関西電力は11月25日、高浜発電所3・4号機(PWR、各87.0万kW)について、運転開始から60年までの運転期間延長を行う方針を決定した。同社では、申請に必要となる特別点検の結果などを含めた劣化状況評価を実施しており、60年までの運転を想定しても問題がないことを確認済み。今後、準備が整い次第、原子力規制委員会に対し申請を行う。〈関西電力発表資料は こちら〉高浜発電所3・4号機は、それぞれ1985年1月、同年6月に運転を開始。両機とも、2016年に新規制基準をクリアし再稼働(原子炉起動)。2025年中に原子炉等規制法に定める40年の運転期限を迎える。今回の決定に際し、関西電力は、「引き続き、原子力発電所の安全性・信頼性の向上に努め、地元を始めとする皆様の理解を得ながら、原子力発電を重要な電源として活用していく」とコメントしている。国内原子力発電プラントの40年超運転に係る認可申請は、既に原子炉設置変更許可が得られている関西電力高浜1・2号機、同美浜3号機(2021年夏に再稼働)、日本原子力発電東海第二と、10月に申請が行われた九州電力川内1・2号機とを合わせ計8基となる。
28 Nov 2022
2481
原産協会は11月25日、「原子力発電に係る産業動向調査2022報告書(2021年度対象調査)」を発表した。1959年以来、わが国における原子力産業、特に原子力発電に係る産業の全体像を把握し、会員企業・組織や関連省庁への情報提供および同協会の事業活動に活かすことを目的として実施しているもの。今回の報告書は、2021年度を対象とした電気事業者、重電機器メーカー、燃料メーカー、商社、建設業、サービス業など、243社からの回答による調査結果。それによると、電気事業者の原子力関係支出高は1兆7,646億円で対前年度比16%減。うち、「機器・設備投資費」、「土地・建物・構築物」、「運転維持・保守・修繕費」が、前回の調査と比べ大きく減少。新規制基準対応支出額は3,521億円で全体の約20%を占めていた。また、鉱工業他の原子力関係売上高は1兆8,020億円で同0.7%減。納入先別にみると、「電気事業者向け」が1兆2,681億円で同7%減となった一方、「鉱工業等向け」は4,259億円で同19%増となった。さらに、産業構造区分別にみると、「プラント既設」関連が9,846億円で同11%減となった。原子力発電に係る産業の景況感に関しては、現在を「悪い」とする回答が前回から8ポイント減の68%となり、1年後を「良くなる」とする回答も5年ぶりに「悪くなる」との回答を上回ったことから、若干の改善傾向がみられている。一方で、原子力発電所の長期停止に伴う影響について尋ねたところ(複数回答可)、「技術力の維持・継承」をあげた割合は60%で、近年で最も高くなった。さらに、「技術力の維持・継承」への影響としては、「OJT機会の減少」との回答が格段に最も多く、「調達先の消失によるモノ・役務の入手が困難」となる企業も近年増加傾向がみられている。また、他社の撤退の影響を受ける、若しくは受ける恐れのある分野としては、「技術者・作業者」との回答が引き続き最も多く、人材への懸念が高まっているものとみられる。今回の調査では、原子力人材の採用状況や革新炉への関心についても尋ねた。採用状況については、「十分に採用できている」が28%、「必要な人数より2~3割足りない」が46%、「必要な人数の半分以下しか採用できていない」が14%と、多くの企業で思うように採用できていない実情が明らかとなった。また、新型炉・革新炉事業への関心については、「関心がある」との回答が、国内向け、海外向けでそれぞれ69%、52%を占めていた。原子力発電に係る産業を維持する上での課題について尋ねたところ(複数回答可)、「政府による一貫した原子力政策の推進」が83%で最も多く、「原子力発電所の早期再稼働と安定的な運転」が67%で、これに次いでおり、いずれの回答割合とも近年で最も高くなっていた。原産協会の新井史朗理事長は、11月25日の記者会見で、今回の調査結果について説明。景況感に若干の改善がみられた一方で、「新規制基準対応のための安全対策工事がピークを越えた電気事業者が出てきたことや、化石燃料高騰などにより電気事業者がコスト削減に努めているとみられ、原子力関係売上高は減少している」と述べ、現状は依然として厳しい市場環境にあるとの認識を示した。
25 Nov 2022
1981
日本原子力産業協会は11月21日、国内の会員企業と海外企業とのビジネスマッチングを支援するウェブサイト「Nuclear Industrial Directory of Japan」(旧:バイヤーズガイド)を開設した。原産協会では日本の原子力産業振興のため、協会会員企業の原子力ビジネス情報を英文で紹介する紙媒体のバイヤーズガイドを2011年に発刊し、2年毎に版を重ねてきた。協会ではバイヤーズガイドを世界原子力展示会(WNE、パリ)をはじめとする国際展示会等で広く配布し、会員企業の海外向けビジネス交流を支援してきた。今般、紙媒体からウェブサイトへ移行したのは、「閲覧者の利便性と掲載情報の更新頻度を高める」(原産協会国際部小林課長)のが目的。経済産業省資源エネルギー庁が進める「革新サプライヤチャレンジ」((経済産業省が地方局とのネットワークも活かし、プラントメーカーとの連携を通じた研究開発や、海外セミナーへの参画等、海外市場獲得の支援を通じ、原子力事業者の製造機会を創出する支援ツール 第6回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 革新炉ワーキンググループの資料3を参照))の一翼を担うものとして、海外の革新炉プロジェクトへの機器/部材供給に向けた取り組みを後押しする。ウェブサイトでは、各社の製品やサービスを紹介するだけではなく、海外企業が調達ニーズを投稿し、双方向でやり取りが可能な掲示板(Bulletin Board)機能を盛り込んでいる。
25 Nov 2022
1433
自由民主党の電力安定供給推進議員連盟(会長=細田博之氏〈衆議院議長〉)は11月24日、「我が国のエネルギー安全保障の確保・GX(グリーントランスフォーメーション)推進に向けた提言」を発表した。提言では、昨今のウクライナ情勢伴う化石燃料価格の高騰などに鑑み、「電力の安定供給における危機はさらに顕在化している」と危惧。電力供給危機といえる現下の状況を踏まえるとともに、「2050年カーボンニュートラル」の実現も標榜し、持続的な原子力発電の活用を図るべく、「原子力発電の最大限の活用」および「安全性を高めた新型炉のリプレース・新増設」を、国のエネルギー政策の基本方針として明確に位置付ける国が前面に立って、設置変更許可を受けた既設炉の再稼働を迅速に進める安全性の確保を大前提に、現在最長60年とされている既設炉の運転期間の延長を行う再処理や廃炉、最終処分など、バックエンド対策の加速に向けた取組を早急に具体化していく原子力発電所に対する武力攻撃等を想定し、必要な措置を講じる――よう求めている。政府の「GX実行会議」における岸田文雄首相の指示を受け、西村康稔経済産業相は8月に示した「日本のエネルギー安定供給の再構築」の中で、原子力政策に関し、再稼働に向けた総力の結集、安全性の確保を大前提とした運転期間の延長、既設原子力発電所の最大限の活用、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設など、今後の政治判断を必要とする項目を提示。現在、総合資源エネルギー調査会で議論を進めている。今回の提言は、その年末までの具体論取りまとめに向け発表されたもの。同議連の塩谷立幹事長(衆院議員)らは24日、西村経産相を訪れ提言書を手渡した。
25 Nov 2022
3555
資源エネルギー庁は11月22日、2021年度のエネルギー需給実績(速報)を発表した。それによると、最終エネルギー消費は12,330PJ(ペタ〈10の15乗〉ジュール)で対前年度比2.0%増。部門別にみると、家庭部門は新型コロナ感染の落ち着きによる在宅時間減の影響から同6.5%減、企業部門は前年度の需要減からの回復影響から4.5%増などとなった。一次エネルギー国内供給は18,575PJで対前年度比3.4%増。そのうち、化石燃料は同1.4%増で8年ぶりに増加し、再生可能エネルギーは9年連続で増加した。化石燃料は、石炭が同6.8%増、石油が同2.9%増、天然ガス・都市ガスが同6.4%減。非化石燃料は、原子力が同82.6%増、太陽光が同10.3%増。非化石燃料のシェア増加により、化石燃料のシェアは83.2%と、東日本大震災以降で最小となった。発電電力量は1兆327億kWhで対前年度比3.2%増。そのうち、非化石電源の割合は27.1%で同3.5ポイント増となった。発電電力量の構成は、再生可能エネルギーが20.3%で同0.5ポイント増、原子力が6.9%で同3.0ポイント増、火力(バイオマスを除く)が72.9%で同3.5ポイント減などとなっている。エネルギー起源CO2排出量は9.8億トンで、対前年度比1.2%増と、コロナ禍からの需要回復影響などにより8年ぶりに増加に転じた。
22 Nov 2022
2384
原子力規制委員会の山中伸介委員長は11月21日、日本記者クラブで記者会見を行い、9月に2012年の発足から10年を迎えた同委のこれまでの取組と今後のあり方について述べた。山中委員長はまず、2011年に発生した福島第一原子力発電所事故に関し、「長年、原子力に携わってきたものとして、『痛恨の極み』であり、『なぜあのような事故を防ぐことができなかったのか』という大いなる後悔と反省の気持ちを今も持ち続けている」と述べ、これを原点に原子力規制のさらなる改善に向けて「変化を恐れず」に取り組んでいく考えを強調。続けて、新規制基準の策定・適合性審査、新検査制度の運用開始、福島第一原子力発電所事故の調査・分析など、10年間の取組について説明。福島第一原子力発電所の廃炉については、これまでの緊急措置的な対応から今後の10年に向け、「放射性物質で汚染された様々な物質の分析・分類・保管を着実にかつ安全に、社会的影響にも十分配慮して進めていく必要がある」と述べた。原子力発電所の運転期間延長に関して、山中委員長は、規制委員会が2020年7月に示した「運転期間のあり方は、原子力利用に関する政策判断にほかならず、当委員会が意見を述べるべき事柄ではない」との見解を改めて明言。これを前提に規制側として、「必要な安全規制を継続して実施できるようにする」ための制度設計に向けて準備を進めているとし、現在、検討中の新たな安全規制制度案について説明した。現行の高経年化技術評価制度と運転期間延長認可制度を統合するもので、規制委員会が運転開始から10年以内ごとに事業者に対し策定を義務付ける「長期施設管理計画」を審査し認可されたプラントが運転を継続できるよう法整備を図る。運転期間延長に関する記者からの質問に対し、山中委員長は、「高経年化した原子炉の規制に抜けがあってはならない」と、独立した立場から厳正に審査を行う考えを繰り返し強調。海外の原子力発電所の実績にも鑑み長期運転に係るデータの信頼性について指摘されたのに対し、「各国で様々な取組があるが、われわれ独自の安全規制を図っていきたい」と応えた。
22 Nov 2022
2344
福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の安全性レビューに関し来日していたIAEAのミッションが11月18日、5日間の日程を終了した。ALPS処理水の放出前・中・後にわたり継続的に実施されるIAEAによる安全性レビューは、2月に続き2回目となる。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉今回は、IAEA原子力安全・核セキュリティ局調整官のグスタボ・カルーソ氏を筆頭に7名のIAEA職員と、9名の国際専門家(アルゼンチン、中国、韓国、フランス、マーシャル諸島、ロシア、英国、米国、ベトナム)が来日。一行は、経済産業省、東京電力との会合で、前回レビュー後、4月に取りまとめた報告書で技術的事項として示されている横断的な要求事項と勧告事項ALPS処理水/放出水の性状放出管理のシステムとプロセスに関する安全性放射線環境影響評価放出に関する規制管理と認可ALPS処理水と環境モニタリング利害関係者の関与職業的な放射線防護――についてレビュー。特に、東京電力が11月14日に原子力規制委員会に提出した放出を管理するための組織体制の明確化、処理水中の測定対象核種の改善などを含む実施計画の変更認可申請書について、IAEAの安全基準に基づいて専門的な議論を行った。16日には、福島第一原子力発電所を訪問。希釈放出設備の工事進捗状況などを視察し同社と意見交換を行った。会見を行うIAEA・カルーソ氏(インターネット中継)18日にフォーリン・プレスセンターで記者会見を行ったカルーソ氏は、「われわれが作成するレポートはすべて一般に公開される。科学的な評価を行うことで、日本だけでなく、IAEAメンバー各国にとっても安心感を与えるものとなる」と、IAEAが堅持する厳しい国際基準と高い透明性を確保する姿勢を強調。来春に予定されるALPS処理水の放出を前に包括的な報告書を公表する考えを述べた。
21 Nov 2022
2196
原子力発電環境整備機構(NUMO)とマイナビニュースによるタイアップ番組の第2弾が11月16日より公開されている。地層処分事業への関心喚起を図る取組の一つで、マイナビニュースがTwitterで不定期的に配信している番組「竹山家のお茶の間で団らん」の1コマ。〈NUMO発表資料は こちら〉「竹山家のお茶の間で団らん」は、タレントのカンニング竹山さん、篠田麻里子さん、越智ゆらのさんが竹山家のそれぞれ父、母、娘を演じ、様々なジャンルの最新情報をゲストを交えたトークを通じ「ゆるく楽しく」紹介する。今夏公開された同タイアップ番組の第1弾は、北海道幌延町への「夫婦二人旅」で、そこでは、地層処分技術に関する研究開発を行う日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターが紹介された。今回の第2弾では、高レベル放射性廃棄物の処分地選定に向けた文献調査が行われている北海道神恵内村を家族3人で訪れる。3人は村役場で高橋昌幸村長に話を聞く。高橋村長は、文献調査に応募した2020年当時、抗議の手紙が殺到したことを振り返った上で、現在、NUMOとともに行っている住民との対話活動について説明し、「きちんと理解してもらう」重要性を強調する。神恵内村郷土料理の桜鱒カレー、身がしっくりしながらほろほろ感も(マイナビニュースTwitterより引用)この他、ウニの養殖場での殻割り体験・試食、海を眺望するワーケーション(観光地でテレワークを活用し働きながら休暇をとる過ごし方)施設の訪問など、地元のグルメや注目スポットを紹介。カンニング竹山さんが「夕日がきれいに見える」と絶賛する民宿「きのえ荘」では、郷土料理の桜鱒カレーを楽しむ。高レベル放射性廃棄物の処分地選定に向けた文献調査は、神恵内村の他、北海道寿都町で進められている。桜鱒カレーを開発した「いちき商店」の岡田順司さんは、番組の中で、過疎化が急速に進む神恵内村の将来を案じるとともに、「地層処分事業を理解している人が非常に少ない。もっと日本国民一人一人がしっかり考えて欲しい」と語る。桜鱒カレー(缶詰)は、道の駅「オスコイ!かもえない」で購入できる。
21 Nov 2022
2442
全国各地の魚介料理が堪能できる「ジャパン フィッシャーマンズ フェスティバル 2022 ~全国魚市場&魚河岸まつり~」(主催=SAKANA & JAPAN PROJECT ジャパン フィッシャーマンズ フェスティバル実行委員会)が日比谷公園(東京都千代田区)で開催されている。会期は11月17~20日(雨天決行・荒天中止)。感染症防止対策を徹底し、出店数は前回の3倍となる約70ブースに拡大。入場無料で、会場内の混雑状況により入場制限が行われる場合がある。同フェスティバルでは、今回も東日本大震災からの復興応援を目的として、「常磐もの」と呼ばれる福島県産の海産物を味わえる「発見!ふくしまお魚まつり」(主催=発見!ふくしまお魚まつり実行委員会)を併催。全5種類の「ふくしまご当地海鮮丼」、小名浜サンマの塩焼き、直径1.5mの巨大鍋で150人前を一気に調理する「常磐ものイカスミパエリア」の他、「福島牛ステーキのウニとイクラのせ」、「常磐煮干し極上中華そば」など、肉・麺とのコラボメニューも味わえる。また、新酒鑑評会で金賞受賞数日本一を9回連続で獲得した福島の地酒で出店した福島県酒造協同組合は「福島の魚介との相性は抜群」と絶賛。ブースでは、大吟醸、純米、それぞれ3種類の飲み比べができる。折しも絶好の晴天に恵まれた会期初日の17日、人気のブースには開場から30分足らずでおよそ40分待ちの長蛇の列ができるほどの盛況ぶりだった。絶好の秋晴れのもと、テープカットに臨む経産省・復興庁の政務ら(中央に秋葉復興相、左端は「発見!ふくしま」公式アンバサダーの箭内夢菜さん)同日午前に行われたテープカットに際し、同フェスティバル実行委員長の近藤豊和氏(産業経済新聞社上席執行役員)は、「四方を海に囲まれ水産資源に恵まれた日本。もっともっとお魚を食べよう」と、日本の水産業振興に向けエール。また、秋葉賢也復興大臣は、「福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし。今回のイベントを通して福島県の漁獲水揚量・販売額がさらに拡大することを心より期待する」と述べた。
17 Nov 2022
1648
議事を進める白石分科会長(インターネット中継)総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)は11月15日、原子力政策について議論した。〈配布資料は こちら〉8月の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で西村康稔経済産業相が報告した「日本のエネルギーの安定供給の再構築」を受け、同分科会は9月にエネルギー供給体制の見直しに向け検討を開始。15日の会合では、資源エネルギー庁が同調査会下の原子力小委員会における検討状況を、再稼働への関係者の総力結集運転期間延長など、既設原子力発電所の最大限活用次世代革新炉の開発・建設再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化国際連携の推進――の論点ごとに整理し説明。これに対し、日本原子力研究開発機構理事の大島宏之氏、大学院大学至善館の枝廣淳子氏、朝日新聞論説委員の五郎丸健一氏、原子力資料情報室事務局長の松久保肇氏(原子力小委員会委員)よりヒアリングを行った。大島氏は、原子力機構が取り組む高温ガス炉、高速炉の研究開発状況を紹介。バックエンド対策、非エネルギー分野における展望、人材育成・技術継承の課題にも触れ、次世代革新炉の実用化に向けて、計画の具体化、安全規制・基準の構築、事業の予見性確保、国の支援施策の重要性を訴えた。エネルギー政策の検討に関し討論型世論調査(2012年)や2050年を見据えたエネルギー情勢懇談会(2017~18年)に参画した経緯を持つ枝廣氏は、まず「福島原発事故がなかったかのようにエネルギー政策を考えてはならない」と強調。立地地域での対話活動の経験にも触れ、一方的な情報提供ではなく平時から双方向コミュニケーションに努める必要性を訴えた。運転期間延長や次世代革新炉の開発・建設の動きに関連し、五郎丸氏は、現行のエネルギー基本計画が掲げる「可能な限り原発依存度を低減」との整合性を問い、「『つまみ食い』的に方針を転換するのではなく、基本計画の見直しも合わせて議論すべき」と主張。高レベル放射性廃棄物最終処分や核燃料サイクルの事業停滞を憂慮するとともに、再稼働に係る地元同意の範囲や避難計画・体制の実効性を「不十分」などと指摘した上で、「結論ありき、スケジュールありき」の拙速な議論に危惧を示した。ヒアリングを受け、委員の杉本達治氏(福井県知事)は、「立地地域としては安全が最優先」と述べ、事業者が安全対策に十分な投資を図れる制度設計を合わせて検討していくべきと要望。また、これまでも原子力技術開発の必要性を訴え続けてきた隅修三氏(東京海上日動火災保険相談役)は、再生可能エネルギーが持つポテンシャルの限界から、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、「もう時間がない」と述べ、原子力機構が示した次世代革新炉開発に係る技術ロードマップの前倒しなどを求めた。原子力小委員会の委員長を務める山口彰氏(原子力安全研究協会理事)は、今後の議論に向け、「様々な問題が絡み合った連立方程式を解くようなもの。原子力ワンイシューの中で二者択一的に対立するのではなく、様々な論点を合わせて解を求めていくべき」と述べた。
16 Nov 2022
2629
COP27で挨拶に立つグテーレス国連事務総長©国連広報センター11月15日に世界の人口は80億人に達する見通し。国連が今夏公表した「世界人口推計2022年版」によるもの。世界の国別人口は、現在首位の中国を2023年にもインドが抜くと予測されている。折しもCOP27(エジプト・シャルム・エル・シェイク)会期中となったが、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、7日の開会挨拶で、「80億人目の赤ちゃん」の誕生を前に、「この節目は、この気候変動会議とは何であるかを大局的に見るきっかけとなる」と議論に先鞭。さらに、「時は刻一刻と過ぎている。われわれは生死をかけた闘いの中にいる。そしてわれわれは敗北しつつある。温室効果ガスの排出量は増え続けている。われわれの地球は、気候変動地獄へと向かう高速道路をアクセルを踏んだまま走っているのだ」と危惧。昨今のウクライナ情勢に伴う化石燃料への依存がもたらすリスクも憂慮し、世界全体での「2050年カーボンニュートラル」実現の必要性を強調した〈既報〉。世界のエネルギー情勢に関し、IEA(国際エネルギー機関)のファティ・ビロル事務局長は、9月に行われた日本エネルギー経済研究所主催のシンポジウムで、「世界で電気にアクセスできない人々の数は年々減少してきたが、今年は2,000万人増える」との悲観的な見通しを示している。
15 Nov 2022
1875
資源エネルギー庁は11月7日、ウェブ上の情報サイト「スペシャルコンテンツ」を、「エネこれ」と命名しリニューアルするとともに、エネルギーについてわかりやすく学べる特設サイト「みんなで考えよう、エネルギーのこれから。」を新設した。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉「スペシャルコンテンツ」は、エネルギー広報の取組として、2017年6月にスタート。以降、同サイトを通じ、カーボンニュートラル、福島の復興、核燃料サイクル、最終処分などをテーマに、有識者のインタビューも交え定期的に情報を発信し、6月末時点での記事数は約310本に上り、そのうち、原子力関連の記事は約60本となっている。リニューアルに合わせ「エネこれ」では、新着記事として、「エネルギー政策を考えるための、4つの理想」を掲載した。そこでは、エネルギーを考えるカギとなる4つの「理想」として、絶対に安全なものを使いたいいつでもどこでも安定して使えるようにして欲しい値上がりすると生活が苦しい。安いものがいい地球のため、環境にやさしいものを選びたい--を提示。エネルギーに係るそれぞれの「理想」に関し、福島第一原子力発電所事故の経験、世界情勢の影響による供給リスク、価格高騰の現状、大気汚染物質の排出や放射性廃棄物について考える必要性などをあげ、「4つをまとめて叶えられるような夢のエネルギーは見つかっていない」と説明。その上で、4つの理想の頭文字をとった「S+3E」(安全性、安定供給、経済性、環境への適合)を基本的視点として、エネルギー政策について考えさせている。一方、新設サイト「みんなで考えよう、エネルギーのこれから。」では、動画コンテンツも用いて、エネルギーに関する疑問に応え、エネルギー政策の基本となる考え方などをわかりやすく説明。多くの人たちがエネルギーについて考えるきっかけとなるサイトを目指す。1日に政府が決定した今冬の電力需給対策で「安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通し」が示されたものの、1月の東北・東京エリアでは厳寒時の需要に対する予備率が4.1%に留まるなど、依然として厳しい見通しだ。同サイトがまず掲載した動画コンテンツでは、「朝、いつもの電車が止まるかもしれない」、「来月、電気代がものすごく高くなるかもしれない」といった電力需給ひっ迫により引き起こされる影響を述べた上で、太陽光、水力、火力、原子力他の発電所イラストが並ぶところに「万能ではないから、エネルギーをひとつには選べない。」とのテロップを掲げ問題提起。これを踏まえ、エネルギーに関する、「電気代やガス代、ガソリン代はどうして高くなっているの?」、「全部、太陽光や風力で発電したらどうなるの?」、「原子力発電所の安全性は大丈夫?」といった疑問に対し、これまで「スペシャルコンテンツ」で紹介してきた記事に誘導し応えている。
11 Nov 2022
2652
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)は11月8日、主に原子力発電所の運転期間のあり方を中心に議論した。〈配布資料は こちら〉8日の同小委員会会合で、資源エネルギー庁は、いずれも原子炉等規制法に基づく安全性の確認を大前提に、今後の運転期間のあり方について、現行の原子炉等規制法にある上限規定(最大60年)を維持特段の上限規制を設けない(ベースとなる運転期間を設定した上で追加延長には上限を設けない、など)一定の運転期間上限は設けつつ、現行の上限規定に対し追加的な延長の余地は勘案(新たな規制対応に伴う運転停止期間を算入しないいわゆる「時計を止める」、など)――の選択肢を提示し、委員らに意見を求めた。運転期間の延長を含む既存プラントの最大限活用については、「原子力政策の今後の進め方」((8月24日のGX実行会議で経済産業相が提出した「日本のエネルギーの安定供給の再構築」に記載))の中で課題の一つにあがったことから、同小委員会では今秋より検討に着手。一方、原子力規制委員会は、10月15日の定例会合で資源エネルギー庁よりヒアリングを行い、「運転期間に係る方針は利用政策側の法体系の中で検討される。規制側としては、高経年化した原子炉の安全確認のための規制について明確化する」ことを確認。これに基づき、同委は、11月2日の定例会合で、現行の運転期間延長認可と高経年化技術評価の2者を統合する新たな制度案を提示し検討を開始した。新たな制度案は、運転開始から30年以降、10年を超えない期間ごとに、安全上重要な機器の劣化状況を把握し経年劣化に関する技術評価を行うとともに、その評価結果に基づく施設の劣化を管理する「長期施設管理計画」を策定するよう事業者に対し義務付けるというもの。運転期間の上限については言及していないものの、規制委の山中伸介委員長は「現行制度よりはるかに厳しい規制となる」と述べている〈既報〉。8日の原子力小委員会会合で、杉本達治委員(福井県知事)は、昨夏に国内初の40年超運転を開始した関西電力美浜3号機を例に、長期運転に向けた取組を充実化していく必要性を述べた上で、運転期間延長に関し、利用側と規制側との整合性ある制度設計を求めるとともに、「古くなれば安全性が損なわれる可能性も高まる。住民の安全・安心を最優先に国が運転期間に責任を持つべき」と訴えかけた。また、技術的観点から、竹下健二委員長代理(東京工業大学名誉教授)は、「基本的に運転期間は、中性子照射脆化やコンクリート劣化などを含め、炉の安全性が科学的に確認できる場合は60年を超えて運転を認めるのが合理的」と説明。専門委員として出席した原産協会の新井史朗理事長は、「エネルギー安定供給と国際的公約である2030年46%削減((2021年4月に菅首相が表明した2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減するという目標))、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、既存炉の早期再稼働の実現とともに、運転期間延長を含む原子力の最大限活用が不可欠」と述べた。〈発言内容は こちら〉同小委員会では今回、資源エネルギー庁が提示した運転期間のあり方に関する3つの選択肢に対し、特段の採否表明は求めていないが、委員からは、この他に、経済に及ぼす影響、政策上の整理を行う必要性、技術基準の明確化、バックエンド対策、司法判断に伴って生じた運転停止期間の除外の是非に関し意見があった。
09 Nov 2022
2472
原産協会の新井史朗理事長は11月4日、記者会見を行い、原子力産業界における人材確保支援と理解促進を目的として関西原子力懇談会との共催で毎年実施している「原子力産業セミナー2024」の開催結果(速報)を発表した。同セミナーは、主に2024年卒の大学生・大学院生・高専生が対象。今回、10月15日に東京で、同29日に大阪で開催された。両会場を合わせた学生参加者数は計473人(前年比24%増)で、2012年度以降、最高の参加者数となったほか、前々回の開催より採り入れたオンライン参加も各々31名に上っており、「対面・オンラインのハイブリッド方式をとる本セミナーの価値が高まっている」と分析している。出展企業・機関数は両会場を合わせ76社で、前年度より11社増加。新井理事長は「コロナ前の状況に戻りつつある」と述べ、また、会場で学生らと交わした話を振り返り「原子力の仕事したいという強い意志を持って来場している学生や、福島の復興に貢献したいという思いを持つ学生もいた」と語った。今後の原子力人材確保に向け、新井理事長は、「原子力産業は原子力工学だけでなく、電気、化学、土木、建築など、様々な分野の人材が必要。文系も含めてできるだけ多くの学生にアピールできるよう努力している。また、様々な業界が集う就活イベントに出展するなどして、原子力専攻以外の学生にも知ってもらえるよう努力している」と強調。近年の文系学生の来場者増加傾向にも好ましい見方を示した。また、新井理事長は、10月26日に原産協会が米原子力エネルギー協会(NEI)と発表した「未来の原子力に向けた日米産業界共同声明」について紹介。カーボンニュートラル社会の実現とエネルギー安全保障の持続的確保を念頭に、日米両国の原子力産業界がサプライチェーンを強靭化し世界で安全性の高い原子力の利用を促進することを目指すもので、第三国への原子力導入支援も視野に入れている。新井理事長は、「経験豊かな両国の原子力産業が、カーボンニュートラル、エネルギー安全保障といった地球規模の課題において、さらに協力を深めていくことを確認できたことの意味は大きい」と強調した。先般、原子力規制委員会が原子力発電所の60年超運転の可能性を見据え高経年化プラントの安全規制で新たな制度案を示したことについて、新井理事長は「科学的にも技術的にも合理的」と述べた上で、「事業者にとって選択肢が増えることになる」と評価した。
07 Nov 2022
1798
政府は11月3日、秋の叙勲受章者を発表。量子科学技術研究開発機構(QST)理事長の平野俊夫氏が瑞宝大綬章を受章することとなった。平野氏は、大阪大学学長、内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員などを歴任。2016年に放射線医学総合研究所と、日本原子力研究開発機構の量子ビーム・核融合部門の統合により発足したQSTの初代理事長に就任し、現在に至っている。両法人統合のシナジー効果の一つとして、原子力機構の核融合部門が蓄積してきた超電導技術の応用によるがん治療装置の小型化・低コスト化が期待されており、同氏は就任以来、「がん死ゼロ健康長寿社会の実現」を目指し、既存病院建屋にも設置可能な次世代がん治療装置「量子メス」の実用化に向け精力的に取り組んでいる。今回の受章に際し、平野氏は、「この受章を励みとし、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献できるよう、微力ながら尽力していく」とのコメントを発表した。同氏は、QST発足時の記者会見で「多様な学問領域を統合するワクワク感に溢れている」と期待を寄せたほか、以降も随所で「夢は実現するためにある」と熱く語る非常にエネルギッシュな人柄である。また、長く取り組んできた免疫物質「インターロイキン6」の研究は、関節リウマチや新型コロナなどの治療薬開発の基盤となっており、2021年にはノーベル生理学・医学賞の有力候補として評された。
04 Nov 2022
2475
原子力規制委員会は11月2日の定例会合で、高経年化した原子力発電プラントに関する安全規制の検討に向け、現行の運転期間延長認可と高経年化技術評価の2者を統合する新たな制度案を示した。運転期間の延長が「原子力政策の今後の進め方」((8月24日GX実行会議に経済産業相提出の「日本のエネルギーの安定供給の再構築」に記載))の中で課題の一つにあがったことから、現在、総合資源エネルギー調査会で検討が進められているが、今後、60年を超えて運転する可能性も見据え、規制側として制度設計の準備を進めるもの。規制委員会は10月15日の定例会合で、資源エネルギー庁よりヒアリングを行い、「運転期間に係る方針は利用政策側の法体系の中で検討される。規制側としては、高経年化した原子炉の安全確認のための規制について明確化する」ことを確認。原子力規制庁に対し今後の制度設計に係る指示を出していた。国内発電炉の経年数一覧(原子力規制庁発表資料より引用)新たな制度案では、運転開始から30年以降、10年を超えない期間ごとに、安全上重要な機器の劣化状況を把握し経年劣化に関する技術的評価を行うとともに、その評価結果に基づいて施設の劣化を管理する「長期施設管理計画」を策定することを事業者に対し義務付ける。同計画の認可を受けずに運転した場合は設置許可取り消しもあり得るというもの。運転期間の上限については言及していない。委員・規制庁の間では、経年劣化といわゆる「設計の古さ」との相違や、新規制基準に未適合のプラントの扱いに関して議論となり、引き続き検討を深めていくこととなった。山中伸介委員長は、会合終了後の記者会見で、「現行制度よりはるかに厳しい高経年化炉に対する規制となる」と繰返し強調。制度の大枠については年内に固める考えを述べた。
04 Nov 2022
2055
総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)は11月2日の会合で、次世代革新炉の建設に向けた人材育成や国民理解の促進を中心に意見交換を行った。〈配布資料は こちら〉同WGは、前回10月24日の会合で、「革新炉開発に関する検討の深掘り」として、今後の論点を、事業環境整備開発体制・司令塔組織サプライチェーン・人材の維持・強化研究基盤整備――に整理。その中で、原子力サプライヤの実態に関し、資源エネルギー庁は今回の会合で、「中核技術を持つ一方で、政府支援が行き届かないまま、原子力事業から撤退する例がみられた過去の反省を踏まえ、重要企業を把握し必要な支援策を講じる体制構築が必要」との問題意識から、新たな原子力サプライチェーン新体制を提案。地域の関係機関と連携し日頃から中小企業などへの支援を行う地方経済産業局のネットワークを活用した「原子力サプライチェーンプラットフォーム」を立上げ、支援策の検討・拡充が継続する仕組みを構築していくもの。資源エネルギー庁の説明によると、原子力を支えるサプライヤは全国に約400社点在しており、原子力事業以外を柱とする企業が多くを占めている。人材育成については、「原子力人材育成ネットワーク」((産業界、学術界、地方自治体、行政庁からなる国内外の人材育成のプラットフォーム))の戦略WG主査を務める吉村真人氏(日立製作所)が産業界における現状と課題について発言。同ネットワークの戦略ロードマップ改定において議論している10年後を見据えた人材構成上の課題の一つとして、建設や運転期間延長に係る人材の維持・育成を指摘。国内における建設空白期間の長期化が及ぼす影響に関し、設計、製造、調達、建設、試験・検査の各分野で「新規建設を通じてのみ習得可能な技能があるのだが、教える側も既に建設の経験がない世代になっている」などと懸念を示した。「ANEC」のカリキュラム受講学生では就職先にとして原子力分野への関心の高まりがみられている(2022年度北大拠点でのアンケート結果、文科省発表資料より引用)さらに、文部科学省研究開発局原子力課長の新井知彦氏は人材育成の取組として、2020年度から進めている複数の大学・研究機関、企業などが連携したコンソーシアムを形成し教育資源・機能の結集・相互補完を図る「ANEC」(Advanced Nuclear Education Consorsium for the Future Society)を紹介。「ANEC」をリードする北海道大学拠点のオープンカリキュラム・実習の受講学生からは「就職先として原子力・放射線分野に関心を持った」という声も多く聞かれているという。これに対し、高等教育に携わる立場から高木直行委員(東京都市大学大学院総合理工学研究科教授)は、原子力関係学科への進学を巡る学生の志望意識低下や親の反対など、厳しい現状を述べ、「もう大学だけの努力ではどうにもならない。これでは原子力産業の低下は不可避」と憂慮。その一方で、全学対象の原子力関連講座に多くの学生が集まっている近況を、最近の革新炉開発関連の報道などによる効果ととらえ、国においても「予見性あるビジョン」が示されることを求めた。人材育成・教育に関しては、初等中等教育・高等教育との相互連携やリテラシー向上を求める意見、サプライチェーンの維持・強化に関しては、海外プロジェクトへの支援の有効性に係る指摘もあった。また、国民理解の関連では、教育との結び付きとともに、「情報を発信して終わるのではなく、体験学習など、得た情報をもとに思考を深めてもらう機会が重要となってくる」など、今後の新規建設を見据えた意見も出された。
02 Nov 2022
2452
太田房江経済産業副大臣は10月25~28日、米国・ワシントンD.C.に出張し、IAEA主催の「21世紀の原子力に関する国際閣僚会議」、および「日米原子力産業対話」に出席した。〈経産省発表資料は こちら〉「21世紀の原子力に関する国際閣僚会議」(10月26~28日)は、IAEAが持続可能な発展への原子力エネルギーの貢献、原子力エネルギーの今後の課題などについてハイレベルで議論を行うため、通例4年ごとに開催している閣僚級会合で、今回は5回目となる。併せて、米国原子力エネルギー協会(NEI)が主催する日米の原子力産業界が集うサイドイベントも開催された。太田副大臣は、26日の各国演説で、岸田首相のリーダーシップのもと、グリーンエネルギー中心の経済、社会、産業構造の実現に取り組んでおり、現在、既存原子力発電所の運転期間延長や次世代革新炉の開発・建設の検討を進めるとともに、IAEAの協力を得ながら福島第一原子力発電所の廃炉と処理水の海洋放出に向けた準備を進めていることなど、日本の現状について報告。加えて、ウクライナの原子力施設の安全確保や戦災からの復興に関し、IAEAの取組に敬意を示すとともに、日本としても全力で支援すると表明。さらに、世界各国における小型モジュール炉(SMR)を含む原子力発電の導入を支援していく考えにも言及した。また、26日に行われた「日米原子力産業対話」では、日本原子力産業協会とNEIとの間で合意された「未来の原子力に向けた日米産業共同声明」の署名に同席〈既報〉。太田副大臣は、原子力を活用していく上で日米を始めとする価値観を共有する国々が連携し信頼性の高いサプライチェーンを維持・強化していく重要性などについて、日米双方の産業界関係者に対し訴えかけた。なお、新興国における原子力導入支援に関し、米国国務省(DOS)は26日、同閣僚会議の場で日米両国がガーナへのSMR導入に向けパートナーシップを結んだと発表している。
01 Nov 2022
1810
原子力委員会と原子力規制委員会との意見交換が10月28日に行われた。両者が公開の場で意見交換を行うのはおよそ5年ぶり、3回目で、それぞれ上坂充委員長、山中伸介委員長の就任後では初となる。〈配布資料は こちら〉意見交換ではまず、原子力委員会側が2017年に閣議決定された「原子力利用の基本的考え方」の改定に向けた検討状況、および2022年5月に同委が取りまとめた「医療用等ラジオアイソトープ(RI)製造・利用推進アクションプラン」について説明。上坂委員長は、規制委員会に対し、審査の効率化に向けた取組の継続や、原子炉の長期運転、次世代革新炉の開発、医療用RI国産化・利用推進に係る規制対応を求めるとともに、質問事項として、安全確保と国民便益のバランスの観点における規制効率化の位置付け外部組織とのコミュニケーションに係る現状認識事業者による自主的な安全性向上の取組に対する評価安全審査におけるリスク情報の活用に関する現状認識と取組状況原子力規制庁職員の人材確保・育成――を提示。これに対し、山中委員長はまず、厳正に規制を行う立場から「『効率化』という言葉には慎重を期しており、『改善』と呼ぶようにしている」と、表現上、誤解を招かぬよう努めていることを繰り返し強調。外部組織との対話については、学協会が提示する技術基準の評価などに関し「できる限り進めていきたい」と、真摯に対応していく考えを示した。また、事業者による自主的な安全性向上の取組については、「安全に対する第一義の責任は事業者にある」とした上で、「自主的な取組をできるだけ促せるようなバックフィット(既に許認可を受けた施設が新知見に基づく規制要求に適合することを確認する)など、今後の安全確保のあり方を考えていきたい」と応えた。人材確保の関連で、原子力委員会の岡田往子委員は、規制庁におけるジェンダー・バランスの改善状況について、最近のOECD/NEAによる調査に言及しながら質問。先の規制委員会定例会合で議題となった「今後の規制委員会の運営方針」の中でも同様の問題意識を示した同委の伴信彦委員は、「一機関だけの努力でできるものではないが、働きやすい職場づくりなど、身近なできることを一つ一つ積み重ねていくこと。現在『小さなことでも形にしていこう』という段階にある」と応えた。次世代革新炉に関する規制対応については、原子力委員より先を見据えた人員の配分・増員を求める意見もあったが、プラント審査を担当する杉山智之委員は「まだ個別に考えることはできない状況。まずは事業者が次にどのようなものを具体的に考えているのか、情報待ちの段階」との認識を示した。
31 Oct 2022
2511
日本原子力産業協会と米原子力エネルギー協会(NEI)は10月26日、「未来の原子力に向けた日米産業界共同声明」を発表した。同共同声明を契機に、日米原子力産業界として、日米協力に基づく第三国への原子力導入を加速すべく両国政府・金融機関から外交・産業政策・財政支援を得ることが重要との考えのもと、両国の原子力サプライチェーンを強靭化し世界で安全性の高い原子力利用の促進に貢献していく。共同声明では、原子力について、脱炭素社会の実現とエネルギー安全保障の確保という地球規模の課題を解決する有力な手段であり、「頑強で安定した電源であり、再生可能エネルギーと併せて活用することで、クリーンで確実なエネルギーシステムへの移行をさらに加速させることが可能」、「発電のみならず、熱供給や水素製造を通じて、輸送、化学、鉄鋼など、他の経済部門の脱炭素化にも大きな可能性を持っている」とメリットを強調している。これを踏まえ、原子力の有する付加価値を最大化すべく、日米両国の政府に対し、運転期間延長を含めて既設原子炉を最大限活用し、革新的な原子炉の研究開発、建設への支援を強化するとともに、原子力事業の中長期的な予見性を高め設備・人材への投資を促進すべく、市場・規制などの制度の改善や政策支援などを要請。さらに、金融界に対しては、グリーン資金調達の枠組における柱の一つに原子力を含めることで脱炭素化とエネルギー安定供給に貢献する原子力の役割が金融市場において適正に価値換算されるようなシステムの導入など、課題解決に向けた金融インセンティブの強化を要請している。その上で、「日米の原子力産業の発展に責任を負う」立場から、今後の行動目標として、日米を始め価値観を共有する国の事業者間での連携を深め、世界の原子力利用を促進すると宣言。具体的には、国際的秩序の攪乱に対応するため、相互信頼と共有する価値観のもとで結束する産業の協力により、原子力サプライチェーンを強靭化小型モジュール炉(SMR)を含む先進的原子炉の世界展開で両国政府が価値観を共有する他の国々と協力して必要な政策支援を行い、世界市場での産業競争力を実現するよう日米協力を促進――するとしている。今回の共同声明について原産協会は、「今後、原子力への期待が世界中で大きくなっていく中で、日米両国の原子力産業界はパートナーとして、世界中の原子力発電の需要に応えられると確信している。そしてそれが日米両国の原子力のサプライチェーンの維持・強化につながるものと期待している」とコメント。また、共同声明の調印に同席した太田房江経済産業副大臣は、「日本とアメリカは原子力における協力関係、あるいは技術の連携ということについて長い歴史を持っているが、今日、この日を一つのエポックとして、同じ価値観を持つ国同士でこの分野における日米協力をより進化させていきたい」と述べた。
28 Oct 2022
2272
東京電力は10月24日、フォーリン・プレスセンターで、福島第一原子力発電所の廃炉・ALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))取扱いに関する記者会見を行い、海外メディアからの質疑に応じた。会見者は、福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントの小野明氏と同カンパニープロジェクトマネジメント室長の松本純一氏。会見の冒頭、小野氏は、「廃炉作業は着実に進捗しており、『廃炉の本丸』といえる燃料デブリ取り出しの着手まであと一歩というところに来ている」と概括。ALPS処理水の取扱いについては、2021年4月に決定された政府の基本方針を踏まえ、海洋放出に必要な関連設備の設計・運用に係る認可を原子力規制委員会より取得し、現在、その設置に向けて準備を進めているとした。その上で、今後の廃炉進捗やALPS処理水の取扱いに関し、「近隣諸国を含む海外メディアの皆様に定期的に情報を発信していく」と強調。今回、参集した16名の海外記者・在日大使館関係者らに対し、使用済燃料プールからの燃料取り出し、燃料デブリ取り出しの準備、津波対策など、直近の進捗状況を説明した。続いて、松本氏は、ALPS処理水の海洋放出に係る安全確保面に関し、設備上のポイント、IAEAによる国際レビュー、環境モニタリングの一環として行う海洋生物の飼育試験について説明。その理解促進に向けて、ポータルサイトやリーフレットなどを通じた情報発信に関し、「英語、中国語、韓国語と、多言語化を進め、国内外の皆様に理解してもらえるよう努力する」と述べた。記者団からは、ウクライナ情勢に鑑み福島第一原子力発電所における武力攻撃・サイバー攻撃への対策、廃炉と福島の復興との両立に関しても質問があった。ALPS処理水の海洋放出に伴う風評被害への懸念について、小野氏は、「『安心してもらう』ということが非常に重要なポイント」と述べ、正確でわかりやすい情報発信に努めていく考えを強調。また、燃料デブリ取り出しの関連で、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が先に発表した「廃炉のための技術戦略プラン2022」で示されている「船殻工法」(従来の原子炉格納容器冠水工法と異なり、新規構造物で原子炉建屋全体を囲い冠水させる方式)に関しては、「様々な課題が多く、現時点ではっきりしたことはいえないが、実現性があるのかしっかり検討していくことが大事だと思う」と説明した。
26 Oct 2022
2698
総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合科学研究所教授)の会合が10月24日に行われ、今後の検討の深掘りに向け論点を整理した。〈配布資料は こちら〉同WG は、「原子力発電の新たな社会的価値を再定義し、わが国の炉型開発に係る道筋を示す」ことを目的として4月に検討を開始。8月には、その中間論点整理がWG上層となる原子力小委員会において、「カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の実現に向けた革新炉開発の技術ロードマップ」(骨子案)として取りまとめられたのに続き、政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で西村康稔経済産業相が報告した「日本のエネルギーの安定供給の再構築」の中で、次世代革新炉の開発・建設が検討課題の一つとして盛り込まれた。さらに、文部科学省においても、次世代革新炉の開発に向けた基盤インフラの整備に関する検討会が10月17日に始動している。24日のWG会合ではまず、三菱重工業が9月に発表した革新軽水炉「SRZ-1200」(電気出力120万kW級)の開発を始めとする同社のカーボンニュートラルに向けた原子力事業の取組について説明。原子力の意義を「エネルギーの安定供給とともに、『2050年カーボンニュートラル』の実現に向けて活用は必至」と強調した上で、短期・中期・長期の視点からの開発ロードマップを披露した。革新軽水炉「SRZ-1200」については、開発コンセプトとして、超安全・安心地球に優しく大規模な電気を安定供給――を掲げ、「現行の規制基準に適合すべく設計しており、既に実用化が見通せる段階。2030年代半ばの実用化を目指す」と表明。委員から工期に関する質問があったのに対し、「先進工法の採用により、5年位での建設を目指す」などと説明した。また、同日の会合では、資源エネルギー庁が今後の議論の深掘りに向けて、事業環境整備開発体制・司令塔組織サプライチェーン・人材の維持・強化研究基盤整備――を論点として提示。事業環境整備については、欧米諸国の財政支援に係る事例とともに、総合エネ調下、電力需給に関する作業部会で検討中の容量市場導入や長期脱炭素電源オークション(いずれも投資回収の予見性を高める制度設計)などを、「原子力発電だけに特化するものではない」参考案件として紹介した。さらに、過去の開発における反省として、「ふげん」や「もんじゅ」に携わった関係者からのヒアリングを踏まえたプロジェクトマネジメント、予算管理、地元との信頼関係に係る課題を列挙。その中で、「まず国でしっかりとした組織・体制をつくるべき」との意見に関連し、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)における体制を、「現場に配慮しながら、一連の関連分野を統括する開発体制が全体としてシステマティックにできている」良好事例として示唆した。その上で、革新炉開発体制を検討する要件として、強力なリーダーシップによって、開発、設計から建設、安定的な運転に至るまでの一連の工程を指揮・命令できるマネジメント体制長期間にわたる予算措置とそれを適切に管理・配分を行う機能立地地域との適切なコミュニケーションの下での協力体制――を示し、さらに議論を深めていくこととなった。
25 Oct 2022
2759
日本エネルギー経済研究所は10月18日、2050年までの世界のエネルギー需給見通し「IEEJアウトルック2023」を発表した。技術・政策の進展・動向に応じ、レファレンスシナリオ 現在までのエネルギー・環境政策等を背景とし、これまでの趨勢的な変化が継続する技術進展シナリオ エネルギー安定供給の確保や気候変動対策の強化のため、エネルギー/環境技術が最大限導入される――の2シナリオを想定し分析を行ったもの。それによると、世界の一次エネルギー需要は今後、レファレンスシナリオでは「増加し続け、2050年には2020年の約1.3倍となる」、技術進展シナリオでは「2030年代前半をピークに緩やかに減少。振興・途上国は2030年代から概ね横ばいで推移する」との見通しが示された。いずれのシナリオでも、需要増加の中心はインド/ASEANで、これまで需要増を牽引してきた中国は2030年までにはピークアウト。特に、レファレンスシナリオでは、一次エネルギー需要のインド・ASEANにおける増加分が、中国の減少分をはるかに上回る勢いとなる。カーボンニュートラル達成は途上国がカギ(APS:Announced Pledges Scenario 〈各国が表明した政策目標が達成した場合の推計〉、エネ研発表資料より引用)また、「化石燃料への依存は続く」と明言。2050年時点で、化石燃料は、一次エネルギー需要のうち、レファレンスシナリオで2020年とほぼ同レベルの8割、技術進展シナリオで6割を占める見通しから、「化石燃料の安定供給は引き続き重要な課題」と指摘。さらに、世界のCO2排出量は、技術進展シナリオでも169億トン(2020年比47%減)となり、「カーボンニュートラル実現には程遠い。途上国における省エネルギーおよび脱炭素化のさらなる推進が世界の脱炭素化のカギを握る」と述べている。昨今のウクライナ情勢を踏まえたエネルギー安全保障問題、燃料価格高騰下における電力安定供給の課題などに鑑み、同所戦略研究ユニット研究理事の久谷一朗氏は、記者団への説明の中で、原子力発電の役割に関し、「ゼロエミッションのベースロード電源としての期待がある」と強調。世界の原子力利用推進に向けた動きに関し、原産協会による調査結果から、計画中、建設中の原子炉のうち、ロシア製と中国製を合わせた割合がそれぞれ54%、61%を占めている現状(2022年1月時点)を踏まえ、「依然として世界の原子力市場は中露が優勢」と分析。一方で、欧米諸国については、「直近の数十年間は新設プロジェクトの件数が激減し、建設のノウハウが失われたことなどにより、新設の遅延やコスト超過が見られる」との見方を示した。
20 Oct 2022
3039
文科省の革新炉開発に関する検討会の主査を務める山口氏文部科学省の「次世代革新炉の開発に必要な研究開発基盤の整備に関する検討会」(主査=山口彰・原子力安全研究協会理事)が10月17日、初会合を開催した。「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」での岸田文雄首相の指示を踏まえ、経済産業省を中心に、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に係る検討が進められている。同検討会は、文科省として、必要な基盤的研究開発・インフラの整備に向け、研究開発用原子炉燃料製造バックエンド対策――などの観点から、今後10年以内に着手すべき事項を議論。さらに、次世代革新炉に係る人材育成の課題の他、日本原子力研究開発機構が「大学の知の集約拠点」として産業界をつなぐ役割についても検討を行った上、関係審議会に報告を行うもの。〈配布資料は こちら〉電工会(JEMA)が試算する将来の原子力利用、2050年の電源構成比20%達成には震災前に計画されていたプラント8基も60年運転させる必要がある(JEMA発表資料より引用)17日の会合では、小澤隆委員(日本電機工業会原子力部長)が2050年までの原子力発電による電源構成比、年間発電電力量、設備容量、設備利用率の試算結果を披露。それを踏まえ、「既存炉の再稼働に向けた審査の加速化」に取り組む必要性のもと、さらなる導入の選択肢として、既設サイトへの中大型炉の増設・リプレース等の追加静的安全システムを備えた小型炉など、原子力イノベーションの社会実装米国など、国際的に進められている60年を超える運転の検討・実現――を提起。自然災害への耐性強化、事故耐性燃料など、最新の知見・技術を取り入れたシビアアクシデント対策、テロへの耐性強化を実現する「安全性を強化した革新軽水炉での新増設・リプレ―ス」の早期市場投入を図る考えを示した。続いて、原子力機構の大島宏之理事が高速炉サイクルと高温ガス炉に関する研究開発の取組状況を説明。これに対し、小澤委員は、メーカーの立場から、それぞれ「もんじゅ」、「HTTR」の建設・臨界達成時と比較した技術基盤に係るギャップを懸念し、今後の実証炉に向けたスケールアップも見据え「プラント全体のシステムの実力発揮」を検討していく必要性を示唆した。高温ガス炉の開発課題については、次回以降に議論する予定。この他、委員からは、産業界におけるサプライチェーンの維持・強化などに関し意見があった。
19 Oct 2022
3498