世界原子力協会(WNA)は9月1日、世界中で稼働する商業炉の2020年の運転実績について取りまとめた報告書「World Nuclear Association Performance Report 2021」を公表した。新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大(パンデミック)で全体的な電力需要が低下したことが大きく影響し、原子力の総発電量は2019年実績の2兆6,570億kWhから2兆5,530億kWhに減少。ただし、発電シェアが拡大した再生可能エネルギーの間欠性を補うため、負荷追従運転で電力を安定的に供給する機会が増加したと指摘している。WNAのS.ビルバオ・イ・レオン事務局長は、「2020年は世界中の原子力発電所が信頼性の高い電力を供給しながら変動する需要に柔軟に対応しており、強靭な供給性能を示した」とコメント。「世界の電力需要は今後急速に回復する見通しだが、これにともない温室効果ガスの排出量も元通りになるリスクが存在することは現実だ」としている。報告書によると、2020年末現在、世界では運転可能な商業炉が441基存在し、総設備容量の3億9,200万kWは過去3年間ほとんど変化していない。新たな運転開始により追加された設備容量も、永久閉鎖された原子炉のそれとほぼ同レベルだった。同事務局長は過去数年間に永久閉鎖された原子炉の閉鎖理由について、「半数以上は技術的な制限によるものではなく、原子力からの段階的撤退という政治的理由、あるいはCO2を排出しない原子力の価値を適切に評価しない市場の欠陥によるものだ」と指摘。これは、わずかでも無駄にできない低炭素な電源が世界中で失われていることを意味するとした。しかしその一方で、今年はすでに明るい兆候が原子力に見受けられ、4基の原子炉が新たに送電網に接続された。また、7基の建設工事が新たにスタートしたが、永久閉鎖された原子炉は今のところ2基に留まっている。同事務局長によると、「原子力発電が今後一層迅速に運転復帰することは重要であり、それによって化石燃料の発電量を代替、温室効果ガスが急速に増加するのを防がねばならない。」そのためには、既存の原子力発電所を最大限に生かし運転期間も可能な限り延長、新規の原子炉の建設ペースや規模も拡大する必要があるとしている。今回の報告書の主な判明事項は以下の通り。2020年に新たに5基の原子炉が運転を開始したが、増加した設備容量552.1万kWは永久閉鎖された6基分の516.5万kWで相殺された。2020年に送電網に接続された原子炉の平均建設期間は84か月で、2019年の117か月から減少した。いくつかの原子炉では、電力需要の低下にともない発電量が減少しており、2020年は世界平均の設備利用率も前年実績の83.1%から低下。80.3%になったが、それでも原子力は過去20年間の良好な運転実績を維持している。世界中の原子炉の3分の2近くで、80%以上という高水準の設備利用率をマークした。設備利用率が40%未満の原子炉の数も近年は上昇傾向にあるものの、基数は依然として小さい。運転実績に原子炉の経年数が関係する傾向は見られず、過去5年間に設備利用率が低下した原子炉でも、経年数にともなう全体的な変化は特に見られなかった。近年に合計80年の運転継続を許された原子炉のうちいくつかでは、一貫して経年数とは無関係の素晴らしい運転実績を残している。(参照資料:WNAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Sep 2021
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シントス社のソウォヴォフ氏©M.Solowowポーランドの大手化学素材メーカーのシントス社(Synthos SA)は8月31日、国内のエネルギー企業ZE PAK社と共同で、米国で開発された最も近代的で安全な小型モジュール炉(SMR)をポーランド国内で建設する計画に投資を行うと発表した。この共同プロジェクトのために、両社は今後合弁事業を立ち上げて原子力関係の活動を実施。ZE PAK社がポーランド中央部のポントヌフで操業する石炭火力発電所に、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」、あるいは他の有望な米国製SMRを4基~6基(出力各30万kW程度)建設する方針である。シントス社はすでに2019年10月、ポーランドに「BWRX-300」を導入する可能性を探るため、GEH社と協力覚書を結んでいる。一方のZE PAK社は昨年、2030年までに石炭火力発電から撤退する方針を表明したが、これはパリ協定で設定された脱炭素化目標の達成に向け、ポーランドにおける最も意欲的で明確な対応策を示したもの。同社とシントス社が共同でSMRに投資し、ポーランドが「汚れたエネルギーからクリーンなエネルギー」に転換するのを支援していきたいとしている。シントス社とZE PAK社はそれぞれ、M.ソウォヴォフ氏とS.ソロルツ氏が所有する企業。両者はともに、ポーランドで最も富裕な実業家と言われている。シントス社のソウォヴォフ氏は今回、「脱炭素化を大規模に進めるには地球環境に配慮するだけでなく、経済的な要件を満たしつつコスト面の効率化を図ることが求められており、その解決策が原子力であることは明白だ」と強調。同氏によると、「欧州の工場」と言われるポーランドではCO2を排出しない安定したエネルギー供給源が必要で、「これまで通りの速いペースで一層豊かな社会の構築を目指し、さらなる外国投資を呼び込むには、価格の魅力的なエネルギーを活用しなくてはならない」としている。ZE PAK社のソロルツ氏も、「社会や国家の発展には安価でクリーンなエネルギーが欠かせないが、原子力はクリーンなだけでなく環境にも優しい」と指摘。同社はポーランドで最初の石炭火力発電所を運転してきたものの、現時点では石炭火力からの撤退する途中であるとした。その上で、「原子力や再生可能エネルギーは当社が投資する最も重要なエネルギー源であり、原子力への投資はポーランドの事業所や一般世帯にクリーンで安価なエネルギーを提供するとてつもなく大きな好機になる」との認識を示した。SMRを建設予定のポントヌフは、ポーランド政府が進める原子力発電プログラムにおいても発電所立地候補地点の一つだが、ZE PAK社の幹部は「SMRの建設計画は政府の進める大型原子力発電所の建設計画と競合するものではなく、むしろこれを補完する位置づけだ」と説明。原子力は化石燃料による発電から徐々に取って替わっていき、近い将来は石炭火力の閉鎖と電力需要の増加にともなう国内電力システムの容量不足を補うとしている。なお、シントス社のキャピタル・グループに所属するシントス・グリーン・エナジー(SGE)社は昨年11月、米国のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発したSMR「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を使って、ポーランドにエネルギー供給システムを構築すると発表。実行可能性調査の実施を含む協力協定をUSNC社と結んでいる。(参照資料:シントス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Sep 2021
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ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は8月31日、国内で複数の原子力発電所で「AP1000」を建設していくため、同設計を開発した米国のウェスチングハウス(WH)社と独占契約を締結したと発表した。この契約で、エネルゴアトム社は具体的に、建設進捗率28%で工事が停止しているフメルニツキ原子力発電所4号機(100万kWのロシア型PWR=VVER)にAP1000を採用するなどして、その完成計画にWH社の参加を促す方針。また、その他の原子力発電所も含めてさらに4基のAP1000を建設するとしており、これらの総工費は約300億ドルになるとの見通しを示した。契約の調印式は、米ワシントンD.C.にあるエネルギー省(DOE)の本部で開催された。ウクライナのV.ゼレンスキー大統領が立ち会い、エネルゴアトム社のP.コティン総裁代理とWH社のP.フラグマン社長兼CEOが契約書に署名。DOEのJ.グランホルム長官とウクライナ・エネルギー省のG.ハルシチェンコ大臣も出席した。エネルゴアトム社の発表によると、同社はウクライナ政府の長期目標達成に向けてWH社のAP1000技術を選択した。今回の契約により、同社はクリーンで信頼性が高く、コスト面の効果も高い原子力発電を活用し、同国の脱炭素化達成につなげたいとしている。ウクライナでは2017年8月、P.ポロシェンコ前大統領の内閣が「2035年までのエネルギー戦略」を承認しており、総発電量に占める原子力の現在のシェア約50%を2035年まで維持していくと明記。現職のV.ゼレンスキー大統領も2020年10月、「このエネルギー戦略を実行に移すため、政府は今後も原子力発電を擁護し、その拡大を支援していく」と表明している。また、同国で稼働する全15基のVVERはすべて、旧ソ連時代に着工したもの。このためウクライナの規制当局は、経年化が進んだ11基で順次運転期間の延長手続を進めるなど、原子力発電設備の維持に努めている。エネルゴアトム社のコティン総裁代理は今回の契約について、「AP1000は実証済みの技術を採用した第3世代+(プラス)の110万kW級原子炉であり、モジュール方式の設計を標準化することで建設期間やコストの縮減が可能と聞く。また、完全に受動的な安全系を装備するなど優れた特長を持っている」などと説明。AP1000設計を長期的に活用していくことで、エネルゴアトム社では最高レベルの安全性と高い信頼性を備えた、環境にも優しい革新的な原子力発電所の運転が可能になるとしている。WH社のフラグマン社長兼CEOは、「ウクライナで稼働する既存の原子力発電所を支援するため、当社はすでに燃料その他のサービスを提供中だ。今回の契約により、当社とエネルゴアトム社の長年にわたる連携は一層強化される」と表明。同社の原子炉技術を使って、ウクライナの将来を低炭素なエネルギー社会に近づける重要な一歩になるとの認識を示した。同CEOはまた、「AP1000は米原子力規制委員会(NRC)の認可を受けた第3世代+の原子炉の1つ」と指摘。欧州やアジアなど米国以外の国々でも認可されており、中国ではすでに運転中の4基のAP1000が良好な実績を残していると述べた。さらには、米国のボーグル原子力発電所で建設中の2基が完成間近くなっており、インドでは6基の建設プロジェクトへの採用が決まるなど、AP1000は中・東欧も含めた世界中で建設が検討されていると強調した。(参照資料:WH社、エネルゴアトム社(ウクライナ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
01 Sep 2021
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米国の原子力規制委員会(NRC)は8月27日、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で建設中の3号機(PWR、110万kW)の電気ケーブル用配管について、NRCスタッフが特別に実施した検査の暫定的な結果を公表した。それによると、同機では緊急時に原子炉を安全に停止させる際、冷却ポンプや関連機器につながる安全系のケーブルとそれ以外のケーブルが適切に隔てられていなかった。またNRCは、建設現場でプロジェクト管理を担当するサザン・ニュークリア社が安全系の電気ケーブル用配管について品質保証上の問題点の確認や報告を行わず、是正プログラムも実施しなかったと指摘している。現状のまま建設工事が進むことになれば、NRCは同機の監視体制を強化すると表明。工事の完了までに電気ケーブル用配管の設置状況が改善されなかった場合、NRCは同機の燃料装荷や運転開始を承認しない方針だが、同機ではまだ燃料が装荷されていないため、サザン・ニュークリア社の改善措置で周辺住民のリスクが増大する恐れはないと強調している。ジョージア州のボーグル発電所では、サザン社の最大子会社であるジョージア・パワー社と複数の地元公営電気事業者の出資により、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000を米国で初めて採用した3、4号機を2013年から建設中。2017年にWH社が倒産申請した後は、EPC(設計・調達・建設)契約を放棄した同社に代わり、サザン社のもう一つの子会社であるサザン・ニュークリア社が全体的なプロジェクト管理を引き継いだ。サザン・ニュークリア社はまた、完成した3、4号機の運転を担当することになっている。NRCは6月21日、3号機の建設現場で電気ケーブル用配管の設置修正作業が行われたのを受けて、その根本原因と品質保証上の影響範囲を究明するため、7月2日まで特別検査を実施すると発表した。電気ケーブル用配管は主に専用の配管とトレイで構成されており、緊急時に安全系機器に確実に電力が送られるようケーブルを支持する構造。商業炉でこれらの機器が万が一にも作動しない事象が発生するのを防ぐ観点から、NRCは同検査でサザン・ニュークリア社が修正作業の実施に至った際の行動、特に品質保証プロセスや原因分析などに焦点を当てたとしている。サザン・ニュークリア社側では今後、NRCの暫定的な結果を検討した上で指摘を受け入れる、もしくは追加説明をNRCに文書で提出することが可能である。NRCとしては、最終的な判断を下して文書化した決定事項を一般公開する前に、同社の追加説明など入手可能な情報をすべて考慮に入れる考えである。 3号機の建設工事では昨年12月に初装荷燃料が建設現場に到着しており、4月に始まった温態機能試験も7月末に完了した。しかし、新型コロナウイルスによる感染の影響軽減で現場の労働力は昨年4月以降、約20%削減されており、試験や品質保証関係で追加の時間が必要になったことから、ジョージア・パワー社は7月末、3、4号機の送電開始時期を現行スケジュールから3~4か月先送りし、それぞれ2022年第2四半期と2023年第1四半期に延期したと発表している。(参照資料:NRCの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、ほか)
31 Aug 2021
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アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を担当する首長国原子力会社(ENEC)は8月27日、UAE初の原子力発電所であるバラカ発電所で、2号機(PWR、140万kW)が起動したと発表した。同発電所では昨年7月、UAEのみならずアラブ諸国においても初の商業炉である同型の1号機が臨界状態に達し、今年4月に営業運転を開始している。2号機の起動はこれに続くもので、ENECの運転管理子会社であるNAWAHエナジー社は、同機を今後数週間以内に国内送電網に接続するため準備作業を進めている。接続後は出力を徐々に上昇させる試験(PAT)を実施し、営業運転の開始につなげる計画。ENECでは、最終的に4基すべての原子炉(合計出力560万kW)を安全かつタイムリーに完成させ、毎年2,100万トンのCO2排出を抑制、UAEでエネルギー部門の脱炭素化を迅速に進めたいとしている。ENECによれば、2号機が起動したことでこの地域では初めて、同一サイトで複数基が稼働することとなった。これらの原子炉はクリーンで信頼性の高い電力を豊富にUAEに提供し、さらなる経済成長を促すような巨大プロジェクトの実施能力をUAEが持つことを実証した。この原子力発電利用プログラムでENECはあらゆる国内要件と国際基準を満たすとともに、バラカ発電所チームでは高い技能と資格の習得を目指すとしている。バラカ発電所サイトでは、2012年7月から韓国製の140万kW級PWR「APR1400」を建設する工事が進められており、1号機を本格着工した後は約1年間隔で同型の2~4号機を順次着工した。1号機では2018年3月に竣工式が行われたが、運転員の訓練と連邦原子力規制庁(FANR)から承認を取得するのに時間がかかるとして、NAWAHエナジー社は燃料装荷等の準備作業を一時延期。FANRは2020年2月、1号機の運転許可を発給している。2号機の運転許可申請は、1号機の申請書と併せてENECが2015年に申請しており、FANRは今年3月に2号機で60年間有効な運転許可を発給した。ENECのM.I.アルハマディCEOは今回、「一日24時間、年中無休で豊富に電力を供給する原子力の平和利用でUAEは新たな節目を迎えた」と指摘。「2号機が起動したことで、UAEは電力需要の4分の一を原子力で賄いつつ持続可能な経済成長を可能にし、同時に地球温暖化の防止にも役立てるという目標の達成に向け、道のりのほぼ半ばまで来た」と述べた。同CEOはまた、原子力の導入を成功させるケース・スタディとして、バラカ発電所建設計画は原子力の導入を検討する後続の国々に有益なガイダンスと支援をもたらすと強調。世界で最も持続的な発展を遂げている10か国のうち、7か国までが原子力を活用しているとした上で、「原子力はクリーンな電力を提供するだけでなく、国レベルのエネルギー供給保証と信頼性を促進する」と指摘している。同機では、起動に先立ちFANRの監督の下で包括的な試験プログラムが実施されており、その後は世界原子力発電事業者協会(WANO)が起動前審査(PSUR)を行った。これらを通じて、同機では世界の原子力産業界の良好事例に沿って運転が行われるとしている。(参照資料:ENEC、NAWAHエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
30 Aug 2021
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米国最大手の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社は8月18日、ニューヨーク州北部のオスウェゴ郡で運転するナインマイルポイント原子力発電所(60万kW級と130万kW級のBWR各1基)で、水素の現地製造の可能性を実証するプロジェクトを実施すると発表した。米エネルギー省(DOE)から提供される補助金により、水素の現地製造がもたらす将来的なメリットを評価するのが主な目的である。これにともない、同社は水素の製造に必要な装置(電解槽)の入手でノルウェー国籍のNel Hydrogen社と連携するほか、DOE傘下のアルゴンヌ国立研究所とアイダホ国立研究所、および国立再生可能エネルギー研究所と協力。水素を同発電所内で一貫的に製造、貯蔵、活用できることを実証する。エクセロン社の発表によると、同プロジェクトでは具体的に、原子力発電から派生する副産物の水素を経済的に供給していくことができる見通し。(安全に回収・貯留した上で、100%無炭素な電源として市場に提供する可能性を探り、将来は輸送その他の目的に産業利用することになる。同社のD.ローデス原子力部門責任者(CNO)は、「プロジェクを実施する沢山の候補サイトの中から当社はニューヨーク州を選んだが、これは同州の公益事業委員会(PSC)が2016年、州北部の原子力発電所に補助金を提供する支援プログラムも含め、意欲的な温暖化防止政策『クリーン・エネルギー基準(CES)』を採択したことによる」と指摘。同州の州政府とは強い結びつきがあるとの認識を表明した。DOEの補助金は、DOEのエネルギー効率・再生可能エネルギー局(EERE)、水素・燃料電池技術室が推進する「H2@Scaleプログラム」からエクセロン社に提供される。この構想でDOEは、水素を適正な価格で製造・輸送・貯留・活用できることを実証し、様々な産業部門を脱炭素化する方策を模索。CO2の排出量も削減して大気汚染の影響を緩和するほか、経済的に不利な条件下にあるコミュニティには利益をもたらしたいとしている。今回のプロジェクトではまた、Nel Hydrogen社が2022年に約260万ドルの「プロトン交換膜式(PEM)電解槽(0.125万kW)」をナインマイルポイント発電所に納入する。同社はノルウェーの水素技術企業であるNel ASA社の米国子会社で、その8月11付けの発表によると、エクセロン社は同原子力発電所で水素を自給した上で、タービン冷却や化学制御関係の要件を満たす計画。また、Nel Hydrogen社の電解槽を適切に運転して、原子力発電所における水素製造の経済的実行可能性を実証するほか、DOEの「H2@Scaleプログラム」の支援で、CO2を排出せずに製造した水素の大規模輸出に向けて詳細計画をもたらしたいとしている。(参照資料:エクセロン社、DOE、Nel Hydrogen社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Aug 2021
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キンジンガー下院議員©Kinzinger米イリノイ州選出のA.キンジンガー下院議員は8月23日、同州内でこの秋、早期閉鎖が予定されている2つの原子力発電所の運転を継続させるため、J.バイデン大統領と同政権幹部に対し法的な緊急時の権限を早急に行使するよう嘆願する書簡を送付した。米国最大手の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社は2020年8月、イリノイ州内で経営が悪化したバイロン原子力発電所(120万kW級PWR×2基)とドレスデン原子力発電所(91.2万kWのBWR×2基)をそれぞれ、今年9月と11月に早期閉鎖すると表明。バイロン発電所については閉鎖予定日が目前に迫っていることから、「少なくとも、これらの発電所に財政支援と公平な市場条件を付与する法案がイリノイ州議会と連邦政府議会で新たに成立するまで、これらの発電所が運転継続できるよう配慮してほしい」と訴えている。米国の電力市場が自由化された地域では、独立系統運用事業者(ISO)や地域送電機関(RTO)が運営する容量市場(※「電力量(kWh)」ではなく、「将来の供給力(kW)」を取引する市場)で取引が行われている。バイロン発電所では現行の運転認可が満了するまで残り約20年、ドレスデン発電所でも10年ほど残っているが、どちらも近年はエネルギー価格の低迷や、北東部の代表的なRTO「PJMインターコネクション(PJM)」の容量オークションで化石燃料発電に競り勝つことができず、数億ドル規模の赤字に陥っている。また、エクセロン社によると、連邦エネルギー規制委員会(FERC)が近年指示したオークション関係の価格規則は、クリーン・エネルギーに対するイリノイ州の財政支援策を台無しにし、容量オークションでも化石燃料発電を優遇。イリノイ州では2016年12月、州内の原子力発電所への財政支援策を盛り込んだ包括的エネルギー法案が成立し、クリントンとクアド・シティーズの両原子力発電所では早期閉鎖計画が回避されたものの、バイロンとドレスデン両発電所については財政問題が悪化していた。キンジンガー議員は今月6日、エネルギー省(DOE)経由で民生用原子力発電所に財政的な信用を付与するプログラムを盛り込んだ「既存の原子力発電所維持のための法案(H.R.4960)」を、M.ドイル議員と共同で連邦議会下院に提出した。また、B.パスクラル下院議員がその前の週、原子力発電所の発電量に応じて連邦政府による課税額の控除を可能にするため提出した「CO2排出量ゼロの原子力発電に対する税控除法案(H.R.4024)」に対しては、共同提案者となることに合意している。大統領宛て書簡の中でキンジンガー議員は、過去9年間に全米で7基の商業炉が閉鎖され、失われたベースロード用の無炭素発電設備は530.6万kWにのぼると指摘。これにバイロンとドレスデン2つの発電所が加わり新たに430万kW分が閉鎖となるほか、2025年までにパリセードとディアブロキャニオンの両発電所で合計306.7万kW分が失われる。さらに米国では、3つの原子力発電所で756.6万kW分が閉鎖の危機にさらされているのに対し、1996年以降、新たに運転開始した商業炉はワッツ・バー2号機(116.5万kW)1基のみであるとした。原子力発電設備のこのような縮減傾向は、発電事業の信頼性や経済、関係する数千もの雇用、環境の健全性を脅かすものだと同議員は強調。これらはエネルギー供給の自立やCO2を排出しない十分なベースロード電源の保持、地球温暖化の防止など、国家の防衛・セキュリティやレジリエンスにも関わる問題になるため、到底受け入れられないと述べた。同議員は、バイロンとドレスデン2つの原子力発電所の運転を継続させる際、行使可能な法的権限として「国防生産法」と「連邦電力法」を挙げている。国防生産法は、緊急時に産業界を直接統制する権限を政府に与えるもの。「連邦電力法」では、緊急事態への対応等で両発電所の運転継続が必要であると、DOE長官から連邦エネルギー規制委員会(FERC)に提案することが可能になる。今回の書簡については、「イリノイ州議会がこれら2つの原子力発電所で運転を継続できなかったことは、驚くべき失策で、連邦議会も最終的に私の超党派法案を支持する意向を示してくれたが、原子力発電所に財政的信用を付与するプログラムの実行には時間が必要だ」と述べた。同議員は自らが提出した法案により、経営難に苦しむ全米その他の原子力発電所を保持できるとしても、バイロンとドレスデンの両発電所を助けられる可能性は低いと指摘。その上で、「私の地元コミュニティや選挙区民からの強い要望もあり、バイデン政権に利用可能な法的権限がある以上、見て見ぬふりは出来ない。これらの発電所の運転継続に全力を尽くしたい」としている。(参照資料:A.キンジンガー下院議員、エクセロン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Aug 2021
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フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は8月20日、オルキルオト原子力発電所で2005年から建設している3号機(OL3)(欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)の完成スケジュールがさらに遅延することになったと発表した。新しいスケジュールでは、OL3は2022年1月に臨界条件を達成する予定。翌2月から送電を開始し、営業運転を始めるのは同年6月になるとしている。これは、建設工事を請け負っている仏アレバ社と独シーメンス社の企業連合からTVOに伝えられたもの。最新の完成スケジュールから延期する期間、建設サイトではタービンの総点検が行われる。TVOが2020年8月時点で発表した基本スケジュールによると、OL3は2021年10月に送電を開始し、2022年2月から営業運転を開始することになっていた。これのスケジュールにともない、同機では今年3月に燃料の装荷作業が行われており、TVOはその際、2018年5月に完了した温態機能試験を改めて実施する方針を明らかにした。今年5月になると、TVOは当初予定していた2009年の完成が大幅に遅れている同プロジェクトの完了条件について、同企業連合と合意に達している。これは、プロジェクトの遅れにより生じた損害の賠償について、両者が2018年3月に締結した包括的和解契約を修正したもの。2022年2月末までにOL3が完成しなかった場合、同企業連合は追加の補償金を支払うことになり、両者は6月3日にこの合意文書に正式調印した。その後、6月30日付けの発表によると、TVOは起動前の最後の大規模試験として温態機能試験を実施中で、臨界条件の達成に備えて炉内構造物や圧力容器蓋の設置作業などを行っていた。しかし、7月30日に同社は「温態機能試験の結果から、タービンで総点検を行う必要性が生じた」と発表。この時点で、OL3の送電開始と定常運転の開始日程は最新スケジュールから1か月延期され、それぞれ2021年11月と2022年3月に再設定された。今回、このスケジュールがさらに3か月遅延することになったもので、企業連合側はすでに始めていた低圧タービンの点検作業をさらに詳細に行うため、3台すべての低圧タービンを点検すると決定。これにともない、点検期間も延長することになったと説明している。(参照資料:TVOの発表資料①、②、③、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Aug 2021
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中国核工業集団公司(CNNC)は8月23日、山東省栄成の石島湾で建設中の「ペブルベッド型モジュール式(PM)高温ガス炉の実証炉(HTR-PM)」(電気出力21.1万kW)で、21日から燃料の装荷を開始したと発表した。CNNCの傘下企業が参加する同機の建設プロジェクトでは、今年3月までに冷態機能試験と温態機能試験が完了。今月20日には国家核安全局(NNSA)が運転許可を発給した。燃料の初装荷はこれを受けたもので、同機は年内にも国内送電網に接続される予定である。高温ガス炉は第4世代の先進的原子炉設計の一つであり、HTR-PMは1つの発電機を熱出力25万kWの双子のモジュールユニットで共有する設計。CNNCによると、HTR-PMは熱電併給も可能な上に、事故が発生しにくい固有の安全性を保有。幅広い目的に利用が可能という長所を持ち、独立した規模の小さい送電網にも対応できる。HTR-PMの建設は科学技術関係の国家プロジェクトという位置づけになっており、「華能山東石島湾核電有限公司(SHSNPC)」が中心となって2012年12月から建設中。SHSNPCには、中国の5大発電企業の一つである華能集団公司が47.5%出資しているほか、CNNCが2018年に経営を再統合した中国核工業建設公司(CNEC)が32.5%を出資。北京の核能技術研究院で熱出力1万kWの実験炉「HTR-10」を運転する清華大学も、20%を出資している。また、プロジェクトのEPC(設計・調達・建設)契約は、CNECと清華大学の合弁事業体である中核能源科技有限公司(チナジー社)が請け負っている。HTR-PMの建設と運転を通じてCNNCは、中国が主要戦略の一つとして推進する「CO2排出量をこれ以上増やさず頭打ちにし(CO2排出ピークアウト)、実質ゼロ化(カーボンニュートラル)する」という目標の達成に向け、技術革新で貢献することを目指している。また、燃料装荷後の同機では基盤を築き商業化を加速。中国の原子力産業界を高度に発展させることにより、HTR技術を世界中に普及させていく考えである。ペブルベッド型HTRで使用する燃料は、黒鉛粉末と混合した燃料粒子を直径6cm程度の球状に圧縮成型し、炭化ケイ素(セラミック)をコーティングしたもの。このような燃料球には高温や腐食、摩耗に強いという特性があり、HTR-PM用の燃料球はCNNC傘下の中核北方核燃料元件有限公司が製造した。同機では原子炉一基あたり、約42万個の燃料球を装荷するとしている。(参照資料:中国華能集団公司①、②(中国語)、中国核工業集団公司(中国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Aug 2021
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仏国のラアーグ工場で、ドイツの使用済燃料を再処理した際に発生した中レベル放射性廃棄物を返還するため、同工場を操業するオラノ社は19日、ドイツの電気事業者4社と複数の返還契約を締結したと発表した。これらの契約総額は10億ユーロ(約1,288億円)を超えるとしている。これら4社は、ドイツで原子力発電所を保有・運転するプロイセン電力、RWE社、EnBW社、およびドイツの原子力発電所に一部出資していたスウェーデンのバッテンフォール社である。オラノ社は1977年から1991年にかけて、これらの電気事業者と使用済燃料の再処理契約を結んでおり、これに基づいて5,310トンの使用済燃料を再処理した後、残留廃棄物を保管してきた。これらの契約ではまた、使用済燃料に含まれていたのと等価の放射能をドイツに返還しなければならないと明記されており、これまでに合計放射能の97%を超える廃棄物がすでに返還された。しかし、長寿命の中レベル廃棄物だけ依然として仏国内に残されているため、両者は現行契約に沿ってこれらをドイツに戻すべく、新たな契約の締結に向けた交渉を続けていた。今回の契約は仏独の当局がともに了承した内容で、オラノ社とドイツの電気事業者が廃棄物関係で誓約した事項すべてを技術的に解決するもの。オラノ社は自ら提案したとおり、等価交換で余剰になった廃棄物をガラス固化した高レベル廃棄物と低レベル廃棄物のパッケージで、遅くとも2024年までにドイツに返還することになった。また、これらの契約を有効とするには両国政府の正式合意が必要になるとしている。オラノ社によると、今回締結した一連の契約はすべて、同社の今年後半の決算に一時的にプラスの影響を与える見通し。同社は2021年全体の決算を上方修正中である。これまで23%~26%としていた減価償却・控除前利益(EBITDA)が26%~29%となり、力強い増収が見込まれるほか、正味のキャッシュフロー(入ってくる現金から出ていく現金を差し引いた数字)もプラスになると予測している。(参照資料:オラノ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Aug 2021
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IMSRの炉心ユニット©Terrestrial Energyカナダを本拠地とするテレストリアル・エナジー社は8月17日、開発中の小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)で使用する濃縮ウラン燃料を商業的に確保するため、米国のウェスチングハウス(WH)社および英国の国立原子力研究所(NNL)と協力契約を締結した。WH社は現在、英国スプリングフィールドで原子燃料の製造施設を操業しており、世界中の商業炉にウラン燃料を供給。NNLもスプリングフィールドのプレストン研究所で原子力研究を実施中で、同じサイトのWH社には技術支援サービスを提供している。テレストリアル社は両者の原子燃料製造能力と世界レベルの知見を活用して、一層安全でクリーン、信頼性やコスト競争性も高い第4世代の先進的原子炉となるIMSRに産業規模でウラン燃料を供給する体制を構築、出来るだけ早期にIMSRを建設する方針である。テレストリアル社のIMSRは熱出力=40万kW/電気出力=19万kWで、電力のみならずクリーンな熱を供給できる。使用する溶融塩燃料は、これまで数10年以上にわたり軽水炉に装荷されてきた標準タイプの低濃縮ウラン(U-235の濃度が5%以下)と溶融フッ化物塩を混合して製造。同社によると、先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用するのに対し、IMSRは第4世代設計の中でも唯一、標準濃縮度のウランを使用することが可能である。同社はまず、IMSRの最初の商業用実証炉をカナダで建設し、その後、同社の米国法人(TEUSA社)を通じて北米をはじめとする世界市場でIMSRを幅広く売り込む方針。現在、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同国の規制要件に対するIMSRの適合性を「予備的設計評価(ベンダー設計審査:VDR)」で審査中である。また、TEUSA社は米原子力規制委員会(NRC)に対して、将来的に設計認証(DC)審査を受ける計画だと表明済み。TEUSA社は2020年代後半に米国初号機を起動できるよう、米エネルギー省(DOE)から財政支援を受けながら許認可手続き前の準備活動をNRCと進めている。 今回の契約について、テレストリアル社のS.アイリッシュCEOは「民生用として直ちに利用可能な標準濃縮度燃料を使用できるよう、我々はIMSRを設計しており、これは早期のIMSR建設実現に向けて大きな強みになる」と指摘。同社は現在、IMSRの燃料確保で複数の戦略を進めており、英国スプリングフィールドにおけるWH社とNNLの燃料関係の技術水準は世界でも最高レベルと考えている。このため、「この契約はIMSRを運転する電気事業者に専用燃料を長期的かつ確実に供給する重要ステップとなり、IMSR発電所の商業運転を明確に決定づけるものになる」と強調した。NNLのP.ハワース最高責任者は「IMSRに使用する商業用原子燃料の供給者として、テレストリアル社がNNLとWH社を選定したことをうれしく思う」と表明。この契約によって、IMSR初号機の運転開始に向けて新たな雇用が地元で創出されるとした。WH社のS.ルメール地域副社長も、「商業用原子燃料の世界的供給企業である当社には、先進的原子炉向けに新しい原子燃料を開発・製造する知識と技術と能力がある」と強調。「このような技術は地元スプリングフィールドに高度な製造専門職をもたらすとともに、英国にとっては戦略的国家資産にもなる」と指摘している。(参照資料:テレストリアル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Aug 2021
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アックユ4号機の地盤掘削工事©ANPPトルコ初の原子力発電所として、アックユ発電所(120万kWのロシア型PWR=VVER×4基)を地中海沿岸のメルシン地区で建設中のアックユ原子力発電会社(ANPP)は8月12日、4号機の本格着工に向けて基礎ピットの建設など準備工事が順調に進展中だと発表した。ANPP社は、トルコからこの建設プロジェクトを請け負ったロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社のトルコ子会社。プロジェクト企業として、2020年5月に4号機の建設許可をトルコの原子力規制庁(NDK)に申請しており、今年6月末に部分的建設許可(LWP)を取得。現在はLWPの枠内で、原子炉建屋やタービン建屋、補助建屋、およびその他の主要施設の基礎部分となる655m2のエリアで掘削工事を行っている。同社は年内にも同機の建設許可をNDKから取得し、来年初頭から本格的な建設工事を開始する。アックユ発電所では第3世代+(プラス)のVVERを4基設置することになっており、すでに1~3号機の本格的な建設工事が、それぞれ2018年4月と2019年4月、および2021年3月から始まった。これに4号機の作業が加われば、「アックユ発電所は世界の原子力産業界でも珍しい『4基の建設工事を同時に進める大規模な原子力建設センター』になる」とANPP社のS.ブツキーク第1副総裁は強調。年末までに、原子炉建屋やタービン建屋の基礎スラブ用に地面をならすコンクリートを敷き詰めた後、同スラブの補強を行う方針を明らかにした。ANPP社の発表によると、現在進めている掘削工事では、最も深い部分で地下約12.5mまで掘り下げており、除去しなければならない土壌の量は約60万m3にのぼる見通し。基礎ピットの建設では、岩だらけの土を掘り出してほぐす作業のほか排水処分なども含まれるため、掘削機や掘削リグなど20種類以上の建設機械を動員している。ピット建設ではまた、地盤の改良工事が必要になるため、ANPP社ではモルタルなどの硬化剤を高圧で土中に注入する工法を使い、パイルを支持する土壌の性能を強化。国際的な基準に従って、建屋や構造物の安全性と安定性を確保するとしている。トルコでは現在、エネルギー源の多くを石油と天然ガスおよび石炭に依存しているため、ANPP社はトルコが建国100周年を迎える2023年にアックユ1号機の運転開始を予定。2025年までに4基すべてを完成させて、トルコの総発電量の約10%を賄いたいとした。同国のR.T.エルドアン大統領は1号機が本格着工した際、「CO2を排出しない原子力発電所は我が国のエネルギー供給保証に貢献するのみならず、クリーンで環境的にも安全なエネルギー供給によって地球温暖化防止にも大きな役割を果たす」と表明している。(参照資料:ANPP社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Aug 2021
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米原子力規制委員会(NRC)は8月16日、フロリダ・パワー&ライト(FPL)社が保有・運転中のセントルーシー原子力発電所1、2号機(各PWR、約88万kW)について、2回目の運転期間延長を申請したと連邦官報に掲載した。1、2号機はそれぞれ1976年と1983年に送電開始しており、FPL社はこれらで当初認められていた運転期間の40年が満了する10年以上前(2001年)に、初回の運転期間延長(20年)を申請した。NRCは2003年10月に同申請を承認し、両機の現行の運転認可は2036年3月と2043年4月まで有効である。今回、2回目の20年延長が認められれば、運転開始以降の両機の累計運転期間はそれぞれ80年となり、1号機は2056年3月まで、2号機は2063年4月まで稼働が可能になる。なお米国での運転期間=40年は、技術的な制限ではなく、経済面および減価償却の観点に基づいている。NRCの発表によると、FPL社が今回の申請書を提出したのは8月3日で、NRCは現在、この申請書に漏れなどの不備がないかを点検中。運転期間の延長にともなう両機の安全性や環境影響面について、審査の実施に十分な情報が含まれていた場合、NRCは申請書を受理した上で、付属の行政判事組織である原子力安全許認可会議(ASLB)に公聴会の開催を要請することになる。米国では約100基の商業炉のうち、90基以上がこれまでに初回の運転期間延長を認められており、1基につき合計60年の稼働が一般的となっている。FPL社は2018年1月、米国の原子力発電事業者として初めて、2回目の運転期間延長をターキーポイント3、4号機(各PWR、76万kW)で申請。NRCは2019年12月にこれを承認しており、両機はそれぞれ80年間の稼働が許された全米初の商業炉になった。これを皮切りに、米国の原子力産業界では2回目の運転期間延長を模索する動きが相次いでいる。ターキーポイント3、4号機に続いて、エクセロン社のピーチボトム2、3号機(各BWR、118.2万kW)とドミニオン・エナジー社のサリー1、2号機(各PWR、87.5万kW)はすでに、80年間継続運転するための承認をNRCから獲得した。NRCは現在、同じくドミニオン社のノースアナ1、2号機(各PWR、約99万kW)と、ネクストエラ・エナジー社のポイントビーチ1、2号機(各PWR、64万kW)、およびデューク・エナジー社のオコニー1~3号機(各PWR、約90万kW)について、同様の申請を審査中である。また、テネシー峡谷開発公社(TVA)はブラウンズフェリー原子力発電所1~3号機(各BWR、116万kW)の2回目の運転期間延長に向け、正式申請前の手続きを開始した。エクセル・エナジー社も、ミネソタ州のモンティセロ原子力発電所(BWR、60万kW)が2030年に60年間の運転を終えた後、少なくとも2040年まで10年間、運転を継続したいと述べている。(参照資料:米規制委の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Aug 2021
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国連経済社会理事会の欧州経済委員会(UNECE)は11日、地球温暖化の防止や低炭素エネルギー技術の開発を加速するため取りまとめている技術概要書(technology brief)のシリーズで原子力発電を取り上げ、「原子力を除外した場合、地球温暖化の防止に向けた国際的な目標達成は難しくなる」との見解を表明した。それによると、2015年の国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP)で採択されたパリ協定、および国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に沿って、世界中のエネルギー供給システムやエネルギー多消費産業を脱炭素化するには、その他の持続可能な低炭素技術や無炭素技術と並行して、原子力発電が幅広いエネルギーミックスの一要素となり得る。また、原子力は低炭素な発電技術であり、過去50年間に抑制したCO2の排出は約740億トン。これは、世界中のエネルギー部門が排出するCO2の約2年分に相当する。原子力はまた、UNECE地域全体の発電量の約20%を賄っており、低炭素で生産される電力に至っては43%を供給。ただし、欧州各国に加えて米国やカナダ、ロシア、および旧ソ連諸国などが所属するUNECEでは、未だに化石燃料による発電量が全体の半分以上を占めることから、世界中のエネルギー供給システムを低炭素なものに変えるまで残された時間は少ない。UNECEのO.アルガエロバ事務局長は、「原子力利用国ではCO2排出量の実質ゼロ化を達成する重要電源として原子力を捉えており、2030年までに持続可能な開発の諸目標を達成する一助になるはずだ」と強調した。今回の技術概要書によると、UNECEに所属する国の中でも20か国が原子力発電所を保有。このうち11か国では総発電量の30%以上を賄うなど、原子力はエネルギー供給システムの中で中心的な役割を担っている。また、15か国が新しい原子炉を建設中か開発中で、7か国は新たに原子力発電を導入するプログラムを進めている。さらに、所属国のうちカナダ、チェコ、フィンランド、フランス、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、ロシア、ウクライナ、英国、米国などの国が「原子力は将来的に各国が国内のCO2排出量を削減する際、重要な役割を果たす」と明言している。その一方で、ベルギーとドイツはそれぞれ、2025年と2023年までに脱原子力を達成すると表明している。UNECEの技術概要書はまた、原子炉技術を大まかに①100万kW級の大型炉、②小型モジュール炉(SMR)、および③マイクロ原子炉の3種類に分類。大型炉の成熟した技術は商業的に活用されているほか、SMRも商業化に向けて開発が急速に進展している。マイクロ原子炉については、5年以内に米国とカナダで利用可能になることが期待されている。原子力発電所はさらに、低炭素な熱と電力を併給出来るため、エネルギー多消費産業の中でも製鋼や水素製造、化学製品生産では脱炭素化を大幅に進める可能性があると強調した。技術概要書はこのほか、「世界中の数多くの地域において、原子力はコスト競争力のある発電オプションである」と指摘。電力市場の運用の仕方によっては、また資金調達コストを抑えることができれば、大型炉の建設に必要な50億~100億ドルのコストは縮減することができる。また、今後SMRやマイクロ原子炉を建設する場合、資金調達は一層容易になり、様々な再生可能エネルギーを補完することも可能だとした。一方、原子力発電にともなう具体的リスクとしてUNECEは放射線関係の事故や放射性廃棄物の管理を挙げており、これらの事故発生を未然に防ぎ、あるいは廃棄物は適切に取り扱う必要があるとした。いくつかの国では、このようなリスクは容認できないと考えており、放射性廃棄物を長期的に処分するという問題もあり、原子力を利用しない道を選択したと説明している。(参照資料:UNECEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Aug 2021
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カナダの天然資源省とルーマニアのエネルギー省は8月5日、ルーマニアの民生用原子力部門の拡充や近代化などを目的に、両国間の原子力協力を強化する了解覚書を締結した。ルーマニアでは現在、唯一の原子力発電設備であるチェルナボーダ発電所でカナダ型加圧重水炉(CANDU炉)の1、2号機(各70万kW級)が稼働中。先月末からは米国との協力により、運転開始後25年が経過した1号機の改修工事と、建設工事が停止した3、4号機(各70万kW級CANDU炉)を完成させるプロジェクトが動き始めた。ルーマニアはまた昨年10月、同様の目的からフランスとも民生用原子力分野の協力を強化していくと表明、両国の(当時の)首相が協力宣言に調印した。今回はこれらの国にCANDU炉の開発国であるカナダが加わったことから、ルーマニアは既存炉の運転期間延長のための改修工事と新規原子炉の運転開始に向けて、カナダの原子力産業界が積み重ねてきたCANDU炉分野の高い実績に期待。このほか、小型モジュール炉(SMR)のさらなる開発支援に関する実行可能性分析や市場調査、原子力サプライチェーンの統合、高度な技能を有する労働力の育成なども両国の協力分野に含まれている。カナダは2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成すると約束した約120か国の1つであり、今回同国の天然資源省は「この意欲的な目標を達成するには、原子力を含めて様々なクリーンエネルギーを活用しなければならない」と表明。ルーマニアとの覚書は、このような地球温暖化の防止に向けた共通目標の達成と電力供給システムの脱炭素化という共通利益で、両国間の戦略的パートナーシップがいかに重要か示していると述べた。今回の覚書にはルーマニアのV.ポペスク・エネルギー相と、同国駐在カナダ大使館のA.グーレ大使がS.オレガン天然資源相に代わって調印、ルーマニアのF.クツ首相も同席した。ポペスク・エネルギー相は「我が国の新しい原子炉建設や既存炉の近代化プロジェクトに、米国とフランスに続いてカナダが加わってくれたことは非常に喜ばしい」とコメント。これらを通じて両国の協力関係をさらに深めるだけでなく、将来のグリーンエネルギーとなる新しい技術をともに実現していきたいと述べた。(参照資料:ルーマニア政府(ルーマニア語)、カナダ政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Aug 2021
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は8月9日、同社の国際事業部門であるルスアトム・オーバーシーズ社(JSC RAOS)が極東のサハ自治共和国内で計画している小型モジュール炉(SMR)建設に対し、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)が建設許可を発給したと発表した。ロスアトム社は2020年12月、ロシアでも初となる陸上設置式SMR「RITM-200N」(電気出力5.5万kW)をサハ共和国北部のウスチ・ヤンスク地区ウスチ・クイガ村で2028年までに完成させる計画で、同SMRが発電する電力の料金について同国政府との合意文書に調印した。建設計画の環境影響声明書や同サイトでのSMR建設の妥当性に関する資料の作成など、様々な所要の調査の大部分がすでに完了。今年6月にはサハ共和国内で公開ヒアリングも開催済みであることから、ロスアトム社は2024年にもSMR発電所の建設工事を開始する。ロシアでは、電気出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」を2基搭載した海上浮揚式原子力発電所(FNPP)の「アカデミック・ロモノソフ号」が2020年5月、極東チュクチ自治区内の湾岸都市ペベクで商業運転を開始した。ロスアトム社傘下のOKBMアフリカントフ社はこれに続き、「KLT-40S」の特性をさらに生かしたSMRシリーズ「RITM」を開発。熱出力17.5万kW~19万kWの「RITM-200」においては、ロシアの原子力砕氷船に搭載した小型炉のこれまでの運転経験を統合しており、同炉を2基搭載した最新の原子力砕氷船「アルクティカ」はすでに海上での試験航行を終え2020年10月に正式就航した。同様に、「RITM-200」を2基ずつ搭載予定の原子力砕氷船「シビル」と「ウラル」も現在建造中である。「RITM-200」はまた、FNPPに搭載する「RITM-200M」(電気5万kW)と陸上に設置する「RITM-200N」の2種類に分けられる。ロスアトム社は今年7月、極東のチュクチ自治区で計画されているバイムスキー銅鉱山プロジェクトに電力を供給すると決定。「RITM-200M」を2基搭載したFNPPを、同鉱山に近い東シベリア海沿岸のナグリョウィニン岬の作業水域に納入することになった。一方、陸上設置型の「RITM-200N」は顧客の要望に応じて柔軟性の高い幅広い活用が可能で、ロスアトム社は発電のみならず熱や水素の製造、海水の脱塩にも利用できると指摘。建設期間が3~4年と短期間で済む一方で耐用年数は60年と長く、燃料交換も5~6年に一回のサイクルだと説明。JSC RAOSのO.シラゼトディノフ副総裁は、「建設許可が降りたことでサハ共和国におけるSMR建設プロジェクトは新たな節目を迎えた」と表明している。(参照資料:ロスアトム社の発表資料①、②、ルスアトム・オーバーシーズ社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Aug 2021
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米国で約30年ぶりの新設計画として、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で3、4号機(各PWR、110万kW)を建設中のジョージア・パワー社は7月29日、両機の送電開始時期を3~4か月先送りし、それぞれ2022年第2四半期と2023年第1四半期に延期したと発表した。両機で採用されたAP1000型炉を開発したウェスチングハウス社が2017年3月に経済破綻して以降、ジョージア・パワー社は両機の完成スケジュールをそれぞれ、2021年11月と2022年11月としていた同社は昨年4月、新型コロナウイルスによる感染の影響を軽減するため、建設サイトの労働力を約20%削減した。今回のスケジュール変更は、このような労働生産性の低下に加えて、試験や品質保証関連で追加の時間が必要になったことを理由として挙げており、この遅れによりプロジェクト全体の建設コストも上昇する見通し。同プロジェクトに45.7%出資するジョージア・パワー社の追加負担額は、4億6,000万ドルになる見込み。2013年の3月と11月に始まった3、4号機増設プロジェクトでは、ジョージア・パワー社のほかに、オーグルソープ電力が30%、ジョージア電力公社(MEAG)の子会社が22.7%、ダルトン市営電力が1.6%出資している。3号機の建設工事では2020年10月に冷態機能試験が完了した後、同年12月に初装荷燃料が建設サイトに到着。ジョージア・パワー社は今回、同機の温態機能試験が特に大きな問題もなく、無事に完了したことを明らかにしている。ジョージア・パワー社の発表によると、完成スケジュールを先送りしたことで同社が負担する建設コストは計92億ドルに達する。同社がこれまでにジョージア州の公益事業委員会(PSC)から承認を受けた建設コストは総額73億ドルであるため、これを超える金額についてはこれから承認を得ることになる。同プロジェクトではまた、建設期間中に顧客が電気代を通じて負担している金額に影響が及ぶのを防ぐため、出資企業の投資利益率を下げる措置が特別に取られている。プロジェクトの進行が一か月遅延する毎に、この利益率も徐々に下がっていくため、投資したコストを最終的にどれだけ回収できるかは、4号機が完成する頃に実施予定の包括レビューで明らかになる。ジョージア・パワー社のC.ウォマック社長兼CEOは、「この建設プロジェクトは、当社がジョージア州で60~80年にわたり、低コストで信頼性の高いCO2フリーの電力を提供していくための重要な投資案件だ」と説明。「これらを確実に実行することは、当社の顧客やジョージア州のみならず米国にとっても重要であり、必ず実行したい」との決意を述べた。3号機の温態機能試験では、同社は核燃料なしでシステムの温度や圧力を通常運転時のレベルまで上昇させ、機器やシステムが正常に機能することを確認。今回、この試験が完了したことから3号機の建設進捗率は99%に到達。4号機も含めたプロジェクト全体の進捗率は約93%となっている。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Aug 2021
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ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は7月30日、米エネルギー省(DOE)のK.ハフ原子力担当次官補代行を団長とする一行がルーマニア側との原子力関係協力で運営会議に参加するため、同国唯一の原子力発電設備であるチェルナボーダ原子力発電所(稼働中の1、2号機は各約70万kWのカナダ型加圧重水炉:CANDU炉×2基)を訪れたと発表した。ルーマニアと米国の両国は2020年10月、建設工事が中断したチェルナボーダ3、4号機(各70.6万kWのCANDU炉)の完成プロジェクトも含め、ルーマニアの民生用原子力発電部門の能力拡充と近代化に米国が協力するため政府間協定を締結した。今年6月にルーマニア議会が同協定を批准したことから、SNNのエネルギー戦略に沿って、3、4号機がそれぞれ2030年と2031年に運転開始できるよう、今回DOEの代表団が実質的な協力活動を開始したもの。SNN株主総会が承認した同戦略によると、3、4号機は以下の3段階で完成させる予定。すなわち、①24か月間の準備段階に契約を締結し、米国から技術面や法制面、および財政面の支援を受けるための準備を進める、②18~24か月間の予備的作業段階で、EPC(設計・調達・建設)契約企業が同プロジェクトのエンジニアリング作業を実施し、安全性関係の文書を準備する、③その後は69~78か月の建設段階に入り、工事を実行する。また、米国との協力を通じて、ルーマニアは多国籍の建設チームと米国の技術や専門的知見を活用する機会を確保する。チェルナボーダ1号機については、改修工事を実施する計画である。SNNのC.ギタCEOは、「我が国はレジリエンス(耐久性)と持続可能性を兼ね備えたエネルギーシステムを必要としており、原子力発電設備を拡張することでルーマニアはクリーン経済に移行しつつ、これらの必要性を満たすことができる」と指摘。チェルナボーダ発電所で3、4号機を完成させて、社会経済の成長やサプライチェーンの開発を促すとともに、脱炭素化にパラダイム・シフトするための要件を満たしていくとした。具体的には、間接雇用も含めて1万9,000名もの雇用を産業界で創出し、新しい世代の専門家を育成。これと同時に、合計4基のCANDU炉で年間2,000万トンのCO2排出を抑制すると強調している。チェルナボーダ3、4号機は1980年代半ばに本格着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊により、進捗率がそれぞれ15%と14%のまま建設工事が停止した。これらを完成させるという政府決定を受け、SNNは2009年にプロジェクト会社を設置したものの、同社への出資を約束していた欧州企業6社は経済不況等によりすべて撤退した。その後、2011年に中国広核集団有限公司(CGN)が出資参加の意思を表明したことから、SNNはCGNと2015年11月に両炉の設計・建設・運転・廃止措置に関する協力で了解覚書に調印した。2019年5月にはプロジェクトの継続に関する暫定的な投資家協定を締結したが、2020年1月にルーマニアのL.オルバン首相は地元メディアに対しCGNとの協力をキャンセルすると表明。同年6月には、この協力関係から撤退したことが報じられた。首相のこの判断は、当時の米トランプ政権が中国との対決姿勢を強めたことから、米国との戦略的パートナーシップに配慮したものとみられている。(参照資料:SNNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Aug 2021
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中国核工業集団公司(CNNC)傘下の中国核能電力股分有限公司(CNNP)は7月28日、遼寧省で徐大堡原子力発電所3号機(PWR、127.4万kW)の原子炉建屋部分にコンクリートを打設した。上海証券取引所に対する同社の8月1日付け公告で明らかになったもので、設計は第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER-1200)、設計上の運転期間は60年である。同機は、同型設計となる後続の4号機とともに、徐大堡原子力発電所のⅡ期工事となる予定で、それぞれ2027年と2028年の完成を目指している。一方、Ⅰ期工事の1、2号機(各100万kW級PWR)については、今のところ未着工となっている。CNNCとロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は2018年6月、江蘇省にある田湾原子力発電所と新規サイトの徐大堡で2基ずつ、合計4基のVVERを新たに建設する枠組契約を締結。これに基づき、CNNCとロスアトム社傘下の原子力発電所建設・輸出企業アトムストロイエクスポルト(ASE)社は2019年6月、徐大堡Ⅱ期工事としてVVER-1200を2基建設するための一括請負契約に調印した。今年2月には、ロシアの原子力機器製造企業のアトムエネルゴマシ(AEM)グループが、徐大堡3号機用に主要機器の製造をロシアで開始。最終的に2基分の蒸気発生器や冷却材ポンプ、加圧器などを製造・納入するとしており、5月には田湾7、8号機と徐大堡3、4号機の起工式が執り行われた。これには、中国の習近平国家主席とロシアのV.プーチン大統領が、テレビ会議を通じて参加している。徐大堡発電所建設計画では2006年当時、最終的に100万kW級PWRを6基建設することが計画されていた。2011年初頭にⅠ期工事の2基について、基礎掘削の前段階の起工式が行われたものの、同年3月に福島第一原子力発電所事故が発生したため、政府は計画を一時凍結した。その後、2014年4月に国家核安全局(NNSA)が同計画に「サイト承認」を発給。2016年10月に1、2号機について土木建築契約が結ばれた折、同サイトでは100万kW級のウェスチングハウス社製AP1000が建設されると見られていたが、その後、中国版AP1000の「CAP1000」になることが判明している。同発電所の所有者は中核遼寧核電有限公司で、これにはCNNCが50%以上出資。残りを大唐国際発電股分有限公司や国家開発投資公司、江蘇省国新資産管理集団有限公司などが10~20%ずつ出資している。(参照資料:上海証券取引所の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Aug 2021
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は7月31日、エジプトから2015年に請け負った同国初のエルダバ原子力発電所(120万kW級ロシア型PWR:VVER-1200×4基)の建設に向けて、機器の製造を開始すると発表した。エジプトのM.シャーケル電力・再生可能エネルギー相と同国の関係機関代表のほか、ロスアトム社やロシア連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)の幹部など、同プロジェクトに関係する一行が同月28日、ロシア南西部サマラ州のシズラニ市にある最大手の重機械製造企業、チャジマシ社(JSC TYAZHMASH)を訪問。エルダバ1、2号機用にコア・キャッチャー機器の製造を開始する契約書に署名したもの。これに先立つ6月30日、エジプトで原子力発電所の導入計画を担当する原子力発電庁(NPPA)は最初の2基の建設許可をエジプト原子力・放射線規制機関(ENRRA)に申請している。4基すべての「サイト許可」については、NPPAがすでに2019年に取得済みである。ロスアトム社は同発電所の建設スケジュールを明らかにしていないが、NPPAが「発電所全体のスケジュールとして13年間を予定している」と述べたことが伝えられている。ロスアトム社とチャジマシ社は長年にわたって協力関係にあり、チャジマシ社が関与する原子力発電所の建設計画はロシア国内のみならず、世界各国に及んでいる。これに今回のエジプト案件が加わり、同社が原子力発電所関係で受注した契約は全体の約3割に上昇。同社のA.トリホノフ社長は「高品質の原子力機器をタイムリーに供給する」との方針を表明したほか、「エジプトの発電所契約のみならず、ロスアトム社との全般的な協力枠組みの中で、今後も新たな契約を獲得していきたい」との抱負を述べた。今回の訪問団には、NPPAのA.エル・ワキル長官やENRRAのS.アタラー長官も含まれており、チャジマシ社では主要な製造工場を訪れている。中国やインド、トルコ向けの様々な原子力発電所用機器の製造状況を視察したほか、バングラデシュのルプール原子力発電所用機器を搬出する輸送ゲートもチェック。エル・ワキル長官は、「ロシアの製造工場で近代的な技術を数多く確認するのが目的だった」と表明。その上で、「ロシアとエジプト双方がこの契約の義務事項をすべて履行し、すべての機器が予定通りに製造・納入されると確信している」と述べた。同訪問団はこのほか、ロスアトム社のエンジニアリング部門のアトムエネルゴマシ社に所属するAEMテクノロジー社を視察。同社のボルゴドンスク支部ではエルダバ原子力発電所の主要機器が製造される予定であり、訪問団はインドや中国の原子力発電所向けに様々な製造段階にある原子炉や蒸気発生器、その他の機器の様子を確認した。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
03 Aug 2021
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米原子力規制委員会(NRC)は7月29日、使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CISF)をテキサス州アンドリュース郡で建設・操業するという中間貯蔵パートナーズ(ISP:Interim Storage Partners)社の計画について、「環境影響声明書の最終版(FEIS)」を発行した。この計画にともなう環境影響を審査した結果、NRCスタッフは環境庁(EPA)に提示する結論として「認可の発給を勧告する」とFEISに明記。EPAが同FEISの受領を連邦官報に掲載して少なくとも30日が経過後、NRCは認可の発給判断を下すが、その際の条件として、NRCは同計画の安全・セキュリティ面や技術面を保証する「安全性評価報告書(SER)の最終版」を発行しなければならない。NRCは現在、この評価作業を別途進めている。ISPは、米国の放射性廃棄物処理・処分専門業者であるウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)社と、仏国のオラノ社の米国法人が2018年3月に立ち上げた合弁事業体(JV)である。米エネルギー省(DOE)が2010年に、ネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料最終処分場の建設計画を中止した後、WCS社は2016年4月、テキサス州の認可を受けて操業している「低レベル放射性廃棄物処分場」の隣接区域で、CISFを建設・操業するためのライセンス取得をNRCに申請。その後、オラノ社とのJV設立を経て、同JVが2018年6月に改めて申請書を提出していた。その後の2020年5月、NRCはCISF建設計画に関する環境影響声明書の案文(DEIS)を公表。「サイト周辺の自然環境などに悪影響が及ぶ可能性は認められない」と結論付けた上で、120日間のパブリック・コメントに付した。また、DEISの判明事項を公表するため、公開協議を4回にわたってウェブ上で開催。FEISを取りまとめるに当たっては、約1万600人の一般国民が提出した約2,500件のコメントを分析評価したとしている。この申請が承認された場合、ISP社は差し当たり最大5,000トンの使用済燃料、および「クラスCを超える低レベル放射性廃棄物(GTCC廃棄物)」をCISFで40年間貯蔵することができる。同社はそれ以降の20年間で、CISFを5,000トンずつ7段階で拡張するプロジェクトを実施し、最終的に最大4万トンの使用済燃料を貯蔵する計画である。なお、このCISF建設計画に対しては、地元テキサス州のG.アボット知事が2020年11月、NRCに宛てた書簡の中で反対意見を表明。「テロリストや妨害工作員の攻撃で放射性物質が流出すれば、当州のパーミアン盆地にある世界最大規模の油田が閉鎖リスクにさらされるかもしれない」と述べており、NRCに対してはISP社の申請を却下するよう要請している。また、同州に隣接するニューメキシコ州のM.J.グリシャム知事もその数日前、同様の反対意見をNRC宛ての書簡に明記。「DEISには重大な欠陥があり、CISFが当州の環境や経済、州民の健康と安全に及ぼす悪影響に適切に取り組んでいない」と指摘した。また、最終処分場の具体的な建設計画が浮上しない中、両州の州境から約60kmの地点で建設されるCISFが、実質的に最終処分場に変わる可能性に懸念を表明している。(参照資料:NRC、ISP 社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Aug 2021
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©BEIS英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は7月29日、「先進的モジュール式原子炉(AMR)の実証計画」では2030年代初頭までに1億7,000万ポンド(約259億6,200万円)の予算で、高温ガス炉(HTGR)の実証炉を同計画の初号機として完成させる案を公表した。HTGRは、英国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する有力ツールの一部となる予定で、英国は今後10年以内に最新の原子炉技術の実用化を目指している。BEISは同日、政府がHTGRを最も有望な実証モデルと考えるこの提案について、「根拠に基づく情報提供の照会(Call for Evidence)」を開始。9月9日までの約1か月間、産業界や一般国民からのコメントを募集する方針だ。BEISによればこの提案は、CO2排出量の実質ゼロ化に向けた重要施策としてB.ジョンソン首相が昨年11月に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」、および翌12月に英国政府が発表した「エネルギー白書」で誓約していた事項。AMRの研究開発プログラムに投入される1億7,000万ポンドは、柔軟性の高い活用が可能な原子炉技術の開発を加速するために確保された3億8,500万ポンド(約588億円)の一部である。BEISは、AMRは従来の原子力発電所と比べて小型なため、より少ないコストで建設することが可能と考えている。運転上の柔軟性も高く、低炭素な電力を一層安全に供給するほか、重工業の脱炭素化に資するクリーン水素や高温熱を製造することもできる。また、英国で排出されるCO2の37%が高温熱を得るための火力によるもので、かなりの部分が重工業の生産プロセスで発生する。HTGRの高温熱は500℃~950℃と、その他のAMRより温度が高いことから、HTGRを活用することでセメントや紙、ガラス製品、および化学製品の生産プロセスでは、CO2排出量の大幅な削減が可能である。AMRではさらに、従来の軽水炉とは異なるタイプの燃料や冷却材を使用。AMRの研究開発に関する国際協力の場では、主に6種類のAMR技術がCO2の実質ゼロ化に貢献すると言われており、このうちのいくつかは、燃料として使用済燃料を再利用する可能性がある。しかし、この中でもHTGRは出口温度が最も高いものの一つであるため、BEISは実証炉プログラムの初号機にHTGRを選択したと説明している。BEISのA.M.トレベリアン・エネルギー担当大臣は、「2050年までに英国では風力や太陽光といった再生可能エネルギーが発電に不可欠の要素となるが、これらでは常に、安定した低炭素のベースロード電源として原子力を必要とする」と指摘。「だからこそ、我々はサイズウェルC原子力発電所の開発企業と交渉しつつも、先進的原子炉技術の実用化を推し進めている」と強調した。同相によれば、AMRは新しいレベルの近代的原子力技術であり、CO2排出量の削減で重要な役割を果たす可能性がある。AMRはまた、産業界に動力を供給し、英国民がより良い環境を取り戻しつつ経済成長を遂げられるよう導いてくれるとしている。なお、英国政府はこのほか、様々な原子力技術開発支援の一環として、国立原子力研究所(NNL)がプレストン研究所(スプリングフィールド)で開発中の「先進的原子力技術と技術革新キャンパス」を試験的に実行すると発表した。同キャンパスは、産業界と学界が先進的原子力技術の開発と商業化を目指して、共同プロジェクトを実施する「技術革新ハブ」として機能する予定である。(参照資料:英国政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
30 Jul 2021
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ブラジル原子力発電公社(Eletronuclear)は7月23日、建設工事が2015年に停止したアングラ原子力発電所3号機(PWR、140.5万kW)の作業再開に向け、今年2月に募集した土木建築契約の入札結果を公表した。この入札は国内企業を対象にしており、複数回の入札手続きを経て、原子力発電公社は最終的に建築エンジニアリング企業のFerreira Guedes社と電気機器企業のMatrical and ADtranz社で構成される企業連合を選定した。2億9,200万レアル(約62億6,000万円)で土木建築工事の準備作業と一部の電気機器の組み立て作業を委託する計画。同公社がEPC(設計・調達・建設)契約企業を選定するのに先立ち、原子炉建屋のコンクリート製上部構造物やスチール製の格納構造物を完成させるほか、使用済燃料の貯蔵プールなどを建設するとしている。同公社によると、1984年に始まったアングラ3号機の建設工事はこれまでに、景気の後退や関係する汚職調査等により2回作業が停止したため、現在の建設進捗率は65%である。今回入札した作業項目は、同公社がアングラ3号機用に設定した「完成に至る最適経路の加速計画」に沿ったもの。所轄官庁から落札企業としての承認を受けた後、同企業連合は10日以内に原子力発電公社と正式契約を交わすことになっており、同公社としては今年中にも残りの建設工事を再開したい考え。2026年11月に同機の運転開始を見込んでいる。このほか、アングラ3号機の建設再開・完成計画に関しては、ブラジル国立社会経済開発銀行(BNDES)が今年6月、「アングラ・ユーロブラスNES企業連合」を雇用する契約を締結した。同機の建設と運転・保守について、法制面や経済面で民間部門と協力していくモデルを構築するため、BNDESが入札を通じて同連合を選定したもの。これは2019年以降、BNDESが原子力発電公社に提供している技術支援サービスの一環。また、アングラ3号機の建設再開と完成に向けて、同企業連合はプロジェクトの再構成を担うとともに、EPC契約企業の候補会社も勧告することになる。構成メンバーは、ベルギーのエンジニアリング・サービス企業であるトラクテベル・エンジニアリング社と同社のブラジル支部、およびスペインのエンジニアリング企業のEmpresarios Agrupados Internaciolal SA。これらの企業は、複数の国で原子力発電所関係の様々な経験と実績を積んでいることから、ブラジルにおいても一流の建設パートナーや資金調達の支援機関を幅広く呼び込むことができるとBNDESは指摘している。(参照資料:ブラジル原子力発電公社、BNDESの発表資料(ポルトガル語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Jul 2021
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は7月23日、ロシア極東チュクチ自治区で計画されているバイムスキー銅鉱山プロジェクトに「海上浮揚式原子炉(FPU)」を使って電力を供給するため、同プロジェクトの法的所有者であるGDKバイムスカヤ社と協定を締結したと発表した。同鉱山は世界でも最大規模の未開発銅鉱山の1つと言われており、カザフスタンの採掘企業のKAZ ミネラルズ社は2018年8月、同プロジェクトを9億ドルで買収した。今回の協定では、銅鉱山と処理施設で構成される「バイムスキーGOK」に対し、ロスアトム社が供給する電力の長期的な全量売買契約を2022年4月までに締結することが明記された。チュクチ自治区のペベクでは現在、世界初の海上浮揚式原子力発電所(FNPP)となった「アカデミック・ロモノソフ号」が2020年5月から電力を供給中。同発電所では電気出力3.5万kWの軽水炉式小型炉「KLT-40S」が2基搭載されているのに対し、バイムスキー銅鉱山プロジェクトでは、ロスアトム社が出力5万kWの小型炉「RITM-200M」を2基搭載した「最適化FPU(OFPU)」を利用する方針である。GDKバイムスカヤ社によると、同鉱山では合計4艘のOFPUを利用する計画。このうち3艘がメインの発電ユニットとなる一方、残り1艘はメイン・ユニットの修理時や燃料交換時のバックアップに使われる。ロスアトム社はすでに、これらの製造を傘下のアトムエネルゴマシ社で開始しており、2026年末に最初の2艘を同鉱山に近い東シベリア海沿岸の、ナグリョウィニン岬の作業水域に納入。バイムスキーGOKに通じる送電網にこれらを接続した後、翌2027年末に3艘目を設置するとしている。今回締結された協定は、バイムスキー鉱床地区の開発に向けた投資プロジェクトを実行に移す「包括的ロードマップ」の枠組の中で締結された。同ロードマップは2021年7月1日、ロシアのY.トルトネフ副首相兼極東連邦管区大統領全権代表が承認済みである。ロスアトム社はまた、今回の協定の重要な点として、北極圏への投資が一層効率的に行われるよう、電力産業関係の法改正を促す意図が両社にあると説明。北極圏内で長期のプロジェクトを実行する投資家に対しては、十分な見返りを与える効果的なメカニズムが必要だと強調している。(参照資料:ロスアトム社、KAZ ミネラルズ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Jul 2021
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