ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社の傘下企業で燃料製造を専門とするTVEL社は1月20日、子会社であるシベリア化学コンビナート(SCC)の化学・冶金プラントで、鉛冷却高速炉(LFR)用ウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料の新しい試験燃料集合体が完成し、受け入れ試験が完了したと発表した。試験燃料を使って製造した燃料棒4本が、それぞれ試験燃料集合体に組み込まれたもので、今後は原子炉試験を実施するため、今年の第1四半期中に複数の高速炉が稼働するベロヤルスク原子力発電所に移送するとしている。発表によると、これらの試験燃料(ETVS-22、ETVS-23、ETVS-24)は実際の操業時に近い条件下で製造されている。核燃料サイクルの確立に向け、実績豊富なナトリウム冷却高速炉(SFR)に加えてLFRの研究開発も並行して実施するという「ブレークスルー(PRORYV)プロジェクト」の一環として開発されたもので、2011年に始まった同プロジェクトでは、「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」として電気出力30万kWのLFRパイロット実証炉「BREST-300」をSCC内で建設するほか、同炉用のMNUP燃料製造加工モジュールと専用の使用済燃料再処理モジュールも併設予定。今回完成した燃料の技術は、燃料製造加工モジュールで活用されることになる。ロスアトム社はまた、PDEC建設の第2段階として「BREST-300」を2026年末までに完成させるため、昨年12月に総額263億ルーブル(約465億円)の総合建設契約をTITAN-2社と締結している。「BREST-300」用試験燃料集合体の原子炉試験は、すでに出力60万kWのベロヤルスク3号機(BN-600)で始まっており、今回完成した燃料の原子炉試験はこれに続いて行われる。燃料の受け入れに関する専門委員会では、TVEL社の代表のほかにロシア無機材料研究所(VNIINM)、エネルギー技術研究所(NIKIET)、実機機械製造設計局(OKBM Africantov)などの専門家が出席。これらの委員は最新のMNUP試験燃料集合体について、定性的・定量的な特性や溶接部の品質、設計文書との適合性、燃料集合体としての構造や表面部分に放射能汚染がないか、等をチェックし、これらが技術文書と設計文書の要件を完全に遵守していることを確認した。 (参照資料:TVEL社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月22日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Jan 2020
1873
2018年に米エネルギー省(DOE)の「多目的試験炉(VTR)」プログラムの支援企業に選定されたGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は1月21日、ビル・ゲイツ氏が出資する原子力開発ベンチャー企業のテラパワー社と共同で、VTRの設計と建設に向けた官民協力を推進していくと表明した。VTRは、新型炉に使われる革新的な原子燃料や資機材、計測機器等の開発で重要な役割を担うナトリウム冷却式の高速スペクトル中性子照射試験炉となる予定。DOEは官民の費用分担で同プログラムを進めたいとしており、テラパワー社はすでにVTRの設計促進等で同プログラムを支援中。DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)で運営を担当するバッテル・エネルギー・アライアンス(BEA)が、昨年11月に費用分担パートナーシップの構築をDOEに代わって関係者に依頼した際、GEH社とテラパワー社は共同で提案書を提出していた。また、ワシントン州の地方自治体など27の公益電気事業者で構成されるエナジー・ノースウェスト社は両社の連携協力を支援していく考え。これに続くその他の企業や投資家が、両社の取組に追加で参加する意思を表明している。米国には現在、高速スペクトル中性子の照射を行える施設が存在せず、それが可能なVTRの国内建設は、2018年9月に成立した「2017年原子力技術革新法(NEICA2017)」でも必要性が強調されていた。DOEは、GEH社のモジュール式ナトリウム冷却高速炉「PRISM」で実証済みの技術をVTR開発に活用する方針で、2019年3月にはVTRの概念設計に取りかかると発表。VTRプログラムを通じて建設プロジェクト全体のコストやスケジュールの見積作業を進め、本年中には建設の可否について最終的な判断を下す。建設が決まれば、2025年12月までに建設工事をINL内で完了し、2026年から最大限に利用できる施設として運転開始することになる。GEH社は今回の連携によって、ナトリウム冷却炉の技術で豊かな経験を有するエンジニアや科学者の最強チームが結成されると説明。双方のチームがVTRの設計と資機材調達・建設に関する特殊な経験を互いに補い合えるとした。テラパワー社は第4世代の進行波炉(TWR)を開発するため、10年にわたってナトリウム技術の開発に投資を行っているが、原子力のポテンシャルを最大限に活かすには、新素材の実験や最新技術の実証に対する投資で産業界と政府が協力していかねばならないと指摘した。また、同社によれば米国の原子力産業界は、原子力技術で世界のリーダーシップを握るため、次世代の原子力技術を構築する準備が出来ている。VTRによって原子力技術革新の基盤が米国にもたらされ、それが米国の経済や国家安全保障を促進することになるとしている。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月22日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Jan 2020
2216
ロシア国営原子力総合企業ロスアトム社のA. リハチョフ総裁は1月20日、中国・江蘇省で同社が建設した田湾原子力発電所において、今年12月にも7号機を当初予定より5か月前倒しで本格着工することを目指すと表明した。同炉から5か月~10か月遅れで着工する8号機とともに、それぞれ2026年と2027年に営業運転を開始すると見られている。同発電所ではすでに、I期、II期の1~4号機(100万kW級ロシア型PWR)が営業運転中。これに続いて、中国核工業集団公司(CNNC)が仏国の技術をベースに開発した第3世代の100万kW級PWR設計「ACP1000」を採用して、III期の5、6号機の建設が予定されている。IV期の7、8号機については第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR (VVER)設計を採用することになっており、ロスアトム社とCNNCは2018年6月に枠組契約を締結済み。2019年3月には、両炉の建設に関する一括請負契約が両者間で交わされた。ロスアトム社はこの契約に基づき、2019年7月から両炉の原子炉容器に使用する鍛造品など、長納期品の製造を開始している。今回の発表は、2018年2月に営業運転を開始した田湾3号機をロシア側から中国側に正式に引き渡すため、同発電所で開催された記念式典の場で明らかにされた。リハチョフ総裁は7、8号機用建設用地の準備が進む同発電所を視察するとともに、中国国家原子能機構(CAEA)の張克儉主任とも会談。7、8号機では、動的と静的両方の安全系やデジタル式計測制御(I&C)系、二重格納容器、コア・キャッチャーなどが装備されると強調した。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月20日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Jan 2020
2007
トルコのF. ドンメズ・エネルギー・天然資源相は1月20日、三菱重工業と仏アレバ社(現フラマトム社)の合弁企業ATMEA社が110万kWのPWR×4基を供給予定だった黒海沿岸のシノップ原子力発電所建設計画について、別のサプライヤーに建設を依頼する可能性があることを同省のウェブサイトで明らかにした。同計画については、主要パートナーの三菱重工が実行可能性調査を実施してトルコ側に提出したが、建設予算と完成スケジュールの調査結果は同省の期待に添うものではなかった。このため同省は現在、建設パートナーの再評価を行っているところで、パートナーを変えて計画を進める事を検討中だとしている。4基分で総額200億ドルのシノップ計画では初号機を2017年に着工し、2023年に運転開始することが予定されていた。しかし、安全対策費の高騰などから総事業費が当初予定の2倍以上になるとの見方が広がり、発電電力の買取でトルコ電力取引・契約会社(TETAS)が支払う価格ではコストの回収が難しくなった模様。これにともないメディアでは、建設計画の受注が内定していた三菱重工業らの国際企業連合から伊藤忠商事が撤退したことや、三菱重工自身も建設を断念したことなどが1年以上前の段階で報じられていた。一方、ロシアが受注したトルコ初のアックユ原子力発電所(120万kW級のロシア型PWR×4基)に関しては、2018年4月に1号機が本格着工して以降、建設計画は順調に進展。ロシアの建設事業者は昨年12月、同発電所をトルコの送電グリッドと接続する契約を国営送電会社(TEIAS)と締結した。同炉は2023年に運転開始予定だが、その約1年後に運転開始する2号機についても、トルコの規制当局が昨年8月に建設許可を発給している。ドンメズ・エネルギー・天然資源相によると、2号機の建設工事はまもなく開始されることになっており、続く3号機についてもプロジェクト企業が昨年、建設許可を申請。トルコの規制当局が現在、同炉の部分的建設許可の発給作業を進めているとした。この許可の下では、原子炉系統の安全性に関わる部分を除き、すべての建設工事が可能になる。(参照資料:トルコのエネルギー・天然資源省(トルコ語)、半国営アナトリア通信(英語版)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
21 Jan 2020
5518
仏オラノ社は1月15日、同社の米国子会社で放射性物質の梱包・輸送を専門とするオラノTN社が、米国のとある原子力発電所で通常より高い崩壊熱を発する使用済燃料を、貯蔵プールから敷地内の同社製・独立型乾式貯蔵施設(ISFSI)最新版に初めて移送する一連の作業を完了したと発表した。「NUHOMS拡張型最適化貯蔵(EOS)システム」と呼称されるこのISFSIは、原子力産業界における通常レベルの崩壊熱(キャニスター1基に付き14~34kW)よりはるかに高い熱負荷に耐えられるとしており、EOSキャニスター1基分の合計崩壊熱は平均44.75kW。今回、2019年の移送活動で最終となる第5回目の作業で使用済燃料296体の移送を終えたもので、「NUHOMS EOS 37PTHキャニスター」8基の使用済燃料が8つの「NUHOMS EOS水平貯蔵モジュール(HSM)」に安全に貯蔵されたとしている。使用済燃料の貯蔵方法に関して米原子力規制委員会(NRC)は、湿式と乾式どちらも住民の健康と安全および環境を防護する上では適切であり、乾式貯蔵施設への使用済燃料の移送を早めなければならないような安全・セキュリティ上の懸念は無いという見解である。しかし、2001年の9.11同時多発テロ事件や2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、米国の一部議員は米国の原子力発電所のどこかで使用済燃料貯蔵プール火災が発生すれば、大量の放射性物質が放出されて広域汚染が広がるなど、2兆ドル規模の損害がもたらされると考えている。また、プリンストン大学の調査では、使用済燃料を乾式貯蔵キャスクに移すことで火災の発生リスクが大幅に下がるとの結果が出ている。オラノ社の先進的なEOS技術を使った燃料集合体の移送はすでにNRCの認可を取得済みで、キャニスター1基あたりの崩壊熱は産業界ではこれまでで最大級の50kWまで。このキャニスターはノースカロライナ州カーナーズビルの同社施設で製造されたもので、PWR用の高燃焼度燃料集合体37体を貯蔵可能な設計になっている。また、「NUHOMS EOS水平貯蔵モジュール」はノースカロライナ州モヨックのプレキャスト・コンクリート施設で製造されており、外部事象に対して最大級の核物質防護が可能であると同社は説明。崩壊熱の消散能力も50kWと最高レベルであるほか、被ばく放射線量は垂直型モジュール・システムの約半分だと強調した。今後は米国内のその他の原子力発電所でも、崩壊熱の大きい使用済燃料集合体の移送にEOSシステムの先進的な能力が活用されることになっており、燃料貯蔵プールから乾式貯蔵に移す前の冷却期間の短縮が可能。燃料貯蔵プールの管理が簡素化されるだけでなく、同プール内で管理する使用済燃料集合体の数量を削減することにもつながるとしている。 (参照資料:オラノ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月16日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Jan 2020
2052
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は昨年12月、EU域内がクリーンで循環型経済に移行することにより資源の効率的な利用を拡大し、気候変動を食い止めることなどを目指した2050年までの工程表「欧州グリーンディール」を公表したが、今月14日にはこれに続き、欧州グリーンディールの実行を可能にするための投資計画案と、ポーランドのようにこのような移行から最も影響を受ける地域や部門に資金提供する「公正な移行メカニズム(JTM)」を公表した。それによると、2050年までに欧州大陸を世界で初めて温室効果ガスの排出量実質ゼロ(気候中立)とするためには、EUと加盟各国の公的部門に加えて、民間からも相当額の投資が必要になる。今回の「持続可能な欧州への投資計画」では、まず公的な投資手段を結集。とりわけEUの複数の投資プログラムを統合した「InvestEU」など、EUの資金調達手段によって民間投資を引き出し、少なくとも1兆ユーロ(約122兆7,000億円)の投資につなげたいとしている。ただし、この投資計画では原子力発電への言及が一切なく、フォーラトム(欧州原子力産業協会)のY. デバゼイユ事務局長は翌15日、EC提案がこのような資金援助の対象から原子力を除外していることを憂慮すると発表。「低炭素経済への移行で社会が不利益を被ることはあってはならない」とした上で、EUによる資金割当が炭素集約型部門の従業員を低炭素産業に移行させる一助となるよう、全面的に支援したいと述べた。昨年12月の「欧州グリーンディール」ECが策定した「欧州グリーンディール」では、運輸、エネルギー、農業などすべての経済分野に加えて、鉄鋼、セメント、繊維、化学などの産業をカバー。あらゆる政策分野で気候と環境に関する課題を機会に変え、EU経済を持続可能なものに転換するとともに、この移行がすべての域内住民にとって公正なものとなることを目指している。このためECは、2050年までにCO2排出量実質ゼロを達成するという政治的な目標を法制化するとしており、100日以内に初の「欧州気候法」を提示する方針である。また、気候と環境に関するEUの目標達成に向け、新産業政策や循環型経済行動計画、公害のない欧州に向けた提案も提示する。さらに、2050年までの目標達成に現実的な道筋を付けるため、EUによる2030年の温室効果ガス排出量削減目標の引き上げに向けた作業も開始する予定である。「持続可能な欧州への投資計画」「持続可能な欧州への投資計画」案の提示も、ECが「欧州グリーンディール」を公表した際、同様に明らかにされていた。昨年11月にEC委員長に就任したばかりのU. フォンデアライエン委員長は、「2050年までに欧州で気候中立を達成することは前例のない移行計画であり、域内住民の誰1人として置き去りにしないよう支援する」と明言。「欧州グリーンディール」の実施で重要となる投資の必要性を「投資の機会」に変えて、域内にグリーン投資の波を引き起こす方向性を示したいと述べた。今回の発表でECは、「持続可能な欧州への投資計画」は気候の中立やクリーンで競争力のある経済への移行に向け、官民の投資促進の枠組を生み出すとともに、必要なEU資金を調達すると指摘。「欧州グリーンディール」で表明した財政イニシアチブを補完するため、「投資計画」は3つの特徴を持ったものになるとした。それらはすなわち、(1)今後10年間の持続可能な投資として少なくとも1兆ユーロを調達、(2)官民の投資機会を開放するとともに、その適用を可能とするためのインセンティブを提供、(3)公的機関やプロジェクトのプロモーターに対し、持続可能なプロジェクトの計画・立案・実行で必要な実質的支援をECが提供――など。(1)においては、欧州投資銀行が主要な役割を果たすとした。この中でも「公正な移行メカニズム(JTM)」は、気候中立に向けたの経済への移行を公平な方法で確実に実行する重要ツールになるとECは説明。すべてのEU加盟国や地域、部門が今回の移行で協力が求められる一方、解決すべき課題の規模はそれぞれ異なるため、ポーランドなど石炭火力に依存する一部地域では、社会経済面で広範な改革を行うことになる。JTMはこのように移行の影響が大きい地域に対し、2021年~2027年までの期間の支援目標額として少なくとも1,000億ユーロ(約12兆2,762億円)を調達。化石燃料に依存するコミュニティや労働者の支援に必要な投資の枠組を生みだし、社会経済的な影響を緩和するとしている。EC提案に対するフォーラトムの見解このような提案に対し、フォーラトムのY. デバゼイユ事務局長はまず、「石炭火力依存国の脱炭素化努力に財政支援を与えるというEUの目標には賛同する」とした。その一方で、過去18か月間に「国連・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」や国際エネルギー機関(IEA)、およびECさえも「炭素を排出しない原子力は低炭素経済において不可欠」とする報告書を公表していた事実に言及。昨年末になると複数のEU加盟国が、2050年までに脱炭素化目標を達成するには原子力発電への投資が必要になることを明確に示していたと述べた。同事務局長は、「石炭産業の労働者を原子力産業に移行させるメリットについては、すでに仏国と英国が立証済みだ」としており、フォーラトムとしては、今回のようなEC提案を正当とするのはなかなか難しいと指摘。「EUも結局のところ、石炭火力依存地域の人々を低炭素産業に移す支援に集中的に取り組むのだろうが、資金援助を受ける資格のある低炭素部門に制限をかけるのなら、誰1人置き去りにせずに今回の目標を達成することは非常に難しくなるだろう」と強調した。同事務局長はまた、世界最大の会計事務所デロイト・トーマツの調べによると、欧州の原子力産業界は現在、110万人以上の雇用を域内で維持しており、域内総生産(GDP)のうち5,000億ユーロ(約61兆3,800億円)以上を原子力産業界が生み出していると指摘。原子力産業は発電部門の低炭素化と欧州域内の雇用創出という両面において、恩恵をもたらしていると訴えている。(参照資料:EC、フォーラトムの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月15日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Jan 2020
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米GE社と日立製作所の合弁事業体であるグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社は1月14日、ノースカロライナ州のウィルミントン施設で製造したBWR用事故耐性燃料(ATF)の先行試験集合体(LTA)を、イリノイ州にあるエクセロン社のクリントン原子力発電所(107.7万kWのBWR)に装荷したと発表した。この燃料集合体には、クロムとアルミニウム鉄合金の燃料被覆材「IronClad」、および標準型ジルコニウム被覆管に「ARMORコーティング」を施すという2つの技術による先行試験燃料棒(LTR)が含まれているが、3種類の「IronClad」被覆管に酸化ウラン燃料を充填して装荷したのは今回が初めてとなる。同社は2018年にも、これらのソリューションに基づくLTR入り集合体をジョージア・パワー社のE.I.ハッチ原子力発電所1号機(91.1万kWのBWR)に装荷したが、「IronClad」のLTRには酸化ウラン燃料を充填していなかった。このようなATF開発は、米エネルギー省(DOE)が福島第一原子力発電所事故の教訓から、2012会計年度予算で開始した「ATF開発プログラム」の下で行われている。GNF社のほかに、フラマトム社やウェスチングハウス(WH)社、ライトブリッジ社などが産業界から参加協力。2022年頃まで3段階でATFの開発・実証戦略を進めることになっている。GNF社の「IronClad」技術はこれまでのATF技術との比較で、様々な条件下における一層優れた材料挙動と確実な耐酸化性の確保を目的としている。高温状態のなかで燃料や部材の酸化速度を抑えることができれば、安全性の限界マージンをさらに改善できると同社は指摘。クリントン発電所に装荷された「IronClad」燃料棒のうち、1種類についてはGE社の研究開発部門が開発に協力しており、燃料棒の製造に繋がるエンジニアリング支援や成形加工機器を提供中である。GNF社はまた、「ARMORコーティング」によって燃料棒をデブリによる表面損傷からさらに防護することを目指しており、この技術で一層優れた材料挙動と確実な耐酸化性の確保することが可能であり、摩耗耐性や安全性マージンの改善に導く魅力的な技術になると強調している。(参照資料:GE社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月15日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Jan 2020
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ロシアでは現在、海上浮揚式原子力発電所に搭載の小型炉2基も含め35基(合計出力約3,000万kW)の商業炉が稼働中だが、これらのうち5基について昨年12月から今月にかけてそれぞれ運転期間が延長され、最長のもので60年間になることが明らかになった。ロシアで近年開発された最新鋭の第3世代+(プラス)のロシア型PWR(VVER)は、運転期間が当初から60年に設定されているが、それ以前のVVERにおける運転認可期間は最大30年。この年数が経過しつつある商業炉については、連邦政府の原子力発電所開発プログラムと民生用原子力発電公社のロスエネルゴアトム社による「2013年~2023年までの運転期間延長プログラム」に基づき、運転期間が適宜10~25年の幅で延長されている。ロスエネルゴアトム社は、高経年化した既存炉で改修工事を行い運転期間を延長することは世界中で実行されている効果的な良好事例だと指摘。取替用の原子炉施設を建設する準備が整うまで、十分な時間を確保する上で非常に重要との認識を示した。2001年以降、昨年12月27日までに国内で27基の原子炉の運転期間が延長されたが、このうち3基についてはすでに運転が終了。現在、廃止措置の準備中だと説明している。昨年12月17日には、1989年に送電開始したスモレンスク原子力発電所3号機(100万kWのRBMK)について、15年間の運転期間延長が承認され、同炉は2034年まで45年間の稼働が可能になった。同月の20日にはまた、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)が、コラ原子力発電所2号機(44万kWのVVER)に対し、15年間の運転期間延長を許可。1974年に送電開始した同炉は、2004年時点ですでに1回、運転期間が15年延長されていたため、合計の稼働期間は2034年までで60年に達する。同月27日にはさらに、極東地域のビリビノ原子力発電所で2号機(1.2万kWのEGP-6)の運転期間が6年間延長された。同炉も2004年に15年間の期間延長が許されており、最終的に2025年末まで合計51年間運転を継続することになった。30日になると、ROSTECHNADZORがノボボロネジ原子力発電所4号機(41.7万kWのVVER)について2回目の運転期間延長を承認。1972年に送電開始した同炉の運転期間も、2032年までで合計60年に達する予定である。このほか、年明けの今月10日、ROSTECHNADZORはロストフ原子力発電所1号機(100万kWのVVER)の運転期間を2031年末まで延長する新しい認可を発給したと発表した。同炉は2001年2月に送電開始したが、何らかの理由により当初の運転期間が2020年までに設定されていた模様。今回の延長より、同炉も標準的なVVERと同様、30年間稼働することになった。ロストフ発電所の4基(各100万kWのVVER)は2019年中に目標値を超える合計約340億kWhを発電しており、ロシア南部地方における信頼性の高い電力供給源となっている。その他の発電所も2019年の発電実績は良好で、コラ発電所の4基(各44万kWのVVER)は100億kWhを超える電力を発電。ノボボロネジ発電所では出力の大きいⅡ期工事1、2号機(各110万kW級VVER)が2017年と2019年末にそれぞれ送電を開始したことから、ロシアの原子力発電所による総発電量の約10%分に相当する約210億kWhを発電したとしている。(参照資料:スモレンスク3号機、コラ2号機、ビリビノ2号機、ノボボロネジ4号機、ロストフ1号機の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2019年12月17日付、23日付、30日付、2020年1月10日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Jan 2020
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英国を本拠地とする世界的建設エンジニアリング企業のアトキンズ社は、このほど「CO2の実質ゼロ化に向けて」と題する報告書を公表し、国内すべての温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに実質ゼロにする英国政府の目標を達成するには、国内エネルギー・ミックスに原子力や二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS)等が含まれるよう改革することや、そのための大規模投資が必要になると英国政府に訴えた。同社は、EDFエナジー社がサフォーク州で進めているサイズウェルC原子力発電所(160万kW級のPWR×2基)建設計画で、建設作業の最初のプログラムとなる開発準備基本設計契約を昨年7月に受注したほか、日立製作所が凍結したウィルヴァ・ニューウィッド計画(135万kWの英国版ABWR×2基)では、支援企業の1つとして近隣海底の調査などを行っていた。今回のレポートで同社は、近年世界で進展中のCO2排出抑制努力だけでは、世界の平均気温が人々の生活様式や安全性に影響するレベルまで上昇するのを食い止めることは出来ないと指摘。このまま行けば、2100年までに平均気温は3.2度C上昇するとの国連環境報告の見方を、改めて提示している。英国では昨年6月、世界主要7か国の中では初めて、国内GHG排出量の実質ゼロ化を法的拘束力のある目標として掲げた法案が可決・成立した。地球温暖化がもたらす破壊的な影響の根拠と各国の政治的な約束が明らかになるなか、GHG排出量は今後も増加し続けると同社は予測。破壊的影響の根拠や関連のデータが蓄積されるにつれ、人類がこれまで取ってきたアクションに限界があることが分かっており、小出しの対応では最早、破壊的影響を抑えるには不十分だとした。このため同社は今回の報告書を通じて、英国による実質ゼロ化の目標達成を妨げる技術的要素をどのように解決すべきか、詳細な技術レポートや一連のブログ記事により英国のエネルギー・ミックスを考察し、同社の考え方を具体的に説明している。同社によると、英国は地球温暖化への対応政策やアクションで世界のリーダー的役割を果たしており、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するという法的な約束の下、地球温暖化のリスクに効率的に対応するため、先進各国の誓約すべてを統率し続ける方針。今後数か月間でエネルギー・システム開発における既存の中心政策を補完し、2020年の早い時期にインフラ部門や輸送部門にも焦点を当てたいと述べている。同社は今回の報告書で、英国のエネルギー・システムで2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化することは可能であるが、エネルギー・システムの構造変革で柔軟なアプローチを採るべきだとしており、現時点で2050年以降の最終的なシステムを決定することは難しいと指摘。今後数年間の判断でCO2の実質ゼロに向けた市場の枠組が設定されるため、あらゆる選択肢はオープンにしておかねばならないとした。次に、CO2を実質ゼロ化したエネルギー・システムは構造が高度に複雑になるため、効果的なバランスを保つことが重要であり、政府の介入なしで合理的なシステムを維持することは難しいと説明。発電やインフラ、輸送の各部門にわたり2050年のエネルギー・システム全体を計画・合理化するため、「エネルギー・システム・アーキテクト(ESA)」のような機関を創設する必要があるとしている。このようなエネルギー・システムの電源として、同社が最初に言及しているのが原子力で、英国をCO2排出量実質ゼロに導く上で、クリーンさや信頼性の高さなど原子力が果たす役割は重要だと強調。国内の天然ガス生産が先細るなか、原子力は唯一、低炭素な電力供給を確実に約束できるとした上で、英国政府は原子力発電の開発戦略に一層重点的に取り組む必要があるとした。同社はまた、原子力発電所の建設にともなう資金の調達やリスクの軽減で、革新的な手法を開発すべきだと断言。原子力は技術面のリスクは小さいものの、近年の資金調達モデルには大きな問題があると述べた。英国では現在ヒンクリーポイントC原子力発電所を建設中であり、サイズウェルCとブラッドウェルB原子力発電所計画も含めると、合計840万kW分の計画が進展中だとしている。(参照資料:アトキンズ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月13日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Jan 2020
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米オレゴン州のニュースケール・パワー社は1月7日、同社製の小型モジュール炉(SMR)について、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が昨年12月から全3段階で構成される「許認可申請前設計審査(ベンダー審査)(VDR)」を開始したと発表した。同社が開発した「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」は現在、米原子力規制委員会(NRC)による全6段階の設計(DC)認証審査をSMR設計としては初めて、また唯一2017年3月から受けている。同審査は昨年12月にフェーズ4まで終了し、フェーズ5と6に進展中。技術面の審査がほぼ完了したことを示しており、同社は2026年までに初号機の運転開始を目指している。ニュースケール社はカナダでも同様に「NPM」を建設する考えで、ベンダー審査を実施するCNSCに対して12月10日付で最初の情報文書を提出した。同審査は建設・運転許可など正式な申請手続に先立ち、カナダの規制要件に対する対象設計の適合性をメーカー側の要請に基づいて評価するサービス。法的に有効な設計認証や関係認可が得られるわけではないが、カナダの顧客が将来「NPM」の建設許可をCNSCに申請する際、ベンダー審査が完了していれば技術面の審査を最大限効率的に実施することができる。同社のJ.ホプキンズ会長兼CEOは、「カナダでも当社製SMRを建設することへの関心が日に日に高まっている」と指摘。NRCに加えて、もう一つの確固たる規制当局から「NPM」の革新的な安全性能について徹底した評価を受けることにより、出力6万kWのモジュール連結で出力の拡大縮小が可能かつ経済性も高く、低炭素で安全なSMR技術をカナダの顧客に提供したいと述べた。「NPM」設計でベンダー審査を実施することは、2018年2月にCNSC側が公表していた。ニュースケール社としては、完成度の高い「NPM」の場合、同審査の第2フェーズから直接開始することができると認識。このため、第1、第2フェーズをまとめて受ける方針で、VDRで扱う19分野のうち、「一般的な採用プラントの説明」など4分野を初回の提出文書でカバー。これらは残りのVDR審査の基盤となる部分であり、最終段階の第3フェーズも含め、計4回提出する文書の残り3回分に関しては、それぞれ約半年ほど間隔を空けるとしている。ニュースケール社はカナダでの「NPM」建設に関して、オンタリオ州で原子力発電所の運転を担当するブルース・パワー(BP)社と2018年11月に覚書を締結しており、同設計をカナダ市場で売り出す際の投資対効果検討書の作成や許認可活動などの面で協力を得ている。また、カナダの商業用加圧重水炉19基のうち18基を所有するオンタリオ州営電力会社(OPG)社は、ニュースケール社の諮問組織に参加。カナダにおけるSMRの許認可手続や「NMP」建設、およびVDR等について、ニュースケール社に助言を提供している。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月7日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Jan 2020
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韓国の科学技術情報通信部(MSIT)は1月3日、サウジアラビアで韓国製小型モジュール炉(SMR)「SMART」を建設する計画や同設計の共同輸出を促進するため、2015年9月に両国の担当機関が締結した「SMART炉の建設前設計(PPE)協力契約」を改定したほか、新たに「韓国-サウジアラビア・標準設計認可取得の共同推進協約」を締結したと発表した。これらによって具体的に、韓国水力・原子力会社(KHNP)を始めとする韓国企業、およびサウジ企業が参加するSMART炉の建設・輸出担当特別合弁企業「SMART EPC社(仮称)」の設立と、同社におけるKHNP社の役割が明文化された。KHNP社はSMART EPC社が設立されるまで同プロジェクトを主導し、サウジ国内の標準設計認可をSMART炉で取得するとともに、ビジネス・モデルの設定や建設インフラの構築、第3国へのSMART炉輸出のための協議を進めていく。SMART炉は海水脱塩と熱電併給が可能なシステム一体型モジュラーPWRで、熱出力と電気出力はそれぞれ33万kWと10万kW。韓国原子力研究院(KAERI)が中東諸国等の需要も想定して開発したSMRで、韓国とサウジアラビアは2015年に同炉のPPE協力契約を締結した後、韓国側が0.3億ドル、サウジ側が1億ドルを投資して、同年12月から2018年11月までSMART炉の設計をPPE事業として共同実施。これには原子力関係の研究者に加えて、韓国側から韓国電力技術(KOPEC)、 韓電原子力燃料(KNFC)、斗山重工業、鉄鋼大手のポスコ社などが参加した。今回の発表によると、SMART炉事業へのKHNP社の参加は、同設計の初号機建設事業におけるリスクを軽減するためサウジアラビア側から要請されたもので、原子力発電所の建設と運転におけるKHNP社の豊富な経験が買われたという。また、「標準設計認可取得の共同推進協約」は、建設許可審査におけるサウジ側の負担軽減と第3国へのSMART炉輸出の促進を目的としており、この作業でKHNP社やKAERI、サウジ側の担当機関「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市公団(K.A.CARE)」それぞれが果たす役務範囲や財源分担案などが盛り込まれた。MSITはこれらにより、両国がSMART炉の許認可段階から建設、インフラ構築など、原子力発電全般にわたって協力していく基礎が築かれたと指摘。両国のSMART炉事業推進に一層の弾みが付くと強調した。サウジ側も、同炉の標準設計認可取得や国内の初号機建設を通じて技術やノウハウを蓄積し、同国が原子力発電技術で自立するための大きな資産として活用できると期待している。(参照資料:MSIT(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月7日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Jan 2020
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スウェーデンのバッテンフォール社は2019年12月30日、リングハルス原子力発電所(=写真)で1975年5月から約44年間稼働した2号機(90万kW級PWR)を予定通りに永久閉鎖したと発表した。同社は昨年9月以降、2号機の出力を定格から徐々に下げていく「コーストダウン運転」を始めており、11月に出力が50%以下になった後、12月に最終停止したと説明した。同社はこのほか、1976年1月に同炉より約8か月遅れで営業運転を開始した同1号機(90万kW級BWR)についても、2020年中に早期閉鎖させる方針である。リングハルス1、2号機を予定より5年早く閉鎖する計画は、2015年9月にバッテンフォール社が公表していたもの。理由としては近年の電力価格の低迷に加えて、安全要件が一層厳しくなったこと、政府の脱原子力政策で議会が原子力税を引き上げたため、採算性が悪化したことなどを挙げていた。電力価格はその後回復を見せたが、同社は両炉の経済性等の観点から運転を継続することはできないと判断。同社の発電担当上級副社長は2015年当時、「電力が余り、風力発電が拡大しつつあるスウェーデンの現状を考えれば、原子力発電も現在の10基は必要ないという点に注目すべきだ」と述べていた。一方、1980年代に運転開始した同3、4号機(各110万kW級PWR)については、同社は9億クローナ(約103億円)をかけて安全性を改善し、予定通り60年間稼働させると強調している。(参照資料:バッテンフォール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Jan 2020
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ロンドンを拠点とする世界原子力協会(WNA)は1月3日、2019年末現在の世界の原子炉開発動向を取りまとめて発表した。この時点で稼働可能な原子力発電設備容量は1年前より低下して442基、3億9,240万kWになったほか、昨年中に永久閉鎖された原子炉基数が新規の運転開始基数を上回ったことなどを明らかにしている。発表によると、世界では2019年に6基、524.1万kWが新たに運転を開始しており、内訳は中国の台山2号機と陽江6号機、韓国の新古里4号機、およびロシアのノボボロネジII-2号機と海上浮揚式原子力発電所の「アカデミック・ロモノソフ号」(出力3.2万kWの小型炉2基を搭載)である。これらの原子炉の多くが第3世代の原子炉技術を採用しており、台山2号機は、2018年12月に世界初のフラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)として営業運転を開始した同発電所1号機に続くもの。新古里4号機は韓国がアラブ首長国連邦(UAE)に輸出した140万kWの「APR1400」と同型で、韓国国内では2基目の運転開始となった。ロシアのノボボロネジII-2号機は同国が開発した最新鋭の120万kW級ロシア型PWR(VVER)「AES-2006」設計であり、運転開始した同型設計炉としては世界で3基目。「アカデミック・ロモノソフ号」についてはロシア国営原子力企業のロスアトム社が、「世界に先駆けての小型モジュール炉(SMR)技術に基づく原子力発電所」と強調している。一方、昨年1年間に世界で正式に閉鎖された原子炉は9基、597.6万kWにのぼったとWNAは指摘。内訳はロシアのビリビノ1号機、台湾の金山2号機、日本の玄海2号機、スイスのミューレベルク発電所、ドイツのフィリップスブルク2号機、スウェーデンのリングハルス2号機、米国のピルグリム発電所とスリー・マイル・アイランド1号機、および韓国の月城1号機となった。月城1号機はすでに、2018年6月から営業運転を停止していたが、正式な閉鎖決定は2019年12月24日付けで発表された。このほか、2019年中に新たに着工した原子炉建設プロジェクトとして、WMAはロシアのクルスクII-2号機とイランのブシェール2号機、および中国の漳州1号機を挙げた。クルスクII-2号機とブシェール2号機はいずれも、ロスアトム社とその傘下企業が建設工事を請け負っており、ブシェール2号機には第3世代+(プラス)のVVER「AES-92」設計を採用。また、クルスクII-2号機については、「AES-2006」設計をベースに技術面や経済面でパラメーターを最適化したという「VVER-TOI」が世界で初めて採用された。昨年10月に着工された漳州1号機については、中国核工業集団公司(CNNC)と中国広核集団有限公司(CGN)の第3世代設計を融合させた「華龍一号」設計が使われている。これらによって、世界で建設中の原子炉は54基、5,990万kWになったとWNAは説明している。 (参照資料:WNAの1月3日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」、原産新聞・海外ニュース、ほか)
07 Jan 2020
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ドイツでフィリップスブルク原子力発電所を所有・操業するEnBW社は1月1日、予定通りに2号機(PWR、146.8万kW)を2019年12月末日付けで永久停止したと発表した。同炉の閉鎖は改正原子力法に則ったもので、同社は2号機で廃止措置作業に直ちに着手。すでに2017年から廃止措置作業中の同1号機と同様、安全かつ迅速な作業展開を心がけるとしている。2号機は1984年12月に送電開始してから、毎年約100億kWhを発電。35年に及んだ運転期間中の累計発電量は3,550億kWh以上に達しており、地元バーデン=ビュルテンベルク州における総電力需要量の6分の1を賄った。また、過去40年以上の間に、同発電所の2基で5,700億kWh以上を発電したとEnBW社は強調した。2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、ドイツ政府は1980年以前に運転開始した古い商業炉7基と長期停止中だった1基を、安全審査のため直ちに3か月間暫定停止するよう地元州政府に指示。同年5月には、遅くとも2022年までに国内すべての商業炉17基を全廃することで与党が合意しており、フィリップスブルク1号機を含むこれら8基は、再稼働することなく2011年8月に早期閉鎖されている。1980年代以降に運転開始した9基についても、このうち6基を2021年末までに閉鎖することが改正原子力法に明記された。これに基づき2015年にグラーフェンラインフェルト発電所、2017年にグンドレミンゲンB号機が閉鎖されたのに続いて、フィリップスブルク2号機も今回、予定通りの閉鎖となったもの。EnBW社はすでに2012年、同炉の廃止措置に関する広範囲の包括的な戦略を策定しており、これを実行に移すための申請書を2016年初頭にバーデン=ビュルテンブルク州の環境省に提出した。同省は2019年12月19日に許可証を交付。これを受けてEnBW社は、2020年後半から10~15年かけて原子力システムや機器など、発電所全体の解体撤去を行う計画である。(参照資料:EnBW社(独語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月2日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Jan 2020
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ブルガリアのエネルギー省は12月19日、建設工事が2012年に停止されたベレネ原子力発電所(100万kWのPWR×2基)の完成計画で、戦略的投資家の候補企業を5社に絞り込んだと発表した。それらは、(1)中国核工業集団公司(CNNC)、(2)ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社、(3)韓国水力・原子力会社(KHNP)、(4)仏国のフラマトム社、(5)米国のGE社で、来年1月末までに法的拘束力のある入札文書をブルガリア政府に提出することになる。エネルギー省のT.ペトコワ大臣(=写真)は、「いずれも原子力分野では世界のリーダー的企業であり、これまでの実績や財政面の安定性、信用格付けに基づいて選定した」と説明している。 同計画では、第3世代の100万kW級ロシア型PWR(VVER)「AES-2006」の採用が決まっており、計画が停止された際、未使用のまま倉庫に保管した1号機の長納期品と2号機の一部機器を活用する予定。戦略的投資家の募集は今年5月に開始され、8月の締め切り日までに、プロジェクト企業の少数株主となることへの関心表明や、発電所からの電力購入希望も含めて合計13件の申し込みがあった。このうち7件が戦略的投資家への関心表明で、ドイツ企業やブルガリアの企業および同国内の企業連合が含まれていた。エネルギー省は国営エネルギー持ち株会社(BEH)や電力公社(NEK)、送電システム会社などで構成される作業グループを通じて、ベレネ計画への投資や義務事項を確実に実行できる財務能力、原子力発電所の建設・投資経験に関する要件、などの観点から今回の5社を選定したもの。5社のうちフラマトム社とGE社は主に、機器の供給を通じて同プロジェクトに参加することを希望。フラマトム社は安全系や電気機器などを供給するとしたほか、GE社はタービン室の基本機器やコンプレッサー、変圧器等の設計・納入を計画。両社ともに、納入するシステムや機器に対する資金調達も提案していた。 ブルガリアでは現在、国内唯一の原子力発電設備であるコズロドイ発電所5、6号機(各100万kW級のVVER)だけで、総電力需要量の約35%を賄っている。同発電所の1~4号機(各44万kWのVVER)は西欧式の格納容器を持たないモデルだったため、ブルガリアが2007年に欧州連合(EU)に加盟する際、加盟条件としてこの年までにすべて閉鎖されている。 (参照資料:エネルギー省の発表資料(ブルガリア語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月19日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Dec 2019
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米商務省のW.ロス長官は12月18日、ハワード・ベーカー・フォーラムがアトランティック・カウンシルと共催した第12回「日米年次ラウンドテーブル」で講演し、「世界中でますます電化が進む中、古くて非効率的な発電設備に代わる新たな原子力発電能力を日米ともに必要としている」と強調した(=写真)。ロス長官は、日本のエネルギー自給率が2017年に世界第34位の10%以下になったという事実に触れ、日本が固有の安全性を有する最新の原子炉を複数建設できれば、多大な恩恵を被ることができると指摘。米国にとっても、原子力は今後も長期にわたってエネルギー・ミックスの重要部分でなくてはならず、日本のような同盟国と協力して一層効率的な許認可システムを確保し、固有の安全性を有する経済的にも実行可能な新しい世代の原子炉を建設していきたいとしている。「日米ラウンドテーブル」は原子力分野における日米協力プログラムの1つで、様々な会合やワークショップの開催に加えて、ワシントンDCで毎年、原子力に影響を及ぼす最新情勢や日米間の協力強化などについて協議。原子力に関わる両国の産官学が参加する機会となっている。今回のラウンドテーブルでロス長官は、過去数十年にわたり米国はエネルギー自給の道を模索してきたが、炭化水素産業が革新的な回収技術を採用したことで、この目標は達成されたと明言。石油や天然ガスの主要生産国となり日本の需要にも応える一方、原子力発電産業については、米国はこれまで以上に、技術力の再生・復活を必要としているとした。同長官によると、トランプ大統領は原子力産業の復活を公約しており、今年1月に「原子力技術革新・規制最新化法(NEIMA)案」に署名。これにより、新型炉の審査プロセスを2年以内に策定することを米原子力規制委員会(NRC)に指示した。また、2018年9月には「2017年原子力技術革新対応法(NEICA2017)案」を成立させており、1954年の原子力法以来、65年ぶりに原子力関係の法制が刷新されたとしている。日本との協力については、福島第一原子力発電所事故後の廃止措置と除染問題に触れ、日本で閉鎖予定の商業炉24基で安全かつ効率的な廃止措置を行うため、数十年の経験を有する米国の原子力産業界が支援を提供する用意があるとした。これと同時にロス長官は、その他の電源との競争に打ち勝てるような、設計も合理化された原子炉の将来的な建設に向けて、両国が協力していかねばならないと述べた。福島第一発電所事故の発生以前、日本の原子力発電シェアは25%だったが、発電部門で石炭やLNG、石油への依存が増加したことで2017年にはわずか3%に低下。日米ともに新たな原子力発電設備が必要だが、電力需要量の増加といった状況は世界でも同じであり、背景には沢山の人々が一層多くの電子機器を購入し、輸送部門が電気自動車の利用にシフトしつつある点を指摘した。ロス長官はまた、世界全体の電力需要量が昨年23兆kWhを越えたが、国際エネルギー機関(IEA)が2040年までに需要量はさらに13兆kWh以上増加すると予測している点に言及。増加分の3分の2が中国やインド、東南アジアなどインド太平洋地域からのものだが、持続可能な発展を世界レベルで達成し、再生可能エネルギーが利用できない時間帯の電力需要を満たすには、原子力以外で実行可能なオプションはないとした。「日本と米国がこのような原子力ルネッサンスを主導しなければ、ほかの誰かがやってしまう」と同長官は明言。両国はすでに、新世代の原子炉を設計し建設するという技術的ノウハウや運転経験を共有しており、あとはそれを実行に移す意志が必要なだけだと呼びかけた。(参照資料:米商務省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月20日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Dec 2019
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米エネルギー省(DOE)の国家核安全保障局(NNSA)は12月19日、原子力や放射線関係の事故発生時に、大気中の放射線を探知・計測することを目的とした航空機を新たに3機、配備したと発表した。これらは、放射線探知用の特殊な「航空計測システム(AMS)」を搭載する15人乗りの固定翼航空機「King Air 350ER」で、海上等における警備やレスキューなどを想定して作られた連続長距離巡航が可能なモデル。NNSAの「原子力緊急時支援チーム(NEST)」はAMSと同機を使って、原子力事故や事象にともなう地盤の汚染状況と大気中の放射線量を速やかに計測するほか、大規模な公開イベント時の警備の一環として環境中の通常放射線レベルを基礎調査することになる。これらはまた、経年化が進んだ既存のAMS搭載航空機をリプレースするものだとNNSAは説明。米国の至る所で、原子力関係の事象を広範囲かつ迅速に評価する範囲を広げるなど、AMSの有効性を一層向上させる一助になるとしている。NNSAは2011年の福島第一原子力発電所事故発生時にも、AMSを搭載した固定翼機とヘリコプターを使って、発電所周辺における大気中の放射線レベルをリアルタイムで計測。科学者や技術者、その他の専門家で構成されるAMSプログラムのチームは得られた情報を分析、その一部を公開するなどして、推定被ばく線量地図の作成等に貢献した。今回の発表は、DOEのL.ゴードン=ハガティ核安全保障担当次官兼NNSA局長が、テロリズムと核拡散対抗担当のJ.チルデン次官補、カンザス州選出のR.エステス議員とともに、ワシントンDCのアンドルーズ統合空軍基地のイベントで行った。ゴードン=ハガティNNSA局長は、AMSの航空機がこれまでにも再三にわたり、大統領の就任式やスーパーボール、ボストン・マラソンといった注目の行事で、安全保障を支援してきたと指摘。このような配備は一般国民にはあまり知られていないが、米国民の安全を陰で支える重要機材の一部なのだと強調した。エステス議員も、「新たな航空機が納入されたことで、NNSAは原子力事象への確実な対応が可能になった」と明言。この目標の達成に向けて、地元州の航空機メーカーが大きく貢献したことを誇りに思うと述べた。(参照資料:NNSAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月23日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Dec 2019
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フィンランドでオルキルオト原子力発電所3号機(OL3)(PWR、172万kW)を建設中のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は12月19日、先月時点で2020年9月にずれ込んでいた同炉の定常的な発電開始予定がさらに遅延し、2021年3月になると発表した。OL3の建設工事は2005年8月に本格的に開始されたが、工事を請け負った仏アレバ社と独シーメンス社の企業連合によると、燃料の初装荷は現在の最新日程で2020年6月、送電網への初接続は同年11月にそれぞれ先送りされた。理由としては各種のシステムで実施中の試験の進行が遅れていることと、搬入されたスペア・パーツに欠陥が認められた点を指摘。中でも補助ディーゼル発電機については、システム試験時に欠陥パーツがいくつか組み込まれていたことが判明しており、代わりのパーツが搬入されるまで数か月を要するとした。同炉の運転認可はすでに、今年3月にフィンランド政府が発給済みだが、同企業連合としては機械システムと電気系統、および計測制御(I&C)系の最終的な確証試験は、注意深くかつ質の高いレベルで進めねばならないとしている。OL3は世界で初めて、欧州加圧水型炉(EPR)設計を採用して着工されたものの、初号機であるが故に規制関係文書の様々な確認作業や、土木工事等に想定外の時間を費やした。仏国で初めてEPR設計を採用したフラマンビル3号機も、原子炉容器鋼材や主蒸気配管溶接部の品質問題により完成が遅れているが、同じ設計で2009年と2010年に中国で着工した台山1、2号機については、建設工事が比較的順調に進展。それぞれ昨年12月と今年9月に営業運転を開始している。OL3の完成は当初、2009年に予定されていたが、これまでに数え切れない遅延が生じたことから、TVOは同炉の確実な起動と運転の継続を期すため、すでに設置済みの機器類でメンテナンスが必要だと指摘。スペア・パーツの製造・搬入にも時間がかかる見通しだが、同炉が完成すれば、フィンランドとしては地球温暖化への対処で最大級の措置を取ることになると強調した。送電網に初併入してから営業運転を開始するまでに、同炉は試運転段階の様々な出力で10億~30億kWhを生み出すと同社は予想している。TVOは2018年3月、建設工事の遅れにともない生じた損害の賠償について、仏アレバ社らの企業連合と和解契約を締結。同企業連合から分割払いで合計4億5,000万ユーロ(約546億円)を受け取ることになったほか、同建設プロジェクトの完結に特化したファンド・メカニズムを設定した。同メカニズムにはアレバ社らが資金調達するなど、同炉を完成させる2019年末までの保証期間を全面的にカバーする額を適切に確保。この期限までにOL3を完成できなかった場合、同企業連合はさらに4億ユーロ(約485億円)を上限とする罰金をTVO側に支払うことになっている。(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月19日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Dec 2019
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は12月19日、世界初の海上浮揚式原子力発電所(FNPP)「アカデミック・ロモノソフ号」(=写真)が極東地域北東部のチュクチ自治区管内、ペベクの隔絶された送電網に送電を開始したと発表した。同社のA.リハチョフ総裁は「これにより、このFNPPは世界で初めて小型モジュール炉(SMR)技術に基づく原子力発電所になった」とコメント。ロシアのみならず、世界の原子力産業界にとって記念すべき節目になったと評価、極東地域でペベクという新たなエネルギーの中心地を生み出す大きな一歩を踏み出したとしている。FNPPは2018年4月、建設場所であるサンクトペテルブルクのバルチック造船所から、燃料を装荷しない状態で出港。同年10月に経由地である北極圏のムルマンスクで燃料の初装荷を完了し、運転開始前の包括的な試験を実施した。今年3月、FNPPに搭載されている出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」2基で出力100%を達成し、同ユニットの主要機器と補助機器、および自動プロセス制御システムで安定した運転性能を確認。8月下旬には、砕氷船1隻と曳船2隻にともなわれて、最終立地点のペベクに向けてムルマンスクを出発しており、9月初旬に到着していた。初併入に先立ち、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)はFNPPに対して、運転許可と送電網への接続許可を発給している。また、これに至るまでにロスアトム社は、FNPPからチュクチ自治区の高圧送電網に電力を送る陸上施設を完成させたほか、熱供給システムの建設で膨大な作業を実施したと説明。このシステムにFNPPを接続する作業は、2020年に完了予定だと述べた。ロスアトム社によると、「アカデミック・ロモノソフ号」は将来、一群のFNPPを陸上設備とともに建設するパイロット・プロジェクトに相当する。出力30万kW以下のSMRであれば、ロシア北部や極東地域における遠隔地、送電網の規模が小さい場所、あるいは送電網自体が来ていない場所であっても、電力供給が可能になるとした。SMRはまた、燃料交換なしで3年~5年間運転を継続できるため、交換コストをかなり削減することができる。遠隔地でよく用いられる再生可能エネルギーの場合、出力の変動を高額で環境汚染度の高いディーゼル発電や燃料電池で補わねばならないが、SMRは電力多消費ユーザーに対しても途絶することなく、確実に電力の供給が可能。このような利点からロスアトム社は、SMRの輸出も視野に入れていることを明らかにした。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月19日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Dec 2019
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フランス電力(EDF)は12月13日、原子力産業界において最高レベルの基準をクリアできる高品質の機器製造や人材の能力向上を実現するため、2020年から2021年まで1億ユーロ(約122億円)の特別予算をかけた「エクセル(Excell)計画」を実施すると発表した。 仏国では、フラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)を初めて採用したフラマンビル3号機の建設工事が、原子炉容器鋼材の品質問題や配管溶接部の欠陥等により10年以上遅延している。コストも3倍以上の124億ユーロ(約1兆5,200億円)に増大していることから、PSA(プジョーシトロエン)グループのJ.-M.フォルツ元会長は今年10月、「度重なる計画の遅れとコストの超過はEDFの失策」とする監査報告書を公表。これを受けてB.ル・メール経済・財務相も、EDFに対して問題解決に向けたアクション計画を一か月以内に提示することを求めていた。EDFのJ.-B.レビィ会長兼CEOはエクセル計画について、「フォルツ報告書が指摘した課題に取り組むためのものであり、仏国原子力産業界が信頼を取り戻す基盤になる」と説明。「目指しているのは、カーボン・ニュートラルなエネルギー源である原子力発電が、今後も地球温暖化との闘いで中心的な役割を全面的に果たし続けられるよう保証することだ」と強調している。エクセル計画ではその目的の達成に向けて、機器製造基準や人材の訓練と資格認定などを担当する上級職員が計画の遂行を監督するとともに、EDF会長兼CEOに経過を直接報告する義務を負う。具体的には、以下の3つの重要項目に基づいて進めるとしている。製造機器の品質向上・顧客とサプライヤーの関係を徹底的に検証し、今よりもバランスの取れたリスク共有、製造基準に適合した契約の締結などを目指す。サプライヤーの選択では品質要件の遵守に一層の重きを置き、サプライヤーは機器製造における仕様書の作成や製造可能性の評価に一層深く関与する。・新規の原子炉建設においてはサプライヤーの資格認定構想を新たに導入し、下請やその下のレベルの契約業者にもさらに厳格な認定を適用する。・最重要事項として、今より厳しい資格認定基準や記録管理システムを活用し、それによってパーツ等の品質を保証する。・機器の製造基準や人材訓練、資格認定などを担当する上級職員が機器の故障等を調査し、EDFやフラマトム社および産業界全体で良好事例が確実に活用されるようにする。人材の能力向上・EDFは仏原子力産業協会(GIFEN)と協力して、原子力事業にともなう様々な取組みを一元的に管理し、原子力分野に特化した大学を設立する。・知識管理システムを用いて産業界の知見をフルに活用し、EDFのエンジニアリング・センター内に流布する。・原子力産業界の基準をクリアできる溶接工を育成・雇用するため、産業界が具体的なプランを策定する。大規模原子力プロジェクトの管理体制を強化・大規模な原子力プロジェクトそれぞれについて、EDFの会長兼CEOが戦略委員会の議長を務め、プロジェクトの初期データを審査。また、プロジェクトの目標やコスト、スケジュールを設定するほか、関連する財政責任について審査を行い、主要な契約の締結を承認する。このような大規模プロジェクトの進展状況についても、EDF理事会は定期的に概要報告を受けることになる。(参照資料:EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月16日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Dec 2019
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米原子力規制委員会(NRC)は12月17日、テネシー峡谷開発公社(TVA)がテネシー州オークリッジ近郊で管理しているクリンチリバー・サイトについて、原子炉建設の「事前サイト許可(ESP)」発給を承認したと発表した。正式発給は数日以内に行われるとしている。このESPは、TVAが2016年5月にNRCに申請していたもので、2基以上の小型モジュール炉(SMR)で合計の電気出力が80万kWを越えないものの建設を同サイトで想定。採用設計は特定しておらず、ニュースケール・パワー社製のSMR「ニュースケール・パワー・モジュール」、ホルテック・インターナショナル社の「SMR-160」、ウェスチングハウス社製SMRなど、4種類の軽水炉型SMR設計のパラメーターを技術情報として活用する「プラント・パラメーター・エンベロープ(PPE)」方式を取っていた。TVAは現時点で原子炉建設の具体的な計画を立てていないが、ESPの有効期間である20年間(*延長することも可能)に、「将来のエネルギー需要に備えて柔軟なオプションを取ることが可能になった」とコメントした。地元メディアのインタビューでは、TVAの総裁兼CEOが「今後2年以内に採用設計を選定する」と答えた模様。実際の原子炉建設に際しては、NRCに別途、建設・運転一括認可(COL)を申請する必要がある。ESPを取得する主な狙いは、電力会社が原子炉の建設で資金投入を決断する前に、サイト特有の安全性や環境影響、緊急時計画についてNRCから事前承認を得ることにある。ESP取得後にCOLを申請した場合、サイト関係の審査期間が短縮されるが、ESPを取らずに直接COL審査を受ける場合は、ESP審査と同等の情報をNRCに提出しなければならない。これまでにイリノイ州のクリントン、ミシシッピー州のグランドガルフ、バージニア州のノースアナ、ジョージア州のA.W.ボーグル各原子力発電所の敷地内サイト、およびニュージャージー州で立ち並ぶセーレムとホープクリーク両原子力発電所の隣接区域に対してESPが発給されている。NRCは2016年12月に8,000ページものTVAの申請書を正式に受理した後、2017年1月からESP審査を開始した。2019年4月に環境影響声明書の最終版(FEIS)を発行した後、同年6月に安全性評価報告書の最終版(FSER)を発行。8月にはこれらの文書に関する公聴会を開催し、NRCスタッフによる申請書の審査結果は妥当との判断を下していた。SMR建設を想定したクリンチリバー・サイトのESPは、NRCが緊急時対応で規制を実施する際の分析方法の承認など、いくつかの追加条項を明記。これにより同サイトで将来、原子炉の建設・運転を申請する事業者は、従来の大型原子力発電所用の緊急時計画区域(EPZ)よりも小さい区域の適用を要請することが可能になるとしている。(参照資料:米規制委、TVAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
18 Dec 2019
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韓国の産業通商資源部(MOTIE)は12月12日、官民合同の原子力貿易使節団が10日から12日までモスクワを訪問し、ロシアが世界中で展開する原子力事業のサプライ・チェーンに韓国原子力産業界が参加を申し入れたことを明らかにした。ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社と実施した「ハイレベル協議」、およびロシアと韓国双方の原子力発電企業約60社による「共同原子力発電協力セミナー」などを通じて、両国の原子力産業界がグローバルなサプライ・チェーン協力を強化することで、双方の産業競争力を高めることを呼びかけたとしている。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は2017年6月、国内の原子力発電所を徐々に削減して2080年頃までに脱原子力を達成すると宣言する一方、原子力輸出については産業界を積極的に支援する方針を表明。国内で原子力の有望分野が廃止措置や放射線関係に限られていくなか、産業界と人材を維持する観点から政府は原子力輸出等への産業構造転換を促している。原子力貿易使節団の派遣は、9月の「原子力発電輸出戦略協議会」でMOTIEが発表した「原子力発電の全段階における輸出促進案」のフォローアップ措置となるもの。すでに11月下旬にチェコ、今月初旬にはポーランドに派遣済みであり、今回のロシアへの派遣は3回目になると説明した。発表によると、ロシアへの官民合同使節団はMOTIEの原子力発電産業政策官に加えて、韓国の原子力発電輸出産業協会(KNA)、韓国水力・原子力会社(KHNP)、斗山重工業、現代エレクトリック社、および原子力発電所資機材関連の中小企業19社の代表者で構成された。「原子力発電の全段階における輸出促進案」は、主要政策として(1)全ての段階で顧客の特別仕様の輸出戦略を取る、(2)「チーム韓国」方式で全方位の海外マーケティングを展開する、(3)輸出の支援環境で技術革新を図る――を打ち出しており、これに基づき11日にロスアトム社との「ハイレベル協議」を開催した。同協議では、MOTIEのシン・ヒドン原子力発電産業政策官とロスアトム社側からK.コマロフ副総裁が出席し、双方の原子力輸出政策を共有したほか、ロシアの各種海外事業における協力案、協力体系の構築案などを議論。シン原子力発電産業政策官は、「業界間で実質的な協力を議論するため、官民すべてが参加する定例的な協力の機会の設定が重要だ」と述べ、双方がそのための実務協議を進めていくとした。また、双方の原子力産業界の約60社から合計150名以上が参加した「韓ロ共同原子力発電協力セミナー」と、「韓ロ原子力発電協力の夜」では、大規模な海外原子力事業を展開中のロシアに対し、韓国側は欧州と米国の両方で設計認証を取得した韓国製原子炉「APR1400」の安全性をアピール。高い技術力を持った韓国の原子力産業界は、ロシアの最適なパートナーであると強調した。ロシアの機器調達システムや参加企業、製品、技術なども紹介され、双方のサプライ・チェーンの連携に向けた情報交換と質疑応答を実施。これにともない、参加企業間で100件以上の事業協力相談が行われたという。さらに、両国の企業同士、および韓国の原子力発電輸出産業協会とロシアの商工会議所の間で協力覚書を2件締結。MOTIEはこのような事業協力セミナーや使節団の派遣を2020年から定例化し、長期的観点の下で協力の基盤を構築しつつ、定例的な官民合同協議のチャンネルを早期定着させるために努力していくとしている。(参照資料:MOTIE(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
17 Dec 2019
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米国のジョージア・パワー社は12月10日、国内で約30年ぶりの新設計画としてジョージア州内で建設中のA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機(各110万kWのPWR)について、3号機のコンクリート製「遮へい建屋」の上部に、重さ約200万ポンド(約907トン)の円錐形の屋根を据え付けたと発表した(=写真)。遮へい建屋は、採用設計であるウェスチングハウス(WH)社製AP1000に特有の構造で、スチール製の格納容器を覆う最外壁として、原子炉を悪天候その他の外部事象から防護するとともに、放射線を遮へいする役割を担う。屋根は直径が135フィート(約41m)、高さ37フィート(約11m)という大型のもので、その据え付け作業は今年初頭、格納容器に天井部を設置したのに続いて行われた。ジョージア社は今の所、3、4号機の完成をそれぞれ2021年11月と2022年11月に予定。3号機の初装荷燃料は今年7月にすでに発注済みであり、2020年夏にもサイトに搬入されるとしている。ジョージア社は今回、3、4号機で最初の緊急時対応訓練を実施したことも明らかにした。緊急時計画では、事故等の事象に遭遇した際の対応措置が明記されており、今回の訓練は近隣住民の確実な防護に向けた包括的検証も含まれている。また、米原子力規制委員会(NRC)が来年、訓練の実施を予定していることから、これに先立ち各チームの準備作業を支援するとともに、原子炉が建設段階から運転段階に移行しつつあることを示すとした。現在、建設サイトでは8,000名以上の作業員が働いているが、運転開始後も800名分を超える雇用が確保されると同社は強調している。ボーグル3、4号機はそれぞれ、2013年3月と11月に本格着工したが、米国内では設計初号機であったため建設上の様々な問題に遭遇した。また、機器の製造からプロジェクト管理まで、建設工事を一括で請け負っていたWH社が、2017年3月に米連邦倒産法に基づく再生手続を申請したこともあり、両炉の完成日程は計画当初から約4年、遅延している。WH社の倒産申請により、米サウスカロライナ州で同様にAP1000設計を採用したV.C.サマー2、3号機の建設計画は中止が決定した。一方、中国の三門と海陽で2009年から2010年にかけて着工した4基のAP1000はすべて、世界初のAP1000として今年1月までに営業運転を開始している。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月12日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Dec 2019
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米エネルギー省(DOE)は12月10日、カリフォルニア州を本拠地とする超小型原子炉の開発企業、オクロ(Oklo)社が設計した小型高速炉「オーロラ」(=完成予想図)を、傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内で建設することを許可すると発表した。これは、先進的原子力技術の商業化支援イニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環となる措置であり、DOEはこれまでにユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)に対しても、INLの敷地を使ってニュースケール・パワー社製・小型モジュール炉(SMR)の初号機を建設することを許可している。オクロ社は、「非軽水炉型の先進的原子炉設計として、INLサイトの使用許可が下りたのは初めて」と強調しており、2020年代初頭から半ばにかけての「オーロラ」着工を目指す。同社は今のところ、「オーロラ」の設計認証(DC)審査や建設・運転一括認可(COL)などを申請していないが、その商業化に向けた重要な一歩になったとしている。オクロ社によると、「オーロラ」は電気出力0.15万kWのコンパクト設計で、米国でこれまでに開発・実証されてきた先進的な金属燃料を使用。冷却水が不要であり、少なくとも20年間は燃料交換なしで熱電併給を続けることが可能。また、究極的には燃料をリサイクルしたり、放射性廃棄物からクリーン・エネルギーを取り出すこともできる。米原子力規制委員会(NRC)はすでに2016年から、X-エナジー社の「小型モジュール式・高温ガス炉(Xe-100)」やテレストリアル・エナジー社の「小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)」などと同様、「オーロラ」設計に対して「認可申請前活動」を適用。許認可申請のガイダンス提供や、潜在的な課題の事前の指摘などで、オクロ社が申請書を提出する準備作業を支援していた。今回、DOEが発給したサイト使用許可は「オーロラ」が運転を終了するまで有効なもので、着工前にオクロ社がクリアしなければならない様々な要件や許認可手続きを明示。使用したサイトは最終的に元の状態に戻して返還しなければならないが、DOEは同許可の発給により、新しいクリーン・エネルギー技術、中でも特に、先進的核分裂技術の商業化という誓約を明確にしたとオクロ社は評価している。(参照資料:DOE、オクロ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
13 Dec 2019
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