ロシアのレニングラード第Ⅱ原子力発電所3号機(PWR=VVER-1200、119.9万kW)が3月14日、着工した。同サイトでは、同型の4号機も建設予定である。ロシアのV.プーチン大統領は、オンラインで着工式典に参加。国内の原子力発電の見通しについて、「2045年までに、ロシアの総発電量における原子力シェアを25%にする計画だ。レニングラード発電所の新設はこの計画に大きく貢献し、ロシア北西部全体のエネルギー安全保障を向上させ、クリーンな電力供給を継続する」と語った。なお、現在の原子力シェアは約20%。現在、レニングラード発電所3、4号機(軽水冷却黒鉛減速炉のRBMK-1000、100万kW級)と隣接サイトの第Ⅱ発電所1、2号機(VVER-1200、120万kW級)が運転中。レニングラード発電所は半世紀以上にわたり、安価な電力を安定的に供給し、サンクトペテルブルク市とレニングラード州における現在の原子力発電量のシェアは55%、北西部連邦管区全体で28.5%となっている。1、2号機(RBMK-1000、100万kW級)は45年の運転期間を経て、第Ⅱ発電所1、2号機の運転開始後の2018年12月と2020年11月に閉鎖され、現在、廃止措置の準備中である。VVER-1200はロシアが開発した第3世代+(プラス)炉で、動的と静的、2種類の安全系を持ち、コンクリート製の二重格納容器や、設計基準外事象の発生時に放射性物質の漏洩を防ぐコア・キャッチャーを備える。ロシアではノボボロネジ第Ⅱ原子力発電所1、2号機で先行採用・運転されている。海外ではベラルーシで運転中、中国、トルコ、エジプト、バングラデシュで建設中だ。レニングラード州のA.ドロズデンコ知事は、「レニングラード発電所の運転は、地域産業を支え、インフラ整備のほか、大規模な地域投資プロジェクトの実施、雇用創出、医療、教育などに寄与している。近く閉鎖する3、4号機を代替する第Ⅱ発電所3、4号機が稼働すれば、発電量は20%増大し、レニングラード州に安定した経済成長をもたらす」と期待を寄せる。国営企業ロスアトムは、第Ⅱ発電所3、4号機の年間発電量を各85億kWh以上と想定している。ロスアトムのA.リハチョフ総裁は、「現在、クルスク第Ⅱ原子力発電所で1、2号機(VVER-TOI、各125.5万kW)を建設中で、年内に1号機の起動を予定。スモレンスク原子力発電所(RBMK-1000×3基)とコラ原子力発電所(VVER-440×4基)でも既存炉を代替する新設炉(スモレンスク第Ⅱ発電所で2基、コラ第Ⅱ発電所で1基)の建設を予定している。ウラル山脈以西での原子力発電を大幅に増強後、電力消費量の伸びが予想されるシベリアと極東へ進出する」との意欲を示した。
18 Mar 2024
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フランスの経済・財務・産業及びデジタル主権省のB. ル・メール大臣は3月7日、同国の燃料サイクル戦略を2040年以降も継続することを決定し、既存の燃料サイクルプラントの運転期間を延長し、新たなMOX燃料製造プラントと再処理プラントの研究を開始する計画を発表した。マクロン大統領が主宰する原子力政策評議会(CPN)は2月26日、閉じた燃料サイクル戦略の継続を明らかにしたが、本発表は、ル・メール大臣、R. レスキュール産業担当大臣がオラノ社のラ・アーグ再処理工場を訪問した際に行われた。ル・メール大臣は、2040年以降の燃料サイクル戦略目標に向けて次の3つの取組を発表した。ラ・アーグ再処理工場とメロックスMOX燃料製造工場の運転期間を2040年以降に延長するための持続可能性および強靭化プログラムの実施ラ・アーグ・サイトにおける新たなMOX燃料製造プラント建設に向けた研究の開始2045~2050年までに、ラ・アーグ・サイトにおける新たな再処理プラント建設に向けた研究の開始ル・メール大臣は、「フランスの原子力の歴史に新たな1ページが開かれようとしている。原子力は大規模な国家プロジェクトであり、脱炭素化、エネルギー主権の強化、産業の活性化の中心にある。この戦略で最終的には放射性廃棄物の量を75%削減できる」と強調している。フランスは原子力開発計画の当初から、使用済み燃料を再処理してウランとプルトニウムを回収・再利用する閉じた燃料サイクルを堅持し、放射性廃棄物の放射能量と処分量の大幅削減を図ってきた。ラ・アーグ再処理工場で使用済み燃料の再利用可能な質量組成の約96%を分離処理して回収したプルトニウムを、メロックス工場で製造するMOX(混合酸化物)燃料に再利用している。オラノ社によると、同国の原子力発電量の約10%は現在、MOX燃料起源であり、今後さらに使用済みMOX燃料の再処理により最大約40%にまで上昇する可能性があるという。MOX燃料には現在、再処理から回収されたプルトニウムのみが使用されている。再処理による回収ウラン(RepU)は、既存の軽水炉の燃料として再濃縮して利用が可能。回収ウランの処理は2013年に中断したが、回収ウラン産業の復活に10年をかけて取り組んできた。同国南東部にあるクリュアス原子力発電所の全4基(各PWR、95.6万kW)では回収ウランの利用が認可されており、2月5日、同発電所の2号機で回収ウラン起源の燃料を全炉心装荷により運転を再開した。フランスの原子力発電事業者である国営EDFは、2027年から130万kW級の原子炉で回収ウラン利用を計画しており、2030年代には毎年装荷される燃料の30%以上を占める見込みである。これは、今後数十年で天然ウラン資源25%の節約に匹敵する。なお、オラノ社傘下のオラノUSA社は2月28日、持続可能なエネルギーソリューションに取り組む米国のシャイン・テクノロジー社と軽水炉の使用済み燃料を再処理するパイロット施設を米国で共同開発する協力覚書を締結した。パイロット施設のサイト選定を年末までに行う考え。年100トンの処理能力を有し、再処理・回収された核物質は既存炉や新規炉の燃料に再利用し、再処理過程で抽出された放射性核種は産業や医療に利用する。2030年代初頭に運転を開始する計画だ。米国は1960年代には使用済み燃料の再処理・再利用の最前線にいたが、1972年にプログラムを停止している。
15 Mar 2024
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韓国水力・原子力会社(KHNP)は2月26日、燃料の安定供給確保のため、米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)と協力意向書(LOI)を締結した。本LOI締結により、KHNPは濃縮ウラン調達先の多様化と燃料供給の安定性向上を目指すとともに、セントラス社との戦略的な関係構築による韓米間の原子力協力を強化することが狙い。KHNPは、「セントラス社との協力で、既存炉だけでなく、将来の新規炉向けの燃料確保も可能になる」と強調している。2023年4月25日、KHNPはセントラス社と了解覚書(MOU)を締結。ロシアとウクライナの戦争勃発後に大きな懸念となっている持続可能かつ信頼性のあるエネルギーの安定供給への寄与を目的に、事業拡大の機会を模索しながら、安定した燃料供給のための相互協力の強化を狙いとしていた。現在、韓国では25基が運転中で、いずれもKHNPが運転事業者である。合計出力は約2,500万kW、原子力シェアは総発電量のおよそ1/3である。なお、KHNPは韓国原子力研究院(KAERI)と、小型モジュール炉(SMR)の「i-SMR」(主要機器を原子炉容器内に統合した一体型PWR、17万kW)の開発を進めている。2025年末までに標準設計(SD)を完了し、2028年に標準設計承認(SDA)の取得をめざす。昨年12月の第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の会期中、インドネシアやヨルダンでの「i-SMR」導入にむけて、それぞれインドネシアの電力会社のヌサンタラ・パワー(PLN NP)社、ヨルダン原子力委員会と了解覚書(MOU)を締結するなど、「i-SMR」のグローバル展開に積極的だ。一方、セントラス社は、米国におけるウラン濃縮能力の再構築に取り組んでおり、昨年11月、国内初のHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))20kgを製造した。先進的原子炉ではウラン235濃縮度5%~20%のHALEU燃料使用のものもあり、既存の原子炉よりも小型化し、少ない燃料でより多くの電力の生産や、炉心寿命の延長、安全裕度の増加、効率性向上などが可能になる。現在、ロシアが大規模にHALEUを製造しており、ロシアに依存しない調達先の確保が喫緊の課題となっている。
14 Mar 2024
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米ウェスチングハウス(WE)社は2月20日、オランダで運転中のボルセラ原子力発電所(PWR、51.2万kW)サイトに同社製AP1000×2基の増設に向けた実行可能性調査(FS)の実施契約をオランダ政府と締結した。同契約は、オランダ経済・気候政策省(EZK)のM.ヘイドラ気候・エネルギー担当局長とWE社のエネルギーシステム事業担当のE.ゲデオン上級副社長によって調印された。WE社は「FS実施は欧州連合(EU)の気候目標や2035年までにカーボンニュートラルの発電を目指すオランダの公約に沿ったものである。当社はオランダ政府を支援し、信頼性があり、かつ低コストなカーボンフリーの電力を今後数十年間にわたって提供したい」と語る。2021年12月、オランダの新連立政権は連立合意文書に原子力発電所の新設を明記。また、政府は2022年12月、新設サイトとしてボルセラ・サイトが最適と発表している。計画では、2035年までに第3世代+(プラス)の原子炉、出力100万~165万kW×2基を新設し、オランダの総発電量の9~13%を供給するとしている。現在の原子力シェアは約3%である。なお、オランダ経済・気候政策省は、昨年12月に韓国水力・原子力会社(KHNP)と、同様の実行可能性調査(FS)実施契約を締結。韓国の尹錫烈大統領がオランダ公式訪問時に締結された。オランダ政府は仏EDFとも同様の契約を結ぶ方針である。また、同省は2基新設に向けた立地選定手続きの第一歩として、企業、団体、地方自治体などから、サイト等に関する提案募集を2月23日に開始した。締切は4月4日。同省によると、提案が条件を満たしている場合、今後、建設候補地として潜在的に適しているかどうかを調査するとしている。いずれにしても、既存の立地候補であるボルセラ/フリシンゲン(スロー地区)およびマースブラクテI(ロッテルダム港)の2か所については現在調査を進めている。また同時に、ステークホルダーや地域住民の今後のプロジェクト手続きへの関与についても意見を募集中。経済・気候政策省はこれらの国家の重要プロジェクトに係る手続きを慎重に行い、2025年に立地について閣議決定した後に、入札を開始するとしている。
13 Mar 2024
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米グローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)社はこのほど、米国ノースカロナイナ州ウィルミントンにある試験ループ(Test Loop)施設で、レーザー濃縮技術の実証プロジェクトを加速する。GLE社はレーザー濃縮技術の商業化を目指し、豪サイレックス・システムズ社が51%、加カメコ社が49%所有する合弁企業。両者は、2024年の濃縮技術の実証プロジェクト費用について、前年比の倍増で合意した。サイレックス社によると、今年、最大5,450万ドル(約80.2億円)まで増額を承認。GLE社によるサイレックス法(サイレックス社独自のレーザー分子法によるウラン濃縮技術)の実証プロジェクトを年内に完了させ、ケンタッキー州パデューカ・サイトでの用地取得活動や米原子力規制委員会(NRC)の認可取得などの商業化に向けた活動を進め、早ければ2028年にパデューカ・レーザー濃縮施設(PLEF)の営業運転を開始したいとしている。GLE社はサイレックス法濃縮技術の独占行使権を保有しており、米エネルギー省(DOE)は2016年、GLE社と約30万トンの劣化六フッ化ウランを売却する売買契約を締結、PLEFで30年をかけてこれを天然ウラン・グレードまで濃縮し、六フッ化ウラン(UF6)の形で、世界のウラン市場で販売する計画だ。この年生産量はウラン鉱山による八酸化三ウラン(U3O8)の年生産量、最大500万ポンド(1,923tU)に相当し、現在のウラン鉱山の生産量トップ10にランク入りするという。なお、サイレックス社は、PLEFの以下の3つの商業化オプションを提示している。劣化ウラン処理による天然ウラン・グレードのUF6(ウラン235濃縮度0.7%)の生産既存原子炉用の濃縮度5%までの低濃縮ウラン(LEU)、ならびに5%~10%までのいわゆるLEU+の生産次世代の先進的小型モジュール炉(SMR)用の濃縮度20%までのHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の生産そして、試験ループ施設での実証プロジェクトの成功、産業界と政府の支援、PLEFでの実現可能性評価、市場要因を前提として、サイレックス法による濃縮でGLE社が将来の原子燃料生産に大きく貢献する可能性があるとしている。なお、DOEが所有するパデューカ・サイトには、パデューカ・ガス拡散濃縮プラントが1960年代から民生用の濃縮ウランを生産していたが、2013年に操業を停止し、現在、サイトは環境復旧プログラム下にある。
12 Mar 2024
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中国核工業集団公司(CNNC)は2月18日、浙江省寧波市で金七門第Ⅰ原子力発電所の起工式を開催した。2023年12月29日、国務院常務会議は同発電所の1、2号機の建設計画を承認している。同発電所では、中国が独自開発した第3世代PWR「華龍一号」(HPR1000)を採用。同サイトではこの1、2号機を含め、計6基の「華龍一号」を建設予定である。CNNCによると、全基が稼働すると合計設備容量は約720万kWとなり、年間550億kWhを発電、これは年間約5千万トンのCO2削減に相当するという。建設期間は60か月、1号機の運転開始は2028年末頃を見込む。CNNC傘下のCNNC浙江エナジー社がプロジェクト管理、建設および運転管理を担当する。また、2月22日には、福建省でCNNCの漳州第Ⅱ原子力発電所1号機が着工した。2022年9月の国務院常務会議で、同発電所における「華龍一号」採用の1、2号機(各112.6万kW)の建設計画が承認されている。同サイトの漳州第Ⅰ発電所では「華龍一号」の1、2号機(各112.6万kW)が建設中で、それぞれ2024年、2025年に営業運転を開始予定。2号機では冷態機能試験の準備が進行中である。さらに、CNNCは「華龍一号」×2基採用の漳州第Ⅲ発電所を計画中。漳州原子力発電所プロジェクトは、CNNCと中国国電集団(CGC)がそれぞれ51%、49%を所有する合弁企業CNNC-国電漳州エナジー社が運営する。なお、CNNCは海南省の昌江原子力発電所3、4号機においても「華龍一号」(各120万kW)を建設中で、それぞれ2021年3月、2021年12月に着工している。一方、中国広核集団(CGN)は2月27日、国家核安全局(NNSA)から防城港原子力発電所4号機(華龍一号、118万kW)の運転許可を取得した。同機は昨年9月に温態機能試験を実施。近く燃料装荷し、今年前半にも運転開始予定。3号機は2023年3月に営業運転を開始したCGN設計による初の「華龍一号」である。同発電所では計6基の稼働を計画しており、1、2号機(CPR-1000、各108.6万kW)は2016年に営業運転を開始した。同発電所は、CGNが61%、広西投資集団が39%を所有する。発電以外の利用として、CNNCが2月27日に中国初の産業用原子力蒸気供給プロジェクトの試運転を開始した。江蘇省の田湾原子力発電所3、4号機(PWR=VVER-1000、各112.6万kW)から近隣の連雲湾石油化学工場に蒸気を供給する。両機の二次系統から蒸気を取り出し、多段階の熱交換を経て、断熱された地上パイプラインで工場に運ぶ。パイプラインの総距離は23.36km。すでに毎時280トンの安定した蒸気流量を記録しており、年間480万トンの蒸気供給を見込んでいる。商業運転は今年6月に予定されている。
11 Mar 2024
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米国のGEベルノバ社は2月14日、傘下のグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社がウラン235の濃縮度8%までの燃料製造、輸送、挙動解析で米原子力規制委員会(NRC)から認可を取得したことを明らかにした。この認可取得により、米ノースカロライナ州ウィルミントンにあるGNF社の施設は、濃縮度8%までの燃料製造認可を持つ米国初の商業施設となる。NRCは同時に、GNF社が自社のRAJ-II輸送コンテナを利用して、濃縮度8%までの燃料集合体の輸送を認可する適合証明書も発給した。また、GNF社が濃縮度5%を超える燃料解析を可能にする先進的な原子力解析法に関する許認可トピカルレポート(LTR)も承認した。いずれも、GNF社とGEベルノバ社の先進事業部門が、米エネルギー省(DOE)の事故耐性燃料(ATF)開発プログラム下で実施した成果である。NRCは2023年8月、国内商業炉に濃縮度5%超の燃料の装荷を初認可し、これにより、サザン・ニュークリア社はボーグル2号機で濃縮度6%までのATFを装荷することが可能となった。現在、運転中の商業炉では濃縮度約4.8%までの低濃縮ウランが使用されている。濃縮度10%までの高濃縮度燃料(LEU+とも呼称)では、既設原子炉の他、先進炉や小型モジュール炉(SMR)を含む次世代原子炉で、出力増強等による経済性向上が期待できる。
08 Mar 2024
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インド原子力省(DAE)は3月4日、同国南部のタミルナドゥ州・カルパッカムで建設中の同国初の高速増殖原型炉「PFBR」(50.0万kW)で、燃料装荷を開始したと発表した。燃料装荷には、N. モディ首相が立ち合うなど、国を挙げてFBR開発に取り組む姿勢を示している。PFBRは、2003年10月に設立されたDAE傘下のバラティヤ・ナビキヤ・ビデュト・ニガム社(BHAVINI)が開発した国産の高速増殖原型炉。2004年に着工され、DAEによると、これまでに200以上のインド企業が協力し、設計、建設された。当初の完成予定は2010年であったが、さまざまな技術的課題に直面し、着工から燃料装荷まで約20年の月日を要した。今後、運転が開始されれば、インドはロシアに次いで世界で2番目となる高速増殖炉の商業運転国となる。インドの原子力発電開発計画は、国内で豊富なトリウムを燃料とする「トリウム・サイクル」が開発初期からの一貫した基本方針。インドはこれまで、第1段階となる従来の重水炉・軽水炉路線に続き、第2段階としてFBRの開発を進めており、今回の燃料装荷は、続く第3段階におけるトリウム資源利用への大きな足がかりとなるものである。DAEによると、さらに6基の同規模FBRの建設計画があるほか、トリウムを利用したAHWR(新型重水炉)の研究開発にも力を入れている。ナトリウム冷却高速炉であるPFBRは、ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)を燃料としており、プルトニウムと核分裂性ウラン233を増殖させるために、ウランとトリウムのブランケットを装荷する。それにより、プルトニウムとウラン233を増殖させ、将来のAHWR用燃料として利用する計画だ。PFBRについてDAEは、使用済み燃料を再利用することから、「放射性廃棄物を大幅に減容し、大規模な地層処分施設の必要性を回避できる」と強調している。インドではこれまで、インディラ・ガンジー原子力研究センター(IGCAR)を中心に、高速炉開発を積極的に進めており、1985年から高速実験炉FBTR(13.5万kW)を運転中。今年1月2日には、高速炉燃料用大規模商業再処理プラントの前身となるIGCARのPFBR燃料再処理実証プラント(DFRP)の竣工式にモディ首相が出席、2月にも同首相は、20日に送電を開始したカクラパー4号機(PHWR、 70.0万kW)を訪問している。
08 Mar 2024
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チェコ電力(ČEZ)は2月14日、所有・運転するドコバニ原子力発電所(VVER-440×4基、各51万kW)に年末をメドにウェスチングハウス(WE)社製燃料が初納入されることを発表した。テメリン原子力発電所(各108.6万kW、VVER-1000×2基)の1号機では、2019年に6体のWE製燃料集合体が試験装荷され、現在、ČEZ社とWE社が燃焼特性を評価中だ。試験装荷の結果はドコバニ発電所用燃料の仕様決定等の準備に活用されている。WE原子燃料部門のトップであるT.チョホ氏は、「当社にはVVER-1000に1,500体の燃料集合体を納入し、問題なく運転している実績がある。今回、ドコバニ発電所に最新版のVVER-440用燃料集合体を初納入するが、ウクライナのリウネ原子力発電所のVVER-440×2基にすでに装荷実績があり、同様に成功すると確信している」と語る。2010年代末、それまでロシアの核燃料会社TVEL社に依存していたVVER用燃料の調達先を見直すEUの政策に則して、ČEZ社は燃料調達先を多様化する取り組みを始めた。2018年開始の入札に基づき、2022年にはテメリン発電所用燃料集合体の供給契約をWE社およびフラマトム社と締結。ドコバニ発電所用燃料については2023年、リウネ発電所に燃料を供給したWE社と契約を結んだ。これにより、今回のドコバニ発電所への燃料納入が実現する。ČEZは2022年、エネルギー安全保障の強化に重点を置き、燃料備蓄量のさらなる増量を決定、両発電所の管理区域内にある特別貯蔵庫の容量も拡大している。ドコバニ発電所では、少なくとも3年分の燃料備蓄を計画している。また、連続運転サイクルの長期化が可能となり、テメリン発電所では18か月、ドコバニ発電所では16か月となる。これにより、ČEZ社は2030年までに年平均320億kWhの原子力発電量の達成を見込む。2023年には両発電所で304億kWhを発電、総電力需要の36%を占め、毎年約2千万トンのCO2の排出削減に貢献している。なお、現在の新規原子力発電計画には、最大4基の大型炉新設の他、小型モジュール炉の展開可能性が含まれている。仏マクロン大統領が民生用原子力協力を含む二国間協力の強化のためにチェコ訪問中の3月5日には、ČEZ社は仏オラノ社とドコバニ発電所向けのウラン濃縮役務提供に関する契約を締結した。2023年末のテメリン発電所向けの転換と濃縮役務の長期契約に続くもの。ČEZ社は今回の契約について、欧州での燃料確保を確実にし、エネルギー安全保障を一層強化するものと評価している。
07 Mar 2024
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米国のA.W.ボーグル原子力発電所4号機(PWR、125万kW)が3月1日、送電網に接続し、送電を開始した。同機は2月14日に初臨界を達成している。ボーグル発電所では、3-4号機としてウェスチングハウス社製AP1000を2基増設する計画で、3号機は2023年7月に営業運転を開始している。4号機では今後、起動試験を継続する。同機の共同所有者であるジョージア・パワー社によると、今年第2四半期(4~6月)に営業運転を開始する見込みだ。ボーグル3、4号機はジョージア州内の4社が共同所有しており、サザン・カンパニーの子会社であるジョージア・パワー社が同プロジェクトに45.7%出資、オーグルソープ電力とジョージア電力公社(MEAG)、およびダルトン市営電力がそれぞれ30%と22.7%、および1.6%出資、サザン・カンパニーの子会社のサザン・ニュークリア社が運転する。
06 Mar 2024
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フィンランドで原子力発電所を所有・運転するフォータム社とティオリスーデン・ボイマ(TVO)社は2月13日、ポーランド初の原子力発電所の導入にむけて技術支援を行うため、Polskie Elektrownie Jądrowe(PEJ)社と2年間の枠組み契約を締結した。PEJ社は国営の特別目的会社(SPV)で、ポーランド初の原子力発電所の建設および運転を担当する。この枠組み契約は、同国北部のポモージェ県に新設される3基の米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000の設計、エンジニアリング、運転準備でのPEJ社支援が目的。今回、競争入札で選定されたフォータム社の原子力サービス本部とTVO社傘下のTVOニュークリア・サービス(TVONS)社が、原子力発電所の許認可手続きや設計段階で、運転者のPEJ社を支援する。PEJ社は、将来の運転者としてのニーズへの対応や原子炉供給者であるWE社と主契約者であるベクテル社のコンソーシアムとの契約履行状況の確認のほか、燃料戦略や放射性廃棄物管理戦略の策定における協力とノウハウのシェアなどの支援も想定。フォータム社とTVONS社は、プラントスタッフの訓練計画や運転員の詳細な業務範囲を規定する行動計画の策定においてもPEJ社を支援する。2022年11月、当時のポーランド政府は、同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ地区に建設する原子力発電所の採用炉型として、WE社製「AP1000」を選定。同国の気候環境省は昨年7月、PEJ社に対して発電所建設の原則決定(DIP)を発給し、9月にはWE社、ベクテル社、PEJ社の3社がエンジニアリング・サービス契約を締結した。初号機は、2033年の営業運転開始を目指している。
06 Mar 2024
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カナダ連邦政府は2月29日、オンタリオ州のブルース原子力発電所の増設プロジェクトに関する実行可能性調査(FS)を支援するため、ブルース・パワー社に5,000万カナダドル(約55.4億円)を拠出すると発表した。本発表は、オタワで開催されたカナダ原子力産業協会(CNA)の年次大会の席上、カナダのエネルギー天然資源省のJ.ウィルキンソン大臣が行った。今回の資金拠出は、ネット・ゼロ経済の構築に向けた連邦政府の計画「Powering Canada Forward」や、オンタリオ州の経済成長に向けたクリーンな長期的電力システム構築計画「Powering Ontario’s Growth」に沿ったものである。J.ウィルキンソン大臣は、この資金拠出が、経済を促進しつつ、パリ協定に基づく排出削減目標を達成するという連邦政府のコミットメントに沿って、カナダ国内のパートナーと協力して、クリーンで信頼性の高い手頃な価格の電力システムを全国に構築するという連邦政府の目標を支援するものであり、オンタリオ州で良質な雇用と経済成長を牽引するものであると強調した。オンタリオ州のT.スミス大臣は、ブルース発電所で大規模な増設が可能になれば、オンタリオ州の世界有数の信頼性の高い、手頃な価格のクリーンな電力システムへのアクセスを目指して海外からの投資が集中するとし、今回の連邦政府による支援への期待を語った。ブルース・パワー社は、ブルースA発電所(1~4号機)、B発電所(5~8号機)で各80万kW級のCANDU炉×計8基を運転中で、3~8号機の運転期間延長プログラムと主要機器交換を主とする大規模改修がスケジュール通りに予算内で進行中である。1、2号機は既に改修が終わっている。オンタリオ州の要請により、ブルース・パワー社は現在、「ブルースC」プロジェクトとして、自社のサイト内に計480万kWの増設に向けた可能性評価のため、周辺住民や環境等に対する潜在的影響の評価(Impact Assessment=IA)手続きを進めている。連邦政府からの資金を活用し、IAの完了とサイト準備許可(LTPS)の申請、地元自治体や先住民コミュニティとの早期からの連携活動、技術面・環境面・工学面の調査と評価など、「ブルースC」プロジェクト開発へ向けた主要作業を実施する。ブルース・パワー社のM.レンチェック社長兼CEOは、「ブルースC増設に向けた作業への連邦政府からの資金拠出は、連邦政府と州政府が民間部門と協力して、地元自治体や先住民コミュニティとの早期からの連携や、オンタリオ州とカナダの全国民に長期的なクリーン・エネルギーをもたらすプロジェクト開発を支援している素晴らしい例である」と述べた。また、CNA年次大会では、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)社が「カナダにおけるウェスチングハウス(WE)社製AP1000プロジェクトの経済的影響」を発表。PwC社によると、WE社はオンタリオ州に4基の「AP1000」設置を検討しており、製造、エンジニアリング、建設段階(2025~2040年)を通じてカナダのGDPに287億カナダドル(約3.2兆円)の経済効果を与え、稼働を開始すれば、年平均でGDPが81億カナダドル(約8,980億円)増加し、1.2万人の雇用を生み出すという。カナダのCO2排出削減を支援する他、国内のサプライヤーにも新たな機会をもたらすことが予想されている。WE社は、今年オンタリオ州キッチナーに新しいエンジニアリング・ハブを開設するなど、カナダに原子力プロジェクト支援拠点を拡大している。オンタリオ州だけでなく世界で展開される「AP1000」プロジェクトでカナダのサプライヤーを活用することで、1基あたり8.8億カナダドル(約975億円)のGDP増となる可能性があると言及。また、WE社製の小型モジュール炉(SMR)「AP300」やマイクロ炉「eVinci」の展開においてもカナダのサプライヤー活用を想定している。
05 Mar 2024
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インドで建設中のカクラパー原子力発電所4号機(PHWR、70万kW)が2月20日、送電網に接続し、送電を開始した。同機は12月17日に初臨界を達成している。カクラパー4号機は2月9日、原子力規制委員会(AERB)から試運転許可を得て、出力を段階的に上昇させ、送電開始に至った。インド原子力発電公社(NPCIL)は、計16基の70万kW級国産加圧重水炉(PHWR)建設プロジェクトを掲げているが、1基目となるカクラパー3号機は、昨年6月末に営業運転を開始。4号機はこれに次いで2基目となる。同発電所では、1、2号機(各PHWR、22万kW)が1990年代前半から運転中である。N.モディ首相は2月22日、同発電所を訪問し、「21世紀にはインドの発電部門における原子力の役割は増大するが、この先進的な国産PHWRにより『自立したインド』を示せることは誇りである」と述べた。インドでは現在23基、計748万kWの原子力発電所が運転中であるが、大部分は出力の小さい国産PHWRで、これらPHWRの内、最大出力であるのがカクラパー3号機である。カクラパー4号機の他、NPCILが建設する8基(PHWR×4基、VVER-1000×4基、計680万kW)と原子力省(DAE)傘下のBHAVINI社が建設する高速増殖原型炉(PFBR)の1基(50万kW)の計10基が建設中。さらに、インド政府は慢性的な電力不足の解消と国内原子力産業の急速な発展を促すため、2017年5月、国内の4サイトで新たに10基の70万kW級PHWRを建設する計画を原則承認した。それらは、南西部カルナタカ州のカイガ原子力発電所5、6号機、北部ハリヤナ州のゴラクプール3、4号機、中央部マディヤ・プラデシュ州のチャッカ1、2号機、および北部ラジャスタン州のマヒ・バンスワラ1~4号機である。現時点ですべて行政手続き上の承認と財政的な認可を受けており、建設前のサイト整備や長納期機器の調達が進行中。いずれも2031年~2032年頃の完成を目指している。なお、インド政府で原子力や科学技術を担当するJ.シン閣外専管大臣による昨年8月の下院議会への答弁書によると、DAEは2031年までに原子力発電設備容量を2,248万kWに増強する目標を設定している。2047年までに総発電量に占める原子力シェアは、現在の約3%から9%近くまで増大すると予想する。
04 Mar 2024
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米国とブルガリアは2月12日、コズロドイ原子力発電所(100万kW級ロシア型PWRの5、6号機のみ運転中)の新設計画などの原子力プログラムの実施で、政府間協定を締結した。協定には、米エネルギー省(DOE)のA.ライト国際関係担当次官補とブルガリアのエネルギー省R.ラデフ大臣が署名。協定締結により、コズロドイ原子力発電所における新設プラントの設計・建設・試運転を支援するための作業部会の設置に加え、研究・訓練プログラムおよびブルガリアの原子力サプライチェーンの強靭化に向けた協力を進める。ブルガリアが安全で持続可能なカーボンフリーのエネルギー源として民生用原子力を開発するにあたり、透明性と一般市民の認知度向上のための協力も含む。A.ライト次官補は「米国は、ブルガリアの原子力安全・セキュリティ、核燃料供給、原子力プロジェクト開発など、民生用原子力発電計画のあらゆる側面を強化する取り組みを支援していく」と表明、R.ラデフ大臣は、「研修の実施やノウハウのシェア、人材の交流、多くのブルガリア企業によるサプライチェーンへの積極的な参加とその発展に向けた協力が重要である」と強調した。ブルガリアのコズロドイ原子力発電所が設立した新規建設会社(Kozloduy NPP – New Builds PLC=KNPP-NB)は2月2日、同発電所第Ⅱサイトで計画される米国ウェスチングハウス(WE)社製「AP1000」×2基の新規建設に係る主契約者選定で5社が関心表明を提出したことを明らかにしていた。2月16日、関心表明者が、米国のフルアー社、ベクテル・ニュクリアーパワー社、韓国の現代E&C(現代建設)社、中国の中国核工業集団(CNNC)オーバーシーズ社主導のコンソーシアム、中国能源建設股份(CEEC)の5社であることを公表。選定委員会は、各関心表明者のエンジニアリング・建設の経験や専門知識、経済・財政能力等の選定要件に照らした結果、韓国の現代E&C社を唯一の候補者に選定した。ブルガリアの国営通信社BTAによると、ブルガリアの国民議会は2月23日、現代E&C社との協議開始の承認を議決し、協議期限を4月15日とした。現代E&C社は、オフォー提出等の協議を経て主契約者に決定後、米WE社とコンソーシアムを組んで建設作業を開始する。現代E&C社の広報部門は、「アラブ首長国連邦のバラカ発電所建設受注から15年ぶりの海外市場への復帰となる。韓国政府の原子力産業復興への支援の結果であり、脱原子力政策で停滞していた韓国の原子力産業の復活のシグナルになるだろう」と指摘している。
28 Feb 2024
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英国の原子力部門は2月12日、今後20年間に民生用および国防用の原子力部門へ人材を募集するためのイニシアチブ「Destination Nuclear」を始動した。「Destination Nuclear」は、政府、民間の原子力部門の組織、サプライチェーン、教育機関を横断し、大きなスキルギャップを埋めることを目的としている。民生用および国防用の原子力部門のスタッフを今後20年間で倍増する必要があり、英国全体で約8万人増の技能職の雇用を見込む。業種転向の可能な技能を持ち、キャリアチェンジを検討している人材を対象とする。また、実習制度や大学卒業生向けの取り組みを支援し、業界をリードする組織や企業全体で博士課程の学生の雇用機会を増やすとしている。原子力部門は、成長とイノベーションの加速を目指し、高度な技能を持つ人材の採用と育成に投資を行う。他部門との協力や他産業から転向する可能性のある人材向けのリスキリングの訓練プログラム開発も行う。建設や製造業など他部門で働く人材が持つ技術-デジタル、ロボット、人工知能-は、原子力分野の溶接、システムエンジニア、プロジェクト計画、土木・構造エンジニアなどでも活用が可能である。英国政府は多額の投資を背景に、防衛戦略およびクリーンエネルギーへの移行のため原子力の活用に取り組んでおり、原子力を重要部門と認識。今年1月には、2050年のCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)へ向けた原子力ロードマップを発表し、2050年までに国内で合計2,400万kWの新規原子力発電所を稼働させる計画だ。英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相は、本イニチアチブの始動に際し、「英国の野心的な目標の達成には、原子力分野での採用を急速に拡大し、エンジニアから溶接工まで、新しい原子力プラントの設計と建設に十分な人材を確保する必要がある」と強調する。J.カートリッジ国防調達閣外大臣は、「人材は原子力部門のカナメであり、国防では24時間体制で貢献する。国防の原子力部門では今後数十年にわたり非常にエキサイティングな時期が続く。産業界と協力して母国での技能の可能性を実現していきたい」と語る。「Destination Nuclear」の責任者であるL.マシューズ氏は、「潜在的な候補者の多くは、原子力をキャリアとして考えていなかったかもしれない。『Destination Nuclear』は、原子力部門の豊富な雇用機会を示し、より幅広い分野出身の人材の挑戦的でやりがいのある持続可能なキャリア探しを支援する」と意気込みを語った。
28 Feb 2024
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米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)は2月8日、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を収納するシリンダーの一時的不足により、米エネルギー省(DOE)との契約の第2段階で予定していた900kgのHALEU燃料の年内納入は不可能との見通しを示した。DOEは契約上、製造されたHALEU燃料収納のための貯蔵用シリンダーを提供する必要があった。2023年第4四半期および通期決算報告の中で明らかにしたもので、同社の発表によると、DOEは、「サプライチェーンの問題により、必要な5B型シリンダーの確保が困難になっている」という。5B型シリンダー入手の遅れは一時的なものであるが、契約どおりの本年11月までには当初予想されていた900kgのHALEU燃料のDOEへの納入は困難との見方を示した。B型シリンダーは、濃縮ウランを含む燃料のガンマ線と中性子線からの遮蔽維持が可能な規制当局認定のキャスク。30B型シリンダーは、低濃縮ウランを燃料加工業者に輸送するために使用されるが、5%以上の濃縮ウランであるHALEU燃料には使用できない。セントラス社は昨年11月、オハイオ州パイクトンのポーツマス・サイトにある米国遠心分離濃縮プラント(ACP)で製造された20kgのHALEU燃料をDOEに初納入し、2022年に締結されたコストシェア((総費用を折半して支払う。))契約である第1段階を予算内かつ予定より早く終了した。その後、同社は第2段階のコスト・プラス・インセンティブ・フィー((原価加算契約の一種。発注者が負担すべき合理的な費用に加え、コスト削減を含め、パフォーマンス目標を達成または上回る契約に対して、成功報酬を上乗せして支払う。))契約である年間900kgのHALEU燃料製造に移行した。これら契約は、次世代原子炉用の先進燃料であるHALEU燃料を確保し、米国内のHALEU燃料のサプライチェーン構築を目的とするDOEの取り組みの一環である。製造されたHALEU燃料はサイト内の特設貯蔵施設に保管される。パイクトンでは、ポーツマス濃縮工場が1954年から2001年まで操業。当初は国の核兵器開発で濃縮ウラン製造のために建設されたが、1960年代に入り、商業的な用途に重点が置かれ、主に原子力発電所向けの濃縮ウランを供給した。冷戦終結後の1991年、兵器級ウラン濃縮は停止、1993年に濃縮施設はDOEからUSECにリースされたが、2001年に濃縮事業は中止された。USECは2014年に破産後、セントラス・エナジー社として再出発した。2019年のDOE原子力局との契約に基づき、同社はHALEU燃料製造を実証するため、ACPに新型遠心分離機「AC100M」16台連結の新しいカスケードを建設、昨年10月に濃縮役務を開始した。
27 Feb 2024
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米ウェスチングハウス(WE)社は2月8日、英国のコミュニティ・ニュークリア・パワー(CNP)社と、WE社製小型モジュール炉(SMR)「AP300」(電気出力30万kW)の4基建設で合意したことを明らかにした。英国初の民間出資の建設プロジェクトとなる。建設予定地はイングランド北東部、ティーズ川北岸にあるノース・ティーサイド地域。経済発展が著しい同地域では、カーボンフリーで信頼性のある電力需要が高まっており、米国のジェイコブズ社などを戦略的パートナーに、2027年までを目標に本プロジェクトのサイト開発を行っている。なお、CNP社は2022年9月に設立された原子力プロジェクト専門企業で、同社によると、プロジェクト実現のための必要な要素(土地、能力、技術、民間資本による資金調達、地域の需要)は揃っており、10年後のクリーンエネルギー供給を目指すとしている。今回のプロジェクトについて、WE社は、英国政府が今年1月に発表した「新規原子力プロジェクトの市場参入のための代替ルート(Alternative Routes to Market for New Nuclear Projects)」に関する協議(新型原子力技術に係る民間投資奨励に関する協議)に沿ったものであり、「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が昨年7月に開始したSMRの支援対象選定コンペへの「AP300」の参加を補完・支援するものと指摘。そのうえで、両社の協力により、同プロジェクトなど複数の建設プロジェクトを通じて、労働力やサプライチェーンなどのローカライゼーションの規模をさらに拡大する考えを示している。WE社が昨年5月に発表した「AP300」は、同社の「AP1000」技術をベースとした1ループ式の加圧水型原子炉で、2030年代初頭に初号機の運転開始を目指している。なお、WE社は2月13日、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)に、「AP300」の包括的設計審査(GDA)を正式に申請したことを明らかにした。DESNZはWE社のGDA申請書を事前に精査し、「AP300」のGDA開始前の評価基準適合を確認後、原子力規制庁(ONR)が同設計の安全性とセキュリティ面について、環境庁(EA)が環境影響面について、基準適合を評価する。これによりONRとEAは、「AP300」設計の安全、セキュリティ、環境への影響を、サイト特定後の建設申請とは別に評価する。WE社傘下のWEエナジー・システムズ社のD.ダーハム社長は、「AP300」の英国での建設協力についてCNP社への謝意を述べるとともに、「AP300」の英国でのタイムリーな展開を楽しみにしている、とコメントしている。
26 Feb 2024
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中国核工業集団(CNNC)は2月6日、中国海南省の昌江原子力発電所サイトで建設中の小型モジュール炉(SMR)「ACP100」(PWR、12.5万kW)で、格納容器の外側ドーム屋根の設置を完了した。SMRの実証プロジェクトである「ACP100」の別名は玲龍一号。原子炉建屋は、内部構造物、鋼製格納容器、コンクリート製遮蔽シェル外壁の3つの部分で構成されている。鋼製格納容器のドームは昨年11月に設置された。2月6日、重量550トンのドーム屋根の吊上げと設置作業は、1時間半ほどで完了した。CNNCによると、このACP100プロジェクトには6,000名が作業に従事。ドーム屋根の設置は原子炉建屋の主要構造物の据付完了を意味し、後続のモジュール炉開発に貴重なノウハウを残すという。CNNCは2019年7月、昌江サイトで今回のACP100×1基の建設プロジェクト開始を発表。同サイトでは1、2号機(PWR、各CNP-600、65万kW)が運転中。3、4号機(PWR、HPR1000(華龍一号)、各120万kW)が各々、2021年3月、12月に着工し、両機とも2026年末までに営業運転を開始する予定だ。ACP100へのコンクリート打設は2021年7月13日に開始され、予定工期は58か月。機器据付は2022年12月に開始、主要な炉内構造物の据付は昨年3月に完了している。なお、ACP100の開発は2010年に開始され、予備設計は2014年に完了、2016年にIAEAの安全審査をパスした初のSMRである。ACP100が完成すると、世界初の陸上型SMRとなり、年間10億kWhを発電し、年間88万トンのCO2排出を削減するという。ACP100は発電の他、熱供給、蒸気生産、海水淡水化の用途を持ち、安全性の高い分散型クリーンエネルギー源として、町や工業地域の隣接地での設置が可能である。CNNCは、ACP100をHPR1000の成功に続く、中国の原子力技術革新における重要な成果と考えており、世界市場への展開を視野にいれている。中国製HPR1000はパキスタンのカラチ発電所2、3号機(各110万kW)で運転中、チャシュマ発電所5号機で計画中の他、アルゼンチンのアトーチャ発電所3号機でも計画中である。ACP100の所有者・運転者はCNNC傘下の中国核能電力股份(CNNP)で、炉設計は中国核動力研究設計院(NPIC)、建設は中国核電工程(CNPE)等が担当。炉容器は上海電気集団(SEC)、蒸気発生器はCNNC傘下企業、他炉内構造物は中国東方電気集団(DEC)が供給している。
22 Feb 2024
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韓国のHD現代(ヒュンダイ)グループ傘下の韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)社は2月4日、英国のコア・パワー社と米国のサザン・カンパニーおよびテラパワー社と協力して、船舶用の小型モジュール原子炉(SMR)の開発に参画する計画を明らかにした。2022年11月、KSOE社はテラパワー社に3,000万ドル(約45億円)を出資している。四社は、テラパワー社の塩化物熔融塩高速炉(MCFR)の設計をベースに、共同開発を行う計画だ。MCFRは冷却材と燃料の両方に塩化物熔融塩を使用し、核分裂反応をより効率的に行う高速炉型原子炉。従来の原子炉よりも高温で運転できるため、発電効率が高く、プロセス熱や熱貯蔵も可能。テラパワー社は、MSFRの船舶用熔融塩炉であるm-MSRを開発中である。2023年10月、サザン・カンパニー、テラパワー社は熔融塩を用いるポンプ駆動運転等の統合効果試験(IET)に成功、MCFR開発で大きく前進している。なお、KSOE社は3月にもテラパワー社に研究開発チームを派遣し、洋上発電所や新たな用途でこれらパートナーと原子力利用の共同研究開発を進めていく。また、国際原子力機関(IAEA)や米国船級協会(ABS)、英国のロイド船級協会(LR)とともに、原子炉の船舶利用に関するシステム構築の議論にも参加する予定である。海運業界は年間約3.5億トンの化石燃料を消費し、世界の炭素排出量の約3%を占めている。2023年7月、国際海事機関(IMO)は2050年頃までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする新たな戦略を採択した。海運業界は、低排出の燃料、インフラ、技術の開発導入を急いでいる。コア・パワー社のM.ボー会長兼CEOは、KSOE社の開発プロジェクトへの参加を歓迎し、「造船とエンジニアリング部門におけるKSOE社の世界最高レベルの専門知識に、コア・パワー社の海運・エネルギー業界60社以上の株主が加わる。海運業界でも原子力なしにネットゼロは達成できないことが広く認識されている」と強調している。
21 Feb 2024
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欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は2月6日、欧州で2030年代初頭までに小型モジュール炉(SMR)の展開を加速することを目的に「欧州SMR産業アライアンス(European Industrial Alliance on SMRs)」を立ち上げた。同アライアンスの立ち上げにより、EU大での労働力確保などサプライチェーンを確立し、SMRの早期導入を目指す。同アライアンスの主な行動計画は以下の通り。アライアンスの支援対象となるSMRの選定欧州のサプライチェーン(燃料および原材料を含む)の不安要素の特定および解決SMR開発にあたり資金調達問題の精査および新しい調達枠組みの検討SMRおよび先進的モジュール炉(AMR)に関する研究の将来ニーズの検討サプライチェーンのレベルを精査し、EU大や各国レベルで対処アライアンス参加会員の募集も行われる。なお、アライアンスの範囲、目的、活動を網羅する普及イベントが3月にブリュッセルで開催される。アライアンスの創設を主導する欧州原子力産業協会(nucleareurope)Y.デバゼイユ事務局長は、「SMRの導入は、エネルギー供給保障の確保、CO2排出量の削減、新たな雇用、経済成長など、欧州に大きな利益をもたらす。本アライアンスが欧州の原子力産業界のレベルを高める」とその意義を強調している。ECは「2050年までにEUの気候中立」という合意目標達成の可能な道筋について、最新の影響評価に基づき、2040年までに1990年比で温室効果ガス排出量を90%削減することを提案、すべての利害関係者との協議を開始するとしている。
20 Feb 2024
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J. ハープートリアン駐スロベニア米国大使は2月6日、小型モジュール炉(SMR)の国内建設を検討しているスロベニアに対し、米国がSMRの実行可能性調査(F/S)や技術支援などに資金提供を行うとした書簡をスロベニアのT. セルセン環境・気候・エネルギー省副大臣に手交した。今回の決定は、米国が主導する石炭火力発電所からSMRによる原子力への転換プログラムである「プロジェクト・フェニックス(Project Phoenix)」の一環。スロベニアは2023年6月、環境・気候・エネルギー省が中心となり、国内唯一のクルスコ原子力発電所(PWR×1基、72.7万kW)を所有する国営電力のGENエネルギア社、国営スロベニア電力ホールディング(HSE)、コンサルティング企業のハッチ社などの協力を得て、同プロジェクトへの助成金申請を行っていた。これまでに、同プロジェクトの支援対象となっている国は、チェコ、スロバキア、ポーランド、ルーマニアの計4か国。プロジェクト・フェニックスは、欧州での石炭火力発電所からSMRへの移行を加速させると同時に、プラント・スタッフの再訓練を通じて地元の雇用を維持する計画で、中・東欧諸国の脱炭素化とエネルギーセキュリティを支援するために、F/Sや技術支援などを米国が直接支援する。2022年11月、J. ケリー米気候問題担当大統領特使が、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)で同プロジェクトを発表、米国務省の国際支援プログラム「SMR技術の責任ある活用に向けた基本インフラ(FIRST)」の下、安全性やセキュリティ、核不拡散の最高水準に基づいて、パートナー国の能力開発支援が行われる。また、国務省は、技術、コンサルティング支援に米エンジニアリング企業のサージェント&ランディ社(Sargent & Lundy, L.L.C.)をプロジェクトの実施パートナーとして選定している。今回の米国の決定について、セルセン副大臣は、「プロジェクト・フェニックスへの参加は、スロベニアの国家エネルギー・気候計画の国際公約遵守に向けた取組に資するもの」として歓迎している。なお、欧州委員会(EC)の資料によると、2021年のスロベニアの電源構成は、再生可能エネルギー(バイオマス等含む)38%、原子力37%、化石燃料23%、天然ガス2%となっている。スロベニアは現在、既存のクルスコ原子力発電所の隣接サイトで最大240万kWの原子炉増設を計画中(JEKプロジェクト)。JEKプロジェクトをめぐっては、増設の是非を問う国民投票が今年後半にも実施される予定である。一方、既にプロジェクト・フェニックスの助成対象に選ばれているスロバキアのスロバキア電力(SE)は14日、サージェント&ランディ社のスタッフが同国を訪問し、F/S実施に向けた初期の現地調査を開始したことを明らかにした。スロバキア電力によると、2025年までにF/Sを終え、2029年までに環境影響評価(EIA)を含むSMRの初期設計と許認可手続きを完了し、2035年の運転開始をめざしている。
19 Feb 2024
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ブルガリアのコズロドイ原子力発電所が設立した新規建設会社(Kozloduy NPP – New Builds PLC =KNPP-NB)は2月2日、同発電所7~8号機の建設計画に5社が関心表明を提出したことを明らかにした。5社の具体名は公式には明らかにされていないが、1月下旬、ブルガリアの首都ソフィアで開催された国際会議の席上、コズロドイ発電所のV.ニコロフ所長は報道陣に対し、韓国のヒュンダイ社、米国のベクテル社とフルアー社から非公式に関心が示されたと発言している。7~8号機の採用炉型は、ウェスチングハウス(WE)社製AP1000。関心表明の募集は、エンジニアリング、建設、調達および試運転を実施する、いわゆるEPCターンキー契約の主契約者の選定を目的としている。WE社は、AP1000の全体的な設計の責任を負い、AP1000の個々のシステムおよび建物の設計に関する責任はWE社が主契約者に委任する。関心表明の募集は1月19日に開始され、2月2日に締切られた。締切後、直ちに選考を開始。関心表明者の応募資格として、少なくとも原子炉2基の建設と試運転の経験を有し、また、少なくとも2基の原子炉施設とタービン施設の建設で確かな経験があること、または過去15年以内に原子炉2基で重要機器の供給と設置経験があること、さらに2018年から2022年までの5年間の売上高が年平均60億ドル(約9, 000億円)以上であることを定めている。なお、ロシアからの応募は予め除外されており、WE社は主契約者の選定に関与しない。KNPP-NB社は、7号機を2032年~2033年、8号機を2035年をメドに運転開始させたい考えだ。ブルガリアは2007年に欧州連合(EU)に加盟した際、加盟条件として2006年までに安全上問題のあるコズロドイ1~4号機(各VVER-440、44万kW)をすべて閉鎖した。現在5、6号機(各VVER-1000、104万kW)だけが運転中で、総発電量の約32%を賄っている。5、6号機とも、60年の運転期間延長を目指し、バックフィット作業を実施している。
16 Feb 2024
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ポーランド環境保護総局(GDOŚ)はこのほど、オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社に対し、小型モジュール炉(SMR)建設に関して、環境影響評価(EIA)の報告書作成に向けて取り組むべき分野を提示した。これを受け、OSGE社は、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」建設に向けて環境・立地調査を開始する。2023年4月中旬、OSGE社は「BWRX-300」建設に向けて地質調査を実施する7か所の候補地として、北東部のオストロウェンカ(Ostrołęka)とブウォツワベク(Włocławek)、南部のスタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)、ドンブローヴァ・グルニチャ(Dąbrowa Górnicza)、ノバ・フタ(Nowa Huta)、南東部のタルノブジェク(Tarnobrzeg)特別経済区と首都ワルシャワを選定した。OSGE社は4月下旬、気候環境省にワルシャワを除く6か所における発電所建設に関する原則決定(decision-in-principle=DIP)を申請し、同省は12月上旬、これら発電所に対するDIPを発給した。DIPは原子力発電所建設計画に対する最初の基本的な行政判断で、DIP発給によりプロジェクトが国家のエネルギー政策に則し、国益に適うと正式に認められたことになる。今後、OSGE社は立地点の確定や建設許可の取得など、さらなる行政判断を仰ぎ手続きを進めることが可能になる。OSGE社は2023年5月、スタビ・モノフスキエ発電所建設に係るEIA報告書作成にあたり、取り組むべき分野を特定する申請をGDOŚに提出した。GDOŚは申請を受け、国境を越えた協議を開始。SMR建設をめぐっては欧州初の協議であり、越境環境影響評価条約(エスポー条約)に基づき、近隣のチェコとスロバキアとの協議を実施した。なお、OSGE社は同年、オストロウェンカとブウォツワベクで計画する発電所についても同様の申請書をGDOŚに提出している。取り組むべき分野は、発電所立地の特殊性を考慮し、個々のプロジェクトごとに決定される。スタビ・モノフスキエ発電所建設に係る要求事項では、冷却水供給源の特定、原子力安全と放射線防護を確保する具体的な技術の提示、発電所と送電網の連結方法などを取り組むべき主要分野として示している。このGDOŚによる特定を受け、OSGE社は環境と立地の両面から調査を開始する。報告書作成には最大2年を要するとみられている。OSGE社のR.カスプローCEOは、「EIA報告書作成は、原子力発電所建設に向けた投資プロセスにおいて最も重要な要素であり、最も難しい作業のひとつでもある。このGDOŚの決定により、プロジェクトを想定通りのスケジュールで実施できる」と語る。「BWRX-300」は、受動的安全システムを備えた電気出力30万kWのBWR型SMRで、2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証を受けた第3世代+(プラス)の「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」と同じく認可取得済みのGNF2燃料をベースにしている。2021年12月、GEH社、BWXTカナダ社、ポーランドの大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社は、ポーランドにおける「BWRX-300」建設の協力覚書を締結した。同月、SGE社は、ポーランド最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社と合弁会社OSGE社を設立した。OSGE社は2022年7月、「BWRX-300」の安全評価について、ポーランドの国家原子力機関(PAA)に予備的許認可手続きの一つである「包括的見解」を求めて申請書を提出。PAAは2023年5月、「BWRX-300」がポーランドの原子力安全基準と放射線防護基準に適合していると公表した。
15 Feb 2024
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先進的原子炉開発を進めている米国のオクロ社は2月1日、「オハイオ州南部の多様化イニシアチブ(SODI)」と土地権利契約を締結、土地購入のオプションと優先交渉権を獲得したことを明らかにした。オクロ社は2023年5月、同社製マイクロ高速炉「オーロラ(Aurora)」の建設サイトとしてオハイオ州南部を選定、同地域の4郡で構成されるSODIと土地利用に関する拘束力のない合意文書を交わしている。今回の土地権利契約締結は、クリーンで信頼性が高く、手頃な価格でエネルギー供給を目指すオクロ社にとって大きな前進であり、同社は同地域を、米国原子力産業界の将来を担う重要ハブとする考えだ。SODIの4郡のうち、パイク郡には、2001年まで米エネルギー省(DOE)のポーツマス・ガス拡散法ウラン濃縮施設が稼働しており、SODIは同サイトの未使用の土地や施設の再利用を通じ、4郡の市民生活向上を目指している。また、オクロ社は1月31日、DOEがアイダホ国立研究所(INL)敷地内にあるオーロラ燃料製造施設の安全設計戦略(SDS)を審査・承認したと発表した。オーロラ燃料製造施設では、閉鎖された高速実験炉EBR-Ⅱの使用済み燃料から回収したウランを再利用し、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を製造する。「オーロラ」はHALEU燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ原子炉で、電気出力は0.15~5万kW。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能なほか、放射性廃棄物をクリーン・エネルギーに転換することもできる。DOEは2019年12月、先進的原子力技術の商業化を支援するイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環として、INL敷地内で「オーロラ」の建設を許可。これを受けてオクロ社は翌2020年3月、原子力規制委員会(NRC)に「オーロラ」初号機の建設・運転一括認可(COL)を申請したが、NRCは、審査の主要トピックスに関する情報がオクロ社から十分に得られないとして、2022年1月に同社の申請を却下した。オクロ社は同年9月、「オーロラ」の将来的な許認可手続きが効率的かつ効果的に進められるよう、NRCとの事前協議を提案する「許認可プロジェクト計画(LPP)」をNRCに提出している。
14 Feb 2024
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