「SSR-W」の構造図©Moltexカナダの連邦政府は3月18日、東部のニューブランズウィック(NB)州が進めている小型モジュール炉(SMR)の技術研究開発を支援するため、総額5,600万カナダドル(約48億7,400万円)以上の資金供与を行うと発表した。その内訳は、NB州内で商業規模の実証炉建設が計画されている2つのSMR設計のうち、「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」を開発した英モルテックス・エナジー社に対して、「戦略的技術革新基金(SIF)」から4,750万加ドル(約41億3,600万円)、大西洋地域開発庁(ACOA)の「技術革新による地域経済成長(REGI)プログラム」から300万ドル(約2億6,000万円)を支出する。これに加えて、SMR実証炉の建設予定地であるポイントルプロー原子力発電所の準備資金として、同炉を所有する州営電力のNBパワー社に約500万加ドル(約4億3,500万円)、NB州内でSMR技術の開発研究を支援しているニューブランズウィック大学・原子力研究センターの能力を拡充するため約56万加ドル(約4,900万円)をACOAから提供する方針である。連邦政府の考えでは、これらの支援を通じてCO2排出量が削減され、カナダがクリーンな経済成長に移行するために役立てることが出来る。連邦政府の「技術革新と能力の増強計画」にも、高度な能力を持つ人材が育ち、将来的な経済成長と技術革新の主要要素となる新しい基盤技術の研究が進展。カナダのSMR技術開発、およびその長期的なビジョンを示した「SMRアクション計画」をも下支えすることになる。今回の決定について連邦政府のF.-P.シャンパーニュ技術革新・科学産業相は、「このような革新的技術の開発利用を連邦政府が支援することで、低炭素なエネルギー源の開発が促進され、世界のSMR開発におけるカナダのリーダーシップが確立される」と強調。「連邦政府は新型コロナウイルスによるパンデミック後の復興も含め、一層豊かで健全なカナダのために基盤を築かねばならないが、今回の資金援助は地球温暖化との戦いやパンデミック後のカナダ経済の安定性を取り戻す上で、重要な役割を担うことが期待される」と指摘した。NB州の「SSR-W」実証炉計画NB州政府が、モルテックス社製「SSR-W」の実証炉を2030年までにポイントルプロー原子力発電所のサイト内で建設すると表明したのは2018年7月のこと。同州政府によれば、先進的なSMR技術の開発は安全・確実かつクリーンで経済的な原子力エネルギーを開発する一助になる。また、エネルギー需要を満たすだけでなく、輸出の機会も得られるようなエネルギー・ソリューションの開発で、同州はカナダのリーダー的立場の確立を目指すとしている。モルテックス社の発表では、出力30万kWの「SSR-W」は既存炉の使用済燃料を低コストで新燃料に転換できるため、NB州内では将来、使用済燃料の処分問題に解決の道筋をつけることができる。同社はポイントルプロー発電所の敷地内でその商業規模の実証炉を建設するほかに、廃棄物を安定塩にリサイクルする施設「WAste To Stable Salt (WATSS)」の建設も計画。2030年初頭にもSMRを完成させて、無炭素な電力をカナダ国内に送りだしたいとしている。モルテックス社はまた、同設計の開発にSIF基金から4,750万加ドルが提供されるのを受けて、自らも同額の資金を拠出する方針である。これらを合計した金額で「SSR-W」と「WATSS」の設計を一層前進させ、カナダ原子力安全委員会が同設計について実施中の「許認可申請前設計審査(ベンダー設計審査)(VDR)」を第2フェーズに進めていく。ACOAからの300万加ドルもWATSS研究のさらなる促進に利用する方針で、このような技術の商業化が急速に進展すれば、カナダでは付加価値の高い数百人規模の雇用が創出される。これらの雇用は15年間で約10億加ドル(約870億円)の国内総生産(GDP)への寄与を生み出し、連邦政府に1億加ドル規模(約87億円)の歳入をもたらすと強調している。(参照資料:カナダ連邦政府、モルテックス・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Mar 2021
3137
韓国水力・原子力会社(KHNP)は3月17日、ロシアのASEエンジニアリング社(JSC・ASE・EC)がエジプトから請け負った原子力発電導入計画に参加するため、16日付けでエジプトのペトロジェット(Petrojet)社との協力合意契約書に調印したと発表した。ペトロジェット社は、エジプトの国営石油会社が保有する主要なエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)企業。これによりKHNP社は現地パートナーとの協力を本格化し、事業参加の基盤を確保する方針である。発表によると、この契約にはKHNP社のほかに韓国電力技術(KEPCO E&C)と現代建設、および斗山重工業が加わっている。これらの企業が、韓国およびアラブ首長国連邦(UAE)のバラカ発電所建設計画で蓄積した経験と事業遂行能力に基づき、エジプト企業との協力を推進する考え。建設計画は来年から本格的な開始が予定されているため、KHNP社はASEエンジニアリング社からタービン建屋や屋外施設などのEPC契約受注を目指す。また、現地の技術者や専門家の養成も支援する方針で、一過性ではない長期的な協力関係をエジプトと築きたいとしている。エジプト政府は首都カイロの北西130kmの地点で、同国初の原子力発電設備となるエルダバ発電所(120万kWのロシア型PWR:VVER×4基)の建設を計画。同国の電力・再生可能エネルギー省は2017年12月、ASEエンジニアリング社の親会社であるロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社と、建設工事の開始に必要な一連の契約書の最終文書となる「通知条項」に調印した。これに基づき、ロシア側は原子炉4基の建設に加えて、発電所が稼働する全期間を通じて原子燃料を供給する。また、発電所の運転開始後10年間は運転・保守関係の支援を提供するほか、エジプトの人材育成にも協力。さらに、使用済燃料の専用貯蔵施設をエジプトで建設する。この計画については2018年10月、米国のGEパワー社がロスアトム社の発電機器製造部門であるアトムエネルゴマシ社との合弁事業体を通じて、4基分のタービン系統機器を納入すると発表した。また、完成した原子炉4基を所有・運転する予定の原子力発電庁(NPPA)は2019年3月、エジプト原子力・放射線規制機関(ENRRA)からサイト許可を受領、同計画は2026年の初号機起動を目指して大きく動き出している。なお、この事業に国外から参加するには、エジプト政府の要求どおり従業員の20~35%をエジプト人とする必要があるため、今回参加した韓国企業もエジプト国内で一定数の従業員を雇用すると見られている。(参照資料:KHNP社の発表資料(韓国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Mar 2021
3235
米ウェスチングハウス(WH)社は3月15日、ポーランドが進めている民生用原子力発電(導入)プログラムへの協力で、米国から技術移転することや米国企業による包括的投資構想の策定などを計画していることを明らかにした。これらは、今月初旬にポーランドの原子力発電プログラムの実施に向けた両国の政府間協力協定(IGA)が発効したのを受け、同社のP.フラグマンCEOがポーランドの首都ワルシャワで、P.ナイムスキ戦略エネルギー・インフラ特任長官と協議した後、発表された。WH社がポーランドの原子力パートナーとして選定された場合、同社はポーランド国内で2,000名以上の関係雇用が創出されるよう原子力サプライチェーンの構築に尽力し、質の高い原子炉機器や専門的知見の提供を保証するとしている。ポーランドでは、2月初旬に内閣が燃料・エネルギー部門における2040年までの重要政策「PEP2040」を正式承認した。この中の「改定版・原子力発電プログラム」は同国の戦略的プロジェクトの1つと位置付けられており、国内で閉鎖された石炭火力発電所の代わりとして、2043年までに第3世代あるいは第3世代+(プラス)のPWRを合計6基(600万~900万kW)建設すると明記。2033年に初号機が運転開始した後は、2~3年毎に後続の5基を起動していく計画である。この分野における米国とポーランドの協力については2020年10月、米エネルギー省(DOE)のD.ブルイエット長官(当時)がIGAに署名している。その後、ナイムスキ特命長官による署名も含め、ポーランド側の手続が完了したことからIGAが発効。双方が発効要件すべてを満たしたことが、両国の外交文書で確認されている。30年間有効な同IGAに基づいて、両国は今後ポーランドの原子力発電プログラムを実行に移すための方策や資金の調達方法について18か月にわたって協議し、報告書を作成する。この報告書は、ポーランドの原子力発電所建設パートナーとして米国が長期的に同プログラムに関与し、原子力発電所の国内建設でポーランド政府が最終決断を下す際の基盤となる予定である。今回の発表の中でWH社のフラグマンCEOは、「CO2の排出量や大気汚染、信頼性の高いエネルギーに対する需要の高まりといった課題に取り組むポーランド政府の姿勢や統率力を当社は高く評価している」と表明。その上で、「当社には原子力の技術革新で長年にわたる成功の伝統があり、ポーランドにおける今後のエネルギー供給保証や雇用の創出といった課題への取り組みに連携協力していく体制は整っている」と強調した。WH社によると、同社が開発した「AP1000」設計は高い安全性と操作性を原子力市場に提供。同設計を採用して中国で稼働中の発電所は今後も、卓越した設備利用率や燃料交換のための停止期間短縮などで、業界記録を容易に達成するとしている。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Mar 2021
2416
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は3月11日、サンクトペテルブルク西方のレニングラード原子力発電所6号機(II期工事2号機、119.9万kWのPWR)に対し、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)が10日付けで営業運転を承認したと発表した。今月末までに正式な文書手続きを完了し次第、同炉は営業運転を開始する見通しである。同炉は第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER)「AES-2006」を採用し、2010年4月に本格着工した。2020年9月に起動プロセスの最終段階である「最小制御可能出力(MCP)」レベル(*原子炉が臨界条件を達成する段階において、核分裂連鎖反応を安定した状態で維持するのに必要な1%未満の出力)に達した後、翌10月には国内送電網に接続されていた。同設計の採用炉としてはロシア国内で4基目であり、稼働中の大型商業炉としては34基目になる。レニングラード原子力発電所では、チェルノブイリ発電所と同型の100万kW級軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK)が4基、I期工事として稼働していたが、2018年12月と2020年11月に1、2号機がそれぞれ45年間の営業運転を終えて永久閉鎖された。II期工事の1、2号機はこれらのリプレース用として建設されており、ともに「AES-2006」設計を採用。同発電所の5号機であるII-1号機は2018年10月に営業運転を開始した。また、これに先立つ2017年2月に「AES-2006」を世界で初めて採用したノボボロネジ原子力発電所II期工事1号機が、さらに同型のノボボロネジII-2号機も2019年10月に営業運転を開始している。レニングラードII-2号機に関しては、昨年11月から4か月間にわたり異なる4段階の出力レベルでの起動プロセスの試験を重ねて来た。3月9日に15日間の最終総合試験が完了し、定格出力による運転に問題のないことが確認された。これにともないROSTECHNADZORは今回、同炉がロシアの技術規制と建設プロジェクトの設計要件に適合しているとの声明文を発表。営業運転の開始承認を受けて、同発電所のV.ペレグダ所長は「運転期間全体を通して、新しい原子炉は安全かつ持続的に操業できる」と明言した。営業運転を開始するまでに同炉は20億kWh以上発電する見通しだが、ロスアトム社の試算では、税金その他の経済効果として同炉はレニングラード州に年間30億ルーブル(約45億円)以上をもたらすことになるとしている。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Mar 2021
2434
国際連合(UN)経済社会理事会における地域経済委員会の一つ「国連欧州経済委員会(UNECE)」は3月11日、世界中の鉱物資源等の資源量と埋蔵量を正しく評価・分類するための国連枠組み規定(UNFC)を原子燃料資源に適用し、「持続可能な開発に向けた原子燃料資源の活用――原子力の導入に向けた経路(Use of Nuclear Resources for Sustainable Development―—Entry Pathways)」を報告書として公表した。それによると、世界のエネルギー部門は現在、大気を汚染しないエネルギー源に移行する大規模な転換期を迎えているが、これは社会経済的な開発を下支えするクリーンエネルギーの利用拡大が新興経済国を中心に必要となったため。これと同時に、地球温暖化や大気汚染といった環境上の危機が世界的に広がるのを抑えるためでもある。この移行を成し遂げる経路は複数存在しており、各国は保有する天然資源などそれぞれの状況を考慮して各自で決めた経路を辿ることになるが、2015年の国連サミットで採択された(持続可能な開発目標を中核とする)「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、このように難しい判断を下す際に不可欠のツールとなった。UNECEの今回の報告書は、エネルギーミックスの構成要素としての原子力の可能性を探るとともに、ウラン資源の活用がどのようにして持続可能な開発の基盤となるかを明示。これらの観点から、いくつかの国では原子力の推進を決めた一方、ほかの国では様々な理由から原子力の利用判断を下していない。報告書はエネルギー源の移行で原子力が果たす役割を一層理解する上で必要なものを示し、各国の政策決定者が判断を下す際の要請に応えたいとしている。世界ではすでに、原子力をそれぞれのエネルギーミックスに加えるべく、検討や計画の立案を進めている国が多数あり、報告書はこれらの国で適用できる重要オプションや課題となるもののいくつかを明確化した。また、これらの国で埋蔵されているウラン資源の活用など、原子力発電の推進と経済開発に資する各国・地域毎のファクターに焦点を当て、UNFCや国連資源管理システム(UNRMS)を適用することによって原子力の導入に向けた経路を探り出している。今回の報告書が重要見識として見出した事項には、以下のものが含まれる。・原子力は持続可能な開発という世界的検討課題を達成するために不可欠なツールであり、エネルギー部門の脱炭素化や貧困の根絶、飢餓のゼロ化達成、清潔な水の供給、価格の手頃なエネルギーの確保、経済成長、産業界の技術革新などの点で重要な役割を担っている。・原子力の導入を検討している国で適用が可能な導入経路は、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とも一致しており、国際原子力機関(IAEA)の「 マイルストーンアプローチ」に基づく原子力発電開発プログラムは、導入国がエネルギー需要や社会経済面、環境面の目標を達成し、地球温暖化の防止で国際的な誓約を順守する一助になる。・原子燃料サイクルと放射性廃棄物管理戦略の実行に際して持続可能なオプションは数多くあり、各国は経済開発やエネルギー供給保証の促進など、それぞれの必要性に合った戦略を採るべきである。・現在、利用できる原子炉設計は実証済みの成熟した技術に基づいており、80年間の運転継続が可能なものや高い安全性が確保されるもの、優れた運転性能を持つものがある。これらは、信頼性が高く価格も手ごろな低炭素電力を生み出すことから、各国が持続可能な開発目標を達成する一助になる。・現在、小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉設計の開発が幅広く行われており、この中には近い将来建設可能になるもの、柔軟性の一層高い運転や熱電供給の脱炭素化に適したものもあり、持続可能な開発を一層加速することになる。・原子力と再生可能エネルギーには技術面で互いに補い合う方法が数多くあり、それによってクリーンで信頼性の高いエネルギーを適正価格で供給するという共通目標の達成が可能である。(参照資料:UNECEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Mar 2021
2813
チェコ国営電力のCEZグループは3月9日、ドコバニ原子力発電所Ⅱ期工事(120万kW級PWR×2基)の立地許可が原子力安全庁(SUJB)から発給されたと発表した。ドコバニ発電所では、1980年代後半に運転開始したI期工事の4基(各51万kWのロシア型PWR:VVER)(=写真)が閉鎖時期を迎えるのに備え、出力の大きな5、6号機をⅡ期工事として建設する計画。立地許可の申請書は、CEZグループの「ドコバニⅡ原子力発電会社(EDU II)」が昨年3月に提出していたもので、プラント供給企業の選定や建設工事の実施に先立つ最も重要な準備手続である。SUJBは3月8日付けの発表の中で、「立地許可の発給を阻むような事実は見受けられなかった」と表明。この建設計画については同国のA.バビシュ首相が2019年11月、チェコのエネルギー自給を維持するため、Ⅱ期工事の最初の1基については2022年末までにプラント供給企業の選定を終え、遅くとも2029年までに建設工事を開始、2036年までに運転開始を目指すと述べている。CEZ社は2015年にドコバニ発電所Ⅱ期工事の建設準備を開始しており、この年に建設プロジェクトの準備と実施を担当する子会社としてEDU II社を設立した。EDU II社はⅡ期工事サイトの自然条件を調査したほか、建設プロジェクトの設計概念や、5、6号機の運転と将来の廃止措置が周辺住民と環境に及ぼす影響を予備的に評価。専門家による200以上の分析・調査結果も参照し、5年の歳月をかけて約1,600ページの立地許可申請書を作成した。同社はまた、2019年に環境影響声明書(EIA)も作成している。このほか昨年7月には、チェコ政府がCEZ社とEDU II社の3者で建設プロジェクトの枠組契約に調印。今回、原子力法に基づいて立地許可が発給されたことから、CEZグループは今後、プラント供給企業の入札公示や施設の配置設定などを行うとしている。CEZ社のD.ベネシュCEOは立地許可が発給されたことについて、「当社はⅡ期工事に必要な文書の作成など、準備作業その他の行政手続で膨大な努力を傾注している」と説明。これに加えて、「プロジェクトの実施に際しては可能な限り透明性が確保されるよう取り組んでおり、資機材の調達保証報告書など様々な関係資料も一般に公開している」と強調した。チェコでは一時期、テメリン原子力発電所の増設計画が進められていたが、チェコ政府が「完成発電所からの電力を固定価格で買い取る保証を与える事は出来ないと明言した」ため、同計画は2014年に頓挫している。ドコバニ発電所の増設計画については、2019年7月にチェコ政府がCEZ社の100%子会社を通じて建設資金を調達するという投資家モデルを承認。2020年5月には、A.バビシュ首相が記者会見で、「1基あたり60億ユーロ(約7,800億円)と言われている総工費の7割までを政府が低金利で融資する」と述べていた。また、ドコバニⅡ期工事のプラント供給企業に関しては、中国広核集団有限公司(CGN)とロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社、韓国水力・原子力会社(KHNP)、フランス電力(EDF)、米国のウェスチングハウス社が入札に関心を表明したと伝えられている。(参照資料:CEZ社、SUBJの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Mar 2021
2637
経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)は3月3日、福島第一原子力発電所事故後の10年間に日本の内外で取られた対応や教訓、今後の課題等をまとめた報告書を公表したが、W.マグウッド事務局長はその後10日付けで、関連のビデオメッセージを公開した。原子力関係者がこの10年に学んだことは、原子力発電所の運転には一層の強靱さが求められること、甚大な自然災害を想定するには最大限に謙虚である事の重要性だと指摘。一方で、原子力発電所が本質的に非常に安全であることも学んでおり、将来のエネルギー源の重要な一部にもなり得ると明言している。(参照資料:マグウッド事務局長のメッセージ(日本語字幕付き)、原産新聞・海外ニュース、ほか)*なお、原産協会では特集「ふくしまの今~復興と廃炉、10年の歩み~」を掲載しており、マグウッド事務局長から本件とは別の動画(約10分)を寄稿していただき掲載しています。ご参考に紹介します。原子力産業新聞特集「ふくしまの今~復興と廃炉、10年の歩み~」への寄稿
12 Mar 2021
2397
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は3月10日、トルコで建設工事を請け負っている同国初のアックユ原子力発電所で、3号機(120万kWのロシア型PWR:VVER)の原子炉建屋の基礎部分に最初のコンクリートを打設したと発表した。120万kWのVVERを4基建設するという同発電所の建設サイトでは、1、2号機の本格的な建設工事がそれぞれ2018年4月と2020年4月に開始された。今回、起工式に参加したロスアトム社のA.リハチョフ総裁は、「初号機の着工からたった3年で3号機の建設工事が全面的に始まった」と指摘。「建設プロジェクトは異例の早さで進展しており、完成すればトルコのエネルギー供給保証を支える重要基盤の一つになるだろう」と強調した。起工式にはトルコのR.T.エルドアン大統領とロシアのV.プーチン大統領もテレビ会議で出席、最初のコンクリート打設の実施を受けて3号機の本格着工を宣言した。同じ席でエルドアン大統領は「エネルギーへの投資は未来への投資だ」と述べており、原子力発電の導入はトルコのエネルギー構成を多様化するために進めていると説明。これと同様に、エネルギーの効率化と再生可能エネルギーの開発も重要視していると述べた。同大統領はまた、原子力発電をトルコのエネルギーインフラに加えることは、国家のエネルギー供給を保証する戦略的手段だと指摘した。原子力発電は温室効果ガスを出さないだけでなく、環境への悪影響もないとした上で、トルコが建国100周年を迎える2023年にアックユ1号機の運転開始を予定しているほか、残りの3基も順次完成させていくと表明。4号機については2020年5月に建設許可申請書を原子力規制庁(NDK)に提出しており、来年にも本格着工を予定していると述べた。これら4基により、トルコは国内電力需要の約10%を賄う方針である。ロスアトム社の発表によると、3号機の建設許可はすでに昨年11月にNDKが発給済みであった。16区画に分割した基礎スラブの1区画に付き1,100立法メートルのコンクリートを打設するため、使用するコンクリートの総量は1万7,000立法メートル以上にのぼるとしている。なお、ロスアトム社はこのほか、同社のトルコ子会社であるアックユ原子力発電会社(ANPP)が同日、アックユ原子力発電所の建設資金として、ロシアのソブコム銀行から7年間に渡る2つの契約で合計3億ドルの融資を受けることになったと発表した。アックユ原子力発電所建設計画では、世界の原子力分野で初めて「建設・所有・運転(BOO)」によるプロジェクト運営方式を採用しており、約200億ドルといわれる総工費はロシア側がすべて負担。発電所の完成後、トルコ電力卸売会社(TETAS)が発電電力を15年間にわたり購入して返済する予定である。融資条件の詳細は公開されていないが、ロスアトム社によれば、今回のソブコム銀行の「サステナビリティ・リンク融資(SLL)」では、アックユ原子力発電所が「持続可能な開発」という条件を履行した場合、金利の引き下げが適用される。(参照資料:ロスアトム社の発表資料①、②、トルコ大統領府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Mar 2021
3622
アラブ首長国連邦(UAE)の原子力規制庁(FANR)は3月9日、同国初の原子力発電設備であるバラカ発電所の2号機(140万kWのPWR)について、60年有効な運転許可をNAWAHエナジー社に発給したと発表した。NAWAHエナジー社は、UAEで原子力発電導入計画を進めている首長国原子力会社(ENEC)の子会社。完成した発電所の運転管理を担当することになっており、2号機については今後、起動と送電開始の準備を進めていく。FANRもこれにともない、発電所駐在の検査官のみならずその他の検査官も投入する方針。規制要件に沿って燃料の初装荷や出力の段階的上昇試験が行われるよう、24時間体制で点検作業を実施するとしている。バラカ原子力発電所はUAEのアブダビ首長国西部に位置しており、韓国製の140万kW級PWR「APR1400」を4基建設している。2012年7月に1号機が本格着工した後、約1年間隔で同型の2~4号機を順次着工。1号機については2018年3月に竣工式が行われたものの、運転員の訓練とFANRからの承認取得に時間を要することから、NAWAHエナジー社は燃料装荷などの準備作業を延期した。その後、国際原子力機関(IAEA)や世界原子力発電事業者協会(WANO)が同炉の起動前審査や安全評価を実施しており、FANRはこれらを通じて起動準備が整ったことを確認。2020年2月に運転許可を発給した後、同炉では翌3月に燃料の初装荷が行われた。同年8月に同炉はUAE初の原子炉として送電を開始、12月には定格出力に達したことから、近いうちに営業運転を開始できると見られている。2号機の運転許可申請書は、1号機の申請書と併せてENECが2015年に、NAWAHエナジー社に代わってFANRに提出していた。これらの申請書は1万4,000ページにおよび、FANRは発電所サイトの分析を地理学や人口への影響等の観点から実施するとともに、発電所のレイアウトや原子炉設計、冷却系、安全対策、緊急時対策、放射性廃棄物管理など220項目以上をチェック。さらに59件の追加情報をENECに請求して発電所がすべての規制要件に適合していることを確認したほか、運転管理会社のNAWAHエナジー社についても、組織構造やマンパワーの準備状況など発電所の安全確保に必要な項目すべてを評価したとしている。FANRの副会長を務めるアル・カービIAEA常駐大使は今回、「1号機に続き2号機で、再びUAEに歴史的瞬間が訪れた」と評価。「原子力発電開発利用プログラムにおける13年間の努力が実り、UAEはアラブ諸国として初めて商業炉を運転することになったが、これは将来的なエネルギー需要の増加に原子力の平和利用で対処するというUAEのビジョンとリーダーシップの賜物である」と強調した。バラカ原子力発電所の建設進捗率は発電所全体で95%に達しており、完成した1、2号機のほかに3、4号機の進捗率もそれぞれ94%と88%。4号機では昨年5月に冷態機能試験が完了している。(参照資料:FANRの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Mar 2021
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バルト三国の1つエストニアの新興エネルギー企業であるフェルミ・エネルギア社は3月8日、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製・小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」のエストニアでの建設に向け、実施中の適性評価をさらに進展させるため、同社と協力チームの結成協定を結んだと発表した。フェルミ社はまた、これに先立つ3月2日、英ロールス・ロイス社製・SMRの国内建設の可能性を探る目的で、同社と協力覚書を締結したことを明らかにしている。フェルミ社は、エストニアで第4世代の原子炉を導入することを目指して、同国の原子力産業界でSMRの開発と建設を支持する原子力科学者やエネルギーの専門家、起業家などが設立した企業である。同社はすでに、英モルテックス・エナジー社の燃料ピン型溶融塩炉「SSR-W300」、加テレストリアル・エナジー社の「一体型溶融塩炉(IMSR-400)」、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」、米ニュースケール・パワー社の「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」について、エストニアへの導入可能性を調査中。これらの設計がデベロッパーそれぞれの国で認可を受け次第、採用技術を最終決定する方針である。GEH社との協力について、フェルミ社はすでに2019年10月、「BWRX-300」の国内建設に関する経済面の実行可能性調査で同社と覚書を締結しており、今回のチーム結成協定はこれに続くもの。GEH社側が発表したリリースによると、両社の協力チームはエストニアにおけるSMRの許認可、人材育成とサプライチェーンの構築、建設に必要な情報の収集・分析の継続などでフェルミ社を支援していく。GEH社のJ.ボール執行副社長は「両社の連携を一層深めることで、エストニアがエネルギーの供給保証と地球温暖化の防止目標を達成する手助けをしたい」とコメント。革新的な技術を採用した「BWRX-300」であれば、エストニアが無炭素エネルギーを確保する理想的な解決策になると述べた。フェルミ社のK.カレメッツCEOも「今回の合意を通じて、2019年の覚書から始まった両社の協力を一層拡大していく」と表明。採用技術の最終決定に向けて一層詳細なデータを収集し、エストニアの国土政策計画に役立てたいとしている。一方、ロールス・ロイス社との協力についてフェルミ社は、同社製SMRの国内建設に関わるすべての側面を調査すると説明。具体的には、適性な送電網や緊急時計画区域の指定、人材育成計画、許認可体制、SMR発電所の経済性、サプライチェーンなどをカバーするとした。同社製SMRでは、規格の標準化により工場製作が可能な機器を装備するため、従来の大型炉と比べて建設費の大幅な削減と工期の短縮が可能。これにより、建設工事の遅れとそれにともなうコストの増加リスクを抑えられるとフェルミ社は考えている。「英国SMR企業連合」を率いるロールス・ロイス社は、英国政府との連携により今後10年以内に出力44万kWのSMRを英国内で複数建設し、英国がパリ協定の下で目標とする「CO2排出量の実質ゼロ化」を支援する方針。ロールス・ロイス社の企業連合には、仏国を拠点とする国際エンジニアリング企業のアシステム社、米国のジェイコブス社、英国の大手エンジニアリング企業や建設企業のアトキンズ社、BAMナットル社、レイン・オルーク社のほか、溶接研究所と国立原子力研究所(NNL)、および英国政府が産業界との協力により2012年に設置した先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)が参加している。(参照資料:フェルミ・エネルギア社(エストニア語)の発表資料①、②、GEH社、ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月4日付け、8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Mar 2021
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ドイツの連邦政府は3月5日、福島第一原子力発電所事故にともない脱原子力の達成時期を早めたこと等に対する補償金として、総額24億2,800万ユーロ(約3,134億円)を支払うことで原子力発電所を保有する電気事業者4社と合意に達したと発表した。また、これら4社はこの合意に基づき、連邦政府を相手取って係争中の関係訴訟をすべて取り下げることも約束。これらの合意事項は今後、ドイツ議会における審議と欧州委員会(EC)の承認を経て、国家と特定企業間の法的関係を定めた公法、およびドイツ原子力法の関係条項に盛り込まれることになる。補償額の内訳は、ドイツの原子力発電所の一部所有権を保有するスウェーデンのバッテンフォール社に14億2,500万ユーロ(約1,839億円)、RWE社に8億8,000万ユーロ(約1,134億円)、EnBW社に8,000万ユーロ(約103億円)、E.ON社の子会社であるプロイセン電力に4,250万ユーロ(約55億円)となっている。連邦政府が進める「遅くとも2022年末までに国内すべての原子力発電設備を閉鎖」という計画に影響はなく、連邦政府は閉鎖される前に発電できるはずだった電力量への補償(RWE社とバッテンフォール社)をこの金額で実行。2010年10月に「原子力発電所の運転期間延長法」が成立した後、電気事業者が発電所の運転期間を延長するために投入した金額も埋め合わせる(EnBW社など)ことになる。1998年に脱原子力政策が打ち出されたドイツでは2000年、原子力発電所を段階的に閉鎖することで連邦政府と電気事業者が合意した。送電開始から数えて32暦年という通常運転期間をベースに、各原子力発電所の残余運転期間と残余発電量を計算しており、再生可能エネルギーに移行するまでの期間、原子力によってクリーンかつ安定したエネルギーの供給を合理的に行うはずだった。また、2010年の「運転期間延長法」により、この当時稼働していた全17基の原子炉は、核燃料税およびエネルギー気候基金への払い込みと引き換えに、平均で12年間運転を延長できる見通しだった。しかし、福島第一原子力発電所事故の発生を受けて、連邦政府はその直後に一時的に運転を停止させていた古い原子炉7基と、改修工事のために長期停止中だった1基をそのまま永久閉鎖。これに加えて、1980年以降に運転開始した6基を2021年までに永久閉鎖するほか、残り3基も2022年までに閉鎖することを決定した。このような措置に対し、連邦憲法裁判所 は2016年12月と2020年9月に「電気事業者への補償が必要」との裁定を下している。ただし、その補償額とカバー範囲については連邦政府と電気事業者の間で合意に達していなかった。今回の合意により、プロイセン電力とバッテンフォール社は共同保有していたクリュンメル原子力発電所とブルンスビュッテル原子力発電所(ともに2011年に閉鎖済み)について、バッテンフォール社が保有する分の残余発電量をプロイセン電力が買い取り、自社発電所に割り当てることが可能になった。また、RWE社はミュルハイム・ケールリッヒ発電所(閉鎖済み)が発電するはずだった259億kWhについて、1MWhあたり33.22ユーロ(約4,288円)を受け取るほか、同発電所に投資した金額についても約2,000万ユーロ(約26億円)が補償されるとしている。(参照資料:ドイツ連邦政府(ドイツ語)、バッテンフォール社、プロイセン電力(ドイツ語)、RWE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Mar 2021
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経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)は3月3日、福島第一原子力発電所事故後の10年間に日本の内外で取られた対応とその進展、教訓、今後の課題等をまとめた報告書「Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident, Ten Years On:Progress, Lessons and Challenges」を公表した。OECD/NEAは、日本の政府当局はこの事故後、技術面や組織面で行動を起こし改革も実行するなど精力的に取り組んできたとの認識を示している。中でも、同事故で組織構造的な欠点が明らかになったことから、政府当局は原子力規制庁(NRA)を設置して原子力関係の規制・監督方法を完全に再設計、組織面のみならず、政策面や財政面においてその独立性を確保したとしている。OECD/NEAの報告書はまた、事故事象が発生した場合でも国内の原子力施設が一時的な停止から回復し安全な運転を保証するため、NRAが新たな規制要件を迅速に打ち出したほか、リスクインフォームド規制の考え方に基づいて新たな監視プロセスの導入も模索していると評価。日本はさらに、施設の安全性向上と緊急時対策をさらに進め、原子力損害賠償が保証されるよう法改正も行っているとした。しかし、日本が今後も長期的に復旧・復興の努力を続けていく上で、福島第一原子力発電所の除染のほか、事故や津波の影響を受けた周辺コミュニティの再活性化など、直面する課題はまだ数多く残っている。これには、技術的な問題のほかに規制や法改正関係の問題も含まれるが、OECD/NEAによれば、現在進められているコミュニティの再建や経済復興に関しては、彼らとの合意の下、コミュニティが一層強靭な社会的復活力を身に着けられるような枠組みを有効にしなくてはならない。今回の報告書はまた、OECD/NEAおよびその他の国際機関との協力を通じて、同事故の技術側面に関する理解がかなり深まっていると指摘。それによって、すべての原子力開発利用国で施設の安全性や緊急時計画、環境面や社会・経済面および政策的な側面が改善されるよう、支援を続けなくてはならないとした。こうしたことからOECD/NEAは今後、同事故の経験から関係する知見をさらに深めていくとともに、事故後の影響に対する日本の長期的な取り組みを一層強力に支援すると表明。以下の9分野について日本に提案を勧告、その進め方についても助言している。(1)原子力規制において、効率的でバランスの取れた独立性や公開性、透明性を確保する。(2)防護レベルを向上させるために原子力施設の安全システムを統一するなど、同一システムについて系統的かつ全体的なアプローチを取る。(3)難しい放射線環境下における安全性の維持や先進的ロボット技術の活用など、廃止措置技術の開発で国際協力に積極的に参加する。(4)福島第一原子力発電所の廃止措置を成功裏に実施するため、放射性廃棄物の管理・処分計画を十分に検討する。(5)どのような原子力損害に対して賠償が行われ、賠償額がどのように算出されるかなど、当事者が明確に理解できるよう、原子力損害賠償制度の適用と解釈について引き続き改善を図る。(6)ステークホルダーがリスク・コミュニケーションを一層深く理解し、一般国民が政策決定にさらに参加することを目指して、リスク情報を正確に伝えるための努力を継続する。(7)福島第一原子力発電所事故から復興するには、物理的側面や健康科学的面だけでなく環境面や社会・経済面、倫理面、感情面の考慮が必要なため、影響を受けた住民のメンタル的健康に一層配慮する。(8)廃止措置に使われる遠隔・ロボット技術などの新しい技術や方策を経済復興の原動力として活用し、経済的再開発の機会をさぐる。(9)福島第一原子力発電所事故は福島県民や日本国民、政府当局、そして世界のコミュニティにとって悲劇的な出来事だったが、この経験は学びと探求の源でもあるため知識管理システムを構築してその知見を継承することが重要である。(参照資料:OECD/NEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Mar 2021
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社の燃料部門であるTVEL社は3月1日、計画中の鉛冷却高速実証炉「BREST-300」に使用するウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料の設計が、モスクワ市にある同社の「ボチバール・ロシア無機材料研究所(VNIINM)」で完成したと発表した。TVEL社の子会社でトムスク州セベルスクにある「シベリア化学コンビナート(SCC)」では、すでに年内の完成を目指して「BREST-300」用のMNUP燃料製造加工プラントを建設中。MNUP燃料は同施設の完成を待って、商業生産されることになる。核燃料サイクルの確立を目標に掲げるロシアは、実績豊富なナトリウム冷却高速炉(SFR)の研究開発と並行して、鉛冷却高速炉(LFR)の研究開発も「ブレークスルー(PRORYV)プロジェクト」で進めている。同プロジェクトではSCC内に「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」を建設することになっており、その主要3施設として電気出力30万kWの「BREST-300」とMNUP燃料製造加工プラント、および「BREST-300」専用の使用済燃料再処理モジュールを併設することを計画している。今回の発表によると、TVEL社は今後もMNUP燃料の研究開発を継続し、燃焼による損傷の発生を抑える次世代のMNUP燃料を開発する方針。これは将来的に「BREST-300」の使用済燃料を再処理し、新燃料として再加工することを見据えたものになる。窒化物燃料を組み込んだ試験燃料集合体の照射試験は、2014年からベロヤルスク原子力発電所の高速原型炉「BN-600」(60万kW)で行われており、VNIINMは「BREST-300」用MNUP燃料の健全性試験ではすでに大幅な改善が見られたとしている。「BREST-300」用窒化物燃料の研究開発はまた、出力120万kWの商業用ナトリウム冷却高速炉「BN-1200M(=「BN-1200」のアップグレード版)」における窒化物バージョンの炉心開発にも大きく貢献。2022年には「BN-1200M」タイプの試験燃料集合体を「BN-600」に装荷して、健全性試験を実施する予定である。なお、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)は2月10日、SCC内で「BREST-300」を建設するための許可をSCCに発給した。ロスアトム社は同炉を2026年末までに完成させる方針で、2019年2月には原子炉建屋とタービン建屋、および関連インフラ設備の総合建設契約をエンジニアリング企業のTITAN-2社と締結。同炉は世界でも初の鉛冷却高速炉になると強調している。(参照資料:TVEL社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Mar 2021
3411
ブラジル原子力発電公社(Eletronuclear)は2月25日、建設工事が2015年以来中断しているアングラ原子力発電所3号機(140.5万kWのPWR)の作業を再開するため、一部の土木建築工事と電気機器組み立て工事について国内企業向けの入札公告を官報に掲載した。3号機の完成までには別途、EPC(エンジニアリング・資材調達・建設)契約企業を選定して、建設工事全体を委託することになるが、その前段階の作業を少しでも進めておくことが今回の入札の目的。5月までに土木建築工事の請負企業と契約を結び、10月には複数の構造物について改めて最初のコンクリートを打設する。その後、2022年後半にEPC契約企業との契約に調印し、2026年11月には3号機の運転を開始したいとしている。アングラ3号機は同1、2号機に次ぐ国内3基目の商業炉となる予定で、1976年に独シーメンス社に機器発注して開始されたが、景気の後退等により1986年に作業が中断した。政府の建設再開決定を受けて、原子力発電公社は2010年6月に3号機で最初のコンクリートを打設したほか、2011年には仏アレバ社から一部の機器を購入することで同社と合意。しかし、関係する汚職の調査や財政問題等により、建設工事は2015年9月に再び停止した。原子力発電公社の2月19日付け発表によると、アングラ3号機の建設再開については鉱物エネルギー省(MME)が最優先事項として進めており、昨年以降いくつかの打開策により大きく進展中である。議会の上院も2月初旬、アングラ3号機が発電した電力の価格改定を可能にする法改正を承認。建設プロジェクトで収益が確保されるよう、既存の電力供給契約を終了し新たな価格で契約を締結することが可能になった。アングラ3号機が発電する電力の基準価格は、ブラジル国立経済社会開発銀行(BNDES)が改訂することになっており、その算出に当たりBNDESは、建設プロジェクトの経済性維持と財政的実行可能性を考慮に入れる方針。BNDESはまた、同炉の完成までに必要な投資額を約150億レアル(約2,840億円)と試算していたが、これについても改訂を行うとしている。原子力発電公社のL.ギマランイス総裁は今回の入札公告について、「アングラ3号機の建設再開がようやく現実のものになった」と表明。同炉はブラジルの電力システムの供給保証強化と多様化に貢献するだけでなく、その発電電力はコストの高い火力発電所に取って替わることになると指摘した。同炉はまた、温室効果ガスを排出しないことから、ブラジルのエネルギー生産における脱炭素化をまた一歩前進させると強調している。(参照資料:ブラジル原子力発電公社(ポルトガル語)の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Mar 2021
3446
DOEのグランホルム長官©DOE米エネルギー省(DOE)は2月25日、元ミシガン州知事のジェニファー・M.グランホルム氏が同省の第16代長官として議会上院で承認され、就任宣誓を行ったと発表した。DOE長官を務めた女性としては、B.クリントン政権時代のH.オレアリー長官に次いで2人目。カナダからの移民であるグランホルム長官は、1984年にカリフォルニア大学(UC)バークレー校を卒業し、1987年にはハーバード大学の法科大学院を卒業。直ちにミシガン州の第6巡回区控訴裁判所で公務についており、1990年からはデトロイトで連邦検事、1994年には同州ウェイン郡の法人弁護士となった。1998年から2002年まで同州の司法長官、2003年から2011年まで同州の州知事を2期務めた後は、UCバークレー・公共政策大学院の特別栄誉実務教授として、クリーンエネルギーや法令、政策、産業などの問題を扱った。また、非営利の非政府組織であるピュー慈善信託では、クリーンエネルギー・プログラムのアドバイザーを務めていた。就任に際してグランホルム長官は、「DOEには優秀な科学者やエンジニア、エネルギー政策のエキスパートが揃っており、DOEの責務である新たなクリーンエネルギー技術の開発や配備を進めるには最適だ」と指摘。このようなスタッフなら、J.バイデン政権が目標の一つに掲げる「2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化」を達成し、米国の未来を保証することができるとした上で、「彼らとともに米国でクリーンエネルギー革命を始動し、関係する高給雇用を数百万人規模で創出、国中の労働者やコミュニティに利益をもたらしたい」と抱負を述べた。同長官はまた、宣誓式後にビデオメッセージとDOEブログへの投稿文を公表。DOEの長官として、クリーンな電力を廉価で豊富に発電する技術を配備してクリーンエネルギー革命を進め、地球温暖化に取り組んでいく覚悟を明らかにした。DOEの発表によると、同長官はミシガン州知事時代、リーマンショック後の世界的金融不況により自動車産業や製造部門の破たんを州内で経験したが、その対応策として、州経済の多様化を図るとともに自動車産業を強化、製造部門の維持とクリーンエネルギー部門の台頭を促した。今や、北米における電気自動車バッテリーの三分の一がミシガン州で生産されているほか、クリーンエネルギー関係の特許取得で同州は上位5州の一つとなった。さらに、新型コロナウイルスによる感染の拡大前は、12万6千人の州民がクリーンエネルギー関係の職に就いていたとDOEは強調している。米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長は同日、新長官の就任を歓迎すると表明した。「CO2排出量が一層少ない発電所の建設やクリーンエネルギー関係の雇用創出、経済の全面的な脱炭素化など、バイデン政権の地球温暖化防止プログラムを進めていく上で、グランホルム長官は極めて重要な役割を果たすだろう」と指摘。また、米国の確実な脱炭素化に向けて、原子力を含む無炭素エネルギーの価値が適切に評価されるよう協力していきたいと述べた。(参照資料:DOEとNEIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Mar 2021
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仏国の原子力安全規制当局(ASN)は2月25日、国内で1980年代前半に運転開始した32基の90万kW級PWRがそれぞれ40年稼働した後、追加で10年稼働させる際の諸条件を23日付で決定したと発表した。事業者であるフランス電力(EDF)が提案したすべての対策によって、これらの原子炉で運転開始後50年間、運転を継続させる見通しが立ったとASNは説明している。仏国では商業炉の稼働にあたり政府はASNに諮問して認可を発給しているが、運転期間に制限がなく、運転開始後10年毎に詳細な安全審査を実施して、次の10年間の運転継続で課題となる設備上のリスクや対応策等を評価している。今回対象となっている90万kW級PWRは、ルブレイエ発電所の4基、ビュジェイ発電所の4基、シノンB発電所の4基、クリュアス発電所の4基、ダンピエール発電所の4基、グラブリーヌ発電所の6基、サンローラン・デゾーB発電所の2基、およびトリカスタン発電所の4基。仏国内では最も古い部類に属することから、これらで2031年までに実施が予定されている4回目の安全審査では、設計時に想定した40年という期間を超えて運転を継続するには設計面の調査や、機器の取り換え等が重要となるとASNは述べた。今回の決定(2021-DC-0706)の中でASNは、仏国内の商業炉56基すべてを保有・運転するEDFに対し、EDFが自ら提案していた大規模な安全性向上工事や追加対策を実行に移すよう指示。これには格納容器のベントや炉心溶融物質による溶け抜け防止など、炉心溶融事故時におけるリスク軽減のほか、発電所内外からこれまで想定してきた以上に激しい攻撃を受ける場合の対策、事故時の放射性物質の放出量抑制、事故等の厳しい環境下における使用済燃料貯蔵プールの管理などが含まれるとしている。10年に一度の安全審査では、対象原子炉すべてに共通する事項の「包括的審査」に加えて、「それぞれの原子炉に特有の設備の審査」が行われるが、今回ASNが決定した要件は原子炉毎に適用される予定である。90万kW級PWRの4回目の安全審査に向けた「包括的調査」の一環として、EDFは2018年9月から2019年3月までの期間、「原子力安全情報・透明性高等委員会(HCTISN)」の支援を受けながら共通対策に関するパブリックコメントを募集。また、その結果を踏まえた決定事項の案文についても、ASNは2020年12月から今年1月にかけてパブリックコメントに付して、要件の修正や明確化を行っている。(参照資料:ASNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Feb 2021
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は2月24日、出力88.5万kWの「高速実証炉(BN-800)」として2016年11月から営業運転中のベロヤルスク原子力発電所4号機で、燃料交換時に初めてウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料のみを装荷したと発表した。これらの作業を終えた同炉は再び送電網に接続され、運転を再開している。運転開始当初、同炉の炉心はウラン燃料とMOX燃料のハイブリッド炉心となっており、2020年1月の初回の燃料交換時にMOX燃料集合体を18体装荷。今回新たに160体のMOX燃料集合体をウラン燃料集合体と交換したことから、同炉の炉心は三分の一までMOX燃料になった。ロスアトム社は今後の燃料交換でもMOX燃料のみを装荷していく予定で、2022年には同炉は「フルMOX炉心」で稼働することになる。高速実証炉である4号機の主な目的は、高速炉を活用した核燃料サイクルの様々な段階の技術をマスターすることで、同発電所のI.シドロフ所長は「原子力産業界における戦略的目標の実現に、また一歩近づいた」とコメント。「MOX燃料を使用することによって、燃料製造に使われない劣化ウランも含め、原子力発電の材料資源であるウランが有効活用されるほか、別の原子炉から出た使用済燃料を再利用することで長寿命核種など放射性廃棄物の排出量を削減できる」と強調した。ベロヤルスク4号機の初期炉心には、ディミトロフグラードの国立原子炉科学研究所(RIAR)が製造したMOX燃料集合体が含まれていたが、取り換え用のMOX燃料は、クラスノヤルスク地方ゼレズノゴルスクにある鉱業化学コンビナート(MCC)が製造した。原材料は、ウラン濃縮後の劣化六フッ化ウランから生成した劣化ウラン酸化物と、ロシア型PWR(VVER)の使用済燃料から生成したプルトニウム酸化物である。MCCで産業規模のMOX燃料を製造することは、2020年までを視野に入れたロシア連邦政府の目標プログラムに設定されており、ロシアの原子力産業界はMCC内にMOX燃料製造施設を設置するため、広範な協力体制を敷いている。これらの調整役を担うロスアトム社傘下の核燃料製造企業TVEL社によると、MCCでは2014年に6t/年の製造能力でMOX燃料製造施設の試運転を開始。最終的に60t/年の製造能力を目指しているが、2018年後半からは「BN-800」向けに取り換え用MOX燃料の連続製造を始めている。なお、TVEL社の担当副社長によると、MCCではBN-800用MOX燃料の製造と並行して、ロスアトム社の専門家チームが同様にMOX燃料の製造技術開発を続けている。VVERの使用済燃料から抽出したプルトニウムで新燃料を製造する技術はすでにマスター済みで、全自動の無人設備を使って最初のMOX燃料集合体が20体完成。原子炉への装荷に向け、検査もクリアしたと伝えている。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Feb 2021
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仏国のフラマトム社は2月22日、2020会計年度(2020年12月31日まで)における決算報告を公表した。金利・税金・償却前利益(EBITDA)が合計5億6,100万ユーロ(約719億円)と対前年比で6.4%増加した一方、収益や受注高はともに前年実績を下回る結果になったことを明らかにしている。2020年のEBITDAが拡大した理由は主に、様々なプロジェクトを円滑に遂行できたことやコストの削減で同社が努力を継続したことによる。2020年の受注高は総額28億6,900万ユーロ(約3,768億円)で、2019年実績の33億ユーロ(約4,230億円)から約13%下落したが、既存の原子力発電所や建設中原子炉に保守・エンジニアリング・サービスを提供する「設置基盤事業」、および「計測制御(I&C)系事業」に関しては、欧州や北米での活動が比較的堅調だったと指摘した。収益も32億9,500万ユーロ(約4,224億円)と前年実績から3.1%の減少となったが、これは新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大が同社の「設置基盤事業」部門と、いくつかの機器取り替えプロジェクトのスケジュールに大きく影響したためである。それでも同社はパンデミックの最中、これらの部門における作業量を顧客と調整しつつ継続。「設置基盤事業」部門では競争の激しい米国市場で実績が改善されたとしている。また、ブラジルで進められているアングラ原子力発電所3号機(140.5万kWのPWR)の建設プロジェクトでも、ドイツにある同社の製造拠点から引き続き機器類を納入したと述べた。フラマトム社はまた、「計測制御(I&C)系事業」部門では、英国や東欧、米国における新規原子炉建設や既存炉の補修事業で活動が活発に継続したと説明。機器の製造プロセスや品質向上計画に対して同社が行った投資は、「プロジェクト・機器製造(PCM)事業」部門における蒸気発生器や重機器の品質向上に繋がったほか、英国のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(172万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)建設プロジェクトと仏国内のフラマンビル3号機(165万kWのEPR)建設プロジェクトも、同部門の事業拡大に貢献した。同社はこのほか、2020年は「原子燃料事業」部門における燃料集合体の生産が順調だったと表明。これらは主に、米国の原子力発電事業者や英国唯一の軽水炉であるサイズウェルB原子力発電所(125万kWのPWR)に納入したとしている。(参照資料:フラマトム社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Feb 2021
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スペイン原子力安全委員会(CSN)は2月17日、同国最大の原子力発電設備で1984年8月に送電開始したコフレンテス発電所(109.2万kWのBWR)の運転期間を、2030年11月末まで9年半延長することを承認したと発表した。これにより、同発電所の運転期間は2024年時点で運転開始後40年が経過し、それ以降はいわゆる「長期運転(LTO)」期間に入る。CSNの今回の裁定は今後、環境移行・人口問題省に送られ、「原子力および放射線取扱い施設に関する規制(RINR)」に基づいて最終審査を受けることになる。スペインではTMIとチェルノブイリ両原子力発電所で事故の発生後、脱原子力政策によって新規原子炉の建設を禁止している。しかし、脱原子力の達成時期については明確に定めておらず、スペイン議会は2011年2月、CO2排出量を抑制するため、原子力発電所に課していた最大40年という運転期間の制限規定を撤廃。稼働中の商業炉(当時、合計8基)の運転期間は、規制当局などの助言に従い、政府が様々な条件を勘案して決定していくことになった。また、スペイン政府は2020年1月、欧州委員会の政策に基づき「2021年~2030年までの統合国家エネルギー・気候変動対策プラン(INECP)」を作成した。その中で、CO2排出量を2030年までに(1990年比で)少なくとも20%削減するとの目標値を設定しており、「商業炉を運転開始後40年で閉鎖するとなると、2030年を待たずにそのすべてが閉鎖され、CO2の20%削減は不可能になる」と指摘。理想的な条件の下で整然と脱原子力を進めるにはまだ十分時間があるため、現在稼働する7基のうち4基までを2030年までに段階的に閉鎖する一方、残り3基(約300万kW分)については2035年末までに閉鎖していくとの方針を明記している。CSNはコフレンテス発電所の運転継続裁定について、「同発電所の的確な運転状況や、安全レベルが適切に維持されているか等を確認して下した」と説明。発電所を所有・運転するイベルドローラ社の(CSN要件に対する)適切な対応も考慮に入れており、10年に一度の大掛かりな定期安全審査で指摘された課題に対し、同社が提案した様々な安全性改善対策が確認されたとしている。なお、CSNはこのほか、アルマラス原子力発電所についても運転期間延長を承認すると2020年5月に発表。1981年に送電開始した1号機(104.9万kWのPWR)は2027年11月1日まで合計46年間、1983年に送電開始した2号機(104.4万kWのPWR)については2028年10月末まで45年間運転することを許可した。また、2020年6月には(1987年に送電開始した)バンデリョスII原子力発電所(108.7万kWのPWR)の運転を2030年7月まで10年間追加で継続することを承認。同発電所の合計運転期間は43年間に達する見通しである。(参照資料:CSNの発表資料(スペイン語)、スペインのINECP、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Feb 2021
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インドの大手エンジニアリング・建設企業であるラーセン&トゥブロ(L&T)社は2月18日、同国の南端タミルナドゥ州のクダンクラム原子力発電所で建設が計画されている5、6号機の土木建築工事契約を、インド原子力発電公社(NPCIL)から獲得した。ボンベイ証券取引所に対するL&T社の同日付申告文書で明らかになったもの。正確な契約金額は公表していないが、プロジェクト規模の分類では「最大級」の100億ルピー~250億ルピー(約145億~364億円)に相当すると明記している。インドの商業炉は低出力の国産加圧重水炉(PHWR)が主流だが、クダンクラム原子力発電所では現在、同国で唯一の大型軽水炉が稼働(1、2号機)・建設(3、4号機)中である。これらはすべてロシア国営の原子力企業ロスアトム社が建設した100万kWのロシア型PWR(VVER)で、III期工事に相当する5、6号機についてもインドとロシアの両国政府は2017年6月、100万kW級VVER設計を採用して建設することで合意、一般枠組み協定(GFA)とプロジェクトの実施に必要な政府間信用議定書に調印した。同年7月には、NPCILがロスアトム社傘下のアトムストロイエクスポルト社と5、6号機の主要機器の設計・製造契約に調印。両炉の本格着工に先立ち、機器の調達手続きが始まったもので、建設プロジェクトは実質的に具体的な実施段階に移行していた。L&T社が請け負った建設工事は、5、6号機の原子炉建屋と補助建屋、タービン建屋、ディーゼル発電機棟、およびその他の安全性関係構造物で、工期は64か月を予定。同社は現在建設中の3、4号機についても、同様の土木建築工事を請け負っている。2017年に相次いで着工したこれら2基は、2023年末までに運転開始予定となっている一方、5、6号機に関しては今年後半に着工後、2030年までに運転を開始できると見込まれている。(参照資料:ボンベイ証券取引所の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Feb 2021
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米国のニュースケール・パワー社は2月17日、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所内で同社製の小型モジュール炉(SMR)を建設する可能性を探るため、コズロドイ原子力発電所増設会社(KNPP-NB)と協力覚書を締結したと発表した。コズロドイ発電所では現在、5、6号機(各100万kWのロシア型PWR=VVER)のみが稼働中だが、これらは同国唯一の原子力発電設備であり、総発電量の約35%を賄っている。ブルガリア内閣は昨年10月14日、欧州連合(EU)が目標に掲げる「2050年までに気候中立(CO2の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロ)を達成」を前進させるためにも、同発電所の設備容量拡大に向けた可能性調査や準備活動を実施すると閣議決定した。内閣はその際、世界の潮流に沿って、将来的にSMRを第3世代+(プラス)の大型炉に代わる選択肢として活用する方針を明示。コズロドイ発電所では設備容量の上限を定めていないため、原子炉の増設に向けて現在進めている活動の範囲を広げることや、様々な原子炉技術を考慮することなどを指示した。また、具体的な措置として、SMRのデベロッパーを含む米国企業と新たな原子炉技術の開発協力で交渉に入るなど、必要なアクションを取るようエネルギー大臣と国営エネルギー持ち株会社(BEH)に命じている。実際、ブルガリア政府は今年1月、頓挫したベレネ原子力発電所のために調達した一部機器を使って、コズロドイ発電所7号機の建設を検討すると発表している。この方法が最も経済的であり、環境面や技術面でも適していると述べた一方、SMRなどの新技術を採用した原子炉を建設する可能性についても調査を継続するとしていたニュースケール社が今回覚書を結んだKNPP-NB社は、既存のコズロドイ発電所サイトに新たな原子炉を建設するために設立された株式会社。閣議決定に沿って、KNPP-NB社は先進的な原子炉技術を同発電所に導入する方針であり、ニュースケール社のSMRについても技術的な適性を評価する。ニュースケール社側もKNPP-NB社のこのような活動に協力するため、様々な分析・調査をサポートする予定。具体的には、実行可能性調査の実施も含めた開発スケジュールの作成や費用見積もり、エンジニアリングや許認可手続きなど、ニュースケール社製SMRの導入で双方が合意した項目を支援していく。ニュースケール社は2016年12月末日、SMR設計としては初の設計認証(DC)審査を原子力規制委員会(NRC)に申請した。その後約4年半の審査を経て、NRCは2020年9月29日付けの連邦官報で、「電気出力各5万kWのモジュール×12基」で構成される同社製SMRに「標準設計承認(SDA)」を発給したと発表した。同設計の初号機については、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)がエネルギー省傘下のアイダホ国立研究所内で建設することを計画しており、ニュースケール社は2027年までに最初のモジュールを納入する考え。また、米国以外では、カナダやヨルダン、チェコ、ルーマニアで同社製SMRの建設可能性調査に関する覚書がニュースケール社と結ばれている。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、コズロドイ原子力発電所増設会社(ブルガリア語)の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Feb 2021
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米エネルギー省(DOE)の原子力局は2月9日、使用済燃料(SNF)と高レベル放射性廃棄物(HLW)の輸送用として予備的に設計した8軸(車輪が8対=16輪)のハイテク鉄道車両「Fortis」について、米国鉄道協会(AAR)からプロトタイプを製造し試験を開始するための許可が得られたと発表した。DOEはすでに、「Fortis」開発の次の段階であるプロトタイプの製造・試験契約の締結に向けて、契約オプションに関する情報提供依頼書(RFI)と市場調査通知(SSN)を産業界に向けて発出済み。予備設計通りのプロトタイプの製造と試験の実施で契約を2つに分けるオプションと、製造と試験を一本化したオプションの2種類について情報や意見の提供を求めている。首尾良く契約が結ばれて、試験車両が完成するまでに約18か月を要する見通しだが、DOEとしては5年以内に「Fortis」の運用を可能にする方針である。米国では「1982年放射性廃棄物政策法」に従って、DOEが全米の原子力発電所敷地内や中間貯蔵所に保管されているSNFとHLWの処分と、処分場までの輸送義務を負っている。SNF等の輸送容器(キャスク)は主に鋼鉄製の円筒型で、外部への漏洩防止のため溶接かボルトで密閉されている。重さも80~210トンに達することから、DOEは主に鉄道の利用をキャスクの輸送手段として想定している。「Fortis」はSNFキャスクのように大型のコンテナの積載に適したフラットな設計の車両で、ハイテク・センサーやモニタリング・システムを搭載。これらによって、輸送時に起こり得る11種類の状況をリアルタイムでオペレーターに伝えることができる。予備設計は今年初頭、パシフィック・ノースウエスト国立研究所の技術支援により完成しており、AARは鉄道産業界の厳しい設計基準に照らして「Fortis」を製造し、試験するようDOEに要求している。なお、DOEは「Fortis」のほかに、高レベルの放射性物質を輸送する12軸の車両「Atlas」の開発も進めている。「Atlas」ではすでに、単一車両のプロトタイプを使った試験をコロラド州プエブロで実施中。DOEは2020年代半ばまでに、これら車両の両方について運転許可をAARから取得するとしている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Feb 2021
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ロシアの原子炉機器製造企業のアトムエネルゴマシ(AEM)グループは2月12日、中国の遼寧省で中国核工業集団公司(CNNC)が建設を計画している徐大堡原子力発電所の3号機用主要機器の製造をロシアで開始したと発表した。同発電所のⅡ期工事となる3、4号機の建設工事については、2019年6月にロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が請け負うことが決定。この時、同社傘下の原子力発電所建設・輸出企業であるアトムストロイエクスポルト(ASE)社が、CNNCと一括請負契約を締結した。3、4号機の設計は第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER)を採用することになっており、CNNCは今年10月に3号機を、2022年8月に4号機を本格着工し、その後はそれぞれ、2027年と2028年の完成を目指すとしている。徐大堡発電所の建設計画では2006年当時、100万kW級PWRを最終的に6基建設することが計画されており、国家発展改革委員会は2011年1月、Ⅰ期工事の1、2号機について事前作業の実施を許可した。これを受けて基礎掘削の前段階の起工式が行われたものの、同年3月に福島第一原子力発電所事故が発生したため、政府は計画を一時凍結。2014年4月に国家核安全局(NNSA)から同計画のサイト承認が発給され、2016年10月に両炉の原子炉建屋の土木建築契約が結ばれた折は、100万kW級のウェスチングハウス社製AP1000を2基建設すると伝えられたが、これらは今のところ未着工である。今回、3号機の機器製造を開始したアトムエネルゴマシ・グループはロスアトム社のエンジニアリング部門で、実際の作業は傘下のAEMテクノロジー社のボルゴドンスク支部であるアトムマシ社が行っている。AEMテクノロジー社が中国の建設プロジェクト用に主要機器を供給するのは2件目で、今回の契約内容は2基の120万kW級VVERについて、蒸気発生器と冷却材ポンプ、加圧器などを製造・納入すること。これら機器の総重量は、合計6,000トンに達する。発表によると、現時点では1基あたり4台設置する蒸気発生器の胴部と原子炉容器のシェル部分について点検が完了し、機器製造作業が始まったところ。原子炉容器シェルの重さは92トンあるが、ノズル部分の機械加工は15日ほどかけて行われる。これと同時に、炉心に耐食性の覆いをかける準備も進展中で、1台あたり37トンの重さがある蒸気発生器・胴部の機械加工は6日間で仕上げるとしている。(参照資料:アトムエネルゴマシ・グループの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Feb 2021
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米アドバンスド・リアクター・コンセプツ(ARCニュークリア)社のカナダ法人は2月10日、カナダのニューブランズウィック(NB)州で同社製・小型モジュール炉(SMR)の建設計画を進めるため、NB州政府がこれまでの支援に加えて新たに2,000万カナダドル(約16億5,900万円)を同社に提供することになったと発表した。ARCニュークリア社は2018年7月、NB州の州営電力であるNBパワー社と協力することで合意。この合意に基づきARCニュークリア社は、NBパワー社が同州内で操業するポイントルプロー原子力発電所の敷地内で、ナトリウム冷却・プール型高速中性子炉のSMR「ARC-100」(電気出力10万kW)を建設する可能性を探っている。また、将来的には同SMRをカナダの他のサイトや世界中で建設する道を模索するほか、NB州を「ARC-100」技術に基づいた先進的SMR製品の中核的研究拠点や製造拠点とすることを目指している。ARCニュークリア社は今年1月、社名を「ARCクリーン・エナジー社」に変更しており、そのカナダ法人「ARCクリーン・エナジー・カナダ(ARCカナダ)社」の発表によると、NB州からの今回の支援金交付は、ARCカナダ社がマッチングファンドを通じて民間から3,000万加ドル(約24億9,000万円)の投資金を確保することが条件である。この投資を通じて、ARCカナダ社は確証済みの技術を用いた固有の安全性を有するSMRを2020年代後半にも建設する計画で、NB州にはこうしたSMR開発イニシアチブを成功に導く重要な諸条件――熟練した運転事業者や融通の利く労働力、将来的にサプライチェーンを構築するための基盤、技術革新の支援に適した学術的研究体制、などがすべて整っていると指摘した。NB州のB.ヒッグス首相も同日、「州政府の年次報告と将来展望」の中で、同州のSMR戦略は順調に進展中だと強調。ARCカナダ社との連携協力を続けていくと述べており、今回の支援金を通じて「ARC-100」の技術開発を次の段階に進める方針である。同首相の考えでは、ARCカナダ社に全面的に協力することでNB州の十分活用されていないサプライチェーンを再活性化し、再生可能エネルギーの間欠性を効率的に補えるクリーンエネルギーを州内で生産、これらは大規模なビジネスチャンスの創出につながると述べた。また、SMRの輸出によって、NB州では高賃金の雇用が創出されるなど利益が還元されるため、この開発イニシアチブには世界市場に道を拓く可能性があると強調した。なお、「ARC-100」の許認可手続きについては、ベンダーの要請に基づいてカナダ原子力安全委員会(CNSC)が正式な申請に先立ち実施する「予備的設計評価(ベンダー設計審査)」の第一段階がすでに完了している。ARCカナダ社のN.ソーヤー社長兼CEOは、「民間の投資家にとって公的支援がいかに重要であるか、今回の事で明らかになった」と指摘。その上で、「NB州の支援を受けてベンダー審査の第二段階が正式に始まる」としている。(参照資料:ARCカナダ社、NB州政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Feb 2021
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