日本学術会議主催の「安全工学シンポジウム」が6月29日~7月1日、オンラインで開催された。同シンポジウムは、関連学協会の共催により、毎年、「国民安全の日」(7月1日)の時期に行われているもの。シンポジウム初日の6月29日には、パネルディスカッション「リスク学の歴史・展開・社会実装」を実施。リスク概念の変遷をたどりつつ、リスク評価、リスクコミュニケーションのあり方などを巡り意見が交わされ、3日間にわたる工学各分野の安全に係る議論に先鞭をつけた。同パネルで座長を務めた岸本充生氏(大阪大学データビリティフロンティア機構教授)によると、1950年代に国際放射線防護委員会(ICRP)がリスク概念を導入し、原爆被爆生存者の疫学調査に基づく発がんリスクの定量化を実施。60年代からは英国や米国で原子力発電所を対象とした確率論的リスク評価(PRA)の手法開発が進められ、70年代からは健康リスク分野、特に発がんに係る定量的なリスク評価手法が導入され始め、「1960~90年代にリスク学が興隆した」という。自然災害の甚大化やテロの脅威など、昨今、リスク概念は一層多様化しており、同氏は、「リスク学の歴史は『守りたいもの』、『脅かすもの』の拡大の歴史だ」と説いた。また、リスク評価に関連し、米田稔氏(京都大学大学院工学研究科教授)は、「リスク比較の重要性を行政や市民が認識した」事例を2つ紹介。一つは、新型コロナのワクチン接種に関し、「接種した場合の副作用リスク」と「接種しない場合の感染リスク」を比較したというもので、東京都の2回目ワクチン接種率(2022年6月時点)が50歳以上で90%だったのに対し、40歳代以下では80%前後だったことから、「若い世代は高齢の世代に比べ、感染リスクよりも副作用リスクの方を大きく認識したのでは」と推察。もう一つは、コロナ拡大下、洪水による避難勧告(法改正により現在は「避難指示」に一本化されている)を受け、住民が「自宅に留まることによる被災リスク」と「避難所における感染リスク」を比較し行動したというもの。こうした事例を通じ、米田氏は、死亡リスク、生活の質低下のリスク、災害リスク、経済的リスクなど、トレードオフ関係ともなる「異なる価値」に基づくリスク比較が必要だとした。これに対し、岸本氏は、夏季の学校における生徒のコロナ対策と熱中症対策のトレードオフ関係を例に、「リスクの定量的評価が難しい」とした上で、ステークホルダーである保護者や地域の人たちの話をまず聞くなど、「意思決定のプロセス」の重要性を繰り返し強調。化学物質のリスク管理を専門とし基準値の設定に関する著書を持つ小野恭子氏(産業技術総合研究所安全科学研究部門主任研究員)は、「ALARA」(As Low As Reasonably Achievable:合理的に達成可能な程度に低いならば許容しうるリスク)の考え方に言及し、「他分野の事例を広く知ることも重要」と指摘した。高レベル放射性廃棄物の処分地選定に向けて文献調査が進む寿都町で「対話の場」のファシリテーターを務める竹田宜人氏(北海道大学大学院工学研究院客員教授)も登壇し、リスクコミュニケーションのあり方について発表。福島第一原子力発電所事故発災時の被災地の状況を振り返り、「『毎日の生活が大事と思っている人』、『将来世代の健康影響が大事と思っている人』、それぞれ持っている価値観は皆違い、どうしても定量的な比較はできない」とした上で、「意思決定に係るプロセスの大事さを理解できる社会」を構築する重要性を主張。同氏がナッジ(チラシ配布や映像などを通じて人の感情に働きかけ“何となく”行動を促す行動科学の手法)の有効性を提案したのに対し、「一つの価値観を指向した説得のための手段」に凝り固まってしまうことを危惧する意見も出された。討論を受け、これまでも「リスク共生社会の構築」を標榜し意見を述べてきた野口和彦氏(横浜国立大学リスク共生社会創造センター客員教授)がコメント。同氏は、「人間社会はそれぞれの価値観で動いているので整合させることが難しい。これを前提に、意思決定をするため、どのようなリスクを考えておけばよいのか、整理しておくことが重要」と述べた。
07 Jul 2022
2007
7月1日付で原子力規制庁長官に就任した片山啓氏(前・同次長兼原子力安全人材育成センター所長)が4日、記者会見を行い、「規制委員会の意思決定のサポート、原子力規制の確実な遂行に全力で取り組んでいく」と抱負を述べた。2012年9月の原子力規制委員会・原子力規制庁発足から間もなく10年を迎えるのに際し、片山長官は、新規制基準策定や新検査制度導入など、これまでの取組を振り返った上で、次の10年に向けて、「初心を忘れず、現状に安住せず、変化を恐れず、規制の立場から継続的な原子力の安全性向上を追求していきたい」と強調。同氏は、規制庁の原子力安全人材育成センター所長を3年間務めていたが、「最も大切なリソースは人」と、原子力規制人材の育成・確保を図るとともに職員一人一人が服務規律を遵守し使命感を持って職務に当たる重要性を改めて述べた。福島第一原子力発電所事故発生時、旧原子力安全・保安院で企画調整課長として事故の対応に当たったという片山氏は、(1)情報を集約しプラントの状態を把握した上で、東京電力をサポートすることができなかった(2)マニュアル・システムはあったものの、実効的な住民の防護措置の立案・実行につながらなかった(3)地震・津波による被害に比して、被災した住民を支援する体制の立上げに手間取った――ことを当時の反省点として列挙。「今でも発災時の緊迫した状況がフラッシュバックすることがある」と語る同氏は、「判断を求められたときにジャッジできることが一番大事」と述べ、厳しい事態を想定した意思決定訓練を継続的に実施していく必要性を強調した。座右の銘は学生時代に寄せ書きで記したという「初志貫徹」と、趣味は「私の仕事になっている」としながら休みの日に家族に料理をふるまうことと語った。
05 Jul 2022
3545
笹川平和財団は7月1日、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、政府に対し国際的な核セキュリティの強化に向け先導的役割を果たすよう求める緊急提言を発表した。緊急提言は、同財団の核不拡散・核セキュリティ研究会(座長=鈴木達治郎・長崎大学核兵器廃絶研究センター教授)が取りまとめた「ロシアによるウクライナ侵攻:原子力民生利用の諸課題と日本の役割」と題するもの。冒頭、ロシアによるチョルノービリ(チェルノブイリ)発電所、ザポリージャ(ザポロジェ)発電所への武力攻撃に関し、「一歩間違えれば大規模に放射性物質が放出される惨事になっていた可能性があるだけに世界に衝撃を与えた」と、危機感を表明。原子力施設の防護に関し3項目の提言を述べている。その中で、「日本政府は国内の原子力施設の防護に関連する従来の想定を見直すとともに、国際協力のもと、核セキュリティの強化を一層図るよう国際社会に呼びかけるべき」と提言。国内については、欧米の原子力施設の防護に関する実情を整理した上で、(1)全国最多の原子炉が立地する福井県警の取組を参照し、専門部隊を全国に展開し専門知識を有する隊員を育成(2)ウクライナ侵攻のような事態の発生に備え、原子力事業者、警察に加え、自衛隊も参加する実働訓練を定期的に実施――することを求めている。また、柏崎刈羽原子力発電所で発生した核物質防護に係る不適切事案から、「日本においては、施設の防護を含む核セキュリティの重要性はまだ浸透していない」と危惧。内部脅威(関係者が身分や経歴を偽り事業者内に悪意を持って侵入し、設備の破壊や核物質の盗取がなされる恐れ)につながる恐れにも言及し、「厳格な法制度に基づき、国が責任を持って実施する体制が確立されていない」と、日本の信頼性確認の不十分さも指摘した上で、然るべき法整備や制度の適切な運用を求めている。さらに、提言では、国際協力によって世界的な核セキュリティの実効性を上げるべく、日本による「核セキュリティ・サミット」主催などを提案。「核セキュリティ・サミット」は、2001年の米国同時多発テロを受け、米国オバマ大統領(当時)の提唱により2010年にワシントンで初開催後、オランダ、韓国で順次行われたが、2016年の第4回開催以降、開かれていない。
04 Jul 2022
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総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)は7月1日の会合(オンライン開催)で、米国原子力規制委員会(NRC)原子炉規制局ディレクターのモハメド・シャムズ氏、同原子力エネルギー協会(NEI)シニアディレクターのマーク・ニコル氏を招き意見交換を行った。〈配布資料は こちら〉シャムズ氏は、革新炉技術に係る許認可申請の増加に備えたNRCの取組を紹介。リスク情報などを活用した「許認可近代化」を標榜し、組織の体制強化や国際協力を図っているとした。ニコル氏は北米において計画・検討されている20件以上の革新炉プロジェクトの展望を紹介。革新炉の持つ安全性、経済性を強調するとともに、2030年までに多くのプロジェクトで運転が開始されるとの見通しを示した上で、規制の効率化、強固なサプライチェーンの確立などを課題としてあげた。これに対し、同WG上層となる原子力小委員会の委員長を務める山口彰委員(原子力安全研究協会理事)が規制を向上させていく重要性を述べた上で、米国の革新炉開発における産業界と規制の関わり、国立研究機関の規制への関与について質問。ニコル氏は、許認可申請前の審査活動が一定のガイドラインの下で行われていることに関し、「申請の質も上がり、産業界としても歓迎している」とするとともに、「NRCはコンサルタントではない。規制の独立性は重要」と強調。シャムズ氏も「産業界とはある意味でパートナーシップだが、適切な独立性をキープする必要がある」と、同感の意を述べたほか、規制における国立研究機関の役割に関して、ガイドライン作成、設計のレビューなどを担っており「非常に重要だ」とした。この他、WG会合では、革新炉開発におけるサプライチェーンの維持・強化に関連し、原産協会、助川電気工業、TVE(旧東亜バルブエンジニアリング)がプレゼンテーション。原産協会からは、昨秋に154社を対象として実施したサプライチェーン調査の結果や、会員企業への海外展開支援活動の事例が紹介された。「常陽」、「もんじゅ」への電磁ポンプなどの納入実績を持つ助川電気工業は、震災を受けた原子力・エネルギー関係の売上げ減少が「転換期」となったという。同社技術の医療や自動車産業への転用例を披露した上で、再稼働が進まぬ状況下、「新たなテーマを掲げて原子力技術の活性化を」と訴えた。TVEは、バルブの主要サプライヤーとしてPWR、BWRともに多くの納入実績を持つが、新増設・リプレースによる安定的な需要が望めない見通しとともに、バルブ鋳鋼用の木型製造技術者の高齢化・後継者不足から、製造技術の維持、人材育成・技術伝承を課題としてあげた。委員からは、職人技を適切に評価する制度設計に係る要望、大学の研究施設の老朽化が人材育成に及ぼす影響を懸念する声があがったほか、革新炉開発に向けては、規制の予見性確保、海外展開に伴う多様なニーズに対応した政府の支援策、投資計画に関連して商業化を見据えた議論の必要性などに関する意見が出された。
01 Jul 2022
2398
東京電力は6月30日、福島第一原子力発電所の廃止措置進捗状況を発表。燃料デブリ取り出しに向けた取組として、1月より水中ROV(遊泳型ロボット)を用いて実施している1号機内部調査の状況が公表された。5月に実施した調査で、ペデスタル(原子炉圧力容器下部の土台)の開口部壁面におけるテーブル状堆積物や、堆積物下部でコンクリートがなく鉄筋が露出していることが確認されたが、その後、ペデスタルの損傷に伴うプラントへの影響を考察した結果、地震により大規模な損壊に至る可能性は低いとしている。6月7~11日には、用途に応じ6種類ある水中ROVのうち、堆積物の厚さ測定を行う「ROV-C」によりペデスタル外周部13か所で測定を実施しており、これまでに3か所の評価を完了。それによると、原子炉格納容器底部からの堆積物厚さについては、ペデスタル開口部付近が約0.8~1.0mだったのに対し、X-2ペネと呼ばれるROV投入位置付近は約0.3mで、X-2ペネ付近に近付くにつれて徐々に低くなっていることが確認された。2017年の1号機格納容器内部調査で投入された自走式調査装置「PMORPH」(IRID発表資料より引用)1号機原子炉格納容器については、2017年3月にも自走式調査装置を用いた内部調査(ワカサギ釣りのようにスノコから計測ユニットをつり下ろす)が実施されている。今回の調査で測定された堆積物の厚さは、2017年の調査結果と比較しほぼ同じだった。今後、残る10か所の評価を行った上で、「ROV-C」に続く「ROV-D」による堆積物デブリ検知(核種分析など)、「ROV-E」による堆積物サンプリングに向けて、調査方針を検討することとしている。
01 Jul 2022
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)は6月30日、地域との共生と国民理解の促進について議論。今回の議論に関連し、同調査会委員の他、全国原子力発電所立地市町村協議会(全原協)の渕上隆信会長(敦賀市長)が出席した。〈配布資料は こちら〉地域との共生に関し、資源エネルギー庁が立地自治体の人口動態、産業構造、課題、地域振興に関する取組支援例について整理。立地地域から2019~21年に寄せられた要望書をもとにした分析によると、原子力発電所の稼働状況にかかわらず、「再生可能エネルギー導入を含めた地域振興の取組支援」、「避難道路など、原子力防災対策の充実」、「原子力政策の明確化・推進」に関する要望が多く、再稼働に係る許可前では審査の効率化、許可後ではバックエンド対策や国民理解に関する要望が多くなっていた。全国紙5紙の原子力発電に関する世論調査の推移比較(資源エネルギー庁発表資料より引用)また、国民理解に関し、資源エネルギー庁が原子力発電に関する世論調査結果の推移から「福島第一原子力発電所事故以降、原子力発電の再稼働について、最近、肯定意見が増加し否定意見が減少」との分析を示したのに対し、渕上会長は、「理解が進んているようにも感じるが、特に電力消費地における理解は十分とはいえない」と懸念を表明。安全確保に厳しい目を向けている立地地域の一方で、消費地・遠隔地の人たちに対しては、「安心を担保し不安を払しょく」するよう、インスタグラム、YouTube、漫画なども活用したわかりやすい理解活動の有効性を示唆した。情報発信に関し、越智小枝委員(東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座准教授)は、SNSやホームページを通じた発信について、それぞれ「感情をあおる記事だけが拡散することがある」、「調べようとする人にしか伝わらない」などと、信頼や関心を醸成する上での難しさを指摘。さらに、「過剰に不安を払拭しようとすることが却って不信感につながる」などと危惧した上で、目的や世代に応じた細やかな情報発信戦略のデザイニングがなされる必要性を訴えかけた。また、松村孝夫専門委員(電気事業連合会原子力開発対策委員長/関西電力副社長)は、事業者によるコミュニケーション活動・地域共生の取組について紹介。地域共生と理解促進の双方に関連し、伊藤聡子委員(フリーキャスター)は、「原子力発電所に従事する人を通じて『地域の美味』などを発信することで、『地域愛』も含め信頼関係が醸成されるのでは」と提案した。政策立案プロセスにも関連し、消費者の立場から村上千里委員(日本消費者生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会理事)が「民意を反映した意思決定」を主張。一方で、エネルギー安全保障の観点から遠藤典子委員(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)は、「国民の賛同だけが判断基準であってはならない」と指摘した。地域振興の関連では、先般、立地自治体、国、事業者の参画による「福井県・原子力発電所の立地地域の将来像に関する共創会議」(2021年6月創設)が、「ゼロカーボンを牽引する地域」、「スマートで自然を共生する持続可能な地域」を将来像に掲げ、水素・アンモニア供給拠点など、40の取組に係る工程表を取りまとめたところだ。これについて、杉本達治委員(福井県知事)は、「嶺南地域の将来像を描く意義深いもの」と評価し、他の立地地域への水平展開にも期待を示した。新井史朗専門委員(原産協会理事長)は、立地自治体も含まれる会員組織やメディアを通じた情報提供・意見交換、地域組織とも連携した立地地域相互間の情報共有などの取組を紹介。原子力発電所の運営に地域が深く関わっている現状から、「地域産業全体の技術力向上や経済波及効果のメリット」を踏まえた原子力政策が示されるよう求めた。また、学生向けのエネルギーに関する出前講座の経験から、「答えの押し付けではなく、データを提供して考えてもらう双方向の取組が理解の向上につながる」と強調した。〈発言内容は こちら〉
30 Jun 2022
2457
原子力規制委員会は6月29日の定例会合で、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の松山泰浩氏、原子力発電環境整備機構(NUMO)の近藤駿介理事長らを招き、高レベル放射性廃棄物(HLW)の地層処分に係る取組についてヒアリングを行った。規制委員会では、処分地選定に向けた寿都町・神恵内村における文献調査開始など、地層処分に係る動きを受け、文献調査に続くプロセスとなる概要調査、精密調査、施設建設(いずれも地域の意見に反して先へは進まない)の地区選定時における「安全確保上少なくとも考慮されるべき事項」(考慮事項)の検討に1月より着手。定例会合の場で随時、集中的に議論し、6月8日には、避けるべき断層、火山、鉱物資源の鉱床などについて整理した考慮事項の案文を取りまとめた。エネ庁・松山電力・ガス事業部長29日の会合で、松山氏は、高レベル放射性廃棄物の地層処分について、「原子力発電を持続的に活用していく上で、必ず解決せねばならない重要な課題」との認識から、NUMOと連携し着実に進めていく姿勢を改めて強調。さらに、「非常に長期間にわたる廃棄物管理を安全かつ実施可能な形で行わねばならない」と、処分事業の特徴を述べた上で、「地域固有の文献データに基づく調査と並行し地域の方々との対話を深めている」と、現状を説明。考慮事項案に関しては、「処分事業に係る安全性評価は地域の安心感の観点からも非常に重要」として、意義あるものとの認識を示した。NUMO・近藤理事長また、近藤理事長は、地層処分に関係する地域の科学的特性を色分けした全国地図「科学的特性マップ」公表(2017年)を契機とする全国での広報活動を引き続き実施し、寿都町・神恵内村においては「対話の場」を通じ情報提供・意見交換に努めていると説明。海外の安全規制機関の取組についても議論となる現状から、日本の規制機関として考慮事項案が示されたことに関し「ありがたく受け止める」と述べた。これに対し、更田豊志委員長は、「これから先、まだまだ長いプロセス。社会とのコミュニケーションは大変重要」と強調。先行する欧州諸国の安全規制機関の動きも参考に「この問題に相応しい関わり方をしていきたい」などと述べた。考慮事項については、7月8日までパブリックコメントに付されている。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
29 Jun 2022
2407
政府の原子力災害対策本部(本部長=岸田文雄首相、今回は持ち回りにて開催)は6月28日、福島県大熊町に帰還困難区域として設定されていた避難指示を、6月30日午前9時に一部解除することを決定した。〈原子力災害対策本部発表資料は こちら〉帰還困難区域における避難指示解除は、2020年3月に大熊町・双葉町・富岡町内に位置するJR常磐線の駅舎および周辺の道路などで行われているが、居住を前提としたものは、2022年6月12日の葛尾村に続き2例目となる。今回、避難指示が解除されることとなったのは、大熊町の特定復興再生拠点区域として除染やインフラが進められてきた約860haのうち、先行して避難指示が解除された21 haを除く部分。内閣府原子力被災者生活支援チームによると、特定復興再生拠点区域は同町の面積全体の11%、震災前の人口で66%(2022年6月27時点の住民登録数は5,888人)を占めており、「ここをしっかり復興させていくことが大変重要」と説明している。萩生田光一経済産業相は、28日の閣議後記者会見で、「福島第一原子力発電所が立地する大熊町において、帰還困難区域であった震災前の町の中心部で避難指示が解除されることは、今後の復興に向けた大きな第一歩」との認識を示した上で、引き続き「『ふるさとへ戻りたい』と考えている方々が安心して帰還できる環境」の整備に向け、関係省庁と連携し取り組んでいくと述べた。
28 Jun 2022
1735
会見を行う原産協会・新井理事長原産協会の新井史朗理事長は6月24日、記者会見を実施。中国電力島根原子力発電所2号機(BWR、82万kW)の再稼働に向けた期待を改めて述べた。新井理事長はまず、6月2日に島根2号機の再稼働に係る島根県・丸山達也知事の同意を受けて発表した理事長メッセージを紹介。「PWRに比べて再稼働が遅れているBWRに関し、地元自治体から了解をいただいたことは大きな意義を持つ」と強調した。また、昨今のエネルギーを巡る世界情勢に関し、「ロシアによるウクライナ侵攻開始から丁度4か月となった」とした上で、化石燃料のロシア依存度低減に向けた動き、国際的な資源・エネルギー価格の高騰や円安の進行によるエネルギーコストの負担増を踏まえ、エネルギー自給率の低い日本にとって「各国による資源争奪戦の影響は小さくない」と懸念。日本の国富流出への強い危機感を示すとともに、今夏の、特に東京エリアにおける厳しい電力需給見通しを見据え、「エネルギーの安定供給は、国民生活とあらゆる経済活動の土台であり、エネルギー安全保障なしには脱炭素の取組もなしえない」との考えを改めて述べ、「S+3E」(安全、安定供給、経済効率性、環境への適合)の観点から「原子力の活用が不可欠」と訴えかけた。また、新井理事長は、G7サミット(6月26~28日、ドイツ・エルマウ)に向け、原産協会がカナダ原子力協会、欧州原子力産業協会、米国原子力エネルギー協会、英国原子力産業協会、世界原子力協会とともに発出する共同声明を紹介。共同声明は会見終了後に公表されており、「原子力はエネルギー安全保障を強化し環境目標に貢献できる」と強調している。新規制基準の施行から間もなく9年を迎えるが、記者から事業者側の再稼働に係る姿勢に関して問われたのに対し、新井理事長は、「27基の審査申請がなされたうち、10基が再稼働したが、ややスローペースではないか」と振り返った上で、原子炉設置変更許可に続く設計・工事計画認可や地元了解に要する時間、審査の効率化に向けた動きにも言及しながら、審査において迅速にレスポンスを図る努力に期待を示した。
27 Jun 2022
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博報堂は6月23日、3月4、5日に全国15~79歳の男女1,400名を対象にインターネットを通じて実施した「生活者の脱炭素意識&アクション調査」の結果を発表した。同調査は昨秋に続き2回目となる。今回の調査結果によると、地球温暖化対策に関連した言葉について、「知っている」と「内容まで知っている」を合わせた回答割合は、最も高い「脱炭素」で90.8%(前回85.4%)、これに次ぐ「カーボンニュートラル」で85.6%(同77.7%)となり、いずれも前回調査より増加していた。「日々の暮らしの中で脱炭素社会に向けた行動をしている」と回答した人は33.1%で、前回調査の32.1%から微増。一方で、「国民全体で取り組む問題だとはわかっている」、「もっと日本全体でやらないとまずいと思っている」との回答割合が、それぞれ73.5%、70.3%に上っており、調査の担当者は、「自然災害のニュースや関連するテレビ番組を見たときは環境について意識するものの、『日常的には意識して行動していない』という生活者が依然として多いことがわかった」と分析している。さらに、年代別にみると、10~20代では、「よくわからないので、やるべきことを決めてくれたら従う」、「意識・貢献できる具体的な瞬間がない」、60~70代では、「自分でできることは取り組めていると思う」が、他の年齢層に比して回答割合が高くなっていた。また、「どのようなメリットがあれば脱炭素につながる行動をしたいと思うか」尋ねたところ(複数回答可)、「金銭的なメリット」が52.4%で最も多く、「機能的なメリット(便利・味がおいしいなど)」が31.1%でこれに次いでいた。「金銭的なメリット」をあげた回答割合は、10~20代で66.4%、30~50代で58.4%、60~70代で35.3%と、若年層ほど高くなっていた。なお、こうした若年層の地球温暖化問題に対する行動意識の高まりに関しては、総合エネルギーサービス会社のシナネンホールディングスが最近実施した実態調査で一端をみることができる。自宅の電力プランを自身で選んでいる全国の社会人約1,000人を対象に行ったもので、調査結果によると、20代では約半数が再生可能エネルギー由来の電力プランを選択し、そのうちの約9割が直近1年以内に利用を開始していた。同調査では、生活様式の変化や企業の環境保全に対する姿勢にも関連し、再生可能エネルギー由来の電力プランの利用者で在宅勤務を利用している人は約4分の3、そのうち、勤め先から電気代が支給されている人も約4分の3に上っていたことから、就業環境も生活者の環境保全に係る行動に影響していることが示唆された。
23 Jun 2022
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松野博一官房長官は6月21日の記者会見で、8月に米国で開かれる核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議に岸田文雄首相が出席する予定を明らかにした。核兵器禁止条約への政府対応に関連した記者からの質問に答えたもので、日本の首相としての出席は初となる。NPT運用検討会議の会期は8月1~26日が予定されているが、岸田首相の出席日程については現在調整中。松野官房長官は、「核兵器国と非核兵器国との双方が参加する国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石」と、NPTの意義を改めて強調。その上で、「総理自らが出席し、政府として同会議で意義ある成果を収められるよう全力を尽くす」とした。岸田首相は昨秋の就任以来、「被爆地(広島)出身の総理大臣として、核兵器のない世界に向けて全力を尽くしていく」と繰り返し述べている。5年に1度開催されるNPT運用検討会議は、条約が発効した1970年以来、その時々の国際情勢を反映した議論が展開されてきた。日本は条約発効50周年となる2020年開催予定の同会議の意義ある成果に向け様々な取組を行ってきたが、新型コロナの影響で延期が続いていた。度重なる延期を受け、日本外務省と米国国務省は2022年1月、同会議の早期開催に向けた機運を維持・高揚すべく日米共同声明を発出している。一方、今日から開かれる核兵器禁止条約の締約国会議に日本政府はオブザーバーとしても参加しないが、これに関し、松野官房長官は、同条約の意義に一定の理解を示しながらも、「核兵器国は1か国も参加していない。わが国は唯一の被爆国として核兵器国を関与させるよう努力し、核兵器のない世界に向けて現実的な取組を進めていく考え」と説明している。
21 Jun 2022
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福島県の内堀雅雄知事は6月20日の定例記者会見で、18日に福島テレビ他が行った県民世論調査の結果中、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水(トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水)の取扱いに関する政府の基本方針について、「理解が広がっていない」との回答が47.3%を占めたことに関し、「県として正確な情報発信に今後も力を入れていきたい」と述べた。内堀知事は、ALPS処理水の取扱いに関し、「海洋放出への反対の他、新たな風評の発生や陸上保管に伴う復興への影響を危惧する声など、様々な意見が示されている」として、県民や国民による理解の重要性を改めて強調。国に対する要望として、2021年末策定の「基本方針の着実な実行に向けた行動計画」に基づく情報発信の充実強化など、「責任を持ってしっかり取り組んでもらいたい」とした。さらに、福島第一原子力発電所による輸入規制措置が現在も14の国・地域で継続していることに関し、「厳しい現実」と認識。海外にも及ぶ風評の払拭を県政の重要課題ととらえ、「政府とも連携しゼロになるよう努めていく」と述べた。森林内の原木から発生したなめこ(福島大発表資料より引用)また、「国内で流通するなめこのルーツは福島にあり」との福島大学他による研究成果に関し、内堀知事は、「既に全国でニュースになっており非常に嬉しく思った」と歓迎した上で、これを契機に、安全で美味しい県産の農林水産物「ふくしまプライド。」のトップセールスに引き続き取り組んでいく意欲を示した。同研究成果は、日本国内で年間約2万トンが生産されるなめこの起源について、1962年に福島県林業研究センター(喜多方市)で採取された単一の野生株に由来する可能性が高いことを明らかにしたもの。
20 Jun 2022
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原産協会は6月16日、日本工業倶楽部(東京千代田区)で定時社員総会を開催した。開会に際し、今井敬会長(日本経済団体連合会名誉会長)が挨拶。今井会長は、昨今のウクライナ情勢に伴うエネルギー需給ひっ迫への懸念も示し、「エネルギーの危機的な状況を、原子力の最大活用によって一刻も早く改善していかねばならない」と強調。さらに、5月に政府が「クリーンエネルギー戦略」策定に向けた中間整理を取りまとめ、その中で「再生可能エネルギーと並んで、原子力を最大限活用する」ことが明記されたことに触れ、改めて「再稼働の着実な進展や、既設炉の徹底活用、将来の新増設・リプレースなど、原子力の最大限活用について強く訴えていきたい」と述べた。また、原子燃料サイクルの中核として2022年度上期にしゅん工が予定される六ヶ所再処理工場については、「今回こそは無事にしゅん工することを願っている」と期待を寄せた上で、「わが国における原子燃料サイクルの一日も早い確立と、最終処分事業の着実な進展に一層の努力をしていきたい」と表明。この他、高品質なサプライチェーンの維持、優秀な人材の育成と確保、原子力に係る社会全体の理解の必要性を述べた上で、原産協会として、「国民理解の促進」、「人材の確保・育成の推進」、「国際協力の推進」を3本柱に、原子力産業の再生に向けて取り組んでいく姿勢を示した。続いて、来賓挨拶に立った経済産業省の岩田和親大臣政務官はまず、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策、福島の復興を最重要課題に位置付け取組を進めていくことを改めて強調。さらに、昨今のウクライナ情勢や3月の東日本における電力需給ひっ迫を振り返り、「原子力を含め、わが国のエネルギー安定供給の重要性を再確認するきっかけとなった」とした上で、2022年度の厳しい電力需給見通しを踏まえた政府による対策に関し、参集した会員企業らに対し理解・協力を求めた。再稼働の円滑な進展に向けては、「産業界と連携し的確な安全審査対応をサポートするとともに、国も前面に立ち、立地自治体、関係者、社会全体の理解と協力を得られるよう粘り強く取り組んでいく」と述べた。また、文部科学省研究開発局長の真先正人氏が末松信介大臣の挨拶を代読。「原子力イノベーションの創出に向け産業界と一体となって取り組んでいく」などと、原子力人材・技術基盤の維持・強化に向けた姿勢を示した。島田新副会長が総会後の会員交流会で就任挨拶今回の総会では7名の理事交替を決定。副会長については、宮永俊一氏(三菱重工業会長)が退任し、島田太郎氏(東芝社長)が就任した。
17 Jun 2022
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「原子燃料サイクルを考える座談会」(原産協会主催、東奥日報社共催)が5月12日、青森県八戸市内のホテルで開催された。原子燃料サイクルの中核となる施設の一つ、日本原燃六ヶ所再処理工場の2022年度上期しゅん工に向け、地元関係者を対象とした座談会開催を通じ同社の県内における理解活動を支援するもの。NPO法人あすかエネルギーフォーラム理事長の秋庭悦子氏(モデレーター)、ユニバーサルエネルギー研究所社長の金田武司氏、八戸工業大学工学部教授の佐藤学氏の3氏が登壇し、地元の行政関係者、商工団体関係者、地域オピニオンリーダーら約70名が来場・傍聴した。「暮らしの視点でエネルギーを考える」をモットーに全国で原子力・エネルギーに係る理解活動に取り組む秋庭氏は、「資源の有効利用の観点から今、リサイクルは大変重要な問題となっている」と議論に先鞭。てい談に先立ちまず、金田氏と佐藤氏がそれぞれ、昨今のエネルギーを取り巻く世界情勢、地元のエネルギー教育からみた原子力の意義を説くショートスピーチを行った。世界のエネルギー事情を力説する金田氏、スクリーン上にはテキサス州の電気料金暴騰を示すグラフが「サボテン、砂漠、西部劇を連想させる米国テキサス州で雪が降るなんて想像できるだろうか」と切り出し、金田氏は、2021年2月にテキサス州を襲ったまさかの大寒波、それに伴う380万件以上に上った大規模停電の要因を分析。当時の状況は、「州の電力供給のうち、約4分の1を占めている風力発電設備が寒波で凍りつき大停電が発生。コートも着たことがないような人たちが、マイナス18℃の極寒にさらされ死者も出た」という。テキサス州は米国最大の天然ガス生産地であることから、海外メディアの報道を引用し「食料品店で餓死するようなもの」と例えた。また、「一般家庭で月180万円の電気代が請求され払えない人が続出した」背景として、州の外から入る送電線がほとんどなく自由化の進むテキサス州の電力事情に触れた上で、市場原理から「選択肢があるときは一番安いものを選べるが、選択肢がなくなったとき、価格が高騰し自由が仇となってしまう」と説明。寒波を教訓としてテキサス州では発電事業者に対し冬季対策を要求する法律・ガイドラインを制定している。この他、金田氏は、ウクライナ危機に伴う欧州における天然ガス価格の急騰、日本に関しては、政情不安なホルムズ海峡を含む「オイルロード」を経由し輸送される石油への依存などに触れ、「エネルギーの問題は昨今の世界情勢と非常に深く関っている」と強調した。八戸工大の原子力基礎教育について語る佐藤氏(表は青森県制作のパンフレットより引用)続いて、佐藤氏は、八戸工業大学が取り組んできた地域のゼロカーボン化を図る地産地消の電力供給「再生可能エネルギー100%による自営線マイクログリッド実証システム」(新エネルギー・産業技術総合開発機構〈NEDO〉のプロジェクト)への協力や、原子力基礎教育について紹介。同学は学科横断型プログラムの一つとなる「原子力工学コース」を開講しており、佐藤氏は、「機械、電気、情報など、それぞれの工学分野の課題解決力に加え、原子力・放射線の知識も養うことで、原子力立地地域で貢献できる人材育成に努めている」と、原子力基礎教育の意義を強調。座学だけでなく、県内に多数立地する原子力関連施設での実習や他大学との連携なども通じ、「学生の原子力に対する関心や知識が高揚するとともに、原子力関連分野への従事意欲も高まっている」とした。また、同氏は、今回の座談会のテーマに関連し、小坂製錬の複合リサイクル製錬所(秋田県)に言及。同所はかつて、同和鉱業小坂鉱山として非鉄金属を産出し、市街地を温泉経由で結ぶ鉄道が知られていたが、現在では、廃品から金、銀、銅、亜鉛など、約20種類の有価金属を回収し製品化する「都市鉱山」として機能している。トークセッションが開始、秋庭氏(左)はスクリーン上に原燃サイクル施設の概要を示し「これだけ集結しているのは世界でも六ヶ所村が唯一」と強調トークセッションに移り、座談会前日に六ヶ所再処理工場を訪れ安全性向上に向けた取組についても説明を受けたという秋庭氏は、「なぜ日本は原子燃料サイクルを推進しているのか考えてみたい」と問題提起。これに対し、金田氏は、「エネルギー資源のない国だからこそ、リサイクルするのは当然」としたほか、「廃棄物の量・有害度を低減することもできる」と、そのメリットを強調。さらに、安全性の理解に関し、「まず、再処理工場で何が行われているのかを知って欲しい。原子力発電所と異なり、再処理工場は基本的に一種の化学工場、そこで核分裂反応が起きているわけではない」と説明した。また、大学で教鞭を執った経験もある秋庭氏は、教育の観点から原子燃料サイクルの地域貢献に関して質問。これに対し、佐藤氏は、「直接的に事業者に関連した仕事だけでなく、やはり地域経済に深く関った産業だと思う」とした上で、地元で人材を育成する意味でも初等中等教育段階から原子力・放射線の知識を養っていく必要性を改めて強調した。来場者からは、昨今の世界情勢からエネルギーだけでなく食料供給に関する不安の声も来場者との質疑応答の中で、昨今の原子力教育の低迷を危惧する声があがったのに対し、佐藤氏は、八戸工大で企業の定年後に大学院聴講生として勉学に励む人がいることを紹介し、「『学ぶ』ことはいつからでもできる」と繰り返し強調。一方で、「教える側がしっかり存在している必要がある」と、高等教育における教員の確保や実験・実習設備の維持に係る懸念を示した。また、六ヶ所村の原子燃料サイクル施設の一つ、廃棄物管理施設では、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)を、最終処分に向けて搬出されるまでの間、冷却・貯蔵しているが、地元の女性団体のメンバーからは、その資源化に係る研究に取り組む藤田玲子氏(元日本原子力学会会長)を囲む勉強会に参加した経験を踏まえ、「私たちは、『核のごみ』ではなく、将来使えるものを預かっている」と、さらなるリサイクルの必要性を強調する声もあがった。結びに秋庭氏は、「一番大事なことは国民の理解と信頼だと思う」と述べ、原子燃料サイクルの確立に向けて、全国レベルでの理解・支援が進むことを期待し締めくくった。
17 Jun 2022
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総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)が6月14日、約10か月ぶりに開かれた。分科会では、同調査会と産業構造審議会の合同会合による「クリーンエネルギー戦略」策定に向けた中間報告を受け、昨秋策定されたエネルギー基本計画も踏まえ意見交換。委員からは原子力政策に関する意見も多くあがった。〈配布資料は こちら〉「クリーンエネルギー戦略」は岸田内閣が掲げる重点政策の一つで、気候変動問題を、新たな市場を生む成長分野へと転換していく具体的道筋とするもの。合同会合では、2021年12月より検討を開始。5月13日には、昨今のウクライナ情勢や電力需給ひっ迫も踏まえたエネルギー安全保障の確保を始め、成長が期待される産業(水素・アンモニア他)ごとの具体的道筋、需要サイドのエネルギー転換などに係る政策対応を中間整理としてまとめた。中間整理では「再生可能エネルギー、原子力など、エネルギー安全保障および脱炭素効果の高い電源を最大限活用」と明記されたが、原子力政策に関し、福井県知事の杉本達治氏は、革新炉の研究開発投資見込みが他の脱炭素関連技術と比べ低いことをあげ、「どのように安全性を高めながら持続的に活用していくのか」などと懸念し、新増設・リプレースも含めた長期的展望が明確に示されるよう切望。また、エネルギー基本計画にも記載された高温ガス炉や高速炉の研究開発推進に関し、国際大学大学院国際経営学研究科教授の橘川武郎氏は、水素製造やバックエンド対策への有用性を述べた上で、「新しい技術との関連で原子力の意義を明確にすべき」と強調した。同調査会下、原子力小委員会の委員長を務める原子力安全研究協会理事の山口彰氏は、「日本がこれまで進めてきた核燃料サイクルのポテンシャルを明確に」としたほか、米国・英国の動向を踏まえサプライチェーン・技術力の維持・強化が図られるよう基本政策分科会での議論を求めた。プルサーマルにも関連し、MOX燃料のフル装荷を目指す電源開発大間原子力など、建設中の原子力発電所の早期運転開始に向け検討を急ぐべきとの意見もあった。
15 Jun 2022
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2022年版環境白書が6月7日に閣議決定された。環境省が2021年度に講じた環境保全に係る施策について取りまとめたもの。その中で、東日本大震災・福島第一原子力発電所事故からの復興・再生に向けた取組として推進している放射線影響に係るリスクコミュニケーション「ぐぐるプロジェクト」が取り上げられている。事故後の健康影響について、今回の白書では、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)による「放射線被ばくが直接の原因となるような将来的な健康影響は見られそうにない」、福島県の県民健康調査検討委員会による「現時点において本格検査(2回目検査)に発見された甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」との評価を明記。その上で、「放射線の健康影響に係る正しい科学的知見が届かないことにより、不安や風評が生じ、これが差別偏見につながっていく怖れがある」と、課題を提起している。こうした背景から、「ぐぐるプロジェクト」は、「学び・知をつむ“ぐ”」、「人・町・組織をつな“ぐ”」、「自分ごととしてつたわ“る”」ことにより、放射線の健康影響に関する情報を読み解く力と風評に惑わされない適正な判断力を身に付ける場を創出すべく、2021年7月に立ち上げられた。同プロジェクトは現在、「知る」、「学ぶ」、「決める」、「聴く」、「調べる」の5つの活動を展開しており、その詳細については特設サイトで見ることができる。「ラジエーションカレッジ」では、放射線の健康影響に関する誤った認識により結婚を反対する両親を子供が説得する短編ドラマも作成(環境省ホームページより引用)「学ぶ」活動の一つとして、2021年度は、全国の大学生らを対象にプレゼン作品を募集し優秀作を表彰する「ラジエーションカレッジ」が行われた。「ラジエーションカレッジ」では、1,300人以上の学生がセミナーなどに参加しており(2022年2月末時点)、今後は社会人を対象とした職域公開講座も開催し、風評払拭に向けて発信対象を広げていく予定だ。
14 Jun 2022
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関西電力は6月10日、美浜発電所3号機のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の運用開始時期を見直し、これに伴い運転再開時期を変更したと発表。それぞれ2022年7月下旬、同年8月12日と、従前の予定より2か月程度の前倒しとなる。〈関西電力発表資料は こちら〉同機は2021年7月、国内初の40年超運転として再稼働(本格運転復帰)し、特重施設が未整備のため、その設置期限を迎えた10月に定期検査入り。昨夏の関西電力の発表で、美浜3号機については、特重施設の運用開始時期が2022年9月頃、運転再開は同年10月20日とされていた。今回の変更に際し、同社では、「特重施設工事について、安全を最優先に緊張感を持って進めるとともに、現下の厳しい電力需給状況を踏まえ、原子力プラントの安全・安定運転に努めていく」としている。関西電力で再稼働した他の原子力発電プラントのうち、高浜4号機は6月8日に定検入り。現在、定検中の同3号機は設備トラブルのため、運転再開時期は未定。同じく定検中の大飯4号機は7月上旬に運転再開の予定だ。
10 Jun 2022
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【国内】▽5日 東京電力、福島第一のALPS処理水希釈放出設備で海底面の掘削作業開始▽12日 自民党の特別委員会が原子力安全規制・防災の充実・強化に向け提言案をまとめる▽16日 規制委、福島第一のALPS処理水取扱いに係る設備・関連施設の基本設計について審査書案を了承▽17日 関西電力、美浜3号機の長期運転評価に向けIAEA/SALTO(Safety Aspects of Long Term Operation)チームの受入れを発表▽17日 全原協の定例総会が3年ぶりに対面開催、政府関係者との意見交換も▽18日 IAEA・グロッシー事務局長来日、福島第一視察や途上国の放射線がん治療普及を目指す「Rays of Hope」啓発など(~20日)▽20日 電事連・池辺会長、定例会見で燃料輸入増に伴う所得の海外流出を懸念し原子力の必要性を強調▽23日 日米首脳会談で共同声明、原子力協力の強化が盛り込まれる▽26日 細田経産副大臣がG7気候・エネ・環境相会合に出席、閣僚声明にSMRも記載(ドイツ、~27日)▽26日 東京電力が福島第一1号機の原子炉格納容器内部調査の状況を発表、堆積物「燃料デブリ由来」との推定も▽27日 エネ庁が2022年度の電力需給対策示す、冬季は一層厳しい見通しに▽31日 政府「新しい資本主義実現会議」がグランドデザイン・実行計画案まとめる、「脱炭素効果の高い電源を最大限活用」と明記▽31日 原子力委、医療用RIの国産化など目指しアクションプラン策定▽31日 札幌地裁で泊発電所の運転差止め請求を認容する判決、北海道電力は控訴する考え 【海外】▽2日 フィンランドのフェンノボイマ社、ロシアのウクライナへの軍事侵攻にともないハンヒキビ1号機建設計画におけるロシアとの契約をキャンセル▽2日 中国の第3世代炉「ACPR1000」設計の紅沿河6号機が遼寧省で送電開始▽4日 米ワイオミング州、米テラパワー社製Na冷却高速炉「Natrium」の実証炉建設等先進的原子力技術の開発でアイダホ国立研と協力▽5日 スウェーデンのバッテンフォール社、ロシア企業からの燃料供給を停止し米仏企業と新たに長期の燃料契約を締結▽6日 仏CEA製SMR「NUWARD」の概念設計調査をベルギーのトラクテベル社が実施▽11日 英国のHTGR開発で、米X-エナジー社が英キャベンディッシュ社と協力覚書締結▽11日 IAEA本部に対するウクライナ・チョルノービリ発電所・保障措置データの遠隔送信、ロシア軍の占拠後初めて完全に再確立▽13日 英国政府、新規の原子力発電所開発プロジェクト支援に向け基金を立ち上げ▽13日 米エネ省、アイダホ国立研での多目的試験炉(VTR)建設で最終環境影響声明書(EIS)を発行▽17日 韓国SKグループの傘下企業、米テラパワー社とSMR事業協力で覚書▽17日 ウクライナのチョルノービリ発電所にIAEAが保障措置検査官等を派遣へ▽18日 加サスカチュワン州の企業、WH社製マイクロ原子炉「eVinci」の州内建設で協力覚書▽19日 英国で建設中のヒンクリーポイントC1号機、コロナ禍で送電開始時期を1年延期▽22日 韓国で3基目の「APR1400」、新ハヌル1号機が初臨界達成▽24日 米ニュースケール社、ルーマニアでのSMR建設に向け同国の原子力発電公社、建設サイトのオーナーと覚書締結▽24日 ベルギー政府、原子力研究センターの次世代SMR研究に1億ユーロの予算充当▽24日 韓国の現代建設、AP1000建設計画に参加するためWH社と戦略的協力協定締結▽25日 米エネ省、アイダホ研など4つの国立研究所で脱炭素化の試験プログラム開始▽26日 ハンガリー、ロシアに発注したパクシュⅡ期工事でサイト掘削前の地下水遮断壁建設許可を取得、建設計画の継続を確認▽26日 韓国KAERIとバングラデシュ原子力委が研究開発分野の協力促進で覚書▽27日 トルコのアックユ4号機建設で、タービン建屋の基盤部にコンクリートを打設▽30日 チェコのSMR初号機建設で関係3者の「南ボヘミア原子力パーク」プロジェクト始動
09 Jun 2022
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東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)は6月8日、米国現地法人の東芝アメリカエナジーシステム社(TAES)とともに、米国エンジニアリング企業のベクテル社と、ポーランド初となる原子力発電所向けの機器納入に関する協業について合意したと発表した。〈東芝発表資料は こちら〉ポーランドでは、石炭火力依存を低減すべく原子力発電の導入を目指しており、2033年までの初号機運転開始を計画している。米国ウェスチングハウス(WH)社は、1月に同社製軽水炉「AP1000」設計が採用されることを前提にポーランドの関係企業10社と戦略的連携関係の了解覚書に調印。こうした中、WH社と「AP1000」の設計・建設に取り組むベクテル社は、このほど東芝ESSおよびTAESと、「AP1000」への蒸気タービン・発電機供給に向け協業することで合意に至った。今後、3社は機器供給に向けて具体的な検討を行っていく。東芝ESSの海外展開の実績として、最近では、2021年4月にアラブ首長国連邦で初の原子力発電所として営業運転を開始したバラカ1号機(韓国製140万kW級 PWR「APR1400」)への蒸気タービン・発電機の供給がある。
08 Jun 2022
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2022年度の夏季・冬季の電力需給見通しが極めて厳しい状況にあることを踏まえ、政府は6月7日、関係閣僚らによる「電力需給に関する検討会合」を5年ぶりに開き、(1)供給対策、(2)需要対策、(3)構造的対策(予備電源の確保、燃料の調達・管理の強化など)――を3本柱とする総合対策を決定した。2022年度は夏・冬とも電力需給は極めて厳しい見通し(資源エネルギー庁発表資料より引用)資源エネルギー庁では、10年に1度の厳しい暑さ・寒さを想定し、夏季・冬季の電力需給を検証。それによると、今夏、7月の電力供給は東北・東京・中部エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を辛うじて上回る3.1%と非常に厳しい見通し。さらに、冬季は、1、2月、本州内の東北を除く全エリアで予備率3%を確保できず、東京エリアでは予備率がマイナスとなることが見込まれており、「国民全体で一層の節電に取り組まなければ、2022年度はさらなる電力需給ひっ迫に直面する恐れがある」と危惧されている。資源エネルギー庁が検討中の省エネ・節電を呼びかけるリーフレット(資源エネルギー庁発表資料より引用)萩生田光一経済産業相は、同日の閣議後記者会見で、供給対策として、休止電源の稼働、追加的な燃料調達、再生可能エネルギーや原子力など、非化石電源の最大限の活用を図るとしたほか、需要対策として、「この夏は節電の数値目標は定めないが、全国を対象にエアコンの室内温度を28℃に設定する、不要な照明は消すなど、できる限りの節電・省エネに協力して欲しい」と強調。東日本で原子力発電所の再稼働が進まぬ現状に関しては、「電力安定供給の確保に当たって、原子力発電所の再稼働は重要。東日本に限らず再稼働が円滑に進むよう、産業界に対し事業者間の連携による安全審査への的確な対応を働きかけるとともに、国も前面に立ち、立地自治体など、関係者の理解を得られるよう粘り強く取り組んでいく」と述べた。資源エネルギー庁では、現在、省エネ・節電を呼びかけるリーフレットの作成を急いでいる。3月の東日本における電力需給ひっ迫などを踏まえ、総合資源エネルギー調査会では、これまでにない頻度で会合を開き、電力需給見通しの精査、対策の検討を重ねている。4月以降では、定期検査に伴い3月から停止している関西電力高浜3号機(PWR、87万kW)が、設備トラブルにより工事終了時期が未定となり、夏季、冬季とも供給力の見通しが減少。一方で、石炭ガス化複合発電(IGCC)実証試験機の勿来IGCCパワー(石炭、52.2万kW)、広野IGCCパワー(石炭、54.3万kW)や、JERA姉崎新1~3号機(LNG、各64.7万kW)など、定期点検期間の短縮や試運転開始時期の前倒しにより追加の供給力となり得るプラントもある。
07 Jun 2022
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2021年度のエネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)が6月7日、閣議決定された。1年間のエネルギーを巡る状況と主な施策をまとめたもので、(1)その年の動向を踏まえた分析、(2)内外のエネルギーデータ集、(3)施策集――の3部構成。第1部では、毎年の「福島復興の進捗」に加え、「カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応」、「エネルギーを巡る不確実性への対応」をテーマにまとめている。白書の序文では、2021年度を振り返り、「『S+3E』、すなわち、安全性(Safety)、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)のうち、とりわけエネルギー安定供給にとって死活的な課題が投げかけられた年だった」と強調。第一に2022年2月24日のロシア軍によるウクライナ侵略、第二に世界的なエネルギー需給のひっ迫と価格高騰、第三に日本における電力需給のひっ迫があったと、エネルギーを巡る昨今の課題を列挙。記憶に新しい3月22日の電力需給ひっ迫に関しては、史上初の「需給ひっ迫警報」発令の背景・要因として、気温低下に伴う暖房使用増、天候不順による太陽光発電の低迷、3月16日の福島県沖地震による火力発電の被害をあげた上で、「東日本では、原子力発電が稼働していなかった。今回の事案を通じて、エネルギーを安定供給することの重要性が改めて確認された」と述べている。こうした背景から第1部でまとめた「エネルギーを巡る不確実性への対応」では、ロシアによるウクライナ侵略によるエネルギーへの影響について、(1)欧州は化石燃料のロシア依存度が高い、(2)ロシア国営企業ガスプロムのEU向け天然ガス輸出量が2021年末に向けて減少、(3)ガスプロムの長期契約価格の決定方法は天然ガス連動が大半を占めることから価格高騰に直結――と分析。エネルギー価格高騰に対する各国の政策対応として、中長期的に「原子力や石炭を含む化石燃料に対する評価が見直される傾向にある」としており、英国における原子力の資金調達を支援する枠組「規制資産モデル」(RABモデル)の検討を例示したほか、フランスについては「2050年までに最大14基の原子力発電所が新設される可能性があり、建設は早ければ2028年に開始する予定」などと述べている。
07 Jun 2022
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政府の復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合が6月3日に行われ、福島県葛尾村に帰還困難区域として設定されていた避難指示の一部を、同12日の午前8時に解除することを決定した。〈原子力災害対策本部発表資料は こちら〉帰還困難区域における避難指示については、2020年3月に双葉町・大熊町・富岡町で、JR常磐線の線路・駅舎および周辺の道路などで解除されているが、居住を前提としたものは今回が初めてとなる。現在、葛尾村は面積の約2割が帰還困難区域となっており、このほど避難指示の解除が決定したのは、その中の特定復興再生拠点区域として除染やインフラ整備が進められる野行(のゆき)地区。区域面積は約95haで山間部に位置しており、同村の復興再生計画では居住人口約80人が目標に掲げられている。合同会合で、岸田文雄首相は、「引き続き大熊町や双葉町などの特定復興再生拠点区域の避難指示解除に向けた手続きを進め、福島復興を加速させていく」と強調。岸田首相は6月5日に葛尾村を訪問する予定だ。また、萩生田光一経済産業相は、3日の閣議後記者会見で、「避難指示解除はゴールではなくスタート。今後ともふるさとに戻りたいと考えている方々が安心して帰還できる環境整備に向け、関係省庁とも連携し取り組んでいく」と述べた。帰還困難区域を有する福島県内6町村による各復興再生計画で、葛尾村と同じく、今後の特定復興再生拠点区域の避難指示解除目標を2022年春頃としている大熊町、双葉町では現在、避難指示解除を見据え住民説明会が進められている。また、富岡町では、常磐線夜ノ森駅周辺に続く避難指示解除目標を2023年春頃としており、山本育男町長は6月3日に行われた長崎大学主催のシンポジウムで「夜の森の桜並木道」などを観光資源とした町の復興・再生に意欲を示した。
03 Jun 2022
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県議会に臨む島根県・丸山知事(インターネット中継)島根県の丸山達也知事は、6月2日の県議会本会議で中国電力島根原子力発電所2号機(BWR、82万kW)の再稼働を容認する考えを表明した。近く同社に対する正式回答とともに、国、立地・周辺市町村、隣接する鳥取県への伝達がなされる運び。BWRの再稼働に係る地元理解表明がそろうのは、2020年11月の東北電力女川原子力発電所2号機に続き2基目となる。同機の再稼働に向けては、新規制基準への適合性に係る審査で2021年9月に原子炉設置変更許可に至った後、現在、設計・工事計画認可の審査が進められているところだ。島根2号機再稼働に向け、知事は国・電力に対し要請を行うことを表明本会議で、丸山知事は、これまでの県内における住民説明会などであがった意見に対する考えを述べた。安全性に関する不安については、「中国電力には安全に対する意識改革の徹底を求め、国には検査等を通じその安全に対する姿勢や取組の確認を求めるとともに、必要に応じ安全協定に基づき立入り調査を行う」として、周辺住民の安全確保に万全を期す姿勢を改めて強調。防災対策については、避難に必要な道路・輸送手段、要支援者の避難先、感染症流行下における防護措置など、国・関係機関・電力と連携した対応策を述べた上で、「訓練や避難方法の周知などを通じ、避難計画の実効性を高めるための取組を継続していく」と説明。また、エネルギー政策における原子力の位置付けに関しては、国による「再生可能エネルギーと省エネルギーだけで電力を安定的に賄うことは、現状では困難。原子力発電が一定の役割を果たしている」との説明を理解したと明言。さらに、中国電力が示した「中海・宍道湖・大山圏域では、年間220億円に上る経済効果があり、発電所に従事する人の半数程度が居住している」とする地域経済・雇用に及ぼす効果を踏まえ、島根2号機の再稼働を容認する姿勢を示した。丸山知事は、福島第一原子力発電所事故による被災地を自ら訪れた経験を振り返り、「失われたものを取り戻すことの大変さを痛感した」と述べた上で、島根県民の原子力発電に対する不安に鑑み「苦渋の判断だった」と強調。本会議の場で、知事は、島根2号機の再稼働に向けて、中国電力および国に対する要請事項案を発表した。
02 Jun 2022
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発明協会は5月31日、全国発明表彰の2022年度受賞者を発表。福島第一原子力発電所事故後の除染に伴う除去土壌の減容・再生利用に資する熱処理技術を開発したクボタの釜田陽介氏ら7名が「発明賞」を受賞した。中間貯蔵施設での集中管理・保管の後、最終処分量を低減する技術として、今回の受賞者らが取り組んだ「放射性セシウム分離濃縮方法及び放射性セシウム分離濃縮装置の発明」は、汚染廃棄物に塩素系助剤を添加し溶融することで、廃棄物に含まれる放射性セシウムを低沸点の塩化セシウムに化学変化させて高効率に気化分離し、溶融飛灰中に濃縮させ、結果、90%以上の減容化を図るもの。さらに、溶融液は、放射性セシウム濃度が処理前より大幅に低減され、コンクリート骨材、セメント材料、道路舗装材など、産業用資源への加工により有効利用が可能だ。同発明は福島県双葉町の処理施設で採用されている。ダンスやスポーツ観戦などの臨場感・一体感を誰もが体験できるよう開発された「Ontenna」は多くのろう学校で導入が進む、ヘアピンのような簡便さで2019年度グッドデザイン金賞も © Fujitsu今回の全国発明表彰で、最も名誉な「恩賜発明賞」は、「音を振動・光で知覚する身体装着装置の意匠」で、富士通の本多達也氏ら4名(受賞する法人の代表者に与えられる「発明実施功績賞」を含む)が受賞した。同発明は、リズムやパターンといった音の特徴を体で感じさせる音知覚装置に関するもので、ろう学校の音楽・語学教育などでの活用に向けた体験型コミュニケーションツール「Ontenna(オンテナ)」として提供されている。
02 Jun 2022
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