ルーマニアのエネルギー省は12月19日、チェルナボーダ原子力発電所で建設工事が中断している3、4号機(各カナダ型加圧重水炉:CANDU炉、70万kW)の完成に向けて、財政面等の支援策を国営原子力発電会社(SNN)に提供する法案を政府が承認したと発表した。同法案は、政府とSNNの間で「支援協定」を締結するためのもので、議会へ提出済みである。財政面の支援については、エネ省は差金決済取引(CfD)や欧州連合(EU)基金の適用などを検討している。総工費が約70億ユーロ(約9,850億円)という両炉の完成プロジェクトで、ルーマニアは3号機の運転を2030年末に、4号機は翌2031年に開始するとしており、これらの原子炉を通じて、同国はエネルギーの供給保証強化や自給率の向上を図る方針。EUが地球温暖化防止で掲げた、「2030年までにCO2排出量を1990年比で少なくとも55%削減する」という目標の達成にもつながると強調した。同国はまた、現在稼働中のチェルナボーダ1、2号機(各CANDU炉、70万kW級)で総発電量の約20%を賄っているが、3、4号機が完成すればこの数字は倍近くの36%に上昇するとエネ省は指摘。原子力部門では新たな雇用が創出され、国内サプライチェーンが活性化される。融資等も受け易くなることから、立地地域の経済効果も大きいと指摘している。チェルナボーダ3、4号機は1980年代半ばに本格着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊により、進捗率がそれぞれ15%と14%のまま建設工事が停止した。これらを完成させるという政府決定を受け、SNNは2009年にプロジェクト企業を設立したものの、同社への出資を約束していた欧州企業6社は経済不況等によりすべて撤退した。2015年には、中国広核集団有限公司(CGN)がこの計画に協力するためSNN社と覚書を交わしたが、その後に米国とルーマニアの協力関係が進展したことから、CGNとの協力は打ち切られている。米国とルーマニアの両政府は2020年10月、両炉の完成プロジェクトも含め、ルーマニアの民生用原子力発電部門の能力拡充と近代化に米国が協力するため、政府間協定(IGA)を締結。この協定に基づき、米輸出入銀行(US EXIM)は今年11月、同プロジェクトに準備作業等を提供する契約について、最大30億5,000万ドルの融資を提案するとルーマニア側に伝えている。今回の法案でルーマニア政府は、政府保証も含めた複数の財政支援策を財務省が取ると表明。担当省であるエネ省もCfDの実施を進めていくほか、EUが東欧の加盟10か国に提供している「近代化基金」((EUの対象10か国がエネルギー関係の温室効果ガス排出削減目標を達成できるよう、ECと欧州投資銀行が協力して、エネルギーシステムの近代化や効率性の改善支援を行うための基金))を3、4号機の建設と運転に適用する対策を進める。また、輸送・インフラ省を通じて、政府は4基分の冷却水をドナウ川から確保するための措置を講じる。さらに、政府が約6割出資している送電システム事業者のトランスエレクトリカ社に指示を出し、3、4号機の起動日までに国内送電網への接続準備を整えるとしている。SNNが3段階で進めている両炉の完成プロジェクトは現在、約24か月間をかけた第一段階にあり、傘下のエネルゴニュークリア(EN)社がプロジェクト企業として事業を展開していけるか、資産や収益などの現在価値を算出する業務や、EPC(設計・調達・建設)契約の締結に向けた準備作業を実施中。第二段階では、18~24か月の間に機器サプライヤー関係の市場分析やエンジニアリング作業を実施し、プロジェクトの実行可能性を再評価する。「最終投資判断」を下した後は、69~78か月の第三段階に入り、実際の建設工事や原子炉の起動を行うことになる。(参照資料:ルーマニア政府の発表資料(ルーマニア語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Dec 2022
1901
米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は12月20日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」(出力30万kW)を英国の包括的設計審査(GDA)にかけるため、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)に申請書を提出したと発表した。規制当局の実際の審査に先立ち、BEISは同審査を受ける能力が設計者に備わっているか確認するため、最大4か月をかけて初期スクリーニングを実施すると見られている。GDAは英国内で初めて建設される原子炉設計の事前認証審査で、審査項目は土木建築から原子炉化学まで17の技術分野にわたる。安全性とセキュリティ面については原子力規制庁(ONR)が、環境影響面については環境庁(EA)が担当し、対象設計が英国の基準を満たしているか評価。最終承認までの所要期間は約5年で、これまでにフラマトム社製の「欧州加圧水型炉(EPR)」、ウェスチングハウス社製「AP1000」、日立GE社製の英国版「ABWR」、中国広核集団有限公司(CGN)を中心とする中国企業の英国版「華龍一号(HPR1000)」が承認を受けている。BEISはまた、2021年5月にGDAの審査対象として、SMRその他の先進的原子炉技術を含めると表明した。これを受けて、ロールス・ロイスSMR社は同年11月、同社製SMRのGDA申請書をBEISに提出。ONRとEAは今年3月にBEISから要請を受け、同設計のGDAを開始している。英国では、2050年までに国内の発電システムから温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ化することを目指しており、原子力発電についてはエネルギー供給保証の観点からも、この年までに2,400万kWを配備する目標が掲げられている。GEH社は、英国がこれらの目標を達成する上で「BWRX-300」は理想的な炉型だと明言。英国内で複数の「BWRX-300」を建設すれば、目標達成に向け大きく前進するとの認識から、同社はグローバルな環境事業を展開する米ジェイコブス社から許認可手続き関係の支援を受けながら、GDAの申請準備を進めてきた。「BWRX-300」の建設に関しては、カナダと米国でも予備的設計審査が進展中で、カナダ・オンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション社(OPG)は今年10月末、同州南部のダーリントン原子力発電所で早ければ2028年にも同炉を完成させるため、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に建設許可を申請した。同じくカナダのサスカチュワン州のサスクパワー社も今年6月、初号機建設にともなう規制面や建設・運転面のリスクを軽減するため、州内で2030年代半ばまでに建設するSMRとしてOPG社と同じ「BWRX-300」を選択している。また、ポーランド最大の化学素材メーカー、シントス社の傘下企業と最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社は、折半出資の合弁事業体「オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社」を通じて「BWRX-300」の建設に向けた活動を展開中。同社は今年7月、「BWRX-300」について、予備的な許認可手続きの一つである「包括的(評価)見解」の提示を同国の国家原子力機関(PAA)に申請している。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Dec 2022
2564
フィンランド政府が株式の過半数を保有するエネルギー企業のフォータム社は12月15日、スウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の建設機会を探るため、スウェーデンのプロジェクト開発企業であるシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next: KNXT)社と了解覚書を締結したと発表した。フォータム社は今年10月、フィンランドとスウェーデンの両国で、大型炉やSMRなど新たな原子力発電所の建設に向けた実行可能性調査(FS)を2年計画で実施すると発表。KNXT社との覚書はその一環であり、スウェーデンで商業面や技術面、社会面の新設要件を特定するFSの実施に協力して取り組んでいく。両社の発表によると、スウェーデン初のSMRを稼働させる時期については、現状では禁止されている新たなサイトでの原子炉建設や10基までに制限されている運転中原子炉の基数など、法制面や許認可関係の制限事項がどの程度撤廃されるかにかかっている。地球温暖化への対応策として、フォータム社はクリーン電力への需要が今後数十年間で大幅に高まると予想。スウェーデン政府が掲げた温暖化防止目標を達成するには、CO2を排出しない電源の大規模な拡大が求められており、産業界からはSMRの持つ可能性に期待が高まっていると指摘している。フォータム社は、SMRであれば産業界や各自治体に価格の安定した無炭素な電力や熱、水素を提供できると考えており、新たな原子力発電所を風力発電設備とともに建設していくことは、地球温暖化への対抗手段になると強調。同社とKNXT社の異なる能力を生かし、互いに補い合ってSMR建設を進めていきたいと述べた。なお、フォータム社は今回の発表に先立つ今月8日、同FSにおける活動の一部として、フランス電力(EDF)と協力するための枠組み協定を締結した。EDFは2019年9月、原子力・代替エネルギー庁(CEA)などとの協力により、実証済みのPWR技術とモジュール方式を取り入れたSMR「NUWARD」(電気出力34万kW)を開発したと発表。仏フラマトム社らが開発した欧州加圧水型炉(EPR)の建設を欧州全土で進めつつ、NUWARDについても2030年から実証プラントの建設に取り掛かる計画である。フォータム社は先進的原子炉建設に関するEDFのこのようなアプローチも取り入れて、北欧で新たな原子力発電所の建設機会を探る方針である。フォータム社はまた、このFSの一環で先月、ヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン社と、SMRの建設に向けた協力の可能性を模索すると発表した。ヘレン社は同市内のプラントで熱や電力を生産・供給しており、無炭素な熱電併給が可能なSMRは注目に値すると述べている。一方のKNXT社は今年3月、スウェーデンで複数のSMRを可能な限り迅速に建設するため、米国でSMRを開発中のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と了解覚書を締結している。KNXT社は、環境保全技術のスタートアップ企業であるシャーンフル・フューチャー(Kärnfull Future)社の100%子会社であり、KNXT社のC.ソーランダーCEOはフォータム社について、「稼働率の高いロビーサ原子力発電所を運転するなど、原子力関係の優れた知見を幅広く有している」と評価。同社との協力を通じて、安価でより良い総合的な解決策を顧客に提案できるとしている。(参照資料:フォータム社、シャーフル・ネキスト社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Dec 2022
2072
ポーランドのPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)は12月15日、最初の大型炉発電所の採用炉型であるウェスチングハウス(WH)社製「AP1000」の建設について、細かな取り決め事項でWH社と合意したと発表した。同国政府は先月、最初の3基、375万kW分の採用炉型としてAP1000を選定しており、今回の枠組み合意はその具体化の手続きとなる。建設プロジェクトの準備作業の概要を定めたもので、両社は今後のエンジニアリング・サービス契約締結に向けて、発電所のレイアウトなど初期段階の設計作業のほか、WH社が提供する許認可手続き関係の支援や建設サイトでのサービス業務、資機材等で合意。次の段階では詳細作業や商業契約に進む方針で、AP1000発電所の設計開始契約については、来年半ばにも別途結ぶとしている。ポーランドの改訂版「原子力開発計画」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万kW~900万kW建設することになっている。ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の子会社であるPEJ社は2021年12月、最初の原子力発電所の最も有望なサイトとして、バルト海に面した同国北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を選定。今年に入っては、政府の環境保全管理局に建設プロジェクトの環境影響声明書(EIS)を提出しており、現時点では2026年に初号機の建設工事を開始し、2033年に完成することを目指している。AP1000は第3世代+(プラス)の設計として、欧州加圧水型炉(EPR)と同様に稼働実績があり、中国で2018年以降に世界初のAP1000が4基運転を開始したほか、今年になって新たに2基が着工した。米国でも2013年から2基が建設中であり、ウクライナでは合計9基のAP1000建設が決まっている。同設計の特長として、WH社は本格的な受動的安全炉であることや、モジュール方式で建設可能な点などを挙げている。今回、WH社のD.ダーラム・エネルギーシステム担当社長とPEJ社のT.ステピン社長が協力合意文書に調印。調印式には、ポーランドのA.モスクヴァ気候環境相と戦略的エネルギーインフラを担当するM.ベルゲル政府全権委員、米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使などが同席した。ポーランド政府のベルゲル委員は、「WH社の炉型を選定した際、M.モラビエツキ首相が記者会見で強調していたように、ポーランドが経済面でさらなる成長を遂げるには安価でクリーン、安定した電力供給が不可欠。その意味で原子力を選択したことは当然の結果」と指摘。原子力発電所によってポーランドはロシアなどからの化石燃料を必要としなくなり、国家のエネルギー供給保証を速やかに強化できると述べた。米国のブレジンスキー大使は、「今回の枠組み合意により、ポーランドは信頼できるパートナーから安全で信頼性の高い原子力エネルギーを得るという目標の達成に向け大きく前進した」とコメント。両国間協力の主要な柱でもあるこの合意により、ポーランドはCO2の排出量を削減しながら、エネルギーの供給を一層確実にすることができると指摘した。(参照資料:PEJ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Dec 2022
2135
国際原子力機関(IAEA)は11月27日から12月8日にかけて、フィンランドで建設中の世界初となる使用済燃料の深地層最終処分場に「アルテミス(=ARTEMIS: 放射性廃棄物・使用済燃料管理、廃炉、除染に関する総合レビューサービス)」ミッションを派遣。12月9日にレビュー結果を取りまとめ、同国の取り組みを高く評価した。同処分場の建設工事は、原子力発電事業者のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)とフォータム社の共同出資企業であるポシバ社が、2016年末からユーラヨキ自治体のオルキルオトで進めており、現時点で2025年頃に操業開始できる見通し。同社はすでに2021年12月末、同処分場を2024年3月から2070年末まで操業するための許可を政府に申請済みである。IAEAはフィンランド政府の要請に基づいて、加盟各国の専門家から成るアルテミス・チームを同処分場に送り、12日間にわたって建設工事や操業の準備状況などを審査。同チームはまた、フィンランドで原子力発電問題を管轄する雇用経済省、社会福祉保健省、放射線・原子力安全庁(STUK)の幹部らと会談したほか、TVOやフォータム社傘下の熱電供給企業、ポシバ社、フィンランドVTT技術研究センター、ヘルシンキ大学の関係者とも会合を持った。アルテミス・チームは審査に際し、地球温暖化の防止目標達成に向けたフィンランドの国家戦略の中に、後の世代や環境を守れる方法で放射性廃棄物を安全に管理することが含まれている点に注目。今回のミッションに参加した米原子力規制委員会(NRC)のJ.タッパート・チームリーダーは、「使用済燃料の深地層処分場建設計画も含め、フィンランドは国家戦略を効率的に実行している」と評価した。その上で、「IAEAの安全基準や技術的ガイダンスに基づいて、国際的な専門家が独立の立場で評価と助言を行うこのピア・レビューを通じて、我々はフィンランドが約束した安全で効率的な放射性廃棄物管理プログラムの実行状況をタイムリーに確認できた」と述べた。また、フィンランド政府が今後も責任を持って、使用済燃料その他の放射性廃棄物の安全な管理政策を推進していけるよう、同チームは以下の点を勧告している。フィンランド政府が放射性廃棄物に関する現行の複雑な管理・規制を簡素化する際、法制面の矛盾が生じないよう改善する。フィンランド政府は、放射性廃棄物に関する現行の政策や戦略が同国の将来の地球温暖化対策やエネルギー戦略に対しても適切なものになるよう、引き続き評価を行っていく。フィンランド政府は、放射性廃棄物の管理に関する国家プログラムの管理・運営に際し、必要となる財源の評価を随時実施する。雇用経済省でエネルギー問題を担当するL.ヘイキンヘイモ次官は、今回のIAEAミッションについて、「提示してくれた勧告や将来のための貴重な示唆により、我々の放射性廃棄物管理政策は一層進め易くなる」と指摘。「ポシバ社の深地層最終処分場に世界初の操業許可を与える際は、特に重要になる」と強調した。同ミッションの最終報告書は、約2か月後にフィンランド政府に提出される予定である。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Dec 2022
2512
フランスの検査認証企業であるビューロー・ベリタス(Bureau Veritas)社の12月14日付発表によると、同社と米国の原子力技術デベロッパーであるThorCon社は、インドネシアでThorCon社製溶融塩炉「ThorCon」(電気出力25万kWのモジュール×2基)を搭載したバージ(はしけ)の実証・建設に向けて協力することになった。具体的にビューロー・ベリタス社は、同炉に適用される安全基準やコードなどを特定し、その適用にともなうリスクの評価と取り組み方法等についてThorCon社を支援。少なくとも約3年をかけて、技術の認定プロセスを完了する。その後は実際に建設する可能性を探るため、さらに2年間で産業利用に関する実行可能性を評価するとしている。ThorCon社はこのバージの実証を行い最終的に設置する地点について、すでにインドネシアの国営電力(PLN)と原子力規制庁(BAPETEN)、およびスマトラ島の東方沖に位置するバンカ島とビリトゥン島(バンカ・ビリトゥン州)の州政府と協議中。船体に溶融塩炉を組み込んだバージは設置点の浅瀬まで引き船で曳航され、そこで送電網に接続、主に近隣地域の電力需要を満たすことになる。インドネシアは同炉で多量の電力を発電し、信頼性の高い低炭素エネルギーへの移行を図る考えだ。インドネシアでは電力需給のひっ迫等を理由に、1980年代に原子力発電の導入が検討されたが、建設予定地における火山の噴火や地震の可能性、福島第一原子力発電所事故などが影響し、100万kW級大型炉の導入計画はこれまで進展していない。一方、初期投資の小ささや電力網への影響軽減等の観点から、中小型炉への関心は維持されており、インドネシア原子力庁(BATAN)は2018年3月、大型炉導入の前段階として小型高温ガス炉(HTGR)を商業用に導入するため、熱出力1万kWの実証試験炉の詳細工学設計を開始している。ThorCon社は世界第4位の人口を擁するインドネシアについて、電力需要が今後も大幅に増加すると予想。このため、低コストで出力調整可能な無炭素エネルギーが緊急に必要な東南アジアで、同社の技術を最初に実現する国としてインドネシアを選定した。電力需要の増加を満たす実用的な対策を東南アジアに提供し、世界的な温暖化問題の解決に貢献したいとしている。ThorCon社の資料によると、同社は2018年にインドネシアのエネルギー省と覚書を交わし、出力50万kWの溶融塩炉の実証炉建設に関する実行可能性調査の実施で合意している。エネ省は2019年に国営電力会社とともにこの調査を完了し、実証炉の安全性と経済性および送電網への影響等を検証済みである。同社はまた、今年2月にインドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)と原子力分野の研究開発と技術革新、中でもモジュール式溶融塩炉の開発に関する協力で覚書を締結。7月には、将来の溶融塩炉建設に向けて両者が合意したことを明らかにしていた。(参照資料:ビューロー・ベリタス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Dec 2022
2361
仏フラマトム社は12月8日、英国サフォーク州でサイズウェルC(SZC)原子力発電所(欧州加圧水型炉:EPR×2基、各167万kW)の建設を計画しているEDFエナジー社の子会社NNB Generation(SZC)社(NNB SZC)と、正式な契約に先立ち大まかな枠組みで合意したと発表した。独シーメンス社とともに1990年代からEPR設計の開発に携わったフラマトム社は、すでに2021年からSZC計画関係の作業を請け負っており、英国政府が一部出資するプロジェクト企業であるNNB SZC社との今回の枠組み合意は、このような実績、および同社がEDFエナジー社のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(EPR×2基、各172万kW)建設プロジェクトで提供している様々なサービスの実績に基づいている。SZC計画について今後、最終投資判断(FID)が下されれば、フラマトム社はNNB SZC社と主契約を結ぶ予定である。フラマトム社のB.フォンタナCEOは今回合意に至った理由として、英国政府が先月末、この建設プロジェクトに対し6億7,900万ポンド(約1,136億円)の直接投資を決め、同等の追加投資を行うフランス電力(EDF)とともに同プロジェクトを50%ずつ保有することになったことを挙げた。英国政府は今後、NNB SZC社と協力して同プロジェクトに出資する第三者を新たに募る方針だが、同CEOは「財政支援等の協力が政府から得られることになり、EDFエナジー社はSZC計画を前進させることができるし、当社としてもこの契約により、英国に低炭素な新世代の原子力発電所を提供していく方向性を再確認した」と述べた。 今回の枠組み合意の下で、フラマトム社は原子力蒸気供給システム(NSSS)の製造や計装制御(I&C)系の劣化管理、初期段階のエンジニアリングや資機材調達などを行う予定。また、長納期鍛造品の製造準備など、2021年以降すでに実施済みの作業についてもカバーしていく。フラマトム社によると、SZC発電所の2基はHPC発電所と同型設計になるため、リスクの最小化やコストの軽減、建設スケジュールの明確化などで大きな利点がある。HPC計画の経験を反映させることにより、後続のEPRプロジェクトは設計や建設、サプライチェーン等の面で効率化が図られ、このように大規模な建設プロジェクトを確実に管理できるとしている。(参照資料:フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Dec 2022
2243
オランダの原子力規制当局である原子力安全・放射線防護庁(ANVS)は12月9日、同国で新たに建設する原子炉2基のサイトとして、政府が閣僚会議で既存のボルセラ原子力発電所(PWR、51.2万kW)の立地自治体を指定したと発表した。ANVSによると、これは気候・エネルギー省のR.イエッテン大臣が明らかにしたもの。ボルセラ発電所には既存の原子力インフラがすでに存在するほか、物理的スペースも十分あることから新設に最適と判断したと説明。数年後に閉鎖が予定されているボルセラ発電所の運転継続についても、実行可能性を調査すべきだとしている2021年3月に同国で発足した連立政権の4党は、2040年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指しており、同年12月に4党が合意した2025年までの政策方針のなかでは、国内唯一の原子力発電設備であるボルセラ発電所の運転を長期に継続するとともに、政府の財政支援により新たに2か所で原子力発電所を建設する方針を提示。原子力発電所の新設にともなう予算措置として、2025年までに合計5億ユーロ(約726億円)を計上するほか、2030年までの累計予算として50億ユーロ(約7,260億円)を確保する考えを表明していた。政府による今回の決定案は、気候・エネルギー相が議会の下院議長に提出した書簡の内容に基づいており、最終決定するまでには時間を要する見通し。同書簡によると、新設する2基は第3世代+(プラス)の原子炉となる予定で、出力は各100万~165万kW。2基合計で300万kW程度を想定しており、設備利用率90%で運転した場合の発電量が240億kWhになることから、2035年までに完成すれば、現在約3%の原子力発電シェアを9~13%に増大することができる。同相は第4世代の原子炉設計も検討したものの、本格的に市場に出るのが2040年以降にしか見込まれず、初号機特有の課題に直面する可能性があると指摘。国内の電力供給システムで多様化と安定化を図り、CO2排出量のゼロ化を目指すには、ほかの国ですでに建設されている第3世代+の原子炉を建設するのが最短の道であり、スケジュールやコストを見積もる上でも現実的だと表明している。オランダで原子炉を新設するには、その建設と起動で別個に許認可を取得する必要があり、いずれの場合もANVSが申請書を審査し、この計画が原子力法と技術的な安全要件すべてに適合しているか確認する。また、国民が許認可プロセスに参加する機会も設けられており、ANVSの暫定認可に対して環境影響面等について懸念表明することが可能である。ボルセラ発電所の運転期間延長一方、1973年に運転開始したボルセラ発電所の現行の運転認可は2033年末まで有効だが、それ以上運転を継続するには原子力法の改正が必要になる。また、運転事業者のEPZ社は、長期運転にともなう国際的な基準や国内の技術的要件すべてを同炉が満たしていることを実証し、現在の運転認可の変更をANVSに申請しなければならない。気候・エネルギー相は今回の書簡の中で、「ボルセラ発電所の運転を2033年以降も継続した場合、CO2排出量の大幅な削減が期待できる」と述べており、少なくとも新設炉が完成するまでのつなぎとして維持することは重要だと指摘。運転継続に向けた協議を行うため、EPZ社を始めとする関係者と基本合意書を交わしたことを明らかにしており、実行可能性調査の実施経費を支援する用意があることも明記したとしている。EPZ社は同日、オランダ政府が新たな原子炉建設に向けて動き出したことを歓迎すると表明しており、既存の原子力発電所の運転期間延長と同様に、クリーンエネルギーに移行する上で重要だと指摘。原子力は地球温暖化の防止目標を達成しつつ、拡大する電力需要を満たし、化石燃料への依存を減らす上でも大きく貢献すると強調している。(参照資料:気候・エネルギー相の議会宛て書簡、ANVSの発表資料①、②(オランダ語)、EPZ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Dec 2022
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米国のBWXテクノロジーズ(BWXT)社は12月7日、国防総省(DOD)が軍事作戦用に建設を計画している米国初の可搬式マイクロ原子炉の燃料として、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を3重に被覆した燃料粒子(TRISO)の製造をバージニア州リンチバーグの施設で開始したと発表した。BWXT社は、バブコック&ウィルコックス(B&W)社が2015年に分社化した原子力機器・燃料サービスの企業で、米国政府の原子力事業にも対応。同社が開発した第4世代の先進的高温ガス炉(HTGR)は今年6月、DODのマイクロ原子炉の実証計画である「プロジェクトPele」で建設する電気出力0.1万~0.5万kWの原型炉として複数候補の中から選定され、2024年までにエネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)内に設置される予定。「プロジェクトPele」のマイクロ原子炉では、標準サイズのコンテナで輸送可能であること、防御力の低い化石燃料輸送の削減などを目指しており、災害への対応/復旧や遠隔地域における発電等で電力を供給することを想定している。同プロジェクトの非営利性に鑑み、DODの戦略的能力室(SCO)はマイクロ原子炉の建設や実証実験ではエネルギー省と連携し、その権限下でプロジェクトを進める方針。同プロジェクトでBWXT社は、同社とSCOの契約を実行・管理するINLから3,700万ドルの交付を受け、「プロジェクトPele」の原型炉やTRISO燃料を製造する。BWXT社はまた、その他の先進的原子炉や、米航空宇宙局(NASA)が火星の有人探査で使用する先進的原子炉にも、特別な被覆を施した燃料を提供する予定である。同社のTRISO燃料製造施設は現時点で唯一、HEUの保有と処理を許可された民間施設だが、同社は2020年7月、DODとNASAで今後必要になるTRISO燃料の供給に向けて、既存のTRISO燃料製造ラインの改造契約と、製造能力を拡大するための契約をINLから獲得。今年1月にはその修正契約に基づいて、DODの「運用エネルギー性能向上基金(OECIF:Operational Energy Capability Improvement Fund)」とNASAから支援金を受領、TRISO燃料の製造能力を拡大していた。DOEはTRISO燃料について「地球上で最も耐久性に優れた燃料」と評価、エネルギー密度の高い同燃料の粒子は高温に耐え、先進的小型原子炉の運転を可能にすると指摘した。計画では、米国政府が保有する高濃縮ウラン(HEU)を希釈してHALEU燃料に変え、BWXT社のリンチバーグ施設でTRISO燃料を製造する。DOEのK.ハフ原子力担当次官補は、「次世代原子炉の燃料としてTRISO燃料は理想的であり、米国がクリーンエネルギーへの移行を成し遂げるにも不可欠だ」と表明。DOEが数十年にわたって投資してきた同燃料が、この10年以内に建設される先進的原子炉の生産エネルギーとなり、安全面で優れたパフォーマンスを発揮することを期待すると述べた。BWXT社のR.ゲベデン社長兼CEOは、「優れた性能を持つ先進的な原子燃料によって、次世代原子炉の実現が可能になる」と強調。DODの「プロジェクトPele」およびNASAの宇宙探査用に、本格的なTRISO燃料およびその他の被覆燃料の製造が開始できたことは栄誉であると述べた。(参照資料:BWXT社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Dec 2022
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米サザン社の子会社であるジョージア・パワー社は12月7日、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で建設している4号機(PWR、110万kW)で常温水圧試験が完了したと発表した。先行する3号機(PWR、110万kW)の建設工事では、2021年7月までに温態機能試験が完了し、今年10月に燃料を装荷。米国で約30年ぶりの新設原子炉として、2023年第1四半期の送電開始を目指している。4号機も同じく2023年の第1四半期末までに、温態機能試験を開始する見通しである。ボーグル3、4号機では米国で初めて、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)設計「AP1000」を採用しており、それぞれ、2013年3月と11月に着工した。同じくAP1000を採用し、ほぼ同じ時期にサウスカロライナ州でスキャナ社と州営電力が着工したV.C.サマー原子力発電所2、3号機(各110万kW)は、2017年3月のWH社の倒産申請を受けて中止となったが、ボーグル増設計画ではサザン社の子会社であるサザン・ニュークリア社が、WH社からプロジェクト・マネジメントを引き継いで建設工事を継続してきた。4号機の常温水圧試験では、冷却系が設計通りに機能するかを確認するため、建設チームが11月初旬に冷却系の溶接部や接合部、配管その他機器について設置状況を点検。高圧環境下でも圧力システムから漏れが生じないことや、受動的安全系が正常に機能することを確認した。試験に先立ち、現場では炉内構造物やベッセル・ヘッドのほかに、温態機能試験で使用する流量制限装置を設置している。また、同じ時期にタービンの回転試験を初めて実施しており、タービンが正しく組み立てられていることや、付属の潤滑油供給システムが適切に機能することなどを確認した。3、4号機の運転は、所有権を共同保有している同社とオーグルソープ電力、ジョージア電力公社(MEAG)の子会社、およびダルトン市営電力に代わって、サザン・ニュークリア社が受け持つ予定である。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Dec 2022
1895
欧州連合の司法裁判所(CJEU)は11月30日、欧州委員会(EC)の判断の取り消しを求めたオーストリア政府の異議を、ルクセンブルクにあるCJEUの第一審裁判所が却下したと発表した。ECは数年前、ハンガリーのパクシュ原子力発電所Ⅱ期工事に対する同国政府の国家補助を承認する判断を下していた。パクシュ発電所(ロシア型PWR×4基、各50.6万kW)はハンガリーの総電力需要の約50%を賄っており、同国政府は経年化が進んだこれらを少しずつリプレースしていくため、2014年1月にロシアの技術でⅡ期工事の5、6号機(各120万kW級)を建設すると発表。その翌月、ロシアからの長期の低金利融資で、総工費の約8割に当たる約100億ユーロ(約1兆4,400億円)を調達することで両国が合意したことを明らかにしており、同年12月には、ロシア国営のエンジニアリング企業であるNIAEP社とEPC(設計・調達・建設)契約を含む3つの関連契約を締結した。ECは、ロシアのこの融資を原資とするハンガリー政府の資金調達がEU競争法の国家補助規則に準拠しているかにつき、2015年11月から詳細な審査を実施した。その結果として、2017年3月には、同プロジェクトには国家資金による財政支援が含まれるものの、特定の経済活動の促進を目的とした投資補助であり、EU域内市場における共通利益を一定以上損なうような取引上の悪影響がない限り、同市場に適合すると表明。ハンガリー政府も、市場における競争原理の歪みの制限対策を実施すると誓約したことから、ECは同プロジェクトへの補助を承認していた。これに対して、ハンガリーの隣国であるオーストリアは2018年2月、入札を行わずにNIAEP社に発注されたこのプロジェクトは公的調達関係のEU指令に抵触しており、それにも拘わらず、ECがハンガリー政府の補助は域内市場に適合するとしたことは違法であると提訴。ロシア企業との直接契約はこの補助と緊密に結びついており、ECは公的調達に関するEU指令に基づいて国家補助の問題を検証すべきと訴えていた。CJEUの第一審裁判所は今回、ロシア企業との契約がハンガリー政府の補助政策に先んじて結ばれたことから、国家補助の目的と緊密に結びついてはいないと指摘。公的調達に関するEU指令にも抵触していないため、オーストリアの主張とは異なりECの判断は正当化されるとした。同裁判所はまた、ハンガリー政府の補助が域内市場の競争原理を歪め、自由化されたEUの電力市場から再エネ事業者を締め出す結果をもたらすと指摘された点について、「EU加盟国は自国のエネルギー構成を自由に決めることができ、ECにはその他の代替エネルギーに予算配分するよう要求する権限はない」と説明している。(参照資料:欧州司法裁判所の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Dec 2022
1766
米ニュースケール・パワー社は12月5日、同社製の小型モジュール炉(SMR)である「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の燃料取扱い装置と貯蔵ラックの設計契約を仏フラマトム社に新たに発注したと発表した。将来的にはこれらの機器をフラマトム社が製造することになっており、ニュースケール社は「SMRの機器製造とサプライチェーンの構築に向けた重要な一歩」と評価。これらの契約を通じて、ニュースケール社は顧客のスケジュールに沿って、2020年代末までにNPMを複数基備えた発電設備VOYGRの建設が可能になるとしている。ニュースケール社のNPMはPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することで出力の調整が可能。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、1モジュールあたりの出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給した。同社はまた、2021年12月に出力7.7万kWの「NPM」を複数搭載したSMR発電設備の呼称を「VOYGR」に決定。搭載基数に応じて、出力92.4万kWの「VOYGR-12」、46.2万kWの「VOYGR-6」、30.8万kWの「VOYGR-4」と名付けている。ニュースケール社によると、フラマトム社との協力関係は2014年にさかのぼり、フラマトム社はNPMのSDA取得に向けて、エンジニアリング・サービスの提供や許認可プロセスの分析等でニュースケール社を支援してきた。今回の協力拡大により、両社はVOYGRの建設と商業化をさらに進める考えだ。フラマトム社は今回の契約業務を遂行するのに際し、米ペンシルベニア州の起重機企業であるアメリカン・クレーン社、および仏オラノ社と連携する方針。これらの機器の既存設計をVOYGR設備の仕様に適応させて合理的な設計・製造方法を開発し、VOYGRの建設スケジュールを順守可能にする。燃料取扱い装置については、同社は本格的な遠隔操作機能を追加して性能強化を図るとした。また、高密度・使用済燃料貯蔵ラックの設計では、VOYGR設備独特の要件を満たすため関係技術を有するオラノ社とチームを組み、原子力産業界全体で培ってきた経験を活用するとしている。今回の契約を通じて、両社はこれまでの協力関係を一層強化しVOYGR設備の建設工事に至るまでこれを継続。世界中の多様なエネルギー需要に応えられるよう、VOYGR設備で柔軟性の高い発電オプションを売り込んでいく。また、フラマトム社としてはSMR機器の設計・製造能力をさらに向上させて、SMRを含む将来の先進的原子炉への機器・サービス提供でシェアを拡大したいとしている。(参照資料:ニュースケール社、フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Dec 2022
2208
チェコの国営電力(CEZ社)は12月2日、既存のテメリン原子力発電所で計画している同国初の小型モジュール炉(SMR)の建設準備作業として、初期の地質調査を完了したと発表した。建設サイトは正確には、テメリン発電所(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)の敷地南西部の外端に位置しており、複数の専門家が地盤のタイプや健全性を見極めるため、その状態を詳細に調査中。特別な振動発生機を使って地震波の到達速度や電気抵抗値などを計測するほか、深さ30mの調査抗も掘削して初期の調査結果を検証、地盤底土の組成なども分析する。CEZ社は現在、2015年5月の「国家エネルギー戦略」とこれをフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づいて、既存のドコバニ原子力発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)で大型原子炉の増設計画を推進中。ドコバニⅡ原子力発電会社(EDU Ⅱ社)は今年3月、最初の増設1基(120万kW級)についてベンダーの競争入札を開始しており、11月30日には招聘した3社から最初の入札文書を受領している。CEZ社は大型炉とSMRの建設計画を並行して進めている。テメリン発電所におけるSMRの初号機建設は、他の場所でSMRを建設する際のモデルケースとなる予定で、国内の老朽化した火力発電所をSMRでリプレースとすると強調している。CEZ社は、テメリン発電所が立地する南ボヘミア州の「原子力パーク」プロジェクトとしてSMR建設を推進しており、同社と傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)、および南ボヘミア州政府は今年5月、共同で同プロジェクトを始動すると表明。これら3者は、プロジェクトの準備作業を調整する「南ボヘミア原子力パーク会社」の株主となり、SMR分野の研究開発と建設準備を実施している。採用するSMRについて、CEZ社はこれまでに米国のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、ホルテック社のほか、英国のロールス・ロイス社、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)とSMR関係の協力覚書を交わした事実に言及。米ウェスチングハウス社とは、同プロジェクトについて集中的な協議を実施中であることを明らかにしている。CEZ社のT.プレスカッチ理事は、「(地質調査を実施中の地点が)SMR建設に最適だとの確信はあるが、建設前に地盤の状態やその他の影響ファクターを正確に把握しておかねばならない」と表明した。南ボヘミア州のM.クバ知事は、SMRについて「単にクリーンで安全な電力や熱を生産できるだけでなく、欧州の将来的なエネルギーミックスを支えることは確かだ」と指摘。SMRに加えて、人材の訓練センターも設置する機会にしたいと抱負を述べた。(参照資料:CEZ社の発表資料(チェコ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Dec 2022
2209
米ARCクリーン・テクノロジー社の11月28日付発表によると、カナダ・ニューブランズウィック(NB)州の北部に位置するベルドゥーンの港湾管理局(BPA)がグリーン・エネルギー・ハブ化を目指し、ARC社製小型モジュール炉(SMR)の導入でプロジェクト開発企業のクロス・リバー・インフラ・パートナーズ社(CRIP)と協力することになった。BPAとCRIPはARC社カナダ法人による提案を受け入れたもので、同社が開発したナトリウム冷却・プール型高速中性子炉のSMR「ARC-100」(電気出力10万kW)で、電力と熱を生産する方針。ARC社は、BPAがNB州北部地域の経済成長を促す目的で計画しているクリーンエネルギーの特別開発地区「グリーン・エネルギー・ハブ」で同炉の建設を進め、同地区の様々な産業ユーザーのエネルギー源として活用する。今後の実行可能性調査や環境影響面の承認、カナダ原子力安全委員会(CNSC)による許認可手続き等を経て、2030年~2035年頃の商業運転開始を目指している。「グリーン・エネルギー・ハブ」構想は、BPAが最近公表した「2022年~2052年のマスター開発計画」における主要部分であり、BPAとCRIPはすでに今年8月、同地区で輸出用のアンモニア燃料を水素から製造する施設の建設で合意した。この施設ではCO2を排出しないエネルギーを動力として用いる予定であり、SMRの建設を加えることで同地区には地元やカナダ、および世界の市場にも貢献する新たな能力が備わる。同SMRはまた、水素の製造能力拡大や先進的製造業、金属製造業など、ベルドゥーンを本拠地とする産業のエネルギー源としても活用される。NB州では州営電力であるNBパワー社が2018年、同社のポイントルプロー原子力発電所敷地内で第4世代のSMRの実証炉を2種類建設するというプロジェクトを開始。この計画は、同州を含むカナダの4州が今年3月に策定した「カナダのSMR開発・建設の共同戦略」にも明記されており、ポイントルプローでの「ARC-100」建設は2種類のうちの1つ。2029年の運転開始が見込まれている。一方、ARC社が今回ベルドゥーンで提案した建設プロジェクトはNB州の経済規模拡大に貢献するだけでなく、同社のSMR技術が産業用エネルギー源として直接利用が可能であることを示す規範にもなる。同社のカナダ法人のB.ラベーCEOは、「ARC-100」が実証済みの技術と固有の安全性を備えているほか、モジュール式の低コストな建設と運転が可能である点を強調。その上で、「ベルドゥーンでの採用、および産業用として選定されたのは当然のことであり、NB州は『ARC-100』でカナダやその他の国のSMR建設でリーダー的地位を獲得する」と指摘した。 NB州のM.ホランド天然資源・エネルギー開発相も、同様の可能性を表明しており、「第4世代のSMR開発を牽引する当州としては、ARC社がベルドゥーンの『グリーン・エネルギー・ハブ』で、産業用のクリーンエネルギーを生産するSMRをカナダで初めて建設するのが楽しみ」としている。(参照資料:ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Dec 2022
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米国で小型モジュール炉(SMR)を開発しているニュースケール・パワー社は12月1日、SMRを活用したクリーン水素の新たな製造コンセプトを共同で開発・実証するため、石油化学大手のシェル・グループに属する研究開発サービス・コンサルティング企業のシェル・グローバル・ソリューションズ(Shell Global Solutions)社、アイダホ国立研究所(INL)およびその他の関係企業と共同研究協定を結んだと発表した。協定に参加したのは同シェル社のほか、米国内でニュースケール社製SMRの初号機建設を計画しているユタ州公営共同事業体(UAMPS)と、その建設予定地であるINL、燃料電池開発企業のフュエル・セル・エナジー(Fuel Cell Energy)社、発電分野のコンサルティング・サービスを提供しているFPoliSolutions社とGSEソリューションズ社である。UAMPSは米国西部6州の地方自治体と共同組合48機関による卸売電力サービスの共同活動組織で、近年独自の「脱炭素化プロジェクト」を推進中。SMRの建設は同プロジェクトの一部であり、UAMPSは出力7.7万kWの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた「VOYGR-6」発電所(出力46.2万kW)の建設で、2029年までに最初のモジュールの完成を目指している。今回の研究協定では、同プロジェクトが地方経済に与える影響についても評価が行われる予定で、エネルギーの需給管理がリアルタイムで行われる「インバランス市場」の影響もこれに含まれるとしている。ニュースケール社によると、同社のSMRは応用性に富んだ技術であるため、様々な再生可能エネルギー源に接続された電力網を安定させる可能性がある。電力需要が高いにも拘わらず再エネの発電量が低い場合、ニュースケール社はSMRで製造したクリーン水素は貯蔵エネルギー源や、高需要時の最終製品として活用できると考えている。今回の共同研究により、プラントの熱を有効活用する「水素製造の統合エネルギーシステム(IES)」を開発する方針である。IESは熱、電力、それらの貯蔵システムを統合することで、エネルギー効率の向上と、温室効果ガスの排出低減を目指している。まさに柔軟性を有するSMRに適したシステムと言われている。ニュースケール社は「固体酸化物形電解セル(SOEC)システム」で水素を製造し、SOECの逆動作である「可逆型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)」を用いて、貯蔵した水素から発電を実施する。これにより、変動する再エネをバックアップし、電力網の脱炭素化を目指す。このため同社は、まずSMR制御室のシミュレーターを改造してIESの動作を評価、その後モデル化したSOECと可逆型SOFCを導入するとしている。ニュースケール社の説明によると、SOECで水素を製造し発電用に一定量貯蔵するには複数のNPMが必要になる。同社のJ.ホプキンズCEOは、「世界規模で脱炭素化を進めるには水素の活用が欠かせない」とした上で、「当社製SMRによる低炭素水素でその達成に貢献したい」と述べた。シェル社で研究戦略を担当するD.スミット副社長は、今回の協定について「低炭素エネルギーへの移行支援と脱炭素化技術の模索という点で、当社の目標にも合致する」と評価している。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Dec 2022
3654
チェコの国営電力(CEZ社)は11月30日、同国南東部のドコバニ原子力発電所で増設するⅡ期工事(5、6号機、各120万kW級PWR)の最初の1基について、100%子会社であるドコバニⅡ原子力発電会社(EDU II)が大手のベンダー3社から最初の入札文書を受領したと発表した。5号機建設の競争入札は今年3月に開始され、EDU II社は安全・セキュリティ面の資格審査をクリアした米ウェスチングハウス(WH)社とフランス電力(EDF)、および韓国水力・原子力会社(KHNP)を正式に招聘。ロシア国営のロスアトム社と中国広核集団有限公司(CGN)も参加を希望していたが、K.ハブリーチェク副首相が大臣を兼ねる同国の産業貿易省がこれら2社を除外した。EDU II社は今後、これらの入札文書の検討およびベンダーとの交渉を開始し、提案されている原子炉設計の技術面や商業面の妥当性を検証する。2023年9月までに最終入札文書を3社から受け取る予定で、これらの評価結果に関する報告書をチェコ政府が承認すれば、2024年にも選定ベンダーと契約を締結し、既存ユニットの隣接区域で2029年に5号機を着工、2036年の試運転開始を目指す。CEZ社は将来的に、Ⅱ期工事の2基で既存の1~4号機(ロシア型PWR、各51万kW×4基)を代替する方針。チェコ政府はそのため、この増設計画に対して今年初頭に成立した低炭素法に基づいてEDU II社に低金利融資を提供するほか、同炉が発電する電力の売買契約も交わすとしている。入札に参加した3社はこれまで、契約の獲得に向けて周到に準備を進めてきており、地元の関係企業と強力なチームを結成、ドコバニ発電所サイトを訪問するなどした。WH社の今回の発表によると、同社は原子炉建設のパートナー企業であるベクテル社と協力して、同社製の第3世代+(プラス)炉「AP1000」をドコバニ5号機として建設することを提案。その際、ドコバニ6号機とテメリン原子力発電所の増設計画についても、ベクテル社とともに請け負う提案をしている。一方のEDFは、今年6月にチェコの首都プラハにEDFの原子力支部を開設。中国で完成し、また欧州で現在建設中の「欧州加圧水型炉(EPR)」より出力の小さい、120万kW級の「EPR1200」をEDU II社に提案する方針を明らかにした。またKHNP社は、アラブ首長国連邦(UAE)への輸出に成功した、韓国製の第3世代の140万kW級「改良型加圧水型炉(APR1400)」を提案したと見られている。チェコ政府は2015年5月の「国家エネルギー戦略」のなかで、当時約30%だった原子力の発電シェアを2040年までに60%に引き上げると明記。同戦略をフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づいてドコバニ発電所の2基増設計画を進めている。同国の環境省は2019年9月にⅡ期工事建設計画の包括的環境影響評価(EIA)に好意的判断を下しており、EDU II社はこれを受けて、2020年3月に同計画の立地許可を原子力安全庁(SUJB)に申請、SUJBは2021年3月にこの許可を発給した。CEZ社は原子力発電の最大の強みとして、エネルギー・セキュリティの高さを挙げているほか、運転コストの低さや長期的な電力価格の安定性を指摘した。同社はまた、チェコの市場調査会社である「国際ビジネス研究サービス(IBRS)」が10月末から11月初旬にかけて実施した調査の結果に言及。同国では過去一年で原子力に対する国民の支持率が7%上昇し、1993年以降の最高値である72%に到達したが、この上昇は主に最近のエネルギー危機が原因だと指摘している。(参照資料:CEZ社、WH社、EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Dec 2022
2491
ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のG.シャップス大臣は11月29日、EDFエナジー社がイングランド南東部のサフォーク州で計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(167万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)の建設プロジェクトに、6億7,900万ポンド(約1,124億円)の直接投資を行うと発表した。1987年にサイズウェルB原子力発電所建設計画への投資を承認して以来、約30年ぶりのことであり、英国政府はこれにより、EDFエナジー社の親会社であるフランス電力(EDF)とともにSZC建設プロジェクトを50%ずつ保有することになる。英国政府は今後、プロジェクト企業である同社傘下のNNB Generation(SZC)社と協力して、SZC発電所の建設・運転プロジェクトに出資する第三者を募る方針。同計画では2015年10月の合意に基づき、中国広核集団有限公司(CGN)がEDFエナジー社に20%の出資を約束していたが、英国政府が出資することで、所有権の買取や税金なども含めてCGNの撤退を促すことができるとした。また、一部の報道によると、CGNはSZC計画からすでに撤退したと伝えられている。BEISの発表によると、同省のシャップス大臣は今週、「規制資産ベース(RAB)モデル」を通じて資金調達を行う最初の原子力発電所建設計画としてSZC計画を指定した。RABモデルでは資金調達コストなどが軽減されるため、現在建設中のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(172万kWのEPR×2基)計画に適用された差金決済取引(CfD)と比較して、大型原子力発電所一件あたりの運転寿命期間中に顧客(消費者)が負担する電気料金が、累計で300億ポンド(約5兆円)削減できるとしている。SZC計画ではNNB Generation社が2020年5月、国家的重要度の高いインフラ設備の建設・操業プロジェクトで取得が義務付けられている「開発合意書(DCO)」の申請書を計画審査庁(PI)に提出。BEISのK.クワルテング大臣(当時)は今年7月、PIによる審査結果等に基づき、同計画へのDCO発給を決定した。BEISのシャップス大臣は今回、SZC計画に出資することで国内の約600万世帯に50年以上にわたってクリーンで信頼性の高い電力が供給され、地元サフォーク州や英国全体で最大1万人規模の雇用が新たに創出されると指摘。このほかにも、英国がエネルギー自給を確立するための方策を複数提示しており、安価でクリーンな国産エネルギーの長期的確保に向けて、エネルギー法案を議会に提出する予定だと表明した。エネルギー関係の主要立法としては2013年以来のことになるが、これにより国内のエネルギー産業を改革してその成長を促進、エネルギー関係の民間投資も喚起する。具体的には、水素産業やCO2の回収・有効利用・貯留(CCUS)など、国産の低炭素エネルギー技術の開発に集中的に取り組み、電気料金の削減やクリーンエネルギー関係の雇用創出につなげたいとしている。シャップス大臣はまた、英国の長期的なエネルギー供給保証で、SZC発電所以降も新たな原子力発電所を継続的に建設していくため、今年4月の「エネルギー供給保証戦略」で設立を約束していた政府の新機関「大英原子力(Great British Nuclear)」を来年初頭にも立ち上げると表明した。同機関では明確な費用対効果が見込まれることを確認しつつ、開発プロセスの各段階で事業者に支援を提供。これにより、世界中のエネルギー市場における化石燃料価格の高騰から将来世代の国民を守り、クリーンで安全な電力を今後数十年にわたって供給すると強調している。同大臣によると、天然ガス価格が記録的な高値になったのはロシアのV.プーチン大統領がウクライナで始めた不法な軍事侵攻が原因であり、英国政府は国民のために国産の安価なクリーンエネルギーを確保しなければならない。このことから、「本日の歴史的な政府決定は、英国におけるエネルギー自給の強化と世界市場における不安定なエネルギー価格というリスクの回避という点で非常に重要だ」と指摘した。EDFエナジー社のS.ロッシCEOは今回の決定について、「英国政府が当社のパートナーとしてプロジェクトの準備を進めることになり、SZC計画の継続に大きな自信が付いた」と表明。HPC計画と同じ設計を採用したSZC計画はHPC計画の実績に基づいて実施されるため、一層確実なスケジュール管理やコスト見積もりが可能だと強調している。(参照資料:英国政府、EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
30 Nov 2022
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英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は11月28日、「長期エネルギー貯蔵技術(LODES)」の実証コンペの第2段階として、EDF UK(フランス電力の英国子会社)の企業連合が開発している「劣化ウランで水素を貯蔵する(HyDUS)技術」の実証プロジェクトに773万ポンド(約12億9,000万円)の支援金を交付すると発表した。この資金は、BEISが地球温暖化防止の目的で2021年3月に設置した総額10億ポンド(約1,660億円)の基金「CO2排出量を実質ゼロ化する革新的技術のポートフォリオ(Net Zero Innovation Portfolio)」が原資となる。BEISは今回、EDF UKの企業連合によるプロジェクトも含めて、合計5件の新たなエネルギー貯蔵技術のプロジェクトに合計3,290万ポンド(約54億7,000万円)を提供して、間欠性のある再生可能エネルギーの設備拡大を図り、安価なクリーンエネルギーを確保。再エネの持つ潜在的な能力がフル活用することで、英国のエネルギー供給保証も一層強化されると指摘している。EDF UKの企業連合には核融合技術の開発を牽引する英国原子力公社(UKAEA)のほか、ブリストル大学と欧州のウラン濃縮企業であるウレンコ社が参加。オックスフォード近郊にあるUKAEAのカラム科学センター内で、劣化ウランを使った水素貯蔵の実証モジュールを24か月以内に開発する計画である。EDFエナジー社は、いずれはこの技術を原子力発電所に設置して原子力の収益性を高めるとともに、輸送業や製鋼業などに広く役立てたいとしている。HyDUSではまず、余剰の無炭素電力による電気分解で水素を製造し、水素を吸蔵する劣化ウランの特性を利用してこれを貯蔵、水素が必要となった折りにそのまま使用するほか、電力需要のピーク時には再び電力に転換して使用する。貯蔵時の水素は金属水素化物の形で劣化ウランと化学的に結合しているため、安定している一方で逆の転換も可能である。HyDUS技術を考案した技術者の一人であるT.スコット教授は「UKAEAでは過去数十年にわたって水素同位体の貯蔵技術を小規模で活用しており、HyDUSはこのように確認済みの核融合燃料技術をエネルギーの貯蔵用に転換する世界でも最初の例になる」と述べた。ウレンコ社の担当者は、「当社が貯蔵している劣化ウランの商業利用により、水素経済の構築に向けた持続可能で低炭素なエネルギー貯蔵が可能になるのは誇らしいことだ」と表明している。実証コンペは、2021年3月にBEISが産業界に「関心表明」を呼びかけており、2つのコンペ・グループが長期のエネルギー貯蔵を可能にするために実施する実証プロジェクトに対し、総額約6,800万ポンド(約113億円)を提供する。1つ目のグループ(Stream 1)は、技術成熟度レベルが全9段階のうち6/7段階(技術成立性が確認できる)にあり、予算総額は約3,700万ポンド(約61億5,000万円)である。もう片方のグループ(Stream 2)は技術成熟度が4/5段階(ラボ・レベルあるいは実空間での実証レベル)で、EDF UKのプロジェクトもこれに含まれる。「Stream 2」では、第1段階のプロジェクト19件に約270万ポンド(約4億4,900万円)が提供されており、EDF UKの企業連合はそのうち約15万ポンド(約2,500万円)を受け取っている。(参照資料:英国政府①、②、EDFエナジー社、ウレンコ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Nov 2022
2909
フィンランドのフォータム社は11月25日、同社が検討中の小型モジュール炉(SMR)の建設計画について、首都ヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン(Helen)社との協力可能性調査を開始すると発表した。国有企業のフォータム社は国内でロビーサ原子力発電所を所有・運転しているが、先月17日に同国および隣国スウェーデンでの原子力発電所新設に向けて、2年計画で実行可能性調査(FS)を実施すると発表。その際、従来の大型炉のみならずSMRを建設する可能性についても、必要な技術面や経営面、規制面、政策面の要件を検証するとしたほか、近年のエネルギー市場における不確実性の増大から、企業連合の形で新設計画を進める可能性を示唆していた。今回の発表によると、両社はともにCO2排出量抑制の観点からSMRへの関心を以前から表明しており、エネルギー部門の脱炭素化を継続的に進める重要性を指摘する一方、このエネルギー移行を果たすには新しい発電技術や協力形態が必要になると説明。建設期間が短く、コストを抑えながら大容量のエネルギー生産も可能なSMRは、その他の選択肢と比較して競争力のあるエネルギー生産方式だと強調した。また、フィンランドには原子力発電と使用済燃料の処分について、専門的知見が豊富に蓄積されていると指摘した。協力可能性調査では両社が結成した調査グループが、協力の相乗効果によりどのような利益が得られるかなどを洗い出す。手始めとして、新たな原子炉建設に必要な条件を幅広く特定するが、両社の協力形態については現時点でいかなる形態も排除しない方針だと強調している。55万人以上の顧客を持つヘレン社は現在、ヘルシンキ市内の様々なプラントで熱や電力を生産している。同社は無炭素な熱や電力を同市に供給できるSMRは注目に値するエネルギーの生産方式だと述べており、フィンランド最大の地域熱供給システムの開発などでノウハウを有する同社が、原子力発電の能力を持つフォータム社と力を合わせることで生産的な協力活動が展開され、フィンランドのエネルギー自給率を上げることにもつながると述べた。SMRはまた、建設に向けた動きが世界中で急速に進展していることから、ヘレン社は欧州連合(EU)域内でその安全要件を調和させることが合理的だと指摘。両社が実施する共同調査では、SMR設計の選定や敷地の活用計画、許認可手続きなどの点で効率的な対応策を導き出す狙いがあるとした。また同国では現在、SMR関係の法令手続きが進められているため、複数の立地候補地点について調査中であるという。共同調査チームのフォータム社側代表者は、「世界のエネルギー市場が不透明な状況になるなか、新たなプロジェクトを原子力部門で進めることは、様々な協力準備活動の中で最も実現の可能性が高い」とコメント。原子力発電所の建設を可能にする協力の必須条件調査は、建設プロジェクトやパートナー企業の位置付けという点においても重要な出発点になるとの認識を示している。(参照資料:フォータム社、ヘレン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Nov 2022
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エジプト初の原子力発電所建設を担当している同国の原子力発電庁(NPPA)は11月19日、北部の地中海沿岸にあるエルダバ原子力発電所(120万kWのロシア型PWR:VVER-1200×4基)建設サイトで2号機を本格着工したと発表した。同炉の着工は、エジプトの原子力・放射線規制機関(ENRRA)が10月末日付で建設許可を発給したのにともなうもの。同サイトではすでに今年7月、エジプト初の商業炉となる1号機が着工しており、2028年の営業運転開始が見込まれている。エルダバ発電所では第3世代+(プラス)のVVER-1200を4基建設することになっており、同発電所を所有・運転する予定のNPPAは2019年3月に4基分の「サイト許可」をENRRAから取得。その後、2021年6月に1、2号機の建設許可を、同年12月には3、4号機の建設許可を申請していた。建設サイトでは19日に起工式が開催され、エジプト電力・再生可能エネルギー省のM.シャーケル大臣やNPPAのA.エル・ワキル長官、エルダバ市が属するマトルーフ行政区のK.シュイブ知事のほか、建設工事を請け負ったロシア国営の総合原子力企業ロスアトム社からA.リハチョフ総裁、プロジェクト管理を担当する傘下のアトムストロイエクスポルト社のA.カルチギン上級副総裁などが参加した。シャーケル大臣とリハチョフ総裁の二人は、2号機の原子炉建屋部分に最初のコンクリートを打設するゴーサインを出しており、同機の建設工事が主要段階に入ったことを祝福した。リハチョフ総裁は祝辞のなかで、「エルダバ原子力発電所が完成すればエジプトの社会経済面に多大な利益をもたらすだけでなく、低炭素なエネルギー社会への移行に大きく貢献する」と指摘。このことは、エジプトが今後数十年にわたって持続可能な発展を遂げられるような、強力な基盤を形成することになると強調している。(参照資料:NPPAの発表資料(アラビア語)➀、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Nov 2022
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フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は11月21日、オルキルオト原子力発電所で試運転中だった3号機(欧州加圧水型炉:EPR、172万kW)のタービン系・給水ポンプ内で10月に損傷が見つかったことから、「原因調査にさらに週数間を要するため、試運転は最短でも12月11日まで続け、営業運転開始については早ければ来年1月末になる見通しだ」と発表した。世界で初めて、第3世代+(プラス)のEPR設計を採用したOL3の建設工事は2005年に始まったものの、技術的な課題を含む様々なトラブルが発生したため、同炉が臨界条件を初めて達成したのは2021年12月のこと。今年3月に欧州初のEPRとして試運転を開始した後、9月末にはフル出力に到達しており、この時点では12月の営業運転開始を予定していた。しかし、TVOの10月18日付発表によると、同炉で保守点検作業を実施した際にタービン系の給水ポンプで内部構造物の損傷を探知。TVOは同炉の安全性に影響はないとした上で、営業運転の開始スケジュールに影響が及ぶかについては、未だ不明としていた。また、今月7日になると、TVOは4つすべての給水ポンプ内で羽根車にクラックが認められたことを明らかにしており、破壊試験で割れた羽根車のパーツをいくつかの研究所に送って、根本原因等を分析調査中であるとしていた。今回の発表でTVOは、サプライヤーであるアレバ社と独シーメンス社の企業連合からの情報として、「遅くとも12月には詳細な原因調査の最終結果が判明するので、運転開始スケジュールへの影響もはっきりする」と説明している。(参照資料:TVOの発表資料①、②、③、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Nov 2022
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米エネルギー省(DOE)は11月21日、カリフォルニア(加)州で数年後に閉鎖が予定されていたディアブロキャニオン原子力発電所(DCPP)(各PWR、約117万kW×2基)について、条件付きで「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」の初回の適用対象に認定したと発表した。これら2基の運転期間の5年延長に向けて、DOEは同プログラムから最大約11億ドルを拠出するが、最終的な金額は実額に基づいて、年ごとの提供期間の満了時に確定する。この決定により、DCPPの運転継続の道が拓かれたとDOEは指摘している。総額60億ドルのCNCプログラムは、2021年11月に成立した「超党派のインフラ投資・雇用法」の下、早期閉鎖のリスクに晒されている商業炉を救済し、関係雇用を維持するとともにCO2排出量を抑える目的で設置された。DOEが適格と認定した商業炉に対しては、認定日から4年にわたり一定の発電量毎に一定の行使価格を設定したクレジットを付与。クレジットの合計数に応じて支援金を支払う仕組みで、DOEはプログラム資金に残金がある限り2031年9月までクレジットを付与していく。DOEの発表によると、同プログラムによる初回の支援金は少し前に実施したパブリック・コメントの結果から、最も差し迫った閉鎖リスクに晒されている商業炉に優先的に交付される。2回目については、経済的理由により今後4年以内の閉鎖が見込まれる商業炉が交付対象であり、2023年1月から申請を受け付ける。DCPPの2基は年間160億kWhの電力を発電しており、加州のベースロード電源として総発電量の8.6%を賄うほか、無炭素電力では約17%を賄っている。同発電所を所有するパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)社は2016年6月、電力供給地域における需要の伸び悩みと再生可能エネルギーによる発電コストの低下から、これら2基を現行運転認可の満了に合わせて、それぞれ運転開始後40年目の2024年11月と2025年8月に永久閉鎖すると発表。2009年に原子力規制委員会(NRC)に提出していた運転期間の20年延長申請も、2018年3月に取り下げている。加州の公益事業委員会(CPUC)は2018年1月にこの閉鎖計画を承認したものの、2020年の夏に同州は記録的な熱波に襲われ、G.ニューサム知事は停電を回避するための緊急事態宣言に署名。今年も熱波と電力需給のひっ迫が懸念されたことから同様の宣言を発出しており、州議会の議員に「DCPPの運転期間を5~10年延長することは加州のエネルギー・システムの信頼性を確保し、CO2排出量を最小限化する上で非常に重要」とする法案(上院846号)の案文を配布した。この法案は今年9月にニューサム知事の署名により成立しており、PG&E社は同法の指示に従ってDOEのCNCプログラムにDCPPの適用を申請した。加州政府はまたDCPPの運転期間延長にともなう経費として、同州水資源省からPG&E社に最大14億ドル融資することを10月に承認している。DOEの今回の決定についてPG&E社のP.ポッペCEOは、「すべての加州民に信頼性の高い電力供給を保証するDCPPの運転期間延長に向けて、また一歩大きく前進した」と指摘。「今後複数年の手続きの中で連邦政府や州政府から承認を得なければならないが、米国でもトップクラスの運転実績を残してきたDCPPで安全性を確保しつつ、低コスト・低炭素な電力を引き続き州民に提供していきたい」と述べた。DOEのJ.グランホルム長官は、「米国最大の無炭素電源である原子力発電所で信頼性の高い安価な電力を提供し続けるための重要なステップ」と表明。「原子力はJ.バイデン大統領が掲げる目標--2035年までに電力部門を100%カーボンフリーとし2050年までに米国経済のCO2排出量を実質ゼロ化する--を達成する上で非常に有効であり、クリーンエネルギーに対するこのように重要な投資を通じて、原子力発電所とその電力供給地域を守ることができる」と指摘している。(参照資料:DOE、PG&E社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Nov 2022
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COP会場内の特設会議場で11月16日、「低炭素社会における原子力の役割」をテーマに、米原子力エネルギー協会(NEI)、カナダ原子力協会(CNA)、世界原子力協会(WNA)、欧州原子力産業協会(Nucleareurope)、日本原子力産業協会など原子力産業界6団体が主催するパネル・セッションが開催された。NEIのキャロル・ベリガン・エグゼクティブ・ディレクター、CNAのジョン・ゴーマンCEO、WNAのサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長、Nucleareuropeのイブ・デバゼイユ事務局長らが登壇した。セッションでは、原子力の役割の中でも特にエネルギー・セキュリティが話題となった。レオン氏は「世界のエネルギー市場は機能不全に陥っている。市場はエネルギーの供給安定性もセキュリティも考慮していない」と指摘。「長期的な投資に結び付くようインセンティブを盛り込んだ、新たな市場設計が必要」と主張した。ベリガン氏は「今も電気にアクセスできていないアフリカのような国々にとっては、供給安定性が高いだけでなく、人口規模に応じた潤沢な電力が必要だ。その時、クリーンエネルギーであることは非常に意味があり、原子力の果たす役割は極めて大きい」と、エネルギー・セキュリティを気候変動の観点から俯瞰。「ポーランドが初の原子力発電所導入を進めるのも、ルーマニアが原子力発電所増設を進めるのも、アフリカ諸国が原子力に関心を示すのも、原子力がエネルギー・セキュリティと気候変動対策の両方を兼ね備えているから」との見方を示した。ゴーマン氏は、「世界の化石燃料供給体制は極めて脆弱だ。化石燃料の場合は、燃料供給が途絶するとたちまち立ち行かなくなることが欧州で実証されてしまった」とした上で、「原子燃料も世界の供給ネットワークに依存しているが、様相はだいぶ異なる」と指摘。原子力発電の安定した供給力の理由として、「通常の原子炉であれば、3年分の燃料をサイト内に備蓄している。また原子炉の運転に占める燃料コストの割合が極めて小さく、価格変動の影響を受けにくい」の2点を挙げた。また同氏はSMRについて、「燃料交換せずに5-10年は稼働」、「比較的どのような場所でも立地が可能で、需要に応じてスケールアップできる」など導入の利点を強調した。なお日本原子力産業協会の新井史朗理事長もビデオメッセージを寄せ、日本の気候変動政策やエネルギー基本計画、再稼働状況を紹介し、今後の再稼働への期待を述べた。
22 Nov 2022
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ルーマニア初の小型モジュール炉(SMR)建設を計画している国営原子力発電会社(SNN)は11月15日、そのプロジェクト企業として設立したロパワー・ニュークリア(RoPower Nuclear)社が、国内鉄鋼メーカーのドナラム(Donalam)社と協力覚書を交わしたと発表した。ドナラム社は、欧州の鉄鋼産業界で100年以上の実績を持つイタリアの大手企業AFVベルトラム・グループ(AFV Beltrame Group )の傘下。この覚書を通じて、同社はルーマニア初のSMR建設に向けた協力と投資の機会をロパワー社とともに模索し、温室効果ガスの発生量が極めて少ない方法を用いた「グリーン・スチール」を通じて、電力集約型産業である鉄鋼業の課題解決を目指している。一方のSNN社は、国連環境計画(UNEP)の「(2022年版)CO2排出ギャップ報告書」にも示された通り、既存の温暖化防止対策ではパリ協定の目標達成に不十分と認識しており、CO2排出量を効果的かつ持続的に削減していくには原子力が不可欠と考えている。SNN社はドナラム社との協力により、SMRや太陽光が生み出すクリーンエネルギーで最初の「グリーン・スチール製造施設」の構築を支援し、業界内で同様の協力を促進していく考えだ。SNN社はルーマニア南部ドゥンボビツァ県のドイチェシュテイ(Doicesti)にある閉鎖済み石炭火力発電所の跡地に、出力7.7万kWのSMRを6基備えた米ニュースケール・パワー社製のSMR発電所「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)を建設することを計画。今年9月には、この計画を進めるため、建設サイトのオーナーである民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社と合弁でロパワー社を設立した。今回の覚書への調印は、エジプトで開催されていた国連気候変動枠組条約・第27回締約国会議(COP27)の、国際原子力機関(IAEA)のパビリオンで映像中継の形で行われた。この調印と同時に、SNN社とドナラム社は国連の「24/7カーボンフリー電力同盟(CEC)」に参加する意思を表明。CECでは、一日24時間365日間、クリーンエネルギーを100%活用して、地球温暖化の影響を緩和できるような電力供給システムの構築促進を原則としている。この件についてロパワー社の社長を務めるSNN社のC.ギタCEOは、「後の世代に持続可能な未来を残すことは当社の使命であり、CECの原則とも完全に一致している」と説明。大小両方の規模で原子力発電所を国内で建設することでエネルギーの供給を保証し、CECが求める電力供給システムの脱炭素化を進めていく考えを強調した。SNN社によると、ルーマニアのSMR建設は大型原子炉や再生可能エネルギーと互いに補い合う役割を担っており、SMRのエネルギー生産施設に太陽光設備を加えることも念頭に置かれている。原子力と再エネを統合することにより、出力を自在に変えられる発電能力を確保するねらいだ。ルーマニアにおける原子力発電開発については、現在米国が協力の度合いを深めており、SNN社は国内でのSMR建設に向けて、2019年3月に米ニュースケール・パワー社と最初の協力覚書を締結した。翌2020年10月には、ルーマニア国内で建設工事が停止中のチェルナボーダ3、4号機を完成させる計画と、同国の民生用原子力発電部門の拡充と近代化に向けて、ルーマニアと米国の両政府が原子力分野における政府間協力協定(IGA)に調印している。2021年1月になると、ルーマニア国内でのSMR建設サイト選定に向けて予備的評価作業を行うため、米貿易開発庁(USTDA)が約128万ドルの技術支援金をSNN社に交付。今月9日には、チェルナボーダ3、4号機の完成計画に米国側からプロジェクト準備等のサービスを提供する契約について、米輸出入銀行(US EXIM)が最大で30億5,000万ドルの融資をSNN社に提案している。(参照資料:SNN社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Nov 2022
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