スロバキア政府が34%出資するスロバキア電力(SE社)は5月31日、国内で稼働中の4基のロシア型PWR(VVER)向け燃料供給を確保するため、仏フラマトム社と了解覚書を締結した。フラマトム社はスロバキアの首都ブラチスラバに支店を置くなど、同国で100名以上の従業員を抱えており、SE社が運転するモホフチェ原子力発電所(出力50万kWのVVER-440×2基)とボフニチェ原子力発電所(同VVER-440×2基)に運転管理・保守点検(O&M)等のサービスを提供。また、建設中のモホフチェ3、4号機(各47.1万kWのVVER-440)には、安全関係の計装制御(I&C)系を納入している。このような協力に基づき、今回の覚書ではフラマトム社側から引き続きO&MサービスやI&C系を提供するほか、新たな項目として原子燃料やサイバーセキュリティ対策の提供、スロバキア国内で医療用やその他の用途の放射性同位体の生産施設を建設する実行可能性の調査、といった項目を明記。両社が原子力分野でさらに連携していくための協議を行い、将来的な戦略の基盤を築く考えだ。今回の両社の覚書調印は、フランスのE.マクロン大統領がスロバキアを訪問し、同国のZ.チャプトバ大統領と会談した際にブラチスラバで行われた。SE社のB.ストリーチェク会長兼CEOは、「原子力発電所は(スロバキアの総発電量の5割以上を発電するなど)国家的なエネルギー供給の要であり、燃料調達先の多様化は2つの原子力発電所を安定的に運転するための重要タスクだ」と指摘した。フラマトム社はこの協力を通じて、スロバキアの国内VVERの燃料調達先多様化と、エネルギー供給の確保に貢献すると表明。同社が誇る原子力関係の知見や技術・サービスのなかでも、原子燃料は特にスロバキアへの貢献度が高いと強調した。フラマトム社の発表によると、近年の国際情勢の中で、同社はSE社も含め欧州でVVERを運転するすべての電気事業者から欧州独自の原子燃料を開発するよう要請された。それらの原子力発電所で燃料途絶による運転停止が無いよう、また(ロシアが提供する)燃料への輸入依存を軽減するためにも、同社は欧州が主体的に運営できる燃料供給体制を築いていく方針である。このため、欧州では当面の目標としてVVER専用の燃料製造工場とそのサプライチェーンを整備していくとした。また、これと並行して中期的には、欧州域内のVVER運転事業者から協力を得ながら、欧州独自の設計と製造によるVVER燃料と関連機器を開発するとしている。欧州では現在、チェコとブルガリアで合計4基の100万kW級VVER(VVER-1000)、フィンランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーで合計14基のVVER-440が稼働中。ブルガリアではコズロドイ原子力発電会社が昨年12月、コズロドイ5号機(VVER-1000)に装荷してきたロシア製燃料を、米ウェスチングハウス(WH)社製燃料に切り替えると決定、同社と10年間の燃料供給契約を締結した。また、コズロドイ原子力発電会社は同月の末、6号機(VVER-1000)用の燃料を2034年まで確保するため、フラマトム社と同様の契約締結に向けた交渉を開始すると発表している。(参照資料:SE社、フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Jun 2023
1799
国際エネルギー機関(IEA)は5月25日、エネルギー部門に対する世界的な投資動向を分析した報告書「世界エネルギー投資(World Energy Investment)」を公表。2023年に全世界で予想されるこの部門の総投資額約2兆8,000億ドルのうち、約3分の2に相当する1兆7,000億ドル以上が、原子力を含むクリーン・エネルギー技術に投資されるとの見通しを明らかにした。IEAがクリーン・エネルギー関連に区分した技術は、太陽光などの再生可能エネルギーや原子力のほか、電気自動車、送電網、電池貯蔵、低炭素燃料、エネルギー効率の改善、ヒートポンプなど。残りの1兆ドル強が石炭や石油、天然ガス等への総投資額となる。世界的なエネルギー危機を引き金とする供給保証や価格高騰への懸念が、化石燃料への投資を大幅に上回る金額を持続可能なオプションであるクリーン・エネルギー関連技術に投入させている。年間投資額は、電気自動車や再エネへの投資拡大等により、2021年から2023年の間に24%増加する一方、同じ時期の化石燃料投資の増加率は15%に留まるとした。ただし、この増加分の90%以上が経済先進国と中国におけるもので、その他の国でクリーン・エネルギーへの移行が勢いを増さなければ、世界のエネルギー市場は新たな分断を生む深刻なリスクにさらされると指摘している。クリーン・エネルギーに対する近年の投資拡大の背景には様々な要因があり、IEAは例として安定した経済成長や不安定な化石燃料価格などを指摘。化石燃料価格の乱高下は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻後は特に、エネルギー供給への不安要因となっている。また、米国での「インフレ抑制法」に基づくクリーン・エネルギー支援政策や、欧州、日本、中国その他の国における同様のイニシアチブも大きく作用した。IEAのF.ビロル事務局長は、「多くの人々の実感よりも迅速にクリーン・エネルギーの普及が進んでおり、このことは投資の傾向が化石燃料から遠ざかり、クリーン・エネルギーに向かっていることからも明らかだ」と表明。「5年前に1対1だった双方の投資比率は、今や化石燃料への投資額1ドルに対しクリーン・エネルギーは約1.7ドルになった」と述べ、典型的な例として太陽光発電への投資額が石油生産に対する投資額を初めて上回るとの予測を示した。IEAによると、太陽光をはじめとする低炭素発電技術への投資額は、発電部門の総投資額の約90%に達する見通し。電気自動車の今年の販売台数は、前年実績から約30%増加すると見ている。原子力に関しては、IEAは経済先進国と中国を中心に投資額が上昇している事実に言及。福島第一原子力発電所事故から10年以上が経過し、原子力発電所の生み出す低炭素電力や出力調整が可能という特長から、新たな視点で見直す国が増えつつあるとした。アジア地域では多くの国が再エネと原子力への支援政策を打ち出しており、日本では既存炉の稼働年数を60年以上に延長する法案が審議されている。韓国では「第10次電力需給基本計画」の中で、原子力発電シェアを2036年までに約35%に拡大することが盛り込まれた。新興国や開発途上国の中では、インドネシアとベトナムがCOP26で立ち上げられた国際協力枠組みの「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」に加わっており、化石燃料から再エネへの移行を加速している。一方IEAによると、大型原子力発電所の建設計画に対する「最終投資決定(FID)」は、2021年実績の600万kW分が400万kW分に減少した。中国では2022年も新規原子力発電所の建設拡大を継続したものの、大型水力発電所に対する建設投資額の方がこれを大きく上回ったとしている。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Jun 2023
1963
このほど公表された多国間世論調査「The World Wants New Nuclear」によると、先進原子力エネルギー技術(モジュール性、サイズ、安全性などの側面においてイノベーションをもたらす様々な次世代原子力エネルギー技術)に対する支持が各国で広まっている。この調査はNGOのClearPath(米), Third Way(米), Potential Energy Coalition(米), Replanet(欧)が共同で2022年11月から2023年1月にオンラインで実施したもので、フランス、ドイツ、日本、ポーランド、韓国、スウェーデン、英国、米国の8か国の一般市民からランダムに計13,500人を抽出し対象としている。先進原子力エネルギーを支持すると答えた人の割合が高い国は、ポーランド、フランス、スウェーデンで、とりわけ昨今、大型炉やSMRの導入に向けた動きが活発化しているポーランドでは、回答者の84%が先進原子力エネルギーを支持する結果となった。またポーランドの回答者の78%が気候目標を達成するためには原子力エネルギーが必要と考えており、調査対象国のなかでも最も高いレベルを記録した。また今回の調査では、全ての国で環境保護団体のメンバーやサポーターが先進原子力エネルギーを支持していることが判明。今年4月に商業用原子力発電所を全廃したドイツでも環境保護団体のメンバーやサポーターの間で支持が51%、反対が28%と支持が反対を上回った。日本においては、全体の45%が先進原子力を支持する結果となり、調査対象国の中では支持の相対順位は最低ながらも、反対の29%を上回った。また、環境保護団体のメンバーやサポーターの55%が先進原子力を支持すると回答。こうした環境保護団体のメンバーやサポーターにおける支持の背景について報告書は、原子力が気候目標の達成に不可欠であるとの認識が全般的に好意的な結果につながっている、と分析している。さらに報告書では、日本では先進原子力に強く反対する人の60%が55歳以上の年齢層に集中していることや、先進原子力を支持する要因として経済的な利点を認識していることなどを特筆した。その他、調査全体で男女別に見た場合、「他のエネルギー源と並んで、最新の原子力エネルギー技術を使用して発電することを支持」との問いに対し、70%の男性が「強く同意」「やや同意」と回答。これに対し、女性の支持は54%と男性の支持を下回るものの、27%が「中立」と回答し、「やや反対」「強く反対」の19%を上回った。今回の多国間世論調査を実施したNGOの一つReplanetの共同設立者のM. ライナス氏は、「原子力発電は不人気だと思われがちだが、今回の研究結果は、クリーンで、カーボンフリーの原子力発電が、どの調査国でも過半数の支持を得ていることを決定的に示している」とコメント。「この大多数の支持は、多くの場合、環境保護団体や緑の党のメンバーにまで及んでおり、政策立案者や投資家は、緊急に必要とされている先進原子力の導入の決定をする際に、世論を恐れる必要はないことを示している」と指摘した。
01 Jun 2023
1642
国際原子力規制者会議(INRA:International Nuclear Regulators’ Association)は5月24日に共同声明を発表し、小型モジュール炉(SMR)の包括的な設計評価と許認可を効率的かつ効果的に進めていくため、各国の規制当局者間の協力を強化するなどグローバルな方式で積極的に取り組む方針を表明した。INRAは原子力発電を活用している主要9か国((カナダ、フランス、ドイツ、日本、韓国、スペイン、スウェーデン、英国、米国))の規制当局者によるフォーラムで、今月5日にカナダのトロントで第51回会合を開催。声明文は同会合での議論に基づき、取りまとめられた。共同声明によると、地球温暖化にともなう脱炭素化やエネルギー供給保証の観点から、世界中の国々がSMRの導入を検討中であり、いくつかの国では主な選択肢になりつつある。SMRの持つ安全・セキュリティ上のメリットや工期の短さ、比較的低コストであるという側面が主な理由だが、SMRには取り組まねばならないリスクや課題もある。INRAの参加国はSMRの潜在的安全性能を認めており、規制当局者はこのような技術が原子力安全および核不拡散上の要件を順守しつつ建設されるよう保証する責務を負っている。参加国のうち、新たな原子力発電所の建設プログラムを進めている国では、SMRの包括的な設計審査と許認可で互いに協力し合っているが、今後は2国間や多国間の協力取り決めをさらに拡大して、助言やガイダンス、規制関係の評価経験を共有。それぞれが国内の規制審査を円滑に進め、専門的知見や様々な資源を確保できるようにしていく方針だ。共同声明ではまた、原子炉の設計評価を共同で行う価値を最大限に高めるには、ベンダー側でSMRの安全性向上に向けた安全解析等を実施する必要があるとしており、INRA参加国の規制当局者は評価課題を絞り込むとともに、リスク情報を活用した設計評価に全力で取り組んでいる。また、採用設計が決まった段階で即座に評価が行えるよう資源を投じていく。INRA参加国としては、設計評価を効率的に行うには標準化が重要と認識しているが、立地点の選定や環境影響など現地ならではのファクターにはさらなる対応が必要であり、その部分は各国の規制当局者に委ねられている。また、事前の設計評価は法的拘束力を持つ建設承認ではなく、建設を許可するには透明性を確保したやり方で別途、最終的な規制判断を下さねばならない。国際原子力機関(IAEA)は2022年7月、SMRを始めとする先進的原子炉設計の標準化や関係する規制活動の調和を図ることにより、その開発と建設を安全・確実に進めていくという新しいイニシアチブ「Nuclear Harmonization Standardization Initiative(NHSI)」を開始。INRA参加国もこれを支持しているが、それ以上に、その国独自の国家的規制審査を国際的アプローチに置き換えるべきではないとも考えている。したがってINRA参加国は、SMRその他の先進的原子炉設計の導入にともなう設計評価に一層グローバルなアプローチを取り入れる裏付けとして、それぞれの規制当局が担う重責と役割を強調しつつも、規制関係の2国間や多国間の協力取り決めが重要になるとした。また、産業界からは適切な情報提供を受け、設計評価の効率性を最大限に高める最善の対策も必要。INRA参加国としては、SMRの一層効率的な評価方法として共同アプローチを支持する用意ができている。(参照資料:INRAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 May 2023
1601
ポーランドの規制当局である国家原子力機関(PAA)は5月23日、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の安全評価に関する包括的な見解をA.グウォヴァツキ長官名で公表、同炉がポーランドの関係法に基づく安全要件に適合していることを確認した。PAA長官の見解発表は、ポーランド国内で同炉の建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社の昨年7月の申請に対するもの。原子力安全と放射線防護の観点から、同炉の技術面や担当事業者の組織面で同国の要件を満たしているか確認するためのもので、原子力法その他の規制に基づく予備的許認可手続きの一つ。同国で建設されるSMRの一つとして今回初めてPAAの見解が示されたが、許認可手続きを進める上で必須というわけではない。また、評価の範囲は申請者の要望に沿ったものであるが、標準設計関係の詳細な手続きでは、PAA長官の見解が大きく影響する。出力30万kWの「BWRX-300」の設計は、2014年に米国の原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベースになっている。受動的安全系を採用しており、原子炉上部に設置した大容量プールの水で外部電源や人の介在無しに燃料を冷却できるという。同炉については、カナダ原子力安全委員会(CNSC)がGEH社の申請に基づき、2020年1月から任意の予備的設計評価サービス「ベンダー設計審査(VDR)」を実施中。対象炉型がカナダの規制要件に適合しているか、正式な許認可手続きに先立ち評価するもので、同炉は今年3月にVDRの主要部分をクリアした。PAA長官の見解を求めてOSGE社が提出した申請書は、VDRに向けてGEH社が準備した技術文書が元になっている。OSGE社が分析を要望した「BWRX-300」の技術項目は13分野にわたっており、それらは各種ハザードの脅威に対する原子炉の防護やシステムの安全セキュリティ上の等級分類のほか、中央制御室や原子炉の格納システム、およびその他の機器・システムと構造物の要件との適合性なども含む。放射性廃棄物と原子燃料の管理システムについても分析が行われた。PAAは今回、同炉がポーランドの原子力安全要件に適合していると結論づけたものの、一項目に関しては認可の取得に係わる正式な許認可手続きが始まる前に、PAAが改めて確認する必要があるとした。また、今回評価した項目の中で、一層詳細な要件への適合性評価を要請する場合は、詳細な関係データを提出すればよいとOSGE社に指南している。OSGE社のR.カスプローCEOは今回の評価結果について、「『BWRX-300』建設の許認可手続きに向けた道程の最初の一歩になった」と指摘。同社にとって、PAAとオープンかつ良好な関係を持つことは、建設プロジェクトを成功に導く重要ファクターの一つだと強調している。(参照資料:PAA、OSGE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
30 May 2023
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ポーランド初の大型原子炉としてAP1000を建設予定の米ウェスチングハウス(WH)社とベクテル社の企業連合は5月25日、ポーランドの原子力事業会社であるPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)を交えた3社間協力の主要原則についてPEJ社と合意した。これらの原則は、過去数か月に及んだ両者の集中協議の結果、今年後半に締結されるエンジニアリング・サービス契約への適用条件として、双方の責任範囲や順守しなければならない重要ルールなどを定めたもの。この合意はまた、原子力施設の設計や作業スケジュール、プロジェクト管理、品質保証など、WH社とベクテル社間の協力分野も特定しており、設計段階ではWH社がプロジェクトを主導する一方、建設段階のリーダーはベクテル社になるとしている。PEJ社の発表では、この合意は実質的にエンジニアリング・サービスの契約締結に先立つ最終ステップになる。また、WH社によると、同プロジェクトではすでに一部の許認可手続きやエンジニアリング作業が始まっている。ポーランドの改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することになっている。同国政府は2022年11月、これらのうち最初の3基、375万kW分として、安全かつ実証済みの技術を用いた第3世代+(プラス)のPWR設計AP1000を採用すると発表。建設に最適の地点として2021年12月に選定した同国北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区で、2026年にも初号機の建設工事を開始し2033年の完成を目指す方針である。採用炉型を決定した翌月、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の子会社であるPEJ社は、AP1000の建設に向けた実施取り決めについてWH社と合意。今年2月には、設計に先立つフロントエンド・エンジニアリング等の初期活動について、WH社と実施契約を結んでいる。4月になると、PEJ社はこのプロジェクトの「原則決定(DIP)」発給を気候環境省に申請。DIPの発給は、その投資計画がポーランド社会全体の利益につながるとともに、国家政策にも則していると正式に確認したことを意味している。今回の合意について米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使は、「最良の技術でポーランド初の原子力発電所を建設し、後の世代に安価でクリーンな電力を提供するという目標の達成をともに目指すワン・チームとして3社が結束した」と指摘した。WH社のP.フラグマンCEOは、ベクテル社と組んだチームの能力は、米国初のAP1000が4月に送電を開始し、後続の1基も間もなく完成するという事実からも明らかだと強調。世界ではこのほか4基のAP1000が営業運転中であることから、「当社とベクテル社のチームはこのような経験を通じて、ポーランドが環境に優しい確実なエネルギー・ミックスを効率的に確保できるよう協力していく」と述べた。ポーランド気候環境省のA.モスクヴァ大臣は、「2033年の送電開始がいよいよ現実味を帯びてきた」と表明。「このまま行けば、ポーランドは2040年にエネルギーの四分の一までを原子力で賄うという目標の達成も可能だ」と指摘している。なお、ポーランドでは韓国水力・原子力会社(KHNP)も、中央部のポントヌフで韓国製の大型PWR「APR1400」の建設を計画しており、ポーランドの国有資産省(MOSA)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は2022年10月末に協力覚書を締結。PGE社とMOSAが一部出資するエネルギー企業のZE PAK社、およびKHNP社はその際、企業間協力意向書(LOI)を締結している。(参照資料:WH社、PEJ社、ベクテル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 May 2023
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先進的原子炉の開発を進めている米国のオクロ社は5月18日、商業用の同社製マイクロ原子炉「オーロラ(Aurora)」を2基建設する立地点としてオハイオ州の南部を選定、同地域の4郡で構成される「オハイオ州南部の多様化イニシアチブ(SODI)」と土地の利用に関する合意文書を交わした。4郡の一つであるパイク郡は、2001年まで米エネルギー省(DOE)のガス拡散法ウラン濃縮施設が稼働していた地域。SODIは同施設跡地の未使用部分や同施設自体を再利用する。SODIはまた、原子力施設跡地の再利用と先進的原子炉の建設を促進するためにDOEの原子力局(NE)が資金提供しているプロジェクト「先進的原子炉用サイトの再利用開発ガイダンス」にも参加。SODIのチームには、「オーロラ」初号機の立地点となるDOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)のほか、仏オラノ社の米国法人で米国政府への支援サービスを担当するオラノ・フェデラル・サービシズ社、大手原子力発電事業者のサザン・ニュークリア社、電力研究所(EPRI)などが加わっている。「オーロラ」は燃料としてHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用する液体金属高速炉のマイクロ原子炉で、電気出力は0.15~5万kW。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能なほか、放射性廃棄物をクリーン・エネルギーに転換することもできるという。DOEは2019年12月、先進的原子力技術の商業化を支援するイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環として、INL敷地内での「オーロラ」建設を許可。これを受けてオクロ社は翌2020年3月、原子力規制委員会(NRC)に「オーロラ」初号機の建設・運転一括認可(COL)を申請した。しかしNRCは、審査の主要トピックスに関する情報がオクロ社から十分に得られないとして、2022年1月に同社の申請を却下。オクロ社はその約9か月後、「オーロラ」の将来的な許認可手続きが効率的かつ効果的に進められるよう、NRCとの事前の協議活動を提案する「許認可プロジェクト計画(LPP)」をNRCに提出している。SODIとの今回の合意について、オクロ社のJ.デウィットCEOは、「追加の2基を建設する地域も決まり、当社は今後『オーロラ』の商業化計画を加速していく」と表明。初号機の立地点としてINLの利用が許可された後、2020年2月にINLが初号機用燃料として、使用済燃料から回収した物質の提供を確約したことから、「当社は先進的原子炉の許認可と建設で主導的立場にある」と強調している。(参照資料:オクロ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 May 2023
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社の発表によると、ベラルーシで同社の傘下企業が建設中のベラルシアン原子力発電所で、2号機(PWR、120万kW)が5月13日に初併入した。ベラルーシ初となる同原子力発電所では、第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER-1200)が2基、それぞれ2013年11月と2014年4月に本格着工。これらのうち、1号機は2020年11月に初併入し、2021年6月に営業運転を開始した。同型の2号機も今年3月に初臨界を達成しており、今回出力40%で試験的に国内送電網に接続された。今後は試運転を継続し、数日かけて出力50%に達した後は、原子炉やタービンの主要機器が設計通りに機能するか確認する。100%の段階では、これらの機器がダウンした状態なども含め、様々な運転モードで試験を実施。今秋にも営業運転を開始する見通しである。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 May 2023
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米エネルギー省(DOE)の原子力局(NE)は5月22日、開発中のマイクロ原子炉「MARVEL」で使用する冷却材の挙動を試験するため、傘下のアイダホ国立研究所(INL)で昨年製造した実物大のプロトタイプ「PCAT」をペンシルベニア州の民間企業施設に移送した。この民間企業、クリエイティブ・エンジニアズ社(CEI)は製品製造工程の改善・開発を専門としている。DOEは早ければ7月にも同施設で「PCAT」の冷却材試験を開始するが、「MARVEL」が起動するまでの間、さらなる試験やシミュレーションを行うため、「PCAT」は同施設内に留め置かれる。それ以降DOEは「PCAT」をINLに戻し、マイクロ原子炉技術の一層の進展を目指して研究開発を継続する方針である。INLで約40年ぶりの新規試験炉となる「MARVEL」については、エネルギーを電力に変換するエンジンなど、長納期品の製造がすでに始まっている。「MARVEL」の正式名称は、「Microreactor Applications Research Validation and EvaLuation(マイクロ原子炉の適用に関する研究検証と評価)」。DOEは2021年4月、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指す米国の地球温暖化防止取り組みの一つとして、電気出力100kWのマイクロ原子炉を建設するという「MARVELプロジェクト」を始動した。その際、「2024 年末までにINLの過渡事象試験(TREAT)施設内でマイクロ原子炉の運転を開始し、INL内の小規模電力網に接続する」と表明していた。「MARVEL」炉は燃料としてHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を、冷却材として液体金属のナトリウムカリウム合金を使用。エネルギーを100kWの電力に変換する際は、既存技術のスターリング・エンジン((19世紀初頭に開発された外燃機関の一種。シリンダー内に水素等の気体を封入し、外部から加熱・冷却を繰り返してピストンを作動させるエンジン。))を活用する予定である。完成すれば、同炉はマイクロ原子炉専門の規制承認プロセスの策定や、リモート操作によるモニタリング・システムの評価、自動制御技術の開発等に貢献。DOEはまた、海水の淡水化や地域暖房用の熱生産など、同炉の様々な適用可能性を探る試験を実施する。同炉のプロトタイプ「PCAT」は一次冷却材試験装置(primary coolant apparatus test)の略称で、核分裂反応の代わりに電気加熱で発熱を模擬。高さ約3.6m、重さは900kg以上あり、CEI社はペンシルベニア州ニュー・フリーダムにある同社の製造施設内で、「PCAT」を2段組みの支持構造体の中に設置した。今後DOEは同装置にナトリウムカリウム合金や鉛ビスマスを冷却材として充填する計画で、冷却材の流量や温度といった熱流動関係のデータを集め、「MARVEL」のモデリングやシミュレーションに使用するツールの精度を上げていく。これらは、「MARVEL」が想定通りに機能することを確実にする重要ステップだと説明している。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 May 2023
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米国務省は5月20日、米国が日本と韓国、およびUAEの官民パートナーとともに、ルーマニアが進めている米ニュースケール・パワー社製小型モジュール炉(SMR)の導入計画に共同で最大2億7,500万ドルの支援を提供すると発表した。これは昨年6月のG7エルマウ(ドイツ)サミットの際、設立された発展途上国へのインフラ投資を促す枠組み「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」に基づく具体的な活動で、PGIIでは2027年までに世界中で6,000億ドル規模のインフラ投資を目指している。米国では今回、輸出入銀行(US EXIM)が「エンジニアリング波及プログラム(EMP)」の中から、最大9,900万ドルの支援をルーマニアに提供するという「意向表明書(LOI)」を発出。米国からはこれに加えて、EXIMがさらに30億ドル、および政府の独立機関として民間の開発プロジェクトに資金提供を行っている国際開発金融公社(DFC)が10億ドルの資金提供を行う可能性に向けて、LOIを発出している。ルーマニアでは、国営原子力発電会社(SNN社)が南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイ(Doicesti)にある石炭火力発電所の跡地で、ニュースケール社のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(出力7.7万kW)を6基備えた発電設備「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)の建設を計画。同計画のプロジェクト企業として、SNN社は2022年9月に民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社と合弁でロパワー・ニュークリア(RoPower Nuclear)社を設立しており、2029年までに同設備を完成させる考えだ。この計画に対し米国政府はすでに2021年1月、貿易開発庁(USTDA)を通じてSNN社にSMR建設サイトの選定作業支援金約128万ドルを交付。前回サミットではPGIIの下で、「(予備的な)基本設計(FEED)調査」を実施する費用として1,400万ドルの提供を約束していた。今回、米国の EXIM、DFCとともに同計画への支援を表明したのは、日本国際協力銀行(JBIC)と韓国の資産運用会社であるDSプライベート・エクイティ(DSPE)社、UAEの原子力導入計画を主導している首長国原子力会社(ENEC)、およびルーマニアのEXIMとSNN社、ノバ・パワー&ガス社である。具体的な支援項目としては、長期を要する資機材の調達、ロパワー社がニュースケール社と実施している第1段階のFEED調査の完了作業(第2段階)、プロジェクト管理関係の専門的知見の提供、サイト特性と規制に関する分析評価、建設スケジュールと予算の正確な見積もりなどを挙げている。UAEのENECは原子力関係の専門家派遣等を通じて同計画に協力する方針で、これは昨年11月にUAEが米国と結んだ「クリーン・エネルギー加速のためのパートナーシップ」に基づく原子力関係の最初の活動である。米国務省によると、安全・確実な民生用原子力技術に対する今回の多国間の支援協力によって、世界規模のクリーン・エネルギーへの移行と地球の気温上昇を1.5℃に抑える上で、原子力が果たす重要な役割が明確に示された。米国としては、脱炭素化への世界的な動きに力を与える革新的なクリーン・エネルギー技術の活用を引き続き支援し、世界中のパートナー国にエネルギーの供給保証と自立をもたらしたいとしている。ロパワー社の社長を兼務しているSNN社のC.ギタCEOは、「チェルナボーダ原子力発電所で26年以上積み重ねてきた安全運転の経験に基づき、ルーマニアが原子力発電所の戦略的開発プロジェクトを進められることを誇りに思う」と表明。ルーマニアがニュースケール社製SMRを建設する米国に次ぐ2つ目の国として、また欧州では初の国として世界中の金融機関から信頼と支援を勝ち取ったこともまた、大きな誇りであると強調した。(参照資料:米国務省、US EXIM、SNN社、ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 May 2023
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米エネルギー省(DOE)とカナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は5月16日、小型モジュール炉(SMR)から出る使用済燃料も含め、その安全な管理で両者間の協力を強化するため、協力の主旨を記した文書(SOI)に調印した。両国はともに、原子力発電所の使用済燃料を再処理せず直接処分する方針であり、同SOIを通じて、地元の合意に基づく処分場の立地プロセスや科学技術プログラムに関する情報を交換、技術調査も共同で実施する。また、人材の交流や相互訪問プログラムの基盤作りを行って、双方の実地体験で得られたノウハウを共有していく方針だ。カナダでは2010年からNWMOが最終処分場のサイト選定プロセスを開始しており、受け入れに関心を表明した22地点を2019年末までに2地点まで絞り込んだ。2024年の後半に、最終処分場サイトを選定する計画だ。両国による今回のSOI調印は、米ワシントンDCにあるカナダ大使館で、DOEのK.ハフ原子力担当次官補とNWMOのL.スワミ理事長兼CEOが行った。米国のJ.バイデン大統領が今年3月にカナダを公式訪問した際、両国がともに安全・確実なエネルギー供給システムの構築というビジョンを共有していることから、DOEとカナダ連邦政府の天然資源省(NRCan)は原子力関係の協力を強化していくことを確認した。その際発表した共同声明で、両国は原子力協力を通じてCO2排出量を実質ゼロ化し、クリーン・エネルギー社会に移行していくと宣言。また、ロシアのウクライナへの軍事侵攻や気候変動の影響により、エネルギーを巡る世界情勢は根本的に変化しており、同じ考えを持つ同盟国同士が今以上に連携を強める必要があるとした。原子力は信頼性の高い低炭素エネルギーとして安価に供給が可能。米加両国はSMRも含めた先進的原子力技術こそ、CO2を排出せずに世界中の経済成長に貢献し、エネルギー供給を保証する機会になると考えている。このような技術を牽引する主導国として、両国はこれらの技術が核不拡散を順守しつつ、世界中で安全・確実に採用されていくよう保証する責任を負っている。また、地元の合意に基づいた放射性廃棄物の長期的な管理も両国に共通するビジョンの一部であり、原子力への支持や信頼を勝ち取るための基盤でもある。このため、米加両国は原子力発電所の安全確保や核不拡散等で最も厳しい基準を順守しつつ、世界中で先進的原子力技術の利用を促していくため、緊密に連携しながら新興市場に進出したいとしている。NWMOのL.スワミ理事長兼CEOは、「20年以上にわたりNWMOは受け入れ候補の自治体らと協議を重ね、使用済燃料を安全かつ長期的に管理するための革新的技術を研究開発してきた」と指摘。このような技術を、米国のような国際パートナーと共有することを切望すると述べた。DOEのK.ハフ原子力担当次官補は、「米国は現在、合意ベースの立地プロセスを策定中なので、一層確実なアプローチの構築に向けて、カナダのノウハウも含め様々な観点から情報を得たい」と表明している。(参照資料:NWMOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 May 2023
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米国の非営利エネルギー研究組織である電力研究所(EPRI)と原子力エネルギー協会(NEI)は5月16日、世界がクリーン・エネルギー社会に向けて移行するなか、市場の需要に合わせて先進的原子炉の建設を円滑に進めるための重要戦略と支援アクション、実行可能な道筋を示した「Advanced Reactor Roadmap」を共同発表した。第一段階として、今回は北米地域(米国とカナダ)を対象にしており、先進的原子炉の潜在的価値をフルに発揮する上で、産業界が取るべきアプローチを3つ勧告しているほか、先進的原子炉の大規模建設に必要な7つの条件と45の具体的アクションを提示。今後は世界のその他の地域を対象に、同様のロードマップを作成していく方針だ。今回のロードマップは、NEIが会員企業やその他の原子力関係者らを招いて毎年開催している「Nuclear Energy Assembly」で明らかにされた。EPRIとNEIによると、米国とカナダの両国で発電や輸送、工業加熱といった部門を脱炭素化するには、既存の原子炉と先進的原子炉が重要な役割を果たすとの認識が広がっている。EPRIや米エネルギー省(DOE)が最近実施した調査では、原子力も含めコスト面の競争力を持つクリーン・エネルギー源が市場で大きな強みを発揮するとの結論が出ており、原子力産業界は市場の需要に合わせて原子力の活用に向けたアクションを取り始めている。具体的には既存炉の運転継続と先進的原子炉の商業化であり、無炭素な発電オプションとして2050年までに6,000万kW~4億kWの先進的原子炉が必要ともいわれている。今回のロードマップは、先進的原子炉の潜在的な顧客や関係する政策の立案者、規制当局、金融機関、産業界を含むその他の幅広い関係者を対象としたもの。これらの原子炉が持つ価値を発揮するには、以下のアプローチが重要になると指摘している。すなわち、①建設上の課題が少ない等、市場のニーズに即した炉型を商業化する、②同じく市場や顧客の様々なニーズに合わせて、複数の先進的原子炉の製品リストを確立する、③脱炭素化に向けた節目の目標に合せて、これらの確実な商業化やコスト面の有効性を保証する、である。同ロードマップはまた、先進的原子炉を大規模に建設していく上で、産業界が政策面や規制面、社会的受容性の面で必要とする条件を説明。まず、これらの初号機の建設プロジェクトを成功裏に進めるには、連邦政府や関係する州政府などが講じた財政支援や優遇税制等の措置が重要だとしたほか、後続計画が速やかに続くよう産業界がリスク軽減のために開発中の枠組みについても触れている。また、規制当局は革新的な技術を用いた複数の先進的原子炉の規制審査を、円滑に進めねばならないとしている。先進的原子炉を市場に出すために、産業界で必要とされる具体的アクションとしては、同ロードマップは「許認可手続き」や「環境影響と立地」、「サプライチェーン」、「建設と運転」、「プロジェクト管理」、「労働力開発」などの項目別に、細かな戦略的優先事項を提示。濃縮ウランの安定供給を確保するため政府と協議することや、これらの炉型がタイムリーかつ効率的に審査・承認されるよう規制当局に働きかけること、初号機建設プロジェクトの実施準備を確実に進めることなどを挙げている。今回のロードマップについて、EPRIのN.ウィルムシャースト上席副理事長は、「先進的原子炉は社会にとって不可欠なエネルギーを生産しつつ、CO2排出量の削減を可能にするオプションの一つ。今回のロードマップを通じて、当研究所は脱炭素化という世界的な目標の達成に有効な、原子力の重要な役割を促進するためのアクションを提案している」と述べた。NEIのD.トゥルー上席副理事長は、「エネルギーの生産システムに原子力を大々的に組み込まねばならないとのコンセンサスが米加両国で高まっている」と指摘。「先進的原子炉の大規模建設を成功に導く条件の中で、産業界のみならず連邦政府などその他の関係者にも、それぞれの役割があることが明確になった」としている。(参照資料:EPRIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 May 2023
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欧州で原子力発電を利用している14か国の協力イニシアチブ「原子力アライアンス(Nuclear Alliance)」の参加国も含め、合計16か国が5月16日に共同声明を発表。欧州でエネルギー生産の脱炭素化を進め、遅くとも2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするため、CO2を排出せず安全で信頼性の高い電源に一層の支援を行うよう、欧州連合(EU)その他の国際パートナーに呼び掛けた。声明の中で16か国は、この目標の達成において原子力は再生可能エネルギーとともに大きく貢献し、無炭素電力を確保する上で先導的役割を担うと指摘。現在欧州で稼働している約1億kWの原子力発電設備容量を2050年までに最大で1億5,000万kWまで拡大することは可能であり、この数字は域内で大型炉や小型モジュール炉(SMR)などの原子炉を新たに30~45基建設することを意味している。これらの新設プロジェクトにより、域内では現在約25%の原子力発電シェアを今後も維持できることから、16か国は原子力分野における協力を一層深めるとともに、EUにも同様の関与を促すため、ロードマップを共同作成することでも合意している。フランスが主導する「原子力アライアンス」は今年2月、同国のほかブルガリア、クロアチア、ハンガリー、フィンランド、オランダ、ポーランド、チェコ、ルーマニア、スロバキア、スロベニアが初会合をストックホルムで開催。その後3月にブリュッセルで開催した第2回会合を経て、ベルギーとエストニア、スウェーデンが加わり、現在参加しているのは14か国。今回、フランスのA.パニエ=リュナシェ・エネルギー移行相がパリで招集した第3回会合では、オブザーバー国としてイタリア、ゲスト国として英国が出席したほか、欧州委員会(EC)のK.シムソン・エネルギー担当委員も参加した。今回の会合では、各国の閣僚級の代表者が欧州独自の原子力サプライチェーンをどのように確立するか、また、原子力関係の技能や技術革新などの側面で、欧州の原子力産業界を再生する必要性などを議論した。その中で、ロシア産エネルギーへの依存を引き続き削減していくには、原子力や放射性同位体を確保する必要があるとの指摘があり、原子燃料などの核物質は特に確保していかねばならないとした。また、そのためにはECやG7等の国際的な枠組みと協力していく重要性が強調された。今回の共同声明は、これらの議論を踏まえて最終的に16か国が調印したもので、技能や技術革新の側面だけでなく原子力の安全性や廃止措置、放射性廃棄物の管理等についても協力を強化するとしている。声明ではまた、原子力の発電設備を拡大するのにともない、EU域内の原子力部門で2050年までに新たに30万人分の雇用が創出されると予測。退職者数を考慮すると今後30年間に域内では45万人以上の新規採用が見込まれるが、これには高度なスキルを持つ人材20万人以上が含まれるとした。また、この設備拡大により、EUの原子力部門は域内GDPの1.5~2%に相当する920億ユーロ(約14兆円)の経済効果をEUにもたらすと指摘。既存の原子力設備を2050年まで維持するのと比べて、化石燃料の輸入量削減等により追加で330億ユーロ(約4兆5,000億円)の貿易黒字も期待できるとしている。16か国が共同で策定する協力ロードマップの骨子には、以下のものが含まれる。-原子力発電をEUのエネルギー戦略の中に位置付ける欧州の全体的規模で脱炭素化とエネルギーの供給保証、および送電網の安定化を図るため、加盟各国のエネルギー戦略で(原子力の有用性を認めるなど)進化を促す。より良い資金調達の方法も含め、域内での新たな原子力発電設備の開発・建設に必要な条件を整える。-原子力発電所の安全性と放射性廃棄物管理国際的な良好事例に沿って最も厳しい安全基準を順守していく。各国の規制当局間の情報交換を促進し、既存の原子炉や将来世代の原子炉の規制に関する知識ベースを拡大する。-原子力産業界相互の協力と各国の主権原子燃料や放射性同位体の供給確保も含めて、欧州全体の原子力バリューチェーンにおけるEUの戦略的な能力を強化する。発電以外の目的も含めた原子力の生産能力を向上させるため、原子力産業界の協力とEUの役割を強化する。(参照資料:仏政府の発表資料①(フランス語)、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 May 2023
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北米最大の鉄鋼メーカーであるニューコア(Nucor)社は5月16日、ニュースケール・パワー社の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の導入に向けて、同社と了解覚書を締結した。ニュースケール社が明らかにしたもので、ニューコア社は「NPM」を複数備えた発電設備「VOYGR」をベースロード電源とし、製鋼所の電気アーク炉(EAF)にクリーンな電力の供給を計画。今回の覚書に基づいて、ニュースケール社とその可能性を模索していく。具体的に両社が実施する作業は、立地点の適性評価のほかに「VOYGR」建設にともなう送電網との接続方法や資本コストの確認など。これに加えてニュースケール社側は、NPMの製造工場をニューコア社施設の近隣に建設する事例についての実行可能性も調査する。両社はまた、この協力関係をさらに拡大することも検討中。ここでは、ニューコア社のCO2排出量実質ゼロ製法による鋼製品「Econiq」を、ニュースケール社のその他のSMRプロジェクトに適用していくことを念頭に置いている。両社は2022年時点ですでに協力関係にあり、ニュースケール社が同年4月、「NPM」の商業化を加速するためスプリング・バレー社と合併した際、ニューコア社はこの合併を促進するため、ニュースケール社に1,500万ドルの民間投資を行っていた。「NPM」はPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することが可能。顧客の要望に応じて、接続基数を変えることで出力調整が行える。受動的安全系を全面的に採用しているため、主要な安全機能は外部電源を必要としない。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、モジュール1基の出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給。ニュースケール社は7.7万kW版のモジュールについても、2023年1月にSDAを申請している。一方、ニューコア社は電力集約型産業ならではの課題解決に取り組んでおり、「Econiq」ブランドでは100%再生可能エネルギー源による電力で鋼製品を製造。ニュースケール社との覚書締結について、同社のL.トパリアン社長兼CEOは、「この協力を通じてCO2排出量が実質ゼロのエネルギー社会に向けて道を拓くとともに、最もクリーンな製造方法による鋼製品を世界中に広めたい」と述べた。「NPM」の初号機については、ユタ州公営共同事業体(UAMPS)が電気出力7.7万kWの「NPM」を6基備えた「VOYGR-6」(出力46.2万kW)を、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)内で建設する計画を進めており、最初のモジュールは2029年の運転開始を目指している。「NPM」導入に向けた動きは米国にとどまらない。ルーマニアでは、国営原子力発電会社(SNN)が「NPM」を国内で建設するため、民間エネルギー企業と共同でプロジェクト企業の「ロパワー・ニュークリア(RoPower Nuclear)社」を設立。ロパワー社は2022年11月に国内鉄鋼メーカーのドナラム(Donalam)社と協力覚書を交わし、CO2排出量を低減した「グリーン・スチール」を製造する方針である。ポーランドでは、鉱業大手のKGHM銅採掘会社(KGHM社)が「NPM」の導入計画を推進中。同社は今年4月、この計画に対する「原則決定(decision-in-principle=DIP)」の発給を気候環境省に申請している。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 May 2023
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カナダ原子力公社(AECL)とカナダ原子力研究所(CNL)、およびエネルギー・プロジェクト企業のグローバル・ファースト・パワー(GFP)社は5月12日、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発した「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」実証炉の立地点として、AECLチョークリバー研究所のスタッフ用駐車場を選定したと発表した。同駐車場はMMR立地用に再整備される予定で、GFP社は研究所構内で提供されている電力や水などのインフラを引き続き活用できると強調。今後、規制上の要件確認などの手続きを経る必要があるが、CNLのJ.マクブリアティ理事長兼CEOは、「原子力関係の様々な最新技術に活力を吹き込んできたチョークリバーで、この地点を選択したことは歴史に刻まれる」と指摘している。USNC社のMMRは、熱出力1.5万kWで電気出力は約0.5万kW。第4世代の小型モジュール式高温ガス炉(HTGR)で、シリコン・カーバイドで層状に被覆されたウラン燃料粒子を燃料に用いる。20年の運転期間中に燃料交換する必要がなく、いかなる事故シナリオにおいても物理的な対応なしですべての熱が受動的に環境中に放出されるという。チョークリバー研究所はオンタリオ州に位置しており、AECLの委託を受けCNLが管理・運営している。CNLは2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」のなかで、2026年までにチョークリバーでSMR実証炉を建設するという意欲的な目標を設定。2018年4月には「CNL管理サイトにおけるSMR実証炉の建設・運転提案」を募集し、GFP社を含む4社の提案を選定した。CNLはまた、SMR開発を支援するコスト分担方式の「カナダ原子力研究開発イニシアチブ(CNRI)」を2019年に組織し、同年11月にUSNC社を初回の支援対象の一つに選定している。GFP社は、オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社とUSNC社が設立した合弁事業体。同社は2019年4月、チョークリバーでのMMR建設に向けて、SMR開発プロジェクトとしては初めて、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に「サイト準備許可(LTPS)」を申請した。チョークリバーでのMMR建設は、基幹送電網に接続できない遠隔地域や、鉱山など産業サイトへの電力供給で将来的な適用モデルとなる予定。CO2を排出せずにクリーン・エネルギーを生産できるというMMRの特長は、化石燃料発電所の代替を含む地球温暖化の防止でも有効と考えられている。今回の発表にともない、AECLとCNL、およびGFP社は、カナダのクリーン・エネルギー実証プロジェクトが新たな段階に進んだことを記念する式典を5月11日に開催。AECLのA. ゴットシュリング副総裁やCNLのJ.マクブリアティ理事長兼CEO、GFP社のJ.ディニング社長兼CEOが地元の議員や産業界幹部らとともに参加した。GFP社のJ.ディニング社長兼CEOは、「チョークリバー研究所の主要構内全体から今回の地点を選定したので、先進的MMRの優れた適性を実証できる」と表明。遠隔地や産業サイトの脱炭素化でMMRが果たす重要な資質を明確に表していると指摘した。(参照資料:CNL、AECLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 May 2023
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米国の大手化学メーカーであるダウ(Dow)社は5月11日、X-エナジー社製の小型高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」(電気出力8万kW)を建設する地点として、テキサス州のメキシコ湾沿いに位置するシードリフト(Seadrift)市を選定した。同社とX-エナジー社は「Xe-100」を4基備えた出力32万kWの発電所を2026年に着工し、2020年代末までに完成させることを目指しており、今後は原子力規制委員会(NRC)に「Xe-100」の建設許可申請の準備を共同で開始する。シードリフト・サイトには、ダウ社が2001年に吸収合併したユニオン・カーバイド社の製造施設が立地。「Xe-100」発電所で温室効果ガスを排出せずに安全かつ信頼性の高い電力と蒸気を確保できれば、ダウ社は同施設の温室効果ガスをCO2換算で年間約44万トン削減出来る。「Xe-100」は熱電併給可能な第4世代の非軽水炉型・先進的SMRで、ベースロード用電源としての役割に加えて、水素製造や海水脱塩など幅広い用途に適用出来る。米エネルギー省(DOE)は2020年10月、X-エナジー社を「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」での支援対象企業の一つに選定。実証炉建設のための支援金8,000万ドルがDOEから交付され、その一部は「Xe-100」で使用する3重被覆層・燃料粒子(TRISO燃料)の製造施設建設にも活用可能である。2022年10月に同社の100%子会社であるTRISO-X社は、テネシー州オークリッジの「ホライズンセンター産業パーク」内で商業規模の「TRISO-X燃料製造施設(TF3)」の起工式を行っている。X-エナジー社は2022年8月に「Xe-100」の基本設計を完了、同じ月にダウ社と基本合意書を交わし、ダウ社がメキシコ湾沿いに保有する施設の一つで同炉を建設することになった。両者はその後「共同開発合意書(JDA)」に調印しており、その中で最大5,000万ドルを「Xe-100」のエンジニアリングに充てると明記。その半分までを、DOEとX-エナジー社が結んだARDP協力協定の支援金から再配分、残り半分はダウ社が提供する。ダウ社のシードリフト・サイトは面積が約19km2で、電線の絶縁体や太陽光パネル用の薄膜など、年間180万トン以上の化学製品を製造している。同社のJ.フィッタリング会長兼CEOは、「設置面積が小さくコストも割安な先進的原子炉は、その他のクリーン電源と比べて大きな強みを持っている」と指摘。同社が追及する持続可能な開発目標の達成では、同サイトが重要な役割を果たすとした。X-エナジー社のC.セルCEOは、「当社の革新的な技術により、シードリフト・サイトが必要とする電力や熱を効率的かつ確実に脱炭素化できる」と強調している。「Xe-100」の実際の建設については、米ワシントン州の2つの公益電気事業者が同州内での共同建設を目標に、2021年4月にX-エナジー社と覚書を締結。メリーランド州のエネルギー管理局も2022年6月、「Xe-100」で州内の石炭火力を代替可能かについて、経済面や社会面の実行可能性を調査すると発表した。国外では、カナダ・アルバータ州の外国投資誘致機関が今年1月、「Xe-100」の州内建設を通じて同州経済を活性化する可能性を探るため、X-エナジー社のカナダ法人と了解覚書を締結している。(参照資料:ダウ社、X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 May 2023
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米原子力規制委員会(NRC)は5月9日、ホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ(NM)州南東部で地元企業と進めている使用済燃料の集中中間貯蔵施設「HI-STORE CISF」の建設計画に対し、建設・操業許可を発給した。「HI-STORE CISF」は、地下部分に使用済燃料を安全に乾式貯蔵するためのシステム「HI-STORM UMAX」を備えた施設で、その建設から廃止措置に至るまで全20段階の工程が設定されている。今回その第1段階として、ホルテック社は合計8,680トンの使用済燃料を封入したキャニスター500台を発電所から輸送して同施設で受け入れ、(最終処分場が完成するまで)貯蔵するため、40年間有効な許可を得たもの。残りの19段階で同社は最終的に、最大1万台のキャニスターを貯蔵する計画だが、その各段階で安全性と環境影響に関するNRCの審査を受け、今回取得した許可の修正を行わねばならない。NRCはこれまでに2回、使用済燃料の集中中間貯蔵施設について建設・操業許可を発給しているが、初回は2006年のユタ州におけるプライベート・フュエル・ストーレッジ(PFS)社の計画。2回目は2021年9月の、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社がテキサス州アンドリュース郡で進めている計画へのものである。前者については、ホルテック社が「HI-STORM」システムを提供することになっていたが、連邦政府の内務省(DOL)がサイト関係の許可を発給しなかったため、この計画は中止となった。後者については、テキサス州内で使用済燃料など高レベル放射性廃棄物の処分や貯蔵を禁止する法案が2021年9月に同州で成立したことから、現時点で着工に至っていない。一方、ホルテック社がウクライナの原子力発電公社から請け負い、2017年にチョルノービリ立入禁止区域内で着工した使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CSFSF)は、2021年8月に第1段階の設備が完成している。NM州における「CISF」建設計画では、エディ郡と同郡内のカールズバッド市、およびその東側に隣接するリー郡と同郡内のホッブス市が、共同で有限会社の「エディ・リー・エネルギー同盟(ELEA)」を設立。2015年にホルテック社と結んだ協力覚書に基づき、ELEAがリー郡内で共同保有する敷地内で、ホルテック社製の「HI-STORM UMAX」を備えた「CISF」を建設することになった。ホルテック社は2017年3月に「CISF」の建設・操業許可申請書をNRCに提出しており、NRCはその約1年後にこれを正式に受理した。この申請書の審査で、NRCは安全・セキュリティ面に関する技術的な評価と環境影響面の評価を行っており、2022年7月には環境影響面の審査を完了。環境影響声明書・最終版(FEIS)の中で、建設・操業許可の発給を妨げるような環境や周辺住民への悪影響はないと結論づけた。安全・セキュリティ面の評価報告書は、今回の建設・操業許可とともに発行される。(参照資料:NRC、ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 May 2023
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米国の「五大湖クリーン水素製造ハブ連合(GLCH)」は5月2日、原子力発電所を活用した水素の製造計画で米エネルギー省(DOE)の「地域のクリーン水素製造ハブ(Regional Clean Hydrogen Hubs: H2Hub)」プログラムから支援金を得るため、正式な申請書を提出した。これは、GLCHに所属する北米最大の圧延平鋼メーカー、クリーブランド・クリフス社が同日明らかにしたもの。申請書は同連合の代表企業であり、製造業用のガスを各種提供しているリンド社が提出した。GLCHの計画では、同じくGLCH所属のエナジー・ハーバー社がオハイオ州で運転するデービスベッセ原子力発電所(PWR、95.3万kW)でクリーンな水素の製造ハブを構築し、五大湖周辺の同州とミシガン州、および一部のペンシルベニア州とインディアナ州に低価格で提供する。GLCHにはこのほか、航空機用のジェットエンジンや関係機器を製造するGEエアロスペース社、オハイオ州のトレド大学、ガラス産業協会(GMIC)が参加している。米国のJ.バイデン政権は2035年までに発電部門を100%脱炭素化し、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化する方針。産業部門の革新的な技術を用いたクリーンな水素の製造はこれに向けた戦略の一つであり、2021年の「インフラ投資雇用法」に基づいている。水素の製造ハブ用に拠出される80億ドルのうち、70億ドルがDOEのH2Hubプログラムに充当されており、DOEは同プログラムで全米の6~8か所にクリーンな水素の製造ハブを設置し、各地域における水素の製造業者と消費者、接続インフラを結ぶネットワークの基盤構築を目指している。DOEは2022年11月、同プログラムへの応募を検討している各州の水素製造団体に製造概念の説明書を提出するよう要請しており、GLCHをふくむ79の団体がこれに応じた。GLCHによると、20億ドル以上の投資を必要とする同計画では、原子力発電所の電力を使った水の電気分解により、一日100トン以上の水素を最短時間でフル生産するとしており、商業的にも実行可能という。この投資額の約半分を連邦政府のプログラムから調達して、中西部の五大湖周辺州でトラックや通勤用の短距離バス、鉄道、航空、航海など、大規模産業が必要とするクリーンな水素をパイプラインと道路輸送で提供。脱炭素化への移行を支援するとともに、関係者間の連携協力や投資、雇用の創出等を通じて、地元コミュニティの中でも不利な条件下にある自治体に利益をもたらしていく。この計画についてはDOEが今年1月、有望プロジェクト33件の一つに選定しており、GLCHに対し正式な申請書を提出するよう促していた。同計画ではまた、オハイオ州のM.デウィン知事と同州選出の複数議員、ミシガン州のG.ホイットマー知事も含め、両州の自治体や労働組合、教育機関、経済開発組織などが支持を表明。GLCHはこのような支持者に加えて、水素の消費者や関係技術のサプライヤー、国立研究所、学術機関、NGOなどとも緊密に協力し、化石燃料をクリーンな水素に置き換えていきたいとしている。(参照資料:クリーブランド・クリフス社、DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 May 2023
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エジプト原子力発電庁(NPPA)の発表によると、同国初の原子力発電所として建設中のエルダバ発電所(120万kW級ロシア型PWR:VVER-1200×4基)で3号機が5月3日、本格着工した。すでに今年の3月、原子力・放射線規制機関(ENRRA)が3号機の建設許可を発給していた。同工事を請け負っているロシアの原子力総合企業ロスアトム社は同日、3号機の原子炉建屋を設置する基礎部分に最初のコンクリートを打設、記念式典も開催した。同発電所建設サイトでは2022年7月に1号機、同年11月に2号機の建設工事が始まり、現時点で建設予定の4基中3基の作業が並行して進められている。同国初の商業炉となる1号機では、今年3月にロシアのサンクトペテルブルク港からコア・キャッチャーの主要機器3点が到着、2028年の営業運転開始が見込まれている。エジプトでは総発電量の90%以上を石油と天然ガスに依存しており、温室効果ガスを排出する主要因となっている。このため、同国は2035年までに石油と天然ガスによる発電量を全体の約5割に縮小することを計画。約10%だった再生可能エネルギーのシェアを約40%に拡大し、原子力では約3%を賄うことを目指している。エジプト政府は2015年11月に、原子力発電所の建設プロジェクトに関する政府間協定(IGA)をロシア政府と締結しており、ロシア側から最大250億ドルの低金利融資を受けることになった。両国政府はまた、2017年12月にエルダバで4基のVVER-1200を建設するためのパッケージ契約書に調印。この契約により、ロシア側は発電所を建設するだけでなく、60年にわたる稼働期間中の原子燃料をすべて供給する。また、使用済燃料の貯蔵施設や貯蔵キャスクもエジプト側に提供。人材育成や設備のメンテナンスについても、運転開始後最初の10年間は協力する。エルダバ原子力発電所は首都カイロの北西300km、地中海沿岸のエルダバ市域に位置している。採用設計の「VVER-1200」は第3世代+(プラス)の最新鋭PWR。この設計はロシア国内ではノボボロネジ原子力発電所Ⅱ期工事の1、2号機に採用され、これらは2017年2月と2019年10月にそれぞれ営業運転を開始した。レニングラード原子力発電所でも同型のⅡ期工事1、2号機が2018年10月と2021年3月から営業運転中である。国外ではベラルーシのベラルシアン原子力発電所で1号機が2021年6月に営業運転を開始したほか、同2号機が2014年4月から建設中。このほか、中国とトルコで4基ずつ、バングラデシュでも2基が建設中である。(参照資料:ロスアトム社、NPPAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 May 2023
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韓国の政府系輸出信用機関である韓国貿易保険公社(K-SURE)と韓国輸出入銀行(KEXIM)はこのほど、米ホルテック・インターナショナル社が現代E&C(現代建設)社と進めている小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」(電気出力16万kW)の輸出計画を支援するため、これら2企業のチームと個別に協力協定を締結した。ホルテック社の5月2日付発表で明らかになったもので、世界中で急速に拡大するクリーンエネルギーの需要や環境面の脱炭素化の動きに対応するため、同社は現代E&C社と組んだ「チーム・ホルテック」で韓国政府から公的な金融支援を受け、「SMR-160」等の原子力発電所を世界中で建設していく考えだ。K-SUREは韓国産業通商資源部(MOTIE)に所属する機関で、韓国企業による海外事業や対外投資の促進を目的に、輸出入信用保険や海外投資保険などの信用供与を専門に行っている。K-SUREとチーム・ホルテックのビジネス協定は4月25日、MOTIEが米ワシントンDCで先進産業とクリーンエネルギーに関する両国の連携イベントを開催したのに合わせて締結された。ホルテック社はこれに先立つ4月21日、ウクライナの原子力発電公社と協力協定を締結。同協定では、「SMR-160」の初号機をウクライナで2029年3月までに完成させるパイロット・プロジェクトの実施と、同国内で最大20基の「SMR-160」建設を視野に入れている。現代E&C社の今回の発表によると、同チームは「SMR-160」の建設を通じてウクライナのエネルギー・インフラを再構築する方針で、パイロット・プロジェクトに続く20基の建設を迅速に進めるとともに一部の機器をウクライナで製造可能とすることを目指している。そして、SMRの建設プロジェクトを通じてウクライナがエネルギー部門全体を刷新し、CO2排出量を実質ゼロ化できるよう、K-SUREの支援に基づく協力を積極的に進めていく。一方、チーム・ホルテックがKEXIMから財政支援を受けるための協力協定は、同じくMOTIEイベントの直後の4月25日に締結された。現代E&C社とホルテック社が2021年11月に事業協力契約を結んだ際、現代E&C社はホルテック社の主要なEPC(設計・調達・建設)契約企業となり、「SMR-160」の商業化に向けた標準モデルの完成に協力することになったほか、同設計を採用した発電所を世界中で建設する独占権を取得している。現代E&C社の発表では、同社はその後「SMR-160」発電所BOP(主機以外の周辺機器)の詳細設計に直接関わっており、ホルテック社が米ニュージャージー州のオイスタークリーク原子力発電所跡地で「SMR-160」初号機を建設する際、現代E&C社は初の韓国企業としてEPC業務と建設工事に携わる予定。KEXIMその他の韓国の公的機関による複数の財政支援を通じて、同社はホルテック社とともに韓国企業として原子力発電所の建設プロジェクトを世界中に拡大・模索するとしている。(参照資料:ホルテック社、現代E&C社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 May 2023
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米ウェスチングハウス(WH)社は5月4日、同社製AP1000の電気出力を30万kWに縮小したPWRタイプの小型モジュール炉(SMR)「AP300」を発表した。今後10年以内に初号機を完成させ、稼働させることを目指している。同社は現在、電気出力が最大でも0.5万kWというヒートパイプ冷却式のマイクロ原子炉「eVinci」を開発中だが、「AP300」はすでに稼働実績のある第3世代+(プラス)のAP1000設計に基づいており、いわば「実証済み」のテクノロジー。AP1000はまた、米国と英国、および中国で設計認証を取得したほか、欧州の電力事業者が定めた安全基準「欧州電気事業者要件(EUR)」の認証審査をクリアしている。このため同社は、「AP300」では許認可手続き上の利点も備わるなど、顧客にとってはリスクが最小限の提案になると強調している。「eVinci」は2020年12月、米エネルギー省(DOE)が推進する「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定され、2030年~2032年の商業化を目指すカテゴリーの炉に分類された。これに対して、WH社は「AP300」では2027年までに原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得し、2020年代末に同炉の初号機でサイト関係の認可手続きを完了し建設工事を実施する方針。同社のP.フラグマン社長兼CEOは、「数あるSMRの中でも『AP300』は唯一、実際の建設・運転経験に裏付けられた設計であり、明確に見通せる建設スケジュールとコストの実証性を兼ね備えた先進的原子炉として世界中の顧客のニーズに応えていく」と述べた。WH社の説明によると、「AP300」は1ループ式の超コンパクト設計で、設置面積はサッカー・コートの4分の1ほど。AP1000と同じくモジュール工法が可能で、同一の主要機器や構造部品を使用、これには受動的安全系や燃料、計装制御(I&C)系も含まれている。また、AP1000用の成熟したサプライチェーンを活用出来るほか、建設にともなう課題への対応策もこれまでの経験から得られている。さらに同炉には、負荷変動に速やかに追従する能力があり、運転管理・保守点検(O&M)の手順もAP1000の18炉・年に及ぶ運転実績から確認済みである。「AP300」で得られる安全でクリーンな電力は、地域暖房や海水の淡水化に利用できるほか、間欠性を持つ再生可能エネルギー源の補完電源としても理想的。将来的には、クリーンな水素を製造する安価な手段としても活用が可能だとしている。 なお、WH社は「AP300」開発チームを率いる上級副社長として、R.バランワル最高技術責任者(CTO)を任命した。同氏はDOEの原子力次官補経験者であり、先進的原子力技術の商業化支援イニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」では担当ディレクターを務めるなど、原子力発電分野で数10年の経験を有している。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 May 2023
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トルコ初の原子力発電所建設を請け負っているロシアの原子力総合企業ロスアトム社は4月27日、地中海沿岸メルシン地区のアックユ原子力発電所(120万kWのロシア型PWR×4基)建設サイトに、1号機用の初装荷燃料がロシアから到着したと発表した。同発電所建設プロジェクトの実施に向けて両国が2010年5月に結んだ政府間協定(IGA)の規定では、建設工事に必要な許可がすべて発給されてから7年以内に、発電所初号機の試運転を開始しなければならない。このためロスアトム社は、2018年4月に本格着工した1号機を2025年までに起動させるため、トルコの建国100周年に当たる今年中に起動の開始準備を整える方針である。同発電所の4基は第3世代+(プラス)のロシア型PWR(VVER)を採用しており、1号機に続いて2~4号機の建設工事がそれぞれ、2020年4月と2021年3月、および2022年7月に開始された。約200億ドルの総工費は差し当たりロシア側が全額負担し、発電所の完成後にトルコ電力卸売会社(TETAS)がロスアトム社のトルコ法人であるアックユ発電会社(ANPP)から固定価格で15年間購入する予定。発電所の設計・建設から運転、保守点検、廃止措置まで、ANPP社が受け持つなど、原子力分野で「建設・所有・運転(BOO)」方式を採用した世界での初の事例となっている。ロスアトム社はまた、IGAの規定に基づきANPP社株の最大49%をトルコや第三国の企業に売却する方針。2017年6月に、トルコの大手エネルギー・インフラ建設企業3社の連合体が49%の出資に合意したが、その後最終合意に至らず、ロスアトム社はその分の出資者を模索している。1号機用の初装荷燃料は、TVEL社の傘下企業が製造したもので、サイトへの到着を記念する現地での式典にはロシアのV.プーチン大統領とトルコのR.エルドアン大統領がオンラインで出席。このほか、国際原子力機関(IAEA)のR.グロッシー事務局長やトルコ・エネルギー・天然資源省のF.ドンメズ大臣、ロスアトム社のA.リハチョフ総裁、ANPP社のA.ゾテエバCEOらが現地で参加した。この式典でリハチョフ総裁は、原子燃料の安全な輸送に関わる基準や要件すべてを満たす形で初装荷燃料が輸送されたという証明書をドンメズ大臣に提示。トルコはいよいよ、原子力平和利用国の一員になると強調した。また、両国最大の共同プロジェクトとなった同発電所の建設プロジェクトには、400社以上のトルコ企業が参加していることから、「トルコはすでに自国の原子力産業を発展させたと言える」と述べた。ドンメズ大臣も「我々の目標実現まであと少しになった」とし、来年にも発電を開始したいとの意向を表明。2028年までに4基すべてが完成すれば、同発電所は年間350億kWhを発電してトルコの電力需要の約10%を満たすことから、「我が国のエネルギーミックスが多様化するだけでなく、天然ガスの輸入量も年間70億m3削減され、3500万トンのCO2排出を抑えることができる」と強調している。(参照資料:ロスアトム社、トルコ大統領府(トルコ語)、ロシア大統領府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 May 2023
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カナダのアルバータ州政府と韓国原子力研究院(KAERI)はこのほど、KAERIが設計した小型モジュール炉(SMR)「SMART」など韓国製SMRの同州内での建設に向けて、包括的な協力の枠組となる了解覚書を締結した。同州は天然資源が豊富なカナダの中でも特に、石油や天然ガスなどの資源に恵まれており、今後はSMRが生み出す無炭素な電力や熱を活用して、オイルサンドからの燃料抽出や化学製品の製造、鉱業、海水脱塩など、州内の様々な産業を脱炭素化していく。「SMART」炉以外のSMRについても、アルバータ州はすでに導入に向けた覚書を内外の複数企業と締結済み。それらは主に第4世代の先進的SMRで、テレストリアル・エナジー社が開発した小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)や、米X-エナジー社の小型ペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」、米ARCクリーン・テクノロジー社のナトリウム冷却・プール型高速中性子炉「ARC-100」などである。今回の覚書に関しては、アルバータ州のB.ジーン雇用・経済・北部開発相とR.ソーニー貿易・移民・多文化主義相が4月18日(カナダ時間)、KAERIのジュ・ハンギュ院長とオンラインで署名した。今後は、同州内でSMR建設の可能性を見極めるため、連邦政府と州政府が適用する規制要件や産業界の関係プログラムなどに集中し、共同で取り組む。アルバータ州は2021年4月、カナダのオンタリオ州とニューブランズウィック州、およびサスカチュワン州が2019年12月に締結した「多目的SMR開発・建設のための協力覚書」に参加。2022年3月には、これら4州でSMRの開発と建設に向けた「共同戦略計画」を策定しており、アルバータ州の当時の首相は、同年8月からこの戦略計画に基づく活動を開始している。アルバータ州政府の発表によると、KAERIとの今回の覚書締結は、その後両者がSMRなどクリーンエネルギー関係の協力について重ねた協議に基づいている。今年3月には、ジーン雇用・経済・北部開発相とソーニー貿易・移民・多文化主義相を含む州政府の貿易使節団が韓国を訪問し、韓国政府と傘下のエネルギー機関、エンジニアリング関係のトップ企業の代表者らと会談。KAERIの研究施設も視察している。「SMART」炉は海水脱塩と熱電併給が可能なシステム一体型モジュラーPWRで、熱出力と電気出力はそれぞれ、33万kWと10万kW。同炉の建設についてはサウジアラビアが検討中で、同国と韓国の両政府は2015年に同炉の建設前設計協力契約を締結した。2023年1月に両国はこの協定を改定し、同設計でサウジアラビアの標準設計認可を取得するため、新たに共同推進協約を締結している。KAERIのジュ院長は、「CO2排出量の実質ゼロ化という目標を今こそ実行すべきであり、SMRはそのための重要技術だ」とコメント。アルバータ州で「SMART」炉を建設すれば、地球温暖化との闘いで先駆者的役割を果たすと強調している。(参照資料:アルバータ州政府、KAERIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 May 2023
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ウクライナ民生用原子力発電公社のエネルゴアトム社は4月21日、米ホルテック・インターナショナル社製・小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」(電気出力16万kW)の初号機を、2029年3月までにウクライナで送電開始するというパイロット・プロジェクトの実施に向け、同社と協力協定を締結した。同協定で、エネルゴアトム社は最終的に最大20基の「SMR-160」の国内建設を視野に入れ、「SMR-160」に使用する様々な専用機器の製造施設建設など、同技術の一部国産化も検討している。両社はこれら20基の運転と機器製造施設の操業開始を早期に実現するため、効率的な実施計画を共同で策定する。ホルテック社はウクライナで使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CSFSF)の建設計画を請け負うなど、20年以上にわたりエネルゴアトム社と協力。同CSFSFは、2022年4月に操業を開始している。SMR関係では2018年3月に協力のための了解覚書を締結しており、両社はウクライナ北西部のリウネ原子力発電所で6基の「SMR-160」建設を目指すとしていた。2019年6月には、これら2社にウクライナ国立原子力放射線安全科学技術センター(SSTC NRS)を加えた3者が「SMR-160」の国内建設を進めるため、国際企業連合を設立している。今回の協定への調印は、エネルゴアトム社のP.コティン総裁がウクライナの首都キーウで、同時にホルテック社のK.シン社長兼CEOが米ニュージャージー州のカムデンにおいて、オンラインで行った。このほか、ウクライナ・エネルギー省のG.ハルシチェンコ大臣、ホルテック社でウクライナ事業を担当するR.エイワン副社長らも調印式に参加した。今回の協定を通じて、エネルゴアトム社はウクライナにおけるエネルギー供給保証の強化に向け、一層広範な協力関係をホルテック社と確立する方針である。SMRはウクライナのエネルギー部門全体の脱炭素化とエネルギーの自給促進に有効であるだけでなく、専用ハイテク機器の製造業創業にも有効だと同社は指摘。ロシアによる軍事侵攻の終了後を見据え、SMRを通じて破壊された火力発電所などエネルギーインフラの再構築を図るとともに脱炭素化も進めていく。具体的には双方の活動を調整するため、両社は同協定の下で「共同プロジェクト事務所」を設置する。石炭火力発電所の跡地等を中心に、ウクライナ全土で「SMR-160」を設置するのに必要な作業や許認可手続き等を協力して遂行。同事務所には両社のスタッフに加えて、ウクライナの国家原子力規制検査庁(SNRIU)やエネルギー省、SSTC NRS、ホルテック社のSMR事業に協力している三菱電機や韓国の現代E&C社(現代建設)のスタッフも常駐する見通しである。エネルゴアトム社のコティン総裁は、「クリーンエネルギーへの移行に有効な革新的技術の実証をウクライナはこれまで懸命に進めてきたが、エネルギーの自給や多様化を進めるには先進的な原子力技術が不可欠。原子力はウクライナの総電力需要の55%以上を賄う重要電源であることから、今回の協定を通じてウクライナは安全でクリーンかつ信頼性の高い有望なSMRを建設し、主要なクリーンエネルギー国になる」と表明。同時に、経済開発や雇用の創出、製造施設や訓練施設の建設も進め、ホルテック社の原子力技術を世界中に普及させる地域ハブとする考えを明らかにしている。(参照資料:エネルゴアトム社、ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Apr 2023
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