原産協会の新井史朗理事長は2月26日、月例のプレスブリーフィングを行い、同日発表の理事長メッセージ「福島第一原子力発電所事故から10年を迎えるにあたって」を配布し説明(=写真)。改めて被災者の方々への見舞いの言葉とともに、復興・再生に向け尽力する多くの方々への敬意・謝意を述べた。事故発生から10年を迎えるのを間近に、復興が着実に進展し生活環境の整備や産業の再生などの取組が期待される「ふくしまの今」を伝える情報発信サイトを紹介。原子力産業界として、「福島第一原子力発電所事故の反省と教訓をしっかりと受け止め、二度とこのような事故を起こさないとの固い誓いのもと、たゆまぬ安全性向上に取り組んでいく」とした。また、昨夏東京電力より現職に就いた新井理事長は、福島第一原子力発電所に配属された新入社員当時を振り返りながら、「私を育ててくれた場所、思い出がたくさん詰まった場所」と思いをはせたほか、発災後、富岡町における被災住宅の家財整理など、復旧支援活動に係わった経験に触れ、「住民の方々の生活が事故によって奪われたことに対し誠に申し訳ない」と、深く陳謝。福島第一原子力発電所の廃炉に向けて「現地の社員たちが最後までやり遂げてくれると信じている」とした上で、「1日も早い福島の復興を願ってやまない」と述べた。将来福島第一原子力発電所事故を知らない世代が原子力産業界に入ってくる、「事故の風化」への懸念について問われたのに対し、新井理事長は、会員企業・団体を対象とした現地見学会などの取組を例に、「まず現場を見てもらい肌で感じてもらう」重要性を強調。事故を踏まえた安全性向上の取組に関しては、「一般の人たちにわかりやすく広報していく必要がある」などと述べた。また、2050年カーボンニュートラルを見据えたエネルギー政策の議論については、「まず再稼働プラントの基数が増えていくこと」と、既存炉を徹底活用する必要性を強調。経済団体から新増設やリプレースを求める声が出ていることに対しては、「60年運転まで考えてもやはり足りなくなる」などと、首肯する見方を示した。
01 Mar 2021
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日本原子力研究開発機構は2月26日、研究炉「JRR-3」(東海村、最大熱出力20MW)が運転を再開したと発表した。同施設は、2018年11月に約4年間の審査期間を経て新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可を取得。その後、建屋の耐震改修工事などを完了し、最終段階となる定期事業者検査に合格となったもの。本格的な供用運転開始は6月末を予定している。〈原子力機構発表資料は こちら〉「JRR―3」は、1962年に初の国産研究炉として建設され、日本の原子力の草創期を支える多くの研究活動に寄与。最盛期の2008年度は年間の延べ利用日数(中性子ビーム実験装置数×運転日数)が5,270日にまで達した。旧原研・動燃が統合し原子力機構が発足した2005年度以降は、産業利用が急増。供用実験に占める産業利用の割合は2010年度で約35%となっている。利用分野は、原子炉燃料・材料の照射試験、医療用ラジオアイソトープの製造、シリコン半導体の製造など多岐に及ぶ。2010年11月に定期検査に伴い「JRR―3」は停止。以降、東日本大震災を経て、新規制基準への対応が図られてきたが、中性子利用に係るニーズを受け、2017年に日本学術会議が「大強度陽子加速器施設『J-PARC』だけではとてもすべてをカバーできるものではなく、研究炉の役割は非常に大きい」との提言を発表するなど、産業利用のツール、人材育成の場として、早期の運転再開が求められていた。原子力機構は、「JRR-3」の運転再開により「多彩な研究者・技術者が集まる科学探求・イノベーション創出の場を提供できる」と期待を寄せ、「安全確保の徹底を大前提に、立地地域の皆様の理解を得ながら、研究開発を通じて地域・社会に貢献できるよう取り組んでいく」としている。
26 Feb 2021
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=安井至・バックキャストテクノロジー総合研究所エグゼクティブフェロー)が2月25日、およそ2年ぶりに開かれ、2050年カーボンニュートラル実現を見据えたエネルギー政策における原子力利用の方向性について検討が始まった。同調査会の基本政策分科会では昨秋よりエネルギー基本計画の見直しに向けた検討を本格化。2050年カーボンニュートラル宣言(10月26日の菅首相所信表明演説)で、「再生可能エネルギーを最大限導入」、「安全最優先で原子力政策を進める」との方向性が示されたのを受け、同分科会では12月の会合で、原子力を巡る課題を、(1)安全性の追求、(2)立地地域との共生、(3)持続的なバックエンドシステムの確立、(4)事業性の向上、(5)人材・技術・産業基盤の維持・強化/イノベーションの推進――に整理し議論を深めていくこととした。25日の原子力小委員会会合では、このうち、安全性の追求と立地地域との共生について、電気事業連合会原子力開発対策委員長の倉田千代治氏らより説明を聴取。倉田氏は、地域との共生に関し、電力個社で行われる地元小中学校への「出前授業」、水産業への研究支援、清掃・緑化活動、イベント開催などの他、原子力防災対策の取組事例を紹介した。その中で、原子力災害時における協力要員の派遣・資機材の貸与などについて定めた事業者間協力協定(12社締結)について、3月中にも見直しを行い、派遣要員を現在の300人から3,000人規模に拡充し、発災時の住民避難を円滑に実行できる相互支援体制を構築するとした。安全性向上に関しては、原子力エネルギー協議会(ATENA)理事長の門上英氏も産業界挙げての取組状況を説明。2018年のATENA発足時を振り返り山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)は、原子力安全推進協会(JANSI)や電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC)との連携効果を改めて示すよう求めた。また、立地地域との共生に関する論点の中で、資源エネルギー庁は、発電所の運転終了後も見据えた立地地域の将来像を地域と国・事業者がともに議論する場の創設を提案。これに対し、杉本達治氏(福井県知事)は書面を通じ、「国の原子力に対する考えが漠然としていては、事業者の安全への投資意欲が失われ原子力を志す人材も集まらない。結果として立地地域の安全が脅かされかねない」と、原子力政策の方向性を危惧した上で、「より具体的な内容になるよう取り組むべき」と、議論の場の早急な設置を求める意見を出した。この他、委員からは、新型コロナを機にサテライトオフィスを求める動きをとらえた「便利で快適な暮らしのモデルケース」となる地域振興策の提案や、2050年カーボンニュートラルの関連で、「2050年以降も見据え原子力の長い将来の姿を念頭に議論すべき」、「再生可能エネルギーの不確実性を補うため、原子力を一定比率持つことは国家の安定にとって不可欠」との声があった。また、原子力を巡る課題に関し、東日本大震災からの復興が進まぬ自治体の現状、地層処分に係る調査受入れを拒否する条例制定の動きなどから、「ネガティブな情報も整理すべき」といった意見や、昨今の不祥事に鑑み、「信頼回復ウェブサイトを設け真実をきちんと出していくべき」との声もあった。
25 Feb 2021
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日本原子力文化財団は、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業への関心を全国に広めるべく様々な活動を行う人たちの声を紹介した特設サイト「知爽(ちそう)の人」を設け、順次動画コンテンツを公開している。その中で、2月10、11日に開催された「クリアランス制度」に関するシンポジウム(文部科学省主催)にも市民の立場から登壇した鈴木早苗氏(=写真上、福井県鯖江市在住、原発のごみ処分を考える会)は、「対立ではなく対話でお話ししていきたい。何かを生産すれば必ず『ごみ』は出る」と、2017年より有志で継続している地域対話活動の取組姿勢を示し、使用済燃料の問題について考える必要性を強調。さらに同氏は、北海道寿都町・神恵内村で処分地選定に向けた文献調査が開始したことに関し、「そこに決まればよい。うちに来なければよい」というのではなく、電気の恩恵を享受した日本全体が放射性廃棄物の問題に向き合うべきとした上で、次世代層に対し「頭の柔らかい若年層の方々なら純粋にこの問題を考えていってくれるだろう」と期待を述べている。また、高レベル放射性廃棄物に関する資源エネルギー庁主催の学生フォーラムなどに参画してきた平澤拓海氏(東北大学工学部)は、「地層処分を次世代に知ってもらうために学校教育ははずせないポイント」とした上で、現地の声や施設を見聞きし「自分の意見を持てる環境」を作っていくことを主張。幌延深地層研究センターの見学をきっかけに高レベル放射性廃棄物の処分問題に関心をもったという渡邊恭也氏(=写真下、北海道大学工学部)は、地層処分事業が進展するフィンランドとスウェーデンの視察経験から「専門家や国の機関に対する信頼の高さ」を強く感じたとしている。「知爽(ちそう)の人」では、この他、地層処分の理解に向け、中学生サミットを毎年開催している澤田哲生氏(東京工業大学先導原子力研究所助教)、松江市で学生を中心とした学習会を行う石原孝子氏(環境とエネルギーを考える消費者の会)のインタビュー動画が紹介されている。※写真は、いずれも原子力文化財団ホームページより引用。
24 Feb 2021
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電気事業連合会の池辺和弘会長は2月19日の定例記者会見で、13日23時過ぎに発生した福島県沖を震源とする大地震への対応状況を説明した。東京電力エリアで最大約86万戸、東北電力エリアで最大約9万戸発生した停電は翌14日午前9時までにすべて復旧。揺れの大きかった地域の原子力発電所においても、大きな影響はなく、福島第一原子力発電所では、原子炉注水設備や使用済燃料プール冷却設備など、主要設備に異常がないことが確認されたとしている。火力発電所では、地震の影響で複数のプラントが停止したものの、被害の軽微なプラントから順次運転を再開しており、電力供給に大きな影響はない状況だ。〈電事連発表資料は こちら〉なお、福島第一原子力発電所における今回の地震に伴う影響に関し、東京電力は22日の原子力規制委員会の検討会で説明。発災後の現場パトロールの状況を整理し、19日までに1、3号機の原子炉格納容器の水位に低下傾向があることが確認されたが、原子炉圧力容器底部温度や敷地境界モニタリングポストに有意な変動はみられず、外部への影響はないものとしている。ベース供給力不足のイメージ(電事連発表資料より引用)また、電事連は会見で今冬の需給状況に関し、「数年に一度レベル」の非常に強い寒波到来に伴い、12月下旬から1月上旬にかけて電力需給のひっ迫が生じたが、電力各社では燃料の追加調達や日頃稼働していない高経年火力を含めた発電所をフル稼働させるなど、供給力の確保に全力を尽くすとともに、需給ひっ迫エリアへの広域的な電力融通も図り安定供給が確保されたとしている。1月下旬以降は、気温が平年を上回る日も多くなり電力需要は落ち着きを見せ、発電用LNGについても各社とも安定供給に必要な水準にまで回復。電力供給面では、関西電力大飯4号機(関西エリア供給力の4%に相当)が1月17日に発電を再開した。電事連は2月17日の総合資源エネルギー調査会会合で、今般の需給ひっ迫対応における課題として、(1)リスクを考慮した需給電力量(kWh)想定と評価の不足、(2)ベース供給力の不足、(3)全国大で燃料不足が発生している状況の把握遅れ(4)需給電力量不足に対するエリア間で融通調整に時間を要したこと、(5)節電協力のお願いの実施検討・調整に時間を要したこと――をあげている。
22 Feb 2021
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「原子力エネルギー協会」(ATENA)がこれまでの活動状況を報告し、原子力産業界の関係者が取り組むべき課題を共有する「ATENAフォーラム2021」が2月18日、オンラインにて開催された。門上ATENA理事長ATENAは2018年7月に電力会社他、メーカーなども含めた原子力の安全性向上に向けた産業界を挙げての組織として発足し、(1)事業者に対する効果的な安全対策の導入促進、(2)産業界の代表者としての規制当局との対話、(3)安全性向上の取組に関する社会とのコミュニケーション――の役割を担っている。門上英ATENA理事長の活動報告によると、福島第一原子力発電所事故後の事業者の取組状況を踏まえ、現在、サイバーセキュリティ対策など、19の共通技術課題を抽出し検討が行われている。原子力発電プラントの40年超運転の関連では、原子力規制委員会との技術的意見交換も踏まえ、安全な長期運転に向けて、(1)長期停止期間中の保全、(2)設計の経年化評価、(3)製造中止品の管理――に係るガイドラインが9月に策定された。山中原子力規制委員フォーラムに来賓挨拶として訪れた原子力規制委員会の山中伸介委員は、「安全性の向上には規制側と被規制側の双方による対話が必要」と述べ、経営層に限らず様々な階層での信頼関係をベースとしたコミュニケーションの重要性を強調。今後のATENAの活動に向けては、「グッドプラクティスを事業者全体で共有できる機能」、「安全を担う人材育成」に期待を寄せた。コーズニックNEI理事長また、海外から、マリア・コーズニック米国原子力エネルギー協会(NEI)理事長、リチャード・A・メザーブ電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC、2014年に設立された日本の組織)顧問、ジョージ・アポストラキス同所長、ウィリアム・E・ウェブスター・ジュニア原子力安全推進協会(JANSI)会長が、ビデオメッセージにて講演。コーズニック氏は、気候変動問題に直面する世界情勢を踏まえ、「クリーンエネルギーの礎を築かねばならない。原子力はどんなときも一刻も動きを止めない安定したカーボンフリーのエネルギー源」と、原子力の役割を強調。さらに、「世界では原子力利用の機運が高まっている」と展望を述べ、ATENAとともに「クリーンエネルギーの未来」の創造に向け努力していく考えを示した。メザーブ氏は、福島第一原子力発電所事故後の日本において、産業界と規制機関とのコミュニケーションには一定の評価を示す一方、「国民は原子力に対し未だに懐疑的だ。信頼獲得には長い時間を要する」と指摘。アポストラキス氏は、事業者による安全性向上の取組に関し、NRRCが研究開発を進める確率論的リスク評価(PRA)の国際的比肩を課題としてあげ、それぞれATENAへの協力姿勢を示した。JANSIの会長に就任し間もなく3年となるウェブスター氏は、原子力の安全性向上に向けた枠組として、発電所を運転する事業者、国の安全規制機関に加え、産業界の支援グループをあげ、米国のNEI、原子力発電運転協会(INPO)、電力研究所(EPRI)による成功事例にも触れながら、「個々の問題に協力して取り組み、国際的コミュニティとも緊密なつながりを持つ」重要性を強調した。パネルディスカッションの模様フォーラムでは、遠藤典子氏(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティチュート特任教授)をモデレーターとするパネルディスカッションも行われ、加藤顕彦氏(日本電機工業会原子力政策委員会委員長)、倉田千代治氏(電気事業連合会原子力開発対策委員会委員長)、近藤寛子氏(東京大学大学院工学系研究科)、山﨑広美氏(JANSI理事長)、玉川宏一氏(ATENA理事)が登壇。ATENAの果たすべき役割の他、社会からの信頼獲得や人材育成などについても意見が交わされた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
19 Feb 2021
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原子力人材育成に係る産学官連携のプラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」(運営委員長=新井史朗・原産協会理事長)の2020年度報告会が2月16日に開催された。オンライン形式となった今回の報告会には約120名が参加。原子力教育における遠隔ツールの活用をテーマに、小原徹氏(東京工業大学先導原子力研究所教授)の進行のもと、パネルディスカッションが行われた。登壇者は、喜連川優氏(東京大学生産技術研究所教授)、若林源一郎氏(近畿大学原子力研究所教授)、高田英治氏(富山高等専門学校教授)、中園雅巳氏(IAEA原子力エネルギー局上級知識管理官)。九大学生へのアンケート結果「オンライン授業は対面授業を代替できていたと思いますか」(国立情報学研・喜連川氏発表パワポより引用)国立情報学研究所所長も務める喜連川氏は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い2019年度末より取り組んできた大学教育における「対面から遠隔への転換」支援策を披露。行政機関や全国の大学・高専などと連携した情報交換活動により、遠隔講義での著作物の無償利用(2020年度内)が可能となった成果を紹介した。また、同氏は、九州大学で最近実施された遠隔講義に関する学生アンケートの結果を例示。それによると、学部1年生より2~4年生の方が遠隔講義への満足度が顕著に高い傾向にあった。コロナ終息後も見通した講義スタイルに関する学生の意見から、講義録をオンデマンド配信し難解な部分を繰り返し視聴できる工夫も求められていることをあげた上で、喜連川氏は「学びのスタイルが変わりつつある」などとして、今後もIT技術を通じた高等教育の向上に取り組んでいく考えを述べた。近大が構想する「原子炉遠隔実習システム」のイメージ(上)とバーチャル・コンソール画面(近大・若林氏発表パワポより引用)教育現場に携わる立場から若林氏は、大学保有の原子炉が少ない現状下、研究炉「UTR-KINKI」を用いた実習に関し、研修生の旅費と原子力規制(入域人数制限など)の課題をあげ、TV会議システムを通じ研究炉を持たない国にも原子炉実験の機会を提供するIAEA-IRL(Internet Reactor Laboratory)を手本とした「原子炉遠隔実習システム」構想を披露。モニター画面に表示される「原子炉バーチャル・コンソール」を遠隔地の教室と共有し指導を行うもので、現場での実習参加に替わる有効な手段として期待を寄せた。一方、感染症対策により2020年度はオンラインによる原子炉実習を行った経験から同氏は、「対面でないと伝わらないものもある。実際に現場に入るまでの手続きも含めて実習といえる」などと述べ、遠隔実習には限界があることを示唆。高田氏は他校へも配信する原子力人材育成“eラーニング”のカリキュラムを紹介し、今後の課題としてコンテンツの充実と若手高専教員の裾野拡大をあげた。また、将来のリーダーを目指す各国若手の育成に向けたIAEA「原子力エネルギーマネジメントスクール」(NEMS)に関わる中園氏は、国際的視点から、オンラインを通じたイベントを開催する上で、地域間の時差を「最大の問題」と指摘。一般参加者を交えた討論では、原子力分野の遠隔教育に関し、機微情報に係るセキュリティ対策についても質疑があった。上坂原子力委員長「原子力人材育成ネットワーク」は2010年11月の発足から10年を迎えた。今回の報告会では、原子力委員会・上坂充委員長からの祝辞が紹介されたほか、ネットワーク初代の、それぞれ運営委員長、事務局長を務めた服部拓也氏(原産協会顧問)、杉本純氏(サン・フレア校長)が、当時を振り返るとともに、発足4か月後に福島第一原子力発電所事故が発生し新たな課題に対応してきた経緯を語った。花光氏(仏プロバンスにてオンライン参加)また、NEMSの日本誘致(2012年)に貢献し、現在はITER機構で活躍中の花光圭子氏がフランスよりオンライン参加。コロナの影響で厳しい外出制限が敷かれている現地の状況を述べながらも、「ネットワークを活かした実習が続いていることはとても意義深い」と、日本が主導する原子力人材育成の取組に期待を寄せた。
18 Feb 2021
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福井県の杉本達治知事は2月16日、定例県議会の開会に際し、2021年度予算案、県政を巡る諸課題などについて説明し、その中で、関西電力美浜3号機、同高浜1、2号機の再稼働について議会での議論を求めることを表明した(=写真、オンライン中継)。3基とも2016年に原子力規制委員会により60年までの運転期間延長に係る設置変更許可が得られている。杉本知事はまず、13日に発生した福島県沖を震源とする大地震の被災地に対し見舞いの言葉を述べた上で、県としても先般嶺北地方を襲った大雪に伴う被害状況に鑑み、防災対策の強化に一層努めていく考えを強調した。原子力政策に関し、知事は12日に行われた梶山弘志経済産業相、森本孝関西電力社長とのTV会談について報告。それによると、森本社長からは、県外における使用済燃料の中間貯蔵に関し、むつ中間貯蔵施設(青森県むつ市、東京電力と日本原子力発電が設立したリサイクル燃料貯蔵が建設)の共同利用への参画希望が表明され、国や電気事業連合会と一体となって地元理解に取り組むとともに、同施設以外の検討も含めあらゆる可能性を追求していく考えが述べられたとしている。さらに、森本社長は、使用済燃料の県外搬出に向け「2023年末を期限に計画地点を確定するとし、期限までに実現できない場合は、確定までの間、美浜3号機、高浜1、2号機を運転しない」方針を明示。また、資源エネルギー庁より同計画地点の確定に向けて関係者の理解確保に最善を尽くすとの考えが示されたとし、知事は、関西電力による使用済燃料対策に関し、(1)一定の回答があった、(2)計画地点の確定期限が明示された、(3)確定に向けた関西電力と国の覚悟が示された――ものとして、「新しい課題の議論に入る前提は満たしたものと考えている」と結論付けた。加えて知事は、年明け後の政府・原子力防災会議による美浜地域の緊急時対応取りまとめ(1月8日)、高浜1、2号機の新規制基準適合性に係る保安規定認可(2月15日)などに言及。「美浜3号機と高浜1、2号機に関する許認可や防災対策の手続きは整った」とし、県として、国や事業者に求めている事項への対応を確認し、原子力安全専門委員会においてプラントの安全性について審議する考えを述べるとともに、議会に対し「再稼働について慎重に議論してもらいたい」と表明した。この他、知事はエネルギーを活用した地域振興に向けて、2020年3月に策定された「嶺南Eコースト計画」を通じ、原子力ビジネスの創出や研究炉利活用のプロジェクトに取り組んでいく意欲を示した。
16 Feb 2021
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資源エネルギー庁は2月10日、小学校高学年を対象とした「わたしたちのくらしとエネルギー」をテーマとする「かべ新聞コンテスト」の2020年度優秀作品を発表した。小学生のエネルギー問題に対する当事者意識を喚起し学校や家庭・地域での実践行動を促すことを目指した取組で、子供たち自らがかべ新聞形式に研究成果をまとめた553点の応募作品のうち、35点が入賞。経済産業大臣賞を、北海道大学附属札幌小学校(札幌市)の「どさえこ新聞」(=図、エネルギー教育情報ステーションホームページより引用)が受賞した。「どさえこ新聞」では、2018年9月の北海道胆振東部地震で発生した道内全域停電(約295万戸)を振り返り、電力需給における防災対策に着目。電気自動車「日産リーフ」について調べるため、北海道日産自動車へのインタビューを行い、発災時、「日産リーフ」からの給電で道内のコンビニチェーン「セイコーマート」が営業を続け市民の生活を支えた経緯を記事化し、「エネルギーのおすそわけ」と題し称賛している。また、道内に北海道電力泊発電所が立地することをとらえ、「原発と私たちの選択」と題するコラムも掲載。高レベル放射性廃棄物処分地選定に向けた寿都町と神恵内村での文献調査の動きにも触れ、「原発を持つ日本には核のゴミをどこかが受け入れなければならないのも事実」とした上で、風評被害に対する不安などから「北海道の未来に害がないことを約束してほしいと願う」と述べている。入賞作品には水素や太陽光など、個々のエネルギー供給源を特集的に取り上げた作品も多かったが、今回6点の作品が入賞し優秀学校賞を受賞した常葉大学教育学部附属橘小学校(静岡市)の「未来に届け!!エネルギー新聞」と「今までとこれからのエネルギー新聞」(いずれも優秀賞)では、日本のエネルギー資源・需給の全体像を整理し、将来の電力構成や地球温暖化問題について、データを織り交ぜながらまとめていた。
15 Feb 2021
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原子力発電所の廃炉が進む中、放射能濃度が低く人体の健康への影響がほとんどない金属・コンクリート廃棄物の再利用を可能とする「クリアランス制度」について考えるシンポジウム(文部科学省主催)が2月10、11日、若狭湾エネルギー研究センター(敦賀市)を拠点にオンラインで開催された。原電・山内氏2005年度に始まった同制度に設計段階から長く関わっており、昨夏より国際廃炉研究開発機構(IRID)理事長も務める日本原子力発電廃止措置プロジェクト推進室長の山内豊明氏によると、110万kW級のBWRの場合、発生する撤去物の総量は約53.6万トンで、そのうち、約5%に当たる約2.8万トンがクリアランス対象物となる。原電が開発中のクリアランス測定装置、ユニット化構造によりフリーレイアウトが可能に(同社発表資料より引用)同氏は、(1)循環型社会形成への貢献、(2)原子力発電所廃止措置の円滑化、(3)放射性廃棄物の減容化――から「クリアランス制度」の必要性を強調。国内商業炉で初めて廃止措置に入った同社の東海発電所の解体工事に関しては、2006年に金属約2,000トンに係る測定・評価方法が国により認可された後、そのうちの約400トン分が確認済みとなっており、原子力施設の遮蔽体やPR館のベンチなどへの再利用が進められている。原電では、敦賀1号機でも廃止措置を進めているが、今後の作業増に備え、より作業負担・コストを軽減するクリアランス測定装置の開発にも取り組んでいる。今回のシンポジウムでは、初日にバックエンド対策が進展するスウェーデンなどの海外事例の報告を受けた後、2日日には「クリアランス制度」の定着に向けた方策について、1月に福井県内で行われた市民勉強会の参加者も招きディスカッションを行った。関西大・土田氏2日日ディスカッションの座長を務めた土田昭司氏(関西大学社会安全学部教授)はまず、「クリアランスの制度普及と国民理解」と題して講演。同氏は、人体の健康に影響がない放射能レベルの基準「クリアランスレベル」は、自然界から受ける放射線量の100分の1以下に過ぎない年間0.01mSv相当の放射能濃度であることを改めて強調。土田氏が示した経験的判断による錯誤の一例、上段の1文字目と下段の4文字目は同じ形状だが「HOME」「TODAY」という単語を知っていることからそれぞれ「H」「A」と読んでしまうその上で、リスクコミュニケーションの観点から、岸和田のだんじり祭や長野の御柱祭など、死者を出すほど危険と隣り合わせの祭が長く続いていることを例に、「安全の基準は人々の合意で成り立っている」と述べた。さらに、「自動車を使わなければ事故はなくなるが、それを使うことによって得られる利益もなくなる」として、危険と利益のバランスを考える「リスク学」の視点を提示。また、土田氏は、風評被害について「事実と異なる情報の流布」と定義し、心理学の立場から、発生のメカニズムを、経験的判断による錯誤(思い込み)の事例や流言が広まる要因・背景を分析しながら説明。昨今の新型コロナウイルスに対する人々の動きにも触れ、複雑・不確実な情報・知識に対し専門外の人は真偽判断が困難なことを述べた上で、クリアランスに関わるリスクのとらえ方に関し「一般の人たちは独力で対応できない。まずは信頼が重要」と結論付けた。福井大・柳原氏、クリアランスのビジネス化に向け「嶺南Eコースト計画」にも期待ディスカッションに移り、先の市民勉強会で学生参加者の指導に当たった柳原敏氏(福井大学附属国際原子力工学研究所特命教授)は、「学生たちはクリアランスの考え方をよく理解していたと思う。家庭での会話を通して少しずつでも広がっていけばよいと思う」と所感を語った。量研機構・鈴木氏、学校向けの副読本を示し原子力教育の重要性も強調また、広報部門での経験が豊富な鈴木國弘氏(量子科学技術研究開発機構次世代放射光施設整備開発センター総括参事)は、大強度陽子加速器施設「J-PARC」へのクリアランス物利用(遮蔽体)の報道を振り返り、「オブジェのようなものを作ればもっとPRにつながるのでは」と提案。勉強会参加者からは、高レベル放射性廃棄物処分に関し10年間理解活動を続けているという鈴木早苗氏(鯖江市)が、フィンランドの学校視察経験に触れ、「日本は原子力教育というと、腫れ物に触れるようだ。もっとフランクに語れるようになれば」などと指摘。さらに、今後の「クリアランス制度」の理解促進に向けては、「よいプレゼンターを育てることが重要」と強調した。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
12 Feb 2021
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文部科学省の原子力研究開発・基盤・人材作業部会(主査=山口彰・東京大学大学院工学系研究科教授)は2月10日、日本原子力研究開発機構の中長期事業目標(2015~21年度)の変更に関し、日本原子力産業協会と日本電機工業会よりヒアリングを行った。中長期目標の変更は、独立行政法人の目標策定に関する政府指針の改訂などに伴うもので、新たな中長期目標案には、人材確保・育成やイノベーション創出に向けた取組が追加記載されている。同機構を所管する一行政庁として文科省は、同作業部会で9日の電気事業連合会、日本原子力学会、原子力規制庁に続きヒアリングを実施した。10日の会合で、原産協会からは、人材育成部長の喜多智彦氏が産学官連携のプラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」の共同事務局を原子力機構とともに務める立場から説明。同氏は、研究開発と人材育成は「表裏一体」の関係にあるとし、効果的・効率的に進められるよう「協力と連携」をキーワードに掲げた。今後、革新炉・小型モジュール炉(SMR)などの研究開発に向け、「産官学連携研究開発プラットフォーム」のような仕組みが必要であるとし、原子力機構にその中核となる機能を期待。人材確保・育成の視点からは、同機構に対し、国際研修コースや学生実習などの取組に評価を示した上で、「大学との連携強化」、「技術系人材の確保・育成」、「長期的・継続的な人材・資金の投資」の重要性を述べた。電機工業会からは原子力部長の小澤隆氏が説明。同氏は、プラントメーカーの立場から、原子力機構に対し、新型炉の早期実用化に向けた規制対応、高速炉サイクル開発に係る海外の政府・研究機関との協力、水素製造システムの実証が期待される高温ガス炉「HTTR」の早期稼働などを要望した。原子力機構は、今後の人材育成・確保に関し、2月中にも見込まれる研究炉「JRR-3」の再稼働など、新規制基準対応より停止していた施設の再開を見据え、人・予算の1割程度増を目指していくとした。原子力産業以外でも技術基盤の維持が困難となっている現状について、喜多氏が「産業間で技術系人材の奪い合いが起きている」と述べたのに対し、産業界での経験を踏まえ佐藤順一氏(科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェロー)は、「国として真剣に考える必要がある」などと、喫緊の課題であることを改めて強調。また、原子力科学技術に係る立場から矢野安重氏(仁科記念財団常務理事)は、加速器を利用した放射性廃棄物減容化の技術開発に期待を寄せるなどした。科学技術行政に通じた寺井隆幸氏(東京大学名誉教授)は、2日間のヒアリングを振り返り、今後多分野にわたる原子力研究開発の方向性について改めて整理していく必要性を述べた。
10 Feb 2021
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【国内】▽8日 政府・原子力防災会議、美浜地域の緊急時対応を了承▽8日 西日本中心に記録的な寒波到来、火力発電利用率が約90%にまで上昇▽12日 新潟県委員会、福島第一原子力発電所事故による避難生活で検証結果を取りまとめる▽15日 学術会議他、東日本大震災発生10年で40学会参集のシンポ開催▽18日 菅首相が通常国会開会に際し施政方針演説、2050年カーボンニュートラル実現に向けた施策など示す▽20日 規制委、原子力機構人形峠ウラン濃縮原型プラントの廃止措置計画認可▽22日 小泉環境相、米バイデン新大統領のパリ協定復帰手続きに歓迎の意を表明▽23日 原子力機構が「もんじゅ」の燃料体取り出し作業を再開、2022年度の完了目指す▽25日 東京電力が柏崎刈羽7号機の取組に関する地域説明会を開始▽27日 規制委、福島第一原子力発電所事故に係る調査・分析で中間取りまとめ案▽27日 東京電力の「原子力改革監視委員会」、事故を踏まえた原子力安全改革の取組を評価▽29日 野瀬高浜町長が関西電力高浜1、2号機の40年超運転に関し梶山経産相とTV会談▽29日 農水省が中東・アフリカ地域による日本産食品の輸入規制がすべて撤廃されたと発表(イスラエルの25日付撤廃で)▽29日 原子力立地地域特措法改正案が閣議決定、延長で防災インフラ整備支援措置の継続へ 【海外】▽5日 カナダの処分場計画、建設候補地の1つで試験孔の掘削準備が進展▽11日 米国の公営電力事業体、ニュースケール社に同社製SMRのCOL申請準備を指示▽11日 英環境庁、英国版「華龍一号」の設計審査でパブコメ募集▽12日 米トランプ政権、宇宙探査と国防目的のSMR利用促進で大統領令発令 ▽12日 英国のクリーン・エネ企業、風力とSMRの複合発電所建設を米ニュースケール社と検討▽14日 米貿易開発庁、ルーマニアにおけるニュースケール社製SMR建設に向け技術支援▽20日 日英が核融合と廃止措置へのロボット工学適用で技術開発協力 ▽20日 米規制委のスビニッキ委員長が20日付けで退任▽20日 ブルガリア、コズロドイ7号機を建設する可能性を再検討▽21日 英シンクタンク、「2050年の気候中立達成には新規原子力への投資が不可欠」と提言▽23日 米規制委の委員長にハンソン委員が就任▽25日 米国で建設中のボーグル4号機でフラッシングを開始▽27日 英国のHPC計画、新型コロナの影響で送電開始が約半年遅延▽27日 英ホライズン社、新設計画の「開発合意書」申請を取り下げ▽30日 世界初の「華龍一号」、福清5号機が中国で営業運転開始 ☆過去の運転実績
08 Feb 2021
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産業技術総合研究所は2月1~5日、2020年度の成果発表会をオンラインで開催。動画とポスターを通じ200件を超える1年間の研究成果が発表された。IoT型放射線線量計その中で、分析計測標準研究部門の鈴木良一氏らは、省電力無線技術で2万時間の連続動作と効率的なデータ収集を可能にした「IoT型放射線線量計」を披露。同氏の研究グループは、原子力災害被災地のモニタリング用に被ばく線量を日々計測し記録する小型の放射線線量計(10~20g、学童・園児の名札に入るサイズ)を2012年に開発したが、無線通信の電力消費が大きく電池が消耗しやすいことが課題となっていた。このほどIoT(Internet of Things)技術を融合し開発された新たな線量計は、「Bluetooth Low Energy」とよばれる省電力無線通信技術を用い、3Vのボタン電池1個で連続2年以上(約2万時間)動作する低消費電力化を実現。年2,000時間程度の作業で使用する場合、約10年間電池交換が不要となる。さらに、過去1時間では1分ごと、過去1日では1時間ごとの線量率の時間推移をグラフ表示するディスプレイを搭載。専用の無線機構と組み合わせることで多数の線量計の時間データをリアルタイムで収集できる特長も備え、研究グループでは、「効果的な被ばく低減対策をとることが可能になる」と期待している。小型X線源、カーボンナノ構造体の持つ電子放出特性を利用また、X線・陽電子計測研究グループの加藤英俊氏らは、小型X線源を用いた非破壊検査技術について紹介。老朽化が懸念されるインフラ設備の点検増などの要請に応え、総重量2.5kgの小型X線源を開発し、これまで不可能であった狭あい箇所のX線検査を可能とした。今後はロボット・ドローンに搭載できるX線検査装置の開発に取り組んでいくとしている。
05 Feb 2021
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日本原子力研究開発機構、東京大学他による研究グループは2月4日、廃棄豚骨を原料とする安価で高効率な金属吸着剤を開発したと発表した。骨がストロンチウムなどの金属を吸着するメカニズムに炭酸が寄与していることを明らかにした上で、食品廃棄物の豚骨ガラを家庭で用いられる重曹(炭酸水素ナトリウム)水溶液に漬け込み「高炭酸含有アパタイト」を作成・分析し開発に至ったもの。〈原子力機構発表資料は こちら〉開発に当たった原子力機構物質科学研究センターの説明によると、骨の有する重金属の吸着性能を利用し、米国のハンフォードサイト(ワシントン州にある廃止措置中の原子力施設群)では、牛骨や魚骨を使ったストロンチウムやウランの拡散防止技術に関わる試験が行われているが、十分な吸着性能が得られていない状況。また、世界の食品業界では、年間75億トンもの廃棄骨が発生しており、有効な処理方法が模索されているという。研究グループでは、「骨の主成分である炭酸アパタイトに含まれる炭酸の量」に着目。豚骨を加圧加温した後、重曹水溶液に漬け込み組成・微細構造を解析したところ、骨中の炭酸アパタイトには未処理の骨より多くの炭酸が含まれ、重曹水溶液の濃度の増加に応じ多くの炭酸を含む「高炭酸含有アパタイト」が形成されることがわかった。この「高炭酸含有アパタイト」をストロンチウムが含まれる水溶液中に投入、かくはんした後、溶液を分析した結果、3分以内に99%のストロンチウムが吸着されることを確認。「高炭酸含有アパタイト」の最大吸着量は、未処理の骨および重金属吸着剤として知られる天然ゼオライト(クリノプチロライト)の約5倍に上っていた。原子力機構物質科学研究センターの関根由莉奈氏は、記者会見で、カドミウム汚染を原因とするイタイイタイ病など、大規模公害発生の歴史に触れ、有害金属の環境拡散を防ぐ重要性を強調。今後は「高炭酸含有アパタイト」の土壌中での効果を検証する考えを述べ、原子力施設や鉱山における環境浄化技術の他、有用金属回収への応用にも期待を寄せた。
04 Feb 2021
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復興庁は1月28日、福島の魅力を紹介するとともに放射線の基礎知識を啓発するすごろくゲーム「ふくしま旅スゴ」をウェブサイトで公開した。「『風評の払拭』に向けて」をテーマに、復興に取り組む人たちへのインタビューや福島県産の農産物・酒を紹介する現地レポートなどのコンテンツを集めた特設サイト「タブレット先生の 福島の今」に新しく加わったもの。放射線に関する理解に向けては、これまでもクイズを通じた解説や学生が製作した絵本教材による動画を掲載しており、「知ってもらいたいことを、親子で楽しめるようにわかりやすくまとめる」工夫を図ってきた。このほど公開されたすごろくゲームは、福島県内59市町村を巡る旅をモデルとしており、各市町村の名所・特産品や放射線に関するクイズ(三者択一形式)に答えながらゴールを目指すというもの。地域ごとに分かれた17のステージからなり、例えば、浜通り地域のステージでは、「富岡町の桜並木」の本数や「なみえ焼きそば」に入れる具材などが出題される。正解するとクイズに因んだ「映えスポットの写真」を獲得。各ステージとも全4問のクイズは正解数を繰り越し何度もチャレンジでき、ステージクリア者にはオリジナルの「赤べこ」キャラクターの賞品が与えられる。今回の「ふくしま旅スゴ」のウェブ公開について、平沢勝栄復興相は、「大変親しみやすい」などと述べ、ゲームやインターネットを活用した風評払拭の取組に期待を寄せている。
03 Feb 2021
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資源エネルギー庁は2月2日、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する自治体説明会を開始した。最終処分への理解や関心を促す対話活動などの取組を進める上で、「各地の自治体の理解と協力が不可欠」との認識から、毎年行われているもので、同日の東北・関東地域を皮切りに、10日にかけて全国5ブロックで、いずれもオンライン方式により開催。初回の東北・関東地域を対象とした説明会には98名の自治体関係者が参加。放射性廃棄物対策課長の那須良氏と原子力発電環境整備機構(NUMO)理事の伊藤眞一氏が、高レベル放射性廃棄物地層処分の概念、処分場の概要、処分事業の進め方、これまでに行ってきた理解活動などについて説明。海外の地下研究施設を紹介するビデオも上映された。寿都町と神恵内村の文献調査開始までの経緯(資源エネルギー庁発表資料より引用)今回、参加者からは特に意見・質問は出なかったが、那須氏は、2020年11月の北海道寿都町・神恵内村における処分地選定に向けた文献調査開始を受け、現在多くの自治体から地層処分に関する問い合わせが寄せられていることを述べた。風評被害への懸念に関連し、処分地選定プロセスとなる文献調査、概要調査、精密調査の20年程度の調査期間中「放射性廃棄物は一切持ち込まない」ことを改めて明言。また、調査受入れを拒否する条例制定の動きに関して、文献調査の実施は「自治体からの応募、もしくは国からの申入れを自治体が受諾」した場合に限られることを強調した。
02 Feb 2021
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日本原子力研究開発機構は1月29日、AIを活用し精度の高い放射線分布マップを作成する新たな放射線測定データ解析手法を開発したと発表した。名古屋大学大学院工学系研究科・山本章夫教授の指導のもと、学生実習生を含む同機構廃炉環境国際共同研究センター(福島県南相馬市)の研究員との共同により開発されたもの。〈原子力機構発表資料は こちら〉発表によると、無人航空機を用いた上空からの放射線測定は、広範囲を迅速に測定し人体への被ばくを低減できる一方、地形の凹凸や遮蔽物(樹木等)などの影響を受け、地上測定値との間にズレが生じるため、計算による精度向上が求められていた。つまり、従来、上空からの放射線測定結果を地上測定値に換算する場合、地形が平たんで線量率分布が一定であるエリアでの測定値と比較する簡便な換算方法で対応してきたため、地形や線量率の変化が複雑なエリアでは誤差が大きくなり、「放射線が、何によって、どのくらい遮蔽され検出器まで来るのか」を計算し修正する必要がある。これには詳細なパラメーターと解析時間を要するため、原子力機構では、福島第一原子力発電所事故以降、取得・蓄積してきた無人航空機による放射線測定データやGPSによる位置情報データで構成される「ビッグデータ」を、機械学習「人工ニューラルネットワーク」に適用。新たな放射線測定データ解析手法を開発した。AIの活用でより精密な放射線マップの作成が可能に(原子力機構発表資料より引用)同手法を用いることで、従来と比べ30%以上高い精度で地上の放射線測定値を再現した放射線マップの作成に成功し、また、1時間以上を要していた解析作業をあらかじめデータを学習させることにより数分で完了することもできた。原子力機構では、今回の研究成果について、「詳細な放射線マップを迅速かつ精度よく作成することは、除染や避難指示区域解除などの科学的根拠に役立つ」と期待を寄せている。今後は、写真による構造物の識別情報や地形情報、放射線の遮蔽に影響のある気象条件の違いなどを付加することで、さらなる精度の向上を進めていく。
01 Feb 2021
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福島県産食材の魅力を発信する料理ワークショップが1月25日、福島県郡山市内の会場を拠点とし、神奈川、愛知、京都の料理教室(ABCクッキングスタジオ)を結ぶオンライン形式で開催された。復興庁主催(農林水産省・福島県協力)による「作って、食べて、投稿しよう!ヘルシー美食講座」と題する今回のワークショップは、料理研究家の寺田真二郎氏を講師に迎え、「常磐もの」として質の高さに定評があるヒラメをメイン食材とした創作料理の調理方法を紹介するとともに、作った料理の魅力がSNSを通じて拡散されるようインスタグラマーによる撮影講座も実施。「常磐もの」のヒラメを使ったフルーティカルパッチョ(上)とトマトリゾット寺田氏は「トマトリゾット」と「フルーティカルパッチョ」の2種類の創作料理を披露。「トマトリゾット」には三浦大根(神奈川)、「フルーティカルパッチョ」には蒲郡みかん(愛知)と九条ねぎ(京都)と、各会場のご当地食材も使用。カルパッチョでは、ヒラメの他、福島県産食材として、「料理に華やかな印象を与えシャキシャキ感がある」と絶賛するフリルレタスを添え、九条ねぎとザーサイを加えたソースをかけるなど、食感や彩りにも工夫を凝らした。リゾットには福島県産米「天のつぶ」を使用。 ワークショップではSNSによる拡散を目指し「インスタ映え」する料理撮影のコツも披露(神奈川会場で実演するモデルの中村江莉香さん)各教室の模様をモニターで見つつ寺田氏は、食材の持ち味や調理のポイントを説明しながら実演。料理が出来上がった後は、「インスタ映え」も意識し、盛り付けやランチョンマットにもこだわりを見せた。ワークショップに招かれたスマート農業でフリルレタスを生産する(株)KiMiDoRi(川内村)の兼子まや氏は、カルパッチョを試食し「味もよく見た目もおしゃれ」と、続いてリゾットも口にし「ヒラメのふわっとした食感。大根が入っていてダイエットにもいいのでは」と、顔をほころばせた。今回、感染症対策を徹底した上で会場を4か所に限定しライブ中継を併用した開催となったが、京都会場の参加者は、「福島には行ったことがない。他の地域とつながりができたことも意味があった」と話している。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
29 Jan 2021
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東京電力の外部有識者による諮問機関「原子力改革監視委員会」(委員長=デール・クライン氏〈元米国原子力規制委員会委員長〉)は1月27日に会合を開き、同社が2013年より取り組んでいる「原子力安全改革プラン」について総括的にレビューした答申案を取りまとめた。同プランに基づき東京電力は、「安全意識の向上」、「技術力の向上」、「対話力の向上」を柱に継続的改善に取り組んでおり、進捗状況を四半期ごとに公表している。答申案では、「安全最優先・ガバナンス強化・リスク管理の強化」、「学ぶ姿勢・技術力の強化」、「緊急時対応力の強化」、「リスクコミュニケーションの強化」、「内部監視機能の向上」、「被ばく線量の低減」の個別分野ごとに所見を述べた上で、「8年以上にわたり原子力安全改革に取り組み、組織が正しい方向に向かって着実に進捗している」と評価。学ぶ姿勢の浸透や技術力の維持に関しては、「運転を経験していない職員が増える中、実操作の経験を付与しながら訓練・研修を行い、着実な運転員の力量向上に努めている」としている。リスクコミュニケーションについては、「職員自らが地域の声に触れて感度を磨き業務に反映させる」ことを期待。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けて、安全監視機能の重要性も述べ、専門性を有する人材の強化なども提言している。会合終了後、記者会見(オンライン)に臨んだクライン委員長は、まず、2020年8月に逝去したバーバラ・ジャッジ同委副委員長への追悼の意を述べ、今後の委員会体制に関し、ジャッジ氏が取り組んできたコミュニケーション・安全文化に通じた女性の専門家の人選を進めるとともに、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を見据え、技術系の適任者を検討している考えを明らかにした。また、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関しては、「安全の問題よりも感情の問題がある」として、政府、東京電力、アカデミアなどが安全性について丁寧に説明を行い人々の不安が払拭されるよう努めるべきと強調。福島第一原子力発電所事故から間もなく10年を迎える現状下、答申案は「事故を経験していない社員が増える」などと指摘。これに関し、クライン委員長は、「東京電力は事故の当事者として事故から学んだ教訓を広く発信し、原子力の安全性向上に貢献していくことが重要」と、事故の反省と教訓を忘れてはならないことを改めて述べた。
28 Jan 2021
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原子力規制委員会は1月27日の定例会で、同委の福島第一原子力発電所事故調査に係る検討会による中間取りまとめ案について報告を受けた。取りまとめ案は今後、パブリックコメントを経て、3月上旬にも正式決定となる運び。同検討会は2019年、廃炉作業の進捗に伴う原子炉建屋内へのアクセス性向上、新たな知見・情報の蓄積を踏まえ、約5年ぶりに再開。原子炉格納容器からの放射性物質の放出、原子炉冷却に係る機器の動作状況など、事故のプロセス解明に向け調査・分析を進めてきた。中間取りまとめ案では、事故発生時の2号機のベント(格納容器内の放射性物質を含む気体を外部環境に放出し内部の圧力を降下させる措置)について、原子炉格納容器から排気筒に通じるベントライン中に設置されたラプチャーディスク(外部環境との最終バウンダリ)が破裂しておらず、ラプチャーディスク付近の線量率がベントに2回成功した3号機より3~4桁低かったことから、「一度も成功しなかった」と判断。一方、ベントが行われた1、3号機についてはベントガスの逆流を結論付け、1号機では「水素が原子炉建屋に逆流した可能性がある」とみて、水素爆発との関連性を今後の調査検討課題の一つとしてあげた。また、1~3号機原子炉格納容器上部のシールドプラグ(直径約10m・厚さ60cmの鉄筋コンクリートを3枚重ねた蓋)下方の放射能汚染レベルが高いことを確認したとして、「安全面と廃炉作業面において非常に重要な意味を持つ」などと指摘。特に、2、3号機については、シールドプラグの上から1層目と2層目の間に大量のセシウム137(20~40ペタベクレル)が存在すると結論付けた。3号機水素爆発に係る「多段階事象説」のイメージ(原子力規制委員会発表資料より引用)福島中央テレビ他の技術協力を得て行われた水素爆発の詳細分析で、3号機で発生したものについては、超解像処理(毎秒60コマ)や地震計記録などから、複数の爆発・燃焼が積み重なった「多段階事象」との見方を示した。更田豊志委員長は、定例会終了後の記者会見で、今回の調査・分析を通じて確認されたシールドプラグの汚染状況について、「廃炉戦略に与えるインパクトは非常に大きい。遮蔽の施し方など、簡単ではないだろう」と述べた。
27 Jan 2021
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日本原子力研究開発機構は1月22日、施設内で放射能汚染が発生した際、作業者を速やかに退避させることのできる高機能・簡単組立テントを開発したと発表した。〈原子力機構発表資料は こちら〉テントの開発に当たった同機構核燃料サイクル工学研究所の説明によると、原子力施設における作業中、放射性物質が漏えいし身体の複数個所に汚染が付着した場合、作業者を退避させ除染処置を行う密閉テントは、これまで足場用のパイプを組んだフレームにビニール製テントをロープで結び付ける構造であったことから、設置に多くの時間を要し、内部被ばくリスクを高める恐れがあった。局所排気装置を用いてGH内の空気を排気しダストモニタで放射能濃度をリアルタイムで監視(GH:グリーンハウス〈汚染拡大防止用密閉テントの意〉、原子力機構発表資料より引用)そこで、フレームを展開・伸縮可能な構造へと改良し、材質にはアルミを用いることで軽量化を図り、設置に要する時間を約2時間から約20分へと大幅に短縮。組立てには専用の工具や脚立も要らず、人員数も従来方式の7名から4名に削減。また、隣り合った前後左右のテントをファスナーで接続できる構造から、施設内の様々な場所に適切なレイアウトで設置でき、多数の作業者に身体汚染が生じても、複数の退避経路を確保することが可能だ。今回開発された高機能・簡単組立テントは、既に原子力機構のプルトニウム燃料技術開発センターに配備され運用を開始しており、今後も、内部と外部の環境を隔てた密閉空間での作業を可能にするという点で、国内外の原子力施設での利活用が期待される。
25 Jan 2021
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千葉大学で1月19日、高レベル放射性廃棄物の地層処分をテーマとしたディベート試合が行われた。同学教育学部の藤川大祐教授が担当する講座「ディベート教育論」の一コマで実施されたもので、「日本は高レベル放射性廃棄物の地層処分計画を撤廃し、地上での管理を義務づけるべきである」を論題とし、学生チームが賛否それぞれの立場から論戦した。ディベートは、ある論題の是非を巡って肯定側と否定側とに分かれルール(制限時間など)に従って論戦し、論証の強さをもとに第三者である審判が勝敗を決める討論ゲームで、言語技術を包括的にトレーニングする手法として授業にも取り入れられている。千葉大教育学部では、2012年度から「ディベート教育論」の中で、地層処分をテーマとして取り上げており、同学部附属中学校の校長も務める藤川教授は、「現代的課題には答えの決まっていないものも沢山あり、これからの教育では扱っていく必要がある」と、意義を強調している。ディベート試合に参加した学生らは事前に原子力発電環境整備機構や日本原子力研究開発機構の職員からレクチャーを受けるなど、準備を行った上で試合に臨む。肯定側・否定側のチーム分けは、学生の原子力政策に対する見方とは関係なくランダムに振り分ける。今回は、感染症対策のためオンラインでの実施となった。ディベート試合で、「分離変換技術を用いて放射性廃棄物の有害度を低減し、既存の原子力発電所の敷地を拡大し保管する」と主張する肯定側(地上管理)は、メリットとして、「周辺住民の理解が得られ処分計画が進行しやすい」、「次世代に先送りせず責任ある処分ができる」ことをあげた。これに対し、否定側(地層処分)は、論題の示す地上管理のデメリットとして、「火災や津波などの災害による影響は深刻である」、「地層処分に比べ実現性は著しく低い」ことを主張した。ディベート試合を終えインタビューに応じる安部さん続いて、肯定側、否定側が、相手方の主張に対し反論。原子力発電所敷地内での地上管理の安全性に関しては、それぞれ「原子力発電所立地点は津波被害の恐れがある」、「災害発生時における対応が容易」などと論戦。地層処分の実現可能性については、フィンランドの進捗状況や北海道寿都町・神恵内村の文献調査応募が根拠としてあげられ、放射性廃棄物処理・処分の負担を軽減する分離変換技術については、大強度陽子加速器施設「J-PARC」による研究レポートも引用された。藤川教授は、学生らによる判定票も集計した上で、「判断は難しいところ」としながら肯定側に軍配を上げた。ディベート試合終了後、否定側チームリーダーの安部真純さん(文学部1年)は、「始めはまったく知識ゼロだった。チームで話し合いながら勉強を進め、地層処分に関する新聞記事にも目を通すようになった」などと、報道陣のインタビューに答えた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
22 Jan 2021
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原産協会の新井史朗理事長は1月21日、プレスブリーフィングを行った(=写真)。年明け後最初のプレスブリーフィングに際し、新井理事長は1月5日に発表した理事長メッセージ「2021年の年頭に当たり」を改めて紹介。同メッセージでは、新型コロナウイルス感染拡大によるエネルギー需要の減少、2050年カーボンニュートラル宣言など、原子力産業界を巡る2020年の動きを振り返った上で、原産協会が取り組む「原子力発電に対する理解の獲得」、「福島復興支援」、「人材確保・育成」、「国際協力」について述べている。2020年は新たな再稼働プラントがなかったが、2021年の見通しについて問われたのに対し、新井理事長は、「新規制基準に基づく設置変更許可を取得したプラントすべてが一日も早く再稼働して欲しい」と期待。1月12日に安全対策工事が完了した東京電力柏崎刈羽7号機については、2007年の新潟県中越沖地震に伴い停止した際の地元への対応も振り返り、「県全体での丁寧な説明が必要」などと述べた。昨夏に議論が始まったエネルギー基本計画の見直しに関しては、東日本大震災直後の火力発電停止や計画停電の経験、昨今の厳寒によるLNG在庫減少にも触れ、電源の多様化・ベストミックスの重要性、電力の安定供給確保における原子力の優位性を強調。10月には東京と大阪で学生向けの合同就職説明会「原子力産業セミナー2022」が開催され前回を上回る来場者を集めたが、今後の新増設・リプレースも見据え、引き続き人材の確保・育成、技術の維持・向上に取り組んでいく考えを述べた。
22 Jan 2021
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原子力規制委員会は1月20日、日本原子力研究開発機構人形峠環境技術センター(岡山県鏡野町)のウラン濃縮原型プラントに係る廃止措置計画の認可を決定した。2018年に申請されていたもの。廃止措置の完了は2040年度、解体費用は約55億円が見込まれている。ウラン濃縮原型プラントの遠心分離機(原子力機構発表資料より引用)ウラン濃縮は、核分裂しやすいウラン235を天然の約0.7%から軽水炉での使用に適した3~5%程度に高める燃料加工の一工程。原子力機構では、国内での核燃料サイクル事業の確立に向けて、1979年より技術開発に取り組んできた。ウラン濃縮原型プラントは、パイロットプラントの成果を引き継ぎ、遠心分離法濃縮技術や機器・設備の大型化など、商業化につなぐ研究開発を目的としたもので、1988年から2001年まで運転し約350トン(100万kWの原子力発電所で約3年分)の濃縮ウランを試験生産。1996年からは、回収ウラン(使用済燃料から再処理によって分離精製して回収したウラン)の再濃縮試験も行われた。原型プラントを通じて得られた技術は日本原燃の六ヶ所ウラン濃縮工場に導入されている。廃止措置計画で、プラント内の核燃料物質(六フッ化ウラン)については、原子炉等規制法による許可を受けた原子力事業者に廃止措置終了までに全量を譲渡するとしており、遅くとも2028年度末までの譲渡先決定を目指している。
20 Jan 2021
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