フランスとインドおよびアラブ首長国連邦(UAE)の3国は2月4日に共同声明を発表し、原子力をはじめとするエネルギー分野や地球温暖化対策等、様々な分野で3国が協力プロジェクトの実施に向けた協議を行う場としてイニシアチブを立ち上げたことを明らかにした。共同声明は、フランスのC.コロナ欧州・外務相とインドのS.ジャイシャンカル外相、およびUAEのシェイク・アブダッラー・ビン・ザーイド外務・国際協力相が、同日の電話会談で最終決定した。「3国間協力イニシアチブ」は、3国がプロジェクトで協力を拡大する基盤になるほか、インドが今年9月に議長国としてニューデリーで開催する「主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)」や、UAEがドバイで議長国を務める11月の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)等の場で、3国共同の様々なイベントを運営する。共同声明によると、3国の外相は昨年9月に米ニューヨークで開催された国連総会に合わせて初会合。国際社会の安定と繁栄の促進という目標を共有し、これまでに築かれた建設的な協力関係をさらに発展させることで合意。3国間の正式なイニシアチブを通じて、相互に利益が得られる分野に協力を拡大することになった。4日の電話会談では、エネルギー分野の協力でも特に、太陽光と原子力に関する協力プロジェクトの実施や地球温暖化対策、またインド洋地域における生物多様性の保護に集中的に取り組む方針で見解が一致。クリーンエネルギーの開発や環境の保全等を目的とした具体的かつ直ちに実行可能なプロジェクトの実施に向け、環インド洋(地域協力)連合(IORA)とも協力の可能性を探ることになった。「3国間協力イニシアチブ」ではまた、3国の開発機関による協力の拡大に加えて、2020年以降の温室効果ガス排出削減の新たな国際枠組みであるパリ協定の目標達成に向け、経済面や社会面、および技術面の政策遂行で連携を強めていくとしている。UAEでは現在、初の原子力発電所として2012年7月から韓国製PWRを備えたバラカ発電所を建設しており、1、2号機はそれぞれ2021年4月と2022年3月から営業運転中。3号機も2022年10月に送電を開始したほか、4号機の建設工事も最終段階に入っている。一方、インドの商業炉は出力が最大でも70万kW級という国産加圧重水炉(PHWR)が中心で、大型軽水炉としてはロシア製の2基が稼働中のほか、4基が建設中。2010年にフランス製の欧州加圧水型炉(EPR)建設に向けて印仏両国が枠組み合意に達したが、事故発生時のベンダー責任など様々な理由から欧米諸国の原子炉導入は進んでいない。(参照資料:フランスの欧州・外務省(フランス語)、UAE国営通信WAMの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Feb 2023
1728
フランスのE.マクロン大統領は2月3日、自らが議長を務める閣僚級のハイレベル会合「原子力政策審議会(CPN)」を招集し、今年6月までに(2030年~2035年を対象とする)複数年の新たな「エネルギー計画(PPE)」案を準備するための審議を行った。同大統領は2022年2月に東部のベルフォールで演説を行い、フランスのCO2排出量を2050年までに実質ゼロとし国内の原子力産業を再活性化するため、フランスで改良型欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設するほか、さらに8基の建設に向けた調査を開始すると発表している。2008年に設置されたCPNは年に2回、フランスの全体的な原子力政策や各プロジェクトを短期的、長期的に管理・調整するため招集されている。今回のCPNでは、議会でエネルギーや温暖化関係の法案審議が始まる前に、最初の1基を遅くとも2035年までに完成させるための、将来的なエネルギーの供給と自立の強化に向けた方針が確認された。過去2年にわたり原子力発電量が大幅に低下したことを背景に、CPNに出席した関係閣僚らは、今年冬季の電力確保に向けて原子炉の適切な定検スケジュールを組むため、原子力発電強化に向けて動き出した。また、無炭素で競争力のある電力を長期的に供給する観点から、原子力安全規制当局(ASN)の厳しい監督の下、安全性を確保しながら既存の原子力発電所の運転期間を60年間、あるいはそれ以上に延長するための調査開始を了承した。CPNではまた、EPR2を新たに6基建設する計画の主要課題についてもレビューを行った。この件は今月末に終了予定の公開討論でも議題の一つになっていることから、この結論を新しいPPEに盛り込む方針である。これらのEPR2をスケジュール通りに起動させるには、既存の原子力サイト周辺における建設手続きの迅速化法案が速やかに成立する必要がある。CPNのメンバーはさらに、2021年10月にマクロン大統領が発表した新たな産業政策「フランス2030」の主要課題として、小型モジュール炉(SMR)や先進的モジュール炉(AMR)の開発が原子力プログラムに含まれたことから、この作業を加速させることを確認。フランス電力(EDF)が中心となって開発しているSMRの「NUWARD」、およびその他の先進的原子炉開発について、少なくとも最初の1基が2030年代に完成するよう支援していく。この件については、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)が関係機関の調整役を担っているため、CEAの役割を強化する考えである。CPNではこのほか、原子力産業を再活性化するには、フランスがこの分野で戦略的に自立した立場を維持できるよう、燃料サイクルの課題に徹底的に取り組む必要があると指摘。最終的に残る放射性廃棄物の管理計画を新たなPPEに反映させるため、次回6月のCPNに向けて複数の調査を開始するとしている。(参照資料:仏大統領府の発表資料(フランス語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Feb 2023
1953
ポーランドの石油化学企業PKNオーレン・グループは1月31日、同国内で小型モジュール炉(SMR)を建設するため、国内6つの工科大学および教育科学省と技術スタッフの教育・訓練プログラム設置に向けた基本合意書に調印した。同プログラムの設置は教育科学省が支援しており、調印式も同省内で行われた。PKNオーレン・グループは自社事業の展開にともなうCO2の排出量を削減するため、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」の国内建設を決定。そのための合弁企業として、2021年12月、化学素材メーカー大手のシントス社と折半出資で、オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社を設立した。OSGE社は2026年にも初号機の建設を開始し、2033年以降、数10基のSMRを完成させていく計画である。原子力分野の専門家の育成は、ポーランドにおける原子力産業の発展にとって最も重要な課題の一つとなっている。そのため、同社とOSGE社はグダンスク工科大、AGH科学技術大、ポズナン工科大、シレジア工科大、ワルシャワ工科大、およびブロツワフ科学技術大に原子力分野の教育・訓練プログラムの設置を提案。2023年と2024年の学年度を皮切りに、修士コースも含めた2学期分のプログラムの設置で、条件整備の共同アクションを取ることになった。グダンスク工科大ではまた、「グダンスク原子力技術センター」の設立準備も進められている。グダンスク工科大の説明では、「BWRX-300」を1基備えた原子力発電所では、約100名分の労働力が必要。これらの手配は喫緊の課題となっている。また、原子力産業が新たな産業分野として成り立つためには、原子力の専門家だけでなく化学者や化学技術の専門家、電気技師、安全性の確保と環境保全関係の専門家、サイバーセキュリティや危機対応サービス関係の専門家も必要になる。これらのことから、OSGE社の「BWRX-300」建設計画は、少なくとも数千人規模の雇用創出を意味するという。新たな教育・訓練プログラムで育成された専門家は、将来も安定した収入が保証されると強調している。PKNオーレン社のD.オバイテク社長は、「SMRはエネルギー効率が高い技術なので、当社の事業で排出されるCO2を2050年までに実質ゼロ化する上で非常に有効だ」とコメント。CO2を排出しない電源として同グループの他の発電設備を補完できるため、その専門スタッフの育成はポーランド経済とエネルギー供給保証の強化にもつながると指摘した。教育科学省のP.チャルネク大臣は記者会見の席で、「産学がともに発展するためには相互協力が欠かせない」と表明。低炭素エネルギーの開発はポーランド経済にとって重要課題であるとした上で、「ポーランドが世界をリードする科学者やエンジニアを輩出できるよう、当省としても別途、原子力関係の人材育成プログラムを計画中だ」と述べている。(参照資料:グダンスク工科大学、PKNオーレン・グループ(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Feb 2023
1648
スロバキアで5基目の原子力発電所となるモホフチェ3号機(PWR、47.1万kW)が1月31日、定格出力の20%で国内送電網に初めて接続し、発送電を開始した。同機はスロバキアで約20年ぶりとなる新規炉で、スロバキア政府が34%出資する電力最大手のスロバキア電力(SE)が所有/運転している。2022年8月に規制当局から運転認可を取得した後、9月に燃料を装荷。同年10月に初臨界を達成し、その後は出力5~20%の様々なレベルで、タービン復水器や低圧熱交換器、給水系、蒸気発生器などの試験を行っていた。今後は出力35%~100%で第2段階の試験を実施し、設計通りのパラメーターを実証。最後はフル出力で144時間の連続運転を行った後に、営業運転へ移行する。同国では、モホフチェとボフニチェ2つの原子力発電所で出力50万kWのロシア型PWR(VVER)が2基ずつ稼働中。これら4基で総発電量の50%以上を賄っており、原子力は同国の基幹電源に位置付けられている。モホフチェ3号機の建設工事は、同型の4号機とともに1987年1月に開始されたが、格納容器がない第2世代のVVER設計であるため、安全性の改良とそれにともなう資金調達問題等で1992年から2008年まで建設工事が中断した。両炉の主要機器は最終的に、原子炉系とタービン系ともにチェコのスコダ社が供給する一方、計装制御(I&C)系は仏アレバ社と独シーメンス社、原子炉系の電気機器・システムはスロバキアのPPA社、その他の機器はロシアのアトムストロイエクスポルト(ASE)社や英国のロールス・ロイス社が供給する。SE社によると3号機の送電開始は、同社がスロバキア政府に約束した「1,000kWhあたり61.2077ユーロ(約8,540円)」という低価格の発電を実現する上で有効。これは、欧州連合(EU)域内の一般家庭向け価格としては非常に安いレベルであり、新しい原子炉はスロバキアのエネルギー安定供給に貢献するとともに、CO2の排出量も大幅に削減して実質ゼロ化への道を拓くと強調した。同炉はまた、スロバキアにおける総電力消費量の約13%を賄うことから、同国では今年からエネルギーの自給が可能になる。3、4号機がともに完成した場合、SE社は年間で少なくとも500万トンのCO2排出を抑えることが出来ると予想。これら2基はそれぞれ、少なくとも60年間の稼働が見込まれている。このほか、同国の市場調査機関であるACRCが、SE社およびスロバキア外交政策協会(SFPA)からの委託で2022年6月から7月にかけて実施した世論調査によると、スロバキアでは10人中7人までが原子力を支持すると回答。最大60%の国民が、「原子力は安全な発電技術」と考えていることが明らかになっている。(参照資料:スロバキア電力の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Feb 2023
1535
カナダ・アルバータ州の外国投資誘致機関であるインベスト・アルバータ社(IAC)は1月30日、米X-エナジー社が開発した小型ペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」の州内建設を通じて、同州経済を活性化する可能性を探るため、同社のカナダ法人と了解覚書を締結した。具体的には、「Xe-100」のサプライチェーンの構築や、建設プロジェクトへの資本参加に関心を持つ地元コミュニティとの関係強化等に両社が共同で取り組む。IACはまた、X-エナジー社による現地事務所設置を支援する方針である。第4世代の原子炉設計である「Xe-100」は需要に応じて出力を変動させることが可能で、1基あたりの熱出力は最大20万kW、電気出力は8万kWである。565℃の高温蒸気を効率的に生産するなど、柔軟性の高いコジェネレーション(熱電併給)オプションにもなることから、オイルサンド開発や石油化学工業などの重工業を同炉のクリーンエネルギーで直接支えることが出来る。同社はまた、「Xe-100」を4基備えたプラントをアルバータ州で建設した場合、カナダでは同州を中心に最大3,800名分の雇用が生まれると予測。これには、建設地の地元請負企業やサービス企業、関係サプライチェーンでの雇用も含まれるとしている。X-エナジー・カナダ社のK.M.コール社長は「アルバータ州のエネルギー産業はカナダ全体の経済的繁栄にとって不可欠であり、当社はSMRを通じてCO2の排出量を抑え、州内のエネルギー産業や化学工業、鉱業などを支えていく」と表明。「Xe-100」の州内建設が成功すれば、アルバータ州にとってはビジネス・チャンスとなるため、州経済の多様化や健全化も持続的に進展するとしている。アルバータ州は2021年4月、カナダ国内のオンタリオ州とニューブランズウィック州およびサスカチュワン州の3州が2019年12月に締結した「多目的SMR開発・建設のための協力覚書」に参加。2022年3月には、これら4州でSMRの開発と建設に向けた共同戦略計画を策定している。アルバータ州ではまた、テレストリアル・エナジー社が開発した小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)の建設を念頭に、IACが2022年8月に同社と覚書を交わしている。X-エナジー社の「Xe-100」については、オンタリオ州も同州を中心とするカナダ国内の産業サイトで幅広く利用する可能性を探る方針。州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は2022年7月、協力のための枠組み協定をX-エナジー社と締結している。(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Feb 2023
1598
韓国電力公社(KEPCO)によると、チョン・スンイル(鄭升一)社長兼CEOが1月30日、トルコでエネルギー・天然資源省のF.ドンメズ大臣と会談し、同国の2つ目の原子力発電所として韓国製第3世代PWRの「改良型加圧水型炉(APR1400)」(140万kW)を建設する予備提案書を提出した。発表文の中でKEPCOは建設サイトや基数に触れていないが、現地の報道では「トルコ北部のサイトで4基建設する」ことを提案したと伝えられている。この提案書に基づき、今後は両者が本格的な協議を開始し、プロジェクトの実行可能性を共同で調査する。最適な事業推進プランも作成する方針で、採用技術や資金調達方法などの点で合意した場合、実施に向けた覚書を締結すると見られている。KEPCOの説明によると、予備提案書の提出は昨年12月にトルコ側から協議の最初の段階として要請されたもの。KEPCO社長とトルコ・エネ相の会談では、韓国がトルコの原子力発電プロジェクトに参加する件について協議し、建設プロジェクトを進めるための手続きやリスクなど、主要項目についても話し合われた。予備提案書の中でKEPCOは、原子力発電所建設に関する優れた能力を韓国が有していると紹介したほか、建設プロジェクトの事業構造や建設期間、技術移転等について説明している。チョン社長はまた、トルコ訪問に先立つ1月16日、アラブ首長国連邦(UAE)で開催されたバラカ原子力発電所(APR1400×4基)関係のイベントに参加した。これにともない、「韓国製のAPR1400はUAEも含めた国内外で10基が安定的に建設・運転されており、技術力と安全性は十分に証明されている」と指摘。近年、西側諸国で建設されている最新設計の原子力発電所のうち、所定の予算内でスケジュール通りに建設を進め、顧客の信頼を得ているのはKEPCOだけだと強調している。トルコでは現在、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が地中海沿岸のアックユで、2018年4月から120万kWのロシア型PWR(VVER-1200)を4基建設中。黒海沿岸のシノップでも、日仏の合弁企業が一時期、110万kWのPWRを4基建設する計画を進めていたほか、2012年には北西部のイーネアダで3つ目の原子力発電所を建設する計画が浮上。中国の国家核電技術公司(SNPTC)がウェスチングハウス社との協力により、AP1000技術に基づく原子炉4基を建設する方向で、2016年にトルコ側と議定書を締結している。一方の韓国では、2022年5月に発足したユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が前政権の脱原子力政策を撤回。2036年までに原子力発電シェアを約35%まで増加させるエネルギー政策を公表したほか、原子力輸出については2030年までに10基の輸出を実現すると表明している。(参照資料:KEPCOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Feb 2023
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カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は1月27日、ダーリントン原子力発電所内で計画している小型モジュール炉(SMR)の建設に向けて、関係企業3社と6年契約でチームを組む協力協定を締結した。この計画でOPG社は、北米初のSMRとして米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」(30万kW)を、2028年第4四半期までに完成させる方針。今回の協力協定は、GEH社のほか同国でカナダ型加圧重水炉(CANDU)事業を手掛けるSNC-ラバリン社、および建設大手エーコン(Aecon)グループと結ばれており、送電網への接続が可能な北米のSMR建設では初の商業契約となる。同協定では、各社がそれぞれの分野で数十年にわたり蓄積してきた専門的知見とサービス経験を共有。OPG社はライセンス保持者として、SMRの運転員養成や先住民らコミュニティ対応など、プロジェクト全体の運営・監督責任を担う。GEH社は「BWRX-300」の開発企業として、その設計や主要機器の調達等に責任を持つ。また、SNC-ラバリン社はアーキテクト・エンジニアとして、設計・エンジニアリングや資機材調達など工程管理を担当。エーコン社は建設工事の請負企業として、建設計画の立案と工事関係実務サービスを実施する。ダーリントンでのSMR建設は、カナダでその他の州(サスカチュワン州とニューブランズウィック州、およびアルバータ州)が計画している同様のプロジェクトの先陣を切ることになる。ダーリントンは現時点で、カナダ原子力安全委員会(CNSC)から新たな原子炉建設を許されたカナダで唯一のサイトであり、OPG社は2022年10 月末に「BWRX-300」の建設許可申請書をCNSCに提出済み。その翌月からは、CNSCの「サイト準備許可(LTPS)」に基づき、準備作業を始めている。 同社はこのほか、2016年に10年計画で開始したダーリントン発電所の4基(各CANDU炉、93.4万kW)の改修工事で、SNC-ラバリン社およびエーコン社とはすでに協力関係にあり、これまでに半分以上の作業がスケジュール通りに予算の範囲内で進展している点を強調した。今回の協力協定について、OPG社のK.ハートウィック社長兼CEOは「大規模プロジェクトに関する各社の経験を活用すれば、州民に信頼性の高い電力を提供できる」と指摘。SMRの建設を通じて、オンタリオ州では新たな雇用が創出されるとともに、様々な分野の電化や州経済の成長に必要なエネルギーを供給できると述べた。GEH社で先進型原子力部門を担当するS.セクストーン副社長は、「カナダのみならず世界中で当社のSMRを建設していく重要な節目になった」と表明。「BWRX-300」は、カナダ・サスカチュワン州のサスクパワー社も2022年6月、州内で2030年代半ばまでに建設するSMRとして選定している。GEH社によると「BWRX-300」は米国でも関心が高く、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2022年8月、テネシー州のクリンチリバー・サイトで同炉を建設する可能性に基づき、予備的な許認可手続きを開始した。また、ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー社が同国で2020年代末までに「BWRX-300」を建設することを念頭に、パートナー企業と同様の手続きを開始している。(参照資料:OPG社、GEH社、SNC-ラバリン社、エーコン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 Jan 2023
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原子力発電の導入を計画しているカザフスタンで1月26日、B.アクチュラコフ・エネルギー大臣とフランス電力(EDF)のV.ラマニー上級副社長が会談。二国間協力協定の締結に向け協議を継続することで合意した。カザフスタン政府の発表によると、EDF側はフラマトム社が開発した欧州加圧水型炉(EPR)の出力縮小版「EPR1200」(120万kW)を、カザフ国内で建設することを提案している。カザフでは、旧ソ連時代にアクタウ市で建設されたソ連製の高速増殖炉「BN-350」(15万kW)で熱電併給と海水の脱塩が行われていたが、1999年4月に同炉が運転を停止して以降、原子力発電設備は存在しない。一方、生産量で世界第1位という豊富なウラン資源を背景に、同国は原子力産業の開発を進めていく方針。2014年に新設されたエネルギー省が中心となって、大型炉や小型モジュール炉(SMR)の建設機会を模索している。大型炉については、ロシアの国営原子力企業ロスアトム社の協力により建設する計画が何度か浮上したが、現在の候補企業としては、同社のほかにEDF、中国核工業集団公司(CNNC)、韓国水力・原子力会社(KHNP)の4社が上がっている。カザフ政府の発表によると、カザフ側は、国営原子力企業のカザトムプロム社が中国企業と合弁で運営している「ウルバTVS社」が、フラマトム社からの技術移転により製造した燃料集合体を2022年12月に初めて中国に納入した事実に言及。「フランスでは原子燃料製造の全工程が確立されている」と強調した。2022年7月には、カザフのエネルギー省やカザトムプロム社等の専門家で構成される代表団が、フランスにおける原子力発電所の建設や運転経験等を共有するため同国を訪問している。フランス財務省やエネルギー移行省が開催した会合、およびEDFとの交渉では、原子力発電所の建設プロジェクトに政府の資金や保証、民間投資を呼び込むための資金調達モデルについて調査。同調査団はまた、EPRが3号機(165万kW)として建設されているフラマンビル原子力発電所(1、2号機、各PWR、138.2万kW)を視察した。EPRとしては、2005年と2007年にフィンランドとフランスでそれぞれ、オルキルオト3号機(172万kW)とフラマンビル3号機が本格着工したが、初号機建設ならではの様々な課題から今なお建設中。しかし、これらより後に中国で着工した台山1、2号機(各175万kW)は、これらからの教訓を生かしてそれぞれ2018年12月と2019年9月に営業運転を開始した。また英国では、同じくEPRのヒンクリーポイントC原子力発電所1、2号機(各172万kW)が、それぞれ2018年12月と2019年12月から建設中である。(参照資料:カザフスタン・エネルギー省(カザフ語)の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
30 Jan 2023
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米国防総省(DOD)の国防高等計画推進局(DARPA)は1月24日、米航空宇宙局(NASA)が計画している火星の有人探査用の先進的核熱推進ロケット(NTR)エンジンを共同で実証・開発するため、両者が協力協定を結んだと発表した。具体的には、DARPAの「迅速な月地球間活動のための実証ロケット(DRACO)プログラム」にNASAの宇宙技術ミッション本部(STMD)が協力し、NTRエンジンをDARPAの実験用宇宙船に組み込むための技術開発を推進。長期の宇宙飛行ミッション実現に向けてNTRエンジン搭載宇宙船の実証試験を、早ければ2027会計年度にも地球周回軌道上で実施する計画だ。両者の発表によると、大気圏外の深宇宙を宇宙飛行士が高速で移動することは、火星の有人探査実現のカギとなる技術であり、宇宙飛行士の負うリスクも軽減される。長期のミッションでは頑丈なシステムと多くの補給品が必要となるため、NTRエンジンのように一層迅速かつ効率的な輸送・移動技術の開発はNASAが月や火星で進める探査計画に有効である。また、NTRエンジンでは通信等に使用する高出力電力のほか高温熱も生産可能であるため、この熱で液体水素をガスに変えて推進力とすることができる。これにより、NTRエンジンの効率はこれまでの化学ロケット・エンジンとの比較で2~5倍に上昇、推力重量比は電気推進エンジンとの比較で約1万倍に上昇すると両者は予測している。このような開発の加速を目的とした今回の協力協定で、両者は双方が利益を得られるようそれぞれの役割や責任を分担。NASAが関係技術の開発を主導する一方、DARPAはNTR用原子炉関係の契約を受け持つほか、NTRエンジン・システムの宇宙船への統合や資機材の調達、スケジュールの設定など、プログラム全体を管理することになる。DARPAによると、米国でNTRの実験が最後に行われたのは50年以上前のことである。このような過去の開発で得られた教訓を元に、DARPAはDRACOプログラムで高濃縮ウランの代わりにHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を使用する予定。これにより、輸送上の課題を減らすことができると指摘している。DARPAのS.トンプキンズ長官は、「近代的な商取引や科学的発見、国家安全保障の点からも宇宙空間は非常に重要な領域だ」と説明。DRACOプログラムを通じて宇宙技術開発で大きな躍進を遂げることは、月面に多くの物資を効率的に輸送し人類を短時間で火星に送り届けるためにも、必要不可欠だと強調した。NASA・STMDのJ.ルーター本部長は、「航空宇宙材料の開発やエンジニアリングは近年目覚ましく進歩しており、原子力技術の宇宙利用に新たな時代が到来、実証試験を通じて月や火星への輸送能力は大幅に拡大される」と指摘した。(参照資料:NASA、DARPAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Jan 2023
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米ネブラスカ州の電力公社(NPPD)はこのほど、先進的な小型モジュール炉(SMR)の建設が同州内で決まった場合に備え、候補地の実行可能性調査(FS)を開始すると発表した。その結果から直ちに建設工事を始めるわけではないが、既存の商業炉と比べて安全かつ出力の増減が容易なSMRの建設候補地を、2024年の春ごろまでに4地点まで絞り込みたいとしている。米国ではJ.バイデン大統領が就任直後の2021年3月、コロナ禍の経済不況からの復興を目指す広範な経済対策として、各州政府や個別の機関・団体に総額1.9兆ドルの助成金を交付するという「米国救済計画法(ARPA)」に署名した。ARPAでネブラスカ州に割り当てられた助成金の中から、州政府は2022年4月に成立した州法(LB 1014)に基づき、100万ドルを今回のFSプログラムに充当すると決定。州内全域で先進的原子炉の立地点を新たに模索するオプションと、既存の発電施設で先進的原子炉の受け入れが可能なものについてFSを行うとした。州政府また、電力部門のCO2排出量を2005年比で30%削減するため、B.オバマ政権下の環境保護庁(EPA)が導入した「クリーン・パワー・プラン(CPP)」の目標を達成するには、新たな原子力発電設備の建設が有効だと指摘。これに向けて、適切な計画の策定コストも調査するとしている。助成金の実際の申請は、同州唯一の原子力発電所であるクーパー発電所(BWR、83.5万kW)の所有者であるNPPDが実施。同社の申請書はすでに今月6日、州政府の経済開発省が承認済みである。同FSの第一段階で、NPPDは地理的データや予備的な許認可基準に基づき、SMRの立地に最適の地点15か所を特定する。許認可基準の中でも、冷却水と送電網へのアクセスを重点的に考慮する方針で、この作業は今年の春までに完了させる。その後の第二段階では一層詳細な評価を行う予定で、原子力規制委員会(NRC)が審査の際に使用している環境面や建設関係の基準により、候補地点を4か所まで絞り込む。この段階の作業を完了するには、約1年を要するとNPPDは予想している。(参照資料:ネブラスカ電力公社、ネブラスカ州政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Jan 2023
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ポーランドのリスペクト・エナジー(Respect Energy)社とフランス電力(EDF)はこのほど、EDFが中心となって開発しているフランス製小型モジュール炉(SMR)「NUWARD」のポーランド国内での共同建設に向け、両社が協力協定を締結したと発表した。リスペクト・エナジー社は再生可能エネルギー専門の取引企業で、欧州の顧客にクリーン・エネルギーのみを販売している。今回、事業を原子力分野に拡大する第一歩として「NUWARD」を選択したもので、今後はEDFと協力して建設サイトの選定評価作業を実施するほか、同プロジェクトへの資金調達方法や事業計画の詳細等を策定する。一方のEDFは2021年10月、原子力発電の導入計画を進めるポーランド政府に対し、2043年までに同国の2~3サイトで、4~6基(出力合計660万~990万kW)の欧州加圧水型炉(EPR)を建設すると提案。今回のSMR建設計画はこの提案を補完する役割を担うと説明しており、これらの原子炉を通じてポーランド経済の脱炭素化やエネルギー供給保証の強化を支援していく考えだ。リスペクト・エナジー社のS.ヤブロンスキ会長は、「SMRの建設でポーランドのクリーン・エネルギーへの移行に貢献し、安全でCO2を排出しない電力の需要に応えていきたい」と表明。EDFと独占的な協力協定を結んだことで、同社は欧州初のSMRをポーランドで建設するという意欲的なプロジェクトを進められるほか、同社が保有する無炭素発電設備の拡大にもつながると指摘している。EDFで国外の原子力プロジェクトを担当するV.ラマニー上級副社長は、「当社が提供可能な大小2種類の原子炉でポーランドがエネルギーの輸入から脱却し、持続可能で低炭素な電力を生産できるよう貢献したい」との抱負を述べた。「NUWARD」はフランスで50年以上の経験が蓄積されたPWR技術に基づき、EDFがフランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)や小型炉専門開発企業のテクニカトム(TechnicAtome)社などと協力して開発中。出力17万kWの小型PWR×2基で構成される「NUWARD」プラントの合計出力は34万kWで、NUWARD企業連合にはフラマトム社も加わっている。2022年5月には、ベルギーの大手エンジニアリング・コンサルティング企業であるトラクテベル社が、同炉の概念設計の確認調査を請け負っており、EDFは今年から基本設計に入る予定。2030年にも実証炉の建設を開始するなど、競争力を備えたSMRとして世界市場に送り出す方針である。ポーランドでは現時点で様々なSMRの建設が計画されており、化学素材メーカーのシントス社は2021年12月、石油精製企業のPKNオーレン社と合弁事業体を設立して、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」の建設に重点的に取り組む考えを表明。鉱業大手のKGHMポーランド採掘会社は2022年2月、米ニュースケール・パワー社のSMRを複数備えた「VOYGR」発電設備を2029年までに国内で建設するため、先行作業契約を締結した。また、ポーランド政府所有の電力会社であるエネア(Enea)グループは2022年6月、米国のSMR開発企業であるラスト・エナジー社のSMR導入を目指し、同社と基本合意書を締結している。(参照資料:リスペクト・エナジー社(ポーランド語)、EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Jan 2023
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米原子力規制委員会(NRC)は1月19日、ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(電気出力5万kW版)に対し、SMRとしては初の設計認証(DC)を発給した。米国での利用を許可するため、NRCがこれまでにDCを発給した炉型はウェスチングハウス(WH)社製AP1000などの大型炉も含めると7つ目。米エネルギー省(DOE)は2014年以降、ニュースケール社製も含め、様々なSMRの設計や許認可手続き、立地等に6億ドル以上の支援を実施してきたが、K.ハフ原子力担当次官補は、「SMRはもはや抽象的な概念ではなく、建設準備ができた現実のものになった」と指摘。「最も優れた技術革新の結果であり、我々はここ米国でその活用を開始する」と宣言した。ニュースケール社は2016年12月に「NPM」のDC審査をNRCに申請しており、NRCスタッフは2020年8月に同設計の技術審査を終えて最終安全評価報告書(FSER)を発行。翌9月には、同スタッフが当該設計について「技術的に受け入れ可能」と判断したことを意味する「標準設計承認(SDA)」を発給している。NRCはその後、DC審査の最終段階として、電気事業者が当該設計の建設・運転一括認可(COL)を申請する際、米国内で建設可能な標準設計の一つに適用する規制手続き「最終規則」の策定作業を進めていた。NRCの委員5名も2022年7月末にNRC全体の決定として、「NPM」が米国での使用を承認された初のSMRと票決していた。今回はこの最終規則の策定が完了し連邦官報に公表されたもので、同規則が発効する2月21日から「NPM」のDCも有効である。DCはその後15年間効力を持ち、さらに10年~15年間延長することも可能。今回のDC発給により、「NPM」のCOL申請審査ではDC規則で解決済みの課題に取り組む必要がなくなる。発電所の建設サイトに特有の安全性や環境影響について、残る課題のみに対処することになる。「NPM」の初号機については、ユタ州公営共同事業体(UAMPS)が単基の電気出力7.7万kW版の「NPM」を6基備えた設備「VOYGR-6」(出力46.2万kW)を、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)内で建設する計画を進めており、最初のモジュールは2029年の運転開始を目指している。このため、ニュースケール社は今月1日、7.7万kW版の「NPM」についても、NRCにSDAの取得を申請した。UAMPSもINL内での用地調査を終え、2024年の第1四半期を目途に「VOYGR-6」のCOLを申請する予定である。米国内ではこのほか、ワシントン州グラント郡の公営電気事業者「グラントPUD」が2021年5月、ニュースケール社製SMRの性能を評価するため、同社と協力覚書を交わした。また、ウィスコンシン州のデーリィランド電力協同組合も2022年2月、同SMRを事業域内で建設する可能性を探るとして、了解覚書を締結している。国外では、カナダやチェコ、ウクライナ、カザフスタン、ルーマニア、ブルガリアなどの企業が国内でのNPM建設を検討中で、それぞれが実行可能性調査等の実施でニュースケール社と了解覚書を締結済み。ポーランドでは、鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社が「VOYGR」設備をポーランド国内で建設するため、2022年2月にニュースケール社と先行作業契約を締結している。(参照資料:DOEの発表資料、連邦官報、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Jan 2023
2937
ブルガリアのエネルギー省は1月17日、今年から2050年までをカバーする新しいエネルギー戦略を発表し、同国唯一の原子力発電所であるコズロドイ発電所(100万kWのロシア型PWR=VVER-1000の5、6号機のみ稼働中)と計画中のベレネ発電所で、原子炉を2基ずつ建設する方針を明確に示した。ブルガリアの国民議会(一院制)ではこれに先立つ12日、コズロドイ発電所で原子炉を新設する計画について票決が行われ、同発電所にウェスチングハウス(WH)社製のAP1000を導入するため、米国政府と政府間協力協定(IGA)の締結交渉を開始する方針案が112対45、棄権39で可決された。この方針に基づき、関係閣僚らは7号機の建設承認手続きと8号機の環境影響声明書作成の迅速化に必要な措置をすべて、3月1日までに講じることになった。同省のR.フリストフ大臣によると、ブルガリアのエネルギー部門は昨年、120億kWh以上の電力を近隣諸国に輸出して約30億ユーロ(約4,200億円)の利益を得るなど、同国経済全体に大きく貢献。このため、今後も同国が欧州の発電および電力輸出分野で主導的地位を維持するとともに、国家の安全保障やエネルギー供給を保証し、国内のエネルギー源を継続して活用していくことは同戦略における優先事項となる。このことはまた、欧州連合(EU)が目指す「2050年までにカーボンニュートラルを達成」への貢献とエネルギーの安定供給は同戦略の主要事項だと説明している。同相は具体的に、主力電源である褐炭火力を2030年まで継続的に使用するが、それ以降は使用量を徐々に減らしていき2038年で使用を停止すると表明。EUの脱炭素化目標達成を阻まぬよう、あらゆる方策を通じてCO2の排出量を削減していくとした。原子力を中心とする電源の新設もその一環であり、コズロドイ5、6号機が閉鎖された後の代替電源となる7、8号機を新たに建設するほか、2012年に一旦頓挫したベレネ原子力発電所計画を復活させ、新規に2基を建設するとした。同相は、ブルガリアには原子力関係のインフラ設備のほかに、経験豊富な人材や認可済みのサイトなど、原子力開発に必要な条件はすべて整っていると強調している。同国では現在、コズロドイ発電所の2基で総発電量の約35%を賄っている。ロシアとの協力により、1980年代からベレネ原子力発電所(VVER-1000×2基、各100万kW)の建設計画を進めていたが、2012年当時のブルガリア政府はコスト高を理由に同計画を中止した。その代わりとして、WH社製AP1000を採用した7号機の建設案を一時的に検討したが、資金不足のため進展せず、この件に関する関係者の合意は期限切れとなっていた。その後2019年3月、ブルガリア電力公社(NEK)はベレネ計画を再開するため、戦略的投資家やプロジェクト企業への出資企業を国内外から募集すると発表。同年12月にはエネルギー省が戦略的投資家の候補企業として、米GE社を含む外国企業5社に絞り込んでいる。同国政府はまた、2019年11月に米国政府と原子力を含む様々なエネルギー分野の協力を拡大することで合意しており、翌2020年10月には米国政府と民生用原子力発電分野における戦略的協力を加速するため、了解覚書を締結。コズロドイ7号機の建設については、閣僚会議が2021年1月、改めて検討する方針を承認していた。(参照資料:ブルガリア政府(ブルガリア語)、ブルガリア議会の発表資料、原子力産業新聞・海外ニュース、およびWNAの1月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Jan 2023
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フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は1月17日、高レベル廃棄物(HLW)と長寿命の中レベル廃棄物(ILW-LL)を深地層処分する施設「Cigéo」の設置許可(DAC)申請書を、関係省庁に提出したと発表した。Cigéoは、同国東部のムーズ県とオートマルヌ県にまたがるビュール地区を含めた30㎢の圏内に建設される予定。地下500mの深地層に合計83,000㎥の中・高レベル廃棄物を120年にわたり処分することになっており、総工費は約250億ユーロ(約3兆4,500億円)と見積もられている。この申請はフランス政府が2022年7月、Cigéo建設プロジェクトの公益性を認める宣言(DUP)を発出したのを受けて行われた。今後は原子力安全規制当局(ASN)が申請書を審査するほか、パブコメを募集。国民の安全と環境を防護する必須要素を備えた原子力基本施設(BNI)として、同施設を認定する政令(デクレ)が出されれば、これに基づきDACも発給される。今回のDAC申請でANDRAは、地層処分の可逆性と安全性の立証を目的とした「パイロット操業フェーズ」における地下設備のごく一部と、すべての地上設備の建設を申請。認められた場合は、放射性廃棄物を封入した最初のパッケージを受け入れるなど、限られた範囲での操業が許される。建設工事の開始は2027年頃を予定しているが、これに続くフェーズへの移行については議会審議を通じて決定される。「パイロット操業フェーズ」の報告書やASNの承認、および技術開発の進展状況等に基づいて、議会は全面的なCigéo設備の建設と操業フェーズへの移行の是非を判断することになる。フランスでは1991年の放射性廃棄物管理研究法に基づき、使用済み燃料の再処理で発生するHLWとILW-LLの最善の管理方策を約15年にわたり研究調査した。その結果、再利用可能な資源であるこれらの廃棄物の処分は、可逆性のある地層処分を基本とすることを2006 年の放射性廃棄物等管理計画法で規定。その実施にあたっては地下研究所の設置が義務付けられていたことから、政府は1998年に約30件の関心表明の中から、ムーズ県とオートマルヌ県の県境に位置するビュール地区を地下研究所の建設候補地に選定した。同地区では地下500mの位置に粘土層の地層が広がっており、2000年に始まった同研究所の建設工事と並行して、廃棄物の貯蔵に向けた研究も行われている。ANDRAは2005年、地下研究所の周辺250㎢の範囲内に安全な深地層処分場の建設が可能という報告書を政府に提出しており、2009年末には、深地層処分場の設備を設置する可能性がある区域を特定して提案した。この件については、国家討論会委員会が公開討論を開催しており、政府は2010年に処分場地下設備の展開に向けた詳細調査の実施を了承していた(参照資料:ANDRAの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Jan 2023
2785
フランス議会の上院は1月17日、新規原子力発電所の建設手続きを迅速化する法案について、付属の経済問題委員会が11日に細かい文言の修正等を終えたことから、第一読会を開始すると発表した。同法案は、既存の原子力発電所サイト近隣における新規の原子炉建設と既存炉の運転継続にともなう行政手続きの加速を目的としたもの。24日にも上院全体の票決を行うとしており、その後は下院の国民議会が審議することになる。フランスではE.マクロン大統領が2022年2月初旬、CO2排出量を2050年までに実質ゼロ化するという同国の目標達成に向け、国内で改良型の欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設するほか、さらに8基の建設に向けて調査を開始することを提案した。エネルギー移行省は複数の国民評議会と協議して、この方針に沿った法案を作成。2022年11月には閣僚会議が同法案を承認しており、大統領府はその際、法案のねらいは気候変動への対処に加えて、2月下旬に始まったロシアのウクライナ侵攻により、エネルギーの供給保証が危機に瀕していることへの緊急対応だと説明していた。閣僚会議での承認を受けて、同省のA.パニエ=リュナシェ大臣は同じ日に同法案を議会上院に提出。上院ではその後、複数の付属委員会が同法案の文言に関する担当官の提案書や委員長の見解等について審議を実施しており、11日にはA.パニエ=リュナシェ大臣との擦り合わせも完了した。同法案が目指しているのは、国家のエネルギー計画の中心部分となる「民生用原子力発電の再活性化」に向けて、ウランの調達から廃棄物の管理に至るまで、法制面や財政面、組織面の必要条件を整えること。その具体策となるのが原子炉建設の承認手続きの簡素化であり、障害となるものの排除である。同法案を通じて、7月1日までに今後5年間をカバーするエネルギー関係の法規を作成し、脱炭素化の目標を設定。5年の間に大統領が表明した14基のEPR2の必要性について、公共財政や電力市場、事業者となるフランス電力(EDF)グループの状況といった側面で評価を行うほか、専門的スキルや安全・セキュリティという課題についても評価を行えるようにする。上院・経済問題委員会における法案審議では、再活性化の障害となる現在の目標「2035年までに原子力発電シェアを50%に削減するため、原子力設備を現状の6,320万kWに制限し、(2020年に閉鎖したフェッセンハイム原子力発電所の2基に加えて)12基を閉鎖する」を撤廃。新たな原子力戦略として、小型モジュール炉(SMR)やグリーン水素の製造装置など、様々な技術を取り入れるとした。また、洪水など地球温暖化関係のリスクやサイバー攻撃関係の新たなリスクに対し、原子炉の安全・セキュリティを強化することや、原子炉の建設計画を公益事業として認識してもらうため国民や関係自治体とのコミュニケーションを強化することなどを修正事項に盛り込んでいる。(参照資料:仏議会上院の発表資料(仏語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Jan 2023
1677
韓国の産業通商資源部(MOTIE)は1月12日、同国における2022年から2036年までの電力需給見通しと電力設備計画を盛り込んだ「第10次電力需給基本計画」を発表。大型炉2基の建設計画が復活した。ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が昨年7月に提示した「新政府のエネルギー政策方向」に沿って、原子力発電所の積極的な活用、再生可能エネルギーの適正な水準での普及、石炭火力の削減といった方向性を具体化したもの。これにより、前政権が白紙撤回した大型原子炉2基の建設計画が復活し、2036年までに原子力の発電シェアは34.6%に増加する見通し。再エネも30%以上とした一方で、石炭火力は15%以下への削減が見込まれている。MOTIEによると、同基本計画は昨年8月に実務案が公表された後、環境部の戦略的環境影響評価や関係省庁による協議、公聴会の開催、国会の常任委員会への報告といった手続きを経て、MOTIEの電力政策審議会が11日付で確定した。脱原子力政策を推進したムン・ジェイン(文在寅)政権下の第8次、第9次基本計画では、再エネを中心とするエネルギー供給システムへの移行が謳われていたが、ユン政権の基本計画は「実現可能でバランスの取れた電源ミックス」を提唱。8月以降の審議では主に、①既存炉の長期運転にともなう安全性と使用済燃料の処理問題、②再エネを追加で拡大する必要性、③石炭火力の削減を追加で進めることと、それにともなう問題点等について意見が提起されたという。これらを審議した結果、MOTIEは「原子力の利用拡大は国民の安全を最優先に推進していくものであり、懸念されている使用済燃料の処理については、高レベル廃棄物管理特別法を制定して基本的な管理体系を設定。処分場が完成するまでの期間は乾式貯蔵施設を原子力発電所の敷地内で拡充するほか、研究開発や専門的人材の育成を推進するなど関連の基盤を構築する」としている。今回の基本計画で設置が承認された新たな原子炉は、2022年12月に営業運転を開始した新ハヌル1号機(PWR、140万kW)のほか、建設中の新ハヌル2号機(PWR、140万kW)と新古里5、6号機(*現在の名称はSaeul 3、4号機)(各PWR、140万kW)である。これらに加えて、新ハヌル3、4号機(各PWR、140万kW)の建設計画を復活し、それぞれ2032年と2033年に完成させる計画である。国際原子力機関(IAEA)の統計によると、韓国では2021年に国内の24基、計2,341.6万kWの原子炉で総発電量の28%を供給した。今後の電源構成について、基本計画では2023年時点の原子力発電設備を2,610万kW(総発電設備の17.5%)とし、2026年と2030年には2,890万kWまで拡大(それぞれ17.1%と14.6%)。その後、2033年と2036年に3,170万kW(それぞれ14.3%と13.2%)とする。発電量のシェアについては、2030年に原子力で2,017億kWhを発電して総発電量の32.4%を供給、2036年には2,307億kWhの発電量で全体の34.6%を賄うとしている。韓国の電源別発電量および発電シェアの見通し(参照資料:MOTIEの発表資料(韓国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Jan 2023
2586
米ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で、3、4号機(各ウェスチングハウス社製のAP1000、110万kW)を建設しているジョージア・パワー社は1月11日、今年の第1四半期(2023年1月~3月)中に予定していた3号機の送電開始を4月に延期すると発表した。これは、同社および親会社のサザン社が証券取引委員会(SEC)に提出したレポートの中で明らかにしたもの。延期理由としては、同じくサザン社の子会社で3、4号機の運転を担当予定のサザン・ニュークリア・オペレーティング社が、3号機の運転開始前試験と起動試験で冷却系配管の一部に振動を認めたため。同社は現在、修理作業を実施しており、原子力規制委員会(NRC)に対し、この作業を迅速に進めるため運転認可の修正を要請する方針である。この延期にともない、同プロジェクトに45.7%出資しているジョージア・パワー社は、これまでの建設費や試験費に加えて月額で最大1,500万ドルの(税引き前)資本コストを負担する必要がある。また、同プロジェクトにそれぞれ、30%と22.7%、および1.6%出資しているオーグルソープ電力とジョージア電力公社(MEAG)、およびダルトン市営電力にも影響が及ぶと思われる。ボーグル3、4号機の増設計画は米国で約30年ぶりの新設計画であり、それぞれ2013年3月と11月に本格着工した。同様にAP1000設計を採用したサウスカロライナ州のV.C.サマー2、3号機建設計画は、2017年3月のウェスチングハウス社の倒産申請を受けて中止となったが、ボーグル計画ではサザン・ニュークリア社がWH社からプロジェクト管理を引き継いで建設工事を継続してきた。3号機では2021年7月に温態機能試験が完了し、燃料の装荷も2022年10月に完了した。今後のスケジュールは主に、機器類の最終試験や運転前試験、および起動試験の進展状況に左右されるが、サザン・ニュークリア社は現在、ベンダーや契約企業、請負企業の管理や現場労働者の生産性監督、コストの上昇問題等に取り組んでいる。同型炉が中国で運転を開始してまだ数年ということから、新たな技術を導入した一部のシステムや構造物、機器類で設計変更や修理が必要になる可能性もあり、その場合はスケジュールのさらなる遅延やコストの上昇もあり得るとしている。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Jan 2023
2202
昨年10月にスウェーデンで発足した中道右派連立政権のU.クリステション首相は1月11日、環境法に記されている原子力関連の制限事項の撤廃を提案した。多くのサイトで原子炉の新設を可能にすることが目的。現行法では、新たなサイトでの原子炉建設が禁止されているほか、同時に運転できる原子炉の基数も10基までに制限されている。これらを撤廃することで、クリステション政権は中道左派の前政権が提唱していた「2040年までに100%再生可能エネルギーのエネルギー供給システムに移行」を、「(再エネのみに限定しない)非化石燃料100%のシステム」に変更。小型モジュール炉(SMR)も含めた数多くの原子炉を国内で建設することにより、CO2を排出せずに安価な電力を潤沢に発電し、産業界や輸送部門の電化を進めていく。また関係雇用を創出しスウェーデンの競争力を強化、グリーンなエネルギーシステムへの移行を促進する。原子力発電は堅固なエネルギー供給システムを構築するインフラとして、同国のエネルギーミックスに必要だと強調している。クリステション首相は今回、この提案を気候・企業省で気候・環境問題を担当するR.ポルモクタリ大臣とともに発表した。同提案については、今後3か月にわたり一般から幅広く意見を募集し、今年の夏以降に正式に法改正を提案、2024年3月にも改正法を発効させたいとしている。クリステション政権は右派勢力である穏健党などの3党、および閣外協力するスウェーデン民主党による連立政権で、原子炉の新設と維持に関する今回の方針は、2022年10月にティード城における4党の政策協議で合意されていた。この「ティード合意」では、2045年時点の電力需要が少なくとも3,000億kWhになることを見込んでおり、現在の倍の規模となるこの需要を安定的に満たすため、原子炉の新設を含め、合計4,000億クローナ(約4兆9,400億円)の投資を実施する。具体的な方策として同首相は今回、規制当局であるスウェーデン放射線安全庁(SSM)の予算を拡充し、既存炉や新設炉に関する許認可手続きを規制の見直しで迅速化すると表明。原子力の研究開発予算も増額する。また、より多くの事業者が原子炉を建設できるよう門戸を開き、SMRの建設と運転に向けた条件整備として関係規制を制定。SMRでは発電のみならず、水素や高温熱の製造にも利用を広げる方針である。スウェーデンでは現在、6基の商業炉で総発電量の3割を発電するなど、原子力は水力と並ぶ主力電源だが、1980年には前年のTMI事故とその後の国民投票の結果を受け、2010年までに脱原子力を達成するという政策を施行した。1999年と2005年にバーセベック1、2号機を閉鎖したものの代替電源の確保が進まず、2006年に発足した中道右派政権は2010年に脱原子力政策を見直し、当時運転中だった原子炉10基に限り建て替えを認める法案を議会に提出、同年6月に可決された同法案は2011年1月に発効した。しかし、2014年9月に社会党を中心とする中道左派連立政権(前政権)が発足。政権内の政策協議で、「原子力は将来的に再生可能エネルギーとエネルギーの利用効率化で代替する」、「原子力発電所の安全要件を厳格化し、放射性廃棄物基金の徴収額を増額する」などの方針を打ち出し、再び原子力利用を制限する方針に傾いていた。(参照資料:スウェーデン政府の発表資料(スウェーデン語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Jan 2023
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中国核能行業協会(CNEA)によると、中国広核集団有限公司(CGN)の「華龍一号」設計を採用した防城港原子力発電所3号機(PWR、118万kW)が1月10日、送電を開始した。中国では現在、52基、約5,400万kWの原子炉が営業運転中のほか、小型の高温ガス炉(電気出力21.1万kW)を含めた2基が試運転中。2022年12月に初臨界を達成した防城港3号機は、これらに続く原子炉となる。第3世代のPWR設計である「華龍一号」は、CGNと中国核工業集団公司(CNNC)、双方の第3世代炉設計を一本化して開発したもの。2015年12月に本格着工した防城港3号機は、CGN版「華龍一号」の初号機であり、その一年後に着工した同4号機(PWR、118万kW)とともに、CGN版設計の実証プロジェクトに位置付けられている。CNNC版の「華龍一号」はすでに2021年1月と2022年3月に、福建省の福清5、6号機として営業運転を開始。パキスタンのカラチ原子力発電所でも、2021 年5月以降に2基が営業運転中となっている。CGN版については、広西省・防城港の2基に続いて浙江省の三澳原子力発電所1、2号機、および広東省の太平嶺原子力発電所1、2号機にも採用され、建設工事が行われている。中国国外では、2015年10月にCGNが英EDFエナジー社のヒンクリーポイントC原子力発電所建設計画に33.5%出資することを約束した際、ブラッドウェルB原子力発電所としてCGN版「華龍一号」を建設することでEDFエナジー社と合意。これにともない、英国仕様の「華龍一号」である「UK HPR-1000」について包括的設計審査(GDA)が行われ、2022年2月に原子力規制庁(ONR)から「設計承認確認書(DAC)」が、環境庁(EA)からは「設計承認声明書(SoDAC)」が発給されている。同設計はまた、欧州の電力企業16社が定めた安全基準「欧州電気事業者要件(EUR)」に適合していると2020年11月に承認された。EURへの適合は、EU(欧州連合)市場への輸出に際し、「設計標準」の一つに認定されたことを意味している。防城港原子力発電所にはCGNと広西投資集団公司がそれぞれ61%と39%出資しており、CGNは同発電所で最終的に、6基、600万kWの原子炉建設を計画。第2世代改良型の「CPR1000」を採用した1、2号機(各PWR、108.6万kW)は、2016年から営業運転中である。6基揃うと年間約480億kWhが供給可能となり、約3,974万トンのCO2排出量を抑制できるという。(参照資料:中国核能行業協会の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Jan 2023
2004
ベルギー首相府の1月9日付発表によると、国内で最も新しい原子炉2基の運転期間を2035年まで10年延長するため、ベルギー政府が電気事業者エレクトラベル社の親会社である仏エンジー社と主要事項に関する予備的合意案に署名した。同国のA.デクロー首相とエネルギー省のT.バンデアストラッテン大臣が同日、記者会見で詳細を発表、1985年に営業運転を開始したドール4号機とチアンジュ3号機(各PWR、100万kW)を40年目の2025年に一旦停止した後、2026年11月に再稼働させることを目的としたもの。これら2基の運転継続に向け、ベルギー政府とエンジー社は2022年7月、その実行可能性や長期運転(LTO)の前提条件に関する交渉の継続等で原則合意しており、今回これらの事項を具体化することとなった。ベルギーではチョルノービリ原子力発電所事故後の2003年、緑の党を含む連立政権が脱原子力法を制定しており、既存の原子炉7基の運転期間を40年に制限するなどして、2025年までに脱原子力を達成することになっている。しかし、2020年に発足した7政党の連立政権は2021年12月、これらを2025年までに全廃することで原則合意したものの、現時点でも総発電量の約5割を供給するこれら原子炉7基の代替電源が確保できていないことから、最も新しいドール4号機とチアンジュ3号機については、エネルギー供給を保証できない場合に限るという条件で運転継続する可能性を残していた。その後、2022年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、欧州各国の天然ガス調達に大きな影響が出るなど、エネルギー供給を巡る状況は大きく変化。ベルギーの原子力規制当局が同年1月、これら2基の運転期間延長を条件付きで認めていたことから、ベルギー政府は2022年3月、これらの運転を2025年以降も継続し、合計約200万kWの原子力発電設備を2035年まで維持する方針を決定した。首相府によると、両者が今回合意した文書は、今後数か月以内に完全な合意協定を締結するための下地となる。この文書では、運転の継続に向けて関係当局から承認を得る手続きが必要になるため、環境影響面と技術面の調査を直ちに開始することなどが盛り込まれている。具体的には、両炉の運転延長期間中、ベルギー政府とエンジー社が均等に出資する合弁企業がこれらの管理にあたるが、その実施に向けた法改正手続きや欧州委員会の承認取得手続きの概要、2基から出る放射性廃棄物の処理経費に上限を設けるための枠組みなどを明記。また、これに必要な技術面と財政面のパラメーターを今後数週間以内に確定する態勢も明確化したほか、事業者がこれら2基を適切に運転することを保証する事項も定めている。(参照資料:ベルギー首相府の発表資料(フランス語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Jan 2023
2082
英国原子力産業協会(NIA)の1月5日付発表によると、デンマークの原子力技術開発企業であるコペンハーゲン・アトミクス社が、第4世代の小型トリウム熔融塩炉(MSR)を英国の包括的設計審査(GDA)にかけるため、申請書を英国政府に提出した。審査に先立ち現在、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が、設計者に同審査を受ける能力が備わっているか確認中と見られているが、同社の英国法人であるUKアトミクス社はすでに、フルサイズの原型炉を建設済み。今年から様々な試験を実施して、この炉が英国の安全・セキュリティ面の厳しい基準をクリアしていることを示す「設計承認確認書(DAC)」を原子力規制庁(ONR)から取得する予定。環境保護と放射性廃棄物の管理面については「設計承認声明書(SoDAC)」を環境庁(EA)から取得し、2028年にも最初の商業炉を英国内で完成させる予定である。MSRは燃料として熔融塩とトリウムなどの混合液体を使用する設計で、北米では1950年代に米オークリッジ国立研究所を中心に開発が始まった。CO2を出さずにクリーンな電力を発電できるほか、既存の軽水炉から出る長寿命放射性廃棄物を大量に燃焼出来る等の利点があり、「第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)」は2002年に溶融塩炉を国際共同研究開発が可能な6種のコンセプトの1つに選定している。UKアトミクス社のMSRは、減速材として重水を使用するコンテナ・サイズのモジュール炉(SMR)で、熱出力は10万kW。560°Cの熱を顧客に供給する。また、燃料としてトリウムや既存炉の使用済燃料を使用するなど、ウラン燃料ベースの既存炉を根本的に改善した革新的な原子炉技術であると同社は強調。最終的に排出される廃棄物は大幅に削減され、廃棄物の貯蔵期間も10万年から300年ほどに短縮できるとした。同社はすでに8年前から、英国の複数の大学と同炉の主要技術や機器類の開発・試験と実証を進めている。今後は、自動車や飛行機の製造と同様に同炉を工場で大量に製造し、先進的原子炉開発分野を牽引したい考えだ。UKアトミクス社としては、将来的に数千基規模のMSRを製造・所有・運転することを計画しており、関連設備や技術など付随するサービスも含めた総合的なエネルギー・ソリューションの提供というビジネス・モデルを検討中。同モデルでは開発リスクが軽減される一方、コスト面の効果が高い。また、顧客は設備投資などの資本支出を必要としない上、同炉の運転にともなう支出も非常に小さく済むことから、同社はMSRで競争力の非常に高い電力を安価で提供し、クリーンエネルギーへの移行を世界レベルで加速することができるとしている。BEISは2021年5月、GDAの審査対象としてSMRその他の先進的原子炉技術を含めると表明した。これを受けて、ロールス・ロイスSMR社は同年11月、同社製SMRのGDA申請書をBEISに提出。米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社も2022年12月に同社製SMRをGDAにかけるため、申請書を提出している(参照資料:NIA、BEIS、UKアトミクス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Jan 2023
2032
米ニュースケール・パワー社は1月4日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」のうち、単基の電気出力が7.7万kWのモジュール設計について、1日付で原子力規制委員会(NRC)に「標準設計承認(SDA)」を申請したと発表した。NRCはすでに2020年9月、出力5万kWのNPMに対してSDAを発給済み。ニュースケール社は2018年6月にモジュールの出力を20%増強して6万kWとし、さらに2020年11月には先進的試験のデータやモデリング・ツールによる分析結果から、出力を25%増強した7.7万kW版を設計していたもの。今回の申請は、顧客が希望する出力レベルに応じて、同NPMを6基搭載した原子力発電設備「VOYGR-6」(出力46.2万kW)の建設を念頭に置いている。7.7万kW版も基本的な安全性能は5万kW版と同じであり、この出力増強によってNPMの経済性はさらに改善されると強調している。ニュースケール社によると現時点でNRCの承認が得られたSMRはNPMのみであり、このことは同社のみならず原子力産業界全体にとって重要な節目となった。最初の1件が承認されたことで、2件目の審査は一層効率的かつ効果的に進むと同社は指摘。7.7万kW版のNPMについては、すでにNRCが申請前から予備的協議と申請の準備状況に関するレビューを進めていたという。NRCがNPMの安全性を認めたことで、「VOYGR」の建設を目指すルーマニアやポーランドの計画が過去2年の間に大きく進展した。ルーマニアでは2022年5月に、国営原子力発電会社(SNN)が建設サイトのオーナーとともにニュースケール社と了解覚書を締結。SNNは同年10月、民間のエネルギー企業と共同でプロジェクト企業を設立した。ポーランドでは2021年9月、鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社らがニュースケール社と協力覚書を締結。採掘事業に必要な電力や熱エネルギーを石炭火力発電所ではなく、SMRで供給することを検討している。2022年2月には、両社は「VOYGR」の建設に向けて先行作業契約を締結した。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Jan 2023
2418
韓国のサムスン重工業(SHI)は1月4日、デンマークのシーボーグ(Seaborg)社製コンパクト溶融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮揚式の原子力発電所「CMSRパワー・バージ」の概念設計を完了したと発表した。また、アメリカ船級協会(ABS)から、初期段階の実行可能性を認証したことを意味する「原則承認(AIP)」を取得したことを明らかにした。SHI社の造船技術と溶融塩炉の開発企業であるシーボーグ社の技術を融合した「CMSRパワー・バージ」は、電気出力10万kWのCMSRを2~8基搭載でき、24年間稼働が可能。船体には蒸気タービン発電機や陸上の送・配電施設と接続する設備も備わっており、設置点まではタグ・ボート等で曳航されるためサイト選定上の制約が少ない。また、製造期間が約2年と短いことから、コストも大幅に軽減されると指摘している。今後は同バージの設備について詳細設計を進め、2028年までの商業化を目指す方針だ。同バージは化石燃料発電所を代替する熱電併給設備として需要が見込まれるだけでなく、水素製造や海水脱塩、産業用の熱供給施設にも幅広くエネルギーを供給できるとしている。SHI社はすでに2021年6月、溶融塩炉(MSR)技術に基づく小型モジュール炉(SMR)で海上浮揚式原子力発電所や原子力船を開発するため、熱電併給可能なSMR「SMART」(電気出力10万kW)の開発実績を持つ韓国原子力研究院(KAERI)と協力協定を締結した。その際KAERIは、MSR内部で異常信号が発生した場合、液体燃料の溶融塩が凝固するよう設計されているため重大事故の発生を抑制できると説明。このような固有の安全性に加えて、MSRには電力と水素を効率よく生産できるという利点があり、次世代のグリーン水素製造など様々な分野で活用が可能である。2022年4月には、SHI社は溶融塩炉の技術についてシーボーグ社と戦略的技術協力の覚書を締結した。この覚書に基づき、両社は「CMSRパワー・バージ」をターンキー契約で製造・販売し港湾に係留するほか、陸上の送電施設と接続することを計画。協力オプションとして、同バージの近くに水素やアンモニアの製造プラントを共同建設し、同バージから安全かつクリーンな電力を安定的に供給するとしている。SHI社の開発担当者は、「引き続き海上浮揚式原子力発電所の開発を進め、将来的に新たな市場を開拓していきたい」と述べた(参照資料:サムスン重工業、シーボーグ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Jan 2023
3465
フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は12月21日、試運転中に給水ポンプ内で機器の損傷が見つかったオルキルオト原子力発電所3号機(OL3)(欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)について、「27日に試運転を再開して残り約10項目の試験を実施し、3月8日には営業運転を開始する」と発表した。試運転期間中に同炉が発電する電力量は約13億kWhとなる見通しだが、これは、フィンランドにおける総電力需要の約15%に相当する。同炉では試運転中の10月中旬に保守点検を実施した際、タービン系の給水ポンプ4台すべてで内部の羽根車に数センチ程度のクラックが認められた。TVOは羽根車の一つを分割して3つの研究所に送り、数学的モデリングや分析調査を行いながら試運転を再開する機会を探っていた。現時点で根本的な原因は不明だが、TVOは包括的な調査の大部分を完了したと表明。クラックの発生理由として、「試運転の際に通常の使用範囲から外れた異常な条件下でポンプを使用したため、正常値より大きなひずみがかかった可能性が高い」と説明しており、羽根車の設計を変更した上でポンプを適切に操作することにより、同様の損傷を回避することができると述べた。差し当たり、現行モデルの正常なスペア羽根車を取り付けたポンプ2台と、クラック入り羽根車のポンプ2台で暫定的に試運転を再開する方針で、クラック入りポンプのうち1台は予備用となる。給水ポンプはタービン系の内部に設置されることから、TVOは原子炉の安全性に大きな問題はないとしている。TVOはまた、試運転再開の判断に先立ち、ポンプの複数の使用オプションについて事前に評価した。異なるモデリングを活用した上で、現行のスペア羽根車の使用が適切であるか、クラック入りポンプを修理した場合や同ポンプで運転継続した場合に発生する可能性のある事象、新しいスペア羽根車の設計と耐久性等を徹底的に調査。この作業には、同炉の機器サプライヤーやTVOの専門家に加えて、諸外国の科学コミュニティからも多くの専門家が参加している。試運転再開後のスケジュールについて、TVOは11日間にわたり同炉の出力レベルを数段階に変化させるとしており、フル出力による試験を終えた後は発電を約4週間停止して給水ポンプを点検する。新たな設計で製造中の堅固な羽根車が2月末から3月初旬にサイトに到着予定であるため、TVOは営業運転開始前の約1か月間、ほぼフル出力で同炉を連続運転できるよう、既存の羽根車の点検と新たな羽根車に変更する期間を十分確保する方針である。(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Dec 2022
2471