ポーランド環境保護総局(GDOŚ)はこのほど、オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社に対し、小型モジュール炉(SMR)建設に関して、環境影響評価(EIA)の報告書作成に向けて取り組むべき分野を提示した。これを受け、OSGE社は、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」建設に向けて環境・立地調査を開始する。2023年4月中旬、OSGE社は「BWRX-300」建設に向けて地質調査を実施する7か所の候補地として、北東部のオストロウェンカ(Ostrołęka)とブウォツワベク(Włocławek)、南部のスタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)、ドンブローヴァ・グルニチャ(Dąbrowa Górnicza)、ノバ・フタ(Nowa Huta)、南東部のタルノブジェク(Tarnobrzeg)特別経済区と首都ワルシャワを選定した。OSGE社は4月下旬、気候環境省にワルシャワを除く6か所における発電所建設に関する原則決定(decision-in-principle=DIP)を申請し、同省は12月上旬、これら発電所に対するDIPを発給した。DIPは原子力発電所建設計画に対する最初の基本的な行政判断で、DIP発給によりプロジェクトが国家のエネルギー政策に則し、国益に適うと正式に認められたことになる。今後、OSGE社は立地点の確定や建設許可の取得など、さらなる行政判断を仰ぎ手続きを進めることが可能になる。OSGE社は2023年5月、スタビ・モノフスキエ発電所建設に係るEIA報告書作成にあたり、取り組むべき分野を特定する申請をGDOŚに提出した。GDOŚは申請を受け、国境を越えた協議を開始。SMR建設をめぐっては欧州初の協議であり、越境環境影響評価条約(エスポー条約)に基づき、近隣のチェコとスロバキアとの協議を実施した。なお、OSGE社は同年、オストロウェンカとブウォツワベクで計画する発電所についても同様の申請書をGDOŚに提出している。取り組むべき分野は、発電所立地の特殊性を考慮し、個々のプロジェクトごとに決定される。スタビ・モノフスキエ発電所建設に係る要求事項では、冷却水供給源の特定、原子力安全と放射線防護を確保する具体的な技術の提示、発電所と送電網の連結方法などを取り組むべき主要分野として示している。このGDOŚによる特定を受け、OSGE社は環境と立地の両面から調査を開始する。報告書作成には最大2年を要するとみられている。OSGE社のR.カスプローCEOは、「EIA報告書作成は、原子力発電所建設に向けた投資プロセスにおいて最も重要な要素であり、最も難しい作業のひとつでもある。このGDOŚの決定により、プロジェクトを想定通りのスケジュールで実施できる」と語る。「BWRX-300」は、受動的安全システムを備えた電気出力30万kWのBWR型SMRで、2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証を受けた第3世代+(プラス)炉の「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」と同じく認可取得済みのGNF2燃料をベースにしている。2021年12月、GEH社、BWXTカナダ社、ポーランドの大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社は、ポーランドにおける「BWRX-300」建設の協力覚書を締結した。同月、SGE社は、ポーランド最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社と合弁会社OSGE社を設立した。OSGE社は2022年7月、「BWRX-300」の安全評価について、ポーランドの国家原子力機関(PAA)に予備的許認可手続きの一つである「包括的見解」を求めて申請書を提出。PAAは2023年5月、「BWRX-300」がポーランドの原子力安全基準と放射線防護基準に適合していると公表した。
15 Feb 2024
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先進的原子炉開発を進めている米国のオクロ社は2月1日、「オハイオ州南部の多様化イニシアチブ(SODI)」と土地権利契約を締結、土地購入のオプションと優先交渉権を獲得したことを明らかにした。オクロ社は2023年5月、同社製マイクロ高速炉「オーロラ(Aurora)」の建設サイトとしてオハイオ州南部を選定、同地域の4郡で構成されるSODIと土地利用に関する拘束力のない合意文書を交わしている。今回の土地権利契約締結は、クリーンで信頼性が高く、手頃な価格でエネルギー供給を目指すオクロ社にとって大きな前進であり、同社は同地域を、米国原子力産業界の将来を担う重要ハブとする考えだ。SODIの4郡のうち、パイク郡には、2001年まで米エネルギー省(DOE)のポーツマス・ガス拡散法ウラン濃縮施設が稼働しており、SODIは同サイトの未使用の土地や施設の再利用を通じ、4郡の市民生活向上を目指している。また、オクロ社は1月31日、DOEがアイダホ国立研究所(INL)敷地内にあるオーロラ燃料製造施設の安全設計戦略(SDS)を審査・承認したと発表した。オーロラ燃料製造施設では、閉鎖された高速実験炉EBR-Ⅱの使用済み燃料から回収したウランを再利用し、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を製造する。「オーロラ」はHALEU燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ原子炉で、電気出力は0.15~5万kW。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能なほか、放射性廃棄物をクリーン・エネルギーに転換することもできる。DOEは2019年12月、先進的原子力技術の商業化を支援するイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環として、INL敷地内で「オーロラ」の建設を許可。これを受けてオクロ社は翌2020年3月、原子力規制委員会(NRC)に「オーロラ」初号機の建設・運転一括認可(COL)を申請したが、NRCは、審査の主要トピックスに関する情報がオクロ社から十分に得られないとして、2022年1月に同社の申請を却下した。オクロ社は同年9月、「オーロラ」の将来的な許認可手続きが効率的かつ効果的に進められるよう、NRCとの事前協議を提案する「許認可プロジェクト計画(LPP)」をNRCに提出している。
14 Feb 2024
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米国のホルテック・インターナショナル社は1月31日、原子力と太陽熱の利点を組み合わせた新たな発電システムを発表した。この原子力・太陽熱複合発電プラント(CNSP)は、同社の小型モジュール炉「SMR-300」、太陽熱利用システム「HI-THERM HSP」、エネルギー貯蔵システム「グリーンボイラー」を搭載。ホルテック社によると、CNSPは「太陽熱発電の欠点である間欠性を解消しながら、ベースロードまたは負荷追従対応で電力を供給する」ことができるという。ホルテック社が開発する小型モジュール炉(SMR)「SMR-300」は電気出力約30万kWのPWRで、熱電併給が可能。万が一の事故時には外部電源や冷却材の供給なしで炉心冷却が可能な受動的安全系を備えている。原子炉からの蒸気と太陽熱利用システムからの熱は、熱エネルギー貯蔵装置であるグリーンボイラーで結合される。グリーンボイラーは、1. 大量の熱を貯蔵し、2. 太陽熱集熱器から高温の熱を受け取り、3. 蒸気の生成と過熱により、タービンを駆動する、という3つの機能を備えた設備である。CNSPは単独の原子力発電所よりも熱力学的効率はかなり高く、太陽熱はベースロード電源の不可欠な要素となる。またCNSPは、再生可能エネルギーのアキレス腱であるバッテリーを一切使用していない。同社は、CNSPの運転寿命は60年を超えると予測している。CNSPは、十分なサイト面積を持つ旧石炭火力サイトへの設置が最適とされており、既存インフラの活用によりコストを最小限に抑えるという。ホルテック社は、主に日射量が十分にある国・地域へCNSPの展開を想定している。赤道直下や亜熱帯の地域では、1エーカー(約4,047m2)あたり8,000kWhもの太陽熱を得ることができ、既存技術よりもかなり効率的だという。同社のK.シン社長兼CEOは、「原子力と太陽熱の組み合わせを実現したCNSPは、化石燃料からの脱却を目指す国々にとってエネルギー問題の確かな解決策になると確信している」と期待を寄せている。
13 Feb 2024
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チェコ政府は1月31日、同国のドコバニ原子力発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)の増設に係る入札について、1基ではなく最大4基の拘束力のある入札に変更することを決定。次の入札に参加を募るのは、フランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)の2社のみと発表した。なお、ウェスチングハウス(WE)社は、必要な条件を満たさなかったとして、除外されている。チェコでは2022年3月、ドコバニ原子力発電所Ⅱ期工事の初号機となる5号機の入札が開始された。この入札には、チェコ電力(ČEZ社)の100%子会社であるドコバニⅡ原子力発電会社(EDUⅡ社)が要求する国家安全保障での資格審査を通過した、WE社、EDF、およびKHNPが参加した。2023年10月、3社は、EDUⅡ社に5号機について入札の最終文書を提出した。なお、ドコバニ6号機とテメリン原子力発電所3、4号機(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)についても、3社は、拘束力を持たない意向表明として増設を提案している。EDFはEPRの出力を120万kW級に縮小したEPR1200を、KHNPがAPR1400の出力縮小版であるAPR1000を、WE社はAP1000をそれぞれ提案したと見られ、この3社はいずれも落札した場合、現地のサプライヤーと提携することで合意していた。政府は、今回の入札結果を受け、1基を建設する場合と複数基を建設する場合のコスト比較から、当初の入札実施計画を修正することを決定。入札は今後、拘束力のある入札としてドコバニ5、6号機、テメリン3、4号機にも拡大される。P.フィアラ首相によると「最大4基の原子炉建設を一括契約する場合、たとえ徐々に建設するにしても、1基のみを建設するよりも経済的に著しく有利であることが判明した。1基のみを建設する場合と比べ、1基あたりの価格を最大で25%引き下げることができる」という。今後、EDFとKHNPの2社は、拘束力のある入札書類を4月15日までに提出し、その後、EDUⅡ社の評価と報告書は5月末までに政府に提出され、6月末までにサプライヤーが確定する予定。ドコバニ5号機の2036年の試運転開始予定には影響しない。P.フィアラ首相は、「原子力発電開発の促進は、チェコの繁栄に極めて重要である。この決定により、市民や企業に長期にわたり電力を安全かつ安定して、手ごろな価格で供給できるようになる」とその意義を強調した。チェコでは主に輸送部門と暖房の電化により、今後、電力需要が大幅に増加し、国家エネルギー・気候計画によると、2050年には電力消費量は現在の2/3に匹敵する電力量が増加し、1,000億kWhになると予想されている。石炭火力発電所は閉鎖され、2050年に既存の発電設備で稼働するのは、テメリン1、2号機のみとなる。政府は、ドコバニとテメリン両発電所の大型炉と中小型炉の両方が間違いなく必要になるとしている。
09 Feb 2024
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スロベニアでは1月30日、超党派の会合で、クルスコ原子力発電所の増設計画(JEK2プロジェクト)をめぐり、すべての政党が年内に国民投票を実施することで合意した。会合には、スロベニアのN.ムサル大統領、R.ゴロブ首相の他、国民評議会(上院)議長、国民議会(下院)議長、各政党代表らが出席。スロベニアのエネルギーの自立と長期のエネルギー政策、とりわけ原子力の役割について協議し、脱炭素の未来に向けて、再生可能エネルギーと原子力の利用を進めることや、JEK2プロジェクトの継続で意見が一致した。同首相は、クルスコ発電所の増設は、スロベニアの将来にとって極めて重要なプロジェクトであり、今年の後半にも国民投票で支持を得られれば、早ければ、2027年または2028年にクルスコ発電所の増設のための投資に関する最終的な決定を下し、2030年代にはJEK2(クルスコⅡ)を稼働させたい考えだ。スロベニアは、最大出力240万kWのJEK2を、既存のクルスコ原子力発電所(PWR×1基、72.7万kW)に隣接して建設する計画だ。同発電所は、1983年1月に営業運転を開始して以来、スロベニアの電力の約3分の1を供給している。このクルスコ発電所は、国営スロベニア電力(GENエネルギア)と隣国クロアチアの国営電力会社のHrvatska elektroprivreda(HEP)が共同所有しており、2023年1月には、2043年まで20年間の運転期間延長が認可された。
08 Feb 2024
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カナダのオンタリオ州政府は1月30日、オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社によるピッカリング原子力発電所(B)5〜8号機の改修計画への財政支援を表明した。オンタリオ州のT.スミス・エネルギー大臣は、ピッカリングBの4基(CANDU炉)の改修により、「オンタリオ州の競争力を高め、投資が増加する。少なくとも30年間は安全で信頼できるクリーンな電力を生産し、数千人の新規雇用が創出され、電化が促進される」と述べ、改修計画への州政府の支援を表明した。州政府は、プロジェクトの開始段階においてOPG社に20億カナダドル(約2,193億円)を支援する。これは、エンジニアリングや設計作業のほか、長期調達部品の確保に充てられる。OPG社によると、2030年代半ばまでに改修作業が完了する予定。シンクタンクの分析によると、改修期間中に州のGDPは194億カナダドル(約2.1兆円)増加し、その間に年間約1.1万人の雇用を創出、改修後の運転期間中には年間6,000人以上の雇用を創出・維持する見込みである。OPG社は、ダーリントン原子力発電所1~4号機を改修する128億カナダドル(約1.4兆円)のプロジェクトの半分以上を終えており、2026年末までに完了する予定である。ダーリントンや、ブルース・パワー社が進める6基のCANDU炉の改修プロジェクトから得られた知見は、ピッカリングにも反映される。ピッカリング発電所(B)の運転認可は2028年8月31日までだが、2024年12月31日以降の商業運転は許可されていない。州政府は2025年以降の運転を支持し、OPG社は2023年6月、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に2026年末まで5〜8号機の運転延長を申請した。ピッカリング発電所は、オンタリオ州の電力の約14%を供給している。なお、ピッカリング発電所(A)の1号機と4号機は、改修工事を経て運転を再開しているが、2024年末までに閉鎖される予定。2号機と3号機はすでに閉鎖された。オンタリオ州政府は、電力需要を満たし、かつ電化による排出量削減計画の一環として、ブルース・パワー社における大規模な新規原子力発電所の建設と、ダーリントン・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」3基導入に向けた事前準備作業を支援している。
07 Feb 2024
1330
ウクライナのG.ガルシェンコ・エネルギー大臣は1月29日、フメルニツキー原子力発電所への4基の増設計画を継続することを明らかにした。建設が中断している同3号機については、年内にも建設を再開したい考えだ。ガルシェンコ大臣がウクライナのテレビ番組で語ったところによると、「VVER-1000を採用した3~4号機の建設および、米ウェスチングハウス(WE)社のAP1000を採用した5~6号機の建設について、WE社と協議中」だという。3号機の工事進捗度は75%であり、最短で2年半で完成できるという。残りの号機が完成すればフメルニツキー発電所の全6基が供給する電力は欧州最大となり、ザポリージャ発電所を超える。なお、同大臣は1月25日のロイター通信社とのインタビューの中で、ブルガリアと原子炉容器や蒸気発生器等の輸入について交渉中であることを明らかにしている。未使用の機器をフメルニツキー3~4号機に利用したい考えだ。ブルガリアのベレネ原子力発電所(VVER-1000)では2基の建設計画が2023年10月に中止となっており、ロシアから購入した炉設備等が建設サイトに保管されている。ウクライナには15基の原子力発電所があり、2022年3月初旬からロシア軍の支配下にあるザポリージャの6基を含め、原子力は総発電電力量の約半分を供給している。フメルニツキー1号機(VVER-1000、100万kW)は1987年に送電網に接続されたが、他の3基の建設は1990年に中断。2号機(VVER-1000、100万kW)の建設のみ再開され、2004年に送電網に接続された。3~4号機は未完成のままである。いずれもVVER-1000を採用し、1990年から建設工事は中断している。 2023年12月、ウクライナの原子力発電事業者エネルゴアトムとWE社は、フメルニツキー5号機のAP1000機器購入に関する契約を締結した。
07 Feb 2024
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米国のウェスチングハウス(WE)社は1月25日、事故耐性燃料(ATF)を含む25本の照射済みの試験用燃料棒を照射後試験のため、アイダホ国立研究所(INL)に送ったことを明らかにした。この照射後試験は、新型燃料の商業用原子炉での使用認可を得るために重要なプロセスの一環。納入された燃料は、ATFと商業用原子力発電所の炉心で照射された高燃焼度燃料。照射済み燃料が試験のためにINLに納入されたのは、20年ぶりのこと。INLを含む複数の国立研究所の技術支援と米エネルギー省(DOE)の資金援助を受けてWE社が開発・製造した次世代燃料は、安全性能の向上だけでなく、原子力発電所の運転サイクル期間を現在の18か月から24か月に延長することが可能だ。燃料交換停止回数の削減、使用済燃料の減容により発電事業者は大幅なコスト削減が可能になる。また、出力も増強されるため、原子炉の増設にも匹敵する。INLでは次世代燃料が通常の使用条件下でどのような性能を発揮するか実験・分析、また、想定される事故条件下における性能を確認し、貯蔵中や再処理中における挙動を実証するために追加試験を実施する。得られたデータは、米原子力規制委員会(NRC)の燃料に関する安全基準策定に利用される。同様の照射済み燃料棒は、以前にもテネシー州のオークリッジ国立研究所(ORNL)で試験された。INLとORNLにおける高度な検査と照射後試験は、次世代燃料を世界中の商用炉に装荷する最終承認を米NRCから得るための重要なマイルストーンである。WE社、米NRC、DOE原子力局、DOE国家核安全保障局(NNSA)のほか、日本、韓国、西欧の規制機関などにもデータが提供される。
06 Feb 2024
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米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は1月25日、英国における自社の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の開発で英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)から補助金を獲得したことを明らかにした。英国の包括的設計審査(GDA)フェーズに入る。補助金総額は3,360万ポンド(約63億円)で、DESNZの「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund:FNEF)」から拠出される。「FNEF」は、2022年5月にビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が立ち上げた1.2億ポンド(約224.9億円)の補助金交付制度。新規原子力プロジェクトの開発を支援し、原子力産業の競争力強化を目的としている。英国政府は、2050年までにCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)の達成にむけ、国内の原子力発電設備容量を計2,400万kWとする野心的な目標を掲げている。DESNZのA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相は、「SMRはこの急速な原子力復活計画の最前線にある。GEH社への補助金拠出は「BWRX-300」の設計開発を支援するものであり、このSMRの導入により、英国の家庭や事業者はより安く、よりクリーンで、より安全なエネルギーを享受できる」と今回の補助金拠出の意義を強調する。GEH社は、ジェイコブス社、レイン・オルーク社、キャベンディッシュ・ニュークリア社などの経験豊富な英国チームと、ポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社とともに、FNEFの申請書をDESNZに提出した。申請した「BWRX-300」の開発プロジェクトにはGDA申請やSMRの商業展開にむけた企業の準備活動などが含まれている。なお、GEH社は、英国内での「BWRX-300」の建設に備えて、英国最大手の大型鋳鍛造品メーカーであるシェフィールド・フォージマスターズ社と協力の了解覚書を締結するなど、英国のサプライチェーンを開拓している。DESNZは、GEH社が提出したGDA申請書を事前に精査し、「BWRX-300」がGDA開始前の4つの評価基準をクリアしていることを確認。補助金の拠出に加え、原子力規制庁(ONR)や環境庁(EA)およびウェールズ自然保護機関(NRW)に対し、「BWRX-300」のGDAを開始するよう要請した。GDAとはONRとEAとNRWが実施するプロセスであり、英国で建設予定の原子力発電プラントについてONRが設計の安全性とセキュリティの観点から、EAとNRWが環境影響の観点から英国の基準を満たしているかを評価する。2021年5月、GDAプロセスはSMRを含む先進的原子力技術に向けて適用されている。GEH社のJ.ワイルマン社長兼CEOは、「当社の『BWRX-300』は、英国の脱炭素化とエネルギー安全保障の目標にとって理想的な解決策であると確信しており、英国政府がこれを実証するためにこのFNEFから補助金を用意してくれたことに感謝している」と述べ、補助金は英国における強固なサプライチェーンの構築の継続と、規制当局の承諾およびSMR展開に向けた準備加速に役立つだろう、と期待を表明した。GEH社は、革新的な技術を用いたSMRの開発促進に向けてDESNZが昨年7月に開始した支援対象の選定コンペにも参加。このコンペは、原子力発電所の新設計画を牽引する新しい政府機関「大英原子力(Great British Nuclear:GBN)」が担当し、SMRの開発プロジェクトへの数十億ポンド規模の官民投資の促進を目的とする。GEH社は10月に、フランス電力(EDF)、英国のロールス・ロイスSMR社、米国のニュースケール・パワー社、ウェスチングハウス(WE)社やホルテック・インターナショナルの英国法人とともに、同コンペの次の段階に進むことが決定している。支援対象は2030年代半ばまでに運転開始する可能性が高いものとし、2024年の春に選定、夏までに支援契約を締結する予定である。昨年12月初旬、ホルテック・インターナショナルの英国法人であるホルテック・ブリテン社は同社のSMR「SMR-300」のGDA審査の開始とともに、FNEFから約3,000万ポンド(約56.2億円)の補助金を授与されている。
05 Feb 2024
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米ウェスチングハウス(WE)社は1月23日、可搬型の原子力発電システムの開発を行うカナダのプロディジー・クリーン・エナジー社と協力し、2030年までにカナダで最初の洋上可搬型の原子力発電所の設置を目指すことを明らかにした。WE社製のマイクロ原子炉「eVinci」を搭載する。WE社とプロディジー社は、2019年からWE社製のマイクロ原子炉「eVinci」の展開について共同で検討。カナダで戦略的に価値の高い鉱物資源を扱う多国籍企業が2019~2020年に、信頼性の高いクリーンエネルギー源を特定するための研究に資金を提供したことから、この研究に従事したプロディジー社が、広範囲に展開することを目的に標準化された可搬型原子力発電所の開発の先駆者となった。マイクロ原子炉「eVinci」は、分散型の電力市場、遠隔地のコミュニティや鉱業、国防などの重要インフラや島嶼国などで電気や熱を供給することが可能。熱出力は1.4万kW、定格電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要、燃料交換は約8年おき。最小限のメンテナンスで競争力と復元力のあるエネルギー供給が可能であり、信頼性に優れた設計であるという。単一または複数の「eVinci」を搭載した可搬型の発電所を、必要とされる場所に輸送、海岸線に設置する。なお、発電所は自走式ではない。WE社とプロディジー社は2022年に契約を締結、概念設計と規制要件の調査は完了している。調査の一部は、カナダの戦略イノベーション基金からWE社が授与された助成金で実施している。次のステップは、「eVinci」搭載のための可搬型原子力発電所の設計を完了し、発電所の建造、艤装、輸送といった一連の流れの監督モデルの確立、2030年までにカナダで最初のプロジェクト実現に向けた許認可取得と立地評価の作業であるという。WE社のeVinciテクノロジー社のJ.ボール社長は、「eVinci」は当初から可搬式が重要な設計原則であり、プロディジー社の可搬型原子力発電所は「eVinci」本来の可搬性に付加価値をもたらすものである、と語る。プロディジー社のM.トロジャーCEOは、「eVinci」のコンパクト設計と簡素化された運転要件は可搬型原子力発電所への搭載に最適であり、自社の技術で「eVinci」を展開、遠隔地にクリーンで信頼性が高く、手頃な価格の電力を供給するスケジュールを加速させたい、と意欲を示す。プロディジー社はマイクロ原子炉だけでなく、石炭発電の代替と送電網へ接続規模の発電に最適で洋上設置が可能な、小型モジュール炉(SMR)を搭載する可搬型発電所も開発している。2022年10月には、米ニュースケール社と共同開発した可搬型発電所の概念設計が発表されている。ニュースケール社製のSMR「NPM」(7.7万kWe)を1基から12基搭載する。プロディジー社は、どちらの可搬型発電所も原子炉を搭載後に設置場所まで輸送し、60年後の運転終了時に撤去することで、「施設のライフサイクル全体を簡素化し、追加の建設コストや複雑な作業を大幅に削減する」と期待を寄せている。
02 Feb 2024
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アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を主導する首長国原子力会社(ENEC社)は1月23日、燃料集合体の製造施設建設の入札を開始したことを発表した。UAEで運転中のバラカ原子力発電所(PWR×4基、各140万kW)に国産燃料を供給する計画だ。ENEC社は、UAEの今後60年間のバラカ原子力発電所への燃料供給について、18か月にわたり検討を実施し、燃料集合体の製造施設建設を決定した。ただし、UAEの原子力政策では、自国で濃縮および再処理は行わない。現在、バラカ発電所の燃料集合体は、韓国電力公社(KEPCO)が主導するコンソーシアムに参加する韓国核燃料会社(KNFC)が供給している。UAEは2008年、同国の電力需要の25%を供給する原子力発電所の導入を決定。エネルギー供給源の多様化のほか、長期的なエネルギービジョンとネットゼロ目標の達成に向け、原子力発電プログラムの実施計画に着手した。UAE初の原子力発電所であるバラカ発電所は、2012年7月からUAE北部のアブダビ首長国で建設工事が本格的に始まり、1、2、3号機はそれぞれ2021年4月、2022年3月、2023年2月から営業運転中である。最後となる4号機は昨年12月に燃料装荷を完了し、起動準備中である。いずれも韓国製のPWR(APR-1400、140万kW)を採用し、運転や保守は2016年に設立されたENEC(株式保有シェア82%)とKEPCO(同18%)の合弁企業であるNAWAHエナジー社が行っている。バラカ発電所の燃料を調達するため、ENEC社は世界の核燃料供給業者を対象に広範囲にわたる調達に向けて入札を行った。その後、ウラン精鉱、濃縮ウラン製品や関連製品・サービス、転換や濃縮役務などの提供に関する契約を6社と締結している。
01 Feb 2024
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フランス電力(EDF)は1月23日、傘下の英国法人EDFエナジー社が建設中のヒンクリー・ポイントC原子力発電所(HPC)建設プロジェクトについて、スケジュールの遅延ならびにコストの上昇を発表した。土木工事の資材高騰と電気機械工事の長期化がコスト上昇の主要因であるという。出力172万kWのEPR×2基から構成されるHPCでは、1号機が2018年12月に着工され、当初、2025年末までの運転開始を予定。2022年2月には、運開時期を2027年6月に修正した上で、総工費は250~260億ポンド(約4.7~4.9兆円)になると予想していた。今回EDFは、さらに運開時期を2030年頃とし、総工費は310~340億ポンド(約5.8~6.4兆円)へと上方修正した。HPCのS.クルックスCEOは、1月23日に動画によるメッセージを発信。「COVID-19パンデミックにより建設プロジェクトは15か月遅延している。2023年12月に1号機原子炉建屋にドーム屋根を設置したが、予定より2年遅れ。20年間中断していた英国の原子力産業の再開は困難な状態が続いている。新たなサプライチェーンの構築やトレーニングは、今後数十年にわたり恩恵をもたらす非常に大きなタスクであり、他のインフラプロジェクトと同様、土木工事は想定以上に遅れている。COVID-19とブレグジットの混乱に加え、インフレ、労働力不足、資材不足に直面している」と語る。一方で、2号機では同作業のパフォーマンスが20~30%向上すると指摘し、「同一の設計を反復することが成功の鍵」と強調した。英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックスCEOは「建設プロジェクトの期間を空けて一時期に1つの発電所を作るのではなく、多くの発電所を建設すればするほど、より早く、より安価になる。政府の「原子力ロードマップ」で示されるプログラム的アプローチが専門性を高め、労働力を維持し、効率の向上に不可欠である。ヒンクリー・ポイントCは、英国で過去最も重要なグリーンエネルギーのプロジェクトであり、長らく新規の発電所を建設してこなかった原子力産業の復活を象徴する。サプライチェーンを活性化し、その過程で何千人もの熟練工の雇用を創出し、他の産業にも重要な教訓をもたらす」と語る。なお、英国政府は仏EDF社によるこの発表の前日、イングランドのサフォーク州で計画しているサイズウェルC原子力発電所の建設プロジェクトに対し、今年後半に予想する最終投資判断(FID)が出るまで、サイト周辺の道路や鉄道などの必要なインフラ工事を継続できるように、13億ポンド(約2,431億円)を追加で資金拠出すると発表した。これは、2022年11月の7億ポンド(約1,309億円)と昨年夏に合意された追加5.11億ポンド(約955.6億円)の拠出に続くもの。この段階で政府のさらなる支援を約束することで、プロジェクトはスケジュール通りに進み、全体的なコストを抑えることができるという。
31 Jan 2024
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エジプト初の原子力発電所建設サイトであるエルダバ原子力発電所(120万kW級ロシア型PWR =VVER-1200×4基)で1月23日、4号機が着工した。同サイトでは1号機が2022年7月、2号機が同11月、3号機が2023年5月にそれぞれ着工しており、4号機で最後となる。1号機は2028年の運転開始を目指している。エルダバ原子力発電所は、カイロの北西約320km、地中海沿岸地域のエルダバ市にある。アフリカ大陸での原子力発電所建設は、南アフリカ共和国のクバーグ原子力発電所(PWR×2基、各97万kW)以来のこと。建設計画は、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が支援している。VVER-1200は、ロシアのレニングラード第Ⅱ原子力発電所(1、2号機)とノボボロネジ第Ⅱ原子力発電所(1、2号機)、ベラルーシのベラルシアン原子力発電所(1、2号機)で運転中。その他、中国とトルコで4基ずつ、バングラデシュで2基が建設中である。エジプト政府は2015年11月に、原子力発電所建設プロジェクトに関する政府間協定(IGA)をロシア政府と締結、ロシアから最大250億ドルの低金利融資を受けることになった。2017年12月に調印した4基のVVER-1200建設の契約では、ロスアトム社は発電所を建設するだけでなく、60年間の運転期間を通じて燃料を供給するほか、使用済燃料専用の貯蔵施設の建設と貯蔵用キャスクの供給も請け負う。また、運転開始後10年間は、エジプトにおける原子力分野の人材育成とこの発電所の保守に協力する。
30 Jan 2024
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フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)は1月18日、世界初の使用済燃料の深地層処分に関するポシバ社の操業許可申請書への見解提出の期限を2024年末まで延長するよう雇用経済省に要請したことを明らかにした。昨年9月には、当初予定していた2023年末までのレビュー完了は難しいだろうとしていた。最終処分の実施主体であるポシバ社は2021年12月30日、オルキルオトに建設中の使用済燃料封入プラントと最終処分場の操業許可を雇用経済省に申請した。2024年3月から2070年末までの操業許可を求めるもので、実際の処分事業は2020年代半ばに開始する計画である。操業許可の最終的な判断は政府が下すが、事前にSTUKが処分場の長期的な安全性評価を実施し、雇用経済相に見解を提示することが必要。肯定的な見解であれば、同省が内閣から承認を取り付ける。STUKはポシバ社からの関係資料提出を受け、2022年5月に評価作業を開始した。雇用経済省はSTUKに対し、2023年末までに見解を提出するよう求めていた。STUKは昨年の第三期(最終)報告書の中で「安全性の評価作業に大きな問題はないが、当初の想定よりも若干ペースが遅れている。審査すべき資料が膨大であり、ポシバ社が当初提出したデータでは十分な評価ができず、ポシバ社によるデータの更新が必要となった。その後の書類の審査に予想以上に時間がかかっている」と言及している。STUKは、安全性評価の作業に加え、ポシバ社が実施している作業を監督している。その監督項目は、使用済燃料の地上封入プラントへの機器の設置、同機器の試運転、最終処分場で進行中の岩盤工事など。また、最終処分場の保安体制、組織の安全文化、および最終処分事業の開始に向けたポシバ社の準備状況を確認している。政府は2015年11月にポシバ社に最終処分場の建設許可を発給、2016年12月に総工費約5億ユーロ(約803.5億円)の建設工事が開始された。操業許可が発給されれば、フィンランドで原子力発電所を運転するティオリスーデン・ボイマ社(TVO)のオルキルオト原子力発電所(BWR×2基、各92万kW)とフォータム社のロビーサ原子力発電所(ロシア型PWR=VVER-440×2基、各53.1万kW)から発生した使用済燃料の埋設を開始する。昨年5月に営業運転を開始したオルキルオト3号機(欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)の使用済燃料については同一サイトで処分場を拡張し、2090年以降の最終処分を予定する。同処分場は、2120年代までの100年間の操業を見込む。最終処分の実施主体であるポシバ社は、TVO社およびフォータム社が共同で設立した。同社は2000年、フィンランド南部のユーラヨキ地方にあるオルキルオト原子力発電所の近郊を使用済燃料の最終処分場の建設サイトに選定。2004年6月、同地点の地下450m部分の岩盤地質や水文学特性を調査するため、地下研究調査施設「ONKALO」を着工している。「ONKALO」は最終的に最終処分場の一部となる。最終処分場は地上の使用済燃料封入プラントと地下400~450mに設置される地下施設で構成されており、ポシバ社は2019年6月から封入プラントの建設に着手。2022年5月に完成している。2021年5月には、実際の使用済燃料を収納したキャニスターを定置する最初の5本の処分坑道の掘削工事を開始した。なお、同処分場の100年間の操業期間中に100本の処分坑道が掘削され、全長は約35kmになる予定。1本の坑道の最大長は350m、高さ約4.5m、幅約3.5mであり、各坑道は処分孔の数で変化するものの、平均約30本のキャニスターを定置、約65トンの使用済燃料を収容できるという。
29 Jan 2024
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米国のエネルギーコンサルタント会社のラディアント・エナジー・グループ社がこのほど発表したクリーンエネルギーに対する多国間世論調査結果によれば、原子力発電を支持する人の割合(46%)が反対の割合(28%)を1.5倍以上上回る結果となり、世界的に原子力に対する支持が高まっている傾向が浮き彫りになった。同調査は、ラディアント社が英国の市場調査会社サバンタ社に委託して、昨年10月17日から11月14日に20か国の成人20,122名を対象にオンラインで実施したもの。対象国には、G7やBRICS諸国のほか、2022年の原子力発電量上位14か国や、近年原子炉が3基運転中のアラブ首長国連邦(UAE)、また原子力発電を持たないオーストラリア、イタリア、ノルウェー、フィリピンの4か国が含まれている。同調査によれば、調査対象となった20か国のうち17か国は、原子力利用に対する支持が反対を上回り、なかでも、中国、ロシア、UAE、インドでは、支持が反対を3倍以上上回る結果となっている。なお、日本については、反対(40%)が支持(29%)を上回っており、調査対象国中でもブラジル、スペインと並んで支持が低い結果となった。原子力発電への好感度は、陸上風力発電、バイオマス発電、またはCO2の回収と貯蔵(CCS)を伴うガス発電より高く、「自国のエネルギー転換において重点化すべき電源」を問う設問に対しては、回答者全体の25%が、「原子力を重視すべき」と回答、大規模な太陽光発電に次ぐ支持(33%)を集めた。気候変動に取り組むために技術的に中立で前向きな見通しを持つ人々は、他のエネルギー源よりも原子力をより好む傾向にあるという。また、「将来のエネルギー供給に求めるもの」に関する設問では、「信頼性」が最も高く、回答者全体の66%が原子力を信頼できるエネルギー源として評価する一方、半数以上(53%)が「原子力は温室効果ガスをかなりの量、または大量に排出する」と回答。また、回答者の79%が安全性への懸念を示したが、うち40%が原子力利用を支持し、反対の33%を上回ったことから、「安全性や廃棄物への懸念と原子力支持との相関関係は比較的低い」と分析している。そのほか、脱原子力を達成したドイツやこれまで脱原子力を標榜していた日本、韓国、スウェーデンの4か国で、原子力が風力や太陽光以上に電気料金の削減に貢献する技術として認識されているとの調査結果が示された。また、原子力発電国では、原子力発電所の段階的廃止よりも、継続を望む回答者の方が3倍以上多く、また原子力発電を持たない4か国では、原子力発電の禁止よりも、新規建設を望む回答者の方が2倍多かったことなどが明らかとなった。なお、性別でみると男性の方がすべての対象国で原子力利用の支持が多い。年齢層別では、大半の国で若年層が原子力利用を最も支持しない傾向にあるものの一貫しておらず、原子力の仕組みについて最も詳しいと自認する人々は、一貫して原子力利用を最も支持していることが分かった。ラディアント社は、「支持または反対の指標は国民感情を示すものであり、政府がどのように行動することを国民が望んでいるかを示すものではない。どちらかというと原子力利用には反対すると答えた回答者のうち、54%が既存の原子力発電所の運転を継続する政府の政策を支持し、17%が原子力発電所の増設を望んでいる」と指摘する。
26 Jan 2024
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米国のX-エナジー社は1月17日、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同社の小型モジュール炉(SMR)「Xe-100」(出力8万kW)に対し実施している「ベンダー設計審査(VDR)」で主要部分の第1、第2段階が完了したことを発表した。CNSCは19の審査分野についてX-エナジー社が提出した400以上の技術文書を評価した結果、「Xe-100」の正式な許認可審査の際に根本的障害となるような課題は認められず、カナダの原子力発電所に対するCNSCの要求事項の意図をX-エナジー社が正しく理解していると結論づけた。X-エナジー社のC.セルCEOは、「事前審査の第2段階の完了は、Xe-100建設の規制上および商業上の準備が整っていることを示すものであり、当社の先進的な高温ガス炉技術をカナダ市場に展開するにあたり、正式な許認可申請への自信が強まった」と語る。CNSCによるXe-100のVDRは、審査プロセスの最初の2段階について2020年7月に開始された。VDRはベンダーの要請に基づき、CNSCが提供している任意の設計評価サービスで、2つの段階の審査を同時に進めることは可能。VDRは、設計段階において、潜在的な規制上や技術上の問題点、特に設計の大幅な変更につながる可能性のある重要課題を特定し、早期にフィードバックをすることを目的とする。審査の過程で得られたフィードバックは、最終段階のVDRやCNSCへの提出書類に反映される。なお、CNSCによる審査の過程で、X-エナジー社がCNSCの規制要件を厳格に順守するために、さらなる対応が必要な技術分野がいくつか指摘された。X-エナジー社は最終段階にあたる第3(フォローアップ)段階で、これら指摘事項についてCNSCに更なる情報を求めながら詳細に検討を加え、建設に向けた設計の具体化で追加の策を講じ、CNSCの評価を仰ぐとしている。X-エナジー社は、VDRの第3段階の実施に向け、今後もCNSCと緊密に協力していく意向を表明している。第4世代の原子炉に属する「Xe-100」はペブルベッド式小型高温ガス炉(HTGR)で4基連結して32万kWの発電容量に拡張が可能。海水脱塩や水素生産などの幅広い分野に適用が可能だ。燃料には、X-エナジー社独自のTRISO-X(3重被覆層・粒子燃料)を使用する。米国の大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社は、テキサス州のメキシコ湾沿いに位置するシードリフト市にXe-100が4基連結した発電所の建設を計画している。X-エナジー社の100%子会社であるTRISO-X社は、テネシー州オークリッジの「ホライズンセンター産業パーク」内で商業規模の「TRISO-X燃料製造施設(TF3)」を建設中だ。Xe-100の初号機とTF3は、米エネルギー省(DOE)の「先進的原子炉設計実証プログラム(ARDP)」の支援対象となっている。また、X-エナジー社は、米国北西部ワシントン州にあるコロンビア原子力発電所(BWR、121.1万kW)の隣接区域に最大12基のXe-100を設置するため、同州の電気事業者であるエナジー・ノースウエスト社と共同開発合意書に調印している。
24 Jan 2024
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オランダ政府の原子力利用拡大の意向を受け、オランダの原子力および教育セクターの関係者は1月12日、原子力の理工系分野における職業教育の強化を目的とした共同声明に署名した。原子力分野でのキャリアに対する学生の関心を高めるために、新しい原子力教育カリキュラムの共同開発などを視野にいれている。現在、オランダの原子力シェアは小さく、国内唯一の原子力発電所であるボルセラ発電所(PWR、51.2万kW)が国内の総発電電力量の約3%を供給するのみ。同発電所は1973年の運転開始後40年目の2013年に運転期間が20年間延長され、運転認可は2033年末まで有効である。2021年3月に発足した連立政権の4党は、2040年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指しており、同年12月に4党が合意した2025年までの政策方針の中で、ボルセラ発電所の運転を長期に継続するとともに、政府の財政支援により新たに2サイトで原子力発電所を建設する方針を明記。2022年12月、政府は第3世代+(プラス)の原子炉(各100万~165万kW)2基の新設を計画し、建設サイトとして、ボルセラ発電所の立地エリアを指定している。いずれも2035年に運転開始させ、2基で国内の総発電電力量の9~13%を賄うと試算する。また、ボルセラ発電所では、政府の資金提供を受け、2034年以降の運転継続に向けた実行可能性調査が進行中である。オランダでは、クリーンエネルギーへの移行に寄与するとして小型モジュール(SMR)の建設計画も進められている。オランダのULCエナジー社は英ロールス・ロイス社製のSMRを複数基導入する考えで、2023年11月、英ロールス・ロイスSMR社とオランダの建設企業BAMインフラ・ネーデルランド社と長期的に協力することで基本合意している。また、ロシアのウクライナ侵攻による地政学的な変動で、原子燃料の需要の高まりを受け、英国に本拠地を置く濃縮事業者のウレンコ社は、オランダにあるアルメロ工場の濃縮能力を拡大する計画だ。核医学分野では、医療用アイソトープ製造のため、新しい研究炉PALLAS(熱出力5.5万kW)が北ホラント州のペッテンで建設中である。原子力研究コンサルタント・グループ(NRG)が1960年から運転する高中性子束炉(HFR、熱出力4.5万kW)の後継機となる。HFRは、医療用アイソトープの欧州の需要の約60%、世界の需要の約30%を生産する。政府は、PALLAS建設への資金拠出を通じて世界市場における地位の向上と北ホラント州の高い知見と雇用の維持を目指している。「これらの野心的な目標を実現するには、原子力分野の十分な知識を持つスタッフを増やす必要がある」「そのためには、職業教育が重要な役割を果たすため、原子力産業界と教育機関との連携を強化する必要がある」と共同声明は指摘している。共同声明の署名式には、産業界からはCOVRA(放射性廃棄物の処理・貯蔵)、EPZ社(原子力発電)、NRG-Pallas(医療用アイソトープ製造)およびUrenco社(ウラン濃縮事業)が参加した。教育機関からは中等職業教育(MBO)機関のScalda、Horizon College/Regio College、Vonk、ROC van Twenteおよびデルフト工科大学(TU Delft)が参加している。
23 Jan 2024
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が建設中の鉛冷却高速実証炉「BREST-OD-300」(電気出力30万kW)で1月17日、鋼鉄製の原子炉ベースプレートと格納容器の下層部分が原子炉シャフトに据付けられた。重量165トン、直径21m以上、厚さ300mmの原子炉ベースプレートは、2022年9月に2つに分割されて建設サイトに搬入され、組み立てられた。ベースプレートは、原子炉容器内の構造物から基礎部分にかかる荷重を均等にするためのもの。コンクリート打設は2021年8月に完了しており、遅くとも2027年に運転を開始する予定。BREST-OD-300は、シベリア西部のトムスク州セベルスク市にある、核燃料製造企業トヴェル社傘下のシベリア化学コンビナート(SCC)で建設中である。2021年2月、SCCに連邦環境・技術・原子力監督庁(ロステフナゾル)から建設許可が発給され、同年6月に建設が開始された。設計上固有の安全性を持つBREST-OD-300は冷却材に鉛を使用し、ウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料を使用する。同サイト内で建設中のMNUP燃料製造加工施設は2024年中に稼働予定。また、同炉から発生する使用済燃料専用の再処理モジュールを併設し、回収したウランとプルトニウムをMNUP燃料製造施設で新燃料に再加工する。再処理モジュールは2030年に稼働予定である。これら3施設で「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」を構成する。PDECは、ロスアトム社が進めている戦略的プロジェクト「ブレークスルー(Proryv)」の主要施設である。BREST-OD-300の主任設計者兼ブレークスルー・プロジェクトチームの設計責任者であるV.レメホフ氏は、「世界初の第4世代の鉛冷却高速炉の据付工事の開始という画期的瞬間を迎えた。従来のVVER炉とは異なり、BRESTは一体型レイアウトを採用。VVERのようなオールメタル構造ではなく、一次系設備を収納する金属製空洞のあるメタル・コンクリート構造。空洞間は建設中にコンクリート充填材で徐々に埋める。BREST炉はサイズが大きく部品単位でしか搬入できず、最終的な組立ては建設サイトでしかできない」と語る。BREST-OD-300のような高速炉は、従来の熱中性子炉などの燃料再処理からの副産物であるプルトニウムを燃料に使用する。放射毒性の強いマイナーアクチノイドの燃焼消滅も可能。また、ウラン238からプルトニウム239が生成されるが、天然ウランの約99%はウラン238であるため、ロスアトム社は「天然ウランの利用効率が飛躍的に向上する」としている。ロシアは、ブレークスルー・プロジェクトで、天然ウランなど資源の有効活用を図るとともに、蓄積する使用済燃料や放射性廃棄物を処分するため、閉じた燃料サイクルの確立を目指している。ロスアトム社は熱中性子炉のみならず、運転経験が豊富なナトリウム冷却高速炉(SFR)に加え、鉛冷却高速炉(LFR)の開発を進める。今回の30万kWの実証炉の運転は性能確認に重点を置き、10年後には120万kWのBR-1200(LFR)の商業運転を後続させると意気込んでいる。
22 Jan 2024
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カナダのキャピタル・パワー社とオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は1月15日、電気出力30万kWの小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」のアルバータ州での建設を目指し、協力することで合意した。技術面だけでなく事業運営も含めた実現可能性を検討する。実現可能性評価は、2年以内に完了するが、その後の取り組みでも協力を継続する。この合意により、アルバータ州、オンタリオ州、サスカチュワン州、ニューブランズウィック州政府が2022年に発表したSMR導入のための共同戦略計画が前進することになる。キャピタル・パワー社は、アルバータ州エドモントンに本社を置く、北米の電力会社。アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州、および米国10州に、火力、太陽光、風力など約760万kWの発電設備容量を所有している。カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は、北米初のSMRをオンタリオ州のダーリントン原子力発電所サイト内に建設するため、準備作業を実施している。採用炉型は、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWRX-300で、計4基建設予定。1基目の建設は2028年末までに完了し、2029年末までに運転を開始する計画だ。キャピタル・パワー社のA.デイCEOは、「SMRはアルバータ州にとって、安全で信頼性が高く、柔軟性があり、手頃な価格で重要なクリーンなベースロード電源になる。この合意は長期的な戦略的パートナーシップの基礎を築くものである」「30万kWのSMRは、アルバータ州の電力市場にとって適切なサイズであり、OPG社の原子力発電の経験を活かし、アルバータ州でのSMR導入を加速させる」と期待を寄せる。同社は、2030年から2035年にかけて最初のSMRの設置を目指している。OPGのK.ハートウィックCEOによると、ダーリントン原子力発電所サイト内での新しいプラントの建設許可取得の規制手続きを完了し、2025年初頭までにSMR全4基のコストを公表できるだけの情報が十分に揃うという。初号機は少し高価になるが、後続機はコストが低減されるという。なお、この提携同意の発表式典には、アルバータ州とオンタリオ州の関係政府機関の大臣も列席。アルバータ州政府のN.ノイドルフ公共事業担当大臣は、「SMRはクリーンで信頼性が高く、手頃な価格の電力を供給するための適切なエネルギーミックスを求めるアルバータ州にとって、大きな役割を果たす可能性がある」とし、「このパートナーシップは、オンデマンドのベースロード電力を維持しながら脱炭素化を目指す我々にとり、エキサイティングで重要な前進である」と述べた。同大臣は、SMRを1か所あるいはそれ以上の場所に設置するかは実現可能性の段階で検討されるが、SMRの魅力は、原子炉をフリート化したり、より離れた場所に単独で設置したりと両方が可能なことだ、と指摘する。アルバータ州は2023年9月、同州のオイルサンド事業へのSMR導入に関する複数年にわたる調査に700万カナダドル(約7.7億円)を投資すると発表。アルバータ州政府のB.ジーン・エネルギー鉱物資源大臣は、SMRはクリーンな発電供給ミックスの重要な要素であり、オイルサンド事業にとって有望であると語った。オンタリオ州政府のT.スミス・エネルギー大臣は、「世界トップクラスのオンタリオ州の原子力の専門知識を活用した次世代のSMR技術の推進を期待する」「SMRは高賃金の雇用を創出する新たな投資を確保し、安全で信頼性の高い電力を供給、地域社会の増大するニーズに対応する」と述べた。折しも、発表式典の2日前、週末のアルバータ州の気温はマイナス45度近くまで下がり、高い電力需要により輪番停電の可能性が発生、住民に節電が要請された。スミス大臣は、アルバータ州の州都エドモントンからソーシャルメディアに投稿。風力発電や太陽光発電がほとんど稼働せず、輪番停電の可能性があることに触れ、オンタリオ州の原子力に関する専門知識をエネルギーの自立と安全保障を求める世界中の地域に輸出していきたい、と発信している。
19 Jan 2024
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米国北西部ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウエスト社は1月10日、先進炉の開発と設置を目的とした同社のプロジェクトの実現可能性調査に、ピュージェット・サウンド・エナジー(PSE)社が出資すると発表した。PSE社はワシントン州最大の電力会社で、出資額は1,000万ドル(約14.7億円)。PSE社による出資は、エナジー・ノースウエスト社とそれを支援する事業体がこれまでに拠出した約1,000万ドルに追加されるもの。エナジー・ノースウエスト社はワシントン州内の28の公益電気事業者で構成される公営電力共同運営機関。この2年以上、数多くの新しい原子力技術の可能性調査を実施し、米・X-エナジー社の「Xe-100」が、この地域特有のニーズに最も適した炉型であるとの結論に達している。第4世代の「Xe-100」はペブルベッド式小型高温ガス炉(HTGR)で3重被覆層・粒子燃料(TRISO燃料)を使用する。電気出力8万kW、熱出力は20万kW。12基連結することで最大96万kWの電気出力を得る。エナジー・ノースウエスト社は自らが所有・運転するワシントン州内唯一の原子力発電所、コロンビア発電所(BWR、121.1万kW)の隣接区域で「Xe-100」発電所を建設し、2030年までに同炉のモジュールの運転を開始することを想定し、2023年7月、X-エナジー社と共同開発合意書(JDA)に調印している。建設プロジェクトの背景には、2019年5月、ワシントン州内の電力を2045年までに100%クリーンエネルギーとする州法が制定され、電力会社は新たにクリーン電源を特定、評価をするようになっていることがある。
17 Jan 2024
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英国のEDFエナジー社は1月9日、今後3年間で13億ポンド(約2,405億円)を投じて運転中の5サイト計9基の運転期間を延長することを発表した。EDFエナジー社は、8サイトの原子力発電所を管理している。運転中の5サイト(サイズウェルB、トーネス、ヘイシャムA、ヘイシャムB、ハートルプール)と廃止措置中の3サイト(ハンターストンB、ヒンクリー・ポイントB、ダンジネスB)である。同社は、イングランド南西部サマセット州で、170万kW級の欧州加圧水型炉(EPR)2基構成のヒンクリー・ポイントC(HPC)原子力発電所を建設中であり、南東部サフォーク州のサイズウェルC(SZC)原子力発電所では同じくEPR2基の建設を計画中である。2009年にブリティッシュ・エナジー社から取得して以降、EDFエナジー社が運転中の5サイトへ投資した総額は、今回発表の13億ポンドと合せると、およそ90億ポンド(約1.67兆円)に達する。2023年の英国の原子力発電電力量は373億kWhであった。2021~2022年にかけての3サイトの原子力発電所(ダンジネスB、ヒンクリー・ポイントB、ハンターストンB)の閉鎖や定期検査による運転停止により、2022年比で15%減少したものの、少なくとも2026年までは原子力発電電力量はこの水準を維持する計画である。この予測は、昨年の予測より40%高いが、2023年3月にハートルプール原子力発電所(各AGR、65.5万kW×2基)とヘイシャムA原子力発電所(各AGR、62.5万kW×2基)の運転を2年延長し、現時点で2026年3月まで延長することを決定したことによる。また、ヘイシャムB原子力発電所(各AGR、68万kW×2基)、トーネス原子力発電所(各AGR、68.2万kW×2基)の運転期間延長を目指しており(現在、この4基は2028年3月までの運転を予定)、点検および規制当局の承認を条件として、2024年末までに再度、運転期間を見直す予定である。サイズウェルB原子力発電所(PWR、125万kW)は、1995年の運転開始時から2,500億kWh以上を発電。運転終了時期となっている2035年以降も、技術的には20年間以上の運転が可能とみられている。EDFエナジー社は、2025年中にこれに関する最終的な投資決定を下す予定。EDFエナジー社は、5サイトでの運転期間延長により現在の発電量レベルを維持し、エネルギー安全保障を強化、CO2排出量を削減する意向である。HPCやSZCのような大規模な新設計画が実施されることで、5,000人もの長期雇用や、サプライチェーンにおける数千人の雇用も維持される。EDFエナジー社では、2024年に原子力事業全体で1,000人以上の雇用を計画中だ。今回の投資がなければ近いうちに、サイズウェルBが運転中の唯一の原子力発電所となり、英国の電力需要量に占める原子力発電の割合は13%ではなく、僅か3%となり、天然ガスへの依存度はさらに高まり、エネルギー価格は上昇、大気中のCO2量はさらに増えることになる。英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックスCEOは、EDFエナジー社の発表を歓迎しつつも、「運転期間延長は短期的には助けとなるが、閉鎖間近の原子力発電所を巡る中長期的な問題には対処できない。政府が迅速にSZCへの最終投資を決定し、将来にわたるエネルギー安全保障と経済的繁栄をもたらす大型炉から小型炉までさまざまな規模の新しい原子力発電所の計画を策定することが必要だ」と強調した。EDFエナジー社は閉鎖したAGR炉の燃料取り出し作業にも取り組んでおり、3サイトで2021年半ばから廃止措置の初期段階に入った。ハンターストンB原子力発電所では燃料取り出しが半分以上、ヒンクリー・ポイントB原子力発電所では4分の1以上が終了している。この2サイトの原子力発電所は燃料取り出し後、2026年に長期間の廃止措置のため、原子力復旧サービス(Nuclear Restoration Services:NRS。以前の名称はマグノックス社)に移管される。ダンジネスB原子力発電所は、2023年5月に燃料取り出し作業を開始した。政府との2021年廃炉協定に基づき、EDFエナジー社が燃料取り出しを行い、NRSがその後の長期の廃炉プログラムを管理する。資金は原子力債務基金(Nuclear Liability Fund:NLF)から拠出される。2023年3月末の基金残高は204億ポンド(約3.8兆円)。
16 Jan 2024
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米エネルギー省(DOE)は1月9日、J.バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の国内での大規模供給体制を確立するため、濃縮サービスに関する提案依頼書(Request for Proposals:RFP)を発行した。DOEのJ.グランホルム長官は、「原子力は現在、国内のカーボンフリー電力のほぼ半分を供給しており、今後もクリーンエネルギーへの移行において重要な役割を果たし続ける」と強調した。HALEUは、現在開発中の多くの先進的原子炉に採用されている新型燃料で、先進的原子炉の展開は、バイデン大統領の掲げる2050年までのCO2排出量実質ゼロ(ネットゼロ)の達成、エネルギー安全保障の強化、高賃金の雇用の創出、米国の経済競争力の強化に貢献する。また、HALEU燃料の利用により炉心寿命は長くなり、安全性、効率向上が期待できる。現在、米国に拠点を置く供給事業者からHALEU燃料の商業的規模の供給はなく、原子力発電事業での積極的活用上の懸念材料となっていることから、国内供給が増加すれば、米国における先進的原子炉の開発と配備が促進されると見込まれている。バイデン大統領のインフレ抑制法は、2026年9月までとの期限付きの総額7億ドル(約1,015億円)を限度とする「HALEU利用プログラム」により国内にHALEUサプライチェーンを確立することを目的としている。今回のRFPで採択されるHALEU濃縮契約と昨年11月に発表されたRFPによる別契約(濃縮されたウランを先進的原子炉向けの金属、酸化物等の形態に再転換するサービス)に最大5億ドル(約725億円)の拠出が予定されている。DOEの原子力局は、国内のウラン濃縮事業者とHALEU燃料製造の契約を複数締結する計画だ。濃縮されたHALEUは、再転換事業者に出荷する必要があるまで製造サイトで保管する。最大契約期間10年のHALEU濃縮契約に基づき、政府は各ウラン濃縮事業者に対し最低発注金額として200万ドル(約2.9億円)を保証する。濃縮および貯蔵活動は米国本土で行われ、国家環境政策法に準拠する必要がある。今回のRFPによる提案提出の期限は3月8日。このRFPには、昨年6月に発行されたRFP草案に対する業界からのコメントに基づく修正がされている。DOEは、政府所有の研究炉の使用済み燃料のリサイクルを含む、先進的商業炉のHALEUサプライチェーンを拡大するための活動を支援している。DOEの予測では、2035年までに100%のクリーンな電力、2050年までにネットゼロの達成という政府目標の達成のためには、2020年代末までに先進的原子炉用にHALEU燃料40トン以上が必要であり、毎年、さらにこれを上回る燃料を製造しなければならない。昨年11月、DOEはHALEU燃料の実証製造プロジェクトにおいて重要なマイルストーンを達成した。米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・USEC)が国内初となるHALEU燃料を20kg製造。なお、DOEは今後3年間で世界のウラン濃縮と転換能力を拡大し、ロシアの影響を受けない強靱なウラン供給市場の確立をめざし、官民セクターの投資促進のために有志国と連携を深めている。昨年12月7日、COP28の会期中に開催された第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミットの場で、米国、カナダ、フランス、日本、英国は合同で、安全で確実な原子力エネルギーのサプライチェーンを確立するために政府主導の拠出42億ドル(約6,090億円)を動員する共同計画を発表した。これは、COP28における、日本をはじめとする米英仏加など25か国による、世界の原子力発電設備容量を2020年比の3倍に増加させるという宣言文書の具体化である。
15 Jan 2024
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スウェーデンのE. ブッシュ・エネルギー・ビジネス・産業大臣兼副首相は1月4日、同国の原子力発電拡大計画を始動するにあたり、国家原子力発電コーディネーター(調整役)にスウェーデン原子力協会事務局長のC. ベルグロフ氏を任命したと発表した。同氏は今後、政府の原子力発電牽引、加速の中心的役割を担う。また、進捗のフォローアップや分析により、必要な対策を検討していくほか、立地地域のステークホルダーとのコミュニケーションを図る役割も期待されている。就任は2月1日付。スウェーデンでは2022年9月に総選挙が行われ、翌10月、40年ぶりに原子力を全面的に推進する中道右派連合の現政権が新たに誕生した。そのスウェーデン政府は2023年11月、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表。これには、非化石燃料による電力を競争力のある価格で安定的に確保し、社会の電化にともない総発電量を25年以内に倍増させるため、2035年までに少なくとも大型原子炉2基分の原子力発電設備を完成させ、さらに2045年までに大型炉で最大10基分相当の原子力発電設備を追加することなどが盛り込まれている。また今月1日には、環境法の一部改正法が発効、新たなサイトでの原子炉の建設禁止や国内で同時に運転できる原子炉基数を10基までとする制限事項が撤廃されるなど、原子力推進に向けた環境整備が着々と進められている。今回、国家原子力発電コーディネーターに任命されたベルグロフ氏は、スウェーデンのエネルギー貿易協会であるSwedenergyのシニア原子力アドバイザーであり、2017年から原子力産業政策協力グループであるスウェーデン原子力協会の事務局長を務めている。同氏はストックホルムのスウェーデン王立工科大学で原子炉物理学の博士号を取得し、国営企業のバッテンフォール社で6年間、原子力発電所の運転と新規建設準備に従事した経験を持つ。また、昨年4月に開催された日本原子力産業協会の第56回原産年次大会にもスピーカーとして参加している。ベルグロフ氏によると、スウェーデンが原子力推進に舵を切る背景には、気候変動や脱炭素化の世界的な潮流に加え、2015年以降に国内4基の原子炉が閉鎖されたことによる、電力価格の高騰と発電設備容量の不足、そしてロシアによるウクライナ侵攻に端を発するエネルギー危機などが影響しているという。気候変動や電化に対する野心的な目標が掲げられるなか、自ずと原子力の役割が明確になり、原子力に対する国民の支持もこれまで以上に大きくなったと指摘する。同氏らが行った世論調査によると、回答者の59%が新規建設を支持する一方、原子炉の段階的廃止に賛成する割合は過去最低の8%に低下。この強い世論の支持が、原子力をめぐる政治的転換の大きな要因となったと分析している。ベルグロフ氏は今回の任命について、原子力分野における自身のキャリアをふまえ、「準備は整っている。これまで培ってきた知識やネットワークを生かし、この難しいタスクに取り組んでいく」と意気込みを語った。
12 Jan 2024
1543
英国政府は1月11日、2050年のCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)へ向けた原子力ロードマップを発表。2050年までに国内で合計2,400万kWの新規原子力発電所を稼働させ、国内電力需要の4分の1を原子力でまかなうことなどを盛り込んだ、野心的な原子力開発目標への具体策を示した。2,400万kWの原子力発電設備容量は現在の約3倍にあたり、政府が2022年4月に公表した「エネルギー供給保障戦略」の中で掲げられていた。エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)はロードマップについて、あるべき原子力開発の道筋を示し、「原子力産業界や投資家に、政府としての明確なシグナルを送る」ことが目的と説明。「原子力を活用しないかぎり、ネットゼロもエネルギー供給保障も覚束ない」と強調した。そのうえで、2050年までに2,400万kWの新規原子力発電設備を稼働させるべく、建設中のヒンクリー・ポイントC原子力発電所(EPR、172万kW×2基)を2020年代に確実に完成させる新しい資金調達方式であるRABモデル((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))を適用したサイズウェルC原子力発電所(EPR、167万kW×2基)建設プロジェクトへの、EDFエナジー社の最終投資判断(FID)を年内メドに促す2030~2044年にかけて5年毎に300~700万kWの原子力発電設備の新設を促す新規原子力発電所に関する既存の「国家政策声明書(NPS)」(2011年発行)は、100万kW級の大型炉のみを対象としているため、新たに小型モジュール炉(SMR)も対象としたNPSを策定する原子力サイトとして認可された地点の多くで、今後プラントの廃炉を迎えるため、既存サイト以外にも新たな立地点を模索する──等を実施するとしている。また、新規建設にあたって最大の障壁となる資金調達に関しては、投資家や事業者に対し、差金決済取引(CfD)やRABモデルの適用を検討する原子力第三者賠償制度を強化するために、原子力損害の補完的な補償に関する条約(CSC)への加盟を目指す準備を進めている英国のグリーンタクソノミーに、原子力が含まれるよう働きかける──等、原子力プロジェクトへの投資のインセンティブを高めていくという。英国原子力産業協会(NIA)のトム・グレイトレックスCEOは、ロードマップについて、SMRと並行して大型炉プロジェクトも検討するという政府方針を歓迎。「5年のインターバルで新規原子力プロジェクトを決定することで、将来の予測可能性が高まり、頑健なサプライチェーンが構築される」と指摘している。
12 Jan 2024
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