英国の先進炉開発企業であるニュークレオ社は12月2日、同社が開発した電気出力20万kWの鉛冷却高速炉(LFR)である「LFR-AS-200」について、英国の包括的設計審査(GDA)を申請したことを明らかにした。GDAのプロセスが正式に開始されるには、英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)がニュークレオ社のGDA申請書を事前に精査し、LFR-AS-200の評価基準適合を確認後、GDAへの参加を正式に承認する必要がある。その後、原子力規制庁(ONR)が同炉の安全性とセキュリティ面について、環境庁(EA)が環境影響面について、英国の基準を満たしているかを2段階で評価する。なお、建設サイト特定後の建設許可申請とは別の評価となる。ニュークレオ社は、GDAの完了を2027年春頃と見込んでいる。今年10月には、ニュークレオ社の「European LFR AS Project」が、欧州委員会(EC)が2月に立ち上げた「欧州SMR産業アライアンス(European Industrial Alliance on SMRs)」の初回支援対象のSMRプロジェクトの一つとして選ばれている。ニュークレオ社は2021年の設立。これまでに、投資家から計5億3,700万ユーロ(約857億円)を調達しており既に仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)とLFR開発に関する提携契約を今年4月に締結している。2030年までに電気出力3万kWの実証炉「LFR-AS-30」をフランスで建設し、2033年までに英国で商業規模に拡大したLFR-AS-200の建設をめざしている。
10 Dec 2024
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フィンランドの放射線・原子力安全庁(STUK)は12月4日、放射性廃棄物管理会社ポシバ社による世界初の使用済み燃料の深地層処分場の操業許可申請の審査完了が1年遅れると発表した。STUKは遅延の原因を、ポシバ社の提出資料に不足があるためだとしており、雇用経済省はSTUKによる意見書の提出期限を2025年12月末まで延長した。操業許可の最終的な判断は政府が下すが、事前にSTUKが処分場の長期的な安全性評価を実施し、雇用経済相に見解を提示しなければならない。ポシバ社は2021年12月、オルキルオト原子力発電所近隣のユーラヨキに現在建設中の使用済み燃料封入プラントと使用済み燃料最終処分場を2024年3月から2070年末まで操業するための許可を雇用経済省に申請、STUKは2022年5月に評価作業を開始した。雇用経済省はSTUKに対し、2023年末までに見解を提出するよう求めていたが、2024年1月、STUKは意見書の期限を2024年末まで延長するよう要請していた。なお、ポシバ社は2024年8月末より、数か月の予定で最終処分場の安全性確認のための試験操業を開始している。
09 Dec 2024
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スウェーデン放射線安全機関(SSM)は11月29日、低中レベル廃棄物処分場(SFR)の拡張工事を認可した。スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)が申請していたもので、同処分場はフォルスマルクに立地している。SKBは、スウェーデンの原子力発電所を所有・運転する電力会社が共同出資して設立した会社。SFRはSKBの最終処分システムの一部であり、既存の貯蔵施設にはスウェーデンの原子力発電所から発生する短寿命の低中レベル廃棄物のほか、医療、産業、研究分野から発生する放射性廃棄物が処分されている。将来的には、原子力発電所の廃炉に伴う廃棄物を処分するため、SKBは2014年末にSFRの拡張申請を提出。2021年12月に政府によって承認されていた。SKBは2022年12月には、国土環境裁判所から拡張工事の環境認可を受け、地上での作業を開始。今回の許可は、2023年3月のSSMへの、予備的安全評価、システム説明、廃止措置計画を含む、拡張したSFRの建設・操業に関する申請書の提出を受けたもの。早ければこの12月中旬に掘削作業を開始する。なお、SFRの拡張部分の操業開始にあたっては、新たに安全分析報告書をSSMに提出し、承認を得なければならない。1988年に稼働を開始した既存の処分施設は、フォルスマルク原子力発電所の沖合3km、水深約5mの海底から約60mの岩盤内に設置され、処分容量は6.3万㎥。毎年、10~20㎥の廃棄物を受入れている。拡張施設は、海底から120〜160mの深さに設置。ドーム状の6エリアから構成され、処分容量は11.7万㎥。SFRの処分容量は既存と拡張施設を合わせて18万㎥となる。拡張工事は、掘削に3年、設置に3年の合計約6年を見込む。SKBは長寿命の低中レベル放射性廃棄物の最終処分場SFLの建設も計画しているが、他のプロジェクトほど進んでいないという。
09 Dec 2024
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カナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は11月28日、同国の使用済み燃料を処分する深地層処分場の建設地をオンタリオ州北西部のワビグーン・レイク・オジブウェイ・ネーション(WLON)–イグナス地域に決定したと発表した。カナダでは、原子力発電所の使用済み燃料を再処理せずに深地層処分する方針であり、2002年に設立された NWMOが、カナダの中・高レベル放射性廃棄物の安全かつ長期的管理を任務とし、2010年から使用済み燃料の深地層処分場のサイト選定プロセスを開始した。当初、22自治体が処分場の受入れに関心を表明し、NWMOは集中的な技術研究を重ね、これら自治体の他、候補地がその領土内に位置する先住民族との関与を深め、徐々に候補地を絞っていった。2020年までに、オンタリオ州北西部のワビグーン・レイク・オジブウェイ・ネーション(WLON)–イグナス地域と、同州南西部のソーギン・オジブウェイ・ネーション(SON)–サウスブルース地域の2地点が候補地に残った。NWMOは今年11月中旬、先住民族であるWLONがイグナス地域の西およそ48kmのレヴェル湖エリアに処分場の誘致意思を示したと発表。イグナスの議会は今年7月、住民投票の結果、処分場の誘致に前向きであることを決定していた。一方、サウスブルース自治体は今年10月、住民投票の結果、僅差で処分場誘致を支持したが、SONは2025年まで決定を下さないとしていた。サイト決定を発表したNWMOのL. スワミCEOは、「本プロジェクトはカナダの環境問題を解決し、気候目標を支援するもの。カナダ人と先住民が主導し、同意に基づく立地プロセスで推進された。これが歴史を作るということだ」とその意義を強調した。カナダのJ. ウィルキンソン・エネルギー・天然資源相は、「WLON–イグナスの各コミュニティとサイト選定プロセスに関わった、多くのコミュニティのリーダーシップと積極的な関与に深く感謝し、NWMOの長年にわたる努力を称賛する」と述べた。オンタリオ州のS. レッチェ・エネルギー・電化相は、「オンタリオ州は、原子力のライフサイクルのあらゆる分野で世界のリーダーとしての地位を固めつつある。NWMOによるこの成果は、その最新の例だ」とサイト決定を称えた。サイト決定を受け、今後は規制評価段階に入る。処分場の建設には、カナダ原子力安全委員会(CNSC)による建設許可とカナダ環境影響評価庁(IAAC)による環境影響評価が必要。CNSCはNWMOに規制上のガイダンスを提供するとともに、地層処分場のコンセプトに関するプロジェクト前の設計レビューを実施したという。NWMOはまた、先住民も参加した規制の評価と承認プロセスにも同意しており、このプロセスはWLONによって開発・実施される。NWMOは処分場の建設許可が2033年までに発給されると見込む。その後の建設期間を経て、2040~2045年に操業を開始したい考えだ。サイトとなるレヴェル湖エリアの結晶質岩層の特性にもよるが、処分場は地下約500m、面積約6㎢に建設される予定であるという。
06 Dec 2024
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「Facebook」を運営し、「Instagram」や「WhatsApp」などを傘下に収める米IT大手のメタ・プラットフォームズ社(Meta)は12月3日、2030年代前半に原子力発電から電力調達することを目指し、来年2月7日まで事業提案を募る、提案依頼書(Request for Proposals:RFP)を発行すると発表した。生成AI(人工知能)によるデータセンターの電力需要急増に対応するとともに、脱炭素化を達成することを目指している。メタ社は2030年代前半に、合計出力100万~400万kWeの小型モジュール炉(SMR)、または大型炉の稼働開始を検討している。複数基の展開により大幅なコスト削減を実現し、地域社会への関与、開発、設計、エンジニアリング、許認可、資金調達、建設、運転に関する知見や能力を有する事業者からの提案を歓迎するとしている。メタ社は同発表に際し、「原子力発電は、データセンターとその周辺コミュニティの両方に電力を供給する安定したベースロード電源。クリーンで、信頼性が高く、エネルギー移行の中で極めて重要な役割を果たすと確信している」との認識を示した。同社は、原子力プロジェクトは資本集約的であり、開発には長期間を要すること、多くの規制要件の対象となり、長い運転期間が見込まれるため、原子力プロジェクトの開発ライフサイクルのより早い段階で関与する必要性を指摘。同型プラントのシリーズ建設こそが、コストを迅速に削減する最大の要因と捉え、選定されたパートナーと戦略的に取り組むとの考えを示している。近年、IT企業大手の間では、原子力発電を活用する動きが急速に拡大している。その背景には、より複雑かつ推測力の高い処理を必要とする大規模言語モデルを基盤技術とする、生成AIの進化がある。これに伴い、データセンター利用の増加ならびに電力需要の指数関数的な増加が予想されている。IT企業各社は、環境への取組みとしてカーボンニュートラル(CN)の達成を目標に掲げ、投資を続ける太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの最大限活用をアピールするが、いずれも自然環境の影響を受けやすく、AIの台頭によってCNの目標達成は難しくなっているのが現状だ。そのため、安価で安定した電力供給が可能な、原子力発電への期待が高まっている。なおこれまでに、米国のMicrosoft社、Amazon社、Google社が、原子力発電からの電力調達計画を明らかにしている。・Microsoft社2024年9月、大手電力会社のコンステレーション・エナジー社と閉鎖済みのスリーマイル・アイランド(TMI)1号機(PWR、89万kWe)を2028年をメドに再稼働させ、Microsoft社のデータセンターに電力を供給する、20年間の売電契約の締結を発表。・Amazon社2024年3月、傘下のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社が、ペンシルベニア州にあるサスケハナ原子力発電所(BWR、133.0万kW×2基)に隣接するデータセンターを買収。同年10月には、先進炉開発企業X-エナジー社に、同社製SMRを2039年までに合計500万kWe以上稼働させるべく、約5億ドル(約750億円)の出資を発表。・Google社2024年10月、米原子力新興企業のケイロス・パワー社と同社が開発する先進炉を複数基、合計最大50万kWeを2035年までに導入し、Google社のデータセンターに電力を供給する、電力購入契約(PPA)を締結。
05 Dec 2024
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SMRなどの革新的な原子炉の導入に向け、各国が協力体制を構築している。このほど米国はリトアニアと政府間協定を、英国はフィンランドと協力覚書を締結した。米エネルギー省(DOE)のJ. グランホルム長官とリトアニアのD. クレイビス・エネルギー相は11月26日、米国のワシントンで、リトアニアの民生用原子力発電プログラムの開発に協力する政府間協定を締結した。同協定は、特に第4世代小型モジュール炉(SMR)のリトアニアへの導入に焦点を当てた、米国初となる政府間枠組み。米国は、リトアニアと次世代炉開発における知見を共有するとともに、第4世代のSMRのビジネスモデル分析と開発可能性評価を実施し、リトアニアが掲げる2050年までのネットゼロ達成目標を支援する。リトアニアは、2025年2月に同国を含むバルト三国がロシアの電力網から完全に切り離され、欧州の電力網に接続する予定で、欧州域内でエネルギー輸出国としてシェアを拡げたい考えだ。協定ではSMR導入に係る協力に加えて、リトアニアにおける最高水準の安全とセキュリティの促進や民生用原子力施設の核物質防護・セキュリティの強化のほか、廃止措置、燃料管理、人材育成に係るベストプラクティスなどを協議する専門家交流も想定している。グランホルム長官は「安全、クリーンで信頼性の高い原子力エネルギーは、リトアニアのエネルギー政策上のカナメとなる」と強調。クレイビス・エネルギー相は、「リトアニアの増大するエネルギー需要を満たし、ネットゼロ目標の達成のため、米国の次世代炉開発の知見に期待している」と述べるとともに、リトアニアの地政学的な安全保障、長期的な経済成長、技術力向上にも資する、本協定の意義を強調した。リトアニアでは、イグナリナ原子力発電所(軽水冷却黒鉛減速炉:RBMK-1500×2基、各150万kWe)が1980年代から稼働していたが、欧州連合(EU)は、チョルノービリと同型であるRBMK炉の安全性への懸念から閉鎖を要求、リトアニアはEU加盟と引き換えに同発電所を2009年までに閉鎖した。イグナリナ原子力発電所近傍のヴィサギナスに日立製作所が主導する新規原子力発電所プロジェクトも浮上したが、福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電に対する国民の支持は低下。2012年の同プロジェクトへの支持を問う国民投票では、新規建設に対する否定的な意見が優勢となり、計画は2016年に凍結された。リトアニアの総発電電力量は約57億kWh(2023年実績)で、その内、約73%を再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力)、約11%を火力発電(天然ガス)が占める。現在の電力消費量は約120億kWh。エネルギー部門の脱炭素化と電化には大量の追加電源が必要であり、2050年代には約6倍の740億kWhへの増大を予想する。そのため、エネルギーシステム全体の均衡を保ち、再生可能エネルギーへより多く投資することを可能にするSMRの導入を推進したいとし、2028年にはSMR建設の決定を目指している。 英国はフィンランドと一方、英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)とフィンランド経済雇用省は11月18日、民生用原子力エネルギー分野における協力覚書(MOU)を締結した。協力の対象分野は、SMRや先進モジュール炉(AMR)のような革新技術の導入、既存・新設炉を対象とした燃料供給の多様化、SMRやAMRの効率的な導入に係わる規制組織間の意見交換、資金調達、使用済み燃料最終処分を含む放射性廃棄物管理と廃炉、原子力安全とセキュリティ、人材育成など。これらの分野で知見やベストプラクティスを共有し、両国の産官学の政策・技術・学術関係者の交流や、民間企業間の緊密な協力によるビジネスの機会の促進を図る。両政府は、SMRやAMRなどの新原子力技術が、エネルギーセキュリティと気候変動の双方に革新的な解決策となる可能性を認識。発電だけでなく、熱生産および水素製造、その他の非電力用途の原子力技術の研究開発でさらに協力する機会を模索したいとしている。今回のMOUにより、英国の輸出信用機関である英国輸出信用保証局(UKEF)は、英国の商品やサービスを購入するフィンランドを拠点とするプロジェクトに対し、最大40億ポンド(約7,600億円)の融資支援が可能となる。UKEFは、英国製SMRのフィンランドへの導入を念頭に置いている。フィンランドの輸出信用機関であるフィンベラ(Finnvera)も、フィンランドの商品やサービスを購入する英国を拠点とするプロジェクトに対して同様に資金提供が可能になるという。
04 Dec 2024
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英国の原子力廃止措置機関(NDA)は11月25日、イングランド北西端のカンブリア州にあるセラフィールド原子力施設の近隣に、専門のサイバーセンターを開設した。原子力事業者とサプライチェーン間の連携を加速することを目的に、AI(人工知能)やロボティクス(ロボット工学)などの革新的な技術を採用し、サイバーテロなどの脅威からの防御能力を強化する。NDAは、英国内の原子力施設の廃止措置ならびにサイトのクリーンアップ、使用済み燃料や放射性廃棄物の安全管理などを担当する政府外公共機関(NDPB)。セラフィールド社を筆頭に、廃止措置、廃棄物管理、核物質輸送などの分野に特化した傘下の4社がある。英政府は現在、サイバー脅威レベルの増大に対応して、国家インフラのサイバーセキュリティの態勢を整えている。サイバーセキュリティへの攻撃は、民生用原子力部門を含むすべての組織に共通する大規模な脅威であるとの共通認識の下、NDAはサイバーセキュリティセンター「Group Cyberspace Collaboration Centre(GCCC)」を開設。GCCCでは、サイバー、デジタル、エンジニアリング分野の専門家が集まり、進化するサイバーセキュリティの脅威から防御する最善策について知見を共有する。NDAグループの廃炉ミッションを支援するとともに、セキュリティ運用、サイバー演習、訓練を促進する新技術を検討するための多機能スペースだ。GCCCの開所にあたり、NDAのD. ピアッティCEOは、「GCCCは、サイバー空間における安全、セキュリティ、回復力、持続可能性の確保のために共同で能力強化を図り、サイバーセキュリティの脅威を一丸となって排除し、顧客を含めた集団安全保障に貢献する。セキュリティに関して決して満足することはなく、さらなる能力強化のために、NDAグループ全体のサイバー防衛へ継続的に投資していく」と語り、GCCCの活用により、NDAの廃炉ミッションを安全かつ確実に、コストを抑えて遂行したい考えを示した。開所式に参加した、英原子力規制庁(ONR)のW. カイン監督検査官は、「すべての原子力施設は、サイバー脅威から重要な情報と資産を保護するために、強力なサイバーセキュリティシステムを整備する必要がある。サイバーセキュリティは、ONRにとって重要な規制上の優先事項であり、GCCCによるサイバー防衛強化の取組みを歓迎する」と述べた。なお、セラフィールド社は、2019年~2023年の4年間のサイバーセキュリティー上の不備をONRに指摘され、今年10月に罰金を科されている。同社のITシステムが不正アクセスやデータ損失に対して脆弱であり、セキュリティ規則違反と認定されたもの。同社は、カンブリア州で広大な原子力施設を運営しており、旧原子力施設から発生した放射性廃棄物などの回収、プルトニウムやウランを含む特殊核物質の貯蔵、使用済み燃料の管理、サイト内の施設の解体処理などを実施している。
03 Dec 2024
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米ウェスチングハウス(WE)社と英コアパワー社は11月25日、WE社のマイクロ炉「eVinci」を搭載した、浮揚式原子力発電所(FNPP)の設計と開発に関する協力協定を締結した。今回の協定に基づき、両社はWE社のeVinciとヒートパイプ技術を用いて、FNPPの設計を進めるほか、FNPPの認可取得に向けた規制対応でも協力を行う予定。 両社の発表では、コスト競争力があり建設も比較的容易なFNPPは、島しょ部や沿岸地域、港、そして産業プラントに原子力エネルギーを導入する画期的なアプローチであり、なかでもeVinciはメンテナンスが最小限で済み、燃料交換なしで8年間フル稼働が可能なため、FNPPに最適であるという。 eVinciは、熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。工場で組み立てが可能で、燃料にはHALEU燃料を3重に被覆した燃料粒子「TRISO」を使用する。水素製造などに利用可能な高温の熱が発生するため、電源としての用途以外にも遠隔地のコミュニティへの熱電供給などが期待されている。 コアパワー社が進めるFNPPプロジェクトには、2023年5月に日本の今治造船(愛媛県今治市)や尾道造船(兵庫県神戸市)など13社が出資したことが明らかになっている。同社は、主力事業として進める原子力船開発プロジェクトと合わせて、2030年までに最大で100億ドル(約1兆4,900億円)相当の受注獲得をめざしている。 コアパワー社のM. ボーCEOは、eVinciを使用したFNPPについて、「クリーンで柔軟性があり、信頼性の高い電力を予算内でスケジュール通りに供給できる」と語り、急増する需要に応える完璧なソリューションとして現実的な選択肢となることを強調した。
03 Dec 2024
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米セントラス・エナジー社は11月20日、オハイオ州パイクトンにある米国遠心分離プラント(ACP)におけるウラン濃縮事業の大規模な拡大に向け、テネシー州オークリッジにある同社の施設で遠心分離機の製造を再開させるため、今後18か月で約6,000万ドル(約90億円)を投資することを明らかにした。セントラス社は最近、顧客から20億ドル以上の低濃縮ウラン (LEU) の条件付き購入契約のほか、米エネルギー省(DOE)からHALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の濃縮と再転換を目的とした2種の契約を締結している。なお、大規模な濃縮事業の拡大には、顧客からの委託や民間資本に加えて、数十億ドル規模の官民パートナーシップによる投資が必要であるとの考えを示している。セントラス社のA. ベクスラーCEOは、「米国産技術によるサプライチェーンを構築して信頼性の高い燃料供給を確保、次世代炉の展開を支援し、国家安全保障上、濃縮ウラン生産拡大を迅速に実行できる態勢を整えることが重要だ」と語り、今回の投資によって、米国のウラン濃縮能力の大規模拡大と海外への依存低減に向けた数十億ドル規模の官民による投資が促進されることへの期待を示した。セントラス社の遠心分離機は、オークリッジにある敷地約4万㎡の技術製造センターで独占的に製造されており、米企業14社の主要サプライヤーと数十の小規模サプライヤーが製造を支えている。米国で現在、商業操業する濃縮プラントは、ニューメキシコ州ユーニスにあるウレンコ社(本社は英国)のプラントのみで、その遠心分離機はオランダで独占的に製造。ウレンコ社は同プラントの生産能力を約15%増とする拡張プロジェクトを実施中であり、仏オラノ社も遠心分離法による濃縮施設の建設に向け、建設候補地にテネシー州オークリッジを選定したばかりだ。米国では、ロシア産低濃縮ウラン(LEU)の米国への輸入を禁止した「ロシア産ウラン輸入禁止法」が今年8月から施行されているほか、DOEが国内のウラン濃縮能力の強化、商業用核燃料の供給源多様化や安定供給を狙いとして27億ドル(約4,050億円)を拠出するなど、燃料のサプライチェーン強化に向けた動きが活発化している。セントラス社は、2024年と2025年に米国顧客への納入を確約している低濃縮ウラン(LEU)について、DOEよりロシア産LEUの輸入禁止の免除を得ていたが、ロシア政府は11月14日、ロシア産濃縮ウランの米国への一時的な輸出制限を決議。同決議は2025年12月末まで有効とされており、セントラス社は対応に追われている。
02 Dec 2024
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中国・福建省にある中国核工業集団公司(CNNC)の漳州(Zhangzhou)1号機(PWR=華龍一号(HPR1000)、112.6万kWe)が11月28日、送電を開始した。同サイト内では、建設中の4基の華龍一号の最初の原子炉である。今後、一連のテストを実施した後、営業運転へ移行する。CNNCによると、漳州原子力発電所プロジェクトは華龍一号のシリーズ建設の出発点であり、福建省の経済と社会の発展を強力に後押しするものだという。漳州1号機は2019年10月に着工。2号機は2020年9月、漳州第Ⅱ発電所1、2号機はそれぞれ今年2月、9月に着工したばかり。この他、CNNCは「華龍一号」を2基採用した漳州第Ⅲ発電所を計画中である。漳州原子力発電所は、CNNCと中国国電集団(CGC)がそれぞれ51%、49%を所有する合弁企業CNNC-国電漳州エナジー社が運営する。同サイトには当初、米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000×6基の建設が計画されていたが、中国が知的財産権を保有する「華龍一号」に変更された。
29 Nov 2024
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スイスの放射性廃棄物処分の実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は11月19日、深地層処分場ならびに地上における使用済み燃料の封入プラントの「概要承認」をスイス連邦エネルギー庁(SFOE)に申請した。概要承認は、処分場と封入プラントのサイトを確保し、両施設の基本的な特徴を定義するもの。建設段階へ進む前の重要なマイルストーンである。スイスでは原子力法に基づき、原子力発電所から発生する高レベル放射性廃棄物(HLW)ならびに医療、産業、研究活動から発生する低中レベル放射性廃棄物(L/ILW)をすべて深地層処分することになっている。深地層処分場は、スイス北部のアールガウ州とチューリッヒ州を跨ぐ「北部レゲレン」の地下800mに建設する計画だ。オパリナス粘土層の岩盤にHLWとL/ILW両方を安定的に閉じ込め、処分する複合型施設である。チューリッヒ州のハーバーシュタルに同処分場の入り口など、主な「地上施設」を建設するほか、アールガウ州ビュレンリンゲン村にある「ツビラーグ集中中間貯蔵施設」の敷地内に使用済み燃料の封入プラントを建設する。今後数か月をかけ、スイス連邦原子力安全検査局(ENSI)や原子力安全委員会(NSC)などの関係当局が必要書類を確認し、その後、NAGRAは申請書類全体とすべての科学報告書を2025年春頃に一般に公開することとしている。NAGRAのM. ブラウンCEOは、「世代を超える深地層処分プロジェクトは、可能な限り広範に議論される必要があり、直接的な民主的プロセスを経て、正当化されるべき。これには国民投票も含まれる」と記者会見で述べた。現在の計画では、連邦参事会(内閣)が2029年に、連邦議会(国会)が2030年に「概要承認」の可否を決定する予定。なお、国民投票が必要となる場合には2031年に実施される予定だ。建設ならびに操業許可は別途申請が必要であり、順調にいけば、建設許可取得後、2034年には初期建設作業を開始。操業許可を取得後、2050年にL/ILWの処分開始、2060年にHLWの処分開始を計画している。NAGRAは今回の概要承認申請で、処分施設の最大容量を予備容量を含め、HLW用に2,500㎥、L/ILW用に100,000㎥として申請。加えて、地下処分場や処分場にアクセスする坑道を建設するため、26㎢を放射性廃棄物処分に適切な暫定防護区域として申請し、この区域内に建設される処分施設の敷地は2㎢程度と見積もっている。なお、区域内では、採石作業や地熱探査などの従来の地下活動には制限はないものの、一定の深度を超えるボーリング孔の掘削には連邦当局の認可が必要となる。NAGRAは、2008年から約14年にわたって複数のエリアを調査した結果、北部レベレンの岩盤が地下の非常に深い位置にあり、放射性廃棄物に必要なオパリナス粘土層の厚み(約100m)やその上下の岩石層(約300m)による安定性から、バリアとしての効果が高い地質であると判断。スイス連邦政府に2022年9月、放射性廃棄物を長期間、安全に処分する深地層処分場に最良の立地点として、「北部レゲレン」を提案していた。
29 Nov 2024
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ノルウェーの新興エネルギー企業ノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社は11月18日、ノルウェーにおける小型モジュール炉(SMR)導入の検討に向けて、米国の先進炉開発企業であるX-エナジー社と了解覚書(MOU)を締結したことを明らかにした。これに先立ち、ノルスク社は今年8月下旬、韓国のDL Energy社ならびにDL Engineering & Construction(E&C)社と協力協定を締結している。韓国の両社もノルスク社、X-エナジー社と共に、SMR導入に向けた検討作業に参画する。ノルスク社のJ. ヘストハンマルCEOは、「ノルウェーは原子力に関する専門知識が欠けていると指摘されており、海外からの支援提供は有難い。韓国は原子力発電所の効率的な建設および運転の経験が豊富であり、米国は最先端の技術を持っている。世界有数のテック企業であるAmazon社のX-エナジー社への出資に関する最近の発表は、今回のMOUの重要性を際立たせるものだ」と述べ、今回のMOU締結によって、ノルウェーの複数の自治体へのSMR導入に向けて、DL社およびX-エナジー社のノウハウの活用への期待を示した。DL Energy社ならびにDL E&C社は、韓国の化学と建設事業のコングロマリットであるDLグループの傘下企業で、複数の原子力発電所の建設事業に携わる。韓国政府は今年9月、韓国海外インフラ・都市開発公社(KIND)を通じて、DL社に助成金を拠出した。ノルスク社やX-エナジー社と共同実施する、ノルウェー南西部ベルゲン郊外のアウストレイムにあるモングスタッド工業地帯を対象とした「ノルウェーSMR開発・運転プロジェクト予備実現性調査」への支援が目的で、KINDが助成する初のSMR関連の調査であるという。KINDは2018年に韓国政府によって設立され、海外プロジェクトの計画や実現可能性調査など、グローバルな官民パートナーシップ(PPP)事業の支援組織体。株主には韓国政府と韓国輸出入銀行を含む。モングスタッド工業地帯はノルウェー最大のCO2排出地域であり、同国のネットゼロの目標達成には、この地域への原子力発電導入がカギとなる可能性がある。ノルスク社は2030年代半ばにはSMRを運開させたい考えだ。X-エナジー社のA. ブラック・シニアディレクターは、「先進炉『Xe-100』とTRISO燃料は、従来設計と比べて、本質的に安全で、費用対効果の高い新世代原子力の代表格。ノルウェーの工業ならびに輸送部門の脱炭素化を支援し、急成長する人工知能とクラウドコンピューティング部門による電力需要の増大に対応していきたい」と語り、協力への意欲を示した。X-エナジー社製SMRの「Xe-100」は電気出力8万kWの小型高温ガス炉で、TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料を使用。連結して32万~96万kWの発電容量への拡張が可能。米エネルギー省(DOE)が2020年、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)で5~7年以内に実証(運転)を目指し、支援対象に選定した二つの設計のうちの一つである。X-エナジー社はARDPの一環として、米・大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社のテキサス州メキシコ湾沿いにあるシードリフトの製造施設において、Xe-100を4基連結させた発電所の建設を計画する。加えて、テネシー州オークリッジで、商業規模のTRISO燃料製造工場の建設プロジェクトを進めている。
27 Nov 2024
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米国で先進炉開発を進めているオクロ社は11月13日、データセンター(DC)企業2社と最大75万kWの電力供給に関する基本合意書(LOI)を締結した。契約先の社名やスケジュールは、明らかにしていない。 オクロ社は、生成AIを用いたテキスト生成サービスである「Chat GPT」を開発した、米オープンAI社のS.アルトマンCEOが会長を務め、取締役には米国のトランプ次期大統領にエネルギー省(DOE)長官に指名されたC. ライト氏が名を連ねる。オクロ社はマイクロ炉「オーロラ(Aurora)」の開発を進めており、既に米国内の複数の企業との電力供給に関するLOIを締結している。今回の契約を含めると、同社が各契約先に供給する電力規模は合計で210万kWとなる見込み。また、米空軍省(DAF)が計画する、アラスカ州のアイルソン空軍基地へのマイクロ炉の設置について、同社が暫定的なベンダーとして選定されている。 また、オクロ社は初の商用オーロラ発電所をアイダホ国立研究所(INL)敷地内に2027年に設置することをめざしており、10月にはDOEが「オーロラ」向け燃料製造施設の概念安全設計報告書(CSDR)を承認した。 「オーロラ」は、燃料としてHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を使用する液体金属高速炉のマイクロ原子炉で、電気出力は0.15~5万kW。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能なほか、放射性廃棄物をクリーン・エネルギーに転換することもできるという。データセンターの電力消費量が急増する中、原子力の活用を求める動きが活発化しており、米IT企業大手Google社が複数の先進炉導入による電力購入契約(PPA)を締結したほか、米大手テック企業のAmazon社もSMRプロジェクトへの出資を表明している。
27 Nov 2024
5142
アゼルバイジャンのバクーで開催された国連気候変動枠組条約第29回締約国会議 (COP 29)会期中の11月16日、米国のB. ジェンキンス国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)とウクライナのG. ガルシェンコ・エネルギー相は「小型モジュール炉(SMR)の責任ある利用のための基礎インフラ(FIRST)」プログラム下で実施する、三つのプロジェクト・パートナーシップを発表した。気候目標の達成、エネルギー安全保障、経済成長、先進的な原子力エネルギー利用において、ウクライナの戦後のリーダーシップ展望を支援するのが目的。FIRSTは米国務省(DOS)が主導し、核セキュリティ、原子力安全、核不拡散に関する最高レベルの国際水準の下で、エネルギー安全保障とクリーン・エネルギーの目標達成にSMRの可能性を探る国々を支援する。発表イベントには、駐アゼルバイジャンY. フシェフ・ウクライナ大使、米エネルギー省(DOE)M. ゴフ次官補代行、米アルゴンヌ国立研究所P. カーンズ所長、米電力研究所(EPRI)N. ウィルムハースト上級副所長も参加し、3,000万ドル(約46.2億円)を投じて、以下の三つの支援プロジェクトを開始する。SMRクリーン燃料パイロットプラント建設(フェーズ2)(Clean Fuel Project)ウクライナにSMRパイロットプラントを建設し、農業肥料の主成分である水素とアンモニアの生産を実証する。日本、韓国、ウクライナ、米国の多国籍官民コンソーシアムによって実施(COP 27で発表されたフェーズ1に続く)。プロジェクト・フェニックス中・東欧で進行中のプロジェクト・フェニックスを拡張し、ウクライナの石炭火力発電所を既存インフラを活用したSMR発電所にリプレースし、人材の再訓練を促進する。サイト調査と実現可能性調査を実施、包括的な送電網の統合戦略を策定し、石炭からSMRへの転換に関する助言を行う。SMRによるクリーン・スチール・ロードマップの作成(Clean Steel Project)SMRを利用した、ウクライナ鉄鋼産業の再建、近代化、脱炭素化のためのロードマップを作成、技術支援を行う。鉄鋼の生産にSMRによる電力、プロセス熱、水素を利用する道を開く。ガルシェンコ・エネルギー相はオンライン・スピーチで、「ウクライナは原子力に未来を託している。我が国はチョルノービリ事故を乗り越え、現在はロシアによる欧州最大の原子力発電所であるザポリージャ発電所の占拠という前代未聞の困難に直面しているが、既存の原子力発電所の近代化、新規原子力発電所の建設計画を実行し、前進を続ける」と語った。ウクライナでは、老朽化やロシアの攻撃により損傷した火力発電所のSMRへのリプレースを検討するほか、SMRの建設候補地として、チョルノービリ原子力発電所の周辺ならびに立入禁止区域内も検討されている。今年10月初め、国家立入禁止区域管理庁(SAUEZM)、原子力発電会社エネルゴアトム社、およびチョルノービリ原子力発電所の専門家が現地を視察、これらの場所がSMR建設に適しているか技術的な検討を行っている。なお、エネルゴアトム社は、エネルギー戦略の一環としてSMR導入計画を進めており、SMR開発会社と多くの協力覚書を締結している。
26 Nov 2024
1471
ルーマニアのエネルゴニュークリア(EN)社は、アゼルバイジャンのバクーで開催されていた第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)の会期中の11月15日、米・加・伊の企業から構成される合弁事業会社と、ルーマニアのチェルナボーダ原子力発電所3、4号機(CAUDU-6、各70万kWe級)建設に向けたエンジニアリング・調達・建設・管理(EPCM)の LNTP(Limited Notice to Proceed:限定的な着手指示通知)フェーズ契約を締結した。EN社は、ルーマニア国営原子力発電会社のニュークリアエレクトリカ(SNN)が全額出資する、チェルナボーダ原子力発電所3、4号機のプロジェクト企業。合弁事業会社FCSAは、米フルアー(Fluor)社が主導、米サージェント&ランディ(Sargent & Lundy)社、加アトキンス・リアリス(AtkinsRéalis)社、 伊アンサルド・ヌクレアーレ(Ansaldo Nucleare)社が参加し、チェルナボーダ発電所3号機および4号機の建設プロジェクトの最終投資決定(FID)に必要な情報をEN社に提供する。具体的には、エンジニアリング・建設計画、最新のコスト見積もりとスケジュール、予備的な原子力安全評価報告書とエンジニアリング文書などを作成する。EPCM契約期間は推定9年間。EPCMは、今回の契約対象であるLNTPフェーズ(24~30か月)とそれに続くFNTP(最終的な着手指示通知)フェーズ(80~84か月)の2段階から構成されている。FNTPは、ルーマニア政府とSNN間の支援契約に沿って、商業条件がさらに精査・合意され、FIDを行うことを条件に実施予定。EPCMの契約額は32億ユーロ(約5,145億円)規模。なお、加政府は本契約実施にあたり、30億加ドル(約3,270億円)の輸出金融支援を行っている。契約の調印式には、ルーマニアのS. ブルドゥージャ・エネルギー相と米国のJ. グランホルムDOE長官も出席。本契約調印を受け、SNNのC. ギタCEOは、「専門性と国際認知度の高いパートナー企業とチェルノボーダ発電所3、4号機の建設プロジェクトに取組めることを光栄に思う。両機の稼働により、ルーマニアのクリーンエネルギーに占める原子力シェアが66%となり、脱炭素化における原子力の重要な役割を改めて示すことになる」と同プロジェクト実現の意義を語った。SNNが運転するチェルナボーダ発電所では、1、2号機(CANDU-6、各70万kWe級)がそれぞれ1996年、2007年に運転開始。ルーマニアの総発電電力量に占める原子力シェアは約20%(2023年実績)。3、4号機は1984年~1985年にかけて着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊によって建設工事は中断し、現在は保全中。土木工事は3号機で52%、4号機で30%が完了しているが、両機とも主要機器は設置されていない。建設プロジェクトの再開により、約19,000人の雇用が創出され、両機が稼働すると原子力シェアは33%に達し、年間2,000万トンのCO2削減が見込まれるという。
26 Nov 2024
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米原子力規制委員会(NRC)は11月20日、米ケイロス・パワー社によるテネシー州オークリッジでの「ヘルメス2」実証プラント建設プロジェクトに関し、建設許可の発給を決定した。近く発給される見込み。ヘルメス2は、米国で建設が承認された初の第4世代の発電炉(2万kWe)となる。ケイロス社は2023年7月、NRCにヘルメス2の建設許可を申請。NRCは2024年7月に最終安全性評価を、2024年9月にサイトの最終環境アセスメントを公表していた。ヘルメス2の稼働にあたっては、別途、NRCによる運転認可の審査と承認が必要である。今回のヘルメス2の建設許可発給の決定にあたり、NRCのC. ハンソン委員長は、「安全性を最優先にしながら、許認可手続きは非常に効率的に行われ、18か月足らずで発給を決定した。期間の短縮は、以前の審査で用いた関連する結論を迅速に適用した結果である」と述べた。迅速化には、簡素化されたヒアリング手続きの効果もあるという。ヘルメス2は、米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」に建設されるヘルメスに隣接。ヘルメスで採用される、フッ化物塩冷却高温炉(非発電炉、3.5万kWt)を2基ならびに共有する発電設備(2万kWe)を備える。安価でクリーンな熱生産を実証するため、TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせ、原子炉設計を簡素化しているのが特徴。2023年12月、NRCはヘルメスの建設許可を発給、今年7月には、土木工事(掘削作業)が開始されている。ヘルメスは、2023年12月、米原子力規制委員会(NRC)が50年以上ぶりに建設を許可した非水冷却炉で、2027年に運開予定だ。ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウを活用して、技術面、許認可面および建設面のリスクを軽減し、コストを確実化して、2030年代初頭に商業規模のフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR」(32万kWt、14万kWe)の完成を目指している。ケイロス社は今年10月、米IT企業大手Google社と、ケイロス社が開発する先進炉を複数基、合計出力にして最大50万kWeを2035年までに導入し、Google社のデータセンターに電力を供給する、電力購入契約(PPA)を締結している。
25 Nov 2024
1699
ホワイトハウスは、アゼルバイジャンのバクーにおける第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29、11月11日~24日)会期中の11月12日、今後の同国の原子力発電拡大に向けた目標と行動を示した「米国の原子力を安全かつ責任を持って拡大する:展開目標と行動に向けた枠組み(Safely and Responsibly Expanding U.S. Nuclear Energy: Deployment Targets and a Framework for Action)」を発表した。同資料によると、米国が2050年までに温室効果ガス排出量をネットゼロにするためには、出力規模でおよそ15億~20億kWのカーボンフリー電力が必要であり、このうちの約30~50%は原子力発電などのクリーンで安定した電源が必要、と分析。現在約1億kWが運転中の原子力発電については、2050年までにさらに2億kWを新規導入する目標を掲げ、これらを大型炉や小型モジュール炉(SMR)、マイクロ原子炉のさまざまなカテゴリーの、第三世代+(プラス)および第四世代原子炉の新規建設や既存炉の運転期間延長、出力増強、経済性を理由に閉鎖された原子炉の再稼働などでまかなうとしている。米政府はまた、より近い将来の目標として以下の、導入に向けた「時間軸」と「規模感」も併せて明記した。2035年までに3,500万kWの新規設備容量を稼働または着工し、原子力導入を活発化させる。2040年までに導入のペースを年間1,500万kWに拡大し、原子力導入能力を加速、国内外のプロジェクト展開を支援する。これらをふまえ米政府は、野心的な導入目標の達成に向け、国内の原子力導入を加速、拡大するための「9つの分野((①新規大型炉の建設、②SMRの建設、③マイクロ原子炉の建設、④許認可の改善、⑤既存炉の延長/拡大/再稼働、⑥労働力の育成、⑦コンポーネントサプライチェーンの開発、⑧燃料サイクルサプライチェーンの開発、⑨使用済み燃料管理))」を特定、個々の分野における「具体的な行動」を詳述した。具体的には、「新規大型炉の建設」や「SMRの建設」の分野では、①発電事業者に対する技術中立的クリーン電力生産税額控除とクリーン電力投資税額控除など、税額控除による原子力納入コストの削減、②エネルギー省(DOE)融資プログラム局(LPO)による、革新原子力プロジェクトや、閉鎖された化石燃料発電所を原子力発電所に転換するような、資産・インフラ転換への融資や融資保証の促進、③新規プロジェクトに対して電力会社とリスク分担が可能な電力需要顧客との連携――などを挙げた。そのほか、「既存炉の延長/拡大/再稼働」の分野では、2回目の運転認可更新(80年運転)申請に係る審査の効率化や、構造材料の継続的な健全性確保のための研究など、100年運転に向けた長期運転への備えを挙げている。さらに、経済性を理由に閉鎖した原子炉の再稼働の可能性を追求するなどとしている。
25 Nov 2024
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ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は11月14日、ワルシャワで加ローレンティス・エナジー・パートナーズ社と、ポーランドにおける初の小型モジュール炉(SMR)の開発と導入に向けて、予備安全分析報告書(Preliminary Safety Analysis Report:PSAR) の作成支援に係る契約を締結した。契約額は最大4,000万加ドル(約44億円)。今回の契約は、OSGE社がポーランドで導入を検討している米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」建設の安全性の実証が目的。PSARは、ポーランドの原子力規制当局である国家原子力機関(PAA)が、建設許可申請の一環で要求する包括的な安全性分析報告書で、PSARの作成は許認可手続きにおいて最重要作業の一つである。PSARでは、提案されている原子炉のシステム、構造、機器の一般的な設計側面と詳細な説明の両方を提示。建設準備と管理体制、環境や地域の状況、核燃料管理を含む発電所の運転期間のほか、廃炉プロセスの説明も含んでいる。ローレンティス社は、環境条件、サイト特性、施設の建設、運転、将来の廃止措置に関する資料作成を担当。OSGE社は、BWRX-300発電所の所有者兼運転者として、分析のためのデータの準備や進行中の作業のマネジメントを担当する。今後2年をかけてPSARを作成し、2026年半ばに完成する予定。OSGE社はまた、GEH社からもPSAR作成の支援を受け、GEH社はBWRX-300の設計者として、技術面および安全関連の分析を担当する。OSGE社は、ポーランドへのBWRX-300導入のため、大手化学素材メーカーであるシントス社(Synthos SA)のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社と最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社が50%ずつ出資し、2022年に設立された合弁企業。2023年12月に気候環境省から、国内6地点における合計24基のBWRX-300建設計画へ原則決定が発給され、OSGE社は現在、許認可手続きの準備を進めている。一方、ローレンティス社は、加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社の100%子会社で、プロジェクト管理、許認可、運転準備、運転員支援などで、60年の経験とノウハウを有する。OSGE社に対しては2022年以降、SMRの導入に向けた初期的な計画立案などを支援しており、OPG社のダーリントン・サイトにおけるBWRX-300建設プロジェクト支援の実地経験を活用できるのが強み。OPG社は、2029年にBWRX-300初号機の稼働を計画している。OSGE社のR. カスプロウ会長は、「今回締結された契約は、これまでの一連の契約を締め括るもの。建設許可申請の重要要素であるPSARの作成にあたり、OPG社の一部であるローレンティス社との契約により、カナダの知識とノウハウを最大限に活用できる」と語り、両社間の協力への期待を滲ませた。「BWRX-300」は電気出力30万kWの次世代原子炉のBWR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。
22 Nov 2024
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米エネルギー省(DOE)は11月14日、スタートアップ企業のラディアント社が、アイダホ国立研究所(INL)で同社製マイクロ炉「Kaleidos」プロトタイプの試験に向けて、基本設計・実験機設計(Front-End Engineering and Experiment Design:FEEED) プロセスを完了したことを明らかにした。マイクロ炉「Kaleidos」は、早ければ2026年半ばにもINL内で国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営する世界初のマイクロ炉のテストベッドで試験を開始する。ラディアント社のT. シバナンダン最高執行責任者は、「FEEEDプロセス完了は大きなマイルストーン。多くの設計レビューを行い、概念安全設計報告書も提出。すべて予定通り、予算内で実施した」と語り、INL/NRICとの今後の連携に意欲を示した。米エネルギー省(DOE)は2023年10月、国内でマイクロ炉を開発するウェスチングハウス(WE)社、ラディアント(Radiant)社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の3社に対し、FEEEDプロセスの実施に向けて総額390万ドルをNRICを通じて提供。具体的には、燃料を装荷する実験炉の設計、機器製造、建設、およびNRICのマイクロ炉実験機の実証(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)用テストベッドを使った試験の計画策定を目指している。DOMEテストベッドは、INLで30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の格納ドームを利用してNRICが改修中。同テストベッドはHALEU燃料を使用する最大熱出力2万kWの先進的な実験用原子炉を収容、初臨界時には安全性を重視した閉じ込め機能を持つ。産業界による新技術開発に伴うリスクを軽減して開発を促進させ、先進的な原子炉設計を概念段階から実証段階へと進め、実用化と商業化への道筋をつけることを目的としている。ラディアント社は引き続き、NRICと協力して「Kaleidos」試験計画の最終調整や、テストベッドへの設置に向けた長納期品の確保に着手する。なお、米WE社のマイクロ炉「eVinci」はFEEEDプロセスを今年9月に完了している。USNC社は高温ガス冷却マイクロ炉「Pylon」(0.1万kWe)を開発していたが、同社は破産申請ならびに業務継続を条件とする売却手続きを今年10月末から実施している。「Kaleidos」は電気出力0.12万kW、熱出力0.19万kWの高温ガス冷却炉。TRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)を使用し、運転サイクルは5年。コンパクト設計のすべてのコンポーネントは単一の輸送コンテナに梱包されるため、迅速な配備が可能。遠隔地のディーゼル発電機の代替から、病院、軍事施設、データセンターへのバックアップ電源や、熱供給、海水脱塩まで、幅広い用途に対応する。
21 Nov 2024
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米国のトランプ次期大統領は、このほど、来年1月20日に発足する新政権のエネルギー省(DOE)長官、ならびに新設される国家エネルギー評議会の議長を指名した。なお就任にあたっては、米上院の承認が必要である。DOE長官には、エネルギーサービス会社リバティ・エナジー社のCEOである、C. ライト氏を、国家エネルギー評議会の議長には、ノースダコタ州知事のD. バーガム氏を指名した。なお、バーガム氏は内務長官にも指名されている。DOEの新長官に指名されたライト氏は、コロラド州に本社を置く2011年設立のリバティ・エナジー社の創設者。同社は北米で陸上の石油・天然ガス探査・生産企業向けに、革新的なサービスと技術を提供している。同氏は、先進炉のマイクロ炉「オーロラ」を開発するオクロ社の取締役も務める。トランプ次期大統領は、自身のソーシャルメディアに掲げる声明の中で、「クリスは、エネルギー業界の傑出した科学技術者で起業家。米国シェール革命を立ち上げ、米国のエネルギー自立を促進し、世界のエネルギー市場と地政学を変革した先駆者の一人」「DOE長官として、イノベーションを推進し、官僚的な形式主義に陥ることなく、米国の繁栄と世界平和の新たな黄金時代を先導する重要なリーダーとなる」と述べている。ライト氏はDOE長官の指名を受け、「世界中のあらゆるコミュニティにエネルギーの恩恵をもたらす気概を持ち、原子力、太陽光、地熱のみならず、現在は石油、ガス、次世代地熱に取り組んでいる。エネルギーが安全かつ安定し、手頃な価格で、人々の生活を向上させるのであれば、それがどこから来ても構わない」「国家に奉仕し、米国内外の市民に手頃な価格で信頼性の高いエネルギーを提供するという使命を継続できる機会を非常に光栄に思う」とコメントしている。国家エネルギー評議会議長への指名を受けたバーガム氏は、2016年からノースダコタ州知事を務め、現在2期目。それまでは政治経験がなく、ビジネスで成功を収め、全米の州知事の中で最も裕福な一人といわれている。米国の天然資源を保護・管理し、公有地の管理などで中心的な役割を果たす内務省の長官のほか、国家安全保障会議のメンバーも兼ねる。トランプ次期大統領によると、新設される国家エネルギー評議会は、「あらゆる形態の米国のエネルギーの許認可、生産、発電、流通、規制、輸送に関わるすべての省庁から構成」される。また、「官僚的な形式主義に陥ることなく、経済のあらゆる部門で民間部門の投資を強化し、長年にわたり続いてきた、全く不必要な規制より、イノベーションに焦点を当て、米国をエネルギー大国へと導く」という。さらに、「ライト氏とバーガム氏は長年の知己であり、共に仕事をしてきたチーム。米国のエネルギー支配を推進し、インフレを押し下げ、米国の外交力を拡大して、世界中の戦争を終結させる」との期待を示した。バーガム氏は自身のソーシャルメディアで、「米国のエネルギーを前進させるため、連邦政府組織間の前例のないレベルの調整を促進する。米国のエネルギー支配を確立して経済を活性化させ、消費者のコストを削減し、財政赤字削減のために数十億ドルの歳入を生み出す」「国の課題を解決するために規制よりもイノベーションに焦点を当て、米国のエネルギーをスマートに拡大し、敵国からエネルギーを買うのではなく、友好国や同盟国にエネルギーを販売し、世界をよりクリーンで安全なものにする」と、抱負を語った。
20 Nov 2024
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ポーランド国営PEJは11月12日、ポーランド初となる原子力発電所の建設プロジェクトへの融資支援を検討する米国国際開発金融公社(DFC)と基本合意書(LOI)に調印した。融資額は、40億ズロチ(約1,515億円)規模。PEJは、ポーランド初の原子力発電所の建設および運転の実施主体で、国営の特別目的会社(SPV)。米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000を3基、同国北部のポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ・サイトに建設する。初号機は2033年に運転開始予定だ。DFCは、低所得国および中低所得国のプロジェクトを優先的に支援する米国の政府系開発金融機関。民間セクターと提携し、エネルギー、医療、重要インフラ、テクノロジーなど、開発途上国が直面する最重要課題の解決策に金融支援を実施している。PEJは、DFCの関与が米政府による本プロジェクトへの関心を裏付けるものであり、ポーランドをはじめ、世界のエネルギー移行に関心を持つ米国市場の主要機関とPEJとの数か月間にわたる協議の結果であるとの考えを示す。DFCは、中・東欧全体の地域エネルギー安全保障の強化に取組んでおり、今回のLOI締結をロシア産エネルギーへの依存を削減するとともに、経済成長の強化、雇用の創出に向けた一歩であると評価する。米WE社と米ベクテル社はコンソーシアムを結成し、PEJによる原子力発電所の建設プロジェクトに協力している。米輸出入銀行(US EXIM)もWE社との数年にわたる交渉の末、同プロジェクトに対して、約700億ズロチ(約2.6兆円)相当の融資支援を実施することになっている。
20 Nov 2024
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ベトナム商工省は11月17日、党政治局がベトナムでの原子力発電開発の再開に合意したことを明らかにした。ファム・ミン・チン首相が11月12日に実施した第15期第8回国会における演説によると、同国では2025年には電力需要が12~13%増大し、その後の数年間でさらなる増加が予測されている。さらに、2045年の電力需要は2023年5月決定の第8次国家電力開発基本計画で示された予測の1兆 kWhを上回り、1.2兆kWhに達するという。国会会期中の11月7日には、エネルギー需要の高まりを受け、多くの議員がニントゥアン原子力発電プロジェクトをできるだけ早期に再開するよう求めていた。政府では現在、商工省が中心となって電力法の改正手続きを進めており、原子力発電の開発についても改正法案に含まれている。2030年までに発電設備容量を2022年比でほぼ倍増、2050年までにネットゼロの目標を達成し、国家のエネルギー安全保障を確保すべく、再生可能エネルギー(風力、太陽光など)の開発を強力に進めるとともに、新しいエネルギー源(原子力と水素)の導入に向け、第8次国家電力開発基本計画を修正するとしている。2016年11月、ベトナムの国会は経済状況を理由にニントゥアン原子力発電プロジェクトの中止を決定した。同プロジェクトでは、ロシアと日本がベトナムに協力して、第一および第二原子力発電所(各200万kW)を建設する計画であった。
19 Nov 2024
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国際原子力機関(IAEA)と欧州復興開発銀行(EBRD)は第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)会期中の11月13日、IAEAのR. グロッシー事務局長とEBRDのO. ルノーバッソ総裁が両機関の協力強化を目指す覚書を締結した。この新たな覚書の下で両機関は、EBRDの活動対象国が原子力利用を検討するにあたり、エネルギー政策・戦略、ガバナンスと資金調達の枠組み、ネットゼロ目標を達成するためのメカニズムなどの策定に向けた活動を支援する。原子力発電および非発電利用分野における原子力・放射線安全分野と技術インフラのほか、関連施設の廃止措置、放射性廃棄物の管理を支援対象とする。MOUに署名したIAEAのグロッシー事務局長は、「我々は共に、原子力安全における長年の協力をベースとするだけでなく、能力構築、クリーンエネルギー、経済回復力に向けて新たな扉を開いた。EBRDのような金融機関とのパートナーシップは、低炭素社会の実現に必要な投資を活性化するとともに、原子力のメリットがあらゆる人にアクセス可能で、安全で、持続可能であるために不可欠である。特に、SMRの技術的および商業的可能性についてEBRDと意見交換できることを楽しみにしている」と述べ、原子力エネルギーを拡大するための金融機関や民間セクターとのパートナーシップの重要性を強調した。IAEAは、政府、産業界、銀行、その他のステークホルダーに対し、資金やノウハウなどの提供を要請している。EBRDは、中東欧諸国における自由市場経済への移行並びに民間及び企業家の自発的活動を支援することを目的として、1991年に設立された国際開発金融機関。東欧、ロシア、中央アジアでも原子力関連施設の廃炉や環境復旧活動を支援する他、いわゆる「アラブの春」以降、チュニジアやヨルダン、エジプトなど、地中海の東南岸諸国も支援対象地域に加えている。2021年、IAEAとEBRDは、ウクライナ当局と、チョルノービリ原子力発電所の廃炉と立入禁止区域における放射性廃棄物の管理において、安全で費用対効果の高い解決に向けて、引き続き協力することで合意した。チョルノービリ関連プロジェクトに加え、IAEAはブルガリア、リトアニア、スロバキアにおける原子力発電所の廃炉のための技術的助言を実施するほか、中央アジアにおけるウラン採掘・製錬サイトの環境復旧活動においてEBRDと連携した。
19 Nov 2024
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加ブルース・パワー社は11月1日、過去2年間の同位体生産システム(IPS)による医療用放射性同位体(RI)のルテチウム177(Lu-177)の生産実績に基づき、医療用RIの生産能力を拡大する計画を発表した。ブルース・パワー社は、加原子力安全委員会(CNSC)に書簡を送り、同社のブルース原子力発電所7号機(CANDU、87.2万kWe)におけるルテチウム177の生産実績に基づき、他の原子炉にもIPSを設置する計画を示した。ルテチウム177は、神経内分泌腫瘍や前立腺癌など、様々ながんの治療に使用される医療用RI。ブルース・パワー社は、需要のある他の医療用RIも生産するため、2025年に運転認可の修正を申し入れる計画だとしている。ブルース・パワー社のJ. スコンガック副社長は、「カナダは医療用RIの生産において世界でも超大国。当社のCANDU炉は、電力の安定供給をしながら、大規模かつ一貫した規模で同位体を照射する能力がある。コバルト60とルテチウム177の生産能力を最大限に高め、需要のある他の医療用RIの生産の追加を検討し、世界中のがん患者のために社会的責任を果たしていきたい」との考えを示した。ブルース・パワー社は2019年にIsogen社(Kinectrics Inc.とFramatome Canadaの共同出資会社)と提携し、ルテチウム177を生産するIPSを7号機に設置した。IPSは2022年10月に稼働、今年10月には2番目の生産ラインが稼働した。7号機は運転期間延長に向けて主要部品交換(MCR)を伴う大規模改修を2028年後半に開始する予定にしており、停止中もRIのサプライチェーンを維持できるよう、2027年までに6号機に2つ目となるIPSの設置を計画する。2029年には生産容量の拡大のため、ブルースA(1~4号機)の原子炉に3つ目のIPS設置の可能性を検討する予定だ。ブルース・パワー社は、医療用RIの販売大手である加ノルディオン社とのパートナーシップを通じて、医療器具・機器の滅菌や脳腫瘍や乳がんの治療にも使用されるコバルト60を長年にわたり安定供給している。ブルースB(5~8号機)のMCRによる停止期間中でも、運転期間延長期限である2064年までコバルト60の供給を確保しており、今回の改修により生産量の増加が見込まれている。なお、加オンタリオ州のS. レッチェ・エネルギー電化大臣は11月8日、ブルース発電所サイトを訪問。ブルース・パワー社とパートナー企業が、がん治療用RIを処理するホットセル施設を設置することを発表した。同大臣は、「これにより、短寿命のルテチウム177の処理能力が向上し、世界中のがん患者にタイムリーに届くようになる。がん治療用RIの生産と処理における世界的リーダーであるオンタリオ州の地位をさらに確固たるものにする」と語った。ブルース・パワー社とパートナー企業のIsogen社は、ブルース発電所サイトまたはIsogen社の施設のいずれかにホットセルを設置する計画だ。ホットセルは、機器の制御・操作が可能で安全な封じ込め機能を持ち、RIから人体を保護するシールド施設。これにより、ブルース発電所の7号機で製造されたルテチウム177の初期処理が可能になり、全体の処理時間を短縮、生産から2週間以内に患者への投与が可能になるという。
18 Nov 2024
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