米エネルギー省(DOE)は7月22日、実物大の使用済み燃料乾式貯蔵システムの耐震試験を実施し、完了したことを明らかにした。カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者らは、DOEから資金提供を受け、屋外振動台を使用した耐震試験を実施。重さ125トンの実物大の垂直キャスクと111トンの水平貯蔵システムを対象に、どちらもダミーの燃料集合体と240以上のセンサーを装着し、約40種類の地震のシミュレーションのデータを収集した。今回の試験で得られたデータにより、国内の70を超える原子力発電所サイトで安全に貯蔵されている使用済み燃料に対し、地震が与える潜在的な影響を詳細に評価し、将来の使用済み燃料貯蔵システムの設計と許認可に有用なデータを収集する。また、現在の貯蔵方法の改善や、国内の使用済み燃料の安全で、効率的、持続可能な管理にも資するという。耐震試験の様子はDOEのYouTubeチャンネルで視聴できる。
01 Aug 2024
1209
英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は7月より、HALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))燃料製造計画の一環として、再転換事業を対象に助成金の申請を受け付けている。2031年までに英国にHALEU燃料の製造能力を確立することが目的で、今年1月に英政府が発表した3億ポンド(約586億円)を投じた計画の一部。英国では、2030年代初めには先進的モジュール炉(AMR)の運転開始が見込まれている。AMRは小型モジュール炉(SMR)同様、小型でモジュール工法が可能であり、建設をより迅速かつ安価にする可能性があるため、英国の原子力復活において重要な役割を果たすと考えられている。AMRはHALEU燃料を必要とするが、HALEUを商業規模で生産するのはロシアだけ。そのためエネルギー安全保障の強化の観点から、英政府は英国と海外のAMRや研究炉への支援を実施する。HALEU燃料製造計画には、濃縮、再転換の開発、輸送能力及び関連する規制ガイドラインの策定が含まれる。今年5月、英政府は最初の助成金1.96億ポンド(約383億円)を英国に本拠地を置く濃縮事業者のウレンコ社に拠出。同社は、英国初の商業規模のHALEU濃縮能力を確立した上で、年間最大10トンのHALEUを製造する新工場を2031年までに操業させたい考えだ。今回の助成金の対象は、英国内での商業規模でのHALEU再転換施設。開発支援のため、最大7,000万ポンド(約137億円)の助成金を拠出する。但し、官民それぞれ7:3の割合で民間からの共同出資が必要となる。DESNZは、英国の原子力産業内で不足しているスキルを再構築しつつ、フロントエンドであるHALEUサプライチェーンの成長を促すと説明する。助成金は以下を支援することを目的としている。商業規模の酸化物HALEUの再転換施設の設計と建設商業規模の金属HALEUの再転換施設の詳細設計申請者は、英国で2031年までに稼働する商業規模の酸化物HALEUの再転換施設の設計、建設の提案をしなければならない。施設は少なくとも年間1万kgUの処理能力を持ち、将来的には少なくとも年間3万kgUまで生産拡大が可能な設計が必要。なお、HALEU市場が成長した場合を想定し、金属HALEUの再転換ラインを追加できるようにしておかなければならない。同時に、少なくとも年間5,000kgUの処理能力を持つ商業規模の金属HALEUの再転換施設の詳細設計の提案が求められている。助成金対象者に選ばれた場合、HALEU供給パートナー及びより広範なHALEUサプライチェーン全体との協力が期待されることになる。さらに、HALEU燃料製造計画の下で資金調達が検討されている英国国立原子力研究所(NNL)との協力の可能性もある。その場合、NNLは再転換試験装置及び関連する研究開発プログラムを通じ、酸化物及び金属HALEUの再転換における英国のスキル及びノウハウの向上を行う。DESNZは、助成金対象者がNNLと協力して、プラント設計や施設操業上のリスクを軽減し、最適化することを期待している。申請期限は9月9日で、助成期間は5年間。
31 Jul 2024
1056
米エネルギー省(DOE)は7月18日、米セントラス・エナジー社が、2024年及び2025年に米国顧客への納入を確約している低濃縮ウラン(LEU)について、ロシア産LEUの輸入禁止の免除を許可した。セントラス社が米国証券取引委員会(SEC)に宛てた7月19日付の提出書類で明らかにした。5月13日、バイデン大統領の署名により「ロシア産ウラン輸入禁止法」が成立、8月11日に施行される。同法は、2040年まで有効。原子炉や米国の原子力関連企業の継続的な運営を維持するために、代替となるLEUの供給源がない、あるいは、LEUの輸入が国益にかなうと判断した場合は、DOEへの申請により輸入禁止の免除措置が適用される。ただし、その場合も免除される量は限られ、いかなる免除も2028年1月1日までに終了しなければならない(既報)。なお、免除される量は、2024年は476,536kg、2025年は470,376kg、2026年は464,183kg、2027年は459,083kgとなっている。
30 Jul 2024
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フィンランドの小型モジュール炉(SMR)開発企業であるステディ・エナジー(Steady Energy)社は7月18日、同国クオピオ市で2030年代初頭にSMRによる地域暖房用の熱供給の開始を目指す、地元自治体の電熱供給会社クオピオン・エネルギア(Kuopion Energia)社と事前準備の実施で合意した。期間は1年。本合意により、クオピオン社は、ステディー社が開発する熱供給専用のSMR「LDR-50」(5万kWt)導入の最終投資決定(FID)に向け、SMR立地の適地を絞りこむ環境影響評価など具体的な作業を開始する。「LDR-50」により、クオピオ市の気候目標を達成し、地域暖房用に手頃な価格のエネルギーを提供したい考えだ。ステディー社のSMR「LDR-50」は直立した輸送コンテナほどの大きさで、地下の岩盤に建設される。都市景観への影響も限定的で住宅地の近くにも安全に設置できるという。建設期間は3年半と見込まれている。2023年12月、ステディー社はクオピオン社と2030年以降に最大5基の地域暖房用SMRの建設オプションを含む基本合意書に署名。この合意に先立ち、同年10月には首都ヘルシンキ市のエネルギー会社ヘレン(Helen)社と、地域暖房用に最大10基のSMRを建設する基本合意書に調印している。現在、クオピオン社が供給する地域暖房の半分以上は、バイオ燃料起源(主に木材)。木材は発電と地域暖房に使用する燃料の60%以上を占め、残りは泥炭である。
30 Jul 2024
1032
フランスおよびイタリアの5者が7月23日、イタリアの鉄鋼業界の競争力強化と脱炭素化をめざし、原子力利用の推進協力に係る覚書に調印した。5者は、フランス電力(EDF)とそのイタリア法人であるエジソン社、イタリア鉄鋼連盟、イタリアのアンサルド・エネルギア・グループ、およびその100%子会社のアンサルド・ヌクレアーレ社。協力を通じて、各者が有する専門知見を活用し、今後10年間でイタリアでの新規建設、とりわけ小型モジュール炉(SMR)の建設に向けた共同出資を検討する。また、5者は、両国間で既に稼働している国際連係線を活用し、イタリアにおける鉄鋼生産の脱炭素化に貢献すべく、原子力による電力の中長期的な供給契約の締結も検討していく。今回の覚書について、イタリア鉄鋼連盟のA. ゴッツィ会長は、鉄鋼メーカーとして、持続可能な鉄鋼産業への移行をリードする意向を表明。同会長は、「原子力は、野心的な脱炭素化目標を達成するために戦略的に必要な要素、かつ唯一の実行可能な方法。排出削減が難しいとされるあらゆる産業部門の模範となるよう取り組んでいく」と意気込みを語った。なお、今回覚書に調印したイタリア鉄鋼連盟以外の4社は2023年3月、欧州でSMR等の原子炉開発や建設での協力可能性を探るための基本合意書(LOI)に調印。これは、イタリアで将来的に、エネルギー政策変更の可能性があることを見越し、同国での原子力発電所建設を念頭に締結されたものだ(既報)。脱原子力国であるイタリアでは、昨年から同国で原子力発電復活の可能性に関する議論を再開。最近では、トリノで4月に開催されたG7気候・エネルギー・環境閣僚会合の議長を務めた同国のG.ピケット=フラティン環境・エネルギー安全保障大臣が、米シンクタンク主催のイベントでの基調講演のなかで、2050年CO2排出実質ゼロの目標達成には、短・中期的には原子力の利用を検討しなければならず、特にSMRに注目していると述べている(既報)。また、政府がこの7月に欧州委員会(EC)に提出した「国家エネルギー・気候計画」(NECP)の最終文書では、原子力発電計画の再開を決定した場合、2035年からSMRなどの先進原子力の導入を想定したシナリオが描かれている(既報)。
29 Jul 2024
1103
国際エネルギー機関(IEA)は7月19日、電力の需給予測に関する最新報告書「Electricity Mid-Year Report」を公表した。堅調な経済成長、熱波、電気自動車などの電化の普及拡大により、世界の電力需要はここ数年で最も速いペースで増加しており、2023年の成長率が2.5%だったのに対し、2024年には約4%となる見通しだ。報告書によると、この需要の伸びは、金融危機やコロナ禍後を除いて過去20年間で最高レベルであり、2025年もこの傾向は継続し、再び4%前後の成長が見込まれるという。報告書は、再生可能エネルギーによる発電量は今後2年間で急速に拡大し、発電シェアは2023年の30%から2025年には35%に上昇すると予測。太陽光と風力だけで、2024年の発電電力量は7,500億kWh増。25年には9,000億kWh増となると予測した。また、再エネによる発電量が2025年に初めて石炭火力による発電量を上回るとの見方を示す一方、石炭火力の発電量は、特に中国とインドの需要増により、2024年に減少する可能性は低いと見ている。その結果、電力部門のCO2排出量は、2025年までほぼ横ばいで推移する見通し。IEAの貞森恵祐エネルギー市場・安全保障局長は、「今年から来年にかけて、世界の電力需要は過去20年間で最も急速に伸長する見込みで、電力が果たす役割の重要性と深刻化する熱波の影響を浮き彫りにしている」と指摘。「電力ミックスに占めるクリーンエネルギーの割合が増え続けていることは心強いが、エネルギー・気候目標を達成するためには、クリーンエネルギーの導入をより迅速に進める必要があると同時に、送電網の拡大・強化および、より高いエネルギー効率基準の導入が不可欠」との認識を示した。原子力発電については、世界の原子力発電量が過去最高を記録した2021年を上回り、2025年には2兆9,150億kWhに達し、記録を更新する見通し。報告書は、保守作業中だったフランスの原子力発電所の再稼働や日本の再稼働、中国、インド、韓国、欧州などでの新規原子炉の運転開始により、原子力発電量は2024年には1.6%、2025年には3.5%増加すると予測している。また、報告書は、人工知能(AI)の台頭により、データセンターによる電力消費が注目されているなか、安定した低排出電源の必要性などから、原子力発電が地熱発電とならんで、魅力的な存在になりつつあると指摘。具体的な動きとして、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社によるサスケハナ原子力発電所(BWR、133.0万kW×2基)に隣接するデータセンターの買収のほか、オンサイトの小型モジュール炉(SMR)の活用例として、不動産・プロジェクト開発企業の米グリーン・エナジー・パートナーズ(GEP)社によるSMRと水素発電設備を備えたデータセンター・キャンパスの建設計画、ノルウェーの原子力プロジェクト会社のノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社によるデータセンター向けのオフグリッドのSMR建設計画などを挙げた。そのほか、米マイクロソフト社と米ヘリオン社の核融合発電に関する電力購入契約(PPA)締結の事例なども紹介。その一方で、IEAは、SMRや核融合発電などの活用をめざす動きは今後の技術開発に勢いを与えるものとしつつも、技術的成熟度から言えば未だ初期段階と指摘。供給スケジュールに関しては、大きな不確実性が存在する点に留意する必要があるとし、今後の動向に注視する必要性に言及している。
29 Jul 2024
2017
フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は7月12日、極低レベル放射性廃棄物(VLLW)処分施設(CIRES)の処分容量拡大認可を地元であるオーブ県から取得した。CIRESは、フランス北東部のオーブ県モルヴィリエに立地し、2003年に操業を開始。原子力施設の解体や、低レベルの放射性物質を扱う非原子力サイトで発生した廃棄物、放射性物質で汚染されたサイトの除染により発生した廃棄物を処分する。今回の認可により、処分面積を増やすことなく、当初認可された処分容量65万m3を95万m3に拡大する。CIRESは、同じくANDRAが管理運営する、オーブ低中レベル放射性廃棄物処分場(CSA)に近接。CSAは原子力発電所と同様、原子力施設に分類され、原子力安全規制当局(ASN)による規制の対象である。一方、CIRESのようなVLLW処分場は、廃棄物の放射能レベルが低いため、原子力施設ではなく環境保護指定施設となり、県知事の委任により地域圏環境・整備・住宅局(DREAL)が建設及び操業に係る許認可や規制を実施する。県知事による認可決定にあたっては、環境庁を含む関係省庁による審査、一般市民と地元当局が参加する共同調査も実施されている。CIRESのサイト面積は46 ha。3つの処分エリア(第1、2、3トレンチ)でのVLLW受入を設計し、認可された。毎年、約3万m3のVLLWが粘土質状の土壌に掘られたトレンチに処分され、第1トレンチはすでに満杯。2023年末までに処分量は、全体の許容量である65万m3の72%に達している。今後数年間の搬入予測によると、2028年~2029年頃には許容量に達する。国の放射性物質・廃棄物管理計画のもとで、代替の管理方法が検討されているとしても更なる処分容量が必要となる。ANDRAが発表した放射性物質・廃棄物国家目録では、現在稼働中の原子力施設の解体中に、210万m3~230万m3のVLLWの発生が予測されている。これを受け、ANDRAは2023年4月上旬、オーブ県に処分容量の拡大を申請。第3トレンチの開発と設備工事費用は、2,100万ユーロ(35億円)と見積もられている。2025年4月から作業を開始し、第2トレンチの運用が終了する前、2028年には最初のセルの運用を開始したい考えだ。
26 Jul 2024
1050
米国のワイオミング州エネルギー公社は7月18日、同州でのTRISO燃料製造施設の立地評価に向けて、BWXテクノロジーズ(BWXT)社の子会社であるBWXTアドバンスド・テクノロジーズ社と協力協定を締結した。今後、約1年半かけて、州内の建設候補地や施設の設計、コスト、人材、サプライチェーン、許認可などの観点から、立地評価を実施する予定。ワイオミング州は米国最大のウラン埋蔵量を誇り、今年3月には米ウル・エナジー社が同州に、新たにシャーリー・ベイスン鉱山の建設を決定。また2022年に同州に隣接するアイダホ州のアイダホ国立研究所(INL)と先進的原子力技術の開発等に関する覚書を締結しており、原子力分野に力を入れている。今回の協力協定について、同州のM. ゴードン知事は、「原子力は、ワイオミングのエネルギー・ポートフォリオの中核。ワイオミング州で採掘されたウランを、ワイオミング州で加工し、ワイオミング州で使用することができる。いわば三位一体の構造だ」と強調した。BWXT社とワイオミング州は、2023年から同州でのBWXT社製マイクロ原子炉「BANR」(HTGR、1,000~5,000kWe)の建設、配備に向けた実行可能性を検討中だ。両者は今年6月に、BANR導入実現に向けた可能性評価に関する新たな契約を締結、7月にはBWXT社がBANRの設計、システム開発および周辺機器などで、カンザス州の建設会社バーンズ&マクドネル社と協力協定を締結している。 BWXT社は2022年12月、国防総省(DOD)が軍事用に建設を計画している米国初の可搬式マイクロ原子炉用の燃料として、TRISOの製造をバージニア州リンチバーグの施設で開始した。HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を3重に被覆した粒子燃料であるTRISO燃料について、米エネルギー省(DOE)は高温に耐え、腐食に強いTRISOを「地球上で最も堅牢な核燃料」と高く評価している。なお、現在テネシー州で計画されている米Xエナジー社のTRISO燃料工場建設プロジェクトを対象に、1億4,850万ドル(約230億円)の連邦税額控除の適用が今年4月に明らかになっている。
26 Jul 2024
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ロシア国営原子力企業のロスアトムは7月10日、ベロヤルスク原子力発電所4号機(FBR=BN-800、88.5万kWe)に、マイナーアクチノイド(MA)を含むMOX燃料の先行試験用の燃料集合体を初装荷したことを明らかにした。試験用の燃料集合体3体は、クラスノヤルスク地方にある鉱業化学コンビナートで2023年12月に製造された。燃料集合体には、原子炉の使用済み燃料内の最も放射性毒性の強い長寿命のMAであるアメリシウム241とネプツニウム237を含み、約1年半をかけて、通常より短い3サイクルで燃焼させる。「MAの消滅は高速炉の利点であり、燃料サイクルの全体のインフラで放射性廃棄物の量を減らすことが可能」と、ベロヤルスク発電所のI. シドロフ所長は強調する。MAを含むMOX燃料製造技術は、ロスアトムの燃料部門であるTVEL社が開発。TVEL社のA.ウグリュモフ研究開発担当上級副社長は「MAを再燃焼する高速炉燃料の使用は、世界の原子力産業界にとって新たな試み。MOX燃料は燃料供給ストックの基盤を拡大し、使用済み燃料の再利用により、放射性廃棄物を減容する。さらにMAを燃焼させることで廃棄物の放射能を大幅に減らし、将来的には地表面近くでの処分を可能にする」と指摘する。ロスアトムの原子力発電部門、ロスエネルゴアトム社のA. シュティコフ社長は、「高速炉は、濃縮ウランだけでなく、劣化ウランや使用済み燃料から取出したプルトニウムなどの核燃料サイクルの二次生成物を燃料とすることができる。高速炉でのMAの燃焼は、クローズド・サイクルを堅持する、ロシア原子力産業の次なるステップ。現在、ベロヤルスク3号機(BN-600)及び4号機の高速炉の運転経験に基づき、ベロヤルスク発電所では、後続の5号機として建設予定の第4世代の高速炉『BN-1200M』の事前設計開発作業が進行中。原料としてのウランのエネルギーポテンシャルを最大限に活用し、高いレベルの安全性を有する」とコメントした。また、ロスアトムはトムスク州のセベルスク市で、オンサイトのクローズド・サイクルの確立を目的に、第4世代の鉛冷却高速実証炉「BREST-OD-300」(30万kWe)、ウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料製造モジュール、使用済み燃料の再処理モジュールを含む、パイロット実証エネルギー複合施設(ODEK)を建設中だ。
24 Jul 2024
1429
インドのN. シタラマン財務大臣は7月23日、2024年度(2024年4月~2025年3月)予算を発表し、そのなかで、同国のエネルギーミックスにおける原子力シェアの拡大に向け、民間部門と提携して、小型炉の設置や小型モジュール炉(SMR)の研究開発等を支援していく方針を明らかにした。インドで、原子力プロジェクトに民間の参入を認める方針が示されたのは今回が初めて。発表資料によると、原子力は、N. モディ首相が掲げる「先進インド構想(ヴィクシット・バーラト)」に向けた、エネルギーミックスの土台となっている。今後、政府は民間部門と提携し、研究・イノベーションのために新たに設けられた1兆ルピー(約1兆8,500億円)の研究開発資金を活用して、①バーラト小型炉(PHWR)の設置、②バーラトSMR(BSMR)の研究開発、③原子力に関する新技術の研究開発――を推進していく方針だ。原子力など科学技術を担当するJ.シン閣外専管大臣は2023年8月、議会下院における答弁の中で、政府が海外との協力やSMRの自主開発の選択肢を模索しているほか、民間部門の参入を可能にするため、1962年原子力法の改正を検討中と答弁していた(既報)。1962年原子力法は、民間部門が原子力発電に参加することを認めておらず、これまでインドの商用原子力発電所を所有、運転するインド原子力発電公社(NPCIL)と提携が許されていたのは、インド国営火力発電公社(NTPC)といった政府系公社だけだった。今回、民間部門の提携が認められたことで、新規原子力発電所の資金調達に新しい道が開かれることになる。日本原子力産業協会の調査によると、インドでは2024年1月1日現在、23基・748.0万kWが運転中で、10基・800.0万kWが建設中(このうち、カクラパー4号機が2024年3月31日に営業運転を開始している)。インド原子力省(DAE)は、原子力発電設備容量を2031年までに2,248万kWに増強する目標を設定している。インドはまた、2024年3月、同国南部のタミルナドゥ州・カルパッカムで建設中の同国初の高速増殖原型炉「PFBR」(50.0万kW)で、モディ首相立ち合いの下、燃料装荷を開始している(既報)。
24 Jul 2024
1474
米ミシガン大学の研究者らは7月9日、米国で稼働中の245基の石炭火力発電所(CPP)を先進的な原子炉に移行する実現可能性を格付けした研究評価を発表した。この研究は、米エネルギー省(DOE)原子力局の原子力大学プログラムを通じた資金提供によるもの。米国で大幅な脱炭素化を実現するには、クリーンエネルギーの急速な展開が不可欠。米国では温室効果ガス排出の主要因であるCPPの新たな建設計画はなく、多くの電力会社が今後15年以内にすべてのCPPの廃止を目指している。米国のCPPは2022年時点で発電電力量の20%、電力部門のCO2排出量の55%を占める一方、原子力発電はCPPと同様に安定したベースロードの電力供給が可能で、CO2排出量はゼロ。新規で原子力発電所を建設するよりも、既存のCPPを原子力発電所へ移行する方が、送電線や発電システム設備などの既存インフラを活用できるため、時間とコストを節約でき、またCPPの廃止に伴う雇用と税収の減少を防ぐメリットがある。そのため、ミシガン大学の研究チームは、先進原子力開発のための立地ツール(Siting Tool for Advanced Nuclear Development:STAND)を用いて、米国における石炭から原子力への移行(C2N)の可能性を体系的に評価した。但し、立地の許認可に必要となる詳細なサイト調査や環境評価は考慮されていない。同チームは対象となるCPPを、設備容量に基づき、2グループ(100万kWe以上とそれ以下)に分類。先進的な原子炉についても、マイクロ炉、中型炉、小型モジュール炉(SMR)などに分類した上でツールを運用した。その結果、設備容量が小さいグループ(100万kWe以下)の実現可能性スコアは100点満点中51.52点から84.31点の範囲にあり、中央値は66.53点。設備容量が大きいグループ(100万kWe以上)の実現可能性スコアは47.29点から76.92点の範囲にあり、中央値は63.97点だ。なお、エネルギー価格や原子力政策などの地域的特性は、適合性に大きな影響を与えたという。
23 Jul 2024
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中国東北部の遼寧省で7月17日、中国核工業集団公司(CNNC)の徐大堡原子力発電所2号機(PWR=CAP1000、129.1万kWe)が着工した。徐大堡(Xudabao)原子力発電所は、遼寧省最大のクリーンプロジェクトの1つ。1、2号機は、米ウェスチングハウス(WE)社製「AP1000」の中国版標準炉モデルである「CAP1000」を採用している。1号機(125.3万kWe)は2023年11月に着工した。両機の投資総額は480億元(約1兆円)を超え、それぞれ2028年と2029年に運転を開始する予定だ。3、4号機は、ロシア型PWRである「VVER-1200」(各127.4万kWe)を採用し、それぞれ2021年、2022年に着工済み。両機とも設備設置段階に入り、2027年と2028年の運転を開始予定だ。全4基合わせて、年間約360億kWhの発電電力量が予想されている。
22 Jul 2024
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ノルウェーの新興エネルギー企業ノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社は7月上旬、新たに国内3か所の自治体と、小型モジュール炉(SMR)の立地可能性調査に関する協力で合意した。ノルスク社は7月8日、ノルウェー南部のアグデル(Agdel)県リュングダール(Lyngdal)自治体とSMR立地可能性を調査するため協力合意を締結した。リュングダールは、地域貿易の中心地であり、国内有数の産業や企業も多い。U. フソイ同自治体首長は「議会が全会一致で協力合意への締結に賛成した。産業界および消費者は、安定して、手頃な価格の電力供給を必要としている。土地の所有面積が少なく、温室効果ガスの排出が少ないエネルギー源である原子力に依存したい」と述べ、今後の調査への期待を示した。なおノルスク社は、7月4日には、同アグデル(Agdel)県のファーサンド(Farsund)自治体とSMR立地の可能性に関する初期調査を共同で実施する協力合意を締結している。同自治体では、電力集約型産業やエンジニアリング産業などで、大量の電力需要が見込まれる。I.ウィリアムセン同自治体首長は「原子力発電所立地の可能性調査の実施について、ファーサンドの幅広い政治的多数の賛成を得た。ファースンが原子力発電の適地となれば喜ばしい」と語った。また同社は、7月1日には、ノルウェー南西部のルーガラン(Rogaland)県ルンド(Lund)自治体と、原子力発電所立地に関する調査の協力合意を締結。同自治体では、持続可能な産業計画による電力需要の大幅増加が見込まれ、G. ヘレランド同自治体首長は「本合意により、SMR建設の適切なサイトの特定や影響評価の開始など、当自治体における原子力発電の実現に向けた一歩となりうる」と評価した。ノルスク社は、ノルウェー国内の複数の自治体や電力集約型産業と連携したSMRの立地可能性調査を実施し、SMRの建設・運転を目指している。同社のJ. ヘストハンマルCEOは、SMRをノルウェー国内に大規模導入させたい考えだ。同CEOによると、国内では原子力発電導入に向けた調査に率先して取組む自治体の数が急速に増加しているという。また、ノルスク社が40%出資するハルデン・シャーナクラフト社がこのほど発表した報告によると、SMR×4基構成の発電所の発電電力量は、年間100億kWhであり、これは、ノルウェーの総発電電力量の約7%に相当し、約400人もの雇用を生み出すという。
22 Jul 2024
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チェコ政府は7月17日、新規原子力発電プラント建設プロジェクトの主契約者をめぐる優先交渉権を、韓国水力・原子力会社(KHNP)に与えると決定した。検討対象となるプロジェクトは、ドコバニ発電所5、6号機増設のほか、テメリン発電所3、4号機増設で、フランス電力(EDF)とKHNPの2社が入札していた。ドコバニ発電所の増設契約の締結は来年第1四半期中を予定し、2029年までに建設許可を取得、2036年末までに試運転を開始、2038年に営業運転を開始させたい考えだ。今回の決定を受け、チェコのP. フィアラ首相は、「チェコは、可能な限りエネルギー自給率を高め、手頃な価格でエネルギー安全保障を達成することを目指している。増設プロジェクトは、チェコの質の高い生活、繁栄、競争力向上を約束するものだ。KHNPの提案は、これらの条件を満たすと同時に、チェコの産業界がプロジェクトに約60%関与し、経済発展に大きな弾みをつけるものとなる」とコメントしている。2社の入札評価には、国際原子力機関(IAEA)の評価モデルの勧告に従い、約200人の専門家が携わり、メガワット時あたりの電力価格を比較評価。同サイトに同時に2基を建設する場合、総事業費は1基あたり推定約2,000億コルナ(1.35兆円)となると試算されている。Z. スタニュラ財務相は、「現在、原子力発電はチェコの電力消費の3分の1以上を賄っているが、将来的には50%まで高めたい。また、既存のサイトに2基増設するとの選択肢は、作業の多くを2度行う必要がなく、スケールメリットを得られ、1基あたり約20%のコスト削減が可能。増設への投資はさらなる投資を生み、チェコ経済に3倍になって戻ってくるという試算結果もある。熟練した雇用創出も国家財政にとり不可欠な収入源になる」と言及した。ドコバニ発電所5号機増設の入札は2022年3月に開始され、同年11月末にEDF、KHNP、米ウェスチングハウス(WE)社は、最初の入札文書(ドコバニ5号機の増設、追加の3基:ドコバニ6号機とテメリン3、4号機の拘束力のない増設提案)を提出した。2024年1月末、政府は追加の3基も拘束力のある入札への変更を決定。WE社を除く、2社(EDFとKHNP)を入札に招聘した。同2社による応札を経て、ドコバニⅡ原子力発電会社(EDU II)は6月中旬、優先交渉権を得るサプライヤーに関する政府の最終決定のベースとなる評価報告書を産業貿易省に提出していた。KHNPにとって、欧州では初めての建設契約となる。同社のJ. ファンCEOは、今回の選定は、国内外での原子力発電所建設プロジェクトにおける能力が評価されたものとし、「原子力事業は、建設から運転まで100年にわたる長期協力」と語った。なお、建設プロジェクトへのチェコ企業の関与はKHNPの最優先課題の一つであり、すでに200社以上の潜在的なチェコのサプライヤーを特定し、将来の協力を念頭に、76もの覚書を締結しているという。KHNPは、引き続きチェコ産業の現地化の期待に応えるために尽力するとしている。
19 Jul 2024
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フランスとイタリアの産学が7月16日、原子力分野での研究活動および人材育成に関する協力協定を締結した。締結したのはフランス電力(EDF)のイタリア法人であるエジソン社、仏フラマトム社、イタリアのミラノ工科大学の3者。ノウハウを共有し、原子力分野の研究開発を共同で進める方針だ。今回の協定では、インターンシップや修士および博士号論文の作成協力、セミナー、ワークショップ等の取り組みを通して、共同プロジェクトを推進することが規定されているほか、学生や社員によるフラマトム社の生産拠点やミラノ工科大学、エジソン社の研究室への相互訪問も可能となっている。今回、協力協定を締結したミラノ工科大学は、1950年代から原子力分野の教育と研究を開始したイタリア初の国立大学。同大学のM. リコッティ教授(原子力工学)によると、同大学では至近5年間で、原子力分野を専攻する学生が3倍に増えたという。今回の協力協定について、エジソン社のL. モットゥーラ副社長(人材戦略、イノベーション、研究開発、デジタル担当)は、学生が企業に直接アクセスし、交流できるメリットを強調、「イタリアにおける新規の原子力発電に必要な専門知識向上に向けた新たな一歩となる」と期待を寄せた。1990年に脱原子力を達成したイタリアだが、近年のエネルギー危機や脱炭素の風潮の中で、現在のメローニ政権は原子力発電再開の検討を本格化させるなど、原子力に対して前向きな姿勢を見せている。7月1日にイタリア政府は、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)を提出、同計画には原子力発電再開を想定したシナリオが盛り込まれており、原子力再導入の将来的な可能性を見据えている(既報)。
19 Jul 2024
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南アフリカの国営電力会社であるエスコム(Eskom)は7月15日、同社のクバーグ原子力発電所1号機(PWR、97万kWe)の運転を2044年7月21日までさらに20年間延長する認可を国家原子力規制委員会(NNR)から取得したと発表した。クバーグ2号機(PWR、97万kWe)についても現在、NNRは20年間の運転期間延長に係る申請を審査中だが、同機の運転認可期限である2025年11月9日前にも、運転期間延長に関する決定を行う見込み。なお、エスコムは2021年、両機の運転期間を20年延長する申請書をNNRに提出していた。クバーグ発電所は現在、アフリカ大陸で唯一稼働する発電所。同1、2号機は1984年と1985年にそれぞれ運転を開始。2019年、国のエネルギー・インフラ開発計画である統合資源計画(Integrated Resource Plan: IRP)で2024/2025年以降、エネルギー供給を引き続き継続するため運転期間を延長する方針が示されたこと受け、エスコムは各機で蒸気発生器3台の取替作業を含む、運転期間延長に向けた作業を重点的に進めてきた。エスコムは今回の認可を受け、クバーグ発電所を40年間にわたり安全に運転し、今後も安全運転の継続を確実にするため、安全性の向上と広範なメンテナンスにこれまで投資してきたことに言及。同社のK.フェザーストーン原子力部門責任者は、「クバーグ発電所は長年にわたり、フランスと米国の原子力発電所の運転経験から安全性の改善策を特定し、実施してきた。その結果、通常は新しい近代的な原子力発電所でしか達成できないレベルまでリスクを低減することができた」と胸を張った。
18 Jul 2024
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フィンランド国営の「VTT技術研究センター」は7月5日、フィンランドをはじめ欧州の地域暖房市場における原子力利用によるカーボンフットプリント(CFP)((商品やサービスなどのライフサイクル全体(原材料調達から製造・販売・使用・リサイクル・廃棄まで)で排出される温室効果ガスの排出量をCO2の排出量に換算した指標。))の調査結果を発表。原子力は他のエネルギー源よりもライフサイクル全体での環境影響が少ないことを明らかにした。冬の気候が寒く厳しい国では、住宅やその他の建物の暖房に多くのエネルギーを消費し、欧州では6,000万人が、3,500の地域暖房ネットワークを利用している。VTTは、暖房はCO2排出の主要な要因でもあるため、エネルギーシステムの徹底的な脱炭素化には、化石燃料に代わる幅広い代替燃料が必要であると指摘。エネルギーの生産、流通、消費が発電分野とは異なる暖房分野において、代替エネルギーとして原子力を含めた環境影響について調査を行った。調査にあたり、原子力による地域暖房には、小型モジュール炉(SMR)「LDR-50」(PWR、熱出力5万kW)を採用して分析。2023年にVTTからスピンオフしたステディ・エナジー(Steady Energy)社がフィンランドと欧州市場向けの地域暖房用に2030年代の商業利用を目指して開発中の原子炉だ。標準的なライフサイクル分析(LCA)手法を用いて環境影響を分析したところ、LDR-50は設計段階のプラントのため、建設段階に関連した大きな不確実性が残るものの、暖房に利用した場合のCFPは2.4gCO2/kWhと算定。原子力による地域暖房のCFPは最も少なく、化石燃料の場合は、天然ガス282gCO2/kWh、泥炭450gCO2/kWh、硬質石炭515gCO2/kWhであると示している。また、電力を使用する直接電気暖房やヒートポンプと比較した場合、原子力による地域暖房は、スウェーデンやフランスなど、クリーンな電力ミックスを持つ国のヒートポンプによる暖房と同等のCFPになるという。その一方、化石燃料による電力生産の割合が大きいポーランド、チェコ、ドイツ、エストニアにおいては、直接電気暖房やヒートポンプは各段に大きなCFPとなり、暖房に電力を使用するのは悪い選択であると指摘する。さらに、原子力による地域暖房と従来の暖房燃料の環境への悪影響を12の異なるカテゴリーで分析。原子力による地域暖房による環境影響はほとんどのカテゴリーで、平均を大きく下回る。ウラン採掘と粉砕が環境に悪影響を及ぼすとしても、熱生産量当たりの全体的な影響は代替燃料と比較して小さいという。これらの結果を受けVTTは、地域暖房では、化石燃料から原子力へのリプレースによりCO2排出を著しく削減でき、原子力による地域暖房はバイオ燃料やヒートポンプと並んで実行可能な選択肢であると結論づけている。なお、ステディ・エナジー社がこのほど公表した意識調査結果によると、フィンランドの自治体首長の多くはSMRの建設に極めて前向きで、大都市の自治体首長の86%がSMRを支持しており、反対はわずか11%だった。
17 Jul 2024
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米国のドミニオン・エナジー社(以下、ドミニオン社)は7月10日、バージニア州で所有、運転するノースアナ原子力発電所(PWR、100万kW級×2基)での小型モジュール炉(SMR)導入の実現可能性を評価するため、SMR開発企業を対象に「提案依頼書(RFP)」を発行した。RFPは、同サイトでのSMR建設を確約するものではないが、将来的なエネルギー需要を見据えた対応だという。バージニア州のG.ヤンキン知事は、将来の電力需要を満たすために、信頼性の高い、手頃でクリーンなエネルギーを利用できる技術を模索することが不可欠であるとした上で、「SMRによって、バージニア州は原子力イノベーションのハブとなる」と強調した。 ドミニオン社は今秋にも、バージニア州の規制当局である州企業委員会(SCC)に対して、SMR開発コストの回収ができるよう申請する考えだ。バージニア州議会は今年初め、SMR開発のコスト回収に関する超党派の法案を可決しており、ヤンキン知事が7月10日、同法案への署名を行った。同法はコスト回収額に上限を設けているが、ドミニオン社の見積りでは、申請額はこの上限を大幅に下回るという。バージニア州経済開発機構(VEDP)によると、バージニア州には米マイクロソフト社、米アマゾン・ウェブ・サービス社をはじめ、世界の巨大データセンターのうち、約35%にあたる約150施設が立地しているという。そのため、電力需要に対する関心は高く、2022年にはヤンキン知事がエネルギー計画を発表し、原子力イノベーションのハブを目指すことを明らかにしていた。 なお、ドミニオン社はノースアナ発電所以外に、バージニア州内にサリー原子力発電所(PWR、89.0万kW×2基)を所有、運転しており、2021年5月には80年運転の認可を取得したため、1号機が2052年5月まで、2号機が2053年1月までそれぞれ運転継続することが可能。一方のノースアナも80年運転をめざし、現在2回目の運転期間延長の審査が米原子力規制委員会(NRC)により進められている。
17 Jul 2024
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ルーマニアの国営原子力発電会社であるニュークリアエレクトリカ(SNN)は7月2日、欧州委員会(EC)が、同社のチェルナボーダ原子力発電所3、4号機(カナダ型加圧重水炉=CANDU 6、各70万kW)建設プロジェクトを承認したことを明らかにした。欧州原子力共同体(ユーラトム)条約は、原子力プロジェクト実施者に対し、原子力安全基準を遵守していることを証明するよう求めている。今回ECのエネルギー総局は、同プロジェクトが技術面および原子力安全面において、欧州原子力共同体(ユーラトム)条約の目的に沿っていると評価した。3、4号機の建設プロジェクトについては、SNNが全額出資するプロジェクト企業のエネルゴニュークリア(EN)社が、2023年5月にECに通知。ECは、ルーマニア側から提供された情報を入念に分析し、チェルナボーダ発電所の現場視察、および13か月にわたる協議を実施していた。ルーマニアではチェルナボーダ発電所1、2号機(CANDU 6、70万kW級)が稼働しており、総発電電力量の約20%を賄っている。3、4号機が完成すれば原子力シェアは36%に上昇する見込みで、全4基の稼働により、同国のエネルギー安全保障の強化や自給率の向上を達成する方針だ。3、4号機は1983年に着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊により、進捗率がそれぞれ15%と14%のまま建設工事が中断した。総工費は約70億ユーロ(約1.2兆円)。2023年3月には、3、4号機建設に対するルーマニア政府による融資保証や差金決済取引(CfD)メカニズムの実施など、ファイナンス面を含めた国家支援を承認する法律が採択された。これにより、SNNが3段階で進めている建設プロジェクトは現在、第2段階(準備作業期間、最大30か月)に入り、プロジェクトの実行可能性を再評価している。最終投資判断(FID)後、第3段階(建設期間)に入る。SNNは、3号機の運転を2030年に、4号機は翌2031年に営業運転開始を予定しており、全4基の稼働により、年間2,000万トンのCO2排出の削減と、19,000人以上の雇用創出が期待されている。
16 Jul 2024
1008
欧州連合(EU)は6月24日、ハンガリーのパクシュ原子力発電所Ⅱプロジェクトをロシアに対する第14次制裁パッケージから完全に除外した。ロシアのウクライナ侵略に対する対抗措置として、EUはロシアに対して大規模な制裁を科している。ハンガリーのパクシュ原子力発電所Ⅱプロジェクト(5、6号機を増設。出力120万kWのロシア型PWR=VVER-1200を採用)では、サイト準備作業が進行中だが、ハンガリーのP.シーヤールトー外務貿易相は、同プロジェクトが制裁パッケージからに除外されたことで、「欧州企業はパクシュⅡプロジェクトへの参加にあたり、加盟国当局に許可を申請する必要はなく、EUは同プロジェクトへの欧州企業の参加を阻止することもない。増設作業は加速するだろう」との見方を示した。そして、ドイツ、フランス、オーストリアなど多くの西側企業がパクシュⅡプロジェクトに参加しているが、投資面では、ロシアとウクライナの戦争前の状況に戻りつつあると強調した。これまでEU企業は、特定の製品やサービスについて、供給前に当該国の管轄当局に制裁除外の認可を申請しなければならなかったが、制裁から除外されたことにより、手続きは当局への通知のみで完了する。
16 Jul 2024
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イタリア政府は7月1日、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)の最終文書を提出した。同国が原子力発電計画の再開を決定した場合の原子力発電規模のシナリオを示している。NECPは、EU加盟国が脱炭素化やエネルギー効率、再生可能エネルギーなどの実施計画を含む、気候変動目標と行動を詳述した文書。当初は2030年までの温室効果ガス(GHG)排出削減目標40%削減(1990年比)に合わせたものであったが、2019年にECが2050年までの気候中立の実現を目指す「欧州グリーン・ディール」を発表、2030年の削減目標を55%に引き上げたことから、2019年に提出したNECPの改定が求められていた。イタリアでは、再生可能エネルギーが国家エネルギー政策において主導的な役割を果たしている。石炭発電からの脱却を進め、再生可能エネルギーのシェアを拡大、残りを天然ガスとする電力ミックスを推進しながら、エネルギー源の輸入削減をしていく方針である。NECPでは再生可能エネルギーの設備容量を2022年の6,100万kWから、2030年までに1.31億kW(太陽光7,920万kW、風力2,810万kW、水力1,940万kW、バイオ燃料320万kW、地熱100万kW)にする必要性を改めて強調。再生可能エネルギーの最終エネルギー消費量に占める割合を2022年の19.2%から2030年には39.4%に、最終電力消費量については、2022年の37.1%から2030年には63.4%とする計画だ。なお、電力部門は、電化や水素製造などで大量の電力を必要とし、2050年の気候中立目標を達成する上で重要な役割を果たすことから、天候の影響を受ける再生可能エネルギーを補完するものとして、原子力発電を含めた場合のエネルギーおよび経済的利便性に関する仮説のシナリオを策定している。それによると、2035年から導入する原子力(小型モジュール炉=SMR、先進モジュール炉=AMR、マイクロ炉)と核融合の発電規模は2050年までに約800万kW(原子力760万kW、核融合40万kW)となり、国内の総電力需要の約11%を供給し、さらに最大22%(1,600万kWe)に達する可能性もあると予測。また、原子力を利用すれば、原子力を利用しない場合と比較して、約170億ユーロ(約2.94兆円)を節約でき、気候中立の目標を達成できると推定。関連する国内法の必要な改正が可能であれば、原子力発電の再開が重要な役割を果たす可能性があると指摘する。イタリアでは1960年初頭から4サイトで合計4基の原子力発電所が稼働していたが、チョルノービリ原子力発電所事故後の1987年、国民投票によって既存の全発電所の閉鎖と新規建設の凍結を決定。最後に稼働していたカオルソ(BWR、88.2万kWe)とトリノ・ベルチェレッセ(PWR、27万kWe)の両発電所が1990年に閉鎖し、脱原子力を完了した。2009年になると、EU内で3番目に高い電気料金や世界最大規模の化石燃料輸入率に対処するため、原子力復活法案が議会で可決している。しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、同じ年の世論調査では国民の9割以上が脱原子力を支持。当時のS.ベルルスコーニ首相は、政権期間内に原子力復活への道を拓くという公約の実行を断念した。しかし、近年は世界的なエネルギー危機にともない、イタリアのエネルギー情勢も変化。2021年6月に実施された世論調査では、イタリア人の1/3が国内での原子力利用の再考に賛成しており、回答者の半数以上が新しい先進的な原子炉の将来的な利用を排除しないと述べている。2023年5月、議会下院は、国のエネルギーミックスに原子力を組み込むことを検討するよう政府に促す動議を可決。9月には、環境・エネルギー安全保障省が主催する「持続可能な原子力発電に向けた国家政策(PNNS)会議」の第一回会合が開催され、近い将来にイタリアで原子力発電を復活させる可能性が議論されている。(既報)
12 Jul 2024
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インドのN.モディ首相はロシア公式訪問時の7月9日、ロシアのV.プーチン大統領とともに、モスクワにある原子力パビリオンを訪問し、両国の新たな原子力協力の可能性を協議した。両首脳は、全ロシア博覧センター(VDNKh)内にある、パビリオン“ATOM”を訪問。ロシア国営原子力企業ロスアトムのA.リハチョフ総裁が案内役を務めた。「現代の原子力産業」をテーマとする展示コーナーにて、ロシアの原子力技術を利用した海水淡水化、種子や食品の品質向上のための放射線照射、北極海航路によるインドからヨーロッパやロシアへの貨物輸送、浮揚式原子力発電所などを紹介し、両国の新たな協力可能性について協議した。また、同パビリオンでは、ロシアが手掛けるインドのクダンクラム原子力発電所(1、2号機が稼働中。3~6号機が建設中)の建設や原子力人材育成、インドの月探査計画と医療用のアイソトープ(RI)供給に関するビデオが上映された。両首脳会談後に発表された、共同声明「強固で拡大するパートナーシップ」では、原子力の平和利用分野における協力を、戦略的パートナーシップの不可欠な構成要素であると明記。現在建設中のクダンクラム原子力発電所3~6号機(ロシア製PWR=VVER-1000、各100万kWe)の機器引き渡しの時期を含む既存のスケジュール遵守の合意に言及するほか、以前の合意文書に従い、インド国内にロシアが建設協力する2番目となる原子力発電所の新たなサイトの設置について更なる議論の必要性を強調した。さらに、VVER-1200(120万kWe)の建設プロジェクトの実施、機器製造の現地化、発電所部品の共同生産や、第三国における協業などに関する技術協議の継続を確認している。その他、核燃料サイクルの分野や原子力技術の非エネルギー利用における協力強化を掲げた。なお、2002年に始まった、クダンクラム原子力発電所の建設は、両国の技術・エネルギー協力の旗艦プロジェクトとして位置付けられ、同1、2号機はそれぞれ2014年、2017年に営業運転を開始している。今後、同3~6号機の運転開始により、発電所が所在する人口7,200万人のタミル・ナードゥ州の電力需要の50%を供給し、隣接する州(合計人口約1億人)の電力需要の約1/3を供給するという。また、ロスアトムによるバングラデシュ初の原子力発電所「ルプール」(VVER-1200×2基)の建設プロジェクトにおいて、インドの企業が全ての冷却塔やポンプステーションを建設するなど、両国の協力は第三国でも実施されている。新たな協力分野もすでに両国間で議論されており、インドの新サイトにおけるVVER-1200の計6基の建設や、小型の原子力発電所(浮揚式原子力発電所)の建設、閉じた燃料サイクルの分野での協力を有望視している。また、両国は、原子力技術の非エネルギー応用分野、特に腫瘍及び心臓病の診断、また治療に使用されるRI製品の供給分野における協力拡大にも関心を寄せている。さらに、ロシアのエネルギー資源(石油・石炭・LNG)をロシア北西部の港から北極海航路を経由し、ロシア極東の港で積替え、インドの港まで輸送する可能性について両国間で協議が進行中であるという。なお、インドのJ.シン原子力担当国務大臣は6月25日、インド原子力省(DAE)の行動計画の見直しを行うハイレベル会合にて、「2029年までに現在の748万kWの原子力発電設備容量を、約70%拡大させ1,308万kWとし、そのために7基を増設する」と発言。その一方で、同大臣は、エネルギー安全保障、健康と食料安全保障とともに、放射性医薬品と核医学、農業、食料保存にも焦点を当てるべきとし、一般市民の経済的・社会的利益や生活の利便性を促進する放射線技術の発展の必要性も強調した。
11 Jul 2024
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韓国の国立木浦大学校は7月2日、同校の付属研究機関として世界初の小型モジュール炉(SMR)船舶研究所を開所した。同研究所では今後、SMR搭載船舶の開発と商業化のほか、同船舶の専門家を育成するための教育プログラムの開発と運営にも取り組む計画だ。 開所式には、韓国水力・原子力会社(KHNP)、サムスン重工業(SHI)などの原子力・造船関係企業、米国船級協会(ABS)、ロイド船級協会(LR)などの国際船級協会、地方自治体、企業や団体の関係者100名以上が出席。同校のS. ハチョル学長は、「SMR搭載船舶が、将来の海洋産業の中核を担う技術として注目を集めている」と述べ、その要望に積極的に応えるため、今回の研究所設立に至ったと説明。そのうえで、同学長は「今後は国内外の大学、研究機関、造船会社、船級協会などと協力し、ネットワークを構築して、総力をあげて研究を進める」と意気込みを語った。国連の専門機関である国際海事機関(IMO)が2023年に採択した「2023 IMO GHG削減戦略」によると、国際海運からの温室効果ガス(GHG)排出量を2050年頃までに正味ゼロにすることが目標として掲げられている。海洋環境に対する規制が厳しくなるなか、先進的な新技術を搭載した次世代燃料船(ゼロエミッション船)の開発が求められており、SMRの技術が、今後の海事産業の技術的選択肢の一つとして注目されている。SMRをめぐっては、最近ではY.ソンニョル大統領が6月に慶州市でのSMRの産業ハブ創設計画を発表したほか、韓国製SMR「i-SMR」の国内外の展開をめざして産官学が連携して開発を進めるなど、SMR開発を積極的に推進している。また、原子力の船舶利用については、サムスン重工業が、デンマークのシーボーグ社製コンパクト熔融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮体式原子力発電所の概念設計に協力している。日本では、IMOのGHG削減戦略に対応するため、大手造船会社と日本海事協会が「一般財団法人次世代環境船舶開発センター」を2020年に設立し、ゼロエミッション船や低・ゼロ炭素燃料などの研究を行っている。なお、2023年5月、浮体式原子力発電所プロジェクトを手掛ける英国のコアパワー社に対し、日本の今治造船(愛媛県今治市)や尾道造船(兵庫県神戸市)など13社が出資したことが明らかになっている。
11 Jul 2024
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カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は6月28日、「サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」による初の社債を発行した。今回の起債による調達資金で、新規原子力発電プロジェクトなど、広範なクリーンエネルギープロジェクトに充当する。社債の発行額は10億加ドル(約1,185億円)。OPG社によるこれまでの発行額は子会社を含めると、30億加ドル(約3,554億円)以上となり、カナダ最大。6月25日に公表された新たな社債枠組みの「サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」は、世界的な原子力の役割の再評価により、既存の原子力施設の保守や改修に向けた資金調達を初導入した、2021年策定のグリーンボンド・フレームワークに代わるもの。この新たな社債枠組みは、原子力の新設なども対象とした、より広範なクリーンエネルギープロジェクトへの資金提供だけでなく、先住民のコミュニティや企業が、調達、トレーニング、教育、雇用を通じて、OPG社のプロジェクトなどに参加する機会の創出も目的としている。「サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」には、以下のエネルギー関連のプロジェクトなどが対象に含まれる。既存の原子力施設の保守や改修に加え、SMR(小型モジュール炉)や大型原子力発電所などの新たな原子力プロジェクト水力発電の改修、太陽光、風力、水素製造などの再生可能エネルギープロジェクトエネルギー貯蔵やクリーン燃料貯蔵などのエネルギー効率向上と管理ゼロエミッション車などのクリーン輸送の促進洪水や異常気象に対する気候適応能力とレジリエンス(回復力)の開発OPG社のA.シポラ最高財務責任者は、「この新たな社債枠組みは、クリーンエネルギーへの移行を実現するための重要な一歩。これらの目標を資金調達に統合し、電力、アイデア、人材を原動力として持続可能な未来を構築するという当社のコミットメントを果たしていく」と強調した。OPG社は、ダーリントン新・原子力プロジェクトサイトで、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」(電気出力30万kW)の計4基の建設を計画し、現在、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同社による初号機の建設許可申請を審査中(既報)。なお、OPG社が所有・運転する、ダーリントン発電所1~4号機(CANDU、各93.4万kWe)では、128億加ドル(約1.5兆円)の改修プロジェクトが半分以上を終えており、2026年末までに完了予定。ピッカリング発電所(B)5~8号機(CANDU、各54万kWe)では、オンタリオ州政府の支援を得て、改修プロジェクトの準備作業が開始されており、2030年代半ばまでに完了予定だ(既報)。
10 Jul 2024
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