フランスとイタリアの産学が7月16日、原子力分野での研究活動および人材育成に関する協力協定を締結した。締結したのはフランス電力(EDF)のイタリア法人であるエジソン社、仏フラマトム社、イタリアのミラノ工科大学の3者。ノウハウを共有し、原子力分野の研究開発を共同で進める方針だ。今回の協定では、インターンシップや修士および博士号論文の作成協力、セミナー、ワークショップ等の取り組みを通して、共同プロジェクトを推進することが規定されているほか、学生や社員によるフラマトム社の生産拠点やミラノ工科大学、エジソン社の研究室への相互訪問も可能となっている。今回、協力協定を締結したミラノ工科大学は、1950年代から原子力分野の教育と研究を開始したイタリア初の国立大学。同大学のM. リコッティ教授(原子力工学)によると、同大学では至近5年間で、原子力分野を専攻する学生が3倍に増えたという。今回の協力協定について、エジソン社のL. モットゥーラ副社長(人材戦略、イノベーション、研究開発、デジタル担当)は、学生が企業に直接アクセスし、交流できるメリットを強調、「イタリアにおける新規の原子力発電に必要な専門知識向上に向けた新たな一歩となる」と期待を寄せた。1990年に脱原子力を達成したイタリアだが、近年のエネルギー危機や脱炭素の風潮の中で、現在のメローニ政権は原子力発電再開の検討を本格化させるなど、原子力に対して前向きな姿勢を見せている。7月1日にイタリア政府は、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)を提出、同計画には原子力発電再開を想定したシナリオが盛り込まれており、原子力再導入の将来的な可能性を見据えている(既報)。
19 Jul 2024
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南アフリカの国営電力会社であるエスコム(Eskom)は7月15日、同社のクバーグ原子力発電所1号機(PWR、97万kWe)の運転を2044年7月21日までさらに20年間延長する認可を国家原子力規制委員会(NNR)から取得したと発表した。クバーグ2号機(PWR、97万kWe)についても現在、NNRは20年間の運転期間延長に係る申請を審査中だが、同機の運転認可期限である2025年11月9日前にも、運転期間延長に関する決定を行う見込み。なお、エスコムは2021年、両機の運転期間を20年延長する申請書をNNRに提出していた。クバーグ発電所は現在、アフリカ大陸で唯一稼働する発電所。同1、2号機は1984年と1985年にそれぞれ運転を開始。2019年、国のエネルギー・インフラ開発計画である統合資源計画(Integrated Resource Plan: IRP)で2024/2025年以降、エネルギー供給を引き続き継続するため運転期間を延長する方針が示されたこと受け、エスコムは各機で蒸気発生器3台の取替作業を含む、運転期間延長に向けた作業を重点的に進めてきた。エスコムは今回の認可を受け、クバーグ発電所を40年間にわたり安全に運転し、今後も安全運転の継続を確実にするため、安全性の向上と広範なメンテナンスにこれまで投資してきたことに言及。同社のK.フェザーストーン原子力部門責任者は、「クバーグ発電所は長年にわたり、フランスと米国の原子力発電所の運転経験から安全性の改善策を特定し、実施してきた。その結果、通常は新しい近代的な原子力発電所でしか達成できないレベルまでリスクを低減することができた」と胸を張った。
18 Jul 2024
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フィンランド国営の「VTT技術研究センター」は7月5日、フィンランドをはじめ欧州の地域暖房市場における原子力利用によるカーボンフットプリント(CFP)((商品やサービスなどのライフサイクル全体(原材料調達から製造・販売・使用・リサイクル・廃棄まで)で排出される温室効果ガスの排出量をCO2の排出量に換算した指標。))の調査結果を発表。原子力は他のエネルギー源よりもライフサイクル全体での環境影響が少ないことを明らかにした。冬の気候が寒く厳しい国では、住宅やその他の建物の暖房に多くのエネルギーを消費し、欧州では6,000万人が、3,500の地域暖房ネットワークを利用している。VTTは、暖房はCO2排出の主要な要因でもあるため、エネルギーシステムの徹底的な脱炭素化には、化石燃料に代わる幅広い代替燃料が必要であると指摘。エネルギーの生産、流通、消費が発電分野とは異なる暖房分野において、代替エネルギーとして原子力を含めた環境影響について調査を行った。調査にあたり、原子力による地域暖房には、小型モジュール炉(SMR)「LDR-50」(PWR、熱出力5万kW)を採用して分析。2023年にVTTからスピンオフしたステディ・エナジー(Steady Energy)社がフィンランドと欧州市場向けの地域暖房用に2030年代の商業利用を目指して開発中の原子炉だ。標準的なライフサイクル分析(LCA)手法を用いて環境影響を分析したところ、LDR-50は設計段階のプラントのため、建設段階に関連した大きな不確実性が残るものの、暖房に利用した場合のCFPは2.4gCO2/kWhと算定。原子力による地域暖房のCFPは最も少なく、化石燃料の場合は、天然ガス282gCO2/kWh、泥炭450gCO2/kWh、硬質石炭515gCO2/kWhであると示している。また、電力を使用する直接電気暖房やヒートポンプと比較した場合、原子力による地域暖房は、スウェーデンやフランスなど、クリーンな電力ミックスを持つ国のヒートポンプによる暖房と同等のCFPになるという。その一方、化石燃料による電力生産の割合が大きいポーランド、チェコ、ドイツ、エストニアにおいては、直接電気暖房やヒートポンプは各段に大きなCFPとなり、暖房に電力を使用するのは悪い選択であると指摘する。さらに、原子力による地域暖房と従来の暖房燃料の環境への悪影響を12の異なるカテゴリーで分析。原子力による地域暖房による環境影響はほとんどのカテゴリーで、平均を大きく下回る。ウラン採掘と粉砕が環境に悪影響を及ぼすとしても、熱生産量当たりの全体的な影響は代替燃料と比較して小さいという。これらの結果を受けVTTは、地域暖房では、化石燃料から原子力へのリプレースによりCO2排出を著しく削減でき、原子力による地域暖房はバイオ燃料やヒートポンプと並んで実行可能な選択肢であると結論づけている。なお、ステディ・エナジー社がこのほど公表した意識調査結果によると、フィンランドの自治体首長の多くはSMRの建設に極めて前向きで、大都市の自治体首長の86%がSMRを支持しており、反対はわずか11%だった。
17 Jul 2024
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米国のドミニオン・エナジー社(以下、ドミニオン社)は7月10日、バージニア州で所有、運転するノースアナ原子力発電所(PWR、100万kW級×2基)での小型モジュール炉(SMR)導入の実現可能性を評価するため、SMR開発企業を対象に「提案依頼書(RFP)」を発行した。RFPは、同サイトでのSMR建設を確約するものではないが、将来的なエネルギー需要を見据えた対応だという。バージニア州のG.ヤンキン知事は、将来の電力需要を満たすために、信頼性の高い、手頃でクリーンなエネルギーを利用できる技術を模索することが不可欠であるとした上で、「SMRによって、バージニア州は原子力イノベーションのハブとなる」と強調した。 ドミニオン社は今秋にも、バージニア州の規制当局である州企業委員会(SCC)に対して、SMR開発コストの回収ができるよう申請する考えだ。バージニア州議会は今年初め、SMR開発のコスト回収に関する超党派の法案を可決しており、ヤンキン知事が7月10日、同法案への署名を行った。同法はコスト回収額に上限を設けているが、ドミニオン社の見積りでは、申請額はこの上限を大幅に下回るという。バージニア州経済開発機構(VEDP)によると、バージニア州には米マイクロソフト社、米アマゾン・ウェブ・サービス社をはじめ、世界の巨大データセンターのうち、約35%にあたる約150施設が立地しているという。そのため、電力需要に対する関心は高く、2022年にはヤンキン知事がエネルギー計画を発表し、原子力イノベーションのハブを目指すことを明らかにしていた。 なお、ドミニオン社はノースアナ発電所以外に、バージニア州内にサリー原子力発電所(PWR、89.0万kW×2基)を所有、運転しており、2021年5月には80年運転の認可を取得したため、1号機が2052年5月まで、2号機が2053年1月までそれぞれ運転継続することが可能。一方のノースアナも80年運転をめざし、現在2回目の運転期間延長の審査が米原子力規制委員会(NRC)により進められている。
17 Jul 2024
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ルーマニアの国営原子力発電会社であるニュークリアエレクトリカ(SNN)は7月2日、欧州委員会(EC)が、同社のチェルナボーダ原子力発電所3、4号機(カナダ型加圧重水炉=CANDU 6、各70万kW)建設プロジェクトを承認したことを明らかにした。欧州原子力共同体(ユーラトム)条約は、原子力プロジェクト実施者に対し、原子力安全基準を遵守していることを証明するよう求めている。今回ECのエネルギー総局は、同プロジェクトが技術面および原子力安全面において、欧州原子力共同体(ユーラトム)条約の目的に沿っていると評価した。3、4号機の建設プロジェクトについては、SNNが全額出資するプロジェクト企業のエネルゴニュークリア(EN)社が、2023年5月にECに通知。ECは、ルーマニア側から提供された情報を入念に分析し、チェルナボーダ発電所の現場視察、および13か月にわたる協議を実施していた。ルーマニアではチェルナボーダ発電所1、2号機(CANDU 6、70万kW級)が稼働しており、総発電電力量の約20%を賄っている。3、4号機が完成すれば原子力シェアは36%に上昇する見込みで、全4基の稼働により、同国のエネルギー安全保障の強化や自給率の向上を達成する方針だ。3、4号機は1983年に着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊により、建設工事は中断している。総工費は約70億ユーロ(約1.2兆円)。2023年3月には、3、4号機建設に対するルーマニア政府による融資保証や差金決済取引(CfD)メカニズムの実施など、ファイナンス面を含めた国家支援を承認する法律が採択された。これにより、SNNが3段階で進めている建設プロジェクトは現在、第2段階(準備作業期間、最大30か月)に入り、プロジェクトの実行可能性を再評価している。最終投資判断(FID)後、第3段階(建設期間)に入る。SNNは、3号機の運転を2030年に、4号機は翌2031年に営業運転開始を予定しており、全4基の稼働により、年間2,000万トンのCO2排出の削減と、19,000人以上の雇用創出が期待されている。
16 Jul 2024
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欧州連合(EU)は6月24日、ハンガリーのパクシュ原子力発電所Ⅱプロジェクトをロシアに対する第14次制裁パッケージから完全に除外した。ロシアのウクライナ侵略に対する対抗措置として、EUはロシアに対して大規模な制裁を科している。ハンガリーのパクシュ原子力発電所Ⅱプロジェクト(5、6号機を増設。出力120万kWのロシア型PWR=VVER-1200を採用)では、サイト準備作業が進行中だが、ハンガリーのP.シーヤールトー外務貿易相は、同プロジェクトが制裁パッケージからに除外されたことで、「欧州企業はパクシュⅡプロジェクトへの参加にあたり、加盟国当局に許可を申請する必要はなく、EUは同プロジェクトへの欧州企業の参加を阻止することもない。増設作業は加速するだろう」との見方を示した。そして、ドイツ、フランス、オーストリアなど多くの西側企業がパクシュⅡプロジェクトに参加しているが、投資面では、ロシアとウクライナの戦争前の状況に戻りつつあると強調した。これまでEU企業は、特定の製品やサービスについて、供給前に当該国の管轄当局に制裁除外の認可を申請しなければならなかったが、制裁から除外されたことにより、手続きは当局への通知のみで完了する。
16 Jul 2024
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イタリア政府は7月1日、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)の最終文書を提出した。同国が原子力発電計画の再開を決定した場合の原子力発電規模のシナリオを示している。NECPは、EU加盟国が脱炭素化やエネルギー効率、再生可能エネルギーなどの実施計画を含む、気候変動目標と行動を詳述した文書。当初は2030年までの温室効果ガス(GHG)排出削減目標40%削減(1990年比)に合わせたものであったが、2019年にECが2050年までの気候中立の実現を目指す「欧州グリーン・ディール」を発表、2030年の削減目標を55%に引き上げたことから、2019年に提出したNECPの改定が求められていた。イタリアでは、再生可能エネルギーが国家エネルギー政策において主導的な役割を果たしている。石炭発電からの脱却を進め、再生可能エネルギーのシェアを拡大、残りを天然ガスとする電力ミックスを推進しながら、エネルギー源の輸入削減をしていく方針である。NECPでは再生可能エネルギーの設備容量を2022年の6,100万kWから、2030年までに1.31億kW(太陽光7,920万kW、風力2,810万kW、水力1,940万kW、バイオ燃料320万kW、地熱100万kW)にする必要性を改めて強調。再生可能エネルギーの最終エネルギー消費量に占める割合を2022年の19.2%から2030年には39.4%に、最終電力消費量については、2022年の37.1%から2030年には63.4%とする計画だ。なお、電力部門は、電化や水素製造などで大量の電力を必要とし、2050年の気候中立目標を達成する上で重要な役割を果たすことから、天候の影響を受ける再生可能エネルギーを補完するものとして、原子力発電を含めた場合のエネルギーおよび経済的利便性に関する仮説のシナリオを策定している。それによると、2035年から導入する原子力(小型モジュール炉=SMR、先進モジュール炉=AMR、マイクロ炉)と核融合の発電規模は2050年までに約800万kW(原子力760万kW、核融合40万kW)となり、国内の総電力需要の約11%を供給し、さらに最大22%(1,600万kWe)に達する可能性もあると予測。また、原子力を利用すれば、原子力を利用しない場合と比較して、約170億ユーロ(約2.94兆円)を節約でき、気候中立の目標を達成できると推定。関連する国内法の必要な改正が可能であれば、原子力発電の再開が重要な役割を果たす可能性があると指摘する。イタリアでは1960年初頭から4サイトで合計4基の原子力発電所が稼働していたが、チョルノービリ原子力発電所事故後の1987年、国民投票によって既存の全発電所の閉鎖と新規建設の凍結を決定。最後に稼働していたカオルソ(BWR、88.2万kWe)とトリノ・ベルチェレッセ(PWR、27万kWe)の両発電所が1990年に閉鎖し、脱原子力を完了した。2009年になると、EU内で3番目に高い電気料金や世界最大規模の化石燃料輸入率に対処するため、原子力復活法案が議会で可決している。しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、同じ年の世論調査では国民の9割以上が脱原子力を支持。当時のS.ベルルスコーニ首相は、政権期間内に原子力復活への道を拓くという公約の実行を断念した。しかし、近年は世界的なエネルギー危機にともない、イタリアのエネルギー情勢も変化。2021年6月に実施された世論調査では、イタリア人の1/3が国内での原子力利用の再考に賛成しており、回答者の半数以上が新しい先進的な原子炉の将来的な利用を排除しないと述べている。2023年5月、議会下院は、国のエネルギーミックスに原子力を組み込むことを検討するよう政府に促す動議を可決。9月には、環境・エネルギー安全保障省が主催する「持続可能な原子力発電に向けた国家政策(PNNS)会議」の第一回会合が開催され、近い将来にイタリアで原子力発電を復活させる可能性が議論されている。(既報)
12 Jul 2024
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インドのN.モディ首相はロシア公式訪問時の7月9日、ロシアのV.プーチン大統領とともに、モスクワにある原子力パビリオンを訪問し、両国の新たな原子力協力の可能性を協議した。両首脳は、全ロシア博覧センター(VDNKh)内にある、パビリオン“ATOM”を訪問。ロシア国営原子力企業ロスアトムのA.リハチョフ総裁が案内役を務めた。「現代の原子力産業」をテーマとする展示コーナーにて、ロシアの原子力技術を利用した海水淡水化、種子や食品の品質向上のための放射線照射、北極海航路によるインドからヨーロッパやロシアへの貨物輸送、浮揚式原子力発電所などを紹介し、両国の新たな協力可能性について協議した。また、同パビリオンでは、ロシアが手掛けるインドのクダンクラム原子力発電所(1、2号機が稼働中。3~6号機が建設中)の建設や原子力人材育成、インドの月探査計画と医療用のアイソトープ(RI)供給に関するビデオが上映された。両首脳会談後に発表された、共同声明「強固で拡大するパートナーシップ」では、原子力の平和利用分野における協力を、戦略的パートナーシップの不可欠な構成要素であると明記。現在建設中のクダンクラム原子力発電所3~6号機(ロシア製PWR=VVER-1000、各100万kWe)の機器引き渡しの時期を含む既存のスケジュール遵守の合意に言及するほか、以前の合意文書に従い、インド国内にロシアが建設協力する2番目となる原子力発電所の新たなサイトの設置について更なる議論の必要性を強調した。さらに、VVER-1200(120万kWe)の建設プロジェクトの実施、機器製造の現地化、発電所部品の共同生産や、第三国における協業などに関する技術協議の継続を確認している。その他、核燃料サイクルの分野や原子力技術の非エネルギー利用における協力強化を掲げた。なお、2002年に始まった、クダンクラム原子力発電所の建設は、両国の技術・エネルギー協力の旗艦プロジェクトとして位置付けられ、同1、2号機はそれぞれ2014年、2017年に営業運転を開始している。今後、同3~6号機の運転開始により、発電所が所在する人口7,200万人のタミル・ナードゥ州の電力需要の50%を供給し、隣接する州(合計人口約1億人)の電力需要の約1/3を供給するという。また、ロスアトムによるバングラデシュ初の原子力発電所「ルプール」(VVER-1200×2基)の建設プロジェクトにおいて、インドの企業が全ての冷却塔やポンプステーションを建設するなど、両国の協力は第三国でも実施されている。新たな協力分野もすでに両国間で議論されており、インドの新サイトにおけるVVER-1200の計6基の建設や、小型の原子力発電所(浮揚式原子力発電所)の建設、閉じた燃料サイクルの分野での協力を有望視している。また、両国は、原子力技術の非エネルギー応用分野、特に腫瘍及び心臓病の診断、また治療に使用されるRI製品の供給分野における協力拡大にも関心を寄せている。さらに、ロシアのエネルギー資源(石油・石炭・LNG)をロシア北西部の港から北極海航路を経由し、ロシア極東の港で積替え、インドの港まで輸送する可能性について両国間で協議が進行中であるという。なお、インドのJ.シン原子力担当国務大臣は6月25日、インド原子力省(DAE)の行動計画の見直しを行うハイレベル会合にて、「2029年までに現在の748万kWの原子力発電設備容量を、約70%拡大させ1,308万kWとし、そのために7基を増設する」と発言。その一方で、同大臣は、エネルギー安全保障、健康と食料安全保障とともに、放射性医薬品と核医学、農業、食料保存にも焦点を当てるべきとし、一般市民の経済的・社会的利益や生活の利便性を促進する放射線技術の発展の必要性も強調した。
11 Jul 2024
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韓国の国立木浦大学校は7月2日、同校の付属研究機関として世界初の小型モジュール炉(SMR)船舶研究所を開所した。同研究所では今後、SMR搭載船舶の開発と商業化のほか、同船舶の専門家を育成するための教育プログラムの開発と運営にも取り組む計画だ。 開所式には、韓国水力・原子力会社(KHNP)、サムスン重工業(SHI)などの原子力・造船関係企業、米国船級協会(ABS)、ロイド船級協会(LR)などの国際船級協会、地方自治体、企業や団体の関係者100名以上が出席。同校のS. ハチョル学長は、「SMR搭載船舶が、将来の海洋産業の中核を担う技術として注目を集めている」と述べ、その要望に積極的に応えるため、今回の研究所設立に至ったと説明。そのうえで、同学長は「今後は国内外の大学、研究機関、造船会社、船級協会などと協力し、ネットワークを構築して、総力をあげて研究を進める」と意気込みを語った。国連の専門機関である国際海事機関(IMO)が2023年に採択した「2023 IMO GHG削減戦略」によると、国際海運からの温室効果ガス(GHG)排出量を2050年頃までに正味ゼロにすることが目標として掲げられている。海洋環境に対する規制が厳しくなるなか、先進的な新技術を搭載した次世代燃料船(ゼロエミッション船)の開発が求められており、SMRの技術が、今後の海事産業の技術的選択肢の一つとして注目されている。SMRをめぐっては、最近ではY.ソンニョル大統領が6月に慶州市でのSMRの産業ハブ創設計画を発表したほか、韓国製SMR「i-SMR」の国内外の展開をめざして産官学が連携して開発を進めるなど、SMR開発を積極的に推進している。また、原子力の船舶利用については、サムスン重工業が、デンマークのシーボーグ社製コンパクト熔融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮体式原子力発電所の概念設計に協力している。日本では、IMOのGHG削減戦略に対応するため、大手造船会社と日本海事協会が「一般財団法人次世代環境船舶開発センター」を2020年に設立し、ゼロエミッション船や低・ゼロ炭素燃料などの研究を行っている。なお、2023年5月、浮体式原子力発電所プロジェクトを手掛ける英国のコアパワー社に対し、日本の今治造船(愛媛県今治市)や尾道造船(兵庫県神戸市)など13社が出資したことが明らかになっている。
11 Jul 2024
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カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は6月28日、「サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」による初の社債を発行した。今回の起債による調達資金で、新規原子力発電プロジェクトなど、広範なクリーンエネルギープロジェクトに充当する。社債の発行額は10億加ドル(約1,185億円)。OPG社によるこれまでの発行額は子会社を含めると、30億加ドル(約3,554億円)以上となり、カナダ最大。6月25日に公表された新たな社債枠組みの「サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」は、世界的な原子力の役割の再評価により、既存の原子力施設の保守や改修に向けた資金調達を初導入した、2021年策定のグリーンボンド・フレームワークに代わるもの。この新たな社債枠組みは、原子力の新設なども対象とした、より広範なクリーンエネルギープロジェクトへの資金提供だけでなく、先住民のコミュニティや企業が、調達、トレーニング、教育、雇用を通じて、OPG社のプロジェクトなどに参加する機会の創出も目的としている。「サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」には、以下のエネルギー関連のプロジェクトなどが対象に含まれる。既存の原子力施設の保守や改修に加え、SMR(小型モジュール炉)や大型原子力発電所などの新たな原子力プロジェクト水力発電の改修、太陽光、風力、水素製造などの再生可能エネルギープロジェクトエネルギー貯蔵やクリーン燃料貯蔵などのエネルギー効率向上と管理ゼロエミッション車などのクリーン輸送の促進洪水や異常気象に対する気候適応能力とレジリエンス(回復力)の開発OPG社のA.シポラ最高財務責任者は、「この新たな社債枠組みは、クリーンエネルギーへの移行を実現するための重要な一歩。これらの目標を資金調達に統合し、電力、アイデア、人材を原動力として持続可能な未来を構築するという当社のコミットメントを果たしていく」と強調した。OPG社は、ダーリントン新・原子力プロジェクトサイトで、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」(電気出力30万kW)の計4基の建設を計画し、現在、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同社による初号機の建設許可申請を審査中(既報)。なお、OPG社が所有・運転する、ダーリントン発電所1~4号機(CANDU、各93.4万kWe)では、128億加ドル(約1.5兆円)の改修プロジェクトが半分以上を終えており、2026年末までに完了予定。ピッカリング発電所(B)5~8号機(CANDU、各54万kWe)では、オンタリオ州政府の支援を得て、改修プロジェクトの準備作業が開始されており、2030年代半ばまでに完了予定だ(既報)。
10 Jul 2024
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ロシアとウズベキスタンが5月末に締結したロシア製SMR発電所の建設契約が6月26日に発効し、ウズベキスタン初となるSMRの建設準備作業が今秋にも開始される。今年5月末にロシアのプーチン大統領がウズベキスタンを訪問した際に、原子力砕氷船技術に基づくSMR「RITM-200N」×6基構成(合計電気出力33万kW)の原子力発電所の建設に関する契約がウズベキスタン原子力庁(ウザトム=Uzatom)傘下の原子力発電所建設総局とロシア国営原子力企業ロスアトム傘下のエンジニアリング部門であるアトムストロイエクスポルト(ASE)社間で締結された。このたび、契約の発効に係る議定書の調印式がウズベキスタンで開催され、両者が調印した。なお、ロシア製SMRの海外輸出プロジェクトは、これが初めてとなる。両国関係者は、ウズベキスタン東部のジザク州の建設サイトを訪れ、現場調査および建設作業の優先課題を特定した。プロジェクトチームや建設作業員の居住エリアやその他必要なインフラ整備工事が今秋にも開始される。ロシアの最新SMRであるRITM-200Nは、舶用炉を陸上用に改良したPWRで、熱出力19万kW、電気出力5.5万kW、設計運転年数は60年。初号機を2029年に運転開始させ、2033年までに全6基を稼働させたい考えだ。RITM-200Nは2012年以降、ロシアの原子力砕氷船「アルクティカ」、「シベリア」、「ウラル」、「ヤクーチア」、「チュコトカ」向けに10基が製造され、最初の3隻はすでに北極圏西部で就航中。ロシア国内においては、RITM-200N原子炉をベースにした陸上設置型SMRがサハ共和国北部のウスチ・クイガ村で建設中。2027年の起動、2028年の運転開始を予定している。周辺の鉱床開発などの産業企業に電力を供給する予定だ。
09 Jul 2024
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韓国水力・原子力会社(KHNP)は6月28日、自社の研究施設(CRI)内に、小型モジュール炉(SMR)「i-SMR」の運転試験用シミュレーターを開設した。i-SMRは電気出力17万kWの一体型PWRで、概念設計と基本設計は昨年末に完成している。今回のシミュレーターはそれらを基に開発したもので、i-SMRの設計や操作を検証し、開発にフィードバックさせるのが狙いだ。KHNPは、2025年末までに「標準設計(SD)」を完成させ、2028年に「標準設計承認(SDA)」を取得したい考えだ。i-SMRのベースとなったのは、韓国原子力研究院(KAERI)が開発したSMART炉(System-integrated Modular Reactor)。事故時に運転員の介入や電力供給なしで、原子炉を安全に停止する受動的安全性を備えているほか、モジュール化による工期短縮、運転システムの自動化による省人化などが特長だという。KHNPは2020年、i-SMR開発プロジェクトに着手し、2023年に同プロジェクトは、政府の全面的な支援を受けた国家研究開発プロジェクトと位置付けられた。韓国政府のバックアップの下、プロジェクト全体を管理するi-SMR開発機構が発足し、KHNPやKAERIのほか、韓国電力技術(KEPCO E&C)、韓電原子力燃料(KNF)や斗山エナビリティなど、韓国の主要原子力関連企業が参加している。i-SMRをめぐっては、KHNPは今年4月、i-SMRと太陽光や風力などの再生可能エネルギーを組み合わせて、エネルギーの安定供給とCO2排出ネットゼロを実現する都市構想である「スマートネットゼロシティ(SSNC)」を発表。SSNCの開発促進のため、同月、韓国南東部の慶尚北道(キョンサンブクト)の慶山市と了解覚書(MOU)を締結した。続く6月には、KHNPは、大邱広域市と、大邱慶北新空港近くのハイテク産業団地へのi-SMR建設に向け、フィージビリティ・スタディ(FS)を含むMOUを締結している。さらに、KHNPは昨年12月、第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の会期中、インドネシアの電力会社ヌサンタラ・パワー(PLN NP)社およびヨルダン原子力委員会(JAEC)とそれぞれMOUを締結。KHNPとPLN NP社は、インドネシアにおけるi-SMR開発の経済性や技術に関する共同基礎研究を実施するほか、地域の専門技術の開発、原子力分野の人的・技術交流などで協力する。一方、KHNPとJAECは、共同FSの実施など、ヨルダンにおけるi-SMRの展開可能性に関するMOUを締結している。
09 Jul 2024
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国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は6月27日、米国のワシントンD.C.で開催された世界銀行グループの理事会に出席。世銀をはじめとする国際開発金融機関(MDB)に対し、途上国における原子力発電導入プロジェクトへの融資解禁を強く訴えた。グロッシー事務局長は、持続可能な開発および発展のため、世界はクリーンで信頼性の高い、持続可能なエネルギーを大量に必要としていると指摘。脱炭素化の迅速な達成のためには、他の低炭素技術とともに原子力発電の展開を加速するよう求める新たな世界的コンセンサスが生まれつつあるとの見解を示した。そして、「アフリカからアジアまで、エネルギーミックスに原子力を加えようとする国々は、技術的・財政的支援を必要としている。IAEAは技術的専門知識を有しており、安全で確実かつ持続可能な原子力発電インフラを確立するよう支援することは可能だが、原子力発電プロジェクトには資金調達面で依然としてハードルがある」と現状を分析した。その上で、「民間の金融機関は一層、資金調達に貢献する必要があるが、世界銀行のようなMDBが、原子力プロジェクトの財政面を評価し、適切な融資を実施することにより、持続可能な開発は加速される」と強調した。世界銀行や他MDBは現在、原子力発電所の新設プロジェクトへの融資は実施していない。一部のMDBが既存炉の改修や廃炉に融資を実施している程度だ。昨年12月にUAEのドバイで開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の成果文書ではCOP史上初めて、炭素排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして「原子力」が明記され、他の低炭素エネルギー源とともに原子力導入の加速が世界的に求められている。グロッシー事務局長は、原子力発電への融資は、この「新たな世界的コンセンサス」にMDBが歩調を合わせることになると言及した。また、COP28では25か国が2050年までのネットゼロ達成に向けて、世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させるという誓約にも署名。同誓約では世界銀行、国際金融機関、地域開発銀行に対し、原子力を融資対象に含めるよう呼びかけており、今年3月にIAEAとベルギー政府が主催した初の原子力エネルギー・サミットにおいても、多くの国がこの呼びかけに賛同している。国際エネルギー機関(IEA)は、気候目標を達成するためには、世界の低炭素電力の25%を供給している原子力発電設備容量を、2050年までに少なくとも倍増させることが必要であるとし、これはIAEAが2023年に公表した「高ケース予測(野心的だが妥当かつ技術的に実現可能な政策シナリオ)」と一致する。2050年までに原子力発電設備容量を倍増させるには、原子力発電への投資を年間1,000億ドル(約16兆円)に倍増させる必要があるとIAEAは推定している。現在、およそ30か国が原子力の新規導入を検討または着手しており、そのうち、約2/3が開発途上国。IEAによると、世界がパリ協定の下での気候目標を達成する場合、これら開発途上国で原子力発電を大幅に拡大する必要があるという。グロッシー事務局長は、開発途上国における原子力導入プロジェクトへの資金調達は依然として大きな障害であると指摘。新規導入国の中には、バングラデシュやエジプトなどのように、建設プロジェクトを受注した主契約者から融資を受けるケースもあるが、異なる資金調達オプションが必要となるケースも出てくるとの見方を示している。
08 Jul 2024
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カザフスタンのK.-J. トカエフ大統領は6月27日、同国での原子力発電所新設に関する国民投票を今秋実施する方針を明らかにした。トカエフ大統領は、メディアに対し、「エネルギーの安定供給なくして経済発展はない。カザフスタンには原子力開発の大きな可能性があるが、原子力は正しく、効果的に利用することが重要だ。すでに原子力について、幅広く、様々な視点から議論がされており、メディアもこのプロセスに積極的に参加すべきだ」と指摘。「原子力発電所建設の最終的な決定は国民がするもの。このため、国民投票を今秋に実施する。政府が正確な日付を決定する」と表明した。同大統領は、昨年9月1日の国民へのメッセージの中で、原子力発電所建設について包括的で幅広い議論を継続し、国民投票を実施する必要性を強調していた。カザフスタンのエネルギー省は昨年8月、カザフスタンの原子力発電の新設に向けた諸活動の進展状況を公表。サイトについては、アルマティ州のジャンブール地区にあるバルハシ湖西南に位置するウルケン村を選定。炉型については、建設と運転経験で実証済みの以下の炉型を候補に挙げている。中国核工業集団公司(CNNC)製「華龍一号(HPR-1000)」(100万kW級PWR)韓国水力・原子力会社(KHNP)製「APR1400」(140万kW級PWR)露ロスアトム製VVER-1200(120万kW級PWR)またはVVER-1000(100万kW級PWR)フランス電力(EDF)製EPR-1200(120万kW級PWR)また、建設予定地があるアルマティ州や近隣の州で、原子力発電所建設をめぐり、地元住民を交えた公開討論が複数回実施されている。化石燃料資源が豊富なカザフスタンでは、総発電電力量のうち7割を石炭火力が、2割を天然ガス火力が占めている。ウラン生産については世界トップクラスの生産量(世界シェアの約40%)を誇り、燃料ペレットや燃料集合体の製造も行っている。旧ソ連時代にはカスピ海沿岸のアクタウに建てられた熱電併給・海水脱塩用の高速炉「BN-350」(出力15万kW)が1973年から1998年まで営業運転していた。現時点で国内に原子力発電所はないが、研究炉を含む原子力研究開発が国立原子力センターを中心に行われている。政府が2022年3月に制定した「2035年までのエネルギーバランス」では、増大する電力需要に応えるため、2035年までに最大240万kWeの原子力発電所の新設など、発電設備1,750万kWeを増強し、2035年までに石炭火力発電を40%削減、2060年までにカーボンニュートラルの達成を掲げている。なお、「代替エネルギー源の利用に関する」法案について7月27日を期限とする公開協議向けの資料の中では、国民投票で承認された場合を想定し、最初の原子力発電所の建設に100億~120億ドル(約1.6兆~1.9兆円)の予算が計上されている。政府は大型炉のほか、小型モジュール炉(SMR)についても国内建設の可能性を模索している。エネルギー関係の政府系投資ファンド「サムルク・カズィナ国家福祉基金」が2014年7月に設立した有限責任事業組合「カザフスタン原子力発電所」(KNPP)は2021年12月、米ニュースケール・パワー社製のSMRを複数備えた発電設備「VOYGR」の建設可能性を評価するため、同社と了解覚書を交わしている。
05 Jul 2024
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ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は6月28日、米GE・日立ニュクリアエナジー(GEH)社製小型モジュール炉(SMR)である「BWRX-300」(30万kW)のポーランドにおける展開支援に向け、「BWRX-300」のサプライチェーン・グループ3社と契約を締結した。今回契約を締結した3社は、アトキンス・リアリス社(旧SNC-ラバリン社)、建設大手エーコン(Aecon)社、GEH社で、OSGEはこれら3社と協業契約を締結、さらにアトキンス・リアリス社とエーコン社とは「BWRX-300」の建設分野に係る2つの枠組協定を結んだ。OSGE社は、ポーランドの建設・エンジニアリング企業にSMR建設に係る知識や技術が不足しているなか、経験豊富なカナダ企業のノウハウを活用していきたい考えだ。なお、エーコン社は、オンタリオ・パワー(OPG)社のダーリントン・サイトでの「BWRX-300」建設プロジェクトの建設を担当しており、さらにアトキンス・リアリス社とともに、現在OPG社とブルース・パワー社が保有するCANDUプラントでの大規模な改修工事も手がけている。今回の契約について、エーコン社のT. クロシャー原子力担当副社長は、エネルギー移行において、SMRの導入は重要な役割を果たすとし、「ポーランドにおけるクリーンで信頼できる安価な電力供給に貢献する」と今回の協働の意義を強調。一方、アトキンス・リアリス社のI. エドワーズ社長兼CEOは、世界の電力需要が2050年までに3倍に増加し、新たに1000基規模の原子炉市場が生まれると予測した上で、「大型原子炉だけでなくSMRが今後の新規建設の一画を担う」との見方を示した。ポーランドの大手化学素材メーカーとポーランド最大手の石油精製企業の合弁会社であるOSGE社は2023年4月、首都ワルシャワを除く国内6地点における合計24基の「BWRX-300」建設に関する原則決定(DIP)を気候環境省に申請。同省は同年12月、これら発電所に対するDIPを発給した。DIPは、原子力発電所建設計プロジェクトに対する最初の基本的な行政判断で、DIP発給によりプロジェクトが正式に認められたことを意味する。OSGE社は、2030年代初めにも「BWRX-300」の初号機を完成させたい考えで、今年に入って、ポーランド環境保護総局(GDOŚ)は同プロジェクトに関する環境影響評価(EIA)の報告書作成に向けて取り組むべき分野を提示。これを受け同社は、ポーランド南部のスタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)地点での「BWRX-300」建設に向けた環境・立地調査を開始する。また、ポーランドの規制当局である国家原子力機関(PAA)は2023年5月、「BWRX-300」の安全評価に関する包括的な見解を長官名で公表し、同炉がポーランドの関係法に基づく安全要件に適合していることを確認した。「BWRX-300」は出力30万kWの次世代原子炉で、2014年に米国の原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。
05 Jul 2024
1429
スウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の建設を計画するシャーンフル・ネキスト(KNXT)社は6月26日、4~6基のSMRを導入するための新たな候補サイトを発表した。新たな候補サイトは同国南東部のエステルイェータランド県の広大な海岸沿いのエリアに位置し、南スウェーデン全域での脱炭素エネルギー源の拡大を目指す、KNXT社の「Re:Firm South SMR」プログラムの一環である。KNXT社は、同県バルデマーシュビークのサイト所有者であるLatona Groupと原子力導入に係る調査の独占パートナーシップ契約を締結。今夏以降に完了予定の現在進行中の調査において既に有望な予備的結果が示されたため、両社は今後、共同で自治体、近隣住民に、SMR建設プロジェクトについて周知することとしている。同サイトの総面積は約1,300 ha、SMR建設地としてのロケーションおよび冷却条件も最適で、人工知能(AI)データセンターなどのエネルギー集約型産業との共同立地も可能だという。バルデマーシュビークのSMRプロジェクトでは、70年間にわたり年間約500人の地元の雇用創出と年間100~150億kWhのクリーンな電力の生産が期待される。なお、昨年のスウェーデンの原子力発電電力量は470億kWhだった。KNXT社は「Re:Firm South SMR」プログラムにおいて、複数のSMRパークを建設することにより、炉型選定、建設、電力購入契約(PPA)、資金調達の面でスケールメリットをねらっている。バルデマーシュビークが同プラグラムの最初の建設サイトに選定された場合、2030年前半に送電を開始したい考えだ。同社は2022年3月、スウェーデン国内で複数の「BWRX-300」(電気出力30万kW)の早期建設を目指し、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と協力覚書を締結している。KNXT社は、同プログラムのもう一つの候補地として昨年8月、エステルイェータランド県の北側に位置するセーデルマンランド県のニュヒェーピング(Nyköping)自治体にあるスタズビック社の社有地内を選定した。実行可能性調査(FS)の結果は、今年後半にも発表される予定である。なお、KNXT社は先月、熱供給用SMRの商業化を目的に設立されたフィンランドのスタートアップ企業であるステディ・エナジー(Steady Energy)社と、スウェーデンに地域暖房用のSMRを導入するための戦略的パートナーシップを締結した。KNXT社のC.シェランデルCEOは、「ステディ社のSMRを当社の電力供給のポートフォリオに加え、持続可能な暖房ソリューションを必要とする自治体向けに、新たに地域暖房サービスを提供する」と発表している。ステディ社の地域暖房用SMR「LDR-50」(LDR=Low-temperature District heating Reactor、熱出力5万kW)は低温(約150°C)、低圧(10バール以下)の運転を特徴とし、地下設置も可能。ステディ社は2028年にも「LDR-50」をフィンランドの首都ヘルシンキとクオピオで着工し、2030年までに初号機の営業運転を開始したい考えだ。なお、2025年にはフィンランドのヘルシンキ他2都市でパイロット施設(電気加熱式)を着工する。
04 Jul 2024
1359
カナダのアトキンス・リアリス社は6月21日、カナダ型加圧重水炉(CANDU炉)の新型炉「MONARK」(100万kWe)×4基構成の原子力発電所が、カナダにプラスの経済効果をもたらし、数千人の雇用を創出する、との調査報告を明らかにした。アトキンス・リアリス社(AtkinsRéalis、旧名:SNC-ラバリン=SNC-Lavalin)は、ケベック州モントリオール市を本拠地とし、世界各地で様々な産業向けに、エンジニアリング・調達・建設(EPC)事業を展開する。今回、同社の委託により、カナダ大手のリサーチ機関Conference Board of Canadaが実施した調査によると、「MONARK」×4基のプロジェクトが実現すれば、機器製造、エンジニアリング、建設のプロセスで、カナダの国内総生産(GDP)が409億加ドル(約4.8兆円)増加、運転の段階で495億加ドル(約5.8兆円)増加する。合計で計904億加ドル(約10.6兆円)の増加となり、税収は市、州、連邦政府全体で291億加ドル(約3.4兆円)の増加が見込まれるという。また、70年以上の運転期間を通じて、年間3,500人のフルタイム相当の雇用を創出。さらに、「MONARK」の知的財産権は100%カナダが所有しているため、カナダのサプライチェーンは、「MONARK」の海外輸出・建設1基ごとにカナダのGDPに48億加ドル(約5,700億円)の増加とカナダ人2,200人以上の雇用をもたらすと予測している。「MONARK」は、アトキンス・リアリス社が昨年11月下旬にパリで開催された世界原子力展示会(WNE)で発表した新設計のCANDU炉。CANDU炉では最大出力の第3世代+(プラス)炉に分類され、水素製造やアイソトープ製造が可能だ。CANDU炉は、連邦政府直轄のカナダ原子力公社(AECL)が主体となり、カナダが独自に開発し実用化した重水炉。カナダの他、アルゼンチン、中国、韓国、ルーマニアで稼働中である。カナダでは現在国内で稼働する19基(50万kW級~90万kW級)すべてでCANDU炉を採用。国内250企業以上、専門的および熟練したスキルを有する76,000人もの従業員を抱える一大サプライチェーンが確立されている。アトキンス・リアリス社のG.ローズ・カナダ原子力担当副社長は、「オンタリオ州は2050年までに合計1,800万kWeの新規原子力発電の導入を目指しており、CANDU炉のような大型炉は予測される需要に対応するカギとなる」と指摘している。
03 Jul 2024
1386
米エネルギー省(DOE)は6月27日、米国内産の低濃縮ウラン(LEU)購入に関する「提案依頼書(RFP)」を発行した。RFPは、J. バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダから27億ドル(約4,363億円)を支援するもので、ロシア産LEUへの依存脱却に向け、米国内のウラン濃縮能力を強化し、商業用核燃料の供給源の多様化や安定供給を図ることが狙い。DOEは今回のRFPを通じて、新規の濃縮施設や既存の濃縮施設の拡張プロジェクトなど、新たな供給源と2件以上の契約を締結する予定だ。今回の発表について、J. グランホルムDOE長官は、DOEが国家安全保障の強化と国内原子力産業の成長に不可欠な、米国内のウラン供給力を強化しているとしたうえで、「原子力業界の世界的リーダーであり続けるという米国の決意を示すもの」と表明。また、A. ザイディ大統領補佐官兼国家気候アドバイザーは、バイデン政権下で進められてきたクリーンエネルギーの拡大促進が、高賃金な雇用を生み、なおかつエネルギー安全保障を高めてきたとこれまでの実績を強調した。ウランの調達をめぐっては、バイデン大統領が5月13日、ロシア産LEUの米国への輸入を禁止した「ロシア産ウラン輸入禁止法」に署名、来月8月11日に施行される。同法は、2040年まで有効。DOEによると、原子炉や米国の原子力関連企業の継続的な運営を維持するために、代替となるLEUの供給源がない、あるいは、LEUの輸入が国益にかなうと判断した場合は、輸入禁止の免除が可能。ただし、その場合もLEUの輸入量は限られ、いかなる免除も2028年1月1日までに終了しなければならない。DOEエネルギー情報局(EIA)が6月に発表した最新のウラン市況年次報告書(2023 Uranium Marketing Annual Report)によると、ロシアは米国の商業用原子力発電所向けLEUの27%を供給しており、米国に次ぐ第2位のシェアを占めている。現在、LEUの購入において、米国では全体の約72%が海外調達となっている。
03 Jul 2024
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ノルウェー政府は6月21日、原子力発電導入を検討する委員会を設立した。同委員会は、2026年4月1日までに政府に報告書を提出する。同委員会は12名の専門家から構成され、オスロにある国際気候・環境研究センター(CICERO)のK.ハルヴォルセン所長が委員長を務める。同国における原子力発電所建設の将来的な可能性について、さまざまな側面から幅広く検討・評価するため、多様な分野の専門家が委員に就任している。主要なテーマ分野においては、委員会を支援し、意見する専門家グループも別途設置することとしている。主な検討事項は以下の通り。①ノルウェーの電力システムにおける原⼦⼒発電の適合性②原⼦⼒に関する研究と技術開発の現状と将来展望③導入コスト④発電所の立地やインフラ設備の要件⑤地域や環境への影響⑥廃棄物問題⑦原子力安全⑧安全保障と核不拡散⑨緊急時対策⑩人材育成⑪規制や許認可プロセスの整備の必要性などそのほか、他の発電技術との比較や、小型モジュール炉(SMR)と従来型の原子力発電所の比較評価のほか、雇⽤や新規サプライチェーンなど、原子力発電導入による経済効果、社会的受容性の可能性など、社会的側面からの評価も求めている。T.アースランド・エネルギー相は、「自然や気候の危機に対処し、増大する電力需要に応えるには、カーボンフリーで安定したエネルギー源が必要であり、近年の技術開発の進展や、自治体と民間企業が手を組んだ原子力発電所建設計画が、原子力に再び注目する契機となった。原子力は社会の多くの分野に影響を与えるエネルギー源。ノルウェーの電力システムに原子力を導入する場合、原子力に関する最新かつ確かな知識が必要となる」と強調する。ノルウェーでは、1970年代に原子力導入が議論されたが、これまで原⼦⼒発電所の建設は現実的な選択肢として考慮されてこなかった。1950年代~1960年代には4基の研究炉が議会の承認を得て稼働したが、発電炉の開発、運転、規制、許認可プロセスの経験はない。ノルウェーでは、新興エネルギー企業ノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)が中心となり、SMR導入に向けた動きが加速している。同社は2023年、ノルウェー海に面したアウレ(Aure)自治体とハイム(Heim)自治体、北極圏のナルヴィク(Narvik)自治体やバレンツ海に面したヴァードー(Vardø)自治体からSMR立地可能性調査の実施要請を受け、各自治体と調査プログラムの実施協定を締結。2023年11月、ノルウェー南西部のアウレ自治体とハイム自治体を拠点とするSMR発電所建設に向けた評価に関する提案書を石油・エネルギー省(当時)に提出した。また同月、エストフォル・エネルギー(Østfold Energi)社ならびにハルデン市と、かつて研究炉が運転されていたハルデン市でSMR建設の実現可能性を探るため、共同で新会社のハルデン・シャーナクラフト(Halden Kjernekraft)社を設立。今年4月、ノルウェー西岸ヴェストラン県ベルゲン市の西にあるエイガーデン(Øygarden)自治体で、サイト影響評価作業を開始すると明らかにした。今年6月には、ノルウェー最北東部フィンマルク県におけるSMR建設評価に関する提案書をエネルギー省に提出している。
02 Jul 2024
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仏フラマトム社は6月20日、欧州連合(EU)から資金拠出を受け、欧州で運転されているロシア型PWRであるVVER向け、100%欧州製燃料の開発と供給を加速することを発表した。フラマトム社は、44万kWe級のVVER-440型炉用の燃料開発と供給に向け、EUの拠出金1,000万ユーロ(17.3億円)を受けて、欧州原子力共同体(ユーラトム)の研究トレーニングプログラム下で「Safe and Alternative VVER European(SAVE)」プロジェクトを実施する。同プロジェクトはVVER-440を運転する、チェコ電力(ČEZ)、フィンランドのフォータム社、ハンガリーのパクシュ社、スロバキア電力などの電力会社を含む欧州の17の企業・機関が参加し、燃料供給リスクの低減をはかるのが目的。フラマトム社のL.ガイフ上級執行副社長は今回のEUの資金拠出を歓迎し、「当社は、VVERを運転する欧州の原子力産業とエネルギー政策の両方を支援し、既存炉の安全で、信頼ある運転に貢献し、次世代燃料の開発に強く関与する。燃料の設計から製造、燃料部品のサプライチェーンをEU内に配置し、100%の欧州主権を実現できる唯一の燃料サプライヤーとして、VVERの燃料供給の多様化とエネルギーセキュリティの確保に貢献していく」と語った。フラマトム社の取組に先行し、米ウェスチングハウス社は、ウクライナの原子炉も含め、EU域内で稼働するVVERの燃料を緊急に確保するため、3年計画の「Accelerated Program for Implementation of secure VVER fuel Supply(APIS)」を2023年1月から主導している。ロシアのウクライナ侵攻に起因するもので、VVER-440燃料の安全設計とVVER-1000向けの次世代燃料設計の開発などが目的だ。EUは2023年~25年までの「ユーラトム作業プログラム」を通じて1,000万ユーロ(17.3億円)を共同出資している。APISには、WE社のスウェーデンの燃料工場を幹事役とし、欧州の電力会社や燃料設計・製造研究機関など11の機関・企業が参加している。現在、EU域内では18基のVVERが稼働しており、100万kWe級のVVER-1000はブルガリアとチェコで各2基ずつ、VVER-440はチェコで4基、フィンランドで2基、ハンガリーで4基、スロバキアで4基の計14基が稼働中である。
01 Jul 2024
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韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は6月20日、韓国南東部の慶尚北道(キョンサンブクト)の慶山市で主催した討論会で、小型モジュール炉(SMR)の産業ハブ創設の計画を明らかにした。ユン大統領は、慶山市の嶺南大学校で「北東アジアのハイテク製造イノベーションハブ、慶北」をテーマに主催した第26回目の国民との討論会において発言。慶尚北道の地域住民、原子力発電所や水素などの新エネルギー産業に関わる起業家や中央政府・地方政府などから100名以上が参加した。ユン大統領は挨拶の中で「慶尚北道が新たな飛躍を遂げるためには、産業構造の革新が何よりも重要だ」とし、エネルギー産業の拠点形成を重視。慶尚北道はこれまで、鉄鋼業や繊維産業を通じて韓国の輸出を牽引してきたが、現在、水素やバイオなどの新たな成長分野を発掘・推進しており、政府は慶尚北道の産業革新を積極的に支援すると強調した。具体的には、慶州市に3,000億ウォン(約330億円)規模を投じ、「SMR産業ハブ」を創設するとしている。欧米諸国などが2030年代初頭にSMR導入を目指す中、今後は炉型開発だけでなく、SMRの機材製作や建設面でもグローバルなSMR市場をリードすることを狙う。また、産業通商資源部(MOTIE)が、来年までに800億ウォン(約88億円)の原子力産業成長基金を創設することを紹介。SMR産業を牽引する革新的な機器製造企業を支援し、慶尚北道のSMR製造能力を着実に強化し、世界のSMR製造拠点に成長できるよう技術面のインフラ整備を積極的に支援することが目的。さらに現在、蔚珍郡で計画中の新ハヌル3、4号機(APR1400、各140万kWe)を滞りなく建設し、慶尚北道が原子力産業の復興と新産業化において主導的な役割を果たせるよう後押しすると表明した。新ハヌル原子力発電所3、4号機の新設計画は、ムン・ジェイン(文在寅)前大統領の政権下の脱原子力政策により建設計画が凍結されていたが、現政権下で再開された。また、SMRのハブ化に加え、慶尚北道を「水素産業のハブ」にするため、東海沿岸に「水素経済産業ベルト」を創設する8,000億ウォン(約880億円)のプロジェクトを支援すると表明。政府は現在、慶尚北道の浦項市において水素燃料電池の国産化を推進する「水素燃料電池クラスター」とともに、蔚珍郡に原子力を利用した「原子力水素国家工業団地」の創設を推進中とし、今後、さらに加速していくと語った。
28 Jun 2024
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露ロスアトムのA.リハチョフ総裁は、ロシアの公式代表団の一員としてベトナムを訪問。ロシアとベトナムの首脳会談に先立ち、6月19日、ベトナムのファム・ミン・ティン首相と会談した。リハチョフ総裁は、ベトナムにおける原子力科学技術センター(CNST)建設プロジェクトの状況、原子力発電所建設に関する協力再開の見通し、その他関連分野での二国間協力の進展について同首相に伝えた。また同日、リハチョフ総裁はフイン・タイン・ダット科学技術相と会談し、ベトナムにおけるCNST建設プロジェクトの実施状況と計画、関連する科学技術分野での協力、ベトナムの原子力産業に携わる人材育成について協議した。6月20日、プーチン大統領のベトナム公式訪問の枠組みの中で、ロスアトムとベトナム科学技術省は、CNST建設プロジェクトの2027年までのスケジュールに関する覚書に調印。両国間の包括的戦略的パートナーシップの更なる深化に向けた共同声明で、CNST建設プロジェクト実施の加速化で合意したことが盛り込まれた。
26 Jun 2024
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中国核工業集団公司(CNNC)は6月19日、中国初の産業用原子力蒸気供給プロジェクト「和気1号」(Heqi-1)を完成、本格稼働を開始した。江蘇省連雲港市の田湾原子力発電所3、4号機(PWR=VVER-1000、各112.6万kWe)から近隣の連雲港石油化学工場に蒸気を供給する。今年2月末に試運転が開始されていた。両機の二次系統から蒸気を取り出し、多段階の熱交換を経て、断熱された地上パイプラインで工場に運ぶ。パイプラインの総距離は23.36km。毎時600トン、年間8,000時間の連続運転による産業用蒸気の製造が可能で、年間480万トンのゼロカーボンの蒸気を発電所から工場への供給が期待されている。これは石炭の燃焼を年間40万トン削減することに相当し、それぞれ二酸化炭素(CO2)=107万トン、二酸化硫黄(SO2)=184トン、窒素酸化物(NOx)=263トンの排出削減に相当するという。CNNCは、国家能源局(NEA)と国家原子能機構(CAEA)下で国務院の「2024-2025省エネ・炭素削減行動計画」の実施に取り組んでおり、本プロジェクトは「グリーンで低炭素の先端技術実証プロジェクト」の第1陣の位置付け。グリーン、安全性、安定性、高効率を特徴としている。CAEAの黄明全(Huang Mingquan)秘書長は、今後も発電だけでなく、産業、農業、医療、環境保護、安全保障などの分野で原子力の広範な利用を強力に推進していくと語った。
26 Jun 2024
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韓国の産業通商資源部(MOTIE)と韓国原子力環境公団(KORAD)は6月18日から高レベル放射性廃棄物研究のための地下施設のサイト候補地を募集している。韓国政府の第二次高レベル放射性廃棄物管理基本計画(2021年12月)と高レベル放射性廃棄物研究開発ロードマップ(2024年2月)に定められた放射性廃棄物管理技術開発方策に基づく措置。地下研究施設は、実際の処分施設と同規模の深度、地下500mで韓国の岩盤特性と処分システムの性能を研究するための施設。同施設は、高レベル放射性廃棄物処分施設とは完全に別の場所に建設され、放射性廃棄物や使用済み燃料は施設エリア内に受け入れず、研究目的のみに使用される。研究施設は、専門的な人材育成と国内の地質環境に適した処分技術の開発に主眼を置き、一般市民にも高レベル放射性廃棄物処分施設に近い環境を体験する機会を提供する。研究施設で開発された技術は、法令に基づき、高レベル放射性廃棄物処分施設のサイト選定、建設、管理の過程で活用される。KORAD傘下のサイト評価委員会が、地方自治体から提出されたサイト提案を地質など8項目の基準で評価し、2024年内の選定プロセスの完了を目指す。2026年に着工、2032年の完成を計画しており、運転期間は2030年から約20年間を計画する。MOTIEとKORADは、関心のある地方自治体向けにサイト選定プロセスを説明する説明会を6月25日に開催。関心表明とサイト提案は、それぞれ7月19日と8月2日までにKORADに提出を求めている。
25 Jun 2024
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