米原子力規制委員会(NRC)が今月4日付けで発表していたとおり、同委のK.スビニッキ委員長が任期途中の1月20日に退任しNRCを辞した。スビニッキ氏は2007年、当時のG.W.ブッシュ大統領の指名を受けてNRC委員に就任しており、その後のB.オバマ政権、D.トランプ政権を通じて5年任期の3期目を務めていた。2017年1月には、就任直後のトランプ大統領から委員長に任命されている。NRCにおける同氏の在籍期間は歴代委員としては最長となったが、2022年6月の任期満了を待たずに退任した理由、およびその後の計画等については明らかにしていない。NRCでは委員5名のうち同一政党の支持派は3名までと原子力法で規定されており、スビニッキ氏はA.カプト委員、D.ライト委員とともに共和党支持派だった。J.バラン委員とC.ハンソン委員が民主党支持であるため、スビニッキ氏の退任で空席となった残り1名はJ.バイデン大統領が民主党あるいは中立派から指名すると見られている。新たにNRC委員に指名された候補者は通常、議会上院の承認を経て就任するが、大統領が在籍中の委員の中から委員長を任命した場合、議会の承認を得ることなく直ちに委員長職に就くことになる。 スビニッキ氏はミシガン大学で原子力工学の学位を取得したエンジニアで、米原子力学会(ANS)にも長期にわたって所属。議会上院では国家安全保障や科学技術、環境・エネルギー関係の幅広い政策、イニシアチブを推進するアドバイザーとして10年以上務めたほか、上院・常設委員会の1つである軍事委員会でも専門職員を務めた。また、エネルギー省(DOE)においては、ワシントンDCの「原子力・科学技術および民生用放射性廃棄物管理事務所」、アイダホ州の運営事務所などで務めた経験を持っている。(参照資料:NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
22 Jan 2021
1961
英国政府は1月20日、原子力施設における廃止措置の自動化や核融合研究に革新的なロボット工学・自律システム(RAS)技術の適用促進で、日本とロボット工学分野の研究・技術開発協力を実施すると発表した。腕の長いロボットアームなどを活用して、英国セラフィールド原子力複合施設の閉鎖済み設備や福島第一原子力発電所の廃止措置を一層迅速かつ安全に遂行する。このプロジェクトは「LongOps」と呼称されており、4年計画で1,200万ポンド(約17億円)を投じる予定。この資金は英国の「原子力廃止措置機構(NDA)」と政府外公共機関の「研究・イノベーション機構(UKRI)」、および東京電力が均等に負担し、英国原子力公社(UKAEA)がカラム科学センター内で運営する「リモート処理・ロボット試験施設(RACE)」を使って進めていく。同プロジェクトにより、世界規模で発展する可能性を秘めた新しい革新的なロボット技術を創出する。同プロジェクトはまた、日英両国における科学・エンジニアリング能力を向上させるとともに、核融合に関連する技術の開発を促進、雇用を生み出す直接的な効果もある。英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は2015年3月、国内のRAS分野の発展支援を表明したが、これは2014年7月に専門家グループが政府に提言した「RAS分野の成長戦略(RAS 2020)」に賛意を示したもの。BEISはその際、同技術の有望な活用先として原子力を含む5つの部門を指摘していた。これを受け、英国政府が2014年以降、RASプロジェクトに投じている約4億5,000万ポンド(約637億円)の一部がLongOpsにも活用される。発表によると、閉鎖された原子力施設や核融合施設の廃止措置は非常に複雑な大規模プロジェクトであり、安全に実施するには非常に多くの時間を要する。こうしたプロジェクトにロボット工学やデジタル・ツイン技術(仮想空間に物理空間の環境を再現し、様々なシミュレーションを通じて将来予測を行う技術)を活用することは、効率性や作業員の健康リスク低減などで非常に有効である。また、LongOpsの主な特徴は、洗練されたデジタル・ツイン技術を駆使してデータを詳細に分析し、施設の運転管理における潜在的な課題を予測すること。デジタル・ツイン技術によって、作業の合理化や生産性の改善を図り、現場で実施する前に仮想世界で試験を行うことができる。さらに、LongOpsで開発する技術は、カラム科学センターに設置されている「欧州トーラス共同研究施設(JET)」などの核融合実験施設の運転終了後、設備の維持や解体等に適用が可能である。今回の日英協力について、A.ソロウェイ科学・研究・イノベーション大臣は、「原子力に内在する素晴らしい潜在能力を解き放つには、国際的なパートナーと手を携えて協力することが大切だ」とコメント。無限のクリーンエネルギーを生む可能性がある核融合研究を支援しつつ、原子力施設の安全な廃止措置を実行していくと強調している。参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Jan 2021
4157
カナダで使用済燃料の深地層処分場建設計画を進めている核燃料廃棄物管理機関(NWMO)はこのほど、最終候補となった2地点のうち、オンタリオ州南部のサウスブルース地域で今春から開始を予定している試験孔の掘削と試験実施の準備が大幅に進展したと発表した。1本目の試験孔の掘削場所と、現地に入る交通アクセスの整備が同地域のティーズウォーター北東部で完了したもので、NWMOは2本目の掘削準備についてもまもなく完了すると説明。試験孔を通じて候補地の潜在的な適性を評価した後はさらに詳細な評価を実施し、使用済燃料の安全かつ長期的な処分に適するとともに、処分場の受け入れにも協力的な好ましい1地点を2023年までに最終決定する方針である。NWMOは、使用済燃料を再処理せずに直接処分する同処分場のサイト選定プロセスを2010年に開始しており、施設の受け入れに関心を表明したカナダ国内の22地点をオンタリオ州内の2地点まで絞り込んだ。サウスブルース地域ともう一方の候補地である同州北西部のイグナス地域では、サイト選定プロセスの第3段階としてNWMOが「(処分場としての)適性の予備評価」を実施中。この段階ではどちらも第1フェーズ(机上調査)の作業が終了し、第2フェーズの現地調査を行っている。発表によると、試験孔の掘削スケジュールはサウスブルース地域の適性を一層詳しく理解する上で必要な重要情報の収集に配慮。これと同時に、現地の地方自治体や先住民コミュニティとの交流や協議にも十分な時間を確保している。NWMOはまた、合計2本の試験孔掘削に向けて数多くの準備活動を実施しており、例として考古学や地形学関係の調査、現地先住民の文化や儀式に関する調査、掘削にともなう騒音や放出物の事前調査、源泉からの試料採取などを挙げた。 これらのほかにもNWMOは、候補地の地主らと対話を図り、主要な井戸水の水質試験実施や3D地震探査用のデータ入手などで協力を要請。地震探査データは地表岩盤層のイメージ作成や、断層の有無などを評価するのに用いるとしている。なお、2本目の試験孔掘削予定地については、今年の作業としてNWMOは水質をさらに詳細に調査するため、域内に微小地震モニタリング・ステーションや浅地中地下水のモニタリング井戸を設置する計画である。(参照資料:NWMOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Jan 2021
2695
英国で洋上風力発電などのクリーン・エネルギー事業を展開するシアウォーター・エナジー社は1月12日、風力発電と小型モジュール炉(SMR)を組み合わせたハイブリッド・エネルギー・プロジェクトをウェールズで進めていくため、米国のニュースケール・パワー社と協力すると発表した。同社はすでに、このプロジェクトの概要を英国政府のほかウェールズ、北アイルランド、スコットランドの各政府にもオンラインで提案。同社によれば、いずれの政府もこのプロジェクトから経済面で多くの恩恵を得ることができる。このプロジェクトでシアウォーター社は、米国のSMR商業化レースで先頭に立つニュースケール社のSMRを選択した。ニュースケール社のSMRは負荷追従運転にも対応するベースロード用エネルギー源であり、このプロジェクトのためにクリーンなエネルギーの生産が可能。シアウォーター社は今回、ニュースケール社と了解覚書を締結しており、プロジェクトの詳細調査などで両社間の協力を強化する。早ければ2027年にもウェールズ北部のアングルシー島ウィルファで、無炭素なクリーン電力の出力300万kW、CO2を排出しない「グリーン水素」の生産量が年間3000トン以上という風力・SMR複合発電所の運転を開始する。発表によると、今回の覚書で両社は双方の技術を統合し、電力と水素を複合生産する可能性を探る。近年、再生可能エネルギーが世界中で成長しているが、両社の協力は適用性が一層柔軟で信頼性の高い低炭素電源が求められていることを示している。ニュースケール社はプロジェクトに適合したSMRのエンジニアリングや計画立案、許認可手続でシアウォーター社に協力するほか、数多くの英国企業をプロジェクトに参加させる方策を同社とともに模索。ニュースケール社が英国のサプライチェーンを評価した結果、SMRで使用する資機材の75%以上が英国内で調達可能だと結論付けている。シアウォーター社のS.フォースターCEOは今回のプロジェクトについて、「複数の低炭素発電技術を組み合わせれば、高額のコストや長期の建設工事、環境への影響なしで大型火力発電所と同等の性能を得ることができる」と指摘。風力・SMR複合発電所が完成すれば、従来の原子力発電所を建設するコストのほんの一部分で出力300万kWの無炭素電力が得られるほか、グリーン水素の生産により輸送部門を低炭素燃料に移行させるための支援が可能になるとした。同社はまた、英国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成できるよう、2030年までに洋上風力発電の設備を速やかに拡大するとともに、SMRにも投資すると政府が発表した事実に言及。これらを考慮すると、同社とニュースケール社の風力・SMR複合発電所は、送電網の安定性問題や再生可能エネルギーの間欠性問題にも打ち勝つことができるとした。さらに、この複合発電所が生産するグリーン水素によって、様々な産業の脱炭素化とエネルギー供給保証の価格適性化の達成を後押しすることも可能だとしている。(参照資料:シアウォーター・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Jan 2021
3598
米国の貿易開発庁(USTDA)は1月14日、オレゴン州のニュースケール・パワー社が開発した小型モジュール炉(SMR)をルーマニアで建設するための技術支援金として、ルーマニア国営の原子力発電会社(SNN)に対し約128万ドルを交付したと発表した。返金不要の同支援金を通じて、SNN社は国内唯一の原子力発電設備であるチェルナボーダ発電所(70万kW級加圧重水炉×2基)とは別に、SMR建設に適したサイトを新たに選定するための予備的評価作業を実施する。SMRはまた、2035年以降のエネルギー生産や関係事業に利益をもたらす可能性があるため、SMRの許認可手続に関するロードマップも作成する方針である。ルーマニアの2020年のエネルギー戦略プロジェクトによると、SMRを採用することにより同国では2035年以降、CO2を排出しないエネルギー源や水素生産源を拡大することが可能になる。このためSNN社は、適切な時期にSMR建設サイトの評価を開始する方針であり、ニュースケール社とはすでに2019年3月、同社製SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の建設可能性を探る目的で了解覚書を締結。SMRの革新的な技術や関係ビジネスの情報を入手して、この目標の達成に向けた評価を実施するとしている。USTDAのT.アブラジャノ最高執行責任者(COO)兼代表によると、将来のエネルギー需要を満たすために最新鋭の民生用原子力技術を欲するルーマニアにとって、USTDAは理想的なパートナー。その上で同COOは、「今回の支援で両国の原子力産業間に強固な連帯が築かれ、米国の原子力産業界にとっては重要市場で新たな事業チャンスが生み出される」と述べた。また、USTDAはルーマニアのエネルギー戦略にSMRを導入する手助けをすることになり、SNN社がすでにサイト選定やサイト固有の許認可ロードマップ作りで具体的な支援が得られるよう、イリノイ州のサージェント&ランディ社を選択したことを明らかにした。一方、SNN社のC.ギタCEOは、「チェルナボーダ発電所で現在、3、4号機の増設計画を進めているのに加え、当社は国内原子力産業界のさらなる発展に向けた長期的対策として、SMRの建設・評価に高い関心を抱いている」と述べた。同CEOはSMRの特徴であるモジュール方式や運転の柔軟性、発電効率の高さが、ルーマニアにおける2035年以降のエネルギー・システムや関係事業を有利に導くかもしれないと指摘。USTDからの支援に適合するSMR技術について建設サイトを選定し、最終決定につなげられるよう評価作業を始めたいとしている。なお、ニュースケール社のNPMは昨年9月、米原子力規制委員会(NRC)が実施中の設計認証(DC)審査において「標準設計承認(SDA)」を取得。2029年に同SMRで最初のモジュールの運転を開始するため、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)はアイダホ国立研究所敷地内で建設計画を進めている。このほか、カナダやヨルダン、チェコ、ウクライナが国内でNPMの建設を検討中。それぞれの国の担当機関が、実行可能性調査を実施するための了解覚書をニュースケール社との間で結んでいる。(参照資料:USTDAとSNN社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Jan 2021
2864
英国の環境庁(EA)は1月11日、中国製の第3世代PWR設計「UK-HPR1000(英国仕様の「華龍一号」)」に関する包括的設計審査(GDA)で予備的結論をとりまとめ、4月4日までの期間パブリック・コメントに付すと発表した。GDA審査でEAは当該設計を英国内で建設した場合の環境影響評価を担当しており、UK-HPR1000については初期的評価に続いて詳細評価を実施しているところ。今回の発表では予備的結論として、「これまでに審査した環境影響の多くは受け入れ可能と判断した」ものの、「規制上、課題となり得る項目が6件残っており、UK-HPR1000設計を全面的に承認する前に解決しなければならない。また、UK-HPR1000の運転事業者が将来取り組まねばならない事項も40ほどある」としている。GDAは英国内で初めて採用・建設される原子炉設計について行われる事前の認証審査で、土木建築工学から原子炉科学まで17の技術分野にわたる。設計の安全性については原子力規制庁(ONR)が審査する一方、環境影響面についてはEAが評価を実施。対象設計が安全・セキュリティと環境保全、および放射性廃棄物管理の面で英国の基準を満たしているかを判断する。最終的にONRが設計承認確認書(DAC)を、EAが設計承認声明書(SoDAC)を発給するまで約5年を要する。中国広核集団有限公司(CGN)などの中国企業が開発した「UK-HPR1000」は、EDFエナジー社が2015年10月にヒンクリーポイントCとサイズウェルCの両原子力発電所の建設計画に対する投資約束をCGNから取り付けた際、エセックス州ブラッドウェルでEDFエナジー社が計画している後続プロジェクトに採用が決まった。このプロジェクトでは、旧型のマグノックス炉が2基稼働していたブラッドウェルA発電所(閉鎖済み)の隣接区域に、ブラッドウェルB発電所としてUK-HPR1000を2基建設する予定。同プロジェクトが建設段階に入った場合、CGNは66.5%を出資することになる。UK-HPR1000のGDAは2017年1月に準備段階の第1ステップが始まっており、この審査活動の管理会社としてEDFとCGNが設立した合弁企業「ジェネラル・ニュークリア・サービシズ(GNS)社」は、同年9月からEAとONRに関係文書の提出を開始。同年11月に第2ステップの審査が開始された。その後、GDAは2020年2月に最終段階の第4ステップに進展しており、EAは2022年初頭にも詳細評価を完了する方針。その際すべての課題が解決済みであれば、UK-HPR1000を全面的に受け入れ可能とする声明書を、未解決の課題が残った場合や新たな課題が浮上した際は暫定的に承認する声明書を発表するとしている。(参照資料:英国政府、環境庁の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Jan 2021
2872
任期満了まで残すところ約1週間となった米国のD.トランプ政権は1月12日、深宇宙の探査や国家防衛のために、極小原子炉など小型モジュール炉(SMR)技術のさらなる利用促進を目指した大統領令を発令した。大統領令は国内政府機関や職員に対して発せられる行政命令で、議会の承認を得ることなく行政権を直接行使することが可能である。トランプ政権は米国の国家安全保障にとって原子力技術は非常に重要と認識しており、今回の大統領令を通じて国内原子力部門の再活性化と拡大を図る方針。国防長官に対しては同令の発令後180日以内に、原子力規制委員会(NRC)の認可を受けた極小原子炉を国内遠隔地の軍事施設に設置した際のコスト効果や、エネルギー源の柔軟な活用がもたらす効果の実証プランを作成・実行するよう指示した。また、国防総省が1日に消費する燃料は1,000万ガロン以上、民生用電力網から使用する年間の電力消費量も300億kWhに及ぶことから、トランプ政権は先進的原子炉が国防に立つかについては国防長官が判定し、輸送可能な極小原子炉の試用も行うとした。宇宙動力炉の軍事利用や敵対国における利用プログラムについても、同長官が分析を指示すべきだとしている。同政権はさらに、米航空宇宙局(NASA)長官に対しても180日以内に、2040年までのロボット探査や人的探査ミッションに原子力システムを利用する際の要件を特定し、利用にともなう同システムのコストや利点を分析するよう指示した。このほか同政権は、国内の原子燃料サプライチェーンが安全かつ安定的に成長するは、米国の国益にとって重要だと指摘。今後の発展が期待できる燃料サプライチェーンは、国家の安全保障・防衛活動を支えるとともに民生用原子力産業界の発展を保証するとした。ところが、先進的原子炉概念の多くがHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用することから、同政権は国内に商業用のHALEU生産設備が存在しない米国では国産のHALEU燃料確保で対策を講じなければならないと述べた。こうした観点からトランプ政権は、軍用の先進的原子炉で使用するHALEU燃料の生産能力を実証するため、1億1,500万ドルの予算で現在進行中の3年計画を完了させるようエネルギー省(DOE)長官に指示。同計画の予算の範囲内で、HALEU燃料生産技術を成功裏に民間部門の商業利用に移転させるプランを策定するよう促している。これらを踏まえて同政権は、今回の大統領令の中で国務長官、国防長官、商務長官、エネルギー長官、およびNASA長官に対し、2030年までを見据えた共通技術開発ロードマップの作成を指示した。ここでは、開発が望ましい技術を明記するほか、地上設置用の先進的原子炉と宇宙探査用の原子力推進システム等の開発について可能な限り省庁間の調整を行うとしている。なお、大統領令の発令に至るまでの経緯として、トランプ政権は発足した2017年に原子力部門の再生イニシアチブを開始したほか、原子力政策の包括的見直しを指示したと説明。2019年7月に「ウランの輸入が国家安全保障に及ぼす影響と国家原子燃料作業グループの設置」と題する大統領覚書に書名した後、同年8月には宇宙探査を促進するため、宇宙探査機に搭載する原子力発電システムの開発・利用を呼びかける大統領覚書を発出したことも指摘している。また、今回の大統領令は、国内原子力部門の再生と米国の宇宙開発プログラムの再活性化、および国防上必要とされる多様なエネルギー・オプションの開発を目指して、重要な追加施策を取ることが目的だと説明。同令により、米国政府はSMRを国防や宇宙探査に利用することも含め、米国の技術が世界でも優位となるよう原子力の利点を効果的に適用する活動を調整。これにより、トランプ政権が最優先事項とする「研究開発や発明、また先進技術の革新における米国の主導」、およびそれに基づいて米国の国家安全保障ミッションを推し進める上で重要であると表明。また、米国による「エネルギー支配」の原動力としても、最も厳しいレベルの核不拡散に留意しながらこれらの目標をすべて達成する上でも重要だと指摘している。(参照資料:ホワイトハウスの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)。
14 Jan 2021
3686
米国のニュースケール・パワー社は1月11日、アイダホ国立研究所(INL)敷地内で同社製小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)から、建設・運転一括認可(COL)の申請準備を行うよう指示されたと発表した。西部6州の電気事業者48社で構成されるUAMPSは、SMR建設を柱とする独自の「無炭素電力プロジェクト(CFPP)」を2015年から進めており、同プロジェクトの管理と開発リスク回避のためにニュースケール社と最近締結した協定を、今回実行に移したもの。UAMPSは2023年の第2四半期までにニュースケール社製SMRのCOLをNRCに申請し2025年の後半までにこれを取得、その直後からSMRの建設を開始したいとしている。 ニュースケール社が開発した「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」はPWRタイプの一体型SMR設計で、出力5万kWのモジュールを12基接続することにより最大で60万kWの出力を得ることができる。同設計が昨年8月、SMR設計としては初めて原子力規制委員会(NRC)の「標準設計承認(SDA)」を取得したのを受け、UAMPSはNMP初号機が生産するクリーンで安全かつコスト面の効率性も高い無炭素電力がUAMPS所属の電気事業者に提供されるよう、今回COLの申請準備を最初の指示としてニュースケール社に通達。同社、および同社の親会社で大手のエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約企業でもあるフルアー社は具体的な作業として、建設コストのさらに詳細な見積金額を算出するとともに、SMR建設の許認可手続と製造等で初期作業の計画を立案することになる。ニュースケール社のJ.ホプキンズ会長兼CEOは、「当社の画期的なSMR技術の商業化に向けて大きな一歩が刻まれた」とコメント。2022年頃にUAMPSからNPMの発注を受けられるよう、慎重に開発を進めていくと述べた。UAMPSのD.ハンターCEOも、「ニュースケール社のSMRを通じて価格の手頃な無炭素エネルギーをUAMPS所属の電気事業者に安定的に提供できる。我々の電力供給区域内で大規模な再生可能エネルギー源を開発し、SMRでその間欠性を補うことも可能だ」としている。今回の発表によると、ニュースケール社とUAMPSが結んだ協定には「実費精算契約」が含まれており、完成したSMRの所有・運転会社となるCFPP社(UAMPSの100%子会社)には、INLを所有するエネルギー省(DOE)から複数年にわたって合計13億5,500万ドルの支援金が支払われる。また、フルアー社もUAMPSと実費精算協定を締結しているため、フルアー社は建設地であるINLサイトに特化した設計・エンジニアリング・サービスの提供コストを見積もる方針。これに対してUAMPSは、CFPPに参加する電気事業者のニーズに合ったSMR発電所の規模(モジュールの連結数)や最適なエネルギー・コストを特定するため、評価作業を続ける考えである。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Jan 2021
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中国核能行業協会(CNEA)は2020年12月31日、中国広核集団公司(CGN)が浙江省の三澳原子力発電所1号機(100万kW級PWR)を同日に本格着工したと発表した。中国の輸出用主力設計である「華龍一号」を採用した、新たな原子炉の建設となる。浙江・三澳原子力発電所建設プロジェクトは、CGNが中心となって出資している計画で、CGNのほかに、浙能電力股分公司と温州市核能発展有限公司、蒼南県海西建設発展有限公司が出資参加。このほか吉利迈捷投資有限公司が、国内の原子力発電所建設計画としては初めて民間企業として2%出資する。同プロジェクトでは2007年にサイト調査が開始され、国家能源局は2015年5月、最終的に合計6基の「華龍一号」を建設する同プロジェクトの敷地取得・整備作業等の実施を承認。2020年9月になると、国務院の常務会議がⅠ期工事として1、2号機の建設を承認、同年12月30日付けで国家核安全局(NNSA)がこれら2基の建設許可を発給した。「華龍一号」はCGNと中国核工業集団公司(CNNC)双方の第3世代PWR設計「ACPR1000+」と「ACP1000」を一本化して開発され、主要技術と機器の知的財産権は中国が保有。中国国内ではこれまでに同設計の実証炉計画として、CNNCが福建省で福清5、6号機と漳州1、2号機、CGNが広西省・防城港3、4号機と広東省・太平嶺1、2号機の建設工事を進めてきた。このうち、福清5号機が2020年11月に「華龍一号」初号機として初めて、送電を開始した。また、国外ではすでに、パキスタンのカラチ原子力発電所で同設計を採用した2、3号機が建設中となっている。2020年12月31日に三澳1号機の原子炉系統部分に最初のコンクリートを打設した際、現地ではCGNや関係省庁の代表者に加えて、浙江省や温州市、蒼南県の幹部など400名以上が着工記念式に参加した。CGNの揚昌立会長は同発電所建設プロジェクトについて、「CGNグループ全体で30年以上にわたって培ってきた原子炉建設や「華龍一号」設計の建設経験を大いに活用する」と決意を表明した。揚会長によると、同発電所の建設は浙江省のクリーン・エネルギー生産比率を効率的に向上させるだけでなく、クリーン・エネルギー生産の実証という点で同省が中国で主導的立場を獲得することにも貢献。低炭素な近代的エネルギー供給システムが構築され、長江デルタ区域がクリーン・エネルギーの生産拠点となれば、国家レベルのエネルギー供給保証戦略の確立と温室効果ガスの排出量実質ゼロ化(気候中立)を目指す上で、非常に重要な意義を持つと強調している。(参照資料:中国核能行業協会の発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Jan 2021
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日立製作所が昨年9月に撤退表明した英国ウェールズ地方における新規原子力発電所建設プロジェクトについて、英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は昨年12月31日、日立の英国子会社からの要請により「開発合意書(DCO)」発給の可否判断期限をさらに繰り延べ、4月30日とする考えを明らかにした。DCOは、国家的重要度の高いインフラ設備の建設・操業プロジェクトに対し取得が義務付けられている主要認可。ウェールズ地方アングルシー島に英国版ABWRを2基建設するという「ウィルヴァ・ニューウィッド計画」については、デベロッパーで日立の100%子会社であるホライズン・ニュークリア・パワー社が2018年6月、審査の実施機関である計画審査庁(PI)にDCO申請書を提出した。PIは当該計画が英国政府の要件を満たしているか審査した上で、PIとしての見解をBEISに勧告し、最終的に、BEIS大臣がDCOの発給可否を判断することになっている。ホライズン社のD.ホーソーンCEOは、日立が撤退を表明した同じ9月に複数の書簡をBEIS宛てに送付し、判断期限の3か月延期を要請。BEIS大臣はこれを受け入れ、12月末まで先送りするとしていた。今回、ホーソーンCEOは昨年12月18日付けで再びBEISに書簡を送り、判断期限をさらに延期して今年3月末まで、あるいはBEIS大臣が適切と考える時期まで遅らせることを正式要請したもの。それによると、同社は前回の要請時と同様、ウィルヴァ・ニューウィッド計画に関心を持つ複数の第三者と協議を続けており、同計画の先行きは希望の持てる明るい見通しになりつつある。英国政府は昨年、2050年までに英国内の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロとするための重要施策「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」や「国家インフラ戦略」を公表したが、これらの政策のなかで新規の原子力発電所が果たす役割は明らかであり、短期間でも時間的猶予をさらに得て第三者との協議に明確な結論を出したいとしている。これに対し、BEISのA.シャルマ大臣は12月末日付けの回答書簡で、「あなたの要請を検討した結果、DCOの発給について判断する制定法上の期限を、4月30日に設定し直すことが適切と判断した」と表明。新たな期限を大臣声明として書面化し、2008年の計画法に従って出来るだけ早急に議会の上下両院に提示するとした。ただし、大臣としての最終判断を4月30日までに下すには十分な検討期間が必要なことから、その後の進展状況の最新情報は3月31日までに提供しなければならないと言明している。(参照資料:英国政府とホライズン社の書簡、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Jan 2021
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スウェーデンのバッテンフォール社は1月5日、南西部のヨーテボリ近郊に立地するリングハルス原子力発電所で45年近く稼働した1号機(90万kW級BWR)を、予定通り昨年12月31日付けで永久閉鎖したと発表した。同炉の閉鎖は2015年の株主総会で決定していたもので、同決定に従って2号機(90万kW級PWR)がすでに2019年末で閉鎖済み。同炉では今後廃止措置を行うことになっており、バッテンフォール社は近々、燃料の抜き取りと廃止措置の準備を開始する。本格的な解体作業は2022年後半に始まる予定で、2030年代まで続く見通しである。これら2基を当初予定の2025年より5年近く前倒しで閉鎖したことについて、バッテンフォール社のA.ボルグCEOは「経済性の観点から決めた正しい判断であり、将来使用する発電システムで旧式の技術を使うべきではない」とコメントした。その一方で同社は昨年11月、近隣のエストニアで新興エネルギー企業が進めている小型モジュール炉(SMR)導入計画に対し、協力を強化していくと決定。世界ではSMRへの期待がますます高まりつつあるとの認識の下、ボルグCEOは「SMRなどの新しい原子炉が建設されていくのを無視することはできないが、いかなるタイプの発電技術であれ、市場の関心を引くようなコスト面の競争力を持たなくてはならない」と強調した。リングハルス1号機は、2号機より約8か月遅れの1976年1月に営業運転を開始した。当初の出力は73万kWだったが、数年にわたる改善工事の結果、出力は最終的に90万kW台まで増強された。バッテンフォール社は2015年当時、2号機とともに同炉で2017年以降に改善・最新化作業を開始し2025年まで運転を継続する方針だったが、電力価格が低迷していたのに加えて、2014年に発足した政権の脱原子力政策により議会が原子力税の引き上げを決定。原子力発電所の採算性が悪化したことから、同社はスウェーデン国内で最も古いリングハルス1、2号機への投資プロジェクトを停止、早期閉鎖することに決めた。発表によると、1号機は2019年に過去最高の67億3,642万kWhを発電。運転開始以降の累計では、閉鎖されるまでに2,200億kWhの無炭素電力を供給し続けた。同量の電力を石炭火力や石油火力で発電した場合と比べると、CO2にして約2億トンの排出を抑えた計算になるとしている。なお、同社は1980年代に運転開始した同3、4号機(各110万kW級PWR)については、予定通り少なくとも60年間稼働させると述べた。これら2基では、約9億クローナ(約113億円)の投資を通じて独立の炉心冷却系が装備されており、天候に左右される再生可能エネルギー源の発電量を補いつつ、2基だけで国内の総発電量の約12%を賄っていると指摘した。(参照資料:バッテンフォール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2020年12月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Jan 2021
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は12月24日、極東連邦管区のサハ自治共和国内で2028年までにロシア初の陸上設置式・小型モジュール炉(SMR)の完成に向け、同SMRが発電する電力の料金について23日に同国政府と合意に達したと発表した。サハ共和国の北部、ウスチ・ヤンスク地区のウスチ・クイガ村でSMRを建設する計画は今のところ、両者が2019年9月に締結した意向協定の枠組内で進められている。今回の合意により、同共和国政府はロスアトム社の容量4万~5万kWのSMRからの電力購入と、SMR建設用地の確保支援を約束。モジュール方式のロスアトム社製SMRは工期が短く経済的で、高い安全性を維持しつつ少なくとも60年間稼働することから、ウスチ・ヤンスク地区では発電コストが約半分に削減されると同社は強調している。2020年初頭までにウスチ・ヤンスク地区では両者の意向協定の下で現地調査が完了し、現在は準備作業が行われている。ロスアトム社が建設するのは、同社傘下のOKBMアフリカントフ社が原子力砕氷船用に開発した「RITM-200」設計をベースとする(5万kW程度の)低出力SMR発電所。「RITM-200」は熱出力17.5万kWのコンパクトな軽水炉でこれまでに6基建設されたが、このうち2基は今年10月に正式就航した最新式の原子力砕氷船「アルクティカ」に搭載されている。ロスアトム社はまた、海上浮揚式原子力発電所用のSMRついても開発を進めている。出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」を2基装備した「アカデミック・ロモノソフ号」は、今年5月に極東チュクチ自治区内の湾岸都市ペベクで商業運転を開始した。こうした背景から、ロスアトム社のA.リハチョフ総裁は「新たな世代の陸上設置式SMR原子力発電所を、ロシア国内で初めて建設する重要な一歩が本日刻まれた」と表明。「この建設プロジェクトを実行に移すことで、世界のSMR市場におけるロシアの主導的立場はますます強化される」と述べた。また、「アカデミック・ロモノソフ号」が極東地域で商業運転を開始した事実に触れ、「北極圏の条件下で様々な試験をクリアした「RITM-200」を諸外国のパートナーに提案することは非常に重要だ」と説明。「このように近代的な技術は、現在ロシアのみが保有しており、ロシア国内のみならず世界中で低出力の原子力発電所がもたらす明るい未来が約束された」と強調した。同社はさらに、ウスチ・ヤンスク地区でサハ共和国初の原子力発電所が建設された場合、老朽化した石炭火力発電所やディーゼル発電所が閉鎖されるため、同地区のCO2排出量を年間1万トン削減できるとした。サハ共和国内の金山開発計画にもクリーンエネルギーを安定的に供給することが可能になり、発電所の建設期間だけで最大で800人分の雇用を創出。遠隔地域の住民と地下資源開発業者の両方に対し、信頼性の高い熱電供給を約束するとしている。(参照資料:ロスアトム社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
25 Dec 2020
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米エネルギー省(DOE)は12月22日、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」で2030年代半ばの商業化をめざすカテゴリーの支援対象として、ジェネラル・アトミックス(GA)社などが開発中の比較的初期段階の原子炉設計3件を選定したと発表した。ARDPはDOEが今年5月、原子力局(NE)を担当局として開始したもので、米国原子力産業界における先進的原子炉設計の実証を政府がコスト分担方式で支援する官民の連携プログラム。設計の成熟度に応じて、以下の3つの支援ルートが設定されている。①「先進的原子炉の実証」ルート:5~7年以内に2つの先進的原子炉設計が確実に稼働開始できるよう支援、②「将来的な実証に向けたリスク削減」ルート:2030年~2032年の商業化達成を目標に、5つの設計について技術面や運転面の課題を解決、③「2020年度予算支援の先進的原子炉概念(ARC 20)」ルート:2030年代半ばの商業化を目指して様々な革新的原子炉の概念設計開発を支援――である。①についてDOEは今年10月、テラパワー社の「ナトリウム冷却高速炉」と、X-エナジー社の小型ペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」を選定。②に関しては今月16日に、ウェスチングハウス(WH)社の極小原子炉「eVinci」やBWXTアドバンスド・テクノロジーズ社の「BWXT先進的原子炉」など、5つの先進的原子炉設計を支援対象に決定した。今回の支援は③の「ARC 20」に分類される設計が対象で、DOEは開発を進める3社に対し2020会計年度予算から2,000万ドルを支給。分担金の少なくとも20%は産業界側がマッチング・ファンド等で賄うものの、DOEが今後4年以上の期間に「ARC 20」で拠出する総額は5,600万ドル以上にのぼるとしている。対象に選定された3設計のプログラム概要は以下のとおり。アドバンスド・リアクター・コンセプツ(ARC)社が開発している「固有の安全性を備えた先進的SMR」、約3年半の投資期間の総額3,440万ドル(うちDOE負担分2,750万ドル):電気出力10万kWの予備概念設計に基づいて、免震機能を備えた先進的なナトリウム冷却SMRの概念設計を開発する。GA社による「高速モジュール式原子炉(FMR)」、約3年間の投資額3,110万ドル(うちDOE負担分2,480万ドル):重要な数値指標である燃料や安全性および運転性能等を確認しつつ、電気出力5万kWのFMRの概念設計を開発する。マサチューセッツ工科大学(MIT)の「横置き式コンパクト高温ガス炉(HTGR)」、約3年間の投資額490万ドル(うちDOE負担分390万ドル):モジュール方式を採用した統合型HTGR(MIGHTR)の商業化を支援するため、予備概念段階の設計を概念設計に進展させる。今回の決定についてDOEのD.ブルイエット長官は、「安全で建設コストも手頃な商業炉の市場で、建設と運転を短・中期的に可能にするという意味でAEDPの果たす役割は重要だ」とコメント。「ARDPが支援するこれら3設計のプログラムは、米国が世界でも高いレベルの競争力を獲得していく道を拓くだろう」と述べた。ARDPの設定期間を越える資金提供に関しては、将来的な追加予算措置やARDPの下で開発が順調に進展すること、DOEによる継続予算申請の承認などが条件になる。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Dec 2020
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チェコの産業貿易省(MIT)は12月21日、原子力発電所から出る使用済燃料や高レベル放射性廃棄物(HLW)を安全かつ長期的に隔離する「深地層最終処分場(DGR)」の建設候補地が最終的に4地点まで絞り込まれ、同日中にチェコ政府が承認したと発表した。放射性廃棄物処分庁(SURAO)の専門家パネルが過去数年間の研究・探査作業の結果、環境への影響が少なく技術的にも実行可能性が高い地点として、チェコ中心部のフラーデックとホルカ、南西部のブレゾビー・ポトック、およびテメリン原子力発電所に近いジュナークの4地点を政府に勧告していたもの。政府がこれを受け入れたことから、SURAOは今後もこれらの地点でさらなる研究・探査作業を継続する。政府は2030年を目処に建設サイトと予備サイトを1か所ずつ決定、2065年からの操業開始を目指すとしている。チェコ政府はまた、同日に「放射性廃棄物最終処分場の手続法案」について概要を承認した。MITは来年にも、同法案を提案することになる。この法案は、DGR建設の準備作業に関する規則の制定と、選定プロセス全般を通じた協議の透明性や効率性の強化を目的としたもので、以前から候補地の代表者や議員等から法制化が要請されていた。チェコでは1992年からSURAOがDGRサイトの選定作業を開始しており、第1段階として2002年までチェコ全土で「地質の評価作業」を実施した。第2段階で試験孔の掘削を除いた地質調査で「候補地の絞り込み」を行うのに対し、最終段階の第3段階では実際に試掘孔を掘削、「サイトの特性調査」を実施する計画である。チェコ政府が2014年10月に行った発表によると、地質調査所が複数の地質条件に基づき1990年代初頭に提案した27地点のうち、7地点がこの時点で候補に残っており、初期段階の地質調査の実施を受け入れていた。DGRは総面積29.5ヘクタールの地上エリアと地下500メートルの処分エリアで構成され、地上には廃棄物を取り扱うサービス建屋や輸送用の鉄道から分岐線を建設。処分エリアでは換気シャフトやトンネル、廃棄物の封入容器を設置する処分室などが整備されることになっている。同国のK.ハブリーチェク副首相兼MIT大臣は今回の発表について、「選定プロセス全体が非常にセンシティブなものであり、国民から多数の質問が寄せられることは十分承知している」と表明。「このため、MITとしては4つの候補地すべてと直接コンタクトを取っている。できる限り透明性を図ることで相互の信頼を確立したい」と述べた。SURAOのJ.プラハス長官も「我が国は今や、(処分場建設計画が順調に進展する)スウェーデンやカナダ、スイスなどと肩を並べる段階に到達した」とコメント。今後もオープンで透明性のある対話を心がけるとした上で、関係自治体には特別作業グループの設置を提案すると表明。「同グループを通じて、DGR地上エリアの設置場所や最終形態、進行中の作業情報を定期的に伝達する方法等に関しても協議に参加してほしい」としている。(参照資料:チェコ政府の発表資料(チェコ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Dec 2020
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フィンランド西部のピュハヨキで、ハンヒキビ原子力発電所1号機(120万kWのロシア型PWR)の建設工事を請け負ったロシアの原子力総合企業ロスアトム社は12月21日、同計画の建設許可申請審査に必要な設計書類の一部を顧客のフェンノボイマ社に手渡したと発表した。フェンノボイマ社は2015年6月に同計画の建設許可を経済雇用省に申請しており、現在はこの申請書をフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)が審査中。今回の書類は、同審査で主要な部分を構成する予備的安全解析報告書(PSAR)をフェンノボイマ社が作成する際、基盤の書類として使われる。フェンノボイマ社は、審査用の書類をSTUKに提出する前に毎回、同社の専門家による「独自のレビュー」をそれらの書類について行っている。同社がこのような手順を踏むのは、建設許可段階でSTUKが他の国よりも詳細な書類を要求しているためで、これによりその後の建設段階で作業が遅れるのを防ぐことができるとしている。特にPSARは建設計画の安全性全般に関して詳細に記述した書類で、発電所のサイト選定や基本設計、技術的な問題点の解決策、安全対策などを網羅。フェンノボイマ社はPSARの作成に向けた基本設計レビューを2019年の夏に開始しており、これまでにロスアトム社傘下のサプライヤーであるRAOSプロジェクト社とともに安全性に関わる数多くの課題を解決してきた。第2段階まで続く同レビューを通じて残りの課題を解決し、着工後に設計変更するリスクを最小限に抑える方針である。PSARを構成する15書類のうち、フェンノボイマ社はすでに5書類をレビューしてSTUKに提出済み。同社が今回RAOS社から受け取った文書は、発電所やシステムの概念設計と機能設計、発電所の3Dモデルなどで、これらは基本設計レビューの第1段階に使用される。同社は年末までにPSARの作成に必要な書類をあと2種類RAOS社から受け取る予定だが、PSARが最終的に完成するのは2021年の春になる見込みである。なお、同発電所建設サイトでは今年の夏、建設許可の取得に先立ちフェンノボイマ社が管理棟の建設工事を開始した。建設に入る前段階の準備作業で従業員数が急増したことや、事務スペースの確保が必要になったことによるもので、建設工事はフィンランドのレヒト・グループが担当。同棟が完成するのは2022年の初頭、ハンヒキビ1号機が営業運転を開始するのは2028年になると見られている。 (参照資料:ロスアトム社とフェンノボイマ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Dec 2020
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カナダ連邦政府の天然資源省は12月18日、カナダ国民に信頼性の高い電力を供給する可能性を持つとともに、2050年までに同国がCO2排出量の実質ゼロ化に移行する一助にもなる小型モジュール炉(SMR)の開発に向け、国家行動計画を公表した。カナダ国内で様々なSMR技術の開発と建設を支援し、2020年代後半にも最初のSMRで運転を開始するため、連邦政府と各州の州政府および地方自治体、先住民、労組、電気事業者、産業界、イノベーター、学界、市民社会など、100以上の関係組織が一丸となって「チーム・カナダ」を結成。諸外国との連携によりSMRの輸出機会を探るほか、その国際標準化にも影響を与えてカナダ国内における将来的な投資を促進する考えである。カナダ政府は2018年11月にSMRの開発ロードマップを発表しており、今回の行動計画では同ロードマップが確認した53の勧告項目への対応が記されている。全カナダ的アプローチを通じて、安全かつ責任ある形でSMRの開発と建設を進めるため、カナダ政府は国民と環境を防護する規制上や政策上、法制上の枠組を確保。技術革新を加速していくほか、先住民を含むカナダの全国民との有意義な関わり合いを継続するとしている。同行動計画によると、SMRはクリーンで安全かつ価格も適正なエネルギー源となる可能性が有り、低炭素で盤石な未来社会への道を拓くとともに、カナダの全国民がその利益を享受することができる。また、従来型よりも小型でシンプル、コストもかからない原子力発電の必要性を、世界中の市場が示唆している。国際的な専門家の間でも、2030年から2050年までの間にCO2排出量を削減するという連邦政府や州政府の目標を達成し、地球温暖化に対処するには、あらゆる低炭素発電技術とともに新たな原子力発電技術が必要と言われている。このような背景からカナダ政府は、カナダのみならず世界全体が低炭素な将来に向かう上で、原子力の中でも特にSMRのような発電所が重要な役割を担うと認識。カナダにおいてSMRは、沢山の雇用や知的財産権、サプライチェーンを支える一方、世界市場では2040年までに1,500億ドル以上の規模に成長することが見込まれる。これに加えてSMRは、カナダが初期開発国としてSMR国際基準を設定するなどの戦略的影響力を発揮し、開発政策面においても世界のリーダー的立場を確保することに貢献。最終的には、SMRによって地域開発の機会が拓かれ、北部コミュニティや先住民と主なエネルギー問題への取組で建設的な協議を行うことにも繋がるとしている。これらを実現するため、カナダ政府は今回の行動計画で以下の活動を実施する。すなわち、関係組織それぞれの管轄や権限の範囲内で一致団結し、様々なSMR設計の開発と建設を支援。2020年代後半までに最初のSMRで運転を開始する。諸外国のパートナーとも連携してSMRの輸出機会を捉えるため、関係組織を「チーム・カナダ」として統合する。SMRをその他のクリーンエネルギー源や貯蔵技術、アプリなどと統合し、カナダが低炭素な未来社会に向けて移行するのを加速する。放射性廃棄物の排出量を最小限に抑えるとともに、再利用する可能性も追求。放射性廃棄物を安全かつ長期的に管理するためのカナダの慣行を補完する。原子力産業界に女性や少数民族、若者などを積極的に登用して多様化を進めるほか、先住民や遠隔地域、北部コミュニティなどと長期的に経済連携する機会を模索する。SMRの研究開発やエンジニアリング、製造と建設に関する学界の広範な能力を活用する。(参照資料:カナダ連邦政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
21 Dec 2020
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フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は12月16日、オルキルオト原子力発電所で2005年から建設中の3号機(OL3)(172万kWのPWR)を完成させるため、同日に開催した臨時株主総会ですべての株主が4億ユーロ(約506億円)の追加融資を行うことに合意したと発表した。同社のJ.タンフアCEOによると、株主らはOL3の完成に向けて最大の努力を払う方針であり、取締役会が提案した無担保の劣後融資協定(返済順位の低い融資取り決め)に一様に署名。同炉が運転開始すればフィンランドの電力需要の約14%を満たせるため、すでに約17%を賄っている同発電所の1、2号機と合わせて、長期にわたり同国に無炭素な電力を供給し続けられると述べた。株主が新たな融資を承認したことで、TVOは同建設プロジェクトが必要とする資金化可能資産と自己資本比率を十分に維持できることになった。同社はこれまでに株主から承認した劣後融資をすべて実施済みであり、建設工事を請け負った仏アレバ社はOL3を完成させる財政的解決策を引き続き模索中。プロジェクトの完了時期については、アレバ社と独シーメンス社による企業連合とTVOが協議を続ける考えである。OL3は世界で初めて欧州加圧水型炉(EPR)を採用して着工したが、フィンランド規制当局による関係文書の認証作業や下請業者による土木工事に想定外の時間がかかり、当初予定されていた2009年の完成スケジュールは大幅に遅延。フィンランド政府が同炉に運転認可を発給したのは2019年3月のことである。これにともない、建設コストもTVOが同企業連合とターンキー契約を結んだ際の固定価格30億ユーロ(約3,798億円)を大幅に超過。TVOは2018年3月、完成までに要する総投資額を約55億ユーロ(約6,963億円)と見積もったが、その際に同企業連合と結んだ包括的な和解契約により、超過コストの一部および損害賠償金など合計4億5,000万ユーロ(約569億7,000万円)を同企業連合からTVOに支払うことが決定している。TVOは今年4月、燃料の装荷許可申請書をフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)に提出しており、6月には装荷できると見込んでいた。しかし、建設中の各種試験の進行が遅く、プロジェクトの遅延にともなうメンテナンス作業量が増加したこと等により、今年8月時点のスケジュールで装荷の実施は2021年3月以降に延期。送電網への接続は同年10月に、営業運転の開始は2022年2月ずれ込む見通しである。(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Dec 2020
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米エネルギー省(DOE)は12月16日、今年5月に設置した「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における支援対象として、新たにウェスチングハウス(WH)社など5社の設計を選定したと発表した。これらの企業には、2020会計年度予算から差し当たり合計3,000万ドルを提供。分担金全体の少なくとも20%を産業界側がマッチング・ファンドで賄う一方、DOE側が今後7年間に拠出する総額は、これら5件で6億ドルを超える見通しである。ARDPは、国内原子力産業界による先進的原子炉設計の実証を、政府がコスト分担方式で支援する官民連携プログラム。DOEの原子力局が担当しており、支援ルートは設計の成熟度に応じて以下に示すような3方式がある。すなわち、①「先進的原子炉の実証」ルート:5~7年の間に2つの先進的原子炉が確実に稼働できるよう支援、②「将来的な実証に向けたリスク削減」ルート:商業化の達成目標時期を①より約5年延長し、5件の支援対象設計について技術面や運転面の課題を解決、③「先進的原子炉概念2020(ARC20)」ルート:2030年代半ばの商業化を目標に様々な革新的設計の開発を支援――である。①についてはDOEがすでに今年10月、テラパワー社が開発している「ナトリウム冷却高速炉」と、X-エナジー社の小型ペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」を選定。今後7年間で運転開始を実現するため、2020会計年度から8,000万ドルずつ交付することが決まっている。今回、支援対象に決まったのは②ルートに区分されるもので、DOEは今後10~14年間に許認可手続きと建設工事を実施する可能性がある設計について技術的なリスクを削減し、安全かつ適正コストの原子炉開発を支援する。5件の対象技術や投資額、またDOE負担額等の概要は以下のとおり。ケイロス・パワー社による「ヘルメス規模縮小版試験炉」、7年間の投資額6億2,900万ドル(うちDOE負担分3億300万ドル):ヘルメスは、商業規模の「フッ化物塩冷却高温炉(FHR)」開発につなげるためにケイロス社が設計、建設、操業を計画している設計。燃料として、3重被覆層・燃料粒子「TRISO」をペブルベッド方式で使用する。WH社の極小原子炉「eVinci」、7年間の投資額930万ドル(うちDOE負担分740万ドル):2024年までに実証炉開発することが目標で、原子炉の冷却に使われる伝熱管の製造能力を改善するとともに、経済的に実行可能な燃料交換プロセスなどを開発する。BWXTアドバンスド・テクノロジーズ社の「BWXT先進的原子炉(BANR)」、7年間の投資額1億660万ドル(うちDOE負担分8,530万ドル):輸送が可能な極小原子炉となる予定で、炉心に一層多くのウランを装荷するためTRISO燃料を使用。また、炭化ケイ素製マトリックスを利用できるよう炉心設計を改善する。ホルテック・ガバメント・サービシズ社の「SMR-160」設計、7年間の投資額1億4,750万ドル(うちDOE負担分1億1,600万ドル):軽水炉方式となる同設計の開発を加速するため、初期段階の設計・エンジニアリングや許認可手続き関係の作業を支援する。サザン・カンパニー・サービシズ社の「溶融塩実験炉(MCRE)」、7年間の投資額1億1,300万ドル(うちDOE負担分9,040万ドル):世界初の高速スペクトル型溶融塩原子炉として、設計と建設および運転を目指す。このほか、開発の初期段階にある設計を支援する③ルートについて、DOEは今月末にも支援対象を公表するとしている。(参照資料:米エネ省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
17 Dec 2020
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米国の原子力技術・エンジニアリング企業であるケイロス・パワー社は12月11日、開発中の「フッ化物塩冷却高温炉(FHR)」(電気出力14万kW)の試験炉を、テネシー州にあるエネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」内で建設する方針を明らかにした。ケイロス社のFHR (KP-FHR)は、コンバインドサイクル発電とコスト面で競合可能な無炭素電源となるよう、同社が商業化を目指している先進的原子炉。同社は2018年11月から原子力規制委員会(NRC)と許認可申請前の相互交流活動を展開しており、2030年までに実証炉を米国内で建設する計画である。同社が目標としているのは、先進的技術によってクリーンエネルギー社会への移行を促し、環境を保全しつつ人々の生活の質を劇的に向上させること。KP-FHRの強固な安全性と適正な価格を通じて、この目標を達成できるとしている。ケイロス社はKP-FHRの冷却に低圧の液体フッ化物塩を用いており、燃料には3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を使用する。固有の安全性を保持したまま、大容量の電力と高温のプロセス熱を生成できると言われており、2002年にDOE傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)がFHRの概念を提案した後、これを元にMITやUCバークレーなどが個別の要素技術の研究を進めていた。また、建設サイトとなるETTPでは、DOEが40年にわたって軍事用と民生用のウラン濃縮複合施設を操業していた。1987年に永久閉鎖した後は、DOEの環境管理局(EM)が同サイトを民間企業保有の多目的産業パークとするため浄化作業を継続中。EMは今年に入り、同サイトで主要部分の浄化作業が完了したことを明らかにした。一方、ケイロス社は同サイトの「K-33ガス拡散法ウラン濃縮プラント」が立地していた跡地を取得するため、管理会社と了解覚書を締結、現在はこの土地の評価作業が行われている。ケイロス社の創業者の1人であるM.ローファーCEOは、「ETTPで様々なインフラ設備を利用できるほか、主要な協力者が近隣のORNLに存在するため、当社の技術を実証するには最適のロケーションだ」と指摘した。オークリッジ市のW.グーチ市長も、「当市は原子力技術革新では由緒ある歴史を持つ土地柄。今後も近代的原子力技術への転換を推し進めるにあたり、ケイロス社は当市が技術革新の中心地であることを実証する重要な部分を担うだろう」と述べた。(参照資料:ケイロス・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Dec 2020
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英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は12月14日に新しいエネルギー白書を公表し、この中でイングランド地方南東部のサフォーク州でサイズウェルC原子力発電所を建設する計画について、事業者のEDFエナジー社と交渉に入ることを確認した。同社は現在、南西部サマセット州でヒンクリーポイントC原子力発電所(170万kW級の欧州加圧水型炉: EPR×2基)を建設中である。政府は現在の選出議員による議会会期中に、少なくとも1件の原子力発電所新設計画への投資を可能にするオプションを検討しており、サイズウェルC計画が進展した場合、建設と運転の両期間中に国内で数千人規模の雇用が創出されると政府は予想。交渉次第では、EDFエナジー社がプロジェクト実施の最終判断を下す前に、投じた金額に見合う価値のある取引として同社と政府の合意が成立する可能性もある。ただし、こうした結論に到達するまでには、建設計画の徹底した精査が行われるほか、法制面や規制面および国家安全保障面で政府の厳格な要件を満たす必要がある。エネルギー白書は具体的に、規制資産ベース(RAB)モデルも含めて、新規の原子力発電所建設計画に資金調達が可能な複数のオプションを引き続き検討すると明記した。これによって、民間部門の投資を促進し消費者の負担も長期的に軽くする可能性を探るが、資金調達の規模によっては建設期間中に政府が財政支援する可能性も検討する。ただしその折には、建設計画に消費者や納税者の支払いに見合う確固たる価値が見いだせなければならない。政府のこのような方針について、EDFエナジー社は同日コメントを発表した。同社の英国法人のS.ロッシCEOは、「ヒンクリーポイントC発電所やサイズウェルC発電所、および再生可能エネルギーへの投資を通じて、英国全土に雇用を創出しつつ、政府の目指す脱炭素化を支援していく」と表明。「そのためには今こそ行動を起こすべき時であり、原子力発電所新設計画への資金調達問題も含めて、エネルギー問題や地球温暖化防止政策の実施に向け政府に協力していきたい」と述べた。同社で原子力開発を担当するH.カドゥ-ハドソン取締役も、「CO2排出量の実質ゼロ化に向け、大型原子力発電所の果たす極めて重要な役割が改めて認識された」と指摘。「サイズウェルC計画を進めるという政府の判断は、(排出量の実質ゼロ化に向け)B.ジョンソン首相が先ごろ公表した『緑の産業革命に向けた10ポイント計画』における重要施策を英国民のために実施し、数千人規模の雇用や実習制度の創出を約束する。国内の原子力サプライチェーンに属する数千の企業に対しても、大規模な支援を提供する」と強調した。同取締役はまた、建設プロジェクトに適切に資金調達するモデルについても、政府と協議を始めたいと表明。サイズウェルC発電所はヒンクリーポイントC発電所と同型の原子炉を同数備えた発電所となる計画で、これにより建設コストや資金調達コストについては大幅な減少が予想されている。これらの点から同取締役は、「(両者の協議においては)費用対効果が見込めるとともに、消費者の負担も軽くなる資金調達策に必ず辿り着ける」との期待を示した。今回の政府発表についてはさらに、英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長が歓迎の意を表明した。同理事長によると、英国では今後、化石燃料発電のみならず輸送部門ではディーゼルを、暖房部門ではガスを使うことも停止していくため、大型炉や小型炉、先進的原子炉に限らず無炭素な発電技術で現在の4倍の設備容量が必要になる。このため同理事長は、政府がその他の原子力開発事業者についても(「先進的原子力基金」の創設に最大3億8,500万ポンドを投じて)協働していくと約束した点を高く評価。ウィルヴァ・ニューウィッド原子力発電所建設計画やブラッドウェルB発電所計画、ムーアサイド発電所計画で確保されたサイトのすべてが、大規模原子炉の建設に適していると強調した。(参照資料:英国政府、EDFエナジー社、NIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Dec 2020
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ベルギーの大手エンジニアリング企業であるトラクテベル社は12月11日、小型モジュール炉(SMR)に対する同社のビジョンを記した白書「2.0バージョンに進展する原子力技術」を公表した。その中で同社の将来展望として、SMR事業をエネルギー問題の統合的解決策として重点的に推進していく方針を表明している。同社は、ベルギーで稼働する原子炉7基中6基の建設でアーキテクト・エンジニアを務めたほか、世界中の複雑な原子力開発プロジェクトにおいてもエンジニアリング企業として活動。半世紀以上にわたって原子力に関する経験を蓄積してきた。同社によると、SMRは単なる原子力製品ではなく、21世紀の重要なエネルギー問題に懸命な解決策をもたらす「ビジネス・モデル」である。エネルギーの生産・貯蔵から輸送まで、分野横断的な事業を幅広く手がける中心的企業として、トラクテベル社はSMRによるソリューションの提案を推し進める考えである。同社はまず、コストの超過やスケジュールの遅延といった大型原子炉の新設にともなう課題によって、原子力産業界がダメージを負ってきたと指摘。その結果、民間部門からの投資が減少し、自国内で原子力を長期的に開発していこうとする国でのみ建設プロジェクトが維持されてきた。同様の現象は航空業界でも見られており、今や規模の小さい柔軟性のある航空機利用が新たなスタンダードになってきている。原子力産業界でも、シンプルで規格化した小型のモジュール式原子炉を新たな「標準」として定義しつつあるが、革新的な設計を普及させるには許認可の枠組などが必要になってくる。同社はこのため、通常よりも一層拍車をかけてSMRを量産し、そこから経済的恩恵を得るというビジョンがSMR産業界には必要だと説明。それに不可欠な事項として、SMRが第3世代炉の新規建設プロジェクトから教訓を学んでおり、予算内でスケジュール通りに完成させることができると投資家に証明しなければならないとした。また、現実問題として、需要に応じて出力調整する能力と、既存の産業ハブに隣接する地点でプラントの立地が可能という2重の基準を経済的に満たせる無炭素発電技術はほとんどない。これらのことからトラクテベル社は、電力や水素、蒸気など複数のエネルギーを統合したエコ・システムの中心にSMRを置くというビジョンを描いている。同社によれば、米国やカナダ、仏国、英国、フィンランド、エストニア、ポーランド、チェコ、およびその他の東欧諸国は、すでにSMRを活用して将来を築くという方針を明確に表明済み。SMRには無炭素社会への移行を可能にする能力が複数あり、それらは具体的に、①再生可能エネルギーの間欠性を補い、その普及を助ける出力調整能力と100万kWh規模のエネルギー貯蔵能力、②市場の需要に応じた発電所規模や運転時の温度の高さなどにより、地域熱供給や海水脱塩など幅広い分野の適用が可能--などである。トラクテベル社は、現実社会の産業プロジェクトを通じてSMRのこのような価値を実証し、今後活用される複雑なエネルギー・システムの全側面を経験した企業として、建設プロジェクトの機会を世界中で模索していく。その一環として同社はすでに今年1月、エストニアのエネルギー企業が同国内で計画しているSMR建設に協力するため、フィンランドのフォータム社とともに協力覚書を締結している。(参照資料:トラクテベル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Dec 2020
3301
米国で約30年ぶりの原子炉新設計画を進めているジョージア・パワー社は12月9日、A.W.ボーグル原子力発電所で完成間近の3号機(PWR、110万kW)サイトに初装荷燃料が到着したと発表した。同発電所3、4号機は、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代設計AP1000を国内で初めて採用し、それぞれ2013年3月と11月に建設工事が本格的に始まった。3号機では今年10月に冷態機能試験が完了し、建設進捗率は12月現在で約96%に到達。ジョージア・パワー社は現在、3号機の温態機能試験を来年1月に開始する準備を進めており、燃料の初装荷は同試験が完了した後の2021年4月を予定している。しかし、同社の親会社であるサザン社は、新型コロナウイルスによる感染の影響や一部作業の遅れにより、燃料装荷は来年夏ごろになるとの見方を別途表明したと伝えられている。ジョージア・パワー社は今のところ、両炉をそれぞれ2021年11月と2022年11月までに完成させる考えだが、ひとたび運転が始まれば、両炉は60年から80年の間、クリーンで安価な電力を50万戸以上の世帯や企業に安全に供給し続ける。また、サザン社が掲げている「2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化」という目標の達成にも大いに貢献するとしている。今回到着した燃料は、長さ14フィート(約4m)の燃料集合体が157体で、運転開始後は、燃料交換時に約3分の1ずつ新しいものと交換することになる。ジョージア・パワー社の発表によると、今年は3、4号機の建設サイトで以下の作業を完了している。・3号機の常温状態試験で冷却系の溶接部や接合部、配管等が設計通り機能するか、また高圧システムで漏れが生じないかを確認した。・3号機で緊急事象の発生を想定した対応訓練を実施し、近隣住民の健康と安全を効率的かつ効果的に確保する能力を実証した。*・原子力規制委員会(NRC)が3、4号機の運転員および上級運転員となる62名に免許を交付した。・3号機の格納容器で構造性能確認試験と全体漏えい試験を実施し、同容器が設計要件を満たしていることを確認した。・3号機の格納容器と遮へい建屋の上部に水タンク用のモジュール(CB-20)を設置し、緊急時に原子炉を冷却するための水75万ガロンの注入性能を確保した。・3号機の原子炉容器上部に一体型ヘッドパッケージ(IHP)を設置し、運転員が同容器内の核反応を監視・制御できるようにした。・3号機の原子炉容器の蓋を開けた状態で、主要な安全系から同容器に水を流す試験を実施し、流路がふさがれたり狭まったりしていないか、およびシステムの構成要素が設計どおり機能するか確認した。・ポーラー・クレーンを設置して両炉の格納容器内部への大型機器吊り上げ・設置作業を完了した。このほか同社によると、今年初頭に世界原子力発電事業者協会(WANO)が建設サイトを訪問し、両炉の起動前審査を実施。2基のAP1000原子炉で安全な運転が可能か、準備状況を評価している。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Dec 2020
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国際エネルギー機関(IEA)と経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)は12月9日、2020年版の「発電コスト予測(Projected Costs of Generating Electricity)」を発表し、低炭素電源の発電コストが次第に低下しており、従来の化石燃料発電を下回りつつあるとの分析結果を明らかにした。この報告書は、発電所の「耐用期間中の均等化発電コスト(LCOE)」について両機関が5年ごとに共同で取りまとめているもので、今回の報告書で9版目となる。化石燃料や原子力のほかに、風力や太陽光、水力、バイオ燃料といった様々な再生可能エネルギーなど、24か国から提供された243の発電所データを個別プラントベースで分析している。最新版の判明事項として両機関は、国毎、地域毎に条件は異なるものの、低炭素電源が全般的にコスト面の競争力を増してきており、再生可能エネルギーについては近年、発電コストが引き続き低下中だと指摘。風力と太陽光のコストは今や、多くの国で化石燃料発電と競合できるレベルに到達したほか、原子力発電のコストもまた、近い将来さらに低下していくことが予想されるとした。その理由として、複数のOECD加盟国で開発初号機の建設プロジェクトから改善を重ね、コストの削減が進展。新規の原子力発電所は出力制御が可能な低炭素電源の中でも、発電コストが2025年には最も低いレベルになるとした。また、既存の原子力発電所で「運転期間を40年以上に延長して継続すること(long-term operation: LTO)」は、低炭素電源の中では費用対効果が最も高い電源となる。コスト比較という点では水力も同様の貢献が可能だが、それぞれの国の自然環境に大きく左右されるとの見方を示している。結論として両機関は、国や地域毎に重要条件は必然的に異なるものの、低炭素電源の競争力が増してきたという事実が今回の報告書の洞察と指摘。低炭素電源には、風力や太陽光など出力が変動しやすい再生可能エネルギーのほかに、LTOを含む原子力や水力など柔軟性の高い電源が含まれるが、CO2価格が1トン当たり30米ドルと安価であっても高効率化していない石炭火力に競争力はない。一方、ガス火力はガスの価格が非常に低いので、北米などいくつかの特異な市場においては特に、競争力を維持することが可能。CO2の回収・有効利用・貯留(CCUS)が競争力を得るには、現在の市場の多くでCO2価格がこれまで以上に高くなければならないと述べた。原子力発電の見通し今回の報告書によると、一般的な原子力発電所における設計上の運転期間は40年であるが、これは圧力容器など取り換えの難しい主要機器で十分余裕を持った設計上の耐用年数に基づいている。しかし現在、設計機能を安全に果たす上では、その多くの機器の耐用年数が40年以上となっている。米国ではすでに、約100基の原子炉のうち90%について、運転開始当初の運転期間である40年が60年に延長された。また、いくつかのプラントでは80年まで延長されており、技術面でLTOに大きな障害がないことが確認されている。IEAの既刊の報告書では、世界の気温上昇を50%の確率で2℃未満に留める「持続可能な開発シナリオ(SDS)」の場合、2015年のパリ協定における目標を達成するには、原子力発電設備の新規建設と既存炉で運転期間を40年以上に延長することが不可欠だと明記している。今回の報告書では、こういった既存炉の運転期間延長をしないのであれば2021年以降に最大で2,000万kWの追加設備が原子力で必要になると指摘。これに加えて、脱炭素化も進めるとなると課題の解決はますます難しくなり一層の経費がかさむが、いくつかの国では原子力や水力のように出力制御が可能な一方、莫大な資本を必要とする低炭素電源の価値が電力市場で適正に評価されていない。政治的判断によって早期閉鎖されるプラントもあることを考えると、既存炉のLTOこそ、低炭素な電源に対する投資のなかでも高い競争力を持ち続けるとしている。(参照資料:IEAとOECD/NEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Dec 2020
4226
英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は12月2日、商業的に利用が可能な世界でも初のプロトタイプ核融合発電所を国内で建設するため、受け入れ地域やコミュニティを募集すると発表した。2024年までに概念設計を完成させた後、2040年までに同発電所の送電網への接続を目指して詳細設計と建設を進める。その間、高度なスキルを要する雇用も英国全土で創出し、諸外国への輸出も視野に入れた全く新しい産業を作り上げる方針である。この計画は、BEISが昨年10月に公表した「球状トカマク核融合設計プログラム(STEP)」の枠組で行われる。同プログラムでは、地球温暖化防止に向けた世界的取組の一環として、英国政府が革新的技術の開発に大規模投資を行うことになっており、2億2,200万ポンド(約309億円)をかけて核融合エネルギーの実現を目指す。STEPにおける具体的な核融合研究は、英国原子力公社(UKAEA)が英国政府に代わって実施することになる。STEPへの投資は今年11月、英国内の温室効果ガス排出量を実質ゼロとするため、B.ジョンソン首相が公表した10項目の重要施策「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」にも明記された。英国政府はSTEPの設計活動開始に必要な2億2,200万ポンドに加えて、1億8,400万ポンド(約256億円)を2025年までの期間に投資。オックスフォードシャーにあるUKAEAのカラム科学センターに、新たな核融合関係施設とインフラ、および実習制度を設置する計画で、核融合と革新的技術開発の中心的存在である同センターに一層の支援を提供する考えだ。BEISは核融合について、太陽と同じくクリーンで低炭素な電力を無尽蔵に供給できるエネルギー源と認識しており、英国はその商業化を成し遂げる最初の国になろうとしている。BEISのA.シャルマ大臣は、「何世代にもわたって利用可能という驚くべきエネルギー源に資本投下することで、英国を核融合開発の先駆者にしたい」と抱負を述べた。今回の核融合発電所の受け入れ募集で、関心を持つ自治体は2021年3月末までに候補地となるための申請書を提出するが、その際、受け入れに適した土地条件や送電網との接続、水の供給など、社会面や商業面および技術的側面からも条件を満たしていると実証しなければならない。BEISによればサイトに決定した場合、その自治体では発電所の建設中から運転中に至るまで、地元のサプライチェーンで数千人規模の雇用創出が約束される。また、英国政府が進める「緑の産業革命」の中心地となって、関係企業を引き寄せるほか、核融合と関連産業の世界的拠点にもなるとしている。UKAEAのI.チャップマンCEOはSTEPについて、「研究開発を製品として完成させ、核融合が単なる『見果てぬ夢』ではなく、その商業開発を英国が主導しパイオニアになることを実証するためのものだ」と説明。「この意欲的な目標を達成するため、UKAEAは今後数年にわたって英国の科学エンジニアリング産業界と協力し、プログラムの技術的発展に向けた投資と支援を提供する。このような内外のパートナーとの連携を通じて、英国は革新的な核融合技術を市場に出すことが出来るだろう」と述べた。(参照資料:BEISとUKAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Dec 2020
3889