国際エネルギー機関(IEA)は6月6日、エネルギー部門に対する世界的な投資動向を分析した報告書「世界エネルギー投資(World Energy Investment)」を発表。世界のエネルギー投資総額は2024年に初めて3兆ドルを超え、そのうち約2兆ドルが原子力など、クリーン・エネルギー技術に充てられる見通しを明らかにした。IEAが指すクリーン・エネルギー技術とは、再生可能エネルギー、電気自動車(EV)、原子力発電、送電網、蓄電池、低炭素燃料、エネルギー効率の改善、ヒートポンプなど。残りの1兆ドル強は、石炭、ガス、石油への総投資額となる。2020年以降、クリーン・エネルギーへの投資が加速し、2023年の再生可能エネルギーと送電網への総投資額は、化石燃料への投資額を初めて上回った。報告書によると、クリーン・エネルギーへの投資額は、資金調達コストの上昇にもかかわらず、サプライチェーンの強化とクリーン・エネルギー技術自体のコスト低下により、2024年には化石燃料への投資額のほぼ2倍に達する見込みである。一方で、報告書は、中国以外の新興国・途上国(EMDEs)におけるクリーン・エネルギーに対する投資不足を問題視。インドとブラジルなどが主導し、中国以外のEMDEsにおけるクリーン・エネルギー投資額が初めて3,000億ドルを超える見込みであるものの、世界全体の約15%に過ぎず、今後増加が見込まれるエネルギー需要を満たすための必要額をはるかに下回っていると指摘している。クリーン・エネルギーに対する昨今の投資拡大の背景として、IEAは、排出量削減目標の設定、技術の進歩、エネルギー安全保障の強化(特にEU)のほか、もう一つの戦略的要素として、クリーン・エネルギー生産を促進し、世界市場における主導的地位の確立に向けた中国を含む主要経済国による新たな産業戦略を挙げている。米国では、クリーン・エネルギーへの投資は2024年に2020年の1.6倍にあたる3,000億ドル以上に増加すると見られており、化石燃料に対する投資額を大きく上回っている。EUは現在、クリーン・エネルギーに3,700億ドルを投資し、中国は大規模な国内市場と、太陽電池、リチウム電池、EV製造といった新たな3つの産業の急成長に支えられ、2024年にはクリーン・エネルギーの投資額が約6,800億ドルに達する見通しである。IEAによると、これら3大経済圏だけで世界のクリーン・エネルギー投資の3分の2以上を占めており、国際的なエネルギーの投資格差が浮き彫りになっている。IEAのF. ビロル事務局長は「クリーン・エネルギーへの投資拡大は厳しい経済状況下でも記録を更新しており、世界エネルギー経済の新潮流を浮き彫りにしている」と現状を俯瞰。「今やクリーン・エネルギーへの投資額は化石燃料への投資額の2倍」と指摘した。一方で同氏は、中国を含む主要経済国が新たなクリーン・エネルギーのサプライチェーンで優位に立とうと競争するなか、手頃な価格で持続可能かつ安全なエネルギーへのアクセスが著しく不足しているEMDEsに確実に投資が行き渡るよう、さらなる取り組みが必要、との認識を示した。報告書はまた、昨年過去最高の1兆3,000億ドルの投資額に達した電力部門について、太陽光発電に投入される投資額が、2024年には5,000億ドルを超え、他のすべての発電技術を合計した投資額を上回ると予測。今後、太陽光発電モジュール価格の低下により、成長のペースは若干鈍化する可能性があるものの、太陽光発電は電力部門の変革の中心であることに変わりはないとの見方を示した。また、2015年には、クリーン電力と化石燃料発電への投資の比率はおよそ2対1だったが、2024年にはこの比率が10対1にまで達すると予測している。原子力発電への投資に関しては、2024年には800億ドルに達し、過去10年間で最低だった2018年のほぼ2倍の規模となる見通し。ただし、今後数年間の支出増のほとんどは、原子力発電の新規建設への投資ではなく、既存の原子力発電所のバックフィットや運転期間延長に向けられるものとみられている。報告書は、2023年に新規着工した国は中国とエジプトのみ(計600万kW)と指摘したうえで、既存炉に対する追加投資がなされているものの、新規建設が進まず停滞を続けている現状に懸念を示した。なお、アジア地域では、2050年カーボンニュートラルをめざす韓国が、2023年に発表した「国家カーボンニュートラル・グリーン基本計画」において、再生可能エネルギーとともに、原子力発電の大幅拡大を盛り込んだ。また、報告書は、世界のクリーン・エネルギー投資の3分の1を占め、再生可能エネルギーの増加が目覚ましい中国で、過去5年間に1,100万kWの原子力発電設備容量が導入されたとし、世界的にも大規模な開発が進められている現状を指摘した。
17 Jun 2024
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米国のビスコンティ・リサーチ社が6月10日に発表した世論調査結果によると、米国の原子力支持の割合が4年連続で過去最高レベルを記録した。同調査はビスコンティ・リサーチ社が4月30日から5月2日までの3日間、1,000人を対象に調査を実施。同調査によれば、米国民の4分の3以上にあたる77%が原子力利用を支持する結果となった。過去約10年間、電力供給の方法として原子力を「強く支持する」、または「やや支持する」とした人の割合は60%台で横ばいに推移していたが、2021年にこの数字が76%に増加した後、2022年に77%、2023年に76%、今年は77%と引き続き高い水準を維持している。「原子力発電所の運転認可更新」について、回答者全体の88%が、安全基準を満たしている限り運転認可を更新することに賛同。ビスコンティ・リサーチ社は、現在90を超える米国の原子力発電所が運転認可を更新している現状をふまえ、運転免許証の更新と同様、安全運転が可能な場合、原子力発電所の運転認可は更新されるべき、との米国民の意識の表れとの見方を示している。また、「将来の新規建設」について、回答者全体の71%が支持し、3年連続で70%を超えた。また、ビスコンティ・リサーチ社は、「強く支持する」と回答した人の割合は、「強く反対する」と回答した人の5倍に上るとした一方で、米国民の約3分の2が原子力に対して「やや支持する」「やや反対する」と答えた点に着目し、大多数が強い意見を持っていない「中立派」であると分析。女性の約4分の3が「中立派」であるとし、年齢層では、Z世代(1990年代後半から2000年代に生まれた世代)とX世代(1965年から1970年代に生まれた世代)が最も中立的な意見を持つ人々が多い層であると指摘した。また、知識量が多い人ほど原子力を支持する傾向にあり、知識量が非常に多いとされる人々の70%が原子力を「強く支持」していた一方、「強く反対する」と回答した人はわずか1%に過ぎなかったとしている。
17 Jun 2024
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英国の最大野党労働党は6月13日、7月4日の総選挙に向けマニフェスト(政権公約)を発表。「Change」と題するマニフェストの中で、英国をクリーンエネルギー超大国にすると宣言し、クリーンエネルギーへの移行とともに、原子力重視の姿勢を示した。各種世論調査では、労働党が与党の保守党を大きくリードし、14年ぶりに労働党政権誕生の可能性が高まっている。同マニフェストは、経済成長の停滞と増大する生活費の危機を打破し、再び勤労者の利益にかなう国家再建を基調としている。ロシアのウクライナ侵攻に伴う国際市場での化石燃料コストの急上昇、保守党政権下における陸上風力発電の新規導入の禁止、原子力発電所の新規建設の失敗、住宅の断熱材への投資中止といった施策により、英国の家庭は欧州で最も高いエネルギー料金を支払うことになったと指摘。クリーンエネルギーへの移行こそ、経済成長を生み出し、エネルギー料金を含む生活費の高騰に対処し、英国のエネルギーを再び自立させる大きな機会になるとし、2030年までにより安価なゼロカーボン電力による電気料金の削減、雇用創出、エネルギー安全保障、CO2排出ネットゼロに向けて加速することを、国家再建に向けた労働党の五大使命のひとつに掲げている。マニフェストでは、英国には長い海岸線、強風、浅瀬、大学、熟練した労働力、そして広範な技術力とエンジニアリング能力など未開発のリソースがあり、優れた産業戦略や市場形成、民間資金を公共投資に活用することで、英国をクリーンエネルギー超大国とし、2030年までに全国で65万人の雇用創出を計画。労働党は民間部門と協力して、2030年までに陸上風力発電を2倍、太陽光発電を3倍、洋上風力発電を4倍にするほか、炭素回収・貯留(CCS)、水素製造などに投資し、長期的なエネルギー貯蔵を確保するとした。原子力については、保守党が原子力発電に関する決定を避けてきた10年間の迷走に終止符を打つと強調。原子力部門の長期的な安全確保とともに、既存炉の運転期間延長のほか、建設中のヒンクリー・ポイントC原子力発電所の運転開始、計画中のサイズウェルCや小型モジュール炉(SMR)などの新設を、英国のエネルギー安全保障とクリーンエネルギーの達成において重要な役割を担い、何千人もの良質で熟練した雇用確保に貢献するもの、と明言している。また、クリーンな国産エネルギーへの投資の推進をめざし、労働党は公営企業「グレート・ブリティッシュ・エナジー」を83億ポンド(約1.67兆円)投じて設立。同企業を通じ、エネルギー企業、地方自治体などと提携して最先端技術に共同投資し、地元コミュニティに利益をもたらす数多くのクリーンエネルギープロジェクトを支援するという。同時に、国内で質の高い雇用を創出するサプライチェーンの再構築も計画するという。なお、英国の産業は電気料金の高騰により投資の競争力が損なわれることが多いことから、クリーンエネルギーにより電気料金を引き下げ、産業の国際競争力を高めるほか、国の基金を利用して、脱炭素化のため最もエネルギー集約的な産業部門への支援や、炭素国境調整メカニズム(CBAM)の導入により、脱炭素化を進める英国の産業を保護し、英国の気候目標を達成したい考えだ。
14 Jun 2024
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米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は6月10日、自社が開発する第4世代のナトリウム冷却小型高速炉「Natrium」実証プロジェクトの起工式を開催した。開発設計から建設に移行した米国初の先進炉プロジェクトとなる。起工式には、テラパワー社を2008年に設立した、ビル・ゲイツ会長(米マイクロソフト社創業者)らが参加した。ゲイツ会長は、「テラパワーの次世代原子力エネルギーが、私たちの国、そして世界の未来に力を与えると信じている」と挨拶。C.レベスク社長兼CEOは、「『Natrium』は無炭素エネルギー、エネルギー貯蔵、コミュニティに長期的な雇用を提供する」と強調した。ワイオミング州のM.ゴードン知事は、「『Natrium』は国内エネルギー源の確立とともに、何百もの雇用、キャリアの向上、新たな活力を約束する、官民協力のすばらしさを実証するもの。ワイオミング州は国の競争力と安全確保に貢献する」とプロジェクトの意義を語った。「Natrium」炉は、テラパワー社がGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と開発する先進炉。HALEU燃料を使用する電気出力34.5万kWのナトリウム冷却高速炉(SFR)で、熔融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを併設し、電力負荷の変化に追従する柔軟な運転が可能。ピーク時には電気出力を50万kWまで増強して5.5時間以上稼働する。ワイオミング州南西部のケンメラーで閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに建設し、建設時には最大約1,600人の労働者が必要となる。建設期間は5年間。運転開始後はプラントの警備を含め、250人が日々の活動をサポートすると同社は見積もる。今年3月末に米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請した。官民パートナーシップである米エネルギー省(DOE)の先進的原子炉実証プログラム(ARDP)を通じて、「Natrium」の設計、建設、運転特性を検証する。原子力部分の着工は早くて2026年、運転開始は2030年を予定している。
13 Jun 2024
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米国のマイクロ炉開発企業のラスト・エナジー社は6月3日、北大西洋条約機構(NATO)のエネルギーセキュリティ センターオブエクセレンス(ENSEC COE)とのパートナーシップを発表。共同でマイクロ炉の軍事利用に関する研究を行い、将来的にNATO軍事施設への配備の可能性を探る。本パートナーシップは、ラスト・エナジー社のB.クゲルマスCEOとNATOのENSEC COE所長であるD.ウズクライティス大佐が署名。ENSEC COEと原子力企業との間で締結された初の合意文書である。クゲルマスCEOは、「軍事基地において、原子力以外に常時の電力供給が可能なエネルギー源はなく、発電プラントの小型化、モジュール化が可能」との認識を示した。ENSEC COEは、特定分野の戦略と技術について加盟国の軍隊に助言するNATOが認定する28の専門機関の一つで、リトアニアのビリニュスに所在。2012年に設立された同センターは、産官学と連携し、NATO軍のためのソリューションを研究開発し、エネルギーのレジリエンスと効率性、重要なエネルギーインフラの安全確保を使命とする。パートナーシップの条件下で、両者はNATOの軍事施設とその運用のため原子力利用に関する共同プロジェクトに取組むことを合意した。マイクロ炉は建設コストと工期を大幅に削減できるだけでなく、水の必要量が最小限で、ほぼどこにでも設置できるのが特徴。需要者は従来の帯域幅の制約や電力網の価格変動を回避できる。ラスト・エナジー社のマイクロ炉「PWR-20」は単一のユニットで2万kWeの電力(または8万kWtの熱)を生産し、欧州全域で65基以上の商業契約を締結している。完全なモジュール式プラント設計であり、大量生産技術が採用されている。工場での製造から、輸送、サイトでの組立てまで24か月以内に実施可能であるという。ニーズに合わせた出力サイズに組立て、自動車製造工場、パルプ・製紙工場、データセンターなどの電力多消費施設に併設する。ラスト・エナジー社はフルサービスの開発者として、プラントの設計と建設、ライセンス、許認可、資金調達、運用を含むプロジェクト管理のエンド・ツー・エンドの責任を負うとしている。
13 Jun 2024
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カナダ中西部サスカチュワン州の州営電力であるサスクパワー社は5月31日、州内初となる小型モジュール炉(SMR)であるGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」建設サイト候補地として、エステバン地域の2箇所を選定した。2025年初めに最終的なサイト選定を行う予定である。エステバン地域は州の南東、米国との国境近くに位置し、同地域内のバウンダリーダム、ラファティ貯水池近くの2箇所を建設サイトの候補地に選定した。調査エリアの分析は、エステバン地域の他、同地域から北西に400kmほど離れたエルボー地域でも行われた。サスクパワー社のR.パンダャ社長兼CEOは同日発表した声明の中で、「エステバン地域は、技術的適性に加え、エステバン市に近く、既存のサービス、熟練した労働力、宿泊施設、緊急サービス、インフラ、道路、送電網へのアクセス面で多くの利点がある」と強調した。サスクパワー社は2024年中に各候補地の詳細なサイト評価作業を完了し、2025年初めには最終的なサイトを選定したい考えだ。その後、同社の最終投資決定(FID)は2029年を予定している。今後数か月の間に、地下水と地質工学的な詳細情報を収集するため追加調査を開始する。なお、エルボー地域についても将来の原子力開発の可能性を考え、土地権利者、先住民族や地方自治体のリーダー、コミュニティのメンバーと連携して調査を継続していくとしている。サスクパワー社によると、今後、環境影響評価や、サイト準備、建設、運転に係る許可を得て、2029年にFIDで建設プロジェクトを進めることが決定された場合、順調に行けば2030年には「BWRX-300」(BWR、30万kWe)初号機を着工し、2034年に完成させる計画だ。同サイトに2基目を建設する可能性もあるという。同社はSMR導入にあたり、オンタリオ・パワー(OPG)社と包括的な評価作業の実施で緊密に協力。OPG社のダーリントン・サイトにおける「BWRX-300」導入を参照することで、初号機建設にともなうリスクを回避するため、2022年6月、サスカチュワン州で建設する初のSMRとして、同じ「BWRX-300」を選定した。
12 Jun 2024
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中国の北京において5月30日、中国の習近平国家主席とアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領の立会いのもと、原子力の平和利用に関する二国間協力文書が調印されたことを受け、中国核工業集団(CNNC)と首長国原子力会社(ENEC)は、戦略的協力に関する覚書(MOU)を締結した。CNNCの余剣鋒理事長とENEC社のモハメド・アル・ハマディCEOが調印した本MOUは、短期および長期の燃料サイクル調達、民生用原子力施設の運転・保守(O&M)におけるベストプラクティスの開発などにおける協力の枠組みとなる。研究開発における協力分野には、水素製造技術や海水淡水化などにおける原子力利用が含まれている。本MOUは、2023年12月にUAEで開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)にて両社が締結した高温ガス炉(HTGR)などの第三国での新規原子力発電所の建設と先進原子炉技術の展開の機会を探るための覚書をベースにしている。また同じく5月30日、CNNCの余剣鋒理事長はフランス電力(EDF)のL.レモント会長兼CEOと会談し、原子力に関連する様々な分野での協力の一層強化をはかるため、両国間の原子力エネルギーに関する包括的協力協定を締結したほか、先進的な原子力発電所建設に関する特別協力協定も締結した。今年は中国とフランスの外交関係樹立60周年、EDFの中国原子力市場への参入40周年にあたる。5月上旬の習近平国家主席の訪仏を機に、5月6日にパリで開催された第6回中仏企業委員会において、中国広核集団(CGN)の楊長利理事長とEDFのレモント会長兼CEOは「原子力分野での協力深化に関する基本合意書(LOI)」に調印。原子力エンジニアリング、建設、人材育成などの分野での協力をさらに拡大・強化するとしている。CGNとEDFは、中国とフランスの民生用原子力協力の戦略的パートナーとして、広東省の大亜湾原子力発電所の建設以来40年間緊密な協力関係にある。
12 Jun 2024
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フランス電力(EDF)は5月31日、米GEベルノバ社(電力・エネルギー事業担当)の南北アメリカ地域におけるサービス事業を除く、原子力発電所の蒸気タービン設備事業の買収を完了した。2022年2月10日のEDFとGE社間の買収に係る独占契約締結以後、買収手続きが進められていた。この買収対象は、南北アメリカ地域外における新規の原子力発電所向けアラベル蒸気タービンを含むタービン設備の製造と、既存の原子力発電所向けの保守および改修事業。買収総額は明らかにされていない。GEベルノバ社は南北アメリカ地域における原子力サービス事業を継続し、集中的に蒸気タービン設備事業を推進するとともに、日立製作所と小型モジュール炉(SMR)のBWRX-300などの原子炉設備、核燃料およびサービス供給事業を展開する。EDFは完全子会社であるアラベル・ソリューションズ社を設立、約3,300人を雇用し、アラベル・ソリューションズ社の蒸気タービンを、特にEPR(欧州加圧水型炉)、EPR2、SMR向けに供給する計画だ。なお、同社のタービン設備とサービスは、世界シェアの3分の1を占めているという。EDFのL.レモント会長兼CEOは、「今回の買収は、欧州経済の脱炭素化とエネルギー安全保障の達成に必要な原子炉建設の再開を支援し、欧州の産業部門を完全に自立させるもの。アラベル・ソリューションズ社はフラマトム社とともに原子力サプライチェーンにおける当社の専門性を強化する」とコメントした。なお、フラマトム社のB.フォンタナCEOがアラベル・ソリューションズ社の会長に任命された。EDFはフラマトム社の株式80.5%を保有する。フランスのE.マクロン大統領は2022年2月、フランス東部にあるGEスチーム・パワー社(当時)のベルフォール工場を訪問した際、EPR2の新設計画を発表した。マクロン大統領は、Xの声明で今回の買収を歓迎し、「これは私がベルフォールで行った約束であり、EDFはGEの原子力事業、特にアラベル蒸気タービンの製造を引き継ぐ。エネルギー主権獲得への大きな一歩だ」とポストしている。
11 Jun 2024
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米国務省(DOS)のA.ガンザー筆頭次官補代理(国際安全保障・不拡散担当)は5月28日、アフリカのガーナの首都アクラで開催されたアフリカ原子力ビジネスプラットフォーム会合で、ガーナを小型モジュール炉(SMR)地域ハブとすることを含む、新たな民生用原子力協力を発表した。本発表は、2022年10月に国際原子力機関(IAEA)が米国で開催した原子力閣僚会議で米・日・ガーナの3か国が結んだガーナのSMR導入に向けた戦略的パートナーシップに基づくもの。ガーナがアフリカにおける最初のSMRの運転者となり、将来のSMRサプライチェーンのニーズを支える同国における人材育成と雇用創出を支援する。ガンザー筆頭次官補代理は、R.オルソン米臨時代理大使とともに、「SMR技術の責任ある利用のための基礎インフラ(FIRST)」プログラム促進を目的とする、ガーナにおける米国SMRの安全で確実な導入を進めるための主要取決めの調印式に出席した。取決めのひとつは、ガーナ原子力委員会(GAEC)における米ニュースケール・パワー社のニュースケール・エネルギー探査(NuScale Energy Exploration(E2))センターおよび関連サービスの提供に関する了解覚書(MOU)と契約取決め。MOUはGAECとカザフスタンに拠点を置く国際科学技術センター(ISTC)、契約取決めはGAEC、ISTC及びニュースケール社により調印された。ガーナでのニュースケールE2センターの設立は、ガーナおよびその他の地域でのSMR導入に向けた人材育成の重要なツールとなるとしている。E2センターはFIRSTプログラムの資金提供を受け、最新のコンピュータモデリングを使用したニュースケール社のSMRを12基組み合わせた発電プラント「VOYGR-12」の運転シミュレーターを有し、次世代炉のオペレーターとエンジニアの実践的な育成・訓練施設となる。IAEAのマイルストーンアプローチならびに保障措置に従い、ガーナをアフリカにおける安全かつ確実な民生用原子力導入のための教育・訓練ハブとしたい考えだ。もうひとつの取決めは、GAECとISTC間で締結された、地域溶接認証プログラムに関する了解覚書(MOU)。同プログラムは、ガーナ人技術者が原子力部門の建設職に就くために不可欠な研修と独自の技能セットを提供するもの。FIRSTプログラムの資金援助を受けており、ガーナをアフリカ地域におけるSMRサプライチェーンの一部として確立することを目指している。これらに関連して、ガーナ原子力発電公社に代表されるガーナ政府は、ニュースケール社製SMRの発電所を主要なエネルギー源として利用する産業エリアを開発するために、プロジェクト開発者である米レグナム・テクノロジー・グループとの協力合意締結に向けた作業に取り組んでいる。米政府は、プロジェクト開発者である同グループを通じたニュースケール社製SMRの導入を強く支持し、協力合意の締結への期待を表明している。なお、米国は現在、ガーナと原子力協力協定(通称123協定)を交渉中。これは、米国から原子力発電を中心とした民生用原子力関連投資、原子力機器や資材の輸出を可能にする法的枠組みである。
10 Jun 2024
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韓国の産業通商資源部(MOTIE)の諮問委員会は5月31日、「第11次電力需給基本計画」の草案を発表した。草案によると、2038年までに大型原子炉を3基と小型モジュール炉(SMR)を1基建設する計画である。電力需給基本計画は、エネルギー政策に関する2年ごとの政府の青写真。今回の計画は2024年~2038年までの15年間を対象とした電力需給の長期展望、発電設備計画などが含まれる。無炭素電源の大きな軸である再生可能エネルギーと原子力をバランスよく拡大することで、カーボンニュートラルに積極的に対応するとともに、化石燃料の海外依存度を減少させ、エネルギー安全保障を強化させる考えだ。草案は、環境影響評価、公聴会、国会を経て正式に採択される。MOTIEが原子力発電所の新設計画を作成したのは2015年以来のこと。新ハヌル原子力発電所3、4号機の新設計画は、2015年の「第7次電力需給基本計画」で承認されていたものの、2017年ムン・ジェイン(文在寅)前大統領の政権下で、脱原子力政策である「エネルギー転換(脱原子力)ロードマップ」と「第8次電力需給基本計画」に基づき、建設計画は一時白紙化されていた。2022年5月に就任したユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の現政権下で同機の新設計画が再開された。草案は、2038年の電力需要を1億2,930万kWと算定。2023年と比較して約30%の増加となっている。経済成長、気候変動の影響、産業構造及び人口変化の見通しの他、半導体クラスターの造成などで今後投資急増が予想される半導体産業、人工知能(AI)の普及で大幅な増加が予想されるデータセンター、産業部門を中心とした電化による電力需要を考慮。特にAI普及の影響で、半導体ならびにデータセンターの電力需要は2030年には2023年の2倍以上に増加すると予測されている。2038年に目標とする電力設備容量については、発電設備の故障、建設遅延の可能性など、電力需要予測に適正な予備率(22%)を考慮し、1億5,780万kWと算定。一方、再生可能エネルギーの普及見通しと火力、原子力発電などの建設及び廃止計画などを反映した2038年の確定設備容量予測は1億4,720万kWであるため、1,060万kWの発電設備が不足になるとしている。この不足分を大型炉、SMR、LNGコジェネや水素発電などで賄う計画だ。年毎の確定設備容量と予備率を考慮すると、2031年以降から発電設備の不足が予想され、2035年~2036年の期間には、220万kWの新規設備が必要とされている。この期間に70万kW分を割り当て、現在開発中のSMR実証炉×1基の運転を計画、残りの150万kWは無炭素電源の導入を検討している。また、大型炉の場合、サイト確保などの期間を含めて167か月(13年11か月)の建設期間が必要と予想されるため、2037年以降の2037年~2038年の期間に、計440万kWの新規導入を計画。1基あたり140万kWのAPR1400の場合、最大3基の導入となるが、実際の建設基数は、サイト確保に要する期間や所要費用などを総合的に勘案し、政府が事業者との協議を通じて最適な計画を導き出すことが望ましい、と勧告している。なお、草案では、電源構成の容量ベースの具体的数値は示されていないが、電源別発電量とシェアの予測はされており、2038年の原子力発電電力量は2,497億kWh、シェアは35.6%となっている。なお、2023年の原子力発電電力量は1,714億kWh、シェアは31.5%であった。
07 Jun 2024
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米国のバイデン・ハリス政権は5月29日、国内における原子力導入に関するホワイトハウス・サミットを主催した。温室効果ガス実質ゼロの達成とエネルギー安全保障を強化するための国家戦略として、原子力部門の強化をめざす政権のコミットメントを示すとともに、官民が一体となった取り組みの進展を強調。原子力産業、政府、学界のリーダーたちが一堂に会し、米国のエネルギー政策における原子力の役割について議論した。ホワイトハウスによる同日公表のファクトシートによると、バイデン政権はこれまで、米国のエネルギーと経済安全保障強化に向け、民生用原子力発電におけるロシア産ウランへの依存低減や核燃料の新たなサプライチェーンの構築、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にするという昨年のCOP28での多国間宣言への署名のほか、新しい原子炉設計の開発、既存原子炉の運転期間延長、新たな展開に向けた気運の醸成など、多くの行動をとってきたことに言及。さらに米国は、既存の国内原子力フリートと大規模な原子力発電所の継続的な建設の双方の重要性を認識し、大規模建設に係るプロジェクトのリスクを軽減し、米国の産業が積極的な導入目標を支援できるよう措置を講じているとしている。今回、米政府は、消費者とプロジェクト関係者を保護しつつ原子力導入を推進するために、原子力ならびに巨大プロジェクトの建設業界全体から主要な専門家を動員し、コストとスケジュール超過リスクの原因を積極的に軽減する機会を特定するための、「原子力プロジェクト管理ならびに実現作業部会」(Nuclear Power Project Management and Delivery working group)の設置を発表した。作業部会のメンバーは、ホワイトハウス国内気候政策局、ホワイトハウスクリーンエネルギーイノベーション・実施局、ホワイトハウス科学技術政策局、エネルギー省(DOE)などの連邦政府機関で構成され、プロジェクト開発者、エンジニアリング・調達・建設会社、公益事業者、投資家、労働団体、学者、NGOなど、様々なステークホルダーも関与して進められる。また、ホワイトハウスは、米陸軍が国内の複数の陸軍施設への電力供給に関する先進炉配備プログラムについて情報提供を要請する情報提供依頼書(Request for Information)を間もなく発出すると発表。小型モジュール炉(SMR)やマイクロ炉は、物理的攻撃やサイバー攻撃、異常気象、パンデミックによる生物学的脅威など、新たな課題の脅威に対して、防衛施設に数年間、レジリエントなエネルギー供給が可能。先行するアラスカ州のアイルソン空軍基地のマイクロ炉や国防長官室(OSD)戦略能力局(SCO)のプロジェクト・ペレ(Project Pele)の可搬型マイクロ炉プロトタイプによる現在の防衛プログラムと並行し、連邦政府の施設やその他の重要インフラにクリーンで信頼性の高いエネルギーを供給する高度な原子力技術の追加導入を計画している。更に、DOEは、受動炉心冷却能力や先進燃料設計など、先進炉の安全性向上を強調する新しい入門書(primer)を発表した。また、アイダホ国立研究所は、開発者や利害関係者の新プロジェクトのコスト要因評価に役立つ、高度な原子炉資本コスト削減ツールを発表している。米政府はまた、ジョージア州のボーグル3、4号機(AP1000×2基)の完成が、米国で30年以上ぶりに建設された原子炉であり、DOEの融資保証によりプロジェクトが可能になったと強調。また、雇用を維持しながら、既存の原子力を復活し活性化するため、DOEの融資による資金調達や生産税額控除などの措置を導入したほか、DOEの先進炉実証プログラム(ARDP)や石炭火力発電から原子力発電への移行プログラム等を通じて、新しい原子力技術の実証と導入を支援していると指摘。また、新規炉の建設、既存炉の運転期間延長や出力増強に向けた原子力規制委員会(NRC)による許認可プロセスの改革や、濃縮ウランや先進炉で使用するHALEU燃料の国内供給サプライチェーンの確立とスキル向上、研究開発推進の取り組みについても言及した。バイデン・ハリス政権が米国における民生用原子力導入を加速させるために講じたこれらの行動は、過去50年近くで最大の持続的な推進力であるとし、原子力業界における米国のリーダーシップを再確立するための措置を引き続き講じ、先駆者(first movers)が先進的で革新的な技術を導入できるよう引き続き行動を起こしていくとしている。
06 Jun 2024
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仏フラマトム社と米テラパワー社は5月29日、米ワシントン州リッチランドにあるフラマトム社の燃料製造工場を拡張し、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の金属化パイロットプラントの建設で合意したことを明らかにした。HALEUの金属化は、ウランを金属に変換し、先進炉燃料の製造を可能にする再転換プロセスの重要な部分。パイロットプラントにより、フラマトム社の二酸化ウラン(UO2)をHALEU金属へ変換する能力を検証し、米国内におけるHALEU燃料のサプライチェーンの構築ならびに先進炉市場の発展を支援する。テラパワー社のC.レベスクCEOは、「当社のフラマトム社へのパイロットプラントへの投資は、『Natrium』炉のような先進炉を市場に投入するための重要なステップ」と強調している。フラマトム社は、米エネルギー省(DOE)が実施する米国内にHALEUサプライチェーンの確立を目的とする「HALEU利用プログラム」のうち、濃縮ウランを先進炉向けに金属、酸化物等の形態に再転換する事業の提案要請に応えて資金提供を申請した。「Natrium」炉は、テラパワー社がGE日立・ニュクリアエナジー社と開発する先進炉。HALEU燃料を使用する電気出力34.5万kWのナトリウム冷却高速炉(SFR)で、熔融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを併設し、ピーク時には電気出力を50万kWまで増強して5.5時間以上稼働が可能だ。ワイオミング州南西部のケンメラーで閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに建設する計画で、今年3月末に米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請した。
05 Jun 2024
1345
ブルガリア北西部にあるコズロドイ原子力発電所(KNPP)5号機で5月29日、米ウェスチングハウス(WE)社製の燃料が初装荷された。ブルガリアにおける燃料供給源多様化の重要な節目となった。KNPPとWE社は、2022年12月に10年間の燃料供給契約を締結。今年4月、スウェーデンにあるWE社のベステロース燃料工場で製造された燃料がKNPPに搬入された。5号機(PWR=VVER-1000、104万kWe)に初装荷された燃料は、ウクライナの複数の原子力発電所で10年以上の装荷実績がある。KNPPのV.ニコロフ所長は、「燃料供給の多様化は、プラントの高いパフォーマンスを維持し、安全で信頼性の高い手頃な価格のエネルギー確保に不可欠である」と強調した。KNPPはブルガリアで唯一稼働する原子力発電所で、5、6号機はそれぞれ1988年、1993年に営業運転を開始した。6号機(VVER-1000、104万kWe)と併せて、国内の総発電電力量の約1/3を供給している。6号機の燃料は、仏フラマトム社と10年間の供給契約を締結している。なお、同発電所第Ⅱサイトでは米WE社製AP1000(PWR、125万kWe)×2基の新設計画が進展中だ。
05 Jun 2024
936
欧州原子力産業協会(nucleareurope)は5月22日、原子力による水素製造がエネルギー安全保障と産業競争力の面でもたらす利点を強調したポジションペーパーを発表。さらに、欧州連合(EU)においてクリーンな水素製造を支援するために必要な重点項目を、EUの政策立案者に提言した。水素は工業用熱、アンモニア生産、精製・石油化学、陸上輸送、鉄鋼業などの分野における需要を満たすのに役立つ。ポジションペーパーによると、欧州委員会は現在、主に再生可能エネルギーからのみ生産される水素(グリーン水素)に焦点をあてている。この水素の大部分は第三国、特に南半球から輸入されるため、輸送と損失からエネルギー需要を増大させ、エネルギー貧困が深刻な国を搾取し、輸入水素への依存を生み出すことで欧州のエネルギー安全保障への影響のほか、圧縮、貯蔵、輸送に係るコストが増加する可能性があるという。そして2050年までのネットゼロ達成という目標を見据え、グリーン水素の国内生産の現実的予測とのギャップを原子力など他の低炭素エネルギー源が埋める可能性に言及している。そして、グリーン水素の殆どは電気分解によって生産されるため消費電力の大幅増加は避けられないが、原子力から水素を製造することで、設置される電解装置の稼働率がベースロード生産で最大化されると指摘した。出力100万kWe、設備利用率90%超の原子力プラントと電解装置との組合せで年間約16万トンの水素を生産、原子力の蒸気を利用できる高温電解装置との組合せでは、更に20%まで増産が可能だという。nucleareuropeは信頼性が高く手頃な価格のエネルギーの確保は再産業化のカギであり、雇用創出と経済成長、エネルギー安全保障の強化につながると強調した上で、EU域内での水素製造の展開を支援するため、EUに対し、以下の重点項目を提言している。エネルギー安全保障の強化のため、原子力を含むあらゆるネットゼロ技術の可能性を認識し、水素製造への多様なアプローチを奨励する。第三国からの輸入水素への依存を減らし、EU加盟国が自国のエネルギーの将来に対するコントロール維持を目指す。EU域内の水素製造施設の競争力と持続可能性を確保するため、再産業化と雇用創出における水素産業の役割を認識し、域内の水素産業の成長を支援する政策を策定する。エンドユーザーへの近さ、費用対効果、環境の持続可能性を優先した、域内の水素製造、貯蔵、流通を支援するインフラへの戦略的投資を提唱する。原子力による水素製造等、水素製造技術の効率と費用対効果の改善に焦点を当てた研究開発イニシアチブに資源を配分する。技術革新の加速のため、産業界、研究機関、政府間の協力を促進する。
04 Jun 2024
1270
国営スロベニア電力(GENエネルギア)は5月21日、同国の電力研究所と共同で、クルスコ原子力発電所の増設計画(JEK2プロジェクト)に関する経済性評価を発表した。出力100万kWe~240万kWe規模の増設プラントをスロベニアの電力システムへ接続した場合の安全性・安定性解析を実施し、電力網への影響の観点から、JEK2プロジェクトの最適な設備容量は最大130万kWeであると結論づけた。なお、JEK2プロジェクトのオーバーナイトコスト((金利負担を含まない建設費))は100万kWeのプラント増設で93億ユーロ(1.59兆円)、165万kWe増設で154億ユーロ(2.63兆円)と試算されている。GENエネルギアは5月20日、関係省庁にJEK2プロジェクトの国家空間計画(DPN)の草案を提出。今後、これら省庁による調整後、一般公開、DPN開始に関する政府決定を経て、環境影響評価を実施する。2028年までに最終投資決定(FID)を行い、2032年に着工したい考えだ。GENエネルギア社単独ではJEK2プロジェクトの資金手当はできず、国の役割が重要であるとしている。JEK2プロジェクトは、スロベニアの脱炭素化と電力の自給自足を可能にし、少なくとも60年間(運転延長の場合は80年以上)、電力を安定供給する。10年間で推定5,640人の新規雇用の創出、投資総額の37%以上は国内で調達される見込みで、スロベニア経済への好影響が期待される。GENエネルギアは、今年後半に実施される国民投票に先立ち、JEK2プロジェクトについて広く国民の意識を高め、情報にアクセスできる取組みとして、今月にクルスコ市内に情報センターを設置するとともに、今後数か月間、同プロジェクトやエネルギーに関する対話型の巡回プレゼンテーションを実施する予定だ。また、同プロジェクトに特化したウェブサイトやメディアを通じて情報提供に努めるとしている。なお、GENエネルギアのD.パラバンCEOは2023年10月、JEK2プロジェクトで当初予定していた110万kWe規模の増設計画を変更し、最大240万kWeまたは2基の建設計画を表明していた。同時にJEK2の主契約者の候補として米ウェスチングハウス(WE)社、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)の3社を挙げている。スロベニアでは現在、クルスコ原子力発電所(PWR、72.7万kW×1基)が運転中。1983年1月に営業運転を開始して以来、スロベニアの電力の約40%を供給している。同発電所はGENエネルギアと隣国クロアチアの国営電力会社のHrvatska elektroprivreda(HEP)が共同所有しており、2023年1月には、2043年まで20年間の運転期間延長が認可された。
03 Jun 2024
999
ノルウェーの原子力プロジェクト会社であるノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)は5月16日、電力や熱を必要とするデータセンターや水素製造などの産業向けに小型モジュール炉(SMR)を送電網に接続せずに利用する「オフグリッド」で建設する計画を明らかにした。同社は、「オフグリッド」のSMRを電力と熱を必要とする工業地帯に隣接して設置、送電網整備を不要とすることで、プロジェクトの経済性を向上させ、産業の育成と雇用創出、経済成長の実現を図るとともに、ノルウェーの自然環境を保全しながらゼロエミッション目標の達成を目指すとしている。なお、「オフグリッド」のSMRの採用は大規模な送電網インフラがすでに存在する、あるいは計画されている場合など、送電網への接続が合理的な場合を除く。同社によると、再生可能エネルギーは土地面積や天候によって発電量は制限されるが、オフグリッドSMRは広大な土地面積を必要とせずに発電量を増やすことができ、継続的な経済成長が保証されるという。例えば、ノルウェー中部のフォセン陸上風力発電プロジェクトを構成するロアン風力発電所とストルヘイア風力発電所の占有面積は62km2。GE日立社製のSMR「BWRX-300」の占有面積は0.05km2で、天候に左右されることなく37%増の電力を供給できる。また、オフグリッドSMRは電力・熱を必要とする工業地帯に直接隣接して建設が可能。水力発電と同様に、運転期間は100年(運転開始60年後と80年後にバックフィット作業を実施)で、20~25オーレ(約3~3.7円)/kWhと安価な電力を供給できる。一般に、オフグリッドSMRは電力の他、大量の熱・高温蒸気を消費する産業で採用され、鉄鋼、アルミニウムの他、炭素回収、水素、アンモニアなどの生産、余熱は地域暖房に利用が可能といわれている。ノルウェーは冷涼な気候で治安も良いことから、データセンターの設置にとっては魅力的なロケーションだろう。実際、米グーグル社はノルウェー南部のシーエン市にデータセンターを建設中である。今後20年間に84万kWの発電設備容量を必要としており、ノルウェーのT.アースランド・エネルギー相(シーエン市出身)は同市内での発電設備の必要性を訴え、同市は原子力発電導入の検討を表明している。ノルスク社は、データセンターに隣接して30万kWe規模のSMR×3~4基を建設することで、サッカースタジアム2~3個分の面積で、年間75億~100億kWhの電力供給が可能であるとし、これはデータセンターと水素製造の電解プラントの操業に十分な量であるとしている。また、これをノルウェーの複数の場所に設置し、ゼロエミッション目標の達成と今後数十年間の経済成長への期待を寄せる。同社は今年4月末、「欧州SMR産業アライアンス」のメンバーとして承認されている。なお、ノルウェーの2022年総発電電力量は1,468億kWhで、内、水力発電が88%、風力発電が10%のシェアを占め、ほぼ再生可能エネルギー利用である。
03 Jun 2024
1379
ロシアのプーチン大統領がウズベキスタンを公式訪問した5月27日、両国首脳はウズベキスタンにおける原子力発電所建設の協力に関する2018年の政府間協定を改正し、ロシア製小型モジュール炉(SMR)の建設を含む協力拡大で合意した。同日、ロシア国営原子力企業ロスアトム傘下のエンジニアリング部門である「アトムストロイエクスポルト」社とウズベキスタン原子力庁(ウザトム:Uzatom)傘下の「原子力発電所建設総局」は、ウズベキスタンにおけるSMRの建設契約に調印した。ウズベキスタン東部のジザク州にロシア製RITM-200N(PWR、5.5万kW)6基構成のSMR発電所を建設する計画で、ロスアトムが主契約者となり、現地企業も建設に参加して今夏にも着工予定。選定サイトはすでに調査済みで、その適性と安全性は確認されており、プロジェクトの実施期間の大幅な短縮が見込まれる。なお、2018年9月に締結された政府間協定では、ウズベキスタンにロシア型PWR(VVER)のうち、120万kW級のVVER-1200を2基建設することを規定していた。ウザトムのA.アフメドハジャエフ長官は、「ウズベキスタンのエネルギー需要は2050年までにほぼ倍増する見込みで、エネルギーシステムの安定稼働と経済発展のためには再生可能エネルギー源に加えてベースロード電源の確保が不可欠」と指摘。そのうえで、同長官は「ロスアトムとの協力関係を拡大し、ウズベキスタンのエネルギー部門を先進的な原子力技術によって強化する」とSMR導入に意欲を示した。国連エネルギー統計年鑑(2021年)などによると、ウズベキスタンの総発電電力量は約710億kWh(2021年)で、火力発電が93%(ほぼ天然ガス利用)を占めている。ロシアの最新SMRであるRITM-200Nは、革新的な海洋技術を陸上用に改良。熱出力は19万kWt、電気出力は5.5万kWe、設計運転年数は60年である。RITM-200Nは2012年以降、ロシアの原子力砕氷船「アルクティカ」、「シベリア」、「ウラル」、「ヤクーチア」、「チュコトカ」向けに10基が製造され、最初の3隻はすでに北極圏西部で就航中。また、RITM-200N原子炉をベースにした陸上設置型SMRは、サハ共和国北部のウスチ・クイガ村で建設中。2027年の起動、2028年の運転開始を予定している。周辺の鉱床開発などの産業企業に電力を供給する計画だ。
31 May 2024
1149
中国広核集団(CGN)が広西チワン族自治区に所有する防城港原子力発電所4号機(華龍一号/HPR1000、118万kW)が5月25日、営業運転を開始した。同機は4月3日に初臨界、4月9日に送電を開始していた。中国南部に位置する少数民族地域初の原子力発電所である防城港発電所は、CGNが61%、広西投資集団(GIG)が39%を所有。1、2号機(PWR=CPR-1000、各108.6万kW)はそれぞれ、2016年に営業運転を開始した。3号機はCGN設計による「華龍一号」の初号機で、2023年3月に営業運転を開始している。第3世代PWRの「華龍一号」は、CGNと中国核工業集団(CNNC)双方の第3世代炉設計を一本化して開発された。3、4号機はCGN設計による「華龍一号」の実証プロジェクトとして位置づけられ、4号機の営業運転開始で実証プロジェクトが完了したことになる。CGN版「華龍一号」は、防城港3、4号機の他、浙江省の三澳原子力発電所1、2号機、広東省の陸豊原子力発電所5、6号機ならびに太平嶺原子力発電所1、2号機でも採用され、建設工事が行われている。CNNC版「華龍一号」については、すでに2021年1月と2022年3月に、福建省の福清5、6号機として営業運転を開始。海外にも輸出しており、パキスタンのカラチ原子力発電所で2021年5月に2号機が、2022年4月に3号機がそれぞれ営業運転を開始している。
29 May 2024
1047
英国で原子力分野の人材に関する国家原子力戦略計画が始動した。原子力部門間での協力、トレーニングへの投資、リーダーシップ開発、多様性の向上に基づき、原子力部門に人材を惹きつけ、労働力を維持することを目的としている。5月15日に始動した政府支援の「スキルに関する国家原子力戦略計画」(National Nuclear Strategic Plan for Skills)は、2026年までに原子力分野での新規の実習生数を倍増させ、2030年までに4万人の新規雇用の創出を目標に掲げる。昨年8月に結成された原子力スキル・タスクフォースによって考案されたこの計画は、業界の労働力をほぼ50%増加させ、原子力部門が魅力的で長期的なキャリアの選択肢となることを目指している。この計画に係る活動は、原子力スキル提供グループ(Nuclear Skills Delivery Group:NSDG)によって実施される。国防を維持するとともに、強靭なエネルギー供給体制を構築し、経済発展の促進、2050年までのネットゼロ目標の達成に向けた原子力プログラムを支援する。NSDGは、民生・軍事の両部門において原子力スキルを主導する組織体。同計画の具体的な活動は以下のとおり。2025~2026年までに、溶接、電気、エンジニアリングなどの職種の実習生を倍増する。2025~2026年までに、原子力部門に就く大学生をスポンサーシップと奨学金制度によって倍増するとともに、最高レベルの技術スキルと知識の確保のため科学・核分裂分野の博士号の取得者数を4倍に増やす。将来の幹部職員を育成するためのスキームを作成する。中途で原子力部門に入る人材のスキル向上に取り組む。全国的な広報キャンペーンである「Destination Nuclear」を通じて人材募集と原子力部門の多様なキャリアの機会を紹介する。地域の要件に合わせた労働力とスキル向上のため、地域ハブを創設する。原子力部門の研修能力を向上する。従業員の多様性の受け入れを拡大する。NSDGの原子力スキルプログラムを統括するB.プレザント氏は、「スキルの課題は、原子力部門が協力し合うことによってのみ達成が可能。だからこそ、計画には業界が現在取り組む特定テーマやプロジェクトが盛り込まれている。また、この計画には、原子力の民生部門と軍事部門を横断したスキル調整も含まれる」とし、原子力部門の地域的なニーズに関連した人材の採用を強化、教育レベル全体で受入れを拡大、既存の業界専門家のスキル向上を図り、多様性を拡大することで、原子力産業の長期的な能力維持と国家とエネルギー安全保障に不可欠な、意欲ある労働力を原子力部門に確保する意向を示した。
29 May 2024
1165
スロバキア政府は5月15日、同国中部のハンドロバで開催された政府会合で、既存のボフニチェ原子力発電所サイトでの新設計画を正式に承認した。ボフニチェ発電所サイトの既存のインフラを利用し、5号機(最大120万kWe)を建設する計画。今後、関係省庁に対し、5号機の建設条件、準備・実施作業、建設スケジュール、建設の財務的保証、新規炉の資金手当並びに炉型の選定プロセスに関する提案を、内閣へ提出するよう要請している。スロバキア西部にあるボフニチェに新しい原子力発電プラントを建設する計画は2009年に遡る。国営スロバキア原子力・廃止措置会社(JAVYS)とチェコ電力ČEZは2009年12月に合弁企業のスロバキア原子力発電会社(JESS:JAVYS 51%、ČEZ 49%を所有)を設立。JESS社は、2013年から環境影響評価(EIA)を実施し、2016年にEIAプロセスを終了。2023年2月には、ボフニチェでの新設のサイト許可を原子力規制当局(ÚJD)に申請した。スロバキアでは現在、モホフチェ発電所で2基(1~2号機、VVER-440)、ボフニチェ発電所で2基(3~4号機、VVER-440)の計4基が稼働中で同国の電力需要の半分以上を賄う。モホフチェ3~4号機(VVER-440)が建設中で、3号機は2023年1月に送電を開始、2024年内に営業運転を開始予定。両発電所の運転者はスロベンスキー・エレクトラルネ社で、政府が34%の株式を所有する。同社は原子力発電のほか、水力発電、太陽光発電を実施している。
28 May 2024
1023
米政府は5月21日、フィリピン政府とマニラで共催した第6回インド太平洋ビジネスフォーラムで、米商務省の国際貿易局(ITA)による東南アジアの民生用原子力産業のための産業ワーキンググループの設立を表明。また同日、フィリピンの原子力分野の人材開発等に向けた覚書も締結された。東南アジアへのSMR導入を目指す。産業ワーキンググループは約40社の米国企業で構成され、東南アジアにおける先進的な民生用原子力発電プロジェクト、特にSMRの東南アジアにおける展開の促進を目指す。ITAのエネルギー・環境産業部(OEEI)と在マニラ米商務部が作業部会を共同運営し、米国貿易開発庁(USTDA)他の米国政府機関が支援する。また、フィリピン・アメリカ教育財団(PAEF)は、奨学金や学術交流を通じてフィリピンの民生用原子力産業におけるスキルや労働力の開発を促進するため、フィリピン・エネルギー省(DOE)と協力覚書(MOU)に調印した。米国国際開発庁(USAID)もDOEのクリーン・エネルギー移行プログラム、民生原子力協定の履行にあたり、DOEとMOUを調印した。一連のMOU調印に立ち会ったD.クリテンブリンク米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は、「MOUは民生用原子力産業の持続可能性の確保に向け、高スキルの専門家育成の支援、強固な政策の制度化、商業的パートナーシップの促進という米政府のコミットメントを示すもの」と強調した。米国は2023年11月に、フィリピンと原子力協力協定(通称123協定)を締結している。脱炭素化とエネルギー自給率向上を目指すフィリピンに、米国から原子力発電を中心とした民事用原子力関連投資、原子力機器や資材の輸出を可能にする法的枠組みで、フィリピンへのSMRをはじめとする原子力技術輸出の商機を支援する。
27 May 2024
1493
米ホルテック・インターナショナル社は5月14日、ミシガン州にある閉鎖済みのパリセード原子力発電所の再稼働に向けた準備の進捗について公表した。同発電所では人材の確保、トレーニングプログラムの活性化、多数のプラントシステムおよびコンポーネントの改修・調達、規制書類の提出、資金調達など、再稼働にむけた準備が加速している。パリセード発電所では再稼働に向けて閉鎖前の従業員の再雇用も含め、現在360名以上の従業員が勤務しており、再稼働計画が始まって以来、150名近く増員している。原子炉運転シミュレーターの再設定と運転員訓練プログラムを再開。プラントの長期運転時の安全確保のため種々の機器の大規模な改修や交換工事、新燃料の発注、長寿命部品の調達などが進行中である。規制手続きについては、再稼働に向けて米原子力規制委員会(NRC)への複数の許認可申請を行うとともに、規制手続きの一環である公開ミーティングにも参加している。同発電所が運転を再開すると、閉鎖された後に営業運転に復帰する米国初の原子力発電所となる。パリセード発電所の再稼働方針については、ミシガン州のG.ホイットマー知事が2022年9月に支持を表明。2023年7月には、同発電所の再稼働に1.5億ドル(約235.1億円)の支援を盛り込んだ2024会計年度の州政府予算法案に署名している。2024年4月には、米エネルギー省(DOE)が融資プログラム局(LPO)を通じて、同発電所の再稼働に向けた融資保証として15.2億ドル(約2,382.3億円)を上限とする条件付きの提供を発表。ホルテック社は、NRCの運転認可を条件として、少なくとも2051年まで運転できるようプラントの改良を実施する計画だ。また、同社は今月初め、プラント改良と保守専業の子会社の設立を発表。世界で稼働する原子力発電所を対象に、AI活用の予防保全やロボット主導の放射線量被ばく低減などの最先端技術の導入を行う。その最初のプロジェクトが、パリセード発電所の改良作業となる。なお、ホルテック社は、同社製小型モジュール炉「SMR-300」(PWR、30万kWe)を2基、パリセード発電所サイトに建設する計画も進めている。同2基が稼働すれば、ミシガン州の無炭素電源の設備容量はほぼ倍増となる。2026年の建設許可申請を予定している。パリセード発電所(PWR、85.7万kWe)は、1971年に営業運転を開始し、2022年5月に永久閉鎖となった。翌6月、同発電所は所有者・運転者のエンタジー社から、廃止措置を実施するため、ホルテック社に売却された。
27 May 2024
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英政府は5月22日、次期大型原子力発電所の建設候補地として、ウェールズ北部、アングルシー島のウィルヴァ・サイトを選定した。同サイトは、英国の新規建設の牽引役として昨年7月に発足した政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が今年3月、日立製作所から、イングランド南西部サウスグロスターシャーのオールドベリー・サイトとともに買収した原子力開発用地。政府が新規原子力発電所の建設用地を確保したのは、1960年代以来のことである。ウィルヴァ・サイトは、サマセット州で建設中のヒンクリー・ポイントC(HPC)発電所、サフォーク州で建設を計画中のサイズウェルC(SZC)発電所に続き、3番目となる大型原子力発電所の建設候補地となる。かつてマグノックス炉が稼働していたウィルヴァに、原子力発電所を再度建設し、ウェールズに雇用と投資をもたらすなど地域経済の活性化が期待される英政府は今年初め、エネルギー安全保障を強化し、2050年のCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)へ向けた原子力ロードマップを発表。2050年までに国内で合計2,400万kWの新規原子力発電所を稼働させ、国内電力需要の4分の1を原子力でまかなうとし、小型モジュール炉(SMR)の導入や、HPC、SZCに続く大型炉プロジェクトの検討も盛り込まれている。英政府は今回の建設サイトの選定とともに大型発電所の建設に向けて、協議を開始した。
24 May 2024
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ウクライナの原子力発電会社「エネルゴアトム」と韓国の現代E&C(現代建設)社は5月13日、ウクライナにおける原子力発電プラント新設の設計、建設、試運転に関する協力覚書(MOC)に調印した。協力覚書は、ウクライナのG.ガルシェンコ・エネルギー相と韓国のH. キム駐ウクライナ大使立会いのもと、エネルゴアトム社のP.コティンCEOと韓国の現代E&C社のY. チェ副社長によって調印された。ガルシェンコ・エネルギー相は、今回の覚書調印は、フメルニツキー原子力発電所における米ウェスチングハウス(WE)社製「AP1000」(PWR、125万kWe)の新設プロジェクトにとって重要であると指摘する。エネルゴアトム社は、自社の新たなインフラプロジェクトへの現代E&C社からの投資と技術協力に対する期待を強調。特に、タービンを含む原子力発電プラント建設のための様々な機器供給分野において、韓国との緊密な協力への関心を表明した。今回の覚書は、2023年11月に両社が締結した基本合意書(LOI)に基づくもので、LOIではウクライナにおける大型原子力発電所ならびに小型モジュール炉(SMR)プロジェクト推進に向けた支援や原子力発電プラントの研究開発に関するノウハウの交換等の分野で協力を模索することで合意していた。なお、WE社と現代E&C社は2022年5月、「AP1000」のグローバル展開に共同参画する戦略的協力合意を締結している。今年4月、フメルニツキー原子力発電所では「AP1000」を同国で初採用する5号機の建設プロジェクト開始の式典が米国のB.ブリンク駐ウクライナ大使も出席して開催された。ウクライナには、2022年3月初旬からロシア軍の支配下にあるザポリージャ原子力発電所の6基を含め、国の総発電電力量の約半分を供給する15基の原子炉がある。フメルニツキー発電所1号機(VVER-1000)は、1986年に起きたチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所事故後の1987年に送電網に接続、1990年に2~4号機(VVER-1000)の工事は中断した。その後、2号機の工事は再開され2004年に送電網に接続。3号機は工事中断時に75%、4号機は28%完成していた。ウクライナ内閣は今年の4月上旬、3~4号機の建設・完成に関する法律案を最高会議に提出。法案成立後、3号機で機器の設置に直ちに着手する。ガルシェンコ・エネルギー相によると、3号機は最短2年半で運転開始ができるという。WE社は、3~4号機については、「AP1000」を採用する5~6号機と技術面において同様の役割は果たせないものの、一定部分での支援は可能との見解を示している。3~6号機が完成して全6基が稼働すると、フメルニツキー発電所の設備容量は欧州最大となり、ザポリージャ発電所を超える見込み。
23 May 2024
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