米ホワイトハウスは2月28日、原子力規制委員会(NRC)で昨年5月から空席となっている委員1名として、エネルギー政策の専門家で米議会上院・歳出委員会の専門家スタッフでもあるクリストファーT.ハンソン氏をD.トランプ大統領が指名する方針だと発表した。定員5名のNRCは現在、K.スビニッキ委員長(共和党支持派)、J.バラン委員(民主党支持派)、A.カプト委員(共和党支持派)、D.ライト委員(共和党支持派)で構成されている。ハンソン氏の指名が上院で承認された場合、昨年4月末に辞任したS.バーンズ委員に代わって、差し当たり2024年6月末まで務めることになる。また、共和党支持派の委員がすでに3名いることから、原子力法の規定によりハンソン氏は民主党支持派あるいは中立派と見られている。発表によるとハンソン氏は、インディアナ州のバルパライゾ大学で宗教学の学士号を取得。その後、イエール大学のイエール神学校および林学・環境学大学院で倫理学や天然資源経済学を専攻し、修士号を取得した。原子力や原子燃料サイクル、放射性廃棄物問題等に関しては20年以上の経験を有しており、米エネルギー省(DOE)原子力局で上級アドバイザーを務めたほか、コンサルティング企業のブーズ・アレン・ハミルトン社でコンサルタントとして勤務するなど、政府と産業界の両方を経験している。(参照資料:ホワイトハウスの発表資料、原産新聞・海外ニュースほか)
02 Mar 2020
1875
カナダ原子力研究所(CNL)は2月26日、昨年7月に設置した「カナダの原子力研究イニシアチブ(CNRI)」で支援する最初の小型モジュール炉(SMR)研究プロジェクトとして、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)のSMR「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(=右図)を選定し、同社の子会社であるUSNC-パワー社と協力協定を締結したと発表した。この協力では主に、MMRで使用する「完全なセラミック・マイクロカプセル化(FCM)燃料」の製造研究やMMR用黒鉛炉心の照射プログラム策定、CNLチョークリバー・サイトにおける燃料分析検査室の設置などをカバー。カナダのプロジェクト開発企業であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社はすでに昨年4月、USNC社のパートナー企業として、MMRをCNLチョークリバー・サイト内で建設するための「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。今回の協力では、チョークリバー・サイトでのFCM製造施設建設に向けた実行可能性調査の準備活動や、MMRの炉心や燃料の設計妥当性を確認する試験プログラム開発が含まれる。CNLは2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」のなかで、2026年までにオンタリオ州にあるチョークリバー・サイトでSMRを建設するとの意欲的な目標を設定。関連企業からは、SMR原型炉や実証炉の建設で15件以上の関心表明書を受け取った。これに続いてCNLは2018年4月、チョークリバーを含むCNLの管理サイトで実際にSMR実証炉を建設・運転するプロジェクトの提案を募集。第1回目となるこの募集で、同年6月にはスターコア・ニュークリア社やU-バッテリー・カナダ社など国内外のSMR開発企業4社から提案があったという。CNLはこのほか、SMR開発を支援するコスト分担方式の研究開発イニシアチブとして、CNRIを2019年に設置している。1年単位のCNRIプログラムを通じて、CNLは世界中のSMRベンダーにCNLの専門的知見や世界レベルの研究設備を提供。カナダにおけるSMRの研究開発と建設を促進し、SMR技術の商業化を加速する計画である。USNC社はCNLが昨年11月、CNRIの初回の支援対象候補に選定した4社の1つで、残り3社(英モルテックス・エナジー社、米Kirosパワー社、加テレストリアル・エナジー社)の提案に関してCNLは現在、審査と交渉の様々な段階にあるとした。今回の協力取り決めにより、USNC社とCNLはMMRの多様な側面の中でも特に、燃料の開発・試験を検討。CNL側からは150万カナダドル(約1億2,000万円)相当の現物出資が行われ、2021年春までに完了する予定である。CNLとの協力に関してUSNC社のF.ベネリCEOは、「当社製SMR設計の実行可能性とFCM燃料の特殊な優位性を実証する重要な機会になる」と説明している。(参照資料:CNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Feb 2020
2122
フィンランドの国立技術研究センター(VTT)は2月24日、地域暖房用の熱供給を目的に国内で小型モジュール炉(SMR)の開発に乗り出すと発表した。同国では2019年に、地域熱供給用の設備だけでCO2排出量が400万トンを越えたが、政府は2029年までに発電部門で脱石炭火力を達成する方針。熱供給システムの脱炭素化は地球温暖化防止に向けた最も重要な課題の1つであり、VTTは第一段階として国内の熱供給ネットワークに適したSMRの概念設計を開発する。また、これに必要な機器類の製造技術で新たな産業部門を国内に創出するとしている。VTTは雇用経済省が管轄する北欧最大の研究機関で、エネルギー分野を含む幅広い科学技術分野で最先端の技術的知見を蓄積。独自の研究施設と海外に幅広いネットワークを保有しており、過去5年間はSMRの導入機会を探る複数のプロジェクトに携わってきた。欧州レベルでは特に、欧州原子力共同体(ユーラトム)が資金提供して昨年始まった「ELSMOR」プロジェクトで、VTTはリーダーとして欧州における軽水炉型SMRの許認可手続きに向けた調整作業を進めている。発表によると、原子力は国内総発電量の約3分の1を賄うフィンランド最大規模の電源であり、CO2排出量は風力発電などと同程度。発電部門におけるCO2排出量は少ないとしても、「実質ゼロ化」を達成するにはエネルギー産業の他の分野で排出量を大幅に削減する必要があり、SMRは低炭素な原子力発電を熱供給に利用拡大するのに適した設備である。これに関してVTTのV.トゥルッキ研究チームリーダーは、「スケジュールがタイトな上、低コストな代替選択肢はわずかだ」と指摘。その上で、目標の達成に向けて新たな技術革新と新しい技術の導入が必要であるとし、原子力による地域熱供給はCO2排出量の大幅な削減に繋がると強調した。VTTはまた、海外で多くのSMR開発プロジェクトが許認可段階に達したものの、それらの多くは発電用あるいは産業プロセス用の高温エネルギー源だと説明。約100度Cの熱湯を必要とする地域熱供給では、一層経済的でシンプルなソリューションを利用できるため、VTTとしてはこの目的に合わせたプラントを開発し、都市部の一般家庭や人口密集エリアの暖房用としてコスト面の効果が高いものを目指す方針である。実際のSMR開発にあたり、VTTとしては保有する計算コード等、多分野の総合的能力を活用する。VTT原子炉安全分野のJ.レッパネン研究教授は、「炉心のモデリングを例に取るなら、ハイファイ数値シミュレーション手法が適用できる」と指摘。同教授が開発した「連続エネルギー・モンテカルロコードSERPENT」は、すでに44か国・250もの大学や研究機関における原子炉のモデリング等に活用されている点を強調した。(参照資料:VTTの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Feb 2020
2582
米国で約30年ぶりの新設計画としてA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機(各110万kWのPWR)をジョージア州で建設中のサザン社は2月19日、3号機の格納容器内では最後となる大規模なコンクリート打設が完了したと発表した。翌20日には2019年第4四半期の収益報告書を公表し、同社としては規制手続で承認された3、4号機の稼働開始日程の2021年11月と2022年11月を達成する十分な自信があるものの、「挑戦的作業計画」を進めることにより3号機は2021年5月に、4号機では2022年3月に前倒しすることも可能だと強調している。この建設プロジェクトではサザン社の最大子会社であるジョージア・パワー社が主要な出資企業となり、2013年3月と11月に3、4号機をそれぞれ本格着工。ほぼ同時期に着工したV.C.サマー2、3号機と同じく、ウェスチングハウス(WH)社製のAP1000設計を採用したが、初号機建設にともなう様々な問題やWH社による倒産申請などにより、両炉の完成日程は当初計画から約4年先送りされている。ジョージア・パワー社を含む出資企業4社は2017年5月、プロジェクトのエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約を放棄したWH社と新たな取り決めに基づく「サービス協定」を締結。この協定により、サザン社のもう一つの子会社で、両炉の運転を担当する予定のサザン・ニュークリア社が建設プロジェクトの管理業務を引き継いだ。2019年3月には、米エネルギー省(DOE)が同プロジェクトに対し、追加で37億ドルの政府融資保証適用を決定。ジョージア・パワー社は同年7月、3号機に装荷する157体の燃料集合体を発注した。サザン社の昨年第4四半期の収益報告によると、3号機では原子炉容器の蓋を開けた状態で行う試験が11月に始まったほか、中央制御室での試験準備も12月に完了するなど、予定していた主な作業項目がすべて成功裏に完了した。現在、3、4号機の建設進捗率はそれぞれ85%と63%で、プロジェクト全体の作業は84%完了している。同社は2019年4月、建設サイトにおける「挑戦的作業計画」を策定したが、これは基準となる現行の稼働開始日程(2021年11月と2022年11月)に余裕をもたせることが目的となる。同計画では、今年の末までに3号機の建設工事を90%完了という目標が設定されているが、同社のT.ファニング会長兼CEOによると、この計画を進めたことにより、2019年は結果的に主要な作業が大幅に進展した。また、プロジェクトのコストと日程を定期的に見直すなかで、同社は今月初頭、3つの重要な結論を導き出している。すなわち、(1)現行の稼働開始日程を達成する能力が同社に十分あることを確認、(2)「挑戦的作業計画」に示された3号機の稼働開始目標日程(2021年5月)と4号機の目標日程(2022年3月)を変更せず、同計画を継続的に活用していく戦略を支持、(3)プロジェクト全体の資本コスト予測に変更がないことを確認――である。同社はさらに、2020年の「挑戦的作業計画」に一層の改善を加えており、これによって、年末までに3号機で燃料を装荷し2021年5月に稼働開始するという目標の達成が可能になると説明している。(参照資料:サザン社の発表資料(1)(2)、2019年第4四半期収益報告の電話会議記録、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Feb 2020
3062
仏国内すべての原子力発電所を所有・運転するフランス電力(EDF)は2月22日、昨年9月に公表していた通り、稼働中の商業炉としては最も古く1977年に運転開始したフェッセンハイム原子力発電所(=写真)1号機(PWR、92万kW)を永久閉鎖したと発表した。2月19日の官報ではすでに、同炉の運転認可を無効化する政令が22日付けで発効すると発表されており、これに続いて2号機(PWR、92万kW)も6月30日に永久閉鎖する予定。仏国政府はこれにより、原子力と再生可能エネルギーの間で発電電力量のバランスを取っていく戦略の第一歩を踏み出したと指摘。これと同時に、2022年までに石炭火力発電所の全廃を目指すなど、発電部門からのCO2排出量の削減努力も継続するとしている。同発電所の閉鎖は、2015年8月に成立した「緑の成長に向けたエネルギー移行法」を受けて、約75%の原子力発電シェアを2025年までに50%まで削減するとともに、原子力発電設備を2015年当時のレベルの6,320万kWに制限するための施策となる。元々はF.オランド大統領(当時)が公約していたものだが、2025年までに削減するのは実質的に不可能との判断から、E.マクロン大統領は2018年11月、「エネルギーと地球温暖化に関する仏国戦略」の中で目標の達成を10年先送りし、2035年にすると表明。フェッセンハイムの2基を含め、2035年までに合計14基の90万kW級原子炉を永久閉鎖する方針である。仏国では現在、フラマンビル3号機(PWR、163万kW)が同国初の欧州加圧水型炉(EPR)として建設中であるため、EDFはこれと引き替えにフェッセンハイム1、2号機を早期閉鎖する条件として、「運転認可の無効化はFL3が起動した日にのみ有効にすること」などを2017年に理事会決定していた。しかしFL3では2018年7月、主蒸気管を含む2次系配管の溶接部に品質のバラ付きが認められたため、燃料の初装荷はさらに遅れて2022年末になる見通し。このためEDFは2019年9月、FL3の完成を待たずにフェッセンハイムの2基を閉鎖すると決定。1、2号機をそれぞれ、2020年2月と6月に永久閉鎖するため申請書を規制当局と環境連帯移行省に提出していた。なお、仏国政府はフェッセンハイム発電所の閉鎖が地元の不利益につながることがないよう、2018年から地元自治体の職員らとフェッセンハイムの将来プロジェクトを検討。地元のコミュニティや企業、組合などとも協力し、発電所職員の再教育や地域の再活性化を盛り込んだ戦略を2019年2月に完成させた。同発電所が立地するオー=ラン県を欧州規模の低炭素経済基準地区とするため、技術革新部門を基盤とする経済によって持続的な雇用を生み出し、社会経済的な転換を図るとしている。(参照資料:EDF(仏語)、仏国政府(仏語)、環境連帯移行省(仏語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Feb 2020
1862
米テネシー州にあるエネルギー省(DOE)傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)とテネシー峡谷開発公社(TVA)は2月19日、TVAが州内のクリンチリバー・サイト(=写真)で建設する小型モジュール炉(SMR)など先進的原子炉設計について、コスト面での有効性などを評価するため、協力覚書を締結したと発表した。TVAは昨年12月、同サイトで2基以上、合計電気出力80万kW以下のSMR建設を想定した「事前サイト許可(ESP)」を米原子力規制委員会(NRC)から取得。ESPは20年間有効だが、現時点で採用設計が確定していないため、今回の覚書の下で両者は協力して、可能性のある先進的原子炉設計について許認可手続と建設、運転・維持にともなう経済的実行可能性の改善方法を探る。実際に原子炉建設が決まった場合、TVAはNRCに対して別途、建設・運転一括認可(COL)を申請する必要がある。両者の今回の協力は、双方の原子力関係能力や資産を活用するこれまでの協力関係に基づいている。TVAのワッツバー2号機が2016年10月に営業運転を開始した際、ORNLはコンピューターのモデリング技術を用いて同炉における最初の6か月間の運転をシミュレートした実績がある。両者の発表によると、評価対象とする原子炉設計は具体的に、工期が短くて柔軟な運転が可能、かつ低コストでCO2を排出しないもの。評価を行う重要分野としては、先進的な建設技術の開発やサイト・インフラ支援のための総合的開発能力、経済的な建設を促進する様々な機能の基盤、先進的製造技術における技術革新、規制要件や安全要件を一層効果的に遵守できる技術基盤を挙げている。ORNLはこれまでDOEの国家プログラムの中で、新しい材料物質やプロセス、最先端技術の開発と活用によって、多くの電気事業者が発電技術を改良したり技術革新を図れるようにする研究活動を続けてきた。今回の覚書を通じてTVAは、ORNLの保有する科学的知見のほかに、「高中性子束・同位体生産炉」や世界最速のスーパーコンピューターが置かれている「オークリッジ・リーダーシップ・コンピューティング施設(OLCF)」、「製造実証施設(MDF)」といった世界最先端の施設を利用することが可能になる。ORNLのT.ザカリア所長は、「世界を牽引するORNLの研究能力とTVAの運転経験を組み合わせて、コスト面の効率性が高い次世代の原子力発電を促進したい」と表明。「原子力は長年にわたって米国のエネルギー構成における重要な要素であり、CO2を出さない発電技術への要望の高まりは、我々が今後も安全で効率的かつ価格も適切な原子力発電を取り入れることを求めている」と述べた。(参照資料:ORNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Feb 2020
1775
仏国すべての商業炉を運転・管理するフランス電力(EDF)は2月18日、同国初の欧州加圧水型炉(EPR)として2007年12月から建設中のフラマンビル原子力発電所3号機(PWR、163万kW)(FL3)で温態機能(ホット)試験が完了したと発表した。同国で最も新しいシボー2号機のホット試験が行われて以降、20年以上が経過しているため、EDFは社内とパートナー企業から1千名以上の職員を動員した。燃料を装荷する前に冷却系や安全システムが設計通りに機能しているか1万件以上の設計基準について試験を実施したところ、達成率は95%を越えていたと強調。EDFの担当理事は、「このような良好な結果が得られたことに満足しており、EPR建設プロジェクトにおける決定的な一歩になった」と評価している。 同炉は国内で初めて第3世代の最新設計を採用したことから、土木エンジニアリング作業の見直しや福島第一原子力発電所事故にともなう包括的安全評価の実施などで、当初2012年に予定していた完成は再三にわたり繰り延べられた。また、2015年にアレバ社(当時)傘下のクルーゾー・フォルジュ社が製造した原子炉容器で構造組成に異常のあることが判明。2018年には主蒸気配管の溶接部で品質上の欠陥が認められ、仏原子力安全規制当局(ASN)は昨年6月、FL3の運転を開始する前に溶接部の修理を終えるよう命じていた。これらの対応により、EDFの最新スケジュールでは2022年末にFL3に燃料を装荷する予定。運転開始は2023年にずれ込むと予想されている。FL3の冷態機能試験は2018年1月に完了しており、2019年9月からは高温高圧に対する1次系の健全性等を確認するため温態機能試験が開始された。EDFの発表によると、その多くが初めて行う操作だったが、通常運転時の条件の再現で1次系冷却水の温度303度Cと圧力154バールを達成したほか、2次系を使って1次系を冷却。蒸気発生器の起動や停電試験、タービンを毎分1,500回転させる試験も実施したという。これらの試験を通じて、FL3では偶発的な事象や事故が発生した場合でも機器が適切に機能することが確認されたとEDFは指摘。そのような状況下で、発電所の職員が原子炉を安全に運転する能力も確認できたとしている。(参照資料:EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Feb 2020
1535
ウクライナの国立原子力放射線安全科学技術センター(SSTC NRS)は2月14日、国内で米ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」(=断面図)を建設・運転する際の規制上、設計上の課題を評価するため、同社と了解覚書を締結したと発表した。 覚書の調印式は今年1月、ニュースケール社の事務所があるオレゴン州コーバリスで行われており、これには両者の代表者に加えて米国務省やエネルギー省(DOE)、ウクライナの国家原子力規制検査庁(SNRIU)の代表者らが参加した。ウクライナはすでに2018年3月、国内で米ホルテック・インターナショナル社製SMRの建設計画を進めつつ同技術の一部国産化を目指すため、ウクライナの原子力発電公社(エネルゴアトム社)がホルテック社との協力覚書に調印。2019年1月には、これらにSSTC NRSを交えた3者が国際企業連合を正式に結成し、国内でSMRの建設計画を促進している。 ただし、ホルテック社のSMRは今の所、米国内の設計認証(DC)手続が正式に始まっていない。これに対してニュースケール社製のSMRは、米原子力規制委員会(NRC)がSMRに関して唯一実施している全6段階の設計認証審査のフェーズ4まで終了。すでにカナダやヨルダン、チェコ、ルーマニアで同社製SMRの建設可能性調査に関する覚書が結ばれているほか、2020年代半ばには米国初のSMRとしてDOE傘下のアイダホ国立研究所内での運転開始が見込まれている。 今回の覚書によりSSTC NRSは具体的に、米国で行われているニュースケール社製SMRのDC審査経験に基づき、ウクライナの建設・運転許認可プロセスにおける米国との隔たりについて分析・調査を実施する。SSTC NRSはウクライナでSNRIUが新たな原子力技術を審査・承認する際、主要アドバイザーとして機能している。SNRIUが原子力安全の基準や規制・規則に対するコンプライアンスを確認し、データ分析や報告を行うにあたり、独立の立場の評価結果や技術的助言をSNRIUに提示していることから、SSTC NRSは同覚書を通じてSMR技術がウクライナのエネルギー需要を満たす上でどれほど有効であるかなど、関連する様々な疑問に答える一助になると指摘。評価結果をSMRの許認可プロセスに統合して、国内での将来的な建設につなげたいと述べた。 ニュースケール社も「SSTC NRSは経験豊富かつ評判の高い科学技術支援組織」と評価した上で、「当社のSMR技術をウクライナの将来エネルギーに組み込む最良の方法を探し出してくれるはずだ」とコメント。ウクライナとの覚書は、同社がSMR技術の開発リーダーであるとともに技術革新企業であることを示しており、今後も潜在的顧客となり得る世界中の組織と同様の合意を得るべく協議を続けていきたいとしている。(参照資料:ニュースケール社、SSTC NRS(ウクライナ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Feb 2020
2408
アラブ首長国連邦(UAE)初の原子力発電設備となるバラカ発電所で2018年3月に完成した1号機(韓国製140万kW級PWR)について、連邦原子力規制庁(FANR)は2月17日、運転管理会社のNAWAHエナジー社に60年間有効な運転許可を発給したと発表した。アラブ諸国にとっても初の商業炉である同炉で安全な運転を保証するため、FANRは1万4千ページにおよぶ運転許可申請書を審査。その際、原子炉の設計や安全性その他に関して、すべての規制要件との完璧な適合性確保を目指して、185件以上の広範な点検を行うとともに約2千件の追加情報を請求している。この申請書は、UAEで原子力発電の導入を担当する首長国原子力会社(ENEC)が2015年3月、当時の建設進捗率が約70%だった1号機について、発足前のNAWAHエナジー社に代わって提出していたものである。審査の結果、FANRは1号機の運転・保守に関する要件がすべて満たされていると承認。NAWAHエナジー社は今後、FANRによる24時間体制の点検の下、起動プロセスの第一段階として、同炉に燃料集合体を安全に装荷するための最終的な準備作業を進めるとした。年内の営業運転開始を目指して、数か月間にわたって出力上昇試験を含む試運転を実施すると見られている。同発電所では現在、1号機と同型設計の2号機~4号機の建設工事が同時並行で行われている。2号機の進捗率がすでに95%以上に達しているほか、3号機は92%以上、4号機も83%以上となっている。4基すべてが送電を開始すれば、UAEでは総電力需要量の約25%が賄われる見通しである。1号機の完成以降、NAWAHエナジー社および同社の親会社であるENECは、燃料の初装荷日程を先送りして運転員の訓練など営業運転の準備作業を進めつつ、国際原子力機関(IAEA)を始めとする国内外複数の規制関連機関に1号機の安全性評価を依頼。先月下旬には、世界原子力発電事業者協会(WANO)の専門家チームが同炉で起動前審査(PSUR)を行い、安全な起動と運転を保証する要件すべてが遵守されていると結論付けていた。1号機の運転許可発給について、アブダビ首長国のムハンマド皇太子兼UAE軍副最高司令官はTwitterで、「原子力の平和利用開発を推進するという我が国の政策方針の中で新たな章が刻まれた」とコメントした。IAEAに常駐するUAEのH.アル・カービ大使も、「今回の判断はIAEAや韓国、その他の国際的な規制機関との集中的な共同作業と協力の賜物だ」と評価。UAEの原子力発電プログラムと規制の枠組には、IAEAの安全基準と国際的な良好事例に則して進めることが明記されている点を指摘した。FANRのC.ヴィクトールソン事務局長は、UAEが安全・セキュリティや核不拡散関係の厳しい国際基準を満たすため、過去10年間にIAEAから11もの大型ピアレビュー・ミッションを受け入れ、原子力インフラや法・規制システム、緊急時対策に至るまで、様々な側面から評価を受けた事実に言及している。(参照資料:NAWAHエナジー社、FANRの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Feb 2020
2374
トルコ初となるアックユ原子力発電所(120万kWのロシア型PWR×4基)の建設プロジェクトで、4基分すべての機器とタービン系の製造を担当するロシアのアトムエネルゴマシ(AEM)社は2月12日、同社のボルゴドンスク支部(AEMテクノロジー社)が1号機の原子炉容器(RV)となる上下2つの容器胴で最終溶接作業を完了したと発表した。この建設プロジェクトは2010年5月にトルコとロシアが結んだ政府間協力協定(IGA)に基づいて進められており、2018年4月に地中海沿岸のメルシン地区で着工した1号機の運転開始は2023年に予定されている。2019年7月に同炉用の最初の大型機器としてコア・キャッチャーが建設サイトに到着したほか、同年12月には、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社がトルコで設置したプロジェクト企業が、同発電所をトルコの送電グリッドと接続するための契約を国営送電会社(TEIAS)と締結している。発表によると、10日間にわたったこの作業では、溶接部を150度C~300度Cに加熱した上で最終的な溶接作業を実施した。これに続いて、円筒型になった重さ約320トンのRVをクレーンで高炉の中に入れ、機械的強度を得るための熱処理を2日間行うほか、専門家がX線検査も含めて、幅広い分野の点検を実施するとしている。RVではまた、炉心内のモニタリング・センサーから出力するケーブルや制御棒駆動機構を上蓋の上部に設置する。また、容器胴の上半分には、冷却材を供給・排出するノズルや緊急時に回路が減圧された際に冷却材を注入するノズルも取り付けるため、上蓋と容器胴の接続部分はスタッド(植え込み)ボルトで固定する予定。RVの製造作業と並行して、AEM社は炉内構造物やRV上蓋なども製造中だとしている。(参照資料:AEM社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Feb 2020
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英国の原子力規制庁(ONR)は2月13日、中国製の第3世代原子炉設計「華龍一号」の英国版(UK HPR1000)で実施中の包括的設計審査(GDA)で第3ステップが完了し、最終段階の第4ステップに進展することになったと発表した。GDAは英国で初めて建設される原子炉設計に対して行われる事前設計認証審査で、100万kW級の「UK HPR1000」設計についてはEDFエナジー社による複数の新規原子炉建設プロジェクトに協力する中国広核集団有限公司(CGN)が中心的役割を担い、エセックス州のブラッドウェルB原子力発電所として2基建設する予定である。同設計のGDAは2017年1月に開始され、その第3ステップでは19の技術分野と分野横断的課題に関する詳細な評価作業が行われた。その結果、ONRは「次の段階に進むのに十分な情報が、審査活動の管理会社としてCGNらが設置したジェネラル・ニュークリア・システム(GNS)社から得られており、これまでところ同設計への設計容認確認書(DAC)発給を阻むような安全・セキュリティ上の根本的欠陥は見受けられない」と結論付けた。最終的に同設計にDACが発給されるのは、2021年後半頃になると見られている。同審査では、ONRが対象設計の安全・セキュリティ面について英国の厳しい基準が満たされているか、約5年をかけて評価するほか、環境庁(EA)が環境保護と放射性廃棄物管理の側面について評価作業を実施。現在サマセット州のヒンクリーポイントC原子力発電所として建設中の「欧州加圧水型炉(EPR)」設計については、ONRとEAが2012年12月にそれぞれ、初のDACと設計容認声明書(SoDA)の発給を決定した。また、東芝がNuGen社を通じてカンブリア州のムーアサイドで建設を計画していたウェスチングハウス(WH)社製「AP1000」設計に対しては、WH社が米国で破産申請を行った2017年3月29日の翌日にONRらがDACとSoDaを発給。同年12月には、日立製作所がホライズン社を通じてウェールズ地方アングルシー島で建設予定だった日立GE社製の「英国版ABWR」設計にも、これらを発給済みとなっている。「UK HPR1000」の今後のGDAに関してONRは、「これまでの作業は順調に進展中だが、GNS社の出資企業であるCGNとその子会社およびEDFエナジーの親会社には未だ成すべき作業が山積しており、ステップ4でも引き続き同設計の安全・セキュリティ面を厳しく評価していく」としている。(参照資料:ONR、GNS社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Feb 2020
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米国のD.トランプ大統領は2月10日に2021会計年度(2020年10月~2021年9月)の予算教書を公表し、エネルギー省(DOE)予算として2020年度で成立した予算レベルから8.1%減の354億ドルを要求していることを明らかにした。このうち13億6,000万ドルが原子力局(NE)予算で、新型炉の開発支援費用や「多目的試験炉(VTR)」の建設費用、国産ウランの備蓄経費などを含める一方、ネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料等の最終処分場関連では、同政権による例年の予算教書と異なり建設許可申請書の審査手続予算が含まれていない。原子力規制委員会(NRC)の2021会計年度予算要求でも同様で、DOE予算ではその代わりに、「(廃棄物の)中間貯蔵と放射性廃棄物基金の管理」プログラムに2,750万ドルを計上。放射性廃棄物を一時的に集中貯蔵する施設の開発・実行プログラムを進めるほか、原子力発電事業者から徴収した「放射性廃棄物基金」が他目的に流用されないよう監督を継続する。この中で、ユッカマウンテンの維持およびその環境要件とセキュリティ関連の活動も行うとしている。ユッカマウンテン関係でトランプ大統領は、2月7日のTwitterに「ネバダ州の意見を尊重する。これまでの政権は長年、持続的な解決策を見つけられなかったが、私の政権は革新的な解決アプローチを必ず探し出す」と投稿。これに対して、ネバダ州のS.シソラック州知事は2月10日、ユッカマウンテン関係費用が予算教書に含まれなかったことを歓迎する内容の書簡を担当官に手渡している。原子力に関して予算教書は、その他のエネルギー源と同様、国内エネルギー・ミックスにおける重要要素だとしており、様々な先進的原子力技術開発プログラムへの支援を約束。国内原子力産業の再生と諸外国に対する技術的競争力の強化に向けて、12億ドルを原子力研究開発(R&D)に充当した。この中では、高速中性子の照射施設となるVTRの建設費用として2億9,500万ドルを計上。民間セクターにおける新技術の開発・実証を支援する高速炉としては、最初のものになる。また、原子燃料サイクルの能力拡充を支援するため、予算教書は市場でウラン供給が途絶した場合の追加保証として、国内でウランの生産・転換・供給を行う制度の設置経費1億5,000万ドルを計上。これはトランプ大統領が昨年7月、「米国はウランの約93%を輸入するなど国産ウランの供給面で大きな課題に直面しており、これは国家的な安全保障問題だ」と判断、作業グループを設置したことに端を発している。予算教書はさらに、米国の原子力産業界が今なお苦慮している大きな課題の1つが使用済燃料の処分問題だと指摘。この課題は余りにも長期にわたり膠着状態にあるが、トランプ政権は使用済燃料の法的な引取・管理義務を全面的に履行する考えであり、ユッカマウンテンの足踏み状態をいつまでも傍観しているつもりはない。新たな推進力を得て前進するため、代わりとなる解決策や直ぐにでも実行可能な道筋の開発を始めていると強調した。予算教書ではこれと並行して、盤石な中間貯蔵プログラムの実施を支援する方針。国内の放射性廃棄物を貯蔵・輸送・処分する代替技術の研究開発、地元の受け入れ意欲が高まるような処分システムの開発を進めていくとしている。(参照資料:DOE、予算教書(DOE分)、NRC、ネバダ州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Feb 2020
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国際エネルギー機関(IEA)は2月11日、世界のエネルギー部門から排出されるCO2の量が2019年は過去2年続いた増加傾向が停止し、2018年実績とほぼ同レベルの約330億トンだったと発表した。世界経済が2.9%拡大するなか、CO2排出量がさらに増加するとの予想に反して「横ばい」となったのは、主に先進経済諸国で発電にともなう排出量が減少したからだと説明。これらの国では、風力や太陽光など再生可能エネルギーの役割が強化されるとともに、石炭火力から天然ガス火力への転換、原子力発電所の高稼働などが功を奏した。日本については特に、近年再稼働を果たした商業炉により原子力発電量が40%拡大し、石炭や天然ガス、石油による発電量を押し下げたと指摘。CO2排出量も対前年比4,500万トン(4.3%)減の10億3,000万トンになったが、これは2009年以降最速の削減ペースであるとともに、発電部門での最大下げ幅になったと強調している。「横ばい」の他の要因として、IEAはいくつかの国で気候が穏やかだったことと、新興国市場の一部で経済成長が鈍化したことなどを挙げた。このような結果についてF.ビロル事務局長は、「CO2排出量の増加傾向が一時的にただ停止したと言うよりも、2019年に決定的なピークを迎えたと後々に記憶されるよう、今こそ最大限の努力を傾注する必要がある」と明言。世界にはそのためのエネルギー技術が存在することから、それらはすべて活用しなければならない。IEAとしては、排出量の削減に向けて各国政府や企業、投資家、温暖化防止に純粋に取り組んでいるリーダー達との協力体制を構築中だとした。同事務局長はまた、排出量の増加が止まったことは、この10年間で地球温暖化に立ち向かえるとする根拠になっていると説明。クリーン・エネルギーへの移行が進んでいる証であり、一層意欲的な政策や投資によってCO2の排出量に有意な変化をもたらすことができると示された。このような目標の達成支援で、IEAは今年6月に「世界エネルギー見通し(WEO)特別報告書」を刊行する予定。2030年までにエネルギー関係のCO2排出量を3分の一削減し、世界を長期的な温暖化防止目標の達成に向かわせる方策を策定する。7月6日にはさらに、「クリーン・エネルギーへの移行サミット」をパリで開催し、主要各国の閣僚や関係企業のCEO、投資家などとともに意欲的な解決策を探るとしている。IEAによると、先進経済諸国におけるCO2排出量の実質的な低下は、他の国で排出量が引き続き増加するのを相殺する結果になった。米国は国ベースの下げ幅が最大値を記録し、2019年は1億4,000万トン(2.9%)の削減となった。これにより、米国では2019年の排出量がピーク時の2000年から約10億トン削減されたことになる。欧州連合(EU)諸国の排出量も、2019年は発電部門の排出量が下がったため、全体で1億6,000万トン(5%)の排出量が削減された。原因としては天然ガスの発電量が初めて石炭火力を抜いたほか、風力発電量も石炭火力と肩を並べるまでに増加したとしている。一方、残りの国々では2019年にCO2排出量が合計4億トン近くまで増大。増加分の約80%は、石炭火力発電量が引き続き上昇したアジア諸国のものだと指摘した。先進経済諸国では各国ともに発電部門からの排出量が1980年代の後半レベルまで低下したが、この当時の電力需要量は現在の3分の一程度だった。これらの国々では、再生可能エネルギーや原子力による発電量の増加、石炭火力からガス火力への転換、電力需要量の低下などにともない、石炭火力の発電量が約15%低下している。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Feb 2020
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仏原子力安全規制当局(ASN)は2月6日、国内で稼働する8基の130万kW級PWRで、地震発生時に非常用ディーゼル発電機を動かす機器の一部に不具合があると報告された件について、国際原子力機関(IAEA)の国際原子力事象評価尺度(INES)で下から3番目の「レベル2:異常事象」に判定したと発表した。この事象は、仏国内すべての原子炉を所有・運転するフランス電力(EDF)が1月31日にASNに伝えたもので、外部からの電力供給途絶につながるような地震が発生した際、機器の耐震面の脆弱性により所内に電力を供給する非常用発電機の稼働を保証できないという内容。これらの不具合は昨年2月の点検時にASNが確認しており、具体的には(1)弾性パイプを接続する金具の接続不良、(2)パイプとその支持構造の一部における腐食、(3)電源盤の一部の接続不具合、――の3タイプだとしている。 ASNによると、この事象が周辺住民や環境に影響を及ぼすことはないが、1つの原子炉で地震発生時に非常用発電機が2つとも機能不全に陥った場合、影響が出る可能性が懸念される。このため、INESの「レベル0:安全性に影響を与えない」から福島第一原子力発電所事故の「レベル7:深刻な事故」まで、8段階評価のうち「2」に判定したと説明。対象となる原子炉としては、フラマンビル1、2号機、パリュエル1、3、4号機、ベルビル1号機、ノジャン・シュール・セーヌ1号機、およびパンリー2号機の8基を挙げた。ASNはまた、不具合がそれほど深刻ではなく、2つの発電機が同時に機能しなくなる心配がない別の8基の130万kW級PWRについては「レベル1:運転制限範囲からの逸脱」に指定。これらは、パリュエル2号機、サンタルバン・サンモーリス2号機、ベルビル2号機、カットノン1、3号機、パンリー1号機、ショーB2号機、シボー1号機となっている。これらの不具合はすべて、原子炉関係のものはEDFが修理するほか、弾性パイプ接続金具の不適切な組立に関しては、次回の定検時までモニタリングを強化した上で取替を実施する。なお、フラマンビル2号機は現在定検に入っていることから、すでに修理作業を実施中だとしている。(参照資料:ASN(仏語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
10 Feb 2020
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国際原子力機関(IAEA)で昨年12月、故天野事務局長の後任に就任したばかりのR.M.グロッシー事務局長は2月5日、米ワシントンDCで開催されたカーネギー国際平和財団のイベントで講演し、「原子力の安全・セキュリティからガン治療、IAEA内での男女比平等化に至るまで、幅広い分野に特別な注意を払いIAEA業務の再調整を図りたい」との抱負を述べた。同事務局長は「福島第一原子力発電所の事故後も数多くの国が原子力発電を拡大、あるいは自国のエネルギー・ミックスへの導入に関心を抱いており、地球温暖化防止策として果たす役割も注目されている」と説明。拡大国として中国やインド、ロシアを、新規導入国としては初号機を建設中のベラルーシ、アラブ首長国連邦(UAE)の例を挙げ、原子力専門家や外交官、ジャーナリスト等の聴衆を前に「原子力発電事業は確実に成長している」との認識を強調した。IAEA予算の最大拠出国である米国への公式訪問は、同事務局長が昨年12月にエジプトおよび国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP25)の開催国スペインを訪問したのに続くもの。前日の4日にはM.ポンペオ国務長官やR.オブライエン(国家安全保障担当)大統領補佐官を含む複数の米国政府高官と協議し、世界の平和と発展に向けたIAEAの使命遂行に対し引き続き強力な支援が約束されたとした。また、米原子力規制委員会(NRC)のK.スビニッキ委員長とも会談の場を設けたとしている。今回の講演のなかでグロッシー事務局長は、原子力エネルギーとその他の分野における原子力技術の利用が拡大した結果、世界では部分的に核物質の使用量が継続して増大していると指摘。これにより、安全・セキュリティ面の国際協調を強化する必要性が高まりつつあると述べた。同事務局長は「セキュリティ上の注意を払わずに、原子力ビジネスを行うことは出来ない」とした上で、IAEAはこの分野でさらに思い切った努力を払う必要があると明言。原子力テロの防止対策に向けた国際協力でIAEAが果たす重要な役割を強調するとともに、IAEAが翌週の10日から14日までウィーンに閣僚級の出席者50名以上を招き、核セキュリティ国際会議(ICONS)を開催予定であることを明らかにした。また、IAEAのその他の活動分野に関して事務局長は、「171加盟国の多くが、ガン治療や水質管理、食糧安全保障などの面でIAEAから恩恵を受けている」とした。この関係で、アフリカ大陸における28か国以上の人々が、未だに放射線によるガン治療を受けられないことは「恥ずべきこと」だと指摘。IAEAがこの部分でやれることは、まだまだ沢山あるとの認識を示している。 (参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月6日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Feb 2020
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フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)は1月30日、一般に「小型モジュール炉(SMR)」と呼称される原子炉の安全な運転条件について取りまとめた報告書を公表した。SMRに対して国内外の関心が高まっていることから、その安全性評価など特有の課題を議論する内容であり、許認可体制についても原子力法の改正等を対象項目とすることを検討中だとしている。 フィンランドでは今のところSMRを建設する具体的な計画は存在しないものの、STUKは今後のことを考慮した準備体制を整える方針である。STUKのP.ティッパナ長官は「我々は新型の原子力プラントに適用される安全要件についても関係者に考慮すべき内容を通達できるようにしておかねばならない」と説明。そうしたプラントの安全評価に関してもSTUKが状況に応じて対応できるようにしておく必要があると述べた。 発表によると、この件については現在、同国の経済雇用省が作業部会を設置して調査を実施中。課題の1つは原子力施設に関する既存の法定許認可システムを、どのようにしてSMRの許認可や放射線安全モニタリング等に適合させるかであるとした。また、世界では近年、SMR開発に莫大な投資が行われており、伝統的な原子力発電企業に加えて市町村の自治体、プロセス産業なども新たにSMRの電力とプロセス熱の利用に関心を表明しているとした。STUKは今後10年以内に、国内市場にもSMRなどの新型原子力プラントの投入が予想されることから、今回の報告書ではSMRの安全性評価や許認可、モニタリング等で持続可能な条件を設定するため、当局や政策立案者、科学コミュニティ、エネルギー企業らが行う議論に対してガイドラインを提示。技術の進展にともない、当局の規制環境では社会の期待に直ちに応えられないようなリスクも生じることを想定した上で、そうした状況への対策については次のような認識の共有を図りたいとしている。すなわち、(1)SMR向けに法体系を修正する必要性を見極める:既存の許認可手続きや安全要件は主に軽水冷却方式の大型炉向けに設定されている。今こそ政府が原子力法を包括的に改正する準備を進め、これらとは大幅に異なるSMR用の許認可システムを策定する好機である。(2)関連の国際協力に参加することが重要:SMR製造業者の主な目的は国際市場向けにSMRを量産することにあるが、ここでの課題は国毎の安全要件が少しずつ異なる点。様々な国の安全規制当局が協力してSMRの安全要件を調和させれば、適切な許認可システムや実行可能な良好事例が明確になるため、STUKはこの作業に積極的に関わっている。(3)研究と経験に基づく知見がSMRの安全性の基盤になる:SMRの性質はそれぞれに異なり、いくつかのSMRでは現在世界で稼働中の原子炉とも違っている。このため、SMRの安全性は実地で証明しなければならず、それぞれの安全確保対策を設計・評価する際も、膨大な量の研究や経験に基づく知見、実験・計算などが必要になる。(4)SMRの安全性は全体的な評価が必要:SMRは地域暖房用のプロセス熱を供給する目的のものがあるため、住宅地に比較的近い地点での設置がしばしば検討されるが、緊急時に備えた予防的防護措置の準備区域については適切に配慮する必要がある。(5)放射性廃棄物の管理を確実に:フィンランドでは世界に先駆けて放射性廃棄物の地層処分場を建設中であり、軽水炉方式のSMRについては同様の措置が有効と考えられる。ただし、SMRの放射性廃棄物管理用に新たな責任体制や組織モデルが必要になるかも知れない。 (参照資料:STUKの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月30日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Feb 2020
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米ノースカロライナ州ウィルミントンを本拠地とするGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は2月3日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」をチェコで建設した場合の経済的・技術的な実行可能性を探るため、チェコの国営電力会社(CEZ)と覚書を締結したと発表した。CEZ社はすでに昨年9月、SMR設計として唯一米原子力規制委員会(NRC)の設計認証(DC)審査が行われているニュースケール・パワー社製パワー・モジュール(NPM)について、国内での建設可能性を模索する覚書を同社と結んでいる。「BWRX-300」では今のところDC審査の日程が発表されていないものの、同設計の建設に向けた実行可能性調査の実施でGEH社はバルト三国のエストニア、東欧のポーランドと覚書を締結済み。先月30日には、多くの許認可申請に共通する安全審査事項をまとめた同設計の技術文書(トピカルレポート)をNRCに初めて提出したと発表、NRCの正式な許認可プロセスとして先行安全審査が始まったことを強調している。チェコではテメリンとドコバニの2つの原子力発電所で総発電電力量の約3分の1を賄っているが、国営送電会社は昨年秋、これらの運転期間満了や経年化した石炭火力発電所の閉鎖にともない、同国は2030年初頭から次第に電力を輸入するようになるとの予測報告書を公表した。チェコ政府は近い将来、このような石炭火力発電所を新規の原子炉や再生可能エネルギーで代替することを計画しており、同国のA.バビシュ首相は昨年11月、ドコバニ原子力発電所(51万kWのロシア型PWR×4基)(=写真)で2036年にも新たな原子炉を完成させる方針を表明した。GEH社による今回の発表の中でも、チェコのK.ハブリーチェク副首相兼産業貿易相が「チェコ政府にとって技術革新は最優先事項であり、SMRは原子力発電の将来を担う可能性がある」と強調。原子力発電分野の研究開発におけるCEZ社の集中的な取り組みに満足の意を表するとともに、「GEH社との協力により世界でも最高レベルにあるわが国の原子力研究がさらに進展する」との見方を示した。また、CEZ社のD.ベネシュCEOは「新たなエネルギー技術やソリューションには、当社も重点的に取り組んでいる」とした。その上で、同社グループの中でも特に「主要な関係機関の国立原子力研究機関(UJV Rez)がSMR関係の研究を進めており、SMRは将来的に無視できない重要選択肢になり得る」と指摘。このような背景から、GEH社との共同作業は同社にとって自然な展開だと説明している。 (参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月4日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Feb 2020
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南アフリカ共和国の国営電力会社ESKOM社は1月31日、ペブルベッド・モジュール型高温ガス炉(PBMR)の商業化を目指して、かつて設立したPBMR社を売却するため、前日付で同設計の商業化に対する関心表明(EOI)を産業界から募集したと発表した。南アにおけるPBMR開発計画はすでに中止されているが、小型モジュール炉(SMR)の1つであるPBMRの設計開発・製造・建設技術に加え、PBMR以外でも様々な原子炉設計に利用出来る3重被覆層・燃料粒子「TRISO」燃料の製造技術も売却することになったもの。売却先となる企業には、知的財産権保持のため保存整備(C&M)状態にあるPBMR社の株式購入や、関係技術の商業化への投資を求める方針で、これにより市場には無制限の自由オプションが提供されるとESKOM社は強調した。また、EOIを募集する具体的な目的は、PBMRへの関心の質を厳しく見極める市場調査であり、次のステップとして提案募集(RFO)や情報依頼書の募集(RFI)をかける際、その範囲を特定するためだと説明。提出締め切り日は2月28日となっている。PBMRは電気出力16.5万kW(熱出力40万kW)の小型ガス炉で、これに加えて750度Cの水蒸気を供給可能な蒸気発生器とで構成される。炉心溶融の心配が無いなど安全性の高さが特長で、大型炉と比べて初期投資が少なくて済むほか、送電線が本格的に整備されていない地域にも適したプラントと位置付けられている。PBMR社はESKOM社が大株主となって1999年に設立したもので、株式の一部は米国のエクセロン社やウェスチングハウス社が一時期保有。日本の三菱重工業も2001年にガス・タービン発電機のフィージビリティ・スタディでPBMR開発計画に参加したほか、2010年2月には熱出力を20万kWに半減させた実証炉の共同開発を検討することでPBMR社と合意していた。2010年9月に南ア政府がPBMR開発計画の中止を発表した際、理由として同炉の潜在的顧客や投資パートナーの確保に行き詰まったことや、計画を継続した場合に少なくとも300億ランド(約2,200億円)の追加投資が必要になること、近年の経済不況により開発の優先順位が変更されたことなどを指摘。南ア政府はまた、PBMR計画のその後に関して(1)PBMR社をC&M状態に置き、その資産と知的財産権を保護する、(2)南ア核燃料公社の燃料開発工場で廃止措置を取り、冷却材であるヘリウムの試験施設は密封管理下に置く――などを勧告していた。(参照資料:ESKOM社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月31日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Feb 2020
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は1月28日、ベロヤルスク原子力発電所で2016年10月から営業運転中の高速実証炉「BN-800」である4号機(FBR、88.5万kW)に、初回分の取替用ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料集合体装荷したと発表した。同炉は燃料交換を含む定期検査を終え、すでに運転を再開している。運転開始当時、同炉の初期炉心はウラン燃料とMOX燃料の両方が含まれる炉心であり、今回の取替により炉内のMOX燃料集合体は合計18体となった。民生用原子力発電公社のロスエネルゴアトム社とロスアトム社の燃料製造子会社であるTVEL社は、今年中にさらに180体のMOX燃料集合体を同炉に装荷し、2021年末までには残りすべてのウラン燃料をMOX燃料に交換。ロシアの歴史上初めて、フルMOX炉心で運転を行うとしている。高速炉用のMOX燃料を産業規模で生産することは、2020年までを展望した「ロシア連邦目標プログラム」の目標の1つに指定されていた。ここでは高速炉とクローズド核燃料サイクルの技術開発が最優先に行われており、ロスアトム社は「熱中性子炉と高速炉をセットで稼働」という2つの要素を持つシステムに原子力発電を移行させる戦略である。同社はこれらによって(1)原子力発電所の燃料物質の量を飛躍的に増加できる、(2)使用済燃料をただ貯蔵しておくのではなく、リサイクルが可能になる、(3)施設内に蓄積されている劣化ウランとプルトニウムを有効利用できる――など、様々な重要タスクが解決されるとの認識を示している。ベロヤルスク4号機の初期炉心は、モスクワ州エレクトロスタリにあるTVEL社のエレマシュ工場で製造されたウラン燃料集合体と、ウリヤノフスク州ディミトロフグラードの国立原子炉科学研究所(RIAR)で製造されたMOX燃料集合体で構成されていた。今回のMOX燃料集合体は商業炉の使用済燃料から生成されたプルトニウム酸化物と、ウラン濃縮後の劣化六フッ化ウランから生成された劣化ウラン酸化物を材料に、クラスノヤルスク地方ゼレズノゴルスクにある鉱業化学コンビナート(MCC)で製造されたもの。MCCでは2013年8月にBN-800用のMOX燃料製造施設(定格製造能力:60トン/年)が本格着工、2014年12月から製造能力6トン/年の規模で運転が始まり、取替用MOX燃料一式については2018年後半から製造開始したとしている。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月28日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Feb 2020
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米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は1月30日、同社製小型モジュール炉(SMR)の「BWRX-300」設計について、米原子力規制委員会(NRC)の許認可プロセスが昨年12月30日付けで正式に始まったと発表した。この日、多くの許認可申請に共通する安全審査事項をまとめた技術文書(許認可トピカルレポート:LTR)を初めてNRCに提出したもので、これによりNRCは同設計の先行安全審査を開始する。本格的な許認可プロセスの1つである設計認証(DC)審査の実施についてGEH社は何も言及していないが、LTRは顧客となる事業者が後に予備安全解析書(PSAR)を作成・提出する際、基礎的な文書になると説明している。発表によると「BWRX-300」は、2014年にNRCから設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化(BWR)」がベースになっており、自然循環技術や受動的安全システムなど画期的な技術を採用した電気出力30万kWの軽水炉型SMR。原子燃料としてはすでに承認された設計を利用するほか、機器類やサプライチェーンも技術的に実証済みのものを取り入れている。また、原子力産業界で深刻な課題となっているコスト面の対策として、同社は設計開発の全段階を通じてコストを目標内に収めるアプローチを採ったという。具体的には、設計の大幅な簡素化等によって「BWRX-300」の資本コストは従来型の大型炉やその他の軽水炉型SMRと比べて大幅に削減され、コスト的にコンバインドサイクル・ガス発電や再生可能エネルギーより競争力を持った設計になると強調している。「BWRX-300」で許認可プロセスが始まったことについて、GEH社のJ.ボール上級副社長は「商業化に向けた重要な節目になった」と指摘。CO2を排出しないエネルギー源への需要は世界的に高まりつつあるとした上で、「当社はSMRの画期的な技術に強い関心を抱いており、米国で許認可を取得する努力を継続していく」との決意を述べた。同社製「BWRX-300」については、これまでに北欧バルト三国のエストニアや東欧のポーランドが国内での建設に関心を表明、可能性調査の実施に向けた覚書がすでに現地企業との間で結ばれている。GEH社はまた、同設計をカナダでも建設可能にする方針で、カナダ原子力安全委員会が提供する許認可申請前設計審査(ベンダー審査)が始まったことを昨年5月に明らかにしている。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
31 Jan 2020
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アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電導入事業を担当する首長国原子力会社(ENEC)および同社の子会社で発電所の運転管理を担当するNAWAHエナジー社は1月28日、初号機となるバラカ原子力発電所1号機で起動の準備が整っていることを世界原子力発電事業者協会(WANO)が確認したと発表した。これは、WANOの原子力国際専門家チームが同炉の起動前準備状況について広範に評価した結果に基づいている。今後すべての起動要件が遵守されていることを連邦原子力規制庁(FANR)が確認し、NAWAHエナジー社に運転認可を発給し次第、今年の第1四半期にも同社は1号機に燃料を装荷し、出力上昇試験に向けた起動シークエンスを開始するとしている。同発電所建設サイトでは2012年7月以降、韓国製の第3世代140万kW級PWR「APR1400」×4基が順次着工しており、2018年3月には1号機の竣工式が執り行われた。現在、2号機の建設進捗率は95%以上、3号機が91%以上、4号機は83%以上で、発電所全体の進捗率は93%に達しているが、運転員の訓練とFANRからの承認取得に時間を要するため、ENECらは1号機の燃料装荷日程を延期して国内外の複数の規制機関等による評価審査を実施していた。発表によると、昨年11月に1号機で実施されたWANOアトランタ・センターの「起動前審査(PSUR)」は、産業界の国際基準に沿った評価審査であると世界的に認識されており、ENEC社とNAWAH社はともにWANOの会員組織となっている。WANOの専門家チームは1号機の安全な起動と運転、すなわち運転員の能力や運転管理、作業管理、緊急時対応に至るまで、多数の機能について審査を実施した上で今回の最終結果をUAE側に伝えたもの。原子力関係機関とのこのような国際協力は、UAEが2008年の政策「原子力平和利用開発の可能性と評価」の中心項目となっている。この政策でUAEは、原子力発電所の操業に透明性を持たせるとともに最高レベルの安全・セキュリティを追求する主要な手段として、WANOやその会員と互いの評価結果や経験を共有し、フィードバックするとの目標を設定していた。ENECのM.アル・ハマディCEOは、「今回の結果から安全・セキュリティ等の追求に向けた決意が我々のプラントで全面的に実行されていることが国際的に認知された」と強調。今後60年間にわたって、クリーンで安全、信頼性の高い電力をUAEの成長のために供給できるよう、NAWAHエナジー社を支援するとした。NAWAHエナジー社のM.レデマンCEOも「パートナーらと緊密な連携を続け、運転認可の取得準備が整っていることをアピールしていきたい」と述べた。(参照資料:ENECの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月28日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
30 Jan 2020
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北欧バルト三国の1つ、エストニアのエネルギー企業であるフェルミ・エネルギア社は1月28日、同国初の原子力発電プラントとなる小型モジュール炉(SMR)の建設に向けた調査で、原子力発電所を運転するフィンランドの国営電気事業者のフォータム社、およびベルギーの大手エンジニアリング・コンサルティング企業であるトラクテベル・エンジー社の3者で協力覚書を締結したと発表した。フェルミ・エネルギア社は第4世代炉の導入を目的に、エストニア原子力産業界でSMR開発/建設を支持する専門家らが起ち上げた企業である。同国が加盟する欧州連合は(EU)2018年6月、バルト三国とポーランドを2025年末までに旧ソ連・東欧圏をカバーする旧ソ連の総合電力システム「IPS/UPS」から切り離し、欧州24か国が共同管理する「大陸欧州送電網」に統合するという政策ロードマップに全関係国が調印したと発表。ロシアからの電力輸入停止まで期限が迫っていることから、同社はSMRの形で原子力発電を国内に導入してEUの「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」目標の達成に貢献するとともに、エストニアのみならずバルト三国全体において、天候に左右されることなく信頼性の高いCO2排出ゼロのエネルギーを供給する体制を確立したいとしている。フェルミ・エネルギア社はすでに昨年9月、GE日立・ニュクリアエナジー社が開発中のSMR「BWRX-300」を国内で建設するための可能性調査の実施で同社と協力覚書を締結した。このほか、英国のモルテックス・エナジー社、カナダのテレストリアル・エナジー社、米国のニュースケール・パワー社それぞれが開発するSMRについても、国内で建設する選択肢として検討中と伝えられている。同社はまた、今回の発表のなかで使用済燃料の管理やSMR建設のスケジュール、計画立案等について、詳細に検討するための了解覚書締結に向け、欧州の原子力企業2社と協議中だと表明。これらの調査検討を年内に完了し、2021年初頭に公表する方針だ。今回の3者の協力覚書で最も意義深い側面として、同社は原子力発電事業者との実際の共同作業を通じて相互理解が得られる点を挙げた。原子力発電を導入するには様々な要素を徹底的に分析し、他のエネルギーオプションより競争力が備わるよう開発する必要があるとした上で、同社はすでに最良の解決策を見つける作業の初期段階にあり、後の段階で相互理解は一層深まることになると述べた。また、協力覚書の結果、同社はEU域内で最初のSMR建設プロジェクトを主導する企業となり、その建設ノウハウと能力でエストニアを支援する協力モデルが構築されると説明。SMRに適した許認可体制や軽水炉型SMRの事前立地調査等についても、3者で集中的に研究していく方針を明らかにした。(参照資料:フェルミ・エネルギア社(エストニア語)、フォータム社、トラクテベル・エンジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月28日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Jan 2020
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カナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は1月24日、使用済燃料の深地層最終処分場建設計画で立地候補地点として残っている2地点のうち、オンタリオ州南部のサウスブルース地域の地主らと調査のための立入等で合意したと発表した。これにより、NWMOは今後数か月のうちに同地域で試験抗の掘削や基本的な環境モニタリング等の作業を開始し、処分場建設地としての適性を評価する。NWMOは同じくオンタリオ州の北西部イグナス地域でも、2017年11月から同様の調査を実施中で、2023年までにこれらのうち使用済燃料の安全かつ長期的な処分に適し、施設の受け入れに協力的な好ましい1地点を最終的に確定する。昨年11月の時点では、サウスブルース地域と隣接するヒューロン=キンロス地域も候補地点に含まれていたが、NWMOは今回、同地域を潜在的な候補から外すと明言。ただし、サウスブルース地域の隣接区域として、今後もサイトの選定活動に大きな役割を果たすと述べた。カナダでは使用済燃料を直接処分するための国家方針として「適応性のある段階的管理」(APM:Adaptive Phased Management)が2007年に採択され、NWMOは処分の実施主体として、処分場の建設から操業までを含む「サイト選定プロセス」を2010年に開始した。2012年9月末までに国内の22地点が施設の受け入れに関心表明したが、NWMOは2017年12月までにこれらをオンタリオ州内の5地点まで絞り込んだ。それ以降はプロセスの第3段階として、これらの自治体の「潜在的な適合性の予備的評価」を実施中。机上調査を行う第1フェーズを終えた後、地質学的調査や制限付き掘削調査などの現地調査を行う第2フェーズの作業を進めている。現地調査の実施権取得を目的とした「土地への立入プロセス」は、2019年5月にサウスブルース地域で始まっており、NWMOは今回合意文書を交わした地主も含めて複数の地主と交渉。これまでに合計約526ヘクタールの土地でこの権利を確保した。合意文書には、NWMOが土地を購入する取引のほかに、選定した土地で調査を実施しつつも地主が土地を継続的に利用できる「リースバック」取引も含まれるが、仮にこれらの土地で最終処分場を建設する場合、NWMOはこれらを購入することになっている。NWMOは今後さらに数か月から数年間にわたり、既に合意を得た土地に隣接する地主らとも協議を続け、処分場の建設に必要な約607ヘクタールまで土地を追加で確保していく方針である。(参照資料:NWMOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月27日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Jan 2020
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英国で小型モジュール炉(SMR)の開発企業連合を率いるロールス・ロイス社のP. ステイン最高技術責任者は1月24日、同国の公共放送局BBCのインタビューに答え、2029年までに同社製SMR初号機の完成と運転開始を目指していることを明らかにした。同社の企業連合には、国内の大手エンジニアリング企業や建設企業であるアシステム社やアトキンズ社、レイン・オルーク社などが参加。発表によると、英国原子力産業界はSMRのような小型原子炉であれば、工場で大量生産して設置場所までトラック輸送ができ、洋上風力発電のような再生可能エネルギーと競合できるレベルまで低コスト化が可能と認識している。ステイン氏は、ヒンクリーポイントC原子力発電所の大きさの16分の一程度というSMRを約10エーカー(約4万平方メートル)の敷地で建設できるとしており、カンブリア地方やウェールズ地方など、閉鎖済みの原子力発電所も含めた3地点で10~15基のSMR建設を計画中だと述べている。英国ではエネルギー気候変動省(DECC)(当時)が2016年3月、英国にとって最適なSMR設計を特定するためのコンペを開始し、SMR技術の開発業者や電気事業者、潜在的投資家等から関心表明(EOI)を募った。2017年12月に同コンペの終了後、DECCを改組して発足したビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、先進的モジュール炉(AMR)の実行可能性・開発(F&D)プロジェクトで改めてコンペを実施。2018年6月に民生用原子力部門との戦略的パートナーシップとなる「部門別協定」を発表した際、BEISはAMRの研究開発資金として5,600万ポンド(約79億8,000万円)を充てるとしたほか、同年9月にはこの中から400万ポンド(約5億7,000万円)をコンペの第1フェーズで選定した企業8社の実行可能性調査用に提供するとしていた。この8社の中にロールス・ロイス社は含まれなかったが、同社はこれとは別枠で2019年11月、BEIS傘下の戦略的政策研究機関「UKリサーチ・アンド・イノベーション(UKRI)」から、英国政府の「産業戦略チャレンジ基金」の中から初回の共同投資金として1,800万ポンド(約25億6,000万円)を受けることが決定。同社はまた、ヨルダンで同社製SMRを建設するための技術的実行可能性調査実施に向け、2017年11月にヨルダン原子力委員会と了解覚書を締結した。2018年2月には、風力や太陽光よりも競争力のある英国型SMRの実証モジュールを開発するため、ロールス・ロイス社が産業界側の窓口を勤める英国政府の「先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)」と契約を結んでいる。今回の発表でロールス・ロイス社は、「過去数年間に複数の大型炉建設プロジェクトが資金調達問題により凍結されたが、再生可能エネルギーのコストが急落するなか、SMRでコスト削減の可能性があることは、資金面で苦戦を強いられてきた原子力産業界にとって珍しく明るいニュースだ」と指摘。コスト削減の秘訣は、先進的デジタル溶接法やロボット組立等で予め製造したパーツを建設サイトで組み立てることであり、このように原子炉建設費を大幅に削減することで、電気料金を一層安く抑えることができると強調した。同社はまた、SMRの輸出で大量生産によるスケールメリットを実現し、コスト面の障害を克服したいと表明。これに関しては地元メディアの情報として、2,500億ポンド(約35兆6,000億円)規模の輸出市場で出力44万kWの同社製SMRの建設コストを約17億5,000万ポンド(約2,500億円)と試算した上で、は1MWhあたり60ポンド(約8,500円)を下回ること、すでに複数の外国政府から書面で関心表明があり、交渉中であると同社が述べたことが伝えられている。(参照資料:BBCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月24日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Jan 2020
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