開会挨拶に立つATENA・魚住理事長原子力エネルギー協議会(ATENA)は2月16日、「ATENAフォーラム2023」を都内ホールで(オンライン併用)開催した。ATENAは2018年7月、電力会社に加えメーカーなども含む産業界全体で原子力の自主的安全性向上を図る組織として発足。知見・リソースを効果的に活用しながら、原子力発電の安全性に関する共通的な技術課題に取り組んでいる。ATENAの取組について発信するフォーラムの開催は今回で5回目となる。来賓挨拶に立つ原子力規制委員会・山中委員長来賓挨拶に立った原子力規制委員会の山中伸介委員長は、ATENAの取組に関し「個別事業者としては言い得ないような意見を拾い上げ、原子力規制委員会・規制庁に対する異論・反論も含めた事業者の意見・提言の発信がより強く期待できる」と、その意義を強調。一例として、事故耐性燃料の導入に向けた事業者との技術的議論の進展などに言及した上で、今後も原子力発電所の長期サイクル運転におけるリスク情報の活用など、技術課題に係る様々な提案が寄せられるよう、ATENAのリーダーシップ発揮に期待した。また、昨今の原子力施設におけるトラブル多発を背景に、「技術力・現場力の低下が生じているのではないか。大学などにおいても原子力を学ぶ学生数が減少し、実験装置を自ら作成するという体験が少なくなっている」として、将来の原子力人材育成に向け真剣に考えるべきと明言。ATENAに対し、「メーカーも含む」という強みに触れ、「これまでの発想とはまったく異なった若手人材の育成に取り組んで欲しい」と述べた。講演を行う米NEI・コースニック理事長続いて基調講演(ビデオメッセージ)を行ったM.コースニック米国原子力エネルギー協会(NEI)理事長兼CEOはまず、昨今の世界的なエネルギー危機・政情不安に言及。その上で、「各国の指導者たちは今、気候危機への対応が自国の経済やエネルギー安全保障に直結していることを認識している。その多くは、出力の大規模化が容易で信頼性が高く、安価でクリーンなエネルギー源として原子力を推進する明確な政策を打ち出している」と述べ、英国、フランス、カナダ、ポーランド、オランダ、ブルガリア、チェコにおける最近の原子力開発に向けた動きを紹介した。同氏は、米国の原子力推進に係る法案提出状況にも触れ、「10年前は州レベルで12本もあれば良い方だったが、最近では100本以上にも上っている」と、関心の高まりを強調。運転期間の見直しや次世代革新炉の開発・建設など、日本の原子力政策の動きに関しては、「強固なサプライチェーンと経験豊富な人材が必要」と指摘するとともに、「『今こそ原子力に全力投球すべき』ことは明らか」と述べ、NEIとATENAとのパートナーシップを強めていく姿勢を示した。パネルディスカッションの模様(スクリーン上はアポストラキス氏)パネルディスカッションでは、山口彰氏(原子力安全研究協会理事、モデレーター)、ジョージ・アポストラキス氏(電力中央研究所原子力リスク研究センター所長)、金城慎司氏(原子力規制庁原子力規制企画課長)、水田仁氏(関西電力原子力事業本部長代理)、山本章夫氏(名古屋大学工学部教授)、富岡義博氏(ATENA理事)が登壇。安全性と経済性の両立を巡るリスクコミュニケーションツールの活用、産業界と規制当局との対話などをテーマに意見が交わされた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
21 Feb 2023
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資源エネルギー庁は2月10日、高レベル放射性廃棄物の処分地選定を巡る取組について考えるシンポジウム「わたしたちの子どものための街づくり~地層処分問題と共創する未来~」を都内で開催。石川和男氏(政策アナリスト)による進行のもと、野波寛氏(関西大学社会学部教授)の他、この問題に関心を持つ若手として、トリンドル玲奈さん(モデル・女優)、大空幸星さん(NPO法人あなたのいばしょ理事長)、中野愛理さん(ミライブプロジェクト代表、武蔵野大学〈学生〉)が登壇しパネルディスカッションに臨んだ。挨拶に立つ西村経産相冒頭、挨拶に立った西村康稔経済産業相は、最終処分について、「原子力発電所から発生した使用済燃料が既に存在する以上、世界的に解決しなければならない共通の課題」との認識を改めて示した。処分地選定に向けた文献調査が北海道の寿都町・神恵内村のみで行われていることに関し、「NIMBY」(Not in My Back Yard、必要なのはわかるが自分の家の裏庭には作らないで欲しい)の意識が根底にあることに触れ、「決して特定の地域の問題にしてはならない」と、全国レベルで考える必要性を強調。折しも、同日、最終処分関係閣僚会議で、高レベル放射性廃棄物などの最終処分に係る基本方針の改定案が取りまとめられたが、西村経産相は、「文献調査の実施地域を全国に拡大していくことが大事」と、引き続き取組を強化していく考えを述べた。講演を行う片岡・寿都町長ディスカッションに先立ち寿都町の片岡春雄町長、神恵内村の高橋昌幸村長が基調講演。両首長とも、人口減少に伴う地域の将来に対する不安から文献調査応募に至った経緯を説明。その上で、それぞれ、「文献調査に応募する第3、第4の自治体が1日も早く出てくることを期待」、「身近な問題としてとらえ、多くの方々が正しい情報を共有し発信してもらいたい」と述べ、地層処分問題に関し、特に若い世代の関心が高まることを期待した。ディスカッションを進める石川氏続いて、「あなたの住む街に処分場が来たらどうする?」をテーマにパネルディスカッション。高レベル放射性廃棄物問題の認知度の低さに関して、エネルギー問題などをテーマに全国の学生と交流を行っている中野さんは「地層処分についてもともと知っていたという人は本当に少ない」と強調。虐待・DVなどに係る支援活動に取り組む大空氏も「『気候変動問題に何かアクションを取ろう』と考えている層にも届いていない」と、社会問題の中でも殊に関心が低いことを述べ、まず若手を中心に無関心層から訴えかけ話し合ってもらう必要性を指摘。また、長期にわたる処分事業に係るイデオロギーの問題に関して、野波氏は社会学の立場から、「『遠くにいて見えない被害者がいる』ことに気付かない典型」などと述べ、学校の道徳教科書でも取り上げ理解を深めることを提案。石川氏がこうした「次の世代にツケが回される問題」について問うと、大空氏は「今作られた橋や道路は100年後には直す必要が生じている」などと、社会構造上、高レベル放射性廃棄物に特化するものではないことを指摘した。六ヶ所村や柏崎市・刈羽村他への訪問経験から、中野さんは、原子力関連施設を立地する地域の想いに関して、「自分たちの手でまちづくりを行う姿に感銘を受けた」などと所感を述べた。福島の復興イベントにも参加してきたトリンドルさんは、「まずは知ってもらうことが大事」と強調。さらに、意思決定のプロセスに関して、「自分が不安に思うことを表に出さないようにしているのでは」との懸念を示し、「色々な立場・世代を越え対話することが必要」と、幅広いコミュニケーションの重要性を訴えかけた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
17 Feb 2023
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原子力規制委員会は2月15日の定例会合で、高経年化した原子力発電プラントの安全規制に関する検討チームの設置を決定した。同委では昨秋より、資源エネルギー庁による運転期間見直しに係る検討を見据え、高経年化プラントの安全規制に関する新たな制度設計を議論。去る2月13日の臨時会合で、新制度の概要および関連法改正案について決定した。新制度は、運転期間の規定にかかわらず、運転開始から30年を超える際、事業者に対し、10年以内ごとに、安全上重要な機器類の劣化を管理するための「長期施設管理計画」(仮称)の策定を義務付け、認可を受けなければ運転延長できないというもの。一方、資源エネルギー庁では昨年末、「現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、一定の停止期間(東日本大震災以降の法制度の変更など、事業者が予見しがたい事由によるもの)に限り、追加的な延長を認める」(いわゆる「時計を止める」)との方向性を示している。規制委員会が新設する検討チームは、プラント審査を担当する杉山智之委員を中心に、原子力規制庁の職員らで構成。具体的な検討スケジュールについては示されていないが、原則、一般公開のもと、事業者からのヒアリングも行いながら議論していく。15日の会合後の記者会見で、山中伸介委員長は、同検討チームの始動に当たり、「まずは劣化とはどのような物理的性質が重要なのかをきちんと整理し、運転期間にかかわらず、今までに取得されてきたデータ・評価手法がどのようなもので、何をどこまで評価すべきか、チーム内で共通認識を持つ」と強調。わかりやすい情報発信に努めていく考えも述べた。山中委員長は核燃料工学が専門だが、運転開始から60年以降の評価に関し、「個人の意見」として、「運転開始50年と60年でそれほど物理的特性が大きく変わるものではない」との見方を示した上で、関連法案の成立までにある程度の技術的大枠を固める考えを述べた。13日の会合で自然ハザードに係る審査担当の石渡明委員は、運転期間に関する規制委員会の見解を巡り、新制度および関連法改正案の決定に反対。続く15日の会合でも、検討チームの設置について、「必要あれば参加する」としたものの反対を表明した。山中委員長は、今後の技術的議論の中で、引き続き石渡委員に新制度に対する理解を求めていくとしている。
16 Feb 2023
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原子力委員会は2月14日、「原子力利用に関する基本的考え方」の改定案を取りまとめた。2017年の策定から5年ぶり。国に対し「総合的な視点に立ち、原子力エネルギーの利用のために必要な措置を講ずるべき」と提言している。同委による基本的考え方は2017年、「今後の原子力政策について政府として長期的な方向性を示唆する羅針盤となるもの」として閣議決定。5年を目途に見直すこととされており、2022年の初頭より、関係行政機関や有識者からのヒアリングなどを実施し、改定に向けて検討を進めてきた。改定案については、昨年末より1か月間のパブリックコメントを実施し、14日の定例会合で寄せられた意見を集約。近く原子力委員会として成案を正式決定し、閣議決定となる見通し。今回の改定案では、前回策定からの情勢変化として、カーボンニュートラルに向けた世界的な動きの加速化、電力安定供給を巡る状況変化、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う地政学リスクの深刻化、エネルギー安全保障に係る懸念を列記。加えて、原子力の積極的活用を表明する海外の動き、既存の原子力発電所の運転延長、新たな安全メカニズムを組み込んだ革新炉の新設などから、原子力利用に対し注目が集まっていることも述べている。その上で、「原子力利用の基本目標およびその重点的取組」(計9項目)として、「エネルギー安定供給やカーボンニュートラルに資する安全な原子力エネルギー利用を目指す」ことをあげた。先般、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の同時実現に向け閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」の中で「原子力の活用」として示された運転期間の延長については、「『運転期間は40年、延長を認める期間は20年』との制限を設けた上で、原子力規制委員会による厳格な安全審査が行われることを前提に、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めることとすべき」と明記。また、革新炉の開発・建設に向けた取組としては、革新軽水炉について、「他の革新炉よりも技術的に成熟し、既存の軽水炉の経験が活かしやすいため、比較的早い段階での市場展開が見込める」と期待。今後の革新炉導入に向けては、新たな安全技術の実証、投資に向けた事業環境整備、炉型を踏まえた適切な段階での規制整備、国内サプライチェーンの維持・強化などの課題を指摘している。この他、重点的取組としてあげた「放射線・ラジオアイソトープの利用の展開」の中で、医療用RIの国産化、核医学治療の普及に向け、2022年5月に原子力委員会が策定したアクションプランにも言及し、関係省庁、研究機関・大学、企業などが連携して取り組む必要性を強調。「原子力利用の基盤となる人材育成の強化」では、原子力分野のジェンダーバランス改善、原子力・放射線に係る次世代教育の充実化の重要性も述べている。*理事長メッセージ(2022年6月7日に行われたヒアリングでの発言内容)は こちら をご覧ください。
15 Feb 2023
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原子力規制委員会は2月13日に臨時会合を行い、高経年化した原子力発電プラントに関する安全規制について新たな制度案を取りまとめた。資源エネルギー庁において運転期間見直しの検討が進められていることを踏まえ、昨秋より議論してきたもの。運転期間の規定にかかわらず、運転開始から30年を超える際、事業者に対し、10年以内ごとに、安全上重要な機器類の劣化を管理するための「長期施設管理計画」(仮称)の策定を義務付け、認可を受けなければ運転できないという仕組み。〈規制委発表資料は こちら〉総合資源エネルギー調査会では昨年末、「現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、一定の停止期間(東日本大震災発生後の法制度の変更など、事業者が予見しがたい事由によるもの)に限り、追加的な延長を認める」(いわゆる、審査期間中は「時計を止める」)との方向性を示しており、2月10日閣議決定の「GX実現に向けた基本方針」にも盛り込まれている。今回の規制委による新制度案取りまとめにより、運転期間見直しに係る利用政策側と規制側、双方の考え方が出そろい、今後、2月下旬にも関連法案が閣議決定される見通し。規制委員会では、12月22日より新たな制度案に対するパブリックコメントを実施。去る2月8日の定例会合で約1,700件寄せられた提出意見に対する考え方を整理した上で、決定が諮られたが、石渡明委員の反対により継続審議となった。13日の臨時会合では、関連法改正案の条文も合わせて再度決定が諮られたが、同委員は運転期間のあり方に関して「規制委員会が意見を述べる事柄ではない」ことを明記した委員会見解(2020年7月)の決定プロセスに係る疑義などを主張し反対。他4名の委員長・委員による賛成多数で決定となった。石渡委員は、審査の長期化に伴う機器類の劣化進展や事業者との対応における公正さ維持に懸念を示したほか、運転開始から60年以降の規制に係る方針が不明確なことも指摘。今回、新制度案の取りまとめに際し事業者との意見交換を主導した杉山智之委員は、「規制の全体像に対する整理・説明が足りなかった」と、議論の進め方の拙速さを内省。原子炉安全工学専門でプラント審査を担当する立場から、今後、詳細な技術基準の策定を着実に進めていくとともに、審査期間の引き延ばしなど、審査の公正さに対する支障をきたさぬよう厳正な姿勢で臨む考えを示した。山中伸介委員長は、「運転期間がどうあれ、われわれの任務は安全規制をしっかり行っていくこと」と述べ、個々のプラントごとに厳正な技術的判断を行う規制委員会としての姿勢を改めて強調。運転開始から60年以降の規制に関しては、「今後、10年ごとの審査で精度を上げていく」とし、必要な物理的データの取得・評価で担保できるとの考えを示した。会合終了後の記者会見で、新制度案について、地質学が専門で自然ハザードに係る審査を担当している石渡委員の賛同が得られなかったことについては、「分野の違いが原因ではない」と明言。引き続き同委員に対し理解を求めていくとした。また、「運転期間は安全規制ではない」との考えを強調。今回、示された関連法改正案で、40年の運転期間および延長認可に関しては、原子炉等規制法から電気事業法(経済産業相の認可事項)に移管されている。
14 Feb 2023
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政府は2月10日、「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を閣議決定した。2022年2月以降のウクライナ情勢に伴いエネルギー安定供給の確保が世界的に大きな課題となっている中、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時に実現するべく、昨夏より「GX実行会議」や各省における審議会などで議論されてきたもの。今通常国会に関連法案が提出される運びだが、松野博一官房長官は同日の記者会見で、「今後10年間で150兆円を超える官民協調でのGX投資を実現する」と述べ、必要な予算措置・法整備に向け、国会での前向きな議論に期待を寄せた。同基本方針では、エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネルギーの推進再生可能エネルギーの主力電源化原子力の活用など――があげられている。昨年末から1か月間行われたパブリックコメントでは、3,000件を超す意見が寄せられた。当初の案文から、原子力に関しては「エネルギー基本計画を踏まえて活用」と修正がなされたほか、次世代革新炉への建て替えについて、廃炉を決定したサイトにおける「敷地内で」との文言が追記されている。原子力政策に係る一連の法案についても、2月下旬に国会提出となる見込み。同日は、最終処分関係閣僚会議も行われ、高レベル放射性廃棄物などの最終処分に関する基本方針の改定(案)が示され、パブリックコメントに付すこととなった。処分地選定に向けて、現在、北海道の寿都町・神恵内村のみで行われている文献調査の実施地域拡大を目指すことなどが盛り込まれている。松野官房長官は、「原子力に対する国民の大きな懸念の一つである『最終処分場が決まっていないこと』をしっかり認識した上で、政府が一丸となり責任を持って最終処分に向けて取り組んでいく」と、原子力のバックエンドに係る問題意識を改めて述べ、取組の具体化を図っていく考えを強調した。これを受け、原子力発電環境整備機構(NUMO)の近藤駿介理事長は、北海道両町村への謝意を表した上、さらに複数の自治体で文献調査が受け入れられるよう取組を強化していくとのコメントを発表した。*理事長メッセージは こちら をご覧ください。
10 Feb 2023
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黒﨑健氏©京都大学日本原子力学会では、政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」における原子力政策検討の動きをとらえ、次世代革新炉の開発・建設に関する専門的議論や報道関係者との対話を強化している。同学会の社会・環境部会では1月13日、総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループで座長を務めている黒﨑健氏(京都大学複合原子力科学研究所教授)を招き、マスメディアとの交流会を開催し意見交換を行った。黒﨑氏はまず、昨今の原子力開発を巡る国際動向を俯瞰。中国・ロシアにおける躍進ぶりをあげる一方、日本については、福島第一原子力発電所事故以降、新規建設の具体的プロジェクトが途絶したことによる「技術力の低下」を第一の問題点として指摘した。サプライチェーン脆弱化の課題にも触れ、同氏は、次世代革新炉開発検討の背景として、発電以外の利用も含めた「原子力の新しい価値の創造」を強調。2022年10~12月に開催された革新炉WG会合の議論について紹介した上で、次世代革新炉の開発・建設に係わる事業実現に向けて、「ニーズがありユーザーが現れること」を前提に、採算の見通し、規制の確立の必要性を指摘した。黒﨑氏は、その中で特に、採算見通しのための仕組みとして、EUタクソノミー((持続可能な経済活動を明示し、その活動が満たすべき条件をEU共通の規則として定めるもので、2022年2月に原子力を含めることに関する規則が採択された))、英国のRABモデル((規制当局が認可した投資を規制料金を通じて回収する仕組みで、英国では下水道や空港建設で実績がある))などを例示。「脱炭素の取組に原子力を盛り込むことが一つのポイントとなる」と述べた。昨年末に総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会が取りまとめた「今後の原子力政策の方向性と実現に向けたアクションプラン」(案)では、次世代革新炉の開発・建設に向けた方針として、「廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替え」と記載されている。こうしたリプレースの考え方に関して、黒﨑氏は、使用済燃料中間貯蔵施設の地元受入れも難航している現状に触れ、「立地問題は非常に重要だが、まだ突っ込んだ議論がされている段階ではない」などとした。また、高速炉に関しては、燃料に係る専門的立場から廃棄物の有害度低減技術を実用化する困難さを指摘。さらに、技術継承の視点からも「今がスタートするギリギリの時。後5年経過すると無理ではないか」と繰り返し強調し、次世代革新炉開発全般を通じ人材確保への危機感をあらわにした。原子力学会の原子力安全部会では昨秋、次世代革新炉の規制に関するセミナーも開催している。
08 Feb 2023
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政府は2月7日、福島の復興促進に向け、「特定帰還居住区域」(仮称)設定の制度創設を含む福島復興再生特別措置法の改正案を閣議決定した。〈復興庁発表資料は こちら〉2017年の同法改正により、帰還困難区域内に市町村長が住民・移住者の生活・地域経済再建の拠点となる「特定復興再生拠点区域」を設定できる制度が創設され、除染・インフラ整備などの一体的・効率的実施などにより、避難指示が一部解除されてきた。一方で、同拠点区域外の帰還困難区域では、避難指示解除の具体的な方針が示されておらず、住民が帰還を望みながらも依然として避難生活を余儀なくされている状況にある。政府では、2021年に「2020年代をかけて拠点区域外に帰還意向のある住民が帰還できる」よう、必要な箇所の除染を進めるという方針を決定した。今回、その方針を実施すべく、「特定復興再生拠点区域」外の帰還困難区域においても、避難指示解除による住民の帰還および帰還後の生活再建を目指す「特定帰還居住区域」を市町村長が設定できる制度を創設することとした。「特定帰還居住区域」は、帰還住民の日常生活に必要な宅地、道路、集会所、墓地などを含む範囲で、放射線量を一定基準以下に低減できる一体的な日常生活圏を構成しており、事故前の住居で生活の再建を図ることができる計画的かつ効率的な公共施設等の整備ができる「特定復興再生拠点区域」と一体的に復興再生できる――という要件で設定。市町村長が「特定帰還居住区域」の設定範囲、公共施設整備などの事項を含む「特定帰還居住区域復興再生計画」(仮称)を作成し国が認定する。認定を受けた計画に基づき、除染・インフラ整備の費用負担や代行などに関し国による特例措置の適用が図られることとなる。同制度の運用により、帰還困難区域における避難指示解除に向けた取組を着実に進め、帰還意向のある住民の帰還の実現、居住人口の回復を通じた自治体全体の復興を後押ししていく。
07 Feb 2023
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岸田文雄首相は2月2日夕刻、ミクロネシアのデイビッド・W・パニュエロ大統領と総理官邸で会談。両国間の協力関係のさらなる発展に向けたコミットメントを確認する中で、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の取扱いについても話し合った。〈外務省発表資料は こちら〉岸田首相は、「ALPS処理水の海洋放出は、環境および人の健康に害がないことを確保した上で実施されること、日本は引き続きIAEAのレビューを受けつつ、太平洋島しょ国・地域に対し、高い透明性をもって科学的根拠に基づく説明を誠実に行っていくこと」を説明。これに対し、パニュエロ大統領は、駐ミクロネシア日本大使によりALPS処理水に関して透明性ある説明がなされていることに謝意を表明。その上で、「以前に国連総会で述べたほどの恐れや懸念はもはや有していない。こうした説明によって、今や、われわれが共有する海洋資産および資源を傷つけないという日本の意図、技術力をより深く信頼している」として、ミクロネシア国内のALPS処理水に係る理解に向けた日本の取組を高く評価した。日本および大洋州の計19か国・地域の首脳が参加した第9回太平洋・島サミット(2021年7月、テレビ会議)で、菅義偉首相(当時)は、「国際基準を踏まえた規制基準を遵守してALPS処理水の海洋放出を行うこと、IAEAと緊密に協力し、科学的根拠に基づく説明を引き続き提供すること」を説明している。日本と太平洋島しょ国との首脳レベルの会談でALPS処理水について話し合われた最近の例としては、2022年9月の日・パラオ会談があり、その中で、パラオのスランゲル・S・ウィップス・Jr.大統領は、岸田首相による説明に対し、日本の「緊密な対話を継続する」との意向に歓迎の意を示した。ALPS処理水の海洋放出開始時期については、去る1月13日の関係閣僚会議で、「本年春から夏頃と見込む」とされ、政府では引き続きALPS処理水の性状や安全性に関し、関係省庁の連携による国際社会への戦略的な情報発信に努めている。外務省では、在京外交団向けテレビ会議説明会の他、昨年末にはユーロニュース社(フランスに拠点を置く欧州のニュース専門放送局)とタイアップし、専門家や福島の方々へのインタビューも交えた短編の解説番組を制作。ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、トルコ語、ペルシャ語、アラビア語など、多言語で全世界に放送されている。
03 Feb 2023
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会見を行う新潟県・花角知事(インターネット中継)新潟県が福島第一原子力発電所事故の検証のため設置している「健康と生活への影響に関する検証委員会」の健康分科会(座長=鈴木宏・新潟大学名誉教授)は、1月30日の会合で、最終報告書を概ね了承した。県では、福島第一原子力発電所事故を受け、「事故原因」、「事故が健康と生活に及ぼす影響」、「万一事故が起こった場合の安全な避難方法」の3つの検証を有識者による委員会で進めてきたが、これですべての検証に係る報告書が出そろうこととなる。花角英世知事は2月1日の定例記者会見で、約5年半にも及んだ同分科会における地道な議論に対し謝意を表明。3つの検証は、県が柏崎刈羽原子力発電所再稼働の是非に係る議論開始の前提としており、今後、「新潟県原子力発電所事故に関する検証総括委員会」で、各報告書の総括が行われる運びだが、花角知事は「これからどういう議論の進め方をするかは、最終的に検証が終わったところで議論を始めたい」とし、明確な方向性は示さなかった。健康分科会の最終報告書では、事故の複合災害としての検証結果として、「原発の『安全神話』を過去のものとし、『想定外』が常に起こることを前提とした対応が常に求められる時代を迎えたことが明確になった」と指摘。原子力事故対応に当たる専門家や行政担当者への基本的要望として、「原子力事故データが国民に帰属するとの認識の保持、情報の透明性の担保、情報の解析に基づく活動への説明責任の遂行」をあげた上で、通常時対応、事故発生時緊急対応、事故後の中長期的対応に大別し、計26項目を提言。原子力事故の環境や健康への影響に関する「ヘルスリテラシー」の向上や、事故後、10年ごとの節目などを捉え、国内外アカデミアと市民を含む第三者組織による原子力事故対応活動の検証を継続することも求めている。
01 Feb 2023
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高市早苗・内閣府特命担当大臣(科学技術政策他)は、1月31日の閣議後記者会見で、次世代革新炉の開発・建設に向けて人材育成の重要性を述べた。政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」が昨年末に取りまとめた「GX実現に向けた基本方針」では、「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む」とされている。高市大臣は、所管する原子力委員会が現在改定に向け検討を進めている「原子力利用に関する基本的考え方」の案文(12月23日~1月23日にパブリックコメント実施)で、「原子力の社会インフラ産業としての重要性、原子力発電や放射線利用を始めとしたキャリアパスが多様であることなどを、国や原子力関係事業者が発信していく」必要性が記載されていることに言及。原子力人材確保に関して、「複数機関の連携による教育基盤の底上げ、研究の重要性も指摘されている」とし、今後の次世代革新炉開発に向けて、「将来のビジョンを示せるよう、関係省庁が連携し産業界や大学と連携しながら、必要な人材確保に努めていきたい」と強調した。経済産業省および文部科学省では高速炉、高温ガス炉など、次世代革新炉開発に係る検討が進められており、内閣府(科学技術政策)においても現在、産業界からの参画も得た有識者会議で、核融合エネルギーの開発に向けた戦略策定について議論している。
31 Jan 2023
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原産協会の新井史朗理事長は1月27日、定例記者会見を行い、昨年末、政府が示した「GX実現に向けた基本方針」について、「非常に意義深い」と述べた。加えて、原子力の最大限活用を記載した同方針を支持するとともに、法制化などにより将来にわたってこれが維持・継続することを要望。次世代革新炉の開発・建設についても支持し、産業界からの投資を促す観点から、政府による支援、制度措置など、事業環境整備の早期具体化を要望した。〈関連の理事長メッセージは こちら〉2023年の原産協会の取組として、新井理事長は、原子力に対する理解促進福島復興支援人材確保・人材育成国際協力――の4点を列挙。「原子力発電の最大限活用には、原子力の優位性や、原子燃料サイクルの重要性、事業者の安全性追及への取組などについて、多くの方々に知ってもらうことが肝要」と、述べた上で、原子力が持つ価値の発信に取り組むとともに、立地地域との対話を通じて、理解活動に取り組んでいくことを強調した。福島復興支援に向けては、福島第一原子力発電所の廃炉作業の進捗、処理水の海洋放出などに対し、理解を深めてもらうよう、福島に関する情報発信、現地視察の実施、福島物産の紹介や販売協力を通じた情報提供提供に取り組むとしている。人材確保・人材育成については、企業説明会などを通じて、原子力が夢とやりがいのある魅力的な産業であることを、若い世代に知ってもらうとともに、産業界の原子力人材の確保を支援。「原子力人材育成ネットワーク」((産業界、学術界、地方自治体、行政庁からなる国内外の人材育成のプラットフォーム))を通じ、効率的、効果的、戦略的に人材育成の取組を進めていくとした。国際協力については、「高い技術と品質で定評のあるわが国の企業が海外のプロジェクトに参加できれば、技術力の維持・強化とともに、世界の原子力発電所の安全性向上に寄与できる」と述べ、わが国の原子力産業振興の一助となる情報発信やビジネス交流を行っていくとした。
30 Jan 2023
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原子力発電環境整備機構(NUMO)はこのほど、地層処分の若年層に対する関心喚起に向け、アニメーション動画「地層処分って?」を制作。1月26日より特設サイトにて公開している。アニメーション動画は、原子力発電って、ゴミが出るの?地下に埋めて大丈夫?放射線の影響はないの?日本に処分できる場所なんてあるの?海外ではどうしているの?――の全5話構成。各話3~5分程度の短編で、順番に見ることも、関心のあるものだけを見ることもできる。高レベル放射性廃棄物の地層処分は地表から300m以深の安定した岩盤で実施されるが、アニメーション動画の利点を活かし、地下断面図上に、実際に見ることのできない地震の揺れや地下水の流れを表現していることなどが特徴だ。各話とも大人と子供の対話形式で進行し、各話の終わりに自身でも探求することを促している。各国の地層処分の状況を紹介する第5話の終わりでは、「地層処分は世界共通の国レベルでの課題でもあり、今まで電気を使ってきた私たちが自分事として考える必要がある」と述べている。NUMOでは、若年層を含む幅広い層向けに、地層処分に関心を持ってもらう契機となるコンテンツを随時、制作・公表している。
27 Jan 2023
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原産協会は1月19日、日本工業倶楽部(東京・千代田区)で「原産シンポジウム」を開催。今回は、福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授の坪倉正治氏が「放射線の健康影響の基礎知識と原発事故後の健康課題」と題して講演を行うセミナー形式となり、会員企業・組織から約60名が参集した。坪倉氏は、もともと東京で血液内科医として医療に従事していたが、東日本大震災後は、福島県の相馬中央病院と南相馬市立総合病院を往復しながら、通常の診療に加え、ホールボディカウンターを用いた内部被ばく検査や住民への放射線影響に関する説明会など、被災地支援に取り組んできた。講演の中で、同氏は、発災後のおよそ12年間を振り返り、「どのような健康課題に住民は直面してきたか」を時系列的に整理。特に、避難後、施設に入所していた高齢者の死亡リスクが急増したことに関し、南相馬市内5施設の集計から「避難後3か月間以内で、実に25%の方々が亡くなった。これはすさまじい数だ」と指摘。仮設住宅への移住に伴うメンタル面・地域コミュニティの問題を始め、生活習慣病の増加、かかりつけ医との疎遠・がん検診の希薄化などを要因に掲げ、医療従事者の立場から「避難中に亡くなられる災害関連死を忘れてはならない」と強調した。発災から数年以降に関しては、介護サービスに係る地域間格差の他、偏見・デマの影響など、社会環境の変化に伴う要因にも言及。総じて、「健康問題を個人の意思や行動の帰結として捉えるのではなく、社会や周辺環境によって規定されている、と考えることが重要」と訴えかけた。さらに、福島第一原子力発電所事故に伴う放射線被ばくによる健康影響については、「リスク的にはゼロとはいえないが、健康問題をトータルでみた場合、中心となる放射線被ばくよりも、周辺の影響の方が爆発的に大きい」と強調。これまでにみられた被災地住民の健康状態悪化・回復のジグザグ傾向に関し、「半年から1年のタームで様々な環境変化が繰り返されてきた」ことを要因としてあげた上で、現状の行政支援システムから、避難指示解除以降の「戻りたくても戻れない人へのケア」の手薄さに懸念を示した。坪倉氏は、放射線の健康影響の基礎知識や福島県民の健康調査についても概説。同氏は、地元の学校に赴き生徒・教員に対し放射線に関する講義を行うなど、次世代層への普及・啓発に努めているが、「最近では震災を知らない子供たちが増えてきた。まず『なぜ学ぶのか』から説明しないといけない」と、課題をあげた上で、環境省が開設し若手中心で放射線の正確な情報発信に取り組む「ぐぐるプロジェクト」を課題解決に向けた一例として紹介した。福島第一原子力発電所事故による放射線影響の評価について、坪倉氏は、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の2020年報告書(2021年3月公表)を紹介。同報告書の主な結論として、「放射線被ばくが直接原因となるような将来的な健康影響はみられそうにない」ことなどをあげた。UNSCEARは科学的・中立的な立場から放射線の人・環境への影響調査・評価などを行う国際機関で、昨夏、2020年報告書の日本政府への手交のため来日した同組織のギリアン・ハース前議長は、取りまとめに当たった者として、「この報告書がもたらす主たる結論は堅固なもので、見通しうる将来に向け大きく変わるものではない」と、普遍性を強調している。
25 Jan 2023
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会見を行うIAEA・カルーソ氏(フォーリン・プレスセンターホームページより引用)福島第一原子力発電所のALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の取扱いに関する国際原子力機関(IAEA)の規制レビューチームがこのほど来日。2022年3月に続き2回目となる規制レビューを完了し、20日、IAEA原子力安全・核セキュリティ局調整官のグスタボ・カルーソ氏は、記者会見を行い、「前回のミッションで出たほとんどの問題について考慮されていることを確認できた」として、原子力規制委員会の審査や認可プロセスの妥当性を首肯した。1月16日からの日程を終了し、フォーリン・プレスセンターで記者会見に臨んだカルーソ氏は、規制委員会へのヒアリングや現地調査の結果を踏まえ「国際的な安全基準に合致した形での放出に関する規制のコミットメントの現れだ」と評価。日本政府の関係閣僚会議は1月13日に、「海洋放出設備工事の完了、工事後の規制委員会による使用前検査やIAEAの包括的報告書等を経て、具体的な海洋放出の時期は本年春から夏頃を見込む」としている。同氏は、海外メディア・在日大使館関係者からの質問に対し、国際安全基準の厳格さ・透明性を強調。「これから放出が行われるまでの検査活動にさらに注目していく」と述べ、今回のミッションに関する報告書を3か月以内に、本年半ばを目途にIAEAとしての包括的な報告書を公表することを表明した。ALPS処理水に関する理解醸成として、資源エネルギー庁では最近、国内向けのテレビCM放映・新聞広告掲載の他、韓国政府向けのテレビ会議説明会を実施。東京電力では、海外向けの処理水ポータルサイト(中国語・韓国語版)のリニューアルを昨年末に行っている。〈東京電力発表資料は こちら〉
23 Jan 2023
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包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)のロバート・フロイド準備委員会事務局長は1月19日、日本記者クラブで会見を行った。包括的核実験禁止条約(CTBT)は、すべての核兵器の実験的爆発または他の核爆発を禁止する核軍縮・核不拡散を進める上で、極めて重要な条約とされ、日本は1997年に批准し、2022年3月時点の批准国は172か国となっているものの、同条約の発効に必要な特定の44か国のうち、批准しているのは36か国にとどまっている。就任後、初の来日となり岸田文雄首相他との会談に臨んだフロイド事務局長は会見で、CTBTフレンズ((CTBT発効促進の機運を維持・強化する観点で2022年に日豪間で立ち上げられた非核兵器国によるグループ))を通じたCTBT未批准国への働きかけなど、これまでの日本政府による同条約発効の早期化に向けた取組を高く評価。「日本は核の攻撃を受けた唯一の国として、将来世代が核実験の脅威によって被害を被らないようにすること、核実験によって世界の安全保障が損なわれないようにすることに強いコミットを発揮している」と強調。条約の遵守状況の検証体制として維持・運営している国内10か所の監視施設および実験施設など、日本の技術面における貢献にも言及した。フロイド事務局長は、「核実験は1945年からCTBT署名開放の1996年までの間に2,000回を超えて行われたが、署名開放以降は12回以下にとどまっている」などと、CTBTの成果を示唆。最近1年間の批准国として、ガンビア、ツバル、ドミニカ、東ティモール、赤道ギニア、サントメ・プリンシペの6か国をあげた。一方で、昨今のウクライナ情勢にも鑑み「本当に不安をあおり立てる1年だった」と振り返り、「われわれは決して油断してはならない」と、核実験をなくす努力を怠らないことを改めて強調。北朝鮮の核開発問題に関して問われたのに対し、「2018年4月に北朝鮮は一時的に核実験を中止すると約束した。是非その約束を長期化して欲しい」として、同国によるCTBTへの署名がなされることを切望した。
20 Jan 2023
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財務省は1月19日、2022年の貿易統計(速報)を発表した。輸出額は98兆1,860億円で対前年比18.2%増、輸入額は118兆1,573億円で同39.2%増。その結果、貿易収支がマイナス19兆9,713億円(対前年比およそ10倍)と、過去最大の赤字額となったことに関し、松野博一官房長官は、同日の記者会見で、鉱物性燃料(石炭、石油、LNGなど)の輸入額増による主要因に言及した上で、「輸出を通じた成長は企業にとっても日本経済にとっても引き続き重要であり、しっかり支援していく」と述べ、所要の予算措置を図るとともに今後の動向を注視していく姿勢を示した。鉱物性燃料輸入額は、対前年比96.8%増の33兆4,755億円に上り、他の品目を大きく凌駕。中でも石炭は同178.1%増の顕著な上昇となっている。〈財務省発表資料は こちら〉2022年は、2月にロシアによるウクライナ侵攻が起こって以降、世界的なエネルギー供給危機となり、日本もエネルギー価格の高騰に見舞われた。政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」が昨夏に示した「日本のエネルギーの安定供給の再構築」によると、今夏・来冬以降に目指す原子力発電プラント17基の稼働により、約1.6兆円の国富流出が回避できると試算されている。
19 Jan 2023
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資源エネルギー庁は、アンケート形式のウェブコンテンツ「もしエネルギーがこうなったら模試」(もし模試)を1月30日まで公開している。「東大クイズ王」としてテレビ番組に出演している伊沢拓司さんらが中心となって運営されるメディア「Quiz Knock」(クイズノック)とのコラボレーション。「もし模試」では、日本のエネルギーにまつわる様々な「もしもの可能性」をテーマに7問を「出題」。「受験者」は、「もし1週間エネルギー(電気、ガス、石油など)が使えなくなったとしたら、何が一番困るだろう?」、「もし日本のエネルギーを自分たちで供給するとしたら、どんな方法があるだろう?」、「もしあなたがカーボンニュートラルを推進する立場にあるとしたら、まずどんなことから取りかかる?」などの問いに対し、与えられた選択肢の中から自身の考えに最も近いものを回答。回答後は、「受験者」の回答傾向と各選択肢に関する解説を見ることができる。同コンテンツは1月13日から公開されているが、例えば、「もし日本社会が再生可能エネルギーだけをつかうようになったら、どんなことが起きるのだろう?」との問いに対しては、「温室効果ガス削減に寄与するが、安定供給と経済効率性が悪くなる」との回答が71.0%で最も多かった(1月18日16時時点)。これに対し、解説では、「完璧なエネルギーがない中で、再生可能エネルギー比率を上げながら、『安全性』、『安定供給』、『経済効率性』、『環境適合』の4つのバランスを見ながら多様なエネルギー源を組み合わせる必要がある」と、エネルギー需給における「S+3E」の重要性を説いている。「もし模試」では、大学生・大学院生の「受験者」に対し、抽選でJERA姉崎発電所の見学と伊沢拓司さんとともに未来のエネルギー問題を考えるワークショップへの招待も予定している。
18 Jan 2023
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原子力産業新聞が電力各社から入手したデータによると、2022年の国内原子力発電所の設備利用率は18.7%(対前年比3.4ポイント減)となった。年内、新規制基準をクリアし新たに再稼働したプラントはなく、現存の計36基のうち10基・995.6万kWが稼働。いずれもPWRである。2022年は四国電力伊方3号機と九州電力川内1号機が年間を通じて稼働。川内1号機の設備利用率は106.8%に達した。近年、テロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の整備に伴い停止しているプラントもあるが、2021年に国内初の40年超運転に入った関西電力美浜3号機は、2022年7月に同施設の運用を開始し、9月に本格運転に復帰。この他、関西電力大飯3、4号機、九州電力玄海3号機も12月までに特重施設の運用を開始し発電を再開している。現在、特重施設の設置工事を含む定期検査により停止している玄海4号機は、2023年2月に発電を再開する予定。新規制基準適合性審査に係る設置変更許可に至ったものの再稼働していないプラントは7基、同審査中のプラントは10基となっている。美浜3号機に続く40年超運転が見込まれる関西電力高浜1、2号機は、それぞれ2023年6、7月に本格運転に復帰する見通し。2021年9月に設置変更許可に至った中国電力島根2号機については、2022年6月に島根県知事が再稼働に関し同意を表明している。*各原子力発電プラントの2022年運転実績(2022年12月分を併記)は こちら をご覧下さい。
17 Jan 2023
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西村康稔経済産業相は1月5~9日、米国を訪問。日本がG7議長国を務める年の幕開けに際し、「様々な通商・国際経済アジェンダについて、日本が議論をリードしていく必要がある」との考えのもと、ジェニファー・グランホルム・エネルギー省(DOE)長官ら、米国政府関係者と会談を行った。〈資源エネルギー庁発表資料は こちら〉西村経産相は1月9日、グランホルムDOE長官と会談し、世界のエネルギー安全保障を取り巻く状況を踏まえ、昨夏に立上げが合意された原子力協力を始めとする「日米クリーンエネルギー・エネルギーセキュリティ・イニシアティブ」(CEESI)の強化について議論し共同声明を発表。DOEは、先般、日本政府が取りまとめた「今後の原子力政策の方向性と行動指針案」の重要性に留意。経産省とDOEは、小型モジュール炉(SMR)を含む次世代革新炉の開発・建設など、原子力協力の機会をそれぞれの国内および第三国において開拓する意向を示した。また、既設炉を最大限活用するとともに、同志国の間でのウラン燃料を含む原子力燃料および原子力部品の強靭なサプライチェーン構築に向けて取り組むとした。外交筋の報道によると13日に予定される日米首脳会談で、こうしたエネルギー協力に係る方向性が確認される見通しだ。
12 Jan 2023
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日本エネルギー経済研究所は12月27日、2023年度のエネルギー展望を発表した。それによると、一次エネルギー国内供給は、2022年度に対前年度比0.7%の微減となるが、人の移動の増加に伴う輸送量回復に加え、鉄鋼や自動車の増産により2023年度には同0.9%増と、2年ぶりに増加に転じる見通し。また、エネルギー起源CO2排出量は、2022年度に9.75億トンと、2年ぶりに減少。2023年度には原子力の増加などにより、9.62億トンと、さらに減少するものの、2013年度比22.1%減で、「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減」(2021年4月に菅首相が表明)の目標には程遠く、「削減の進捗は遅れたまま」と懸念している。原子力発電については、新規制基準適合性審査などの進捗を踏まえ、再稼働が進むと想定。2022年度はテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の完成の遅れで3基の停止が長引き、計10基が平均8か月稼働して、発電電力量は対前年度比20.2%減の541億kWhに後退するも、2023年度は新たに5基が順次再稼働し、計15基が平均10か月稼働することで発電電力量は対前年度比85.1%増、1,002億kWhの大台に回復するとの見通し。政府は2022年8月に「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で示した「日本のエネルギーの安定供給の再構築」の中で、今夏以降、7基の新たな再稼働を目指す方針を打ち出している。今回のエネルギー展望では、特重施設完成の前倒しなどにより原子力発電所の再稼働がより進むシナリオも想定し、化石燃料輸入額やCO2排出量の削減につながる試算結果を示した上で、「個々のプラントに応じた適切な審査を通じた再稼働の円滑化がわが国の3E(安定供給、環境への適合、経済効率性)に資する」と述べている。
10 Jan 2023
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「原子力新年の集い」(原産協会主催)が1月6日、東京プリンスホテル(東京・港区)で開催され、会員企業・組織、国会議員、駐日大使館関係者ら、約500名が参集し、新しい年の幕開けを祝し親睦を深めた。年頭挨拶に立った原産協会の今井敬会長は、昨今の化石資源への投資低迷や新型コロナによる経済停滞からの回復に伴うエネルギー需給のひっ迫・価格高騰に加え、2022年2月からのウクライナ情勢がこの傾向にさらに拍車をかけたとして、「安定したエネルギー供給が各国の喫緊の課題となっている」と強調。「カーボンニュートラル」達成のためにも、「原子力を積極活用すべきであることは、国際的にはもやは論を俟たない段階にあり、これはわが国も同様」と述べた。2022年の国内における原子力政策の動きに関しては、「『GX実行会議』において、政府が主導となり、ようやく新たな一歩を踏み出せた」と高く評価。「今後、法制化などの国による環境整備が行われることを強く期待する」とした。また、今春開始予定の福島第一原子力発電所のALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の海洋放出に関しては、関係者に対し「確実な工事の遂行と、引き続きの理解活動の推進」を要望。しゅん工時期が延期となった六ヶ所再処理工場については、「確実なしゅん工に向け、関係者の総力を結集して対応してもらいたい」と期待を寄せた。続いて来賓挨拶に立った中谷真一・経済産業副大臣は、「わが国には原子力に関して世界に誇る優れた技術・人材、強固なサプライチェーンが存在するが、福島第一原子力発電所事故以降、具体的な建設が進まなかったこともあり、こうした強みが失われつつある」と憂慮。官民連携による海外プロジェクト参画の構想にも言及した上で、特に将来の人材育成について、政府として支援を図る考えを示すとともに、原子力産業界に対してもより注力するよう求めた。電気事業連合会の池辺和弘会長は、2023年初頭に際し、「日本のエネルギーを安定的に供給するシステムを再構築し実行に移す年になる」と展望。事業者として、「わが国のエネルギー安定供給と『2050年カーボンニュートラル』実現のため、様々な課題に挑戦し、社会の発展と変革に貢献していく」と抱負を述べた。一同は、島田太郎副会長(東芝社長)の音頭で祝杯を上げた。
06 Jan 2023
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日本原燃の増田尚宏社長は、年頭挨拶(1月4日)の中で、再処理、廃棄物管理、MOX燃料加工など、各事業について「今年最大」の目標を掲げるとともに、その達成への意欲を示し、「当社は、わが国のエネルギーの将来を担う極めて重要な存在」と、核燃料サイクル事業に対する使命感を改めて強調した。核燃料サイクル事業の要となる六ヶ所再処理工場については、2022年12月26日に、しゅん工時期を「2022年度上期」から「2024年度上期のできるだけ早期」に変更しており、増田社長は、「新しいしゅん工時期を達成するためには、設計・工事計画認可(設工認)の審査、検査が全体工程を握っている」として、しゅん工時期のさらなる前倒しを目指し協力会社とも一体となって全力で取り組んでいく決意を新たにした。六ヶ所再処理工場のしゅん工に向けて、日本原燃は2020年7月に原子力規制委員会より新規制基準適合性審査に係る事業変更許可を取得。これに続く第1回設工認が2022年12月21日に認可され、26日には第2回設工認審査を申請した。しゅん工への大詰めを迎え、引き続き規制委員会とのコミュニケーション、関係部署間の情報共有・連携を図り効率的な審査対応を行っていく。審査期間は全体で1年程度、認可後に実施する使用前事業者検査などの期間は4~7か月程度と見込んでいる。
06 Jan 2023
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韓国のNGO団体「The Fact and Science」が12月13日、福島第一原子力発電所を訪れ、廃炉作業の進捗やALPS処理水((トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水))の放出に向けた準備状況などを視察した。〈東京電力の資料は こちら〉同団体は、「事実と科学に基づく合理的な問題解決を通じた先進的な社会構築」を目指し、2018年に韓国内で設立されたネットワーク。前政権の脱原子力政策に対し、新聞広告、署名活動、セミナー開催、SNSなどを通じ、原子力や放射能に関する正しい情報発信を求めてきた。韓国の前政権による「福島第一原子力発電所の敷地に保管された汚染処理水は放出してはならない危険物質」という主張は、まだ多くの韓国人の脳裏に強く残っている。そのため、処理水がどのように管理されているか直接確認し、正確な情報を韓国政府、国会議員、韓国国民に伝えることを目的に、同団体ディレクターのパク・ギチョル氏(元韓国水力・原子力会社〈KHNP〉副社長)ら7名が福島第一原子力発電所を訪れた。一行は、1~4号機全景の他、原子炉建屋内の冷却に伴い発生する汚染水を浄化処理する多核種除去設備(ALPS)、ALPS処理水の海洋放出に係る設備の建設現場、測定・確認用タンクエリア、環境モニタリングの一環として行う海洋生物飼育試験の施設などを視察。視察後、「ALPS処理水の海洋放出については、まずは地元の方々の理解を得なければならない。大変なことだが、信頼を得られるよう願っている」とコメント。同NGOでは、今回の福島第一原子力発電所訪問に関する出版物を検討中とのこと。現場を訪れた所感として、「数千人もの人員が復旧のために黙々と働く姿はとても感動的だった」と述べた。ALPSで取り除くことのできないトリチウムに関し、韓国他、多くの国の原子力施設で排出されている事実に触れた上で、「韓国では海洋放出に反対する人々がまだ大勢いる。福島第一原子力発電所に対する歪んだ情報を正し、事実と科学に基づき原子力発電と放射能に対する誤解と恐怖を払拭していきたい」と意気込みを語った。
26 Dec 2022
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