南アフリカ共和国の国営電力会社であるESKOM社のJ.オベールホルツァーCEOは11月15日、クバーグ原子力発電所1号機(PWR、97万kW)で12月から始まる定期検査が、蒸気発生器(SG)3台の取替え作業により長引く可能性があることから、2号機(PWR、97万kW)で次回の定検時に予定していたSGの取替えは、同発電所全体の運転期間延長(LTO)計画に影響が及ばないよう、数か月先送りする方針を明らかにした。クバーグ発電所は同国唯一の原子力発電所であり、1984年と1985年にそれぞれ運転を開始した1、2号機は2024年と2025年にそれぞれ40年目を迎える。前政権のJ.ズマ大統領は2011年3月の「統合資源計画(IRP)」に基づき、2030年までに960万kWの新規原子力発電設備の建設を計画したが、同大統領が2018年に失脚した後、翌年改訂されたIRPでは2024/2025年以降、エネルギーを引き続き供給するため運転期間を延長する方針が示された。ESKOM社はすでに2021年中に、両炉の運転期間を20年延長する申請書を国家原子力規制当局(NNR)に提出しており、今年7月には同発電所のセーフティケース(安全性保証文書)を提出した。同社は現時点で運転期間の延長を阻む安全上の課題は特定されていないとしているが、NNRは2024年以降の運転継続を認める前に、同発電所が国際的な規制要件や基準を満たしていることを確認する。なお、NNRが審査結果を公表するまでに、約2年を要する見通しである。一方、電力系統の運用も担うESKOM社が10月末に公表した「(2023年~2027までをカバーする)供給システムの中期的適性見通し(MTSAO)2022」によると、クバーグ原子力発電所のLTO計画は当初予定より2年遅延する可能性がある。もし遅延した場合に、これら2基が供給してきた年間150億kWhの電力が失われる影響は大きく、同システムの供給量は大幅に制限され電力不足が深刻化すると指摘している。「MTSAO 2022」は、新規の発電設備建設プログラムにこれ以上の遅れが生じないよう努めることに加えて、クバーグ発電所のLTO計画に一層の重点を置く必要性を指摘している。(参照資料:ESKOM社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月8日付け、17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Nov 2022
1938
COP会場内の原子力パビリオンで11月10日、国際原子力機関(IAEA)のグロッシー事務局長と原子力分野の若手専門家との懇談セッションが開催された。冒頭挨拶した事務局長は、若手登壇者がいずれも途上国出身である事に触れ、多くの途上国で原子力の導入が進められている今、「こうした若手専門家が活躍できるよう支援することが、IAEAの重要なミッションの1つ」と強調した。核医学分野の医師であるエブリン・アチーン氏はケニヤ出身。 IAEA フェローとして核医学のトレーニングを受けた同国初の女性である。化学療法よりもストレスの少ない核医学をケニアで広めていきたいと考えている。事務局長は核医学でがん撲滅を目指すIAEAプロジェクトである「Rays of Hope」に言及し、同プロジェクトをアフリカでどのように展開すべきか問い掛けた。これに対しアチーン氏は「トレーニングが重要」と指摘し、 IAEA のサポートでアフリカの女性が核医学の訓練を受ける機会を増やすことができれば、非常に大きな一歩となると述べた。また、長期的なトレーニングでは多額の費用がかかるため、医師が短期的なトレーニングを受け、そのノウハウを地元に還元する仕組みが構築できるとよいと語った。またアチーン氏は、アフリカでは国ごとにプライオリティや人材のレベルが大きく異なるとし、同プロジェクトの実施にあたっては「国ごとに異なる既存のがん治療のニーズに合わせ、それぞれの政府と協力するべき」と強調した。そしてケニアの場合は、放射性同位体製造施設が必要だと訴えた。ディナラ・ヤマコバ氏はカザフスタン出身。カルフォルニア大学バークレー校でエネルギーを専攻している。事務局長から世界で原子力はどのように活用されていくと思うかと尋ねられたヤマコバ氏は、途上国対象と前置きした上で、「発電だけでなく水素製造や海水淡水化へのニーズが高まっている」と指摘。「原子力がそれを実現する大きな可能性を秘めている」と思いを語った。ビシシ・スナシー氏はアフリカの島国モーリシャス出身で、北米原子力青年ネットワーク連絡会(NAYGN)の代表。原子力について「私自身18歳で国を出るまで原子力の存在を知らなかった。知った時は衝撃だった」と語った。そして原子力にはSDGs に影響を与える数多くのメリットがある。地域の学校に出かけるなどして気候変動対策における原子力のメリットを若い人にもっと知らせていきたいと語った。ウォチェック・ザコウスキ氏はポーランド出身。コンサルタントを務めている。新規建設の経済的側面について、このほど発表されたポーランドでの新規建設計画を例にあげ「原子力は再生可能エネルギーよりも長期間稼働し、はるかに大きな雇用を生む」と強調した。そして建設段階で1万人、50年運転するとしても4万人の雇用を生むとの見通しを示した上で、直接雇用だけでなく、間接的に地域社会のあらゆるレベルにポジティブな経済効果を与えると指摘した。事務局長は懇談の最後に「多様なバックグラウンドを持つ、多様な専門分野の人材の力で、原子力が前に進んでいる」、「今すぐとは言わないが君たちの目指す世界はすぐそこまできている」と語り、「私たちの世代の使命は若い世代が活躍する場を用意すること」と結んだ。
18 Nov 2022
1873
英国のEDFエナジー社は11月16日、同社のヘイシャム原子力発電所((ヘイシャムA発電所はAGR×2基、各62.5万kW、B発電所はAGR×2基、各68万kW))が生みだすエネルギーで低炭素な水素を製造し、その水素でアスファルト・セメント製造業界の脱炭素化を図るというEDF(フランス電力)主導の取り組みに、英国政府から約40万ポンド(約6,600万円)が提供されることになったと発表した。この資金は、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が地球温暖化防止の目的で2021年3月に設置した総額10億ポンド(約1,660億円)の基金「CO2排出量を実質ゼロ化する革新的技術のポートフォリオ(Net Zero Innovation Portfolio)」を原資とする、総額2,600万ポンド(約43億円)の「産業用水素(製造)の加速プログラム(Industrial Hydrogen Accelerator Program)」から拠出される。支援を受けるEDFの企業連合には、同社の研究開発部門と産業・輸送用の低炭素な水素を供給する目的で同社が設立したイナミクス(Hynamics)社のほか、英国立原子力研究所(NNL)、アスファルトやセメント等の建築材料を供給するハンソン(Hanson)UK社、次世代型燃料電池を開発しているCERESパワー社が参加している。EDFのこの取り組みは「港湾水素製造ハブ – Hydrogen4Hansonプロジェクト」と呼ばれており、CO2を多量に排出するアスファルト・セメント製造業界の脱炭素化に向けて、2023年から2025年までの間に実用規模の技術実証を行うことを目標に最初の実行可能性調査を行う。具体的には、水素の電気分解装置(固体酸化物電解セル:SOEC)をランカシャー州に立地するヘイシャム原子力発電所の電力や熱と統合し、低炭素で低コストな水素を製造。この水素は、同発電所の近隣に点在するハンソンUK社のアスファルトやセメントの製造サイトで燃料として活用されるが、最終的には英国全土の同様サイトに提供されるため、次世代型の専用タンカーを使ったこれら水素の海上輸送の在り方についても調査することになる。EDFエナジー社によると、SOEC技術により水素の製造効率は従来の電気分解と比べて20%改善される見通し。現時点では世界でこれらの技術を実際に実証した例はなく、アスファルト製造の燃料として水素が使われたこともない。同社はこの方法でCO2排出量が大幅に減る可能性を指摘しており、英国がCO2排出量を実質ゼロ化し、アスファルト・セメント製造業で引き続き優位に立つ上で有効だとしている。EDFが英国に置いた研究開発部門の幹部は今回の政府支援について、「国内産業の脱炭素化は英国政府が直面している最大課題の一つであり、原子力発電所で製造した水素をアスファルト産業の脱炭素化に活用することは論理的に見て当然のことだ」と指摘。「これらの技術により、英国では原子力発電による明るい未来が構築され、関係雇用の維持にもつながる」と述べた。また、別の幹部は「クリーンエネルギー社会への移行にともなう原子力の有効性を実証することはEDFにとって重要な役割」と表明。支援金で実施される実行可能性調査では、将来的に建設される原子力発電所の電力や熱が、一層効率的な水素の製造にどのように活用されるかに重点が置かれると指摘した。(参照資料:EDFエナジー社とNNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Nov 2022
2214
COP会場内の特設会議場で11月16日、米原子力エネルギー協会(NEI)、カナダ原子力協会(CNA)、世界原子力協会(WNA)、欧州原子力産業協会(Nucleareurope)、日本原子力産業協会など原子力産業界6団体主催のセッションが開催された。セッションに先立ち、米エネルギー省(DOE)のジェニファー・グランホルム長官がサプライズで登場。米テラパワー社のクリス・レベスクCEOが聞き手となり、約20分の対談セッションが開催された。長官は、インフレ抑制法を通じてDOEは原子力を対象に長期運転:既存炉の早期閉鎖を防止するため、閉鎖予定の発電所を対象に計60億ドルの「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」の実施次世代炉:次世代炉の国内外への展開を見据え、実証プログラムに25億ドルを投資新規建設:投資税額と生産税額を控除し、新設プロジェクトに価格競争力を供与──の3つのインセンティブを付与してきたとし、既存炉同様に新規炉に対しても厳しい規制要件を適用し、「高いハードルを乗り越えたプラントであれば生き残ることが出来る」との考えを示した。また最近発表されたポーランドへの米ウェスチングハウス社製原子炉「AP1000」の輸出について言及し、 400 億ドル規模のプロジェクトだと指摘。「ポーランドに雇用とエネルギーセキュリティをもたらすだけでなく、米国内にも莫大な雇用を生む、Win-Winのパートナーシップ」と強調した。そしてサプライチェーンの再構築が課題とし、「HALEU燃料((U235の濃縮度が5-20%の低濃縮ウラン))のように国内での開発体制を強化する」だけでなく、グローバルなサプライチェーンと信頼できるパートナー関係を築きたいとの強い意欲を示した。そしてウクライナへの侵攻でロシアが信頼できるパートナーではないことが明らかになった現在、新規原子力導入国については123協定および国際原子力機関(IAEA)による査察下に置くことで、核不拡散体制を担保していくと明言した。一方で、12日に米国のジョン・ケリー特使が「プロジェクト・フェニックス」と呼ばれる新しいイニシアチブを発表した件にも言及。これは、欧州での石炭火力発電所から SMR への移行を加速させると同時に、労働力の再訓練を通じて地元の雇用を維持する計画で、米国務省によると、中・東欧諸国のエネルギーセキュリティを支援するために、石炭から SMR への移行可能性調査などを米国が直接支援するものとされている。グランホルム長官は、「石炭から(原子力へ)フェアに移行すること。導入した国の人々が良い収入を得られる施設できちんと雇用されること。これこそが私たちが最も大切にしていることで、アメリカの歴史を支えてきた手法」だと強調。そして原子力産業界6団体へのメッセージとして、「DOEがインセンティブを用意しました。ぜひ一緒にやりましょう!(So let's just do it!)」と力強く呼び掛けた。
17 Nov 2022
2146
英ロールス・ロイス社の小型モジュール炉(SMR)開発子会社であるロールス・ロイスSMR社は11月11日、イングランド北西部カンブリア州の新興デベロッパー「ソルウェイ・コミュニティ電力会社(Solway Community Power Company)」が同社製SMRを選定したと発表した。ソルウェイ社は今年9月に同州で設立されたばかりの非公開有限責任会社で、最高責任者は、英国最大の原子力複合施設セラフィールド・サイトの管理運営を担うセラフィールド社のCEOを2000年まで務めたP.フォスター氏。ロールス・ロイス社はこの数日前の11月9日、同社製SMRの建設候補地点として、セラフィールド・サイトの近隣区域を含む4地点を選定しており、2030年代初頭にも英国でSMR発電所の最初の一群を稼働させたいと述べていた。ソルウェイ社の建設計画は、セラフィールド・サイトが立地する同州コープランド市のT.ハリソン市議の主催イベントで公表された。同市議は、「当市には敷地のほかに労働者のスキルと経験、独自のサプライチェーンもすでに備わっており、クリーンで信頼性が高く実証済みの技術を用いた原子力発電所の立地点としては、おそらく世界でも最も適している」と強調した。ロールス・ロイスSMR社のT.サムソンCEOは今回、「原子力廃止措置機構(NDA)がカンブリア州西部で所有する敷地を活用して2030年にも新しい原子力発電所を稼働させ、業界でも最強の地位を確保する」と表明。同州内で新たな原子力発電所の建設計画を推進するデベロッパーが設立され、同社のSMRが採用設計に選定されたことを歓迎した。ソルウェイ社のフォスター最高責任者は、原子力について「当社のアイデンティティの中心であるとともに西カンブリアに受け継がれた遺産でもある」と説明。ロールス・ロイス社のSMRを建設・操業することで、コープランド市には新しい雇用とサプライチェーンを生み出す大きなビジネス・チャンスがもたらされるだけでなく、新たな産業や投資も呼び込まれると期待を表明した。ロールス・ロイスSMR社によると、同社製SMRは既存のPWR技術を採用した設計で電気出力は47万kW。少なくとも60年間ベースロード電源として稼働が可能で、再生可能エネルギー源の間欠性を補えることから、その設置拡大を支援することにもつながる。今年4月からは英国原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が同設計について「包括的設計審査(GDA)」を開始した。ロールス・ロイスSMR社に対しては、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が2021年11月、民間部門で行われている投資のマッチングファンドとして、2億1,000万ポンド(約350 億円)を提供すると約束している。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Nov 2022
1719
COP会場内の原子力パビリオンで11月15日、欧州原子力産業協会(Nucleareurope)の主催で、「クリーンなエネルギーミックス」をテーマとするセッションが開催された。モデレーターに有馬純氏(日本原子力産業協会理事、東京大学公共政策大学院・特任教授)を迎え、欧州原子力産業協会のイブ・デバゼイユ事務局長、世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長、米ニュースケール社のジョン・ホプキンスCEOが登壇し、ネットゼロに向けた原子力技術によるソリューションを議論した。デバゼイユ氏は「1つのテクノロジーに限定せず、再生可能エネルギーも原子力も、あらゆるエネルギー源を活用すべき」とした上で、「カーボンフリーの電源で脱炭素を目指すべきであり、我々にガスやオイルを使う余地はない」との見方を示した。レオン氏も「電力だけでなく水素利用や熱利用も見据えるべき」とし、「ネットゼロに向けたトータルなソリューションを提供できるのは原子力だけ」と強調した。また開催地であるアフリカの実情にも言及し「我々のエネルギー移行は『化石燃料からクリーンエネ』への移行だが、アフリカ諸国のエネルギー移行は『エネルギーゼロ』からの移行」だと指摘。目標時期も2030年や2050年ではなく、喫緊であるとし、「プライオリティ、タイムラインが異なることを認識する必要がある」と強調した。ホプキンス氏は「アフリカ諸国にはSMRが適している」とした上で、「エジプトであれば人口集中エリアに設置し、需要増に応じてモジュールを拡大」、「南アフリカでは発電のみならず海水脱塩利用のニーズもある」との見方を示した。そして「アフリカ諸国は雇用を重視している」と指摘し、「再生可能エネルギーは雇用を生まないが、SMRは30万kWの出力規模であれば、電気技師、配管技師、保守要員、警備要員などそれなりの人員が必要だ。また必要な学位は8つ程度で、うち5つは2年間で取得可能。つまり単なる雇用だけでなく人材スキルの向上も望める」との見方を明らかにした。また有馬氏が「大型炉と小型炉の棲み分け」について尋ねたのに対し、レオン氏は「多くの報告書が、2050年までに12億kWの原子力発電設備容量が必要だと指摘している。これは毎年5,000万kW以上の新規原子力を運転開始させることであり、大型か小型かではなく、文字通りあらゆる原子炉が必要となる」との認識を示した。一方デバゼイユ氏は「マーケットが決めること」だとしながらも、SMRについて「初期の懐疑的な見方から、今ではより現実味を帯びてきた」とし、「建設のリードタイムが短いことから、喫緊のソリューションとなりうる」と期待を寄せた。有馬氏は「世界中で多くの先進炉が検討されているが、いずれも現実味を帯びている。ただし導入においては、ファイナンスを引き出すためにも、現実的で確固たるエネルギー政策が不可欠」との見解を示し、セッションを結んだ。
16 Nov 2022
2137
米エネルギー省(DOE)は11月10日、開発中の多くの先進的原子炉で使用が見込まれているHALEU燃料(([U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン]))の製造能力を実証するため、セントラス・エナジー社(旧・米国濃縮会社)の子会社であるアメリカン・セントリフュージ・オペレーティング(ACO)社に費用折半方式の補助金、約1億5,000万ドルを交付すると発表した。この実証計画は、DOEが2019年11月に濃縮カスケードの実証でセントラス社と結んだ3年契約に基づいており、DOEは2020年のエネルギー法で承認された「HALEU燃料の入手プログラム」に沿って、同燃料を製造する複数の方法を模索中。今回の補助金のうち、初年の分担金である3,000万ドルは、オハイオ州パイクトンにあるセントラス社のウラン濃縮施設に、新型遠心分離機「AC100M」16台を連結したHALEU製造用カスケードを配備し、これを起動・運転するために活用される。ACO社は現段階で「AC100M」の製造を終え、組み立て作業も概ね完了しているが、実証用カスケードに遠心分離ローターを設置する作業がまだ終わっていない。同社はこのような最終段階の作業を完了してから、実証カスケードの起動準備状態をレビューする方針である。これにより、2023年12月末までに濃縮度19.75%のHALEU燃料を20kg製造できるようUF6ガスの濃縮要件をクリアしていくほか、2024年も年間製造能力900kgのペースで運転を継続する。ただしその際は、議会からの予算配分と今後の契約に基づいた追加製造オプションが必要になるとしている。 DOEの説明によると、HALEU燃料は先進的原子炉の設計を一層小型化するとともに運転サイクルを長期化し、運転効率を上げる際にも必要な重要物質。第4世代の小型高温ガス炉を開発しているX-エナジー社は今年10月、この設計に使用する3重被覆層・燃料粒子((HALEU燃料に黒鉛やセラミックスを被覆したTRISO燃料))の商業規模製造施設の起工式をテキサス州オークリッジで開催したが、現時点で米国内ではHALEU燃料を商業規模で製造できるサプライヤーは存在しない。このような状況は、米国の先進的原子炉開発とその建設に大きな支障をきたすとDOEは認識しており、商業規模の大型HALEU燃料製造施設を国内で建設することにより、一層多くの世帯や企業にクリーンで安価な原子力エネルギーを供給できると考えている。このことはまた、J.バイデン大統領が目標に掲げた「2035年までに電力を100%クリーン化」の達成にも重要な貢献をするほか、連邦政府のクリーンエネルギー投資から得られる利益の少なくとも40%を、経済的に不利な立場にある地域コミュニティに還元する取り組み「Justice40」を通じて、一層多くの経済的機会をこれらのコミュニティに提供できるようになるとしている。DOEのJ.グランホルム長官は、「敵対国が供給するHALEU燃料への依存を減らし、自前のサプライチェーンを国内で構築すれば、米国は数多くの先進的原子炉を配備し国民にクリーンで安価な電力を今以上に供給可能になる」とコメント。「今回の実証計画を通じて、DOEは産業界のパートナーとともに、クリーンエネルギー関係の雇用創出につながる商業規模のHALEU燃料製造に向けて動き出しており、すべての米国民が原子力の恩恵を被れるようにしたい」と述べた。DOEによると、今回交付した補助金はHALEU燃料製造能力の実証に向けた米国の近年の投資をさらに前進させるものであり、次の段階ではバイデン大統領が今年8月に成立させたインフレ抑制法の予算措置により、HALEU燃料製造能力獲得のための活動を支えていく。DOEは2020年代末までに必要とされるHALEU燃料は40トン以上と予測しているが、バイデン政権の「電力を100%クリーン化する」目標の実現のために先進的原子炉が複数建設されることから、この量は毎年追加されていく見通し。今回の実証計画はHALEU燃料の短期的需要に対応するものだが、長期的には同燃料の認定試験やDOEが別途進めている「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」にも活かされると指摘している。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Nov 2022
3626
COP会場内の原子力パビリオンで11月9日、「新規原子力へのファイナンス」をテーマとするセッションが開催された。世界原子力協会(WNA)の主催で、国連欧州経済委員会(UNECE)、国際エネルギー機関(IEA)、および原子力関連団体のアナリストらが出席し、原子力の新設に向けた投資課題を議論した。IEAのクリストファー・マクリード氏は「ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機を回避するための各国政府の危機対応が注目される」とし、米国のインフレ抑制法、EU の Repower EU、日本でのグリーン・トランスフォーメーション(GX)、中国やインドでのクリーンエネルギー技術の導入を挙げ、これらの政策の結果として、計2兆ドルという巨額の投資が実施されると指摘。そして「原子力だけでなくさまざまなテクノロジー全体へ投資される」と分析。「気候変動問題ではなく、むしろエネルギー・セキュリティ問題」によってクリーンエネルギー分野への投資が促進されるとの認識を示した。一方で、IEAの2050年ネットゼロに向けたロードマップによると、依然としてネットゼロ達成は難しいと指摘し、原子力発電設備容量の大幅増加によってのみネットゼロ達成が可能との見方を示した。またその場合に必要な投資額は4兆ドル規模になるとし、現時点で各国が示す政策だけでは、必要な原子力発電設備容量に達することは難しいと断言。途上国での需要も高まっていることから、先進国から途上国への原子力輸出によって達成が可能になるのでは、との見方を示した。そのほかUNECEのダリオ・リグッティ氏は、「運転開始までのリードタイムが15年もの長期ではファイナンスを受けるのは難しい」と指摘。モジュール方式で工期短縮が見込まれ、初期投資額も小さいSMRへ期待を寄せた。また投資家は単一の電源に投資するのではなくエネルギー全体のポートフォリオに投資し、リスクを分散させるため、投資先の選択肢として常に原子力を堅持しておくことが何よりも大切、と助言した。欧州原子力産業協会(Nucleareurope)のジェシカ・ジョンソン氏は、新規建設はリードタイムが長いため、足元の現実的な解決策は「既存の原子力発電所をできるだけ長期に運転させること」であるが、長期運転で時間稼ぎをし、2035年までに各国が「新規の原子力発電所を運転開始させるべき」との考えを示した。
15 Nov 2022
1987
韓国水力・原子力会社(KHNP)は11月11日、ポーランド中央部のポントヌフにおける韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設を目指して、韓国の原子力企業チームが現地でのサイト調査に着手したと発表した。ポーランドの原子力開発計画では、100万kW級の大型原子炉を2043年までに6基、合計600万kW~900万kW建設することになっており、同国のM.モラビエツキ首相はこの件について10月末に「ウェスチングハウス(WH)社の技術を採用する」と発表。同国北部のルビアトボ-コパリノ・サイトにおける最初の3基、375万kW分として、WH社のAP1000を建設することになった。一方、韓国の産業通商資源部(MOTIE)は同じ頃、ポーランドの原子力開発計画の一環としてポントヌフで「APR1400」を建設することを目指して、KHNP社が年末までに建設費や資金調達方法などを盛り込んだ予備的建設事業計画を準備できるよう支援する協力覚書を、ポーランド国有資産省(MOSA)と締結した。また、ポーランドの原子力開発計画を担当する国営エネルギー・グループ(PGE)は、ポントヌフで別途、小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているエネルギー企業のZE PAK社とともに、「APR1400」の建設計画でKHNP社に協力するための「企業間協力意向書(LOI)」を3社間で締結していた。KHNP社の発表によると、韓国チームは同社のほかに韓電技術(KEPCO E&C)や韓電原子燃料、韓電KPS、斗山エナビリティ(前「斗山重工業(株)」)、大宇建設などで構成されている。現在はZE PAK社の社員と協力して、9日からポントヌフの原子力発電所サイトとしての特性調査を開始しており、これまでに冷却水の水量や送電網との接続状況といった適性を検証している。同チームはまた、ZE PAK社のZ.ソロルツ会長とも、この計画に関する事業協力案について協議している。KHNP社はまた、このプロジェクトにおける韓国とポーランドの協力関係を強化するため、韓国原子力発電輸出産業協会(KNA)、ポーランド電力産業協会(IGEOS)と、10日にワルシャワで「APR1400サプライヤーズ・シンポジウム」を共同開催した。このシンポには、ポーランドの政府や関係機関、原子力サプライヤーなどから約200名が参加しており、韓国チームは「APR1400」の優秀性をアピールするとともに、ポーランドへの技術移転戦略などを紹介した。このイベントではさらに、両国の原子力関係企業が相互協力できる分野や人的交流の拡大等についての会合が複数開催され、韓国チームはポーランドの関係サプライヤー13社と了解覚書を締結。ポーランドの原子力発電所建設に対する資機材の相互提供や、運転・保守等でも企業間協力を強化することになった。このほか、KHNP社の海外原子力プロジェクト担当者が同じ日、ポーランドで副首相を兼任するJ.サシン国有資産相らと会談。このプロジェクトの事業計画の作成やサイトの適性評価計画、ZE PAK社との協力案について協議している。(参照資料:KHNP社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Nov 2022
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COP会場内にある原子力パビリオンで11月9日、国際原子力機関(IAEA)のグロッシー事務局長と、ブルームバーグのエネルギー担当編集主幹ウィリアム・ケネディ氏との対話セッションが開催された。ケネディ氏からの、原子力は低炭素かつベースロードを支える電源だが、完成するまで15年もかかるのでは遅すぎるとの指摘に対し事務局長は、「リードタイムが15年以上というケースは、プロジェクトマネジメントや規制体制に原因があった。振り返ると1970年代の原子力導入期のプラントは、極めて短期間で運転開始にこぎつけている。最近でもUAEのバラカ原子力発電所のように、同国初の原子力プラント導入であったにもかかわらず、わずか7年で運転開始を達成したケースもある」と答えた。その上で事務局長は、原子力産業界全体での炉型や規制の標準化といった取り組みを早急に進めていく決意を表明した。また小型モジュール炉(SMR)にも言及し、「SMRは(技術面でも規制面でも)既存炉よりもはるかにグローバル化が進んでおり、リードタイムは短縮されるだろう」と各国で進むSMR導入の動きに大きな期待を寄せた。ただし、「国ごとに求めるスケールは違う」として大型炉が相応しいケースも多いと指摘。SMRはどちらかというと開発途上国向けの選択肢になるとの考えを示した。事務局長は、1970年代に運転を開始したプラントが50年を迎えつつあることから、その老朽化について問われ、「気候変動対策のアンサング・ヒーロー(影のヒーロー)は長期運転だ」と断言。長期運転にかかるバックフィット等のコストは初期コストの半分以下であり、50年どころか80年近く経過しながらも安全なプラントもあることに言及し、「私は100年の運転も可能と考えている」と強調した。そして、「欧州の一部の国では拙速な脱原子力政策により非常に脆弱なエネルギー供給状況に置かれている」ことに言及し、個人的な見解としながらも、「気候変動と戦う上で原子力を閉鎖することは誤りだ」と強調。「政治の世界では2+2=4ではないとわかってはいるが、科学的観点から見ると馬鹿げたことが多すぎる」と懸念を示した。そしてこれからのIAEAの使命として、原子力コミュニティから外へ出て、原子力について反対意見を持つ政治家とコミュニケーションをとっていくとの決意を語った。また、10年後のCOP37時点での世界の原子力発電規模を問われた事務局長は、「倍増する必要があるが、実際はそこまで行かないだろう。それでも現在よりはるかに大きくなる」との見通しを示した。
14 Nov 2022
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米国の輸出入銀行(US EXIM)は11月9日、ルーマニアで建設途中のチェルナボーダ3、4号機(各カナダ型加圧重水炉=CANDU炉、70.6万kW)を完成させる計画に、米国側からプロジェクト準備等のサービスを提供する契約について、合計で最大30億5,000万ドルの融資を提案する2件の意向表明書(LOI)を発出した。3、4号機の建設工事は、1989年のN.チャウシェスク政権崩壊により、それぞれの進捗率が15%と14%の状態で停止している。同国の国営原子力会社(SNN)は2009年、プロジェクト運営企業のエネルゴニュークリア(EN)社を設立して欧州企業6社から出資を募ったものの、経済不況等によりこれら企業はすべて撤退。2015年には、中国広核集団有限公司(CGN)がこの計画に協力するとしてSNN社と覚書を交わしたが、その後に米国とルーマニアの協力関係が進展したことから、CGNとの協力は2020年1月に打ち切られている。SNNの今回の発表によると、2件のLOIのうち1件はプロジェクト準備の一環で米国から提供する技術サービスの契約に、US EXIMが最大5,000万ドルを融資するというもの。2件目は3、4号機の完成に向けたエンジニアリング・サービスとプロジェクト管理の提供契約に、最大30億ドルを支援する内容だ。 US EXIMは政府系の輸出信用機関として、米国企業の輸出事業促進を目的に低金利融資を提供。今回の案件は、米国が両炉の完成を支援するとともに、ルーマニアの民生用原子力発電部門の拡充と近代化等に協力するため、2020年10月にルーマニア政府と原子力分野の政府間協定(IGA)に調印したことに基づいている。US EXIMはその際、原子力も含めたルーマニアのエネルギーインフラ開発プロジェクトに最大70億ドルの財政支援を行う意向を表明しており、そのための覚書を同国の経済・エネルギー・ビジネス環境省と締結していた。このような合意に基づいて、今回のLOIはエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されている第27回・国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の場で、US EXIMのR.ルイス総裁がルーマニア側に正式に手渡した。これには米国のJ.ケリー気候問題担当大統領特使のほか、ルーマニアのK.ヨハニス大統領やエネルギー省のV.ポペスク大臣などが出席している。SNN社によると、チェルナボーダ3、4号機の完成計画は2021年4月に承認された同社の戦略に沿って3段階で進められる。2021年末を起点とする現在の第一段階では、24か月計画で準備作業を進めており、建設工事の再開に必要なエンジニアリング文書や安全関係文書の作成と改訂を実施する。EN社はこの関係で2021年11月、CANDU炉の設計・供給と関連サービスの提供を専門とするカナダのCANDUエナジー社と契約を締結。準備段階のエンジニアリング・サービスを受けることになった。また、第二段階では最大30か月をかけて予備作業を実施する。具体的には、プロジェクトを明確に確定するためのエンジニアリング作業やプロジェクトの適切な実施契約締結に向けた協議、安全性関連の建設許可取得、技術面と経済面の最新指標に基づくプロジェクトの実行可能性の再評価、建設工事の実施を決める最終投資判断(FID)などを挙げている。最後の第三段階で、実際の建設工事を開始する方針。3、4号機の起動および営業運転の開始はそれぞれ、2030年と2031年を予定している。(参照資料:SNN社、US EXIMの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Nov 2022
1459
英国ロールス・ロイス社の小型モジュール炉(SMR)開発子会社であるロールス・ロイスSMR社は11月9日、同社製SMRの立地評価作業を終え、有力な建設候補地としてイングランドとウェールズにある閉鎖済みの原子力発電サイトなど、4地点を選定したと発表した。これは英国でSMR発電所の最初の一群(合計出力:約1,500万kW程度)を稼働させるための重要な一歩であり、同社はそれらのSMRを通じて英国がCO2排出量の実質ゼロ化を達成し、確実なエネルギー供給を可能にするとしている。今回特定された4地点は、原子力廃止措置機構(NDA)が管理しているイングランド・カンブリア州のセラフィールド原子力複合施設の近隣区域とグロスタシャー州にあるオールドベリー・サイト、およびウェールズ北部のトロースフィニッド・サイトとアングルシー島にあるウィルファ・サイトである。これらはかつて、旧式のガス冷却炉(GCR)が稼働していた地点であり、NDAはこのようなGCRサイトも含め、新たな原子力発電所の立地用に指定されている17サイトをすべて所有している。このため、ロールス・ロイス社はNDAチームと共同で、建設プログラムを進めていく第一段階の作業として、複数の候補地の地質工学的データや送電網との接続状況、および複数のSMR建設に十分なスペースが確保できるか等を調査。また、NDAの所有サイト以外の地域についても、同社はSMRの建設可能性のほかに、地元との協力の機会や同社製SMRが提供する社会経済的利益などを評価した。こうした作業は、NDAが使命としている「英国初期の原子力発電サイトを安全・確実かつコスト面の効果も高い方法で浄化し、その他の用途用に提供する」とも矛盾しないことから、ロールス・ロイス社は地元のコミュニティが得る利益や環境面の利点に重点を置いたと表明。ただし、NDAが所有する土地の活用で正式な許諾と支援を得るには、NDAを管轄するビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の承認が必要になるとしている。ロールス・ロイス社のSMRは、既存のPWR技術を採用した設計で電気出力は47万kW。少なくとも60年間ベースロード用電源として稼働が可能だと同社は述べており、今年4月からは英国原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が同設計について「包括的設計審査(GDA)」を開始した。同SMRについてはまた、BEISが2021年11月、民間部門で行われている投資のマッチングファンドとして、2億1,000万ポンド(約350 億円)を提供すると約束している。ロールス・ロイスSMR社のT.サムソンCEOは、「かつて原子力発電設備を受け入れていたイングランドとウェールズのコミュニティに、新たな原子力発電所の建設について理解してもらう支援をしてくれたNDAのチームとD.ピーティ総裁には、深く感謝している」と表明。サイトで進める作業の開始が早ければ早いほど、SMRの無炭素な電力を安定的かつ確実に提供する機会も早まると述べた。BEISで気候問題を担当するG.スチュアート大臣も、「SMRは英国が目標とする『2050年までに2,400万kWの原子力発電設備を建設』という目標の達成を促し、消費者が支払うエネルギー料金の削減とCO2排出量の実質ゼロ化にも貢献する」と指摘している。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Nov 2022
1939
COP27の4日目となる11月9日、COP会場内にある国際原子力機関(IAEA)のパビリオンが正式にオープンし、グランドセレモニーが開催された。「#Atoms4Climate」と題したパビリオンではCOP会期中に、気候変動対策に原子力がどのように貢献できるかをメインテーマに、IAEAを中心に世界原子力協会(WNA)、米原子力エネルギー協会(NEI)、カナダ原子力協会(CNA)、欧州原子力産業協会(Nucleareurope)、日本原子力産業協会などが運営するさまざまなサイドイベントを開催する。朝10時のセレモニー開始に先立ってパビリオンに姿を現したグロッシー事務局長は、会場に詰めかけた聴衆ひとりひとりと握手し、来場に感謝の言葉を述べた。セレモニー冒頭で自身が出演するPRビデオで、地球温暖化による海面上昇に苦しむフィジーの現状が紹介されると、事務局長は「このビデオにある通り、気候変動は現実の出来事である。これに対し我々は原子力テクノロジーで立ち向かうことを宣言し、シャルム・エル・シェイクに原子力のパビリオンを設立することにした」と力強く挨拶した。事務局長は、パビリオンの協力機関に世界気象機関(WMO)や国連食糧農業機関(FAO)らも名を連ねていることを強調した上で、「気候変動対策への原子力の貢献に対する期待の表れ」であると指摘。将来世代を考えると「地球温暖化に対して楽観主義で対応するわけにはいかない」と強い決意を表明した。セレモニーでは続いてガーナ・エネルギー省のプレンペー大臣が登壇。大臣は「ガーナは原子力エネルギー機関を設立し、クリーンで安全で持続可能なエネルギー開発を進め、原子力シェア50%のネットゼロ社会を目指したい」と挨拶した。そのほか米エネルギー省のハフ原子力担当次官補が、ケニアとの革新炉導入プロジェクトについて紹介したほか、前述のWMOやFAOが登壇。WMOのタラス事務局長は、エネルギー部門がGHGの最大の排出者であり、輸送及び電力部門の85%は化石燃料であることから、「原子力がソリューションのカギ」と指摘した。FAOのセメド事務次長は「GHG排出量の1/3は農業由来」とした上で、原子力は食糧不均衡を是正するカギとなるだけでなく、放射線利用によって「食糧の収穫量増大と安全性改善に多大な貢献をする」との認識を示した。原子力産業界からは世界原子力発電事業者協会(WANO)のアル・ハマディ理事長、NEIのコーズニックCEOらが登壇した。セレモニーの最後にグロッシー事務局長は「気候変動対策で誰一人取り残さない社会のために、原子力を活用しよう」と呼びかけ、新たなイニシアチブ「#Atoms4NetZero」を発表した。
10 Nov 2022
2363
米国のコンステレーション・エナジー社は10月31日、イリノイ州内で保有するクリントン原子力発電所(BWR、109.8万kW)とドレスデン原子力発電所(2、3号機、各BWR、91.2万kW、1号機は閉鎖済み)の運転期間を、それぞれ20年延長する方針を表明した。原子力規制委員会(NRC)への申請は、ともに2024年を予定している。1987年に営業運転を開始したクリントン発電所は2027年4月に40年目を迎えるため、初回となる今回の運転期間延長申請がNRCに認められれば2047年まで運転継続が可能となる。一方のドレスデン2、3号機ではすでに初回の延長が認められており、現在の運転認可は2029年と2031年まで有効。2回目の運転期間延長により、両プラントは2049年と2051年までそれぞれ80年間運転を継続できることになる。米国最大の無炭素電力の発電企業であるコンステレーション社は、原子力のほかに水力や風力、太陽光などの発電設備を保有。米国全体で生産する無炭素電力の約10%を賄っている。同社によると、運転期間の延長にともなう両発電所の無炭素電力は、イリノイ州の経済に数十億ドル規模の貢献をするほか、200万戸以上の世帯が必要とする電力量を継続的に供給。同州政府が目標としている「2050年までに州内のエネルギー源を100%クリーン化」の達成にも貢献する。クリントン原子力発電所については2016年6月、当時コンステレーション社の親会社であったエクセロン社が経済性の悪化を理由に2017年6月に早期閉鎖する方針を固めていたが、同年12月にイリノイ州ではCO2を排出しない原子力発電所への財政支援措置を盛り込んだ州法が成立。同発電所はエクセロン社のクアド・シティーズ原子力発電所とともに、その後少なくとも10年間の運転継続が可能になった。同州ではまた、2021年9月にエネルギー部門と輸送部門の段階的な脱炭素化を目指し、クリーンエネルギー関係産業における雇用の創出促進を定めた「気候変動・雇用機会均等法」が成立している。今回、2つの発電所の運転期間延長を決めた理由についてコンステレーション社は、「環境影響面と経済面における原子力の価値を認める法律が州政府と連邦政府の両方で成立したため」と説明。クリントンとドレスデンの両原子力発電所は、2つの州法を通じてゼロ炭素クレジットの形で州政府から財政支援を受けるほか、連邦政府レベルでは今年8月、原子力発電所に対する税制優遇措置を盛り込んだ「インフレ抑制法(IRA)」が成立し、少なくとも9年間運転継続する上での支援が得られるとしている。同社によると、これら2つの原子力発電所では運転開始以降、新たな機器を導入し18か月毎の燃料交換時には予防保守も実行。このような投資を継続的に行っているため、より一層安全で信頼性も向上しているとした。また、過去10年間の平均稼働率は93%~95%をマークしており、最も信頼性の高い電源である点を強調している。同社はさらに、イリノイ州においてこれらの発電所が経済的原動力となっている事実に言及。同州のGDPに対してドレスデン発電所は年間約10億ドル、クリントン発電所は約5億5千万ドルの貢献をしていると述べた。コンステレーション社のJ.ドミンゲス社長兼CEOは、「イリノイ州や全国レベルでCO2の排出量を実質ゼロ化するには、活用可能な無炭素電源をすべて稼働させねばならない」と指摘。「運転期間の延長が認められれば、これらの原子力発電所は今後数十年にわたり、必要な時に必要な場所にクリーンエネルギーを供給できるという原子力の能力を実証する」としている。なお、コンステレーション社は2012年に原子力発電大手のエクセロン社に合併吸収され、所有していた原子力発電所のいくつかはエクセロン社に経営統合された。しかし、米国社会が無炭素な未来に向けて移行するなか、エクセロン社は今年1月、この移行を加速するのに最適の企業としてコンステレーション社を分離独立させると発表。翌2月にはこの分離手続きが完了している。(参照資料:コンステレーション・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Nov 2022
1996
国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が11月6日、18日までの日程で、エジプト屈指のリゾート地シャルム・エル・シェイクで開幕した。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)は現在、経済規模や資源の有無など全く成り立ちの異なる198か国が批准している。COPの採決は全会一致が原則であり、当然ながら国家間の利害対立が極めて大きく、毎回合意文書の取りまとめは難航している。昨年のCOP26(英国)では、世界の平均気温の上昇を1.5度までに抑える努力を各国が追求することで合意したが、国連が先月27日に発表した報告書は、現状の各国による温室効果ガス(GHG)削減目標では、目標達成は難しいと結論。今後、より具体的なGHG削減対策が打ち出せるかが課題となっている。首脳級会合でホストとして各国首脳を迎えたエルシーシ・エジプト大統領は、温暖化対策に向けた「具体的かつ効果的なアクション」を訴えると同時に、ウクライナ紛争の早期終結を強く呼びかけた7−8日には首脳級会合が開催され、国連のグテーレス事務総長は「1.5度の気温上昇を抑制するには、2050年までにGHG排出ネットゼロを達成しなければならないことは、サイエンスによって明らかになっている。しかしその目標は今やヨロヨロの状態で、崩れ去ろうとしている」と強い危機感を表明。「気候変動の地獄へ向かう一本道で、アクセルに足をかけている」と強調し、各国首脳に改めて結束を呼びかけた。100か国以上の首脳が参加した首脳級会合では、最近のパキスタン大洪水など世界各地で干ばつや洪水など異常気象が続く中、「損失と損害(loss and damage)」をテーマに、GHGを大量に放出する先進国から途上国に対する補償が議論された。ガーナのアクフォ=アド大統領は「アフリカは気候変動を引き起こす活動をほとんどしていないにもかかわらず、若者が多大な被害を受けている」を訴え、ルワンダのカガメ大統領も「先進国がなせる価値ある貢献とは、自国の排出量を早急に削減すると同時に、アフリカに持続可能なグリーン電力を導入することだ」と強く要求するなど途上国の首脳からは深刻化する気候変動災害への資金支援を求める声も相次いだ。ドイツのショルツ首相 ©︎独連邦政府これまで先進国は全体で、途上国への気候変動対策として年間1000億ドルの資金支援を行う目標を掲げたものの、未だ達成できていない。今回の首脳級会合でも、独自の追加支援策として、ドイツのショルツ首相が1億7000万ユーロ、英国のスナク首相も15億ポンドの拠出を表明したが、目標額には遠く及ばない現状だ。今後の会期中に、先進国がどこまで歩み寄るのかが注目される。昨年のCOP26では例年以上に原子力に関する議論が活発に行われた。今回も、国際原子力機関(IAEA)が中心となって原子力パビリオンを設置するなど、ネットゼロ世界の実現に向けた原子力の貢献を訴求する予定だ。
09 Nov 2022
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閣僚会議の決定事項を発表するO.ヴェラン政府報道官©The Elysee Palaceフランス大統領府は11月2日、原子力発電所を新規に建設する際、時間のかかる複雑な行政(許認可)手続きを簡素化するための法案が同日の閣僚会議で承認されたと発表した。同国では、E.マクロン大統領が今年2月に東部のベルフォールで、CO2排出量を2050年までに実質ゼロ化するという目標の達成に向けて、国内で改良型の欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設するとしたほか、さらに8基の建設に向けて調査を開始する方針を表明している。今回の法案はこの方針に沿って、エネルギー移行省が複数の国民評議会と協議して内容を決定しており、同省のA.パニエ=リュナシェ大臣が閣僚会議に提出した。今後、フランス国内における新設の実現に向け、行政手続きを加速する枠組みの設定を行うほか、その建設計画が既存の原子力発電所の近隣、あるいは敷地内での建設では工期の短縮を図りたいとしている。大統領府の発表によると、この法案の狙いは気候変動に迅速に対処することに加え、今年始まったウクライナでの紛争にともない、エネルギーの供給保証と自給が危機に瀕していることへの緊急対応となる。また、マクロン大統領がベルフォールで明言したように、原子力発電開発は脱炭素化の推進で化石燃料依存から長期的に脱却していく3つの方策の一つ。原子力の他には、再生可能エネルギーの開発、およびあらゆる産業部門の活動を省エネに導くようなエネルギーの効率化が挙げられるとした。フランスでは今年の10月20日から、独立行政機関の一つである国家公開討論委員会が、同国の将来のエネルギーミックスに関する公開討論を約4か月の日程で開始。複数年の新しいエネルギー・プログラムを2023年に議会にかけられるよう準備を進めているが、大統領府は、今回の法案は将来のエネルギーミックスから原子力を排除するためのものでも、またその安全性や環境影響に関する要件や手続きを変更するためでもないと強調。建設構想がある地域の計画文書を一層迅速に整え、環境影響を考慮した都市計画規則に準じて建設されることを保証、同様の計画を並行して複数進めるためだと指摘した。さらに、建設計画を公益事業として認識してもらうことで、建設に必要な土地を速やかに収用する方策が含まれる可能性があるとしている。公開討論ではまた、北西部のパンリー原子力発電所でEPR2を2基建設する計画が議論の焦点となっているが、今回の法案は将来の原子力発電所建設に関する議論に一層多くのフランス国民が参加することを求めている。大統領府はこれらに基づいて、公開討論が終わる2月までに少なくとも1件の新設計画、可能であれば2~3件について許認可手続きを始めたいとしている。(参照資料:仏大統領府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Nov 2022
1608
カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は10月31日、同州南部のダーリントン原子力発電所でGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」(出力30万kW)を建設する計画について、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に建設許可を申請した。申請文書はOPG社とGEH社が共同作成したもので、OPG社は今後も約6か月間にわたり複数の情報文書を順にCNSCに提出する。このプロセスの最終段階となる2024年頃、CNSCは公開ヒアリングも開催する予定。これらの手続きを経て、OPG社としては早ければ2028年にもカナダ初の商業用SMRを完成させる方針である。折しも、カナダ連邦政府は11月2日に「2022年秋の経済声明(予算編成方針)」を発表しており、この中でクリーンエネルギーの開発投資金に課す税額を最大で30%控除すると表明。対象となるクリーンエネルギーの中には、太陽光や風力などとともに「SMRによる発電システムの機器・設備」を含めている。ダーリントン発電所ではOPG社が2012年8月、大型炉の増設(最大4基、480万kW)用としてCNSCから「サイト準備許可(LTPS)」を取得した。大型炉の建設計画を保留にした後、同社は同じ場所でSMRを建設する計画(最大4基、120万kW)を進めており、CNSCに要請して2021年10月にこのLTPSを10年更新。同年12月には、「ダーリントン新規原子力開発プロジェクト(DNNP)」で採用する設計として、3つの候補の中からBWRX-300を選定した。今年10月の初頭からは、同社は建設用の道路や電気・水道等の公共設備、サービス建屋など、非原子力インフラ設備の建設に向けた整地等の準備作業をサイトで開始、この作業は2025年まで継続するとしている。カナダにおける建設許可申請書の審査プロセスでは、地元コミュニティの住民や一般国民、先住民らが申請書について幅広く議論する機会が与えられており、質問やそれぞれの利益事項を提示することも可能。CNSCの10月24日付の発表によると、OPG社が提出した「(BWRX-300の建設にともなう)環境影響声明書(EIS)」の審査報告書や「BWRX-300設計の技術パラメーター文書」などについて、一般国民が評価を行う10月24日から12月2日までの期間、CNSCは数多くの参加を促すための資金として15万カナダドル(約1,600万円)を提供する。これは第一段階の資金提供であり、第二段階の資金提供についてCNSCは後日発表すると表明。審査プロセスの残りの部分に参加する一般国民のために活用するとしており、具体的には、CNSC委員が作成した文書やOPG社の建設許可申請関係文書の評価作業、公開ヒアリングへの参加を促すために用いるとしている。なお、この建設プロジェクトに対しては、連邦政府のカナダ・インフラストラクチャー銀行(CIB)が10月25日に、9億7,000万加ドル(約1,056億円)という過去最大規模の投資を約束している。(参照資料:OPG社、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Nov 2022
1996
ポーランド政府は11月2日、大型原子炉を備えた最初の発電所として、米ウェスチングハウス(WH)社が開発した第3世代+(プラス)の加圧水型炉「AP1000」を建設することを承認したと発表した。気候環境大臣が提出していた決議を内閣が正式に承認したもので、この承認と同時に同決議は発効している。同国の改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することになっており、政府は今回、このうちの最初の3基、375万kWに安全で実証済みの技術を用いたAP1000を採用すると表明。原子力発電所の建設に最適の地点として昨年12月に選定した北部のルビアトボ-コパリノ・サイトで、2026年にも初号機の建設工事を開始し2033年の完成を目指す。これによりポーランドは、エネルギー供給保証の基盤として新たな電源を確保しつつ、エネルギー・ミックスの多様化を図り、電力価格を低い水準で安定させるとともに、発電部門におけるCO2の排出量を削減。クリーンで安全な原子力発電所の建設に向けた新たな産業部門を、国内経済にもたらしたいとしている。ポーランドにとって、エネルギーを恒久的に自給しロシア産のエネルギーから脱却する上で、国内最初の原子力発電所建設に向けた投資を加速することは非常に重要である。そのため、原子力発電所の建設計画は長年にわたって、同国のエネルギー部門における重要課題の一つとなっている。政府のPPEJについては、WH社のほかにフランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)がそれぞれの原子炉を提案。韓国政府とKHNP社は先月末、PPEJを補完する計画として、ポーランド中央部のポントヌフ地域で韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)建設の実現を目指し、ポーランド政府との協力に向けた覚書、および同国企業との協力意向書を締結した。一方、WH社は9月12日、ポーランドと米国の両国政府が2020年10月に締結した「(ポーランドの)民生用原子力発電プログラムに関する政府間協定(IGA)」に基づいて、大型炉建設のロードマップとなる「民生用原子力分野における両国間協力の概念と計画に関する報告書」をポーランド気候環境省に提出。その中で、WH社がポーランドの計画にAP1000を提供する方針であること、米国政府の融資機関である米輸出入銀行(US EXIM)や国際開発金融公社(DFC)が同計画に融資を行う可能性があることを示していた。今回ポーランド内閣が承認した決議では、WH社のこの報告書の提案に同意することになり、明示されているそれぞれの基本的義務事項を双方が履行する。具体的には関係する企業を支援するとともに、政府レベルでも規制やスタッフの訓練といった活動や、サプライチェーンの構築や一般国民の理解を求めるキャンペーン等を実施していくことになった。ポーランド政府は今回、エネルギー部門の重要課題を解決するための方策として、AP1000の初号機を2033年までに完成させることを挙げたほか、国内2つ目の原子力発電所を建設する準備を進めるため、速やかに対策を講じるとした。また、現在主流となっている化石燃料発電を低炭素な電源に取り換えるほか、電力需要を満たしつつ送電網の安定を図るため、分散型の再生可能エネルギーを大規模に導入するとした。さらに天然ガスの役割については、再エネの不安定な供給量を補完する移行期の燃料に限定するとしている。2つ目の原子力発電所の建設準備については、気候環境省のA. モスクヴァ大臣が記者会見の席上、「欧州その他の国の企業とも協力する余地が残されている」と発表。内閣の意向として、現段階では採用炉型の決定を待たずに建設準備を加速することを明らかにしている。なお、WH社は同じく2日付でコメントを発表しており、「ポーランドと当社にとって歴史的な日になった」と表明。ポーランドの建設計画については、AP1000設計の採用を前提に同社は今年1月、同国の関係企業10社と戦略的連携関係を結ぶことで合意したほか、9月にはさらに22社の同国企業と、ポーランドおよびその他の中欧地域におけるAP1000建設への協力を取り付けるため、了解覚書を締結したと改めて表明している。(参照資料:ポーランド政府の発表資料(ポーランド語)①、②、③、ウェスチングハウス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Nov 2022
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エジプトの原子力・放射線規制機関(ENRRA)は10月31日の理事会で、同国初の原子力発電所となるエルダバ発電所(120万kWのロシア型PWR:VVER-1200×4基)について、2号機の建設許可発給の方針を決定した。原子力発電所の建設は同国のA.F.シシ大統領の指示で進められており、サイトではすでに今年7月に1号機が本格着工、2028年の営業運転開始を目標に建設工事が進められている。同国で原子力発電の導入計画を担当する原子力発電庁(NPPA)は、エジプトの首都カイロの北西300kmに位置する地中海沿岸の同発電所で、最終的に4基の120万kW級VVERを建設することを計画。これらで電源の多様化を図って国内産業を支援するほか、2030年までの国家ビジョンに沿って総電力需要の9%を原子力で賄うなど、同国のエネルギー供給保証を強化していく方針である。折しも、同国は今月6日から18日まで、西部のシャルム・エル・シェイクで国連気候変動枠組条約締約国会議(COP27)を開催する予定。石油や天然ガス等の火力発電所を原子力で置き換えていくことは、同国における環境戦略の主要政策になると見られている。エジプト政府は2015年11月に、原子力発電所の建設プロジェクトに関する二国間協力協定(IGA)をロシア政府と締結しており、ロシア側から最大250億ドルの低金利融資を受けることになった。両国政府はまた、2017年12月にエルダバで4基のVVER-1200を建設するパッケージ契約書に調印、この契約でロシア側は発電所を建設するだけでなく、60年にわたる稼働期間中の原子燃料をすべて供給する。また、使用済燃料の貯蔵施設や貯蔵キャスクもエジプト側に提供、人材育成や設備のメンテナンスにも協力することになっている。ENRRAの発表によると、NPPAは2019年1月に1、2号機の建設許可申請手続きを開始しており、2021年6月末までにこれら2基の予備的安全解析報告書の提出を終えた。これらの関係文書を審査したENRRAは1、2号機が国際的に最も厳しい安全基準を最大限に満たし得るか確認、今年6月には1号機に対して建設許可を発給している。2号機についても、ENRRAは建設に必要とされる要件の順守状況や建設サイトの準備状況等について、現地で複数回の点検を行っており、10月下旬には最終的な総合点検を実施。これらの審査や評価の結果に基づいて、ENRRA理事会が今回、同機への建設許可発給を決めたと説明している。なお、この建設プロジェクトを請け負ったロシアの原子力総合企業ロスアトム社の8月の発表によると、韓国水力・原子力会社(KHNP)が同発電所の4基にタービン系を製造・納入することになった。ロスアトム社傘下のエンジニアリング企業アトムストロイエクスポルト社と結んだ契約に基づき、KHNP社は約80もの関係建屋や構造物を建設するほか、タービン系に必要な資機材を調達するとしている。(参照資料:ENRRA、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10 月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Nov 2022
1405
韓国の産業通商資源部(MOTIE)は10月31日、ポーランド中央部のポントヌフ地域で韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設に向けた計画の策定と支援を行うため、ポーランド国有資産省(MOSA)と情報交換等の協力を行う了解覚書を、また両国の関係企業3社が「企業間協力意向書(LOI)」を締結したと発表した。ポーランドでは2021年2月に内閣が決定した「2040年までのエネルギー政策」に基づき、約100万kWの大型原子炉を2043年までに6基、合計600万~900万kW建設するプログラムを進めている。同国の国営エネルギー・グループ(PGE)が設立した原子力事業会社のPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)は昨年12月、バルト海に面した北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を建設サイトに選定しており、この案件の最初の部分についてM.モラビエツキ首相は2日前の10月29日、「ウェスチングハウス(WH)社の技術を採用する」と発表していた。ポントヌフにおける今回の協力構想について、ポーランドのPGEグループは31日付のリリースで「政府の原子力プログラムを補完するもの」と説明。LOIでは、同グループがエネルギー企業のZE PAK社とともに、韓国国営の韓国水力・原子力会社(KHNP)と協力する可能性を模索することになったが、主な目的は「APR1400」の建設に向けた予備的開発計画を年末までに作成すること。このプロジェクトを通じて、ポーランドのエネルギー供給システムの安定性と独立性を向上させ、安価でクリーンなエネルギーを今後60年にわたって安定供給していく。また、同プロジェクトを通じてポーランドの経済的競争力を強化し、新たな投資の機会を創出したいと述べている。ポントヌフ地域では、ZE PAK社と同国の大手化学素材メーカーであるシントス社が昨年8月、ZE PAK社所有の石炭火力発電所に共同でGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」、あるいはその他の有望な米国製SMRを4基~6基(出力各30万kW程度)建設すると表明した。今回PGEグループは、同地で同グループとZE PAK社、およびKHNP社の3社が実施する具体的な作業として「APR1400」の建設に向けた地質工学的解析、地震条件や環境条件などの予備的調査を挙げている。3社はまた、準備作業と建設・運転段階における予算の見積もりや資金調達モデルの提案、実施スケジュールの作成と各段階の作業区分けなども実施。さらには、安価でクリーンな電力を適宜安定供給していくため、見積もり投資額や関係支出を合理的に抑えていくとした。「APR1400」を採用した発電所の建設に投資することで、ポーランド企業には新たな技術に対応した広範なサプライチェーンへの参加機会がもたらされるとPGEグループは指摘している。ポーランドの副首相を兼任する国有資産省のJ.サシン大臣は、「昨今のような地政学的状況下においては特に、原子力はポーランドにとって不可欠の重要電源になる」と指摘。低コストなエネルギーとエネルギーの自給という観点からも、ZE PAK社とPGEグループが進める今回の協力構想は、ポーランドの戦略的目標の達成に向けて、大きく貢献すると述べた。また、「『2040年までのエネルギー政策』の中でポントヌフは大型原子力発電所の建設候補地の一つだったが、同地での建設計画はポーランドの原子力プログラムにも貢献する」としており、両社がKHNP社との協力協議を開始し、韓国との協力関係強化に乗り出したことに歓迎の意を表明している。なお、ポーランド政府の原子力プログラムに沿ってルビアトボ-コパリノ地区で大型炉を建設する件について、「WH社の技術を採用する」とM.モラビエツキ首相が発表した後、両国政府もWH社も詳細を公表していない。しかし、米国のK.ハリス副大統領はこの発表ツィートに対し、「この協力が我々すべてにとって有益なのは明らかであり、地球温暖化に対処するとともに欧州のエネルギー・セキュリティ強化に貢献、両国の戦略的協力関係も深めていきたい」と返信。米エネルギー省(DOE)のJ.グランホルム長官も、「ポーランドが400億ドル規模となる建設プロジェクトの最初の部分に米国とWH社を選定したことはビッグニュースだ」とコメント、これにより米国では10万人以上の関係雇用が維持・創出されると説明している。(参照資料:韓国産業通商部(韓国語)、PGE社(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Nov 2022
1995
カナダ・オンタリオ州の州営電力オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は10月25日、同国初の小型モジュール炉(SMR)を同社のダーリントン原子力発電所で建設するというプロジェクトに対し、連邦政府のカナダ・インフラストラクチャー銀行(CIB)が9億7,000万カナダドル(約1,050億円)という過去最大規模の投資を約束したと発表した。国家の経済政策に合わせた投資戦略を進めるCIBの資金によりOPG社はSMR建設を進め、その無炭素電力を同社の地球温暖化防止計画に役立てる方針。2040年までに同社の発電設備によるCO2排出量を実質ゼロ化し、2050年までに同州がCO2実質ゼロの経済を確立する一助にしたいと表明している。OPG社は2021年12月、ダーリントンで建設するSMRとして、3つの候補設計の中からGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社の「BWRX-300」(電気出力30万kW)を選定した。これに続いて、サスカチュワン州の州営電力サスクパワー社も今年6月、同州内で建設するSMRとして「BWRX-300」を選定している。これら2州とニューブランズウィック州、およびアルバータ州はこれに先立つ今年3月、それぞれの州内でSMRを開発・建設していくための共同戦略計画を発表しており、CIBの資金提供はSMR建設にともなう先行事例としてその他の州や米国、欧州で同様のプロジェクトを牽引するとOPG社は強調。また、SMR市場は2040年まで年間約1,500億ドル規模で成長が見込まれており、同社のプロジェクトはカナダが世界のSMR建設のハブを目指す上でも有効だと指摘している。OPG社の発表によると、CIBが財政支援するフェーズIの作業は、プロジェクト設計やサイト準備、長納期品の調達手配、送電網との接続準備、プロジェクト管理のコスト見積もりなど、建設に先立つ準備作業をすべてカバー。2020年代末までに同SMRが完成すれば、約16万台のガソリン車の排出量に相当する年間約74万トンの温室効果ガスの排出を抑制するとしている。民間シンクタンクのカナダ産業審議会が2020年に実施した調査によると、SMRを1基建設し約60年間運転した場合の経済的利益は、間接雇用も含めて年平均約700名分の雇用が建設の前段階に生み出されるほか、機器製造と建設期間中の雇用は1,600名分、運転期間中は約200名分、廃止措置期間中には約160名分になると指摘した。CIBのE.コリーCEOは今回、「原子力なしで2050年までに世界中のCO2排出量を実質的にゼロ化するのは不可能だとエネルギーの専門家が指摘していた」とコメント。約10億カナダドルの投資を通じて、CIBはOPG社がカナダ初のSMRを建設するのを支援し、温室効果ガスの排出量抑制を加速したいと述べた。オンタリオ州エネルギー省のT.スミス大臣は、「新しい原子力技術の採用という点で当州は常に世界をリードしており、CIBによる投資は、クリーンなエネルギーを生産しつつ新たな投資や雇用を生み出し、経済成長を促す原子力発電の素晴らしい可能性を実証するはずだ」と述べた。(参照資料:OPG社、CIBの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 Oct 2022
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ポーランドのM.モラビエツキ首相は10月29日、自身のツイッターアカウントに「米国のK.ハリス副大統領、およびJ.グランホルム・エネルギー省(DOE)長官との協議を終え、我が国の原子力発電プロジェクトではウェスチングハウス(WH)社の安全で信頼性の高い技術を採用することを確認した」と投稿した。同国では2021年2月に内閣が決定したエネルギー政策に基づき、国営企業が進めている小型モジュール炉(SMR)の導入計画とは別に、約100万kWの大型原子炉を2043年までに6基、合計600万~900万kW建設することを計画中。米WH社のほかに、フランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)がそれぞれの技術を提案していた。(参照資料:モラビエツキ首相の投稿、原産新聞・海外ニュース、ほか)
31 Oct 2022
1370
国際エネルギー機関(IEA)は10月27日、年次報告書の「ワールド・エナジー・アウトルック(WEO)2022年版」を公表した。世界のエネルギー・ミックスに関する長期的見通しを3通りのシナリオで予測している。 すべてのシナリオにおいて、世界で化石燃料の需要量が2020年代半ば以降に初めて頭打ちとなるほか、2050年まで年平均で2EJ(エクサジュール=10の18乗)ずつ減少するシナリオもあるとした。また、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻にともない、世界中でエネルギー・セキュリティが再構成され、同国が輸出する化石燃料は大幅に減少していくと指摘した。さらに、CO2排出量の実質ゼロ化に向け、原子力発電に投資する国の数が上昇。シナリオの一つでは、2050年までに原子力発電の容量が倍以上に増加するとの見通しが示されている。WEOは、IEAが発行する最も重要な刊行物の1つ。今回のWEO2022の中でIEAは、ロシアのウクライナ侵攻を発端とする世界的なエネルギー危機が歴史的ターニングポイントとなって、持続可能で確実なエネルギー供給システムへの移行を加速する可能性を指摘。また、エネルギー危機の影響はかつてない規模の広がりと複雑さを呈しており、天然ガスと石炭、および電力の市場では過去最大の混乱が生じているとした。地政学的および経済的混乱が一向に収まらないなかで、エネルギー市場は極端に脆弱な状態にあり、近年の世界のエネルギー供給システムがいかに脆く、持続可能でないかを物語っていると指摘した。このような分析結果から、IEAは「地球温暖化対策やCO2排出量のゼロ化政策がエネルギー価格を高騰させている」という一部の人々の主張を否定。エネルギー危機の悪影響から消費者を守るための短期的対策に加えて、多くの加盟国の政府が長期的対策を取り始めており、いくつかの国では石油や天然ガスの輸入先を多様化していると述べた。最も注目すべき対応策としては、米国で原子力に対する税制優遇措置等の気候変動対策を盛り込んだインフレ抑制法が成立したことや、欧州で2030年の温室効果ガスを1990年比で少なくとも55%削減するための政策パッケージが採択されたことなどを挙げている。また、日本では政府が脱炭素社会の実現に向けたGX(グリーントランスフォーメーション)プログラムを進めようとしており、韓国でも再生可能エネルギーと原子力発電シェアの拡大を目指していること、インドや中国でもクリーンエネルギーに移行する意欲的な目標が掲げられている点を指摘した。発電部門の主要電源は再エネに発電部門における世界の化石燃料による発電シェアは、太陽光や風力による発電量が過去10年間に急速に増加したことを反映し、2018年の約65%が2021年には62%に減少した。市場の状況も近年この変化を促しており、石油と天然ガスの世界価格は2020年代後半、新型コロナウィルス感染による制限の緩和を受けて高騰し始めた。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始を受けてこの傾向は大きく悪化し、いくつかの国で石炭火力の一時的な復活が見られたものの、CO2排出量の実質ゼロ化に向けた動きが急速に進展した国もあった。これは、再エネや原子力、二酸化炭素の回収、水素やアンモニアの利用などを組み合わせた対策への支援拡大によるものである。2021年11月の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)以降、CO2の実質ゼロ化を目標に掲げる国が増えており、再エネは今後世界中で長期にわたり主要な電源になるとIEAは予測している。各国政府が実際に実施中、あるいは発表した政策のみを考慮した「現状政策シナリオ(STEPS)」では、再エネは2030年までに総発電量の43%、2050年までには65%にシェアを拡大する見通し。各国政府の誓約目標が期限内に完全に達成されることを想定した「発表誓約シナリオ(APS)」では、再エネに移行するペースはさらに加速し、2030年時点の成長率はSTEPSシナリオより35%上昇するとIEAは見ている。原子力の拡大シナリオ原子力が今後も発電部門で一定の役割を担えるかについては、IEAは既存の原子炉で運転期間延長の判断が下される、あるいは新規の建設計画が成功するかにかかっていると指摘。STEPSシナリオで、原子力は約10%の発電シェアを維持するとIEAは予測したが、これには2022年から2030年までに新たに1億2,000万kWの原子力発電所の完成に加えて、2030年から2050年の期間に30か国以上でさらに3億kWの設備増設が必要である。また、APSシナリオでは、この期間中に年間約1,800万kWの原子力発電所が新たに追加されていくが、高いレベルの電力需要を想定したこのシナリオの中で、IEAは原子力発電シェアが10%近くにとどまるとしている。2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するという「持続可能な発展シナリオ(NZE)」においては、2020年代に先進諸国の多くの既存炉で運転期間の延長が行われ、世界のCO2排出量を大幅に抑制。2022年から2050年までに年平均2,400万kWの新規原子力発電所が追加されるため、2050年までに世界の原子力発電設備容量は2倍以上に拡大する見通しである。しかしながら、このシナリオで想定した電力需要の伸び率が非常に大きいことから、2050年時点の原子力発電シェアは8%に落ち込むとIEAは予想している。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Oct 2022
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米エネルギー省(DOE)のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)は10月21日、原子力発電所の使用済燃料をリサイクルし、有効活用する技術の開発を促進するため、「使用済燃料の放射性同位体をエネルギーに転換する(CURIE)プログラム」の予算から、合計3,800万ドルを産官学それぞれが実施する12のプロジェクトに交付すると発表した。この支援を通じて、ARPA-Eは使用済燃料の処分にともなう環境影響を軽減し、高レベル放射性廃棄物の保管量を削減、国内で開発されている先進的原子炉用燃料の原材料を提供する。米国の原子力発電所は現在総発電量の約20%、クリーンエネルギーの約半分を賄っているが、使用済燃料から新たに生産されるクリーンエネルギーは7,000万戸以上の世帯に十分な電力を供給できるほか、新型炉向け新燃料の開発や、J.バイデン大統領が提唱する地球温暖化対策や化石燃料への依存削減も可能にするとARPA-Eは強調している。ARPA-Eによると、米国では現在、軽水炉から排出された約8万6,000トンの使用済燃料が全国70か所以上の原子力発電所で安全に保管されているが、この数量は年間約2,000トンずつ増加している。これらの使用済燃料には90%以上のエネルギーが残っているものの、すべて地層処分することが決まっている。このため、ARPA-Eが今年3月に開始したCURIEプログラムでは、使用済燃料から再利用可能なアクチニドを回収し、先進的原子炉の燃料用として効率的かつ経済的にリサイクルすることで燃料利用率を向上させ、地層処分される廃棄物の量や放射能毒性を大幅に削減する。具体的には、アクチニドを分離する革新的な技術や計量管理技術の開発、先進的原子炉の燃料用としてアクチニドのグループ回収が可能な再処理施設の設計などを進める計画。これらを通じて、先進的原子炉の燃料コストとして1セント/kWhを実現することや、使用済燃料の処分コストとして0.1セント/kWhの範囲を維持することを目指している。DOEのJ.グランホルム長官は、「全米の原子力施設で生産される安全で信頼性の高いクリーンエネルギーの利用をさらに加速するには、使用済燃料の実用的な活用方法を開発することが重要と考えている」とコメント。放射性廃棄物のリサイクルでクリーンエネルギーを生み出せれば、使用済燃料の保管量削減のみならず、関係する地域コミュニティの経済基盤の安定化にも貢献できると指摘した。今回の支援金が交付される産官学の12チームとしては以下のものが含まれており、ARPA-Eは核拡散抵抗性の高いアクチニドの分離技術やリサイクル施設での保障措置技術の開発等で、それぞれに約150万ドル~500万ドルを配分する。すなわち、アルゴンヌ国立研究所が実施する「使用済燃料中の酸化物を効率的に金属に転換するプロセス」の開発に490万ドル、キュリオ・ソリューションズ社における「使用済燃料のリサイクル技術『NuCycle』の開発・実証」に500万ドル、米国電力研究所(EPRI)が先進的原子炉の燃料供給用に進めるリサイクル技術開発に約280万ドル、GEグローバル・リサーチ社の「液体廃棄物再処理施設における革新的な保障措置対策開発」に約645万ドルなど。このほか、アラバマ大学やコロラド大学、ユタ大学等における関係技術の開発も対象となっている。(参照資料:ARPA-Eの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Oct 2022
2057