【国内】▽12日 関西電力が美浜3号機など40年超プラント3基の運転方針を発表▽13日 総合エネ調が「2050年カーボンニュートラル」を見据えたエネルギーミックスに関するシナリオ分析で議論を開始▽14日 原子力学会が福島第一原子力発電所事故調査で「10年目のフォローアップ」を発表▽18日 外務省が国際機関の邦人増強に向けIAEAと共催で初のオンラインWS開催(~20日)▽20日 G7気候・環境相会合がテレビ会議で開催、梶山経産相「あらゆるエネルギー源、技術」をバランスよく活用する重要性に言及(~21日)▽23日 環境省が福島の除染に伴う土壌再生利用・中間貯蔵の理解に向け「対話フォーラム」を都内で開催▽25日 総合エネ調が今夏・今冬の電力需給対策につき議論、高経年火力の維持が課題に▽25日 経産相と原子力事業者による「使用済燃料対策推進協議会」が開催、核燃料サイクルの進展を見据え▽25日 小泉環境相が女川を対象に原子力総合防災訓練の今年度実施(昨年度は見送り)を発表▽27日 IHIが米ニュースケール社SMR事業への参画を表明▽27日 東京電力が福島第一処理水の海洋放出実施に向け、測定・評価用「サンプルタンク群」の整備計画を発表▽28日 東大宇宙線研「ハイパーカミオカンデ」(岐阜県)着工記念式典が開催、2027年の実験開始を目指す▽31日 福島第一処理水取扱いに係る基本方針決定を受け政府WGが福島で初会合開催、漁連他から意見を聴取 【海外】▽ 4日 米規制委、サリー発電所の2基でそれぞれ80年間、2回目の運転期間延長を承認▽5日 OECD/NEAがTMI、チェルノブイリ、福島第一の3つの原子力発電所における過酷事故後の長期管理と対応行動で報告書を公表▽6日 米TVA、ケイロス社製の先進的原子炉「フッ化物塩冷却高温炉(FHR)」の実証炉建設支援を公表 ▽7日 フィンランドで使用済燃料最終処分場を建設中のポシバ社が、処分用坑道の掘削を開始▽ 11日 中国で50基目の商業炉、田湾6号機を初めて送電網に接続▽ 11日 英政府がSMRを含む先進的原子炉設計を設計認証審査の対象に、申請ガイダンスを公表▽ 12日 ポーランド政府と国立原研のHTGRが基本設計開発段階に▽ 17日 英ロールス・ロイス社、今秋の設計審査開始に向け同社製SMRの出力を47万kWに増強▽ 17日 2021年10月に初併入予定の オルキルオト3号機、建設プロジェクトの完了条件で事業者と工事を請け負った企業連合が合意▽19日 中国でロシア企業が建設する田湾7、8号機と徐大堡3、4号機で起工式を開催▽19日 米エネ省、先進的原子炉から出る使用済燃料の削減プログラムに4,000万ドル拠出と発表▽ 20日 カナダ安全委が実施中の米社製SMRの許認可手続きが技術審査段階に▽20日 IAEAが「原子力と再エネのハイブリッド・システム」について技術評価のために新しい「協働研究プロジェクト(CRP)」を実施と発表▽24日 英政府、サイズウェルC発電所を使ったCO2回収システムの開発に補助金提供と発表▽25日 英モルテックス社製のSMR、カナダの許認可申請前ベンダー審査で第1段階をクリア▽26日 IEAがスペインのエネ政策レビュー:「全廃予定の原子力発電所の活用がCO2排出目標達成に有効」と勧告▽26日 米ニュースケール社、米国内でのSMR建設の可能性評価で新たにワシントン州の公営電力と覚書を締結▽28日 米バイデン政権初の予算教書、過去最高額の原子力予算を計上▽28日 米仏のエネ相 温暖化対策の共同声明で先進的原子力技術の利用等で協力する方針を表明▽31日 スウェーデンのバッテンフォール社、エストニアでSMR導入を計画するフェルミ社への出資を決定 ☆過去の運転実績
11 Jun 2021
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意見交換に臨む規制委幹部(上)とオンライン出席の電力・ATENA(インターネット中継)原子力規制委員会と電力会社の原子力部門責任者らによる意見交換会が6月10日に行われた。規制委員会からは更田豊志委員長、山中伸介委員、伴信彦委員(進行役)が、電力側からは中部電力、東京電力、関西電力、九州電力の本部長クラスの他、原子力エネルギー協議会(ATENA)の門上英理事長らが出席。東京電力の核物質防護事案を踏まえた取組や原子力発電プラントの長期サイクル運転に係る技術的課題などについて意見が交わされた。〈配布資料は こちら〉東京電力柏崎刈羽原子力発電所におけるIDカード不正使用、核物質防護機能の一部喪失が発覚し、規制委員会は4月に是正措置命令を発出。東京電力では、外部専門家による評価・指導を受けるとともに、他業界・海外の良好事例も積極的に取り入れるなど、核物質防護業務の抜本的改善を図ることとし、6月2日には社外委員のみで構成される「核物質防護に関する独立検証委員会」を設置した。意見交換会では、電力会社を代表し、関西電力原子力事業本部長の松村孝夫氏が東京電力の核物質防護事案を踏まえた業界全体の取組について説明。同氏は、事業者による核物質防護関連業務について、「『関連情報を他社に開示できない・他社に聞けない』との思いから、自社の閉じた世界で業務が実施されてきた」などと、一連の事案の背景にあった要因を述べた上で、改善に向けて、徹底した情報管理のもと、事業者間相互レビューを各発電所で順次実施し、12月を目途に完了させるとした。中部電力原子力本部長の伊原一郎氏も、発電所長を務めた経験を踏まえ、「『井の中の蛙』だった。もう一度足元から見直していきたい」として、安全性向上の取組と同様にCAP(通常と異なる状態を低いしきい値で確実に収集するプロセス)も取り入れて改善に努めていく考えを強調。規制委員会では6月9日の定例会合で核物質防護に係る記録文書の保存期間について議論されたところだが、更田委員長は、電力からの説明を受け、「われわれにも学ぶべきこと、反省事項があった」と自省。また、長期サイクル運転導入については、松村氏とともに、ATENAの玉川宏一理事も取組状況を説明。原子力発電プラントの運転サイクル(定期検査の間隔)は、法令上、13か月以内、18か月以内、24か月以内の3区分が規定されており、現在、国内のプラントはすべて13か月以内となっているが、海外では18か月以上の運転サイクル導入も進められている。ATENAでは、米国の80年運転の取組や国内外の経験劣化事象に関する最新知見を踏まえながら、継続的に技術課題の整理を進めており、2021年度下期を目途に技術レポートを取りまとめた上で、規制委と技術的な意見交換を行いたいとした。更田委員長は、炉心の安全解析の要否などに触れながら、意見交換に前向きな姿勢を示した。ATENAによる技術的取組に対し、プラント審査を担当する山中委員は検査の高度化に関して、更田委員長はプルサーマル発電の進展を見据えMOX燃料の経年化に係る検討をそれぞれ要望。個別の課題に関しては今後、実務レベルの意見交換会で議論されることとなる。
10 Jun 2021
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2021年版の「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」が6月8日、閣議決定された。会見を行う小泉環境相、白書の若者啓発に向け漫画の活用にも言及(環境省ホームページより引用)今回の白書は、「2050年カーボンニュートラルに向けた経済社会のリデザイン(再設計)」をテーマに、2020年度に環境省が講じた施策として、「脱炭素社会・環境経済・分散型社会への3つの移行」などを紹介。小泉進次郎環境相は、同日の閣議後記者会見で、「特にこれから気候変動の深刻化から逃れられない時代を生きていく若い世代に読んでもらえれば」と述べ、白書を通じ若者から政策課題に対する様々な意見・提案が寄せられることを期待した。また、白書では、「地域や私たちが始める持続的な社会づくり」に係る施策として、ライフスタイルの変革についても取り上げており、衣・食・住において自ら実践できる環境保全の取組事例を紹介したコラムを設けている。これに関し、豆類由来の「代替肉」を用いたハンバーガーの製造・流通など、食分野の新たな技術・ビジネス「フードテック」の事例について、小泉環境相は、福島県のふたば未来学園で実施されている動物性タンパク質を一切使わない給食日「ベジタブルマンデー」の取組に触れながら、「健康によいものを食べたいが、できるだけ環境負荷を減らして生活したいという人もいる」と、食の選択肢拡大を通じた持続的な社会づくりの意義を語った。東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の関連では、2021年3月に発災から10年が経過したのを節目ととらえ、「東日本大震災から10年を迎えた被災地の復興と環境再生の取組」を章立て。放射性物質による汚染からの環境再生・復興に向けたこれまでの取組を概観しており、2021年4月決定の福島第一原子力発電所の処理水取扱いに関する政府基本方針を受けた海域モニタリングの強化・拡充についても述べている。除染の実施状況に関しては、農業・観光再開の事例もコラムで紹介。富岡町の「夜の森の桜並木」や浪江町の地域ぐるみによる稲作再開、森林除染により観光スポットとしての人気を取り戻した田村市の「行司ヶ滝」などを取り上げている。
09 Jun 2021
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福島第一原子力発電所で発生する処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向け、関係閣僚会議のもとに置かれたワーキンググループが6月7日、宮城県内(県庁)で第2回会合を開催。同WGは5月31日に福島県内で初会合が行われたが、今回は、宮城県設置の処理水取扱いに関する連携会議との併催として、村井嘉浩知事(連携会議座長)他、同連携会議を構成する県産業団体・自治体関係者が意見を述べ、WG座長の江島潔経済産業副大臣らが質疑に応じた。宮城県・村井知事開会に際し挨拶に立った村井知事は、「インフラ復旧などのハード面については多くの被災地で取組が完了した一方で、被災者への心のケアや移転先でのコミュニティ形成の問題、産業の再生支援など、ソフト面については今後も中長期的な取組が必要となっている」と、東日本大震災発生から10年を経過した県内復興・再生の現状を概括。その上で、処理水の海洋放出に関し、「震災から立ち直りつつある本県の水産業を始め、多くの産業に多大な影響をもたらすもの」などと懸念を述べ、地元の意見を十分に受け止めるよう要望した。宮城県水産林政部長の佐藤靖氏は、県水産業界としての「海洋放出には反対」とする大勢の意見とともに、他の処理水処分方策の再検討、今後の風評抑制・賠償に係る具体策の提示、諸外国による輸入規制の撤廃に向けた働きかけなど、国や東京電力に対する要望事項を説明。宮城県水産物流通対策協・布施副会長県漁業協同組合代表理事組合長の寺沢春彦氏は、ホヤの輸入規制継続など、水産物への風評が根強く残る現状から、「放出するのであれば禁輸措置の解除まで待つなど、目標を定め強い信念をもった対応を求める」と訴え、県水産物流通対策協議会副会長の布施三郎氏は、トリチウム除去技術の実用化の見通しについて尋ねたほか、若手水産業者からも意見を聴取するよう求めた。江島経産副大臣これに対し、江島経産副大臣は、水産行政に対する思い入れを国政入りする前の山口県下関市長在任時に抱いたとし、ホヤ漁の乗船体験にも触れた上で、「宮城県の漁業が次世代に継承されるよう支援していく」と強調。トリチウム除去については、「専門家による評価から現時点で実用化できる方法は確立していないとの結論に至ったが、常に方針を見直せる体制をとっている」と、引き続き技術動向を注視していくものと説明した。また、観光産業の立場から県ホテル旅館生活衛生同業組合理事長の佐藤勘三郎氏はまず、昨今の新型コロナウイルス拡大に伴う集客の急激な落ち込みを踏まえ、2年後目途の海洋放出開始時期におけるホテル・旅館の経営状況に悲観的な見方を示した。その上で、処理水の処分方策に係るこれまでの説明を振り返り、「会話になっておらず、これでは絶対に風評被害はなくならない。まず信頼感を熟成すべき」と厳しく指摘。トリチウムの自然界への排出に係る情報発信に関し、県議会副議長の外崎浩子氏は、「宮城県は水産業を生業としている。『他国でも行われているから問題ない』という説明は、どこでも通用するものではない」などと述べ、慎重な対応を求めた。さらに、県市長会副会長で気仙沼市長の菅原茂氏は、現在放映中の同市を舞台とした連続ドラマ「おかえりモネ」に描かれる地元漁港のシーンをあげ、「被災地の漁業者たちは復興に向けた手応えを感じつつある」とした上で、国・東京電力に対し最大限の風評被害対策を切望。東京電力・髙原福島復興本社代表横山信一復興副大臣は、国際機関や地元とも連携した正確かつ臨機応変な情報発信の重要性を強調し、SNSやインフルエンサーも活用した「プッシュ型」の取組を進めていく考えを述べた。茨城県選出の衆議院議員である葉梨康弘農林水産副大臣はまず、最近の霞ヶ浦産天然ナマズの出荷解禁を紹介。農水産物の輸入規制撤廃に向け、農水省に7月に新設される「輸出・国際局」を通じ取り組んでいくとした。オブザーバーとして出席した東京電力福島復興本社代表の髙原一嘉氏は、「事故の当事者としての責任を自覚し、信頼回復に全力を挙げて取り組んでいく」との決意を示した上で、処理水の安全性に関する国内外への情報発信や風評影響の抑制に努めていく考えを述べた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
08 Jun 2021
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エネルギー白書2021(写真は報道配布用)2020年度の「エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2021)が6月4日、閣議決定された。今回の白書では、「エネルギーを巡る状況と主な対策」として、(1)福島復興の進捗、(2)2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と取組、(3)エネルギーセキュリティの変容――についてまとめている。例年、冒頭に取り上げている福島の復興については、「東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から10年が経過した」と、2020年度末を一つの節目ととらえ、これまでの廃炉に向けた取組と復興の進捗状況を記述。原子力災害からの復興がエネルギー政策を進める上での原点との認識を改めて示している。2020年度は、10月の菅首相による「2050年カーボンニュートラル」実現表明を受け、12月には14の重点産業分野(洋上風力、燃料アンモニア、水素、原子力、自動車・蓄電池、船舶、食料・農林水産、半導体・情報通信、物流・人流・土木インフラ、航空機、カーボンリサイクル、住宅・建造物/次世代型太陽光、資源循環、ライフスタイル)ごとに実行計画を示したグリーン成長戦略が策定された。今回の白書では、各分野の産業・技術競争力に関する主要国比較を紹介。日本、米国、中国、韓国、台湾、英国、ドイツ、フランスの8か国・地域を対象に、過去10年間における各分野の特許数、特許の注目度などを定量化した指標(トータルパテントアセット)をもとに評価を行い、順位表をまとめている。それによると、日本は、水素、自動車・蓄電池、半導体・情報通信、食料・農林水産の4分野で首位となったが、原子力では、米国(指標339,254)、中国(同220,847)、英国(同66,596)に次いで4位(同66,092)だった。これに関し、日本は原子力関連機器の製造分野での競争力が高いが、評価対象とした小型モジュール炉(SMR)や高温ガス炉などの次世代革新炉や核融合では、米国・中国が特許出願数の他、特許の注目度・脅威度も高いと分析している。各国のエネルギーセキュリティ定量評価(資源エネルギー庁発表資料より引用)また、白書では、エネルギーセキュリティに関し、エネルギー自給率、化石燃料の安定供給確保、蓄電能力、サイバーセキュリティ対策他、9つの指標による諸外国比較も紹介。随所にコラムを設け、昨冬の電力需給ひっ迫に係る要因・対策、2020年8月の米国カリフォルニア州大規模停電の経緯などを解説し、教訓を述べている。
04 Jun 2021
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がん治療に用いられる重粒子線を始めとした量子ビームの学術ネットワーク形成を目指す「日本量子医科学会」の設立記念シンポジウムが6月2日、オンラインで開催された。同学会の理事長は、群馬大学名誉教授で量子科学技術研究開発機構の量子生命・医学部門長も務める中野隆史氏。日本量子医科学会・中野理事長(同学会ホームページより引用)開会に際し挨拶に立った中野理事長は、世界初の重粒子線治療専用施設とされる量研機構「HIMAC」の四半世紀を超す実績を振り返り、その共同利用研究ネットワークを発展させるものとして、新たな学会の設立に至った経緯を紹介。同氏は、がん治療だけでなく、育種や材料改質など、多岐にわたる量子ビーム科学研究で得られた成果の普及とともに、「人類が宇宙空間に本格的に進出する際、粒子線等の人体影響について包括的な理解が必要となってくる」と、将来を展望した上で、「2年程度で学会の基礎固めを図る。長期的には基礎から臨床、社会実装まで、裾野の広い研究領域をカバーする学会に成長させたい」と、抱負を述べた。量研機構・平野理事長(オンライン中継)また、来賓として招かれた量研機構の平野俊夫理事長は、「がんはソクラテスの時代から今なお人類が対峙する克服すべき大きな課題だ。『人生100年時代』を迎え、単に病気を治す医学ではなくQOL(生活の質)を重視した医療が求められる」として、がん治療において「HIMAC」の果たしてきた役割、次世代の高性能小型治療装置「量子メス」開発の必要性を強調。これまでも学際的取組の重要性を訴えてきた同氏は、「昨今の新型コロナウイルスなど、21世紀は新たに複雑な問題が生じている。社会が直面する多様な課題を解決し、よりよい社会を築いていくため、学術の発展と普及を担う学会には深い専門性の追求と同時に、専門分野を越えた競争が求められている」とも述べ、新学会の分野横断的な活動を通じ研究成果の社会還元が拡大・加速することを期待した。今回のシンポジウムでは、群馬大学重粒子線医学センター教授の髙橋昭久氏、筑波大学医学医療系教授の櫻井英幸氏、量研機構QST病院長の辻比呂志氏らが講演。無重力環境を模擬し生体への放射線影響を解析する「3Dクリノスタット」(群馬大・髙橋氏発表資料より引用)「宇宙を見据えた量子医科学」と題し講演を行った髙橋氏は、米国による2030年代の火星有人着陸を目指す国際宇宙探査計画「アルテミス」など、国際間の宇宙開発競争や宇宙観光構想に触れ、「人類の宇宙進出はさらにスピードアップする」と展望した。宇宙惑星居住科学連合の代表を務める同氏は、火星探査に関し、「到達するには地球との距離が近い時でも半年かかり、次に両惑星が近付くタイミングとなる1年半後まで滞在することとなる。最短でも火星への旅には2年半ほどを要し、被ばくする宇宙放射線の総線量は1,000mSv程度と見積もられている」などと、宇宙放射線による人体影響を懸念。放射線と無重力環境による複合影響を一課題ととらえ、群馬大が有する重粒子線がん治療技術を応用した「3Dクリノスタット同期照射システム」など、地上模擬実験を行う機器の開発状況を披露した。櫻井氏は小児・若年層のがんに対する陽子線治療(水素の原子核を加速させ照射するもので国内17施設で実施)のガイドライン整備、費用対効果、他の粒子線治療との成績比較などを紹介。「HIMAC」の治療実績、高度化に向けた技術導入の経緯を説明した辻氏は、米国バイデン大統領が2016年の副大統領時に行った演説中、粒子線治療の研究推進に言及していることを振り返り、「日本発の医療技術というイニシアチブを堅持せねばならない」と、今後の重粒子線治療技術の世界展開に意気込みを示した。
03 Jun 2021
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福島第一原子力発電所で発生する処理水の処分に向けた政府による基本方針決定を受け、風評被害対策などの諸課題について整理するワーキンググループが5月31日、福島県内2か所(福島市、いわき市)で初会合を行い、鈴木正晃副知事他、地元の産業団体より意見を聴取した。基本方針では、処分方法として「海洋放出を選択」、東京電力に対し「2年程度後を目途に福島第一原子力発電所の敷地から放出するための準備を求める」とした上で、風評被害対策については、政府が前面に立ち一丸となって、(1)国民・国際社会の理解の醸成、(2)生産・加工・流通・消費対策、(3)損害賠償――に取り組むとされている。同基本方針の着実な実行に向け、関係閣僚会議が新たに設置されたが、同WGでは今後他県でもヒアリングを実施し、調査・議論の結果を取りまとめた上、同会議が年内を目途に策定する中長期的な「行動計画」に資する運び。江島経産副大臣初会合には、WG座長を務める江島潔経済産業副大臣の他、政府関係者として、横山信一復興副大臣、葉梨康弘農林水産副大臣、神谷昇環境大臣政務官ら、東京電力からは小野明・福島第一廃炉推進カンパニープレジデントらが出席。開催に当たり、江島副大臣は、「現場の生の声を一つ一つ受け止め、関係省庁がそれぞれの課題に取り組むことを通じ、次に講ずべき対策に反映させていきたい」と述べた。鈴木福島県副知事福島市内の会場では、まず鈴木副知事が意見陳述に立ち、処理水処分の基本方針決定に関し、「県民の間にはこれまで10年にわたり積み重ねてきた復興や風評払拭に向けた努力の成果が水泡に帰する不安感が増大している」と、懸念を表明。その上で、風評被害対策について、「回復傾向にあった農林水産業の県産品価格や担い手に再度下落・減少が生じないよう、観光誘客に影響が及ばないよう、将来にわたり安心して事業を継続できるよう、県全域を対象とした具体的な対策を被害が顕在化する前に講じてもらいたい」と切望した。この他、福島県商工会議所連合会、福島県農業協同組合中央会、福島県水産市場連合会、福島県旅行業協会が意見を陳述。各者ともそれぞれの立場から風評被害対策の拡充を要望・提案したが、県水産市場連会長の石本朗氏は、卸売業者として「世界一の安全・安心」を自負しつつも県産水産物が置かれた厳しい流通状況を訴え、「一番の問題は『消費者の心』の部分にある」と、風評の本質に対する十分な理解を国に求めた。野﨑福島県漁連会長WG会場はいわき市内に移り、続いて福島県漁業協同組合連合会会長の野﨑哲氏、福島県水産加工業連合会代表の小野利仁氏より意見を聴取。両氏とも処理水の海洋放出に反対の立場を明示した上で、野﨑氏は今回の基本方針決定に至ったプロセスに関し「何とも割り切れないものがある」と疑問を呈したほか、小野氏は最近のクロソイからの放射性物質検出を受けた消費者への問合せ対応を振り返り、情報発信の工夫とともに、「信なくば立たず」として根底に信頼関係が必要なことなどを訴えた。福島県の漁業再生に関し、葉梨農水副大臣は、2020年の沿岸漁業・海面養殖業の水揚量が2010年比の18%にも満たない現状をあげ、「大変深刻。本格的な回復・再生に向けもっと力を入れていかねばならない」と強調。横山復興副大臣は、福島県産品に係る理解活動の一例として、1月に開催された県産魚介類「常磐もの」を使った全国オンライン料理教室を紹介するなどした。地元産業団体からは、風評被害対策の他、廃炉人材の確保に向け原子力教育の充実化を求める意見、最近の東京電力における核セキュリティ上の疑義に対する危惧の声もあがるとともに、漁業・水産加工業の後継者問題に関する質疑応答もあった。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
01 Jun 2021
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日本原子力産業協会の新井史朗理事長は5月28日、記者会見を行い、同日刊行した「世界の原子力発電開発の動向 2021年版」について紹介した。原産協会が毎年刊行しているもので、世界の電力会社などに行ったアンケートをもとに、2021年1月1日現在のデータを集計している。各国で運転中、建設中、計画中の原子力発電所の諸元とともに、運転期間延長、使用済燃料貯蔵、廃止措置に関する調査結果の他、革新的原子力技術の一つとして関心が高まる小型モジュール炉(SMR)の特集記事も掲載。同2021年版によると、2020年中に中国とロシアで新たに3基・118.8万kWが営業運転を開始し、世界で運転中の原子力発電所は計434基・4億788.2万kW。中国とトルコで5基・542.4万kW分が着工し、建設中のプラントは計59基・6,508.7万kW。今後新設される予定の計画中のプラントは計82基・9,421.6万kWとなった。2020年のトピックスとしては、5月に世界初の海上浮揚式原子力発電所「アカデミック・ロモノソフ」(電気出力3.5万kW×2基搭載、タグボートで曳航・係留)が営業運転を開始したことがあげられ、新井理事長は「SMR時代の幕開け」と期待。また、9年ぶりに新規原子力発電導入国における初号機運転の動きがあり、UAEで8月にバラカ1号機、ベラルーシで11月にベラルシアン1号機が送電開始し、新たに原子力発電国となった。さらに、米国では、3月にビーチボトム2、3号機の80年運転が承認され、最近では2021年5月にサリー1、2号機もこれに続くなど、長期運転に向けた動きが顕著となっている。この他、新井理事長は、4月14日に発表した理事長メッセージ「福島第一の多核種除去設備等処理水の処分方針決定に寄せて」について解説するとともに、現在検討が進められているエネルギー基本計画の見直しに向けた考え方を、同日開催の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会での発表資料をもとに説明。「わが国は2050年カーボンニュートラルの実現に加え、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度から46%削減することを内外に表明した。その目標達成に原子力の活用は不可欠だが、その役割を果たすためには、再稼働を着実に進めることに加え、設備利用率の向上や運転期間延長が必要。2050年やその先を見据えると、今から新増設・リプレースの明確な方針を打ち出すべき」とした。さらに、原子力発電所の長期停止が技術力の維持・継承に及ぼす影響も懸念し、「エネルギー基本計画の中で、将来にわたる原子力利用をしっかりと位置付けてもらいたい」と要望した。記者からは、関西電力美浜3号機の40年超運転を始めとする国内原子力発電所の長期運転、原子力人材育成の現実的方策などに関する質問があり、新井理事長は、それぞれ原子力エネルギー協議会(ATENA)による技術的支援、原産協会による合同企業説明会「原子力産業セミナー」や全国の大学・高専を対象とした「出前講座」の開催など、産業界の取り組み状況を説明した。
31 May 2021
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東京電力は5月27日、福島第一原子力発電所廃止措置の進捗状況を発表した。同社は4月に、汚染水の浄化に伴い発生する処理水の処分方法として「海洋放出を選択する」との政府の基本方針が示されたのを受け、2年後を目途に海洋放出を開始するため、必要な設備の設計・運用の具体的検討に向けて、トリチウムの希釈評価やタンクの取扱いなどに関する当面の前提条件を整理。今回、「放出設備」の一つとなる「サンプルタンク群」を約3万㎥分用意する考えを明らかにした。放出する前に行う放射能濃度の測定・評価は核種により時間を要するものもあるため、「受入」「測定・評価」「放出」の3つの役割を持つ「サンプルタンク群」のそれぞれに、日々発生する処理水150㎥の2か月分となる約1万㎥ずつを割り当て、これらを6か月周期でローテーションしながら効率的に運用。測定・評価の円滑な実施を図る。「サンプルタンク群」は、処理水を再浄化する可能性も考慮し、多核種除去設備(ALPS)近傍の既存タンク群(K4タンク群)を、「放出設備」として用途を変更する形で起用。処理水の保管用タンクと異なり、循環用とかくはん用のポンプ、弁、試料採取用配管、電源、制御装置を追設するなど、改造を行う。K4タンク群の用途変更に伴う処理水保管容量約3万㎥分の受入れ先については、同容量のタンクを別途建設することで対応。合わせて、貯留されている処理水の減少に向け、汚染水発生量の低減、核種の測定・評価時間の短縮にも継続的に取り組んでいく。処理水の取扱いに関する政府の基本方針では、「新たな技術動向を注視し、現実的に実用可能な技術があれば積極的に取り入れていく」とされているが、東京電力は同日、第三者機関を活用したトリチウムの分離技術に関する公募を開始した。この他、2020年に内閣府が示した日本海溝津波に係る評価を踏まえた「日本海溝津波防潮堤」の設置工事に6月中旬以降より着手することも発表。津波リスクの低減に向け2023年度下期の完成を目指すとした。
28 May 2021
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日本原子力産業協会が毎年とりまとめている「世界の原子力発電開発の動向」の2021年版が刊行されました。ご購入希望の方はコチラからお申込みください。本書は、当協会が世界の電力会社等から得たアンケート調査の回答などに基づいて、2021年1月1日現在の世界の原子力発電所のデ-タを集計したものです。2021年版には特集として「小型モジュール炉(SMR)開発の動向」を掲載しました。運転期間延長に関する調査結果、世界の使用済燃料貯蔵の状況、原子炉廃止措置への取り組み状況についても引き続き掲載しています。「世界の原子力発電所一覧表」では、国別の各発電所の状況、炉型・原子炉モデルを始め発注、着工から営業運転までの年月や設備利用率、主契約者、供給者、運転サイクル期間・燃料交換停止期間等、広範な情報を網羅しています。A4判 236頁頒布価格:会員 7,000円 会員外 14,000円 【消費税,送料込】※請求書をお送りいたします
28 May 2021
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IHIは5月27日、米国ニュースケール社が開発を行っている小型モジュール炉(SMR)の事業に、日揮ホールディングスとともに参画することを決定したと発表した。〈IHI発表資料は こちら〉ニュースケール社が開発を進めているPWRタイプのSMRは、複数の原子炉モジュールをプール内に設置する構造で、出力7.7万kWのモジュール を最大12基設置可能(最大92万kW)。実証炉としてアイダホ州の国立研究所内に2029年の運転開始を目指しており、2020年8月には米国原子力規制委員会(NRC)より設計承認を取得した。ニュースケール社による出力調整のイメージ、風力発電の出力変動に対応する(日揮発表資料より引用)2021年4月には同社のSMR事業に対し日揮ホールディングスが出資を表明し、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会でも、国際連携を通じたイノベーション協力の一例として注目された。SMRはシステムのシンプル化による信頼性向上、モジュール生産による工期短縮のメリットを持ち、カナダや英国でも開発が進められている。ニュースケール社プラントについては、モジュールの着脱切替などにより再生可能エネルギーの出力変動調整を的確に行うことも可能。原子力機器メーカーとして多くの実績を持つIHIは、「SMRが脱CO2社会実現の有力なソリューションの一つになり得る」と期待し、今回のニュースケール社による事業への出資を決定したとしている。
27 May 2021
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経済産業相と原子力事業者の社長らが核燃料サイクルに係る課題について話し合う「使用済燃料対策推進協議会」が5月25日に行われた。梶山弘志経産相他、資源エネルギー庁幹部が庁舎内の会議室に参集し、原子力発電所を有する11電力の社長と日本原燃社長がオンラインにて出席。〈配布資料は こちら〉核燃料サイクル確立に向けた取組の進展状況(2021年3月現在、資源エネルギー庁発表資料より引用)協議会開始に際し、梶山経産相は、「現在エネルギー基本計画の改定に向けた議論を進めているが、原子力を持続的に活用していくためには使用済燃料対策を始め、バックエンドシステムの確立が不可欠」と強調。2020年7月開催の前回協議会以降、六ヶ所再処理工場や使用済燃料乾式貯蔵施設に係る事業変更許可など、核燃料サイクル計画に具体的進展がみられていることを踏まえ、「官民の取組を一層強化していく必要がある」と述べた。これに対し、九州電力社長で電気事業連合会会長を務める池辺和弘氏は、核燃料サイクルの早期確立に向けた事業者による取組状況を説明。使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウムをMOX燃料として有効利用する国の基本的方針のもと、「事業者間の連携をより一層強化し、整合的・総合的に進めていく必要がある」とした。現在、国内には貯蔵容量の約8割に相当する約1.9万トンの使用済燃料が存在し貯蔵能力の拡大に向けた取組が進められているが、池辺氏は、電事連として使用済燃料対策推進計画の改定を発表。事業者全体で「2020年代半ば頃に使用済燃料貯蔵容量の4,000トン程度の拡大、2030年頃にさらに2,000トン程度、合わせて6,000トン程度の拡大を目指す」とした。続いて、日本原燃社長の増田尚宏氏が六ヶ所再処理工場とMOX燃料加工工場のしゅん工・操業に向けた取組状況を説明。それぞれ2022年度上期、2024年度上期のしゅん工が予定されており、増田氏は、核燃料サイクル計画の中核となる施設をリードする立場から、「日本のエネルギーの一翼を担えるような将来性のある事業運営を目指す」とした上で、「計画通りのしゅん工を安全かつ確実に成し遂げる」と述べた。事業者による説明を受け、梶山経産相は、「核燃料サイクルの早期確立に向けた決意表明と受け止める。この方向に沿って積極的かつ主体的に取り組んでもらいたい」と期待。その上で、事業者が連携し、(1)再処理・MOX燃料加工工場のしゅん工・安定操業実現、(2)使用済燃料対策の最大限の取組、(3)プルサーマル計画の実現/MOX使用済燃料の再処理技術確立、(4)最終処分に関わる文献調査の地点拡大/廃炉廃棄物の処分・再利用、(5)地域振興の強化――に取り組むよう要望した。
26 May 2021
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総合資源エネルギー調査会の電力・ガス基本政策小委員会(委員長=山内弘隆・武蔵野大学経営学部特任教授)は5月25日、今夏・今冬の電力需給対策について議論した。14日に梶山弘志経済産業相は、今夏および今冬の電力需給に関し、それぞれ「ここ数年で最も厳しい」、「東京エリアにおいて安定供給に必要な供給力が確保できない」との見通しから、5月中を目処に対策を取りまとめるよう指示を出している。今夏を前に休廃止・計画外停止した主な火力発電プラント(エネ庁発表資料より引用)25日の会合で資源エネルギー庁が説明した今夏の電力需給見通しによると、8月は最大需要発生時の予備率が東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国の各エリアで3.8%(エリア間の電力融通も考慮、前年は沖縄を除き6.4~9.7%)と見込まれ、2017年度以降で最も厳しいものとなる見通し。沖縄を除く全国合計で、8月の最大需要電力16,609万kWに対し、供給力は17,847万kWと、火力発電の供給力減少(約680万kW)が大きく影響し、前年の18,206万kWを下回る見込み。昨夏に稼働した火力発電所でも、1970年代に運転開始した高経年プラントを中心に計画外停止や休廃止がなされたことで、大手電力会社だけでも約830万kW分が今夏の供給力には見込めない状況となっている。また、今冬については、現時点で、東京エリアにおいて安定供給に必要な予備率3%を確保できる見通しがたっていない状況。こうした厳しい見通しに対し、資源エネルギー庁は、昨冬の需給ひっ迫経験も踏まえ、需給対策として、今夏については、(1)発電事業者への要請(保安管理の徹底、燃料の十分な確保など)、(2)小売電気事業者への要請、(3)ひっ迫時の対応体制整備(事業者間の連携ルールの整備、「でんき予報」の表示改善など)、(4)需要家への呼びかけ(省エネの協力要請など)――を図るとし、今冬に向けても追加的な供給力確保策を6月中を目処に決定する方向性を示した。これを受け、東京・中部エリアに火力発電所を有するJERA(2019年に東京電力と中部電力の火力発電事業を統合)は、事業者によるLNG調達対応の限界から「国全体で安定供給に係るリスクをカバーする仕組みが必要」と切望。また、高経年プラントを巡る厳しい現状については、運転開始から50年を経過した鹿島火力発電所(石油)を例示し、「設備全体の劣化が広範囲で進行し、維持コストも年々膨らんでいる」などと説明した。8月の最大需要発生時の供給力見通しを電源別に前年と比較すると、水力と太陽光が200~300万kWの伸びを見せている。原子力発電については、今夏の供給力は674万kWと、前年の534万kWを上回る見通し。昨夏は、九州電力川内1、2号機(PWR、各89万kW)がテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」の整備を伴う定期検査により停止していたが、今夏はそろって供給力となりそうだ。また、関西電力美浜3号機(PWR、各82.6万kW)が国内初の40年超運転として7月下旬にも本格運転に復帰する予定となっている。
25 May 2021
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環境省は5月23日、福島第一原子力発電所事故後の除染に伴い発生した土壌の減容・再生利用に関し理解醸成を図る対話フォーラム「福島、その先の環境へ。」を都内で開催した。今回、一般参加者は、感染症対策のためオンライン参加となったが、小泉進次郎環境相出席のもと、1,000人以上が参集し意見・質問も多く寄せられた。司会はフリーアナウンサーの政井マヤ氏。中間貯蔵施設を上空から福島県内で発生した除去土壌については、中間貯蔵施設で安全に集中的に管理・保管され、貯蔵開始後30年以内に県外での最終処分を完了するよう、減容・再生利用の取組が進められている。同施設の全体面積は約1,600haで渋谷区の面積に相当。立地する大熊町の吉田淳町長、双葉町の伊澤史朗町長は、今回のフォーラム開催に際して寄せたビデオメッセージの中で、それぞれ「地権者の数だけ様々な苦悩や想いがある」、「町民の怒り、悲しみ、苦しみに満ちた表情は今でも忘れることはできない」などと、施設の受入れに際し苦渋の判断をした経緯を振り返っている。除去土壌再生利用に係る安全性確保について説明する高村氏除去土壌の再生利用については、飯舘村長泥地区における再生資材を用いた農地造成、そこにおける食用作物栽培などの実証事業が行われているほか、2020年には大熊町に技術開発を行う「技術実証フィールド」も整備された。一方で、同年に環境省が実施した調査によると、この県外最終処分のことを「聞いたことがない」または「聞いたことはあるが内容は知らない」という人が、福島県外で約8割、県内でも約5割に上っている。除去土壌の再生利用に向け、技術開発戦略検討会の委員を務めている長崎大学原爆後障害医療研究所教授の高村昇氏はフォーラムで、「安全性の確保が大前提」とした上で、放射能濃度基準値(原則8,000ベクレル/kg以下)を遵守し覆土などによる遮蔽を行うという基本的な考え方を説明した。小泉環境相、大熊町のイチゴと双葉町のタオルを前に福島復興・日本再生への意欲を示す小泉環境相は、幼少期の箕輪スキー場(猪苗代町)への家族旅行に始まり東日本大震災以降は政治家として復興に関わってきた福島への想いを振り返り、除去土壌の県外最終処分に関し「30年の約束を福島県の皆様と結んでいる」重みを改めて述べた上で、「再生利用の案件を創り出していく」必要性を強調。また、「福島第一原子力発電所から電気を送ってもらい、首都圏の生活が成り立っていたことをもう一度思い返し、『風評加害者』にならないよう一人一人が想いを持ってもらいたい」とも語った。除去土壌の最終処分に向けた国民理解に関し、東京大学大学院情報学環准教授の開沼博氏は、社会学の視点から、いわゆる「迷惑施設」の立地で議論される「NIMBY」(Not In My Back Yard、必要なのはわかるが自分の家の裏庭には作らないで欲しい)の問題があることなどを述べ、「事実の共有が第一歩」と強調。カンニング竹山さん、「福島の魅力」体験をPR今回のフォーラムには、タレントのカンニング竹山さん、なすびさんも登壇。環境省は対話フォーラムを今後全国各地で開催するとしているが、SNSや地元との交流を通じ福島の復興を支援しているカンニング竹山さんは、討論番組での経験から「感情のぶつかり合いで議論にならないことも多い。相手のこともじっくり聞くようにすべき」と主張。環境省の「福島・環境未来アンバサダー」として福島の環境再生に関する情報発信で活躍するなすびさんは、「これからも福島県民の目線で語っていきたい」と意欲を示した。また、学生参加として新潟大学理学部に在学する遠藤瞭さんらが招かれ発言。大熊町出身の遠藤さんは、廃炉に関する合意形成を身近な問題ととらえ、除去土壌についても市民とともに考える重要性を述べたほか、「将来は福島第一原子力発電所の廃炉に携わりたい」と語った。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
24 May 2021
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エネルギー総合工学研究所はこのほど、原子力発電所の廃炉に伴い発生する大型構造物の処理に関する提言(技術レポート)をまとめた。現在、国内では18基の原子力発電プラントで廃止措置が進められている(福島第一を除く)が、5月18日の原子力委員会定例会で同研究所の「原子力発電所廃止措置調査検討委員会」委員長を務める東京大学大学院工学系研究科教授の岡本孝司氏が説明した報告資料によると、廃止措置プロセスのうち、原子炉などの主要設備の解体が2020年代半ば以降に本格化するという。解体作業を円滑に進めるため、蒸気発生器(PWR)などの大型構造物の処理が今後の課題となる。プラントの高経年劣化対策の改良工事で取り外された蒸気発生器は、現状では放射性廃棄物として専用保管庫で保管中。一方、欧米では、大型構造物の処理・処分に関し、主に(1)原子炉建屋内で細断し容器に収納、(2)一体撤去し施設外の廃棄物処理施設へ輸送し処理、(3)一体撤去し処分施設へ輸送し一体で処分――する方法がとられており、米国、スウェーデンでは、海外からの大型構造物受入れやこれに由来する金属のリサイクルも行われている。日本では放射性廃棄物の輸出は原則として禁止されているが、岡本氏は、大型構造物の海外処理について、「安全上の課題もなく、廃止措置の着実な進展というメリットにつながる」と、選択肢の一つとなることを強調。国内では、放射性物質として扱う必要のない廃棄物の再利用に向けたクリアランス制度が施行されている。同氏は、310トンの蒸気発生器1基から、80%の重量に相当する約245トンの金属部材が再利用できるというOECD/NEAによる評価を示し、有用資源をリサイクルし廃棄物を低減する「循環型社会」形成への貢献からも、原子力発電所の廃炉において大型構造物が適切に処理される必要性を説いた。提言では、大型構造物の処理について、中長期的には、国内で共同利用可能な集中処理施設の導入を、当面は、海外での委託処理に向け(1)放射性廃棄物の輸出を可能とする制度整備、(2)放射性廃棄物の定義の見直し、(3)ガイドラインの策定――を取り組むべき課題としてあげている。
21 May 2021
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文部科学省の原子力科学技術委員会が5月19日、新たなメンバー(第11期)で初会合を行った。同委は、文科相の諮問機関として設置されている科学技術・学術審議会のもと、原子力政策の立案・評価に係る調査検討を行うもの。昨秋の菅首相による「2050年カーボンニュートラル」実現の表明を受け、脱炭素電源の一つとして位置付けられる原子力エネルギーのイノベーション創出に向けて、研究基盤・人材育成の強化を中心に検討を進めていく。今期委員は、主査の出光一哉氏(九州大学大学院工学研究院教授、前期主査代理)以下、五十嵐道子氏(フリージャーナリスト)、遠藤典子氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)、小栗慶之氏(東京工業大学科学技術創成研究院教授)、北田孝典氏(大阪大学大学院工学研究科教授)、早田敦氏(電気事業連合会専務理事)、新井史朗氏(日本原子力産業協会理事長)、髙本学氏(日本電機工業会専務理事)、竹内純子氏(国際環境経済研究所理事)、中島健氏(京都大学原子力科学研究所教授)、八木絵香氏(大阪大学COデザインセンター教授)。今期の検討開始に当たり、文科省研究開発局が、同委員会下に置かれた原子力研究開発・基盤・人材、原子力バックエンド、核不拡散・核セキュリティの各作業部会に係る政策の進展状況を説明。研究基盤の関連では、2017年度以降、「もんじゅ」サイトを活用した新たな試験研究炉の設置に向けた調査や国内外有識者によるシンポジウムを実施し、2022年度中の詳細設計開始、2030年代の運転開始を目指して、3月には日本原子力研究開発機構、京都大学、福井大学を中核とし地元機関や産業界が参画するコンソーシアム委員会が行われたところだ。委員からは、原子力機構が取り組む研究開発に関し、高温ガス炉を始めとする新型炉開発への期待の他、ニーズの絞り込みやリソースの適正な配分を求める意見、また、人材育成に関する検討体制の見直しや、「イノベーション創出は原子力関係者だけのネットワークではなし得ない」といった他分野連携の議論の必要性を示唆する声もあった。
20 May 2021
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日本原子力学会は5月14日、福島第一原子力発電所事故の反省・教訓に基づき2014年に示した提言を踏まえ、関係機関における取組の実施状況に関する調査報告書を発表した。事故から5年目となる2016年の第1回調査に続く、「10年目のフォローアップ」として行われたもので、今後原子力学会として取り組むべき課題についても述べている。〈報告書ダウンロードは こちら〉同学会は、2012年に福島第一原子力発電所事故に関する調査委員会(学会事故調)を立ち上げ、「事故と災害の科学的・専門的分析による背景と根本原因の解明」を目指して、専門家集団の立場からサイト内外で行われた事故対応について調査し、様々な観点から事故の分析評価と課題の抽出を行い、2016年に最終報告書を取りまとめ、刊行。津波・過酷事故対策が不十分であったことなど、「直接要因」とともに、(1)専門家自らの役割に関する認識の不足、(2)事業者の安全意識と安全に関する取組の不足、(3)規制当局の安全に対する意識の不足、(4)国際的に謙虚に学ぼうとする取組の不足、(5)安全を確保するための俯瞰的な視点を有する人材および組織運営基盤の欠如――からなる「背後要因」をあげ、これら要因の改善に向け50項目の提言を示した。提言では、「背後要因のうち組織的なものに関する事項」として、第一に、専門家集団としての学会・学術界が自由な議論、学際的取組の強化に努める必要性などが指摘されていた。今回の「10年目のフォローアップ」では、原子力学会が2016年より行っている福島復興・廃炉推進に向けた36学協会連携の活動「ANFURD」による情報発信や若手の意見交換を「成果が上がっている」とするなど、学際的取組の進展を評価。その上で、「社会との対話を進め、情報の共有や理解を得て新たな取組に反映させる」、「広い分野での専門家を集めて自由に議論できる仕組み、場を設ける」ことを課題として指摘し、他分野の知見を引き出し具体的な成果があがるよう、学術界におけるリーダーシップの発揮を期待。3月11日に福島第一原子力発電所事故発生から10年を機に同学会が開催したシンポジウムでは、研究者だけでなく、実務者・利害関係者・当事者も問題の発見、知識の創出、成果の普及に関与する「超学際的活動」の必要性が議論された。原子力人材の育成に関しては、「原子力安全を最優先する価値観の醸成」、「資格制度の充実」、「大学における原子力教育・研究の充実」、「小中高校における原子力・放射線教育の充実」が提言されていたが、この10年間を振り返り、原子力プラントの長期停止による実務経験の機会減少、技術士受験者数の減少、原子力分野の大学教員・研究者の減少、若年層の放射線知識レベルが低い状況などを課題提起。原子力学会としては今後、「各層の教育に積極的に関与し実践すべき」としている。
19 May 2021
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日本原子力研究開発機構は5月14日、福島第一原子力発電所廃炉現場の汚染箇所や空間線量率を可視化した3次元マップを描画するシステムを開発したと発表。1/2号機排気筒下部付近に同システムを適用し有効性を確認した。〈原子力機構発表資料は こちら〉福島第一原子力発電所の1/2号機排気筒(元の高さ120m)は高線量とともに破断箇所があったため、今後の廃炉作業におけるリスク低減に向け、地元企業の協力も得て高さを半分にする解体工事が遠隔操作で行われ、2020年4月に作業を完了している。原子力機構では昨秋、現地で同システムの実証試験を行い、高線量のエリアに進入することなく5分未満の歩行測定で汚染分布を表示した3次元マップの描画に成功。ロボットに搭載することで、作業者の入域が困難な原子炉建屋などの高線量率エリア内部の3次元汚染分布マップを容易に取得することが可能となり、作業員の被ばく線量低減や除染計画の立案に役立つことが期待できるとしている。iRISを構成するキーデバイスと役割(原子力機構・佐藤氏発表のパワーポイントより引用)同機構の廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、これまでも重厚な遮蔽構造を不要とした放射性物質可視化カメラ「コンプトンカメラ」の改良を重ね、帰還困難区域環境中のホットスポット(局所的な汚染)を特定できるドローンシステムの開発など、遠隔放射線イメージングシステムに関する成果をあげてきた。「コンプトンカメラ」では汚染源からの距離を知ることはできないため、測域センサ「3D-LiDAR」で3次元的な地形モデルを取得する。今回開発されたシステムは、「コンプトンカメラ」と「3D-LiDAR」に、歩行ルート上の線量率データを取得するサーベイメーターを組み合わせた統合型放射線イメージングシステム「iRIS」(integrated Radiation Imaging System)として完成されたもの。「コンプトンカメラ」と「3D-LiDAR」を合わせても重さ約5.5kgと持ち運びも可能だ。iRISによる3次元マップは現場をあらゆる角度から見ることができる(原子力機構・佐藤氏発表の動画より引用新システムの開発に当たったCLADSの佐藤優樹氏は、14日に記者会見を行い、1/2号機排気筒下部の汚染分布を仮想空間に再現し360度方向から俯瞰的に観察するデモンストレーションを披露。同氏は、およそ100mまでの測定距離に対応できる「コンプトンカメラ」の性能に自信を示しながらも、今後の実用化に向けて「遮蔽物に伴うデータ補正が課題」などとしている。
17 May 2021
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総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)は5月13日、前回4月28日の会合に引き続き「2050年カーボンニュートラル」実現を見据えた今後のエネルギー政策について議論。委員の秋元圭吾氏(地球環境産業技術研究機構〈RITE〉システム研究グループリーダー)より、技術課題克服の道筋を複数想定し電源構成やコストなどを評価するシナリオ分析の結果説明を受け意見が交わされた。〈配布資料は こちら〉同分科会は12月に、2050年の発電電力量で、再生可能エネルギーを約5~6割、原子力と化石燃料+CCUS(CO2回収・有効利用・貯留)を合わせて約3~4割、水素・アンモニアを約1割とする「参考値」を提示。これを基軸としRITEに複数シナリオの分析を依頼した。RITEによるシナリオ分析結果(RITE発表資料より引用)RITEが想定したシナリオは、「参考値」ケースの他、(1)再生可能エネルギー100%、(2)再生可能エネルギーの価格が飛躍的に低減する、(3)原子力の活用が進む、(4)水素・アンモニアの価格が飛躍的に低減する、(5)CCUSのCO2貯留量が飛躍的に増大する、(6)需要が変容する(自動車利用など)―各ケースに基づくもの。今回会合で秋元氏は、シナリオ分析の元となる世界エネルギー・温暖化対策評価モデル「DNE21+」を紹介。日本における原子力や再生可能エネルギーの導入に係る社会・物理的制約などの特性上、「DNE21+」活用には限界があることから、他の分析ツールも併用したとしている。分析結果によると、電力コストは「参考値」ケース(原子力10%、化石燃料+CCUS23%)で24.9円/kWhと、2020年の試算値13円/kWh程度のほぼ2倍に上り、「再生可能エネルギー100%」ケースでは53.4円/kWhとさらに増加。リプレース・新増設が行われることを前提に原子力比率2割の電源構成を想定した「原子力活用」ケースでは、24.1円/kWhとなった。これに対し委員からは、今後の議論に向けた基盤として評価が示される一方、わかりやすい情報発信や産業政策との整合性の観点からさらなる精査を求める声もあがった。水素・アンモニアの価格が低減するケース、CCUSのCO2貯留量が増大するケースで、電力コストは、それぞれ23.5円/kWh、22.7円/kWhと試算されたが、CO2を多く排出する鉄鋼産業として橋本英二氏(日本製鉄社長)は、水素利用実用化の不透明さを懸念するとともに、「安定供給とコスト抑制は絶対外せない。ゼロエミッションの生産プロセスを確立し日本の成長力につなげたい」と強調。これまでも技術イノベーション推進に関し多くの意見を述べてきた隅修三氏(東京海上日動火災保険相談役)は、CCUSにおけるCO2輸送・海外貯留に伴う地政学的リスクなどを指摘した上で、原子力発電を維持しバランスのとれたエネルギー構成を図っていくべきとした。また、同調査会原子力小委員会の委員も務める山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)は、「不確かさを政策でどうカバーするのか」などと、より現実的なエネルギー基本計画を検討していく必要性を強調。12日には国内初の40年超運転となる関西電力美浜3号機の運転方針が示されたところだが、同氏は、海外の長期運転のニュースとして、米国サリー1、2号機の80年運転の承認取得を紹介したほか、新増設・リプレースに関し、「技術開発のリードタイムを考えると新型炉の計画は今から取り組むことが必要」と訴えた。会見を行う梶山経産相、今夏・今冬の電力需給を始めエネ政策推進に緊張感を示した(インターネット中継)エネルギー政策の方向性に関し、梶山弘志経済産業相は14日の閣議後記者会見で、コスト、安定供給、安全性などを総合的に勘案し議論する必要性を改めて述べた上で、「日本は資源のない国で、他国のように『このエネルギーでいく』と決め打ちできる状況にない」として、多様な意見が寄せられることはいとわない考えを示した。
14 May 2021
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関西電力は5月12日、美浜3号機と高浜1、2号機の再稼働に係る運転方針を発表した。4月28日には福井県知事よりこれら3基再稼働への同意が表明されている。いずれも60年までの運転期間延長認可とともに新規制基準適合性に係る審査を経て2016年に原子炉設置変更許可に至り、安全・防災対策、地元理解の取組が進められていた。このうち、美浜3号機では、5月20日より燃料装荷が開始され、6月下旬に原子炉起動・発電再開となり、調整運転を経て、7月に国内初の40年超運転としておよそ10年ぶりに本格運転に復帰する見込み。その後、新規制基準で要求されるテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)が未整備のため、同施設設置期限の10月25日までに停止する。同機の特重施設については、4月に原子力規制委員会より設計・工事計画(初回)が認可されたところだ。また、高浜1号機では、5月14日より燃料装荷を開始した後、燃料装荷することで実施可能な自主的点検などを行い、各種機器の健全性を確認する。同2号機は現在、安全性向上対策工事が進展中。両機とも、特重施設の設置期限が6月9日に迫っており、運転再開時期は示されておらず、必要な工事が完了した後の再稼働となる。
13 May 2021
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原子力規制委員会は5月12日の定例会合で、3月に取りまとめた福島第一原子力発電所事故の調査・分析に係る中間報告が示す技術的事項に対し事業者より提出された見解について整理した。今後、関連の検討会で議論に付される。同委は、高い放射能汚染レベルが確認された1~3号機原子炉格納容器上部のシールドプラグ(直径約10m・厚さ約60cmの鉄筋コンクリートを3枚重ねた蓋)の汚染状況など、今回中間報告での指摘事項について、廃炉作業の進捗を見ながらさらに調査・分析を進めることとしており、今後の検討に資するべく事業者に意見を求め、10日までに東京電力を含め原子力発電所を有する計11社より報告があった。事業者に対し意見を求めた技術的事項は計9項目。例えば、ベント(格納容器内の放射性物質を含む気体を外部環境に放出し内部の圧力を降下させる措置)に関しては、1990年代以降に事業者が講じてきた自主的安全対策「アクシデントマネジメント」として整備された「耐圧強化ベントライン」の設計方針や系統構成の妥当性があげられており、これらに対する各社の見解を把握した上で、過去の安全対策の検証も通じ今後の規制基準への反映などを図っていく。各社による見解では中間報告に対し追加調査の必要性は特段みられなかったが、3号機水素爆発の関連で水素以外の可燃性ガスが寄与した可能性について、有機化合物の混在など、爆発のメカニズム解明や新知見の集約に向けて、今後規制委員会が実施する調査への協力姿勢が示された。水素挙動に関しては、1号機原子炉建屋への逆流と水素爆発との関係が未解明となっている。委員からは、BWRの水素漏えい対策について、各社から個別に聴取し議論を深めていく必要性が述べられた。
12 May 2021
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【国内】▽6日 日揮が米ニュースケール社のSMR開発への参画を表明▽12日 日本原燃六ヶ所再処理工場で世界原子力発電事業者協会(WANO)によるレビュー実施、実火災を模擬した消防訓練などが良好評価(~20日)▽13日 政府が福島第一原子力発電所の多核種除去設備(ALPS)処理水処分で「海洋放出を選択する」との基本方針を決定▽13日 原産年次大会が「コロナ禍の世界と日本-環境・エネルギーの課題と原子力」をテーマに開催(~14日)▽14日 梶山経産相がグロッシーIAEA事務局長とTV会談、ALPS処理水に係るレビューミッション派遣など要請▽14日 規制委が東京電力に対し柏崎刈羽の核物質防護に係る不適切事案で是正措置命令発出▽14日 NUMO、高レベル放射性廃棄物の処分地選定に向けた文献調査で「対話の場」を北海道寿都町で初開催(15日には同神恵内村でも開催)▽14日 元核融合研所長の本島修氏が仏よりレジオン・ドヌール勲章「シュヴァリエ」受章、ITER機構長としての貢献で(22日には児玉原子力機構理事長が同国家功労勲章「オフィシエ」受章)▽16日 ALPS処理水処分で関係閣僚による実行会議始動、東京電力も対応方針を策定▽22日 菅首相が米主催の気候サミットで「2030年度の温室効果ガスを2013年度から46%削減」と表明▽28日 規制委、九州電力玄海の使用済燃料乾式貯蔵施設で原子炉設置変更許可▽28日 規制委、東京電力福島第二1~4号機の廃止措置計画を認可▽28日 東北電力が東通1号機の安全対策工事完了時期を2024年度に延期▽28日 杉本福井県知事が関西電力美浜3号機、高浜1、2号機の再稼働(40年超運転)に同意▽30日 量研機構が統合試験実施中の超伝導トカマク装置「JT-60SA」のトラブル発生で工程遅れを発表 【海外】▽1日 X-エナジー社、米ワシントン州での小型HTGRの建設で覚書▽6日 アラブ初の商業炉、UAEのバラカ1号機(140万kWの韓国製PWR「APR1400」)が営業運転開始▽6日 仏フラマトム社、米ドミニオン社の原子力発電所の長期運転を燃料交換や保守点検作業請け負いで支援▽9日 エストニア 、今後20年間のエネルギー需給評価のため原子力導入に向けWGを設置すると発表▽13日 米エネ省、3年以内にマイクロ原子炉(電気出力100kW)を運転する「MARVELプロジェクト」を開始▽14日 トルコのアックユ建設計画にロシアの民間銀行が持続可能な開発に向けた義務事項の順守を条件とする低利融資として5億ドル提供▽14日 カナダの3州の首相が「SMR技術でカナダが世界のリーダーに」とのFS結果を発表▽20日 チェコ、ドコバニⅡ期工事の入札でロシアを除外▽20日 IEAの「グローバル・エナジー・レビュー」、2021年に世界の原子力発電量は2%増と予測▽20日 米議会上院のエネ天然資源委員長、原子力への支援をバイデン大統領に要請▽22日 仏EDFがインド原子力発電公社にジャイタプール計画の契約条件提案書を提出▽26日 米国で建設中のボーグル3号機、完成前最終段階の温態機能試験を開始▽26日 露ロスアトム社と仏EDF、製造過程でCO2を排出しない「グリーン水素」の製造で協力 ▽27日 米国務省が「小型モジュール炉(SMR)技術の責任ある活用に向けた基本インフラ(FIRST)」国際支援プログラムを始動 ☆過去の運転実績
12 May 2021
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衆議院の原子力問題調査特別委員会は4月27日、福島第一原子力発電所事故に係る国会事故調の委員長を務めた黒川清氏(政策研究大学院大学名誉教授)らを参考人として招き、最近の原子力政策を巡る課題について質疑応答を行った。国会事故調は、憲政史上で初の国会に設置された独立調査機関として、現地視察、関係者へのヒアリング、市民対話などを通じ福島第一原子力発電所事故の原因究明に向けた調査活動を行い、2012年7月に報告書を取りまとめ両院議長に提出。報告書は、(1)規制当局に対する国会の監視、(2)政府の危機管理体制の見直し、(3)被災住民に対する政府の対応、(4)電気事業者の監視、(5)新しい規制組織の要件、(6)原子力法規制の見直し、(7)独立調査委員会の活用――の7項目からなる提言を掲げており、事故後の原子力行政の建て直しなどに供されている。黒川氏今回特別委員会の冒頭で発言に立った黒川氏は、この3月に福島第一原子力発電所事故発生から10年を迎え、海外のメディア・アカデミアも含め多くの取材・講演依頼に応じていることに触れ、「『しっかり学ぼう』という気持ちを感じる一方で、日本で行われていることがまだ十分に理解されていないのでは」と、さらにコミュニケーションを図っていく必要性を示唆した。津島氏自由民主党議員の津島淳氏は、地元青森県の原子力政策を巡る状況を振り返り、「地元の声が反映されないことが国に対する不信感につながる」として、政策立案・決定のプロセス透明化を政治の立場から主張。その上で、福島第一原子力発電所で発生する多核種除去設備(ALPS)で処理した水の処分に関わる信頼性について尋ねたのに対し、黒川氏は、「トリチウム」という言葉が報道で多用されるあまり、これが疑義に結び付くことを危惧したほか、「元のデータを隠さずにそのまま出すべき」などと述べ、透明性の確保とメディアの役割の重要性を強調。この他、黒川氏は、諸外国から見た日本の技術力に懸念を示し、原子力発電所運転員の海外プラント派遣を通じたスキルアップの必要性などにも言及した。石橋氏国会事故調による提言の実現に関しては、事故調事務局を務めた石橋哲氏(東京理科大学経営学研究科教授)が早期に具体化されることを要望。これまでも幾度と参考人として招かれてきた同氏は、憲法の精神に立ち戻って立法府の存在意義を述べた上で、事故後の周年行事の形骸化、原子力を巡る不祥事の頻発を指摘するとともに、「われわれは『忘れない』という情緒的な言葉を反復しながら、『忘れていく』ことを繰り返している」などと、事故の風化を危惧し、「提言を一歩一歩着実に実行し不断の改革の努力を尽くすべき」と訴えた。橘川氏参考人として、この他、橘川武郎氏(国際大学大学院国際経営学研究科教授)と鈴木達治郎氏(長崎大学核兵器廃絶研究センター教授)が発言。総合資源エネルギー調査会委員を務めている橘川氏は、最近のエネルギー政策に関する議論から、(1)新増設・リプレースの議論回避で生じる原子力政策のわかりにくさ、(2)核燃料サイクルの現実性、(3)柏崎刈羽原子力発電所再稼働の厳しさ――について意見を述べた。鈴木氏鈴木氏は、福島第一原子力発電所の廃止措置と福島復興プロセスの総合的連携を求め、自身が原子力委員会委員在任中の2012年に同委がまとめた見解「廃止措置に向けた中長期にわたる取組の推進について」や、昨夏日本原子力学会がまとめたエンドステート(廃炉の最終的な状態)までを見据えた提言を引用し、政府や事業者から独立した「廃止措置・復興評価委員会」の国会内設置を提案。浅野氏公明党議員の中野洋昌氏が昨今の核セキュリティを巡る事案から東京電力の経営体質について懸念を示すと、橘川氏は、東日本大震災発災から間もない2011年夏の阿賀野川水害時に柏崎刈羽原子力発電所が東北地域の復興を支えた(当時柏崎刈羽1、5~7号機が運転中、東北電力は水力発電所被害のため東京電力より電力融通)ことをあげ、「電力問題の本質は高い現場力と低い経営力のミスマッチに尽きる」とした。また、国民民主党議員の浅野哲氏が今後の原子力人材確保・技術伝承について尋ねたのに対し、鈴木氏は、ポイントとして、(1)ニーズを把握し優先順位を考える、(2)将来の革新技術創出に向け研究基盤を維持する、(3)国内だけでなく国際協力も有効活用する――ことをあげた。※写真は、いずれもインターネット中継より撮影。
07 May 2021
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政府は4月29日、春の叙勲受章者を発表。原子力・エネルギー関連では、瑞宝重光章を元国際エネルギー機関(IEA)事務局長の田中伸男氏らが受章した。瑞宝重光章受章の田中伸男氏(写真は2013年第46回原産年次大会にて)田中氏は、第一次石油危機の渦中にあった1973年に通商産業省(現経済産業省)に入省。経産省の要職とともに、在米日本大使館やOECDの勤務経験も有するなど、ほぼ一貫してエネルギー国際協力の分野を歩んできた。2007年に欧州以外では初となるIEA事務局長に就任。同職退任後も、日本エネルギー経済研究所特別顧問、笹川平和財団会長を務め、シンポジウムへの登壇や提言発表を通じ、日本のエネルギー事情に関して、中東情勢の緊迫や化石燃料依存などの現状から警鐘を鳴らし、原子力技術開発の重要性を訴えている。2017年からは、安倍元首相の提唱により毎年開催されている技術イノベーションと気候変動対策について議論する国際会合「ICEF」の運営委員長を務めており、エネルギー・環境技術の分野で現在も活躍中だ。この他、瑞宝重光章には、東京工業大学名誉教授の相澤益男氏、元文部科学審議官の白川哲久氏らが選ばれた。相澤氏は2001~07年の東工大学長在任中、21世紀COEプログラム「世界の持続的発展を支える革新的原子力」(文科省事業、2003~08年)の立ち上げなど、高等教育の立場から理工系人材の育成強化に関わり、その後も政府の総合科学技術会議有識者議員などを歴任。白川氏は2002~03年の文科省研究開発局長在任時に日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合に関し議論を進めるなど、科学技術行政で手腕を発揮した。また、瑞宝中綬章に、東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏、明治大学名誉教授の向殿政男氏、元放射線医学総合研究所(現量子科学技術研究開発機構)理事長の米倉義晴氏、元原子力安全委員会事務局長の上原哲氏、元文科省国際統括官の瀬山賢治氏、元文科省総括審議官の干場靜夫氏らが選ばれた。畑村氏は「失敗学」の知見を活かし福島第一原子力発電所事故に係る政府事故調査委員会をリード。向殿氏は安全工学の第一人者で2015年に安全功労者総理大臣表彰(産業部門)を受けており、アカデミアの立場から原子力安全に対しても多くの示唆を与えている。米倉氏は、放医研理事長在任中の2013年、福島第一原子力発電所事故後の放射線に対する関心の高まりに対応し、新たな研修棟を建設するなど、放射線に係る人材育成・普及啓発に尽力。上原氏は、原子力安全委員会事務局長在任中の2004年に関西電力美浜3号機事故が発生し、事故の原因調査などに対応した。瀬山氏は2000年に始動した「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の立ち上げで、干場氏は科学技術行政の経験を活かし東京大学を拠点とするグローバルCOEプログラム「世界を先導する原子力教育研究イニシアチブ」(文科省事業、2007~11年度)の広報活動などでそれぞれ手腕を発揮した。
30 Apr 2021
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