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県議会に臨む杉本・福井県知事(インターネット中継)福井県の杉本達治知事は、6月23日の県議会本会議で、12日に電気事業連合会・関西電力が発表した使用済燃料のフランスへの搬出計画に関し、「県として、改めて政策当事者である国の評価や、その具体的理由等について確認するとともに、立地市町や県議会の意見も聴いた上で、総合的に判断していきたい」と述べた。6月の定例会開会に際し、県政を巡る課題の一つとして、原子力のバックエンド対策に関し発言したもの。電事連は5月19日、プルサーマル発電で発生する使用済MOX燃料に関する再処理実証研究の実施に向けた取組を、国内原子力事業者により進めることを発表。使用済MOX燃料を商業用プラントで再処理した実績を有するフランス・オラノ社他との協力で行うもの。6月12日には、その実証に必要な数量として、関西電力より使用済MOX燃料約10トンと使用済ウラン燃料約190トンを、2020年代後半にフランスに搬出し、2030年代初頭に再処理実証研究を行うことを発表。同日、関西電力は、福井県に対し本件について報告を行い、「使用済燃料が福井県外に搬出されるという意味で、中間貯蔵と同等の意義がある」との考え方を示した。同社は、2021年2月に、福井県外における中間貯蔵について、「2023年末までに計画地点確定、2030年頃に操業開始」とする使用済燃料対策推進計画を発表している。福井県議会は、6月23日の夕刻、全員協議会を開催し、資源エネルギー庁の小澤典明次長を招き質疑応答。小澤次長は、使用済MOX燃料の再処理について、エネルギー基本計画の示す「2030年代後半の技術確立を目途に研究開発を進める」ことなどを踏まえ、今回の電事連・関西電力による発表に関しては「使用済燃料の搬出を確実に行う手段として評価できるもの」と説明した。西村康稔経済産業相も13日の閣議後記者会見で、同様の見解を示している。これに対し、議員からは、核燃料サイクル政策・事業に関し、使用済燃料のサイト内貯蔵容量のひっ迫、六ヶ所再処理工場のしゅん工遅れに係る問題の他、原子力政策の責任所在を問う声、県民へのわかりやすい説明を求める意見などが出された。
26 Jun 2023
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原子力規制委員会は6月22日、臨時会合を開き、柏崎刈羽原子力発電所における核物質防護に係る不適切事案に関し、東京電力による改善措置活動の進捗状況について、小早川智明社長らよりヒアリングを行った。柏崎刈羽原子力発電所については、2021年3月に、原子力規制検査の対応区分が「第4区分」(事業者が行う安全活動に長期間にわたる、または重大な劣化がある状態)から、「第1区分」(事業者の自律的な改善が見込める状態)に改善されるまで、燃料移動禁止命令((特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令、事実上プラントが運転できない))が規制委員会より出されている。同委では、2023年4月までに延べ3,500人・時間に及ぶ追加検査を実施。各委員の現地視察も踏まえ、5月17日、対応区分は「第4区分」のまま、追加検査を継続することを決定した。東京電力・小早川社長(インターネット中継)22日の会合で、小早川社長は、是正措置命令発出後の2年間を振り返り、「経営陣が自分事として真剣に取り組む姿勢を貫く」意思を改めて示した上で、規制委員会が確認方針としている強固な核物質防護の実現自律的に改善する仕組みの定着改善措置を一過性のものとしない仕組みの構築――の改善措置サイクルを回す必要性を強調。さらに、「現場の管理者、担当者、協力企業との距離を近付けることが大事」と述べ、現地・現物を自ら把握し経営トップとしてリーダーシップを発揮していく意向を示した。〈東京電力・小早川社長発表資料は こちら〉一連の説明を受け、核セキュリティ担当の田中知委員が、残る課題とされている4項目、「正常な監視の実現」(不要警報の低減など)、「協力会社を含む気付き事項の取り上げ」、「核物質防護基本マニュアルの運用」、「改善措置の継続的な実施」の達成見込みについて質問。これに対し、小早川社長は「7月中を目処に形を作りたい」と応えた。また、自然ハザードに関する審査担当の石渡明委員は、不要警報の低減に関し、柏崎刈羽原子力発電所の厳しい自然環境(大雪、砂嵐など)から、「思わぬ現象も起きうる」として、侵入検知設備の設置場所など、ハード面の対策に限界があることを示唆。荒天時の特別な体制整備など、ソフト面の対策にも言及し、「自然現象への対応に、これで十分ということはない」として、継続的に改善を図っていく必要性を指摘した。山中伸介委員長は、核物質防護の取組を原子力安全確保に活かす考えから、柏崎刈羽原子力発電所の保安規定変更を検討するよう東京電力に求めた。また、同社退席後、委員長は、今後の命令解除の議論を見据え、柏崎刈羽6・7号機の新規制基準適合性審査に係る原子炉設置変更許可時(2017年12月)に行った「原子炉設置者としての適格性」に関し、改めて技術的観点から再確認する方針を固め、その具体的方法の検討を原子力規制庁に指示した。
23 Jun 2023
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関西電力は6月21日、高浜発電所1・2号機について、それぞれ8月下旬、10月中旬の本格運転再開を決定した。火災対策に係る対応のため、再開に向けた工程は当初予定より2か月ほど遅れる見通し。再稼働すれば、国内では、同社・美浜3号機(2021年7月本格運転再開)に続き、2例目の40年超運転となる。高浜1・2号機はそれぞれ1974年、75年に運転を開始しているが、いずれも2011年以降、停止している。〈関西電力発表資料は こちら〉同社は、2015年3月、美浜3号機とともに高浜1・2号機について、新規制基準適合性に係る審査を原子力規制委員会に申請。同年4月には、高浜1・2号機の運転開始から60年までの運転期間延長認可に係る申請を行い、2016年4月に両機とも原子炉設置変更が許可された。高浜町からは2021年2月に、福井県からは同年4月に再稼働に対する理解表明を得ており、安全対策工事も完了。テロに備えた「特定重大事故等対処施設」は、高浜1号機が今年7月中旬、同2号機が同8月下旬の運用開始予定。それぞれ、8月上旬、9月中旬にも調整運転(発電再開)を開始する見通しだ。関西電力では、高浜1・2号機の再稼働に当たり、「トラブルの未然防止のための総点検等を行い、安全を最優先に緊張感を持って進めていく」としている。
22 Jun 2023
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