原子力規制委員会は3月17日の定例会合で、九州電力玄海原子力発電所の使用済燃料乾式貯蔵施設に関し、設置許可基準に「適合している」とする審査書案を取りまとめた。今後、原子力委員会と経済産業相への意見照会を経て正式決定となる運び。九州電力は2019年1月、玄海原子力発電所の使用済燃料貯蔵の増強に向け、リラッキング(使用済燃料プール内のラックの材質改良と稠密化を図ることで、貯蔵容量が約1.5倍に増加)および乾式貯蔵施設設置に係る申請を規制委員会に対し行った。そのうち、リラッキングに関しては、2020年3月までに原子炉設置変更許可取得および工事計画認可に至っている。電気事業連合会が7月に発表した「使用済燃料対策への対応状況」によると、2020年3月時点で、九州電力玄海発電所の使用済燃料は、管理容量1,190トンに対し貯蔵量が1,010トンに上っている。同社では、今回審査書案取りまとめに至った乾式貯蔵施設の2027年度運用開始を目指しており、玄海発電所についてはリラッキングと合わせて730トン分の貯蔵能力増強が図られることとなる。この他、17日の規制委員会会合では、日本原子力研究開発機構の研究炉「JMTR」の廃止措置計画認可などが決定した。
17 Mar 2021
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原子力人材育成の高度化に向けた高専連携の取組について話し合うフォーラムがこのほどオンラインで開催された。PINフォトダイオードを利用した放射線検出器(福井高専発表資料より引用)「基盤的な知識を身につけた高専卒業生は産業界から高く評価されている」との観点から、全国の国立高専を設置・運営する高等専門学校機構では、原子力産業を支える人材育成を担う立場として、大学や産業界とも連携した原子力教育・研究のネットワーク化を図る事業(文部科学省の「国際原子力人材育成イニシアティブ事業」として採択)を2020年度より開始。今回のフォーラムでは、同事業を取りまとめている富山高専教授の高田英治氏が、これまでの取組状況を報告し、原子力の基礎を学ぶ“eラーニング”など、遠隔教育ツールの整備について紹介したほか、各高専が大学や産業界とも連携し実施しているバーチャル研究室や電力会社でのオンライン実習の成果が披露された。その中で、富山高専・福井高専は、市販の電子部品(PINフォトダイオード)を利用した放射線検出器製作を「学生実験にも使用可能」などと、簡単な回路図とともに紹介し、機械・電気分野と原子力工学の知識を兼ね備えた人材の育成を図る教材となることを示唆。川崎病罹患数は近年急増している(岐阜高専発表資料より引用)また、全国9高専が参画する核融合・プラズマ分野のバーチャル研究室を率いる岐阜高専講師の柴田欣秀氏は、「核融合分野で培ったデータ解析技術を医療分野に活用できないか」と、医工連携による研究活動の取組として、機械学習を用いた川崎病発症に関する調査について披露。乳幼児特有の重篤疾患として知られる川崎病は未だ原因が解明されておらず、発見した川崎富作博士も昨夏に亡くなったところだ。柴田氏は、川崎病罹患率(0~4歳)が2000年以降急増しているデータや、細菌説・ウイルス説など、発症原因の推察をあげた上で、自治医科大学他と共同で昨今の感染症拡大に鑑みた三密回避と川崎病発症との関係を調査しているとした。この他、バーチャル研究室の取組として、福島高専・久留米高専によるエネルギープラント用構造材料の経年劣化の考え方・評価方法の習得を目的とした「鉄鋼材料の高温酸化挙動」の材料実習計画などが紹介された。
17 Mar 2021
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【国内】▽1日 高浜町が関西電力高浜1、2号機の再稼働(40年超運転)に同意▽10日 文科省がクリアランス制度でシンポ、福井県内市民も参加(~11日)▽12日 経産相と福井県知事と関西電力社長とがTV会談、関電より使用済燃料の県外搬出に向け「2023年末を期限に計画地点を確定」と▽13日 福島県沖を震源とする大地震発生、原子力発電所に大きな影響なし▽15日 美浜町が関西電力美浜3号機の再稼働(40年超運転)に同意▽16日 杉本福井県知事、議会に美浜3号機など3基の40年超運転に関する検討を要請▽16日 「原子力人材育成ネットワーク」が報告会開催、遠隔教育に関し議論▽18日 「ATENAフォーラム2021」がオンライン開催、海外からビデオメッセージも▽24日 総合エネ調基本政策分科会で経団連などが2050年カーボンニュートラルに向けリプレース・新増設の必要性を述べる▽24日 NUMOが高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る「包括的技術報告」改訂版(原子力学会レビュー後)を発表▽25日 総合エネ調原子力小委員会が2年ぶりに開催、2050年カーボンニュートラルを見据え議論▽25日 山形大で重粒子線治療が開始、東芝エネシステムズ他開発による装置導入▽26日 電力11社がプルトニウム利用計画を発表、「プルサーマルの推進に最大限取り組む」と▽26日 東京電力が柏崎刈羽7号機の再稼働時期に関し「未定」と発表、安全対策工事の一部未完了などを受け▽26日 関西電力グループが「ゼロカーボンビジョン2050」発表、CO2排出削減に向け「原子力エネを最大限活用」▽26日 原子力機構の研究炉「JRR-3」が10年ぶりに運転再開▽26日 原産協会・新井理事長が福島第一原子力発電所事故発生から10年でメッセージ発信▽28日 福島第一3号機で使用済燃料プールからの燃料取り出しが完了 【海外】▽2日 ポーランド内閣、2040年までの新しいエネルギー政策を承認▽2日 フラマトム社、米発電所で同社製試験用事故耐性燃料が18か月の運転サイクルを完了したと発表▽4日 欧州の13労組、「EUタクソノミー」に原子力を含めることをEC委員長に要請▽4日 ブルガリア原子力発電所へのWH社製原子燃料装荷に向け安全解析実施へ▽5日 英ウェールズ政府とサイズウェルC企業連合が協力覚書を締結▽5日 ロシアのロスアトム社、総裁メッセージで「2021年は海外市場に注力する」と発表▽9日 米エネ省、使用済燃料輸送用車両の試作・試験で許可取得▽10日 ロシアの規制当局が鉛冷却高速実証炉「BREST-300」に建設許可発給▽10日 カナダNB州、SMRの州内導入に向けARC社に2,000万加ドル追加提供▽12日 ロシア企業が中国・徐大堡3号機の機器製造を開始▽17日 ブルガリア、SMR建設の実行可能性調査でニュースケール社と覚書を締結▽17日 スペイン規制当局、コフレンテス原子力発電所の運転期間延長を承認▽18日 インドのL&T社、ロシア製クダンクラム5、6号機の土木建築契約を獲得▽22日 フラマトム社の2020年決算、収益が3.1%下落▽24日 ロシアの高速実証炉「BN-800」、MOX燃料のみで燃料を交換▽25日 仏国の90万kW級原子炉32基、50年間運転継続する見通しだと発表▽25日 米エネ省長官にジェニファー・グランホルム元ミシガン州知事が就任▽25日 ブラジル、アングラ3号機の建設再開に向け土木建築契約の入札公告 ☆過去の運転実績
16 Mar 2021
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日本財団はこのほど、全国17~19歳の男女1,000名を対象に「脱炭素」をテーマとして1月に実施したアンケート調査の結果を発表した。同財団が選挙権年齢の引き下げを機に様々な社会課題をテーマに継続実施している「18歳意識調査」として行われたもの。それによると、地球温暖化の主な原因として66.7%が「人間の社会活動に伴う温室効果ガスの排出」と、77.4%が地球温暖化のリスク(異常高温、豪雨災害など)を「知っている」と回答。「日本のCO2排出量を削減すべき」と回答した割合は73.0%で、これらはいずれも2019年に実施された「気候変動」をテーマとする「18歳意識調査」での結果と比較しいずれも上昇していた。CO2排出を削減するために進めるべき取組としてあげられたのは、「再生可能エネルギーの開発促進」が2位以下を大きく引き離し最も多く66.0%で、「電気自動車および蓄電池の開発促進」の36.4%、「家庭および企業の省エネ対策の推進」の33.7%がこれに次いだ。この他、「火力発電の比率を低くする」は27.9%、「停止中の原子力発電の再稼働」は10.7%だった(複数回答)。2050年カーボンニュートラルについては、「評価する」が60.4%、「評価しない」が10.3%、「わからない」が29.3%で、実現可能性については、「わからない」が50.2%と半数を占め、「実現可能だと思う」は14.4%、「実現可能だと思わない」は35.4%となった。「評価する」と回答した人のうちでも、実現可能性については「わからない」が42.9%、「思わない」が36.6%に上っており、「目標を掲げること自体は評価するが、今の生活スタイルを続ける限りCO2排出は防ぎようがない」といった若者の意識が浮き上がった。再生可能エネルギーのうち、最も期待が集まったのは太陽光発電の69.1%で、水力発電39.9%、バイオマス34.9%、地熱発電30.7%がこれに次いだ(複数回答)。「脱炭素社会に向けて日本のエネルギー政策はどのように変わるべきか」との問いに対する自由回答で、太陽光発電の導入促進については、家庭への設置義務付けをあげる意見もあった。また、原子力の推進に関し肯定的な意見(安全確保を条件、分散化、核融合、電力需給安定化に向けて再検討、現状やむなしも含む)は32件、否定的な意見(シェアの低減も含む)は25件だった。この他、自動車走行の圧力や雷を利用したエネルギーシステムの研究、国民の意識変革を促す取組、研究開発や人材育成への投資などもあがった。今回の調査結果を受け、日本財団会長の笹川陽平氏は3月11日の自身のブログで、「30年後の地球環境をイメージするのは難しいが、健全な地球を将来に引き継ぐためにも世代を超えた最大限の努力が欠かせない」と述べている。
15 Mar 2021
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東日本大震災・福島第一原子力発電所事故発生から10年を迎え、東京電力の小早川智明社長は3月11日、社員らに対し訓示を行った(=写真上)。〈動画は こちら〉発災時の14時46分より1分間の黙とうをささげた後、小早川社長は、震災による犠牲者への哀悼の意を述べるとともに、「今なお福島の方々を始め、広く社会の方々に多大なご負担・ご心配をかけていることに心よりお詫び申し上げる」と改めて表明。その上で、社員らに対し、(1)過去から学び実践に移す、(2)常に社会やお客様の目線で考える、(3)全員が主役となって安全性や品質を高め続ける――ことの重要性を強調。事故を振り返り「防ぐことができなかった根本原因や背後要因を省み日常業務に活かして欲しい」と、一人一人の行動姿勢が体現化されることを求めた。さらに、福島県出身の野口英世の名言「過去を変えることはできない。人生で変えることができるのは自分と未来だけ」をあげ、「過去から学び、心一つにして福島の復興、福島の未来のために、それぞれの持ち場で全力を尽くしてもらいたい」と訴えかけた。続いて福島復興本社から、大倉誠代表が訓示に立ち、「福島への責任に立ち向かうことは会社の経営方針」と強調。3月末で現職を退く同氏は、発災後の避難住民の方々への支援活動を振り返りながら、信頼失墜の厳しさを改めて認識した上で、「今から5年先か、10年先か、廃炉を成し遂げたときか、『東京電力は責任に向き合い続けた』と言われる日がきっと来る。3月11日の振り返りを新しい力に」と、社員らの今後の活躍に期待を寄せた。東京電力の取組に対し、電気事業連合会の池辺和弘会長は同日発表のコメントの中で、「安全確保を最優先とした廃炉や、生活環境の再生、産業基盤・雇用機会の創出といった取組を、引き続き全力で支援していきたい」としている。また、原子力規制委員会では、更田豊志委員長が、発災10年の節目に際し同委発足時の「初心を忘れぬよう」として所感を表明(=写真下)。更田委員長は、まず、原子力行政組織における推進と規制との分離を巡り議論となったいわゆる「規制の虜」(規制当局が被規制産業である事業者の利益に傾注する〈国会事故調報告書〉)の再来を危惧。さらに、「世界最高水準」と呼ばれる新規制基準においても「継続的改善を怠ることがあってはならない」と、慢心に陥ることを戒めた上で、改めて「新たな安全神話を生まないよう十分注意していく」との決意を述べた。その上で、原子力規制庁や事業者に対して、現在進めている審査・検査のガイドライン整備などが思考停止をもたらすことを懸念し、「安全を求める戦いは想定外を減らす戦いであって、新たに考え続けることが常に不可欠。時には白紙に戻って考える『ちゃぶ台返し』も必要」と警鐘を鳴らした。〈動画は こちら〉※写真は、いずれもインターネット中継より撮影。
11 Mar 2021
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関西経済連合会など、西日本の6つの経済団体(他、九州経済連合会、四国経済連合会、中国経済連合会、中部経済連合会、北陸経済連合会)は3月9日、総合資源エネルギー調査会で検討が行われているエネルギー基本計画の見直しに向けて連名による意見書を発表した。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、(1)研究開発戦略の明確化、(2)革新的イノベーションによる需要の高度化、(3)電源の低炭素化・脱炭素化、(4)適正な企業評価につながる情報開示の仕組み作り、(5)世界のCO2排出削減に対する貢献、(6)カーボンプライシング(温室効果ガス排出量に対し均一の価格を付けコスト意識を持たせる経済的手法)の慎重な議論、(7)国内外に向けたPR戦略の策定――を提言。革新的技術の研究開発戦略を明確化し、その成果をあらゆる部門に実装することで、最終エネルギーを電気または水素の利用に転換する「需要の高度化」に取り組むとともに、「電源の低炭素化・脱炭素化」を同時に進めるという考え。原子力発電については、「エネルギー安全保障の向上に加え、CO2フリー水素の安価で安定的な製造にも寄与する」と、重要性を改めて述べた上で、新増設・リプレースや次世代原子炉の開発・普及に取り組むことを明確に示すとともに、現行のエネルギー基本計画が掲げる「可能な限り原発依存度を低減する」との方針を見直すべきとしている。また、再稼働が進まぬ現状から、諸外国の事例や保全技術の進展などを踏まえ、運転期間延長認可制度の見直しにも言及した。意見書では、エネルギー政策に関する基本的考え方として、中長期的に「3E+S」(安定供給、経済効率性、環境適合性、安全性)を根幹とすることを第一にあげ、まずは2030年エネルギーミックスの達成に向け、原子力、再生可能エネルギー、石炭火力について取組を加速すべきことを強調。昨今の新型コロナ拡大による厳しい経済状況下、「再生可能エネルギーの大幅な積み上げによる温室効果ガス削減目標の上積みは、電力コストの上昇、わが国の産業競争力のき損につながる」と危惧し、今冬の電力需給ひっ迫にも鑑み、「3E+S」のうち、特に安定供給と経済効率性の重要性を訴えている。
10 Mar 2021
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政府は3月9日、2021~25年度の「第2期復興・再生期間」に向け、新たな「東日本大震災からの復興の基本方針」を閣議決定した。原子力災害被災地域については、「福島の復興・再生には中長期的な対応が必要であり、『第2期復興・再生期間』以降も引き続き国が前面に立って取り組む」としている。廃炉・汚染水対策に関し、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いについては、「先送りできない課題であり、政府として責任を持って、風評対策も含め、適切なタイミングで結論を出していく」とした。帰還困難区域の避難指示解除に向けては、区域内の「特定復興再生拠点区域」(市町村の計画に基づき、線量の低下状況を踏まえ5年を目途に居住可能となることを目指す復興拠点)以外における方針検討を加速化していく。また、「福島イノベーション・コースト構想」の推進とともに、浜通り地域の創造的復興の中核拠点として新設される「国際教育研究拠点」の整備にも取り組む。復興推進会議・原子力災害対策本部で発言する菅首相(官邸ホームページより引用)閣議に先立ち行われた復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合で、菅義偉首相は、「地元の方々と移住されてきた方々とが協力して、新しい挑戦を行う熱い思いに触れることができた」などと、6日の福島県訪問を振り返った上で、「福島の復興なくして、東北の復興なし。東北の復興なくして、日本の再生なし」と、改めて強調した。会見を行う梶山経産相(インターネット中継)東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から明後日で10年を迎えるのに際し、梶山弘志経済産業相は、閣議後の記者会見で、「燃料デブリの取り出し、帰還困難区域の避難指示解除に向けた取組、自立的・持続的な産業の発展など、さらなる難題を一つずつ解決していかねばならない。被災地の課題に正面から向き合い、福島が復興を成し遂げるその日まで全力を尽くす」との決意を述べた。また、原子力委員会は9日の定例会で、委員長談話を発表。「事故による悲惨な事態を防ぐことができなかったことを真摯に反省するとともに、原子力利用に対する国民の不信・不安が払拭できていないことを念頭に置きつつ、事故から得られた教訓を生かして、原子力安全を最重要課題として取り組んでいく必要がある」としている。
09 Mar 2021
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会見を行う内堀知事(インターネット中継)福島県の内堀雅雄知事は3月8日の記者会見で、東日本大震災から10年を迎えるのに際し、「福島第一原子力発電所事故により避難を余儀なくされていた方々が元の生活を取り戻す環境をつくり、ふるさとへの帰還を望む方々に帰ってもらう」という根幹の考え方に変わりはないことを改めて述べた。浜通り地域の住民帰還の状況(2020年6月現在、長崎大復興学セミナー・高村教授講演資料より引用)一方、浜通り地域では自治体により住民の帰還率に差異が生じている。内堀知事は、帰還率8割が見込まれる川内村について比較的早いタイミングで「帰村宣言」が発表された経緯をあげながらも、他市町村に関し「5割がなかなか見えてこない」などと、帰還が滞る現状を懸念。これまでに避難指示解除がなされた自治体の状況から、「長い期間避難先での生活になじんできた。子供の就学の兼ね合いなどもあり、これまで以上に時間がかかる」と、今後はより地道に「住民が戻るプロセス」をつくり出していく必要性を述べた上で、「ふるさとに戻ってもらうことが復興・再生の基軸」であることを繰り返し述べた。政府の復興政策委員会は3月1日、2021~25年度までを「第2期復興・創生期間」として、新たな復興の基本方針案を提示したが、内堀知事は、次のステージにおける重要施策として、(1)移住・定住政策を進める、(2)新しい産業を創出し雇用の確保にしっかり取り組んでいく――ことを強調。今後の産業創生に向け、双葉町の工業団地や大熊町のいちご栽培などを例に、他地域から進出した人たちとの連携にも期待を寄せた。
08 Mar 2021
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消費者庁はこのほど食品中の放射性物質に関する意見交換会を開催。食品に関するリスクコミュニケーションの一環として、消費者庁が食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省と連携し全国主要都市で行ってきたもので、今回は感染症拡大防止に鑑み、ウェブサイトで収録動画を公開し、一般からの質問・意見を受け付ける格好となっている(質問・意見の受付は3月7日まで、収録動画の公開は3月31日までを予定)。〈動画および質問・意見の応募は こちら〉意見交換会ではまず、放射性物質の基礎知識、食品中の放射性物質に係る対策と現状について説明。厚労省と農水省によると、福島第一原子力発電所事故後17都県を中心とする地方自治体で行われてきた食品中の放射性物質に関する検査で、2019年度に基準値(100ベクレル/kg)を超えたものは、栽培・飼養管理が可能な田畑・果樹園の農産物(山菜類を除く)・畜肉と海産魚介類についてはゼロとなっている。一方、消費者庁が2012年度より実施している風評被害に関する消費者意識実態調査の結果で、2020年度は、放射性物質を理由に福島県産品の購入をためらう人の割合はこれまでで最小となった。また、買物をする際に食品の産地を「気にする」または「どちらかといえば気にする」と回答した人のうち、「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」と回答した人の割合は減少傾向にあるものの、前年と同程度の14.1%だった。続くパネルディスカッションでは、フリージャーナリストの葛西賀子氏(コーディネーター)が、こうした根強く残る被災地産食品を忌避する傾向について問題提起。これに対し、消費者の立場から、コープデリ生活協同組合連合会サービス管理部長の篠崎清美氏は、「避けるというよりは、漠然とした不安があるのでは」として、行政機関などによるわかりやすい情報発信を改めて求めるとともに、「生産者と消費者の相互理解が安心して食べることにつながっていくのでは」とも指摘。いわき市で農業を営むファーム白石代表の白石長利氏は、自身を「農家と消費者を結ぶ『畑の仲人』」と称し、「安心・安全はもとよりいかに美味しいものを作るか。生の福島の声を野菜と一緒に届けていきたい」と、生産者としての使命感を強調。流通事業者の立場から、「うまいもんドットコム」などの食品通販サイトを運営する(株)食文化取締役の井上真一氏は、昨今のステイホームの流れにより食品通販の利用者が増えつつあるとする一方、家庭での食事に加工品が多くなりがちなことを懸念し、「食材そのものの魅力を発信したい」と、販路拡大に意欲を燃やす。ディスカッションの結びで、産業医科大学産業保健学部長の欅田尚樹氏は、「この1年間はコロナという新しいものに対する不安が続いてきたが、おうち時間の充実など、色々な工夫がなされてきた」とした上で、福島第一原子力発電所事故後の食品安全についても同様に、前例のない困難に対し検査体制の構築や生産段階での管理など、様々な取組があったことを忘れぬよう訴えている。
04 Mar 2021
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東京電力は2月28日、福島第一原子力発電所3号機の使用済燃料プールからの燃料取り出し作業が終了したと発表した(動画)。福島第一廃止措置に向けた中長期ロードマップで目標とする「2020年度内の取り出し完了」を達成。使用済燃料プール内の燃料取り出し完了は2014年12月の4号機に続くもの。同社では、続く1、2号機での燃料取り出し作業に向けて、「安全最優先で廃炉作業を着実に進めていく」としている。梶山弘志経済産業相は3月2日の閣議後記者会見で、「燃料デブリが残るプラントで使用済燃料の取り出しが完了したのは初めてのことであり、長期にわたる廃炉作業において重要な一歩」と述べた。3号機使用済燃料取り出しのイメージ(東京電力発表資料より引用)3号機の使用済燃料プールには、事故発生時、使用済燃料514体、新燃料52体が保管されていた。4号機に続く燃料取り出しに向けて、2017年度に燃料取り出し用カバー(全ドーム屋根)および燃料取扱機・クレーンの設置工事を完了。燃料取り出し開始は、当初「2018年度中頃」が目標とされていたが、燃料取扱機・クレーンの試運転で複数の不具合が連続して発生し2019年4月に延ばされた。2020年11~12月にはクレーンモーターのトラブルによる作業中断もあったが、燃料取り出しは12月24日時点で441体にまで達した。2020年度からは重量物落下によりハンドル部分に変形が生じた燃料への対応に向け、つかみ具の製作やつり上げ試験に入り、2021年2月3日よりこれら燃料の取り出しも開始。同28日に使用済燃料プール内の最後の6体を輸送容器から共用プール燃料ラックへ取り出す作業が終了した。続く2号機の燃料取り出し開始は2024~26年度が目標とされており、現在、燃料取扱設備の設計が進められている。
02 Mar 2021
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原産協会の新井史朗理事長は2月26日、月例のプレスブリーフィングを行い、同日発表の理事長メッセージ「福島第一原子力発電所事故から10年を迎えるにあたって」を配布し説明(=写真)。改めて被災者の方々への見舞いの言葉とともに、復興・再生に向け尽力する多くの方々への敬意・謝意を述べた。事故発生から10年を迎えるのを間近に、復興が着実に進展し生活環境の整備や産業の再生などの取組が期待される「ふくしまの今」を伝える情報発信サイトを紹介。原子力産業界として、「福島第一原子力発電所事故の反省と教訓をしっかりと受け止め、二度とこのような事故を起こさないとの固い誓いのもと、たゆまぬ安全性向上に取り組んでいく」とした。また、昨夏東京電力より現職に就いた新井理事長は、福島第一原子力発電所に配属された新入社員当時を振り返りながら、「私を育ててくれた場所、思い出がたくさん詰まった場所」と思いをはせたほか、発災後、富岡町における被災住宅の家財整理など、復旧支援活動に係わった経験に触れ、「住民の方々の生活が事故によって奪われたことに対し誠に申し訳ない」と、深く陳謝。福島第一原子力発電所の廃炉に向けて「現地の社員たちが最後までやり遂げてくれると信じている」とした上で、「1日も早い福島の復興を願ってやまない」と述べた。将来福島第一原子力発電所事故を知らない世代が原子力産業界に入ってくる、「事故の風化」への懸念について問われたのに対し、新井理事長は、会員企業・団体を対象とした現地見学会などの取組を例に、「まず現場を見てもらい肌で感じてもらう」重要性を強調。事故を踏まえた安全性向上の取組に関しては、「一般の人たちにわかりやすく広報していく必要がある」などと述べた。また、2050年カーボンニュートラルを見据えたエネルギー政策の議論については、「まず再稼働プラントの基数が増えていくこと」と、既存炉を徹底活用する必要性を強調。経済団体から新増設やリプレースを求める声が出ていることに対しては、「60年運転まで考えてもやはり足りなくなる」などと、首肯する見方を示した。
01 Mar 2021
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日本原子力研究開発機構は2月26日、研究炉「JRR-3」(東海村、最大熱出力20MW)が運転を再開したと発表した。同施設は、2018年11月に約4年間の審査期間を経て新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可を取得。その後、建屋の耐震改修工事などを完了し、最終段階となる定期事業者検査に合格となったもの。本格的な供用運転開始は6月末を予定している。〈原子力機構発表資料は こちら〉「JRR―3」は、1962年に初の国産研究炉として建設され、日本の原子力の草創期を支える多くの研究活動に寄与。最盛期の2008年度は年間の延べ利用日数(中性子ビーム実験装置数×運転日数)が5,270日にまで達した。旧原研・動燃が統合し原子力機構が発足した2005年度以降は、産業利用が急増。供用実験に占める産業利用の割合は2010年度で約35%となっている。利用分野は、原子炉燃料・材料の照射試験、医療用ラジオアイソトープの製造、シリコン半導体の製造など多岐に及ぶ。2010年11月に定期検査に伴い「JRR―3」は停止。以降、東日本大震災を経て、新規制基準への対応が図られてきたが、中性子利用に係るニーズを受け、2017年に日本学術会議が「大強度陽子加速器施設『J-PARC』だけではとてもすべてをカバーできるものではなく、研究炉の役割は非常に大きい」との提言を発表するなど、産業利用のツール、人材育成の場として、早期の運転再開が求められていた。原子力機構は、「JRR-3」の運転再開により「多彩な研究者・技術者が集まる科学探求・イノベーション創出の場を提供できる」と期待を寄せ、「安全確保の徹底を大前提に、立地地域の皆様の理解を得ながら、研究開発を通じて地域・社会に貢献できるよう取り組んでいく」としている。
26 Feb 2021
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=安井至・バックキャストテクノロジー総合研究所エグゼクティブフェロー)が2月25日、およそ2年ぶりに開かれ、2050年カーボンニュートラル実現を見据えたエネルギー政策における原子力利用の方向性について検討が始まった。同調査会の基本政策分科会では昨秋よりエネルギー基本計画の見直しに向けた検討を本格化。2050年カーボンニュートラル宣言(10月26日の菅首相所信表明演説)で、「再生可能エネルギーを最大限導入」、「安全最優先で原子力政策を進める」との方向性が示されたのを受け、同分科会では12月の会合で、原子力を巡る課題を、(1)安全性の追求、(2)立地地域との共生、(3)持続的なバックエンドシステムの確立、(4)事業性の向上、(5)人材・技術・産業基盤の維持・強化/イノベーションの推進――に整理し議論を深めていくこととした。25日の原子力小委員会会合では、このうち、安全性の追求と立地地域との共生について、電気事業連合会原子力開発対策委員長の倉田千代治氏らより説明を聴取。倉田氏は、地域との共生に関し、電力個社で行われる地元小中学校への「出前授業」、水産業への研究支援、清掃・緑化活動、イベント開催などの他、原子力防災対策の取組事例を紹介した。その中で、原子力災害時における協力要員の派遣・資機材の貸与などについて定めた事業者間協力協定(12社締結)について、3月中にも見直しを行い、派遣要員を現在の300人から3,000人規模に拡充し、発災時の住民避難を円滑に実行できる相互支援体制を構築するとした。安全性向上に関しては、原子力エネルギー協議会(ATENA)理事長の門上英氏も産業界挙げての取組状況を説明。2018年のATENA発足時を振り返り山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)は、原子力安全推進協会(JANSI)や電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC)との連携効果を改めて示すよう求めた。また、立地地域との共生に関する論点の中で、資源エネルギー庁は、発電所の運転終了後も見据えた立地地域の将来像を地域と国・事業者がともに議論する場の創設を提案。これに対し、杉本達治氏(福井県知事)は書面を通じ、「国の原子力に対する考えが漠然としていては、事業者の安全への投資意欲が失われ原子力を志す人材も集まらない。結果として立地地域の安全が脅かされかねない」と、原子力政策の方向性を危惧した上で、「より具体的な内容になるよう取り組むべき」と、議論の場の早急な設置を求める意見を出した。この他、委員からは、新型コロナを機にサテライトオフィスを求める動きをとらえた「便利で快適な暮らしのモデルケース」となる地域振興策の提案や、2050年カーボンニュートラルの関連で、「2050年以降も見据え原子力の長い将来の姿を念頭に議論すべき」、「再生可能エネルギーの不確実性を補うため、原子力を一定比率持つことは国家の安定にとって不可欠」との声があった。また、原子力を巡る課題に関し、東日本大震災からの復興が進まぬ自治体の現状、地層処分に係る調査受入れを拒否する条例制定の動きなどから、「ネガティブな情報も整理すべき」といった意見や、昨今の不祥事に鑑み、「信頼回復ウェブサイトを設け真実をきちんと出していくべき」との声もあった。
25 Feb 2021
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日本原子力文化財団は、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業への関心を全国に広めるべく様々な活動を行う人たちの声を紹介した特設サイト「知爽(ちそう)の人」を設け、順次動画コンテンツを公開している。その中で、2月10、11日に開催された「クリアランス制度」に関するシンポジウム(文部科学省主催)にも市民の立場から登壇した鈴木早苗氏(=写真上、福井県鯖江市在住、原発のごみ処分を考える会)は、「対立ではなく対話でお話ししていきたい。何かを生産すれば必ず『ごみ』は出る」と、2017年より有志で継続している地域対話活動の取組姿勢を示し、使用済燃料の問題について考える必要性を強調。さらに同氏は、北海道寿都町・神恵内村で処分地選定に向けた文献調査が開始したことに関し、「そこに決まればよい。うちに来なければよい」というのではなく、電気の恩恵を享受した日本全体が放射性廃棄物の問題に向き合うべきとした上で、次世代層に対し「頭の柔らかい若年層の方々なら純粋にこの問題を考えていってくれるだろう」と期待を述べている。また、高レベル放射性廃棄物に関する資源エネルギー庁主催の学生フォーラムなどに参画してきた平澤拓海氏(東北大学工学部)は、「地層処分を次世代に知ってもらうために学校教育ははずせないポイント」とした上で、現地の声や施設を見聞きし「自分の意見を持てる環境」を作っていくことを主張。幌延深地層研究センターの見学をきっかけに高レベル放射性廃棄物の処分問題に関心をもったという渡邊恭也氏(=写真下、北海道大学工学部)は、地層処分事業が進展するフィンランドとスウェーデンの視察経験から「専門家や国の機関に対する信頼の高さ」を強く感じたとしている。「知爽(ちそう)の人」では、この他、地層処分の理解に向け、中学生サミットを毎年開催している澤田哲生氏(東京工業大学先導原子力研究所助教)、松江市で学生を中心とした学習会を行う石原孝子氏(環境とエネルギーを考える消費者の会)のインタビュー動画が紹介されている。※写真は、いずれも原子力文化財団ホームページより引用。
24 Feb 2021
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電気事業連合会の池辺和弘会長は2月19日の定例記者会見で、13日23時過ぎに発生した福島県沖を震源とする大地震への対応状況を説明した。東京電力エリアで最大約86万戸、東北電力エリアで最大約9万戸発生した停電は翌14日午前9時までにすべて復旧。揺れの大きかった地域の原子力発電所においても、大きな影響はなく、福島第一原子力発電所では、原子炉注水設備や使用済燃料プール冷却設備など、主要設備に異常がないことが確認されたとしている。火力発電所では、地震の影響で複数のプラントが停止したものの、被害の軽微なプラントから順次運転を再開しており、電力供給に大きな影響はない状況だ。〈電事連発表資料は こちら〉なお、福島第一原子力発電所における今回の地震に伴う影響に関し、東京電力は22日の原子力規制委員会の検討会で説明。発災後の現場パトロールの状況を整理し、19日までに1、3号機の原子炉格納容器の水位に低下傾向があることが確認されたが、原子炉圧力容器底部温度や敷地境界モニタリングポストに有意な変動はみられず、外部への影響はないものとしている。ベース供給力不足のイメージ(電事連発表資料より引用)また、電事連は会見で今冬の需給状況に関し、「数年に一度レベル」の非常に強い寒波到来に伴い、12月下旬から1月上旬にかけて電力需給のひっ迫が生じたが、電力各社では燃料の追加調達や日頃稼働していない高経年火力を含めた発電所をフル稼働させるなど、供給力の確保に全力を尽くすとともに、需給ひっ迫エリアへの広域的な電力融通も図り安定供給が確保されたとしている。1月下旬以降は、気温が平年を上回る日も多くなり電力需要は落ち着きを見せ、発電用LNGについても各社とも安定供給に必要な水準にまで回復。電力供給面では、関西電力大飯4号機(関西エリア供給力の4%に相当)が1月17日に発電を再開した。電事連は2月17日の総合資源エネルギー調査会会合で、今般の需給ひっ迫対応における課題として、(1)リスクを考慮した需給電力量(kWh)想定と評価の不足、(2)ベース供給力の不足、(3)全国大で燃料不足が発生している状況の把握遅れ(4)需給電力量不足に対するエリア間で融通調整に時間を要したこと、(5)節電協力のお願いの実施検討・調整に時間を要したこと――をあげている。
22 Feb 2021
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「原子力エネルギー協会」(ATENA)がこれまでの活動状況を報告し、原子力産業界の関係者が取り組むべき課題を共有する「ATENAフォーラム2021」が2月18日、オンラインにて開催された。門上ATENA理事長ATENAは2018年7月に電力会社他、メーカーなども含めた原子力の安全性向上に向けた産業界を挙げての組織として発足し、(1)事業者に対する効果的な安全対策の導入促進、(2)産業界の代表者としての規制当局との対話、(3)安全性向上の取組に関する社会とのコミュニケーション――の役割を担っている。門上英ATENA理事長の活動報告によると、福島第一原子力発電所事故後の事業者の取組状況を踏まえ、現在、サイバーセキュリティ対策など、19の共通技術課題を抽出し検討が行われている。原子力発電プラントの40年超運転の関連では、原子力規制委員会との技術的意見交換も踏まえ、安全な長期運転に向けて、(1)長期停止期間中の保全、(2)設計の経年化評価、(3)製造中止品の管理――に係るガイドラインが9月に策定された。山中原子力規制委員フォーラムに来賓挨拶として訪れた原子力規制委員会の山中伸介委員は、「安全性の向上には規制側と被規制側の双方による対話が必要」と述べ、経営層に限らず様々な階層での信頼関係をベースとしたコミュニケーションの重要性を強調。今後のATENAの活動に向けては、「グッドプラクティスを事業者全体で共有できる機能」、「安全を担う人材育成」に期待を寄せた。コーズニックNEI理事長また、海外から、マリア・コーズニック米国原子力エネルギー協会(NEI)理事長、リチャード・A・メザーブ電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC、2014年に設立された日本の組織)顧問、ジョージ・アポストラキス同所長、ウィリアム・E・ウェブスター・ジュニア原子力安全推進協会(JANSI)会長が、ビデオメッセージにて講演。コーズニック氏は、気候変動問題に直面する世界情勢を踏まえ、「クリーンエネルギーの礎を築かねばならない。原子力はどんなときも一刻も動きを止めない安定したカーボンフリーのエネルギー源」と、原子力の役割を強調。さらに、「世界では原子力利用の機運が高まっている」と展望を述べ、ATENAとともに「クリーンエネルギーの未来」の創造に向け努力していく考えを示した。メザーブ氏は、福島第一原子力発電所事故後の日本において、産業界と規制機関とのコミュニケーションには一定の評価を示す一方、「国民は原子力に対し未だに懐疑的だ。信頼獲得には長い時間を要する」と指摘。アポストラキス氏は、事業者による安全性向上の取組に関し、NRRCが研究開発を進める確率論的リスク評価(PRA)の国際的比肩を課題としてあげ、それぞれATENAへの協力姿勢を示した。JANSIの会長に就任し間もなく3年となるウェブスター氏は、原子力の安全性向上に向けた枠組として、発電所を運転する事業者、国の安全規制機関に加え、産業界の支援グループをあげ、米国のNEI、原子力発電運転協会(INPO)、電力研究所(EPRI)による成功事例にも触れながら、「個々の問題に協力して取り組み、国際的コミュニティとも緊密なつながりを持つ」重要性を強調した。パネルディスカッションの模様フォーラムでは、遠藤典子氏(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティチュート特任教授)をモデレーターとするパネルディスカッションも行われ、加藤顕彦氏(日本電機工業会原子力政策委員会委員長)、倉田千代治氏(電気事業連合会原子力開発対策委員会委員長)、近藤寛子氏(東京大学大学院工学系研究科)、山﨑広美氏(JANSI理事長)、玉川宏一氏(ATENA理事)が登壇。ATENAの果たすべき役割の他、社会からの信頼獲得や人材育成などについても意見が交わされた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
19 Feb 2021
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原子力人材育成に係る産学官連携のプラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」(運営委員長=新井史朗・原産協会理事長)の2020年度報告会が2月16日に開催された。オンライン形式となった今回の報告会には約120名が参加。原子力教育における遠隔ツールの活用をテーマに、小原徹氏(東京工業大学先導原子力研究所教授)の進行のもと、パネルディスカッションが行われた。登壇者は、喜連川優氏(東京大学生産技術研究所教授)、若林源一郎氏(近畿大学原子力研究所教授)、高田英治氏(富山高等専門学校教授)、中園雅巳氏(IAEA原子力エネルギー局上級知識管理官)。九大学生へのアンケート結果「オンライン授業は対面授業を代替できていたと思いますか」(国立情報学研・喜連川氏発表パワポより引用)国立情報学研究所所長も務める喜連川氏は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い2019年度末より取り組んできた大学教育における「対面から遠隔への転換」支援策を披露。行政機関や全国の大学・高専などと連携した情報交換活動により、遠隔講義での著作物の無償利用(2020年度内)が可能となった成果を紹介した。また、同氏は、九州大学で最近実施された遠隔講義に関する学生アンケートの結果を例示。それによると、学部1年生より2~4年生の方が遠隔講義への満足度が顕著に高い傾向にあった。コロナ終息後も見通した講義スタイルに関する学生の意見から、講義録をオンデマンド配信し難解な部分を繰り返し視聴できる工夫も求められていることをあげた上で、喜連川氏は「学びのスタイルが変わりつつある」などとして、今後もIT技術を通じた高等教育の向上に取り組んでいく考えを述べた。近大が構想する「原子炉遠隔実習システム」のイメージ(上)とバーチャル・コンソール画面(近大・若林氏発表パワポより引用)教育現場に携わる立場から若林氏は、大学保有の原子炉が少ない現状下、研究炉「UTR-KINKI」を用いた実習に関し、研修生の旅費と原子力規制(入域人数制限など)の課題をあげ、TV会議システムを通じ研究炉を持たない国にも原子炉実験の機会を提供するIAEA-IRL(Internet Reactor Laboratory)を手本とした「原子炉遠隔実習システム」構想を披露。モニター画面に表示される「原子炉バーチャル・コンソール」を遠隔地の教室と共有し指導を行うもので、現場での実習参加に替わる有効な手段として期待を寄せた。一方、感染症対策により2020年度はオンラインによる原子炉実習を行った経験から同氏は、「対面でないと伝わらないものもある。実際に現場に入るまでの手続きも含めて実習といえる」などと述べ、遠隔実習には限界があることを示唆。高田氏は他校へも配信する原子力人材育成“eラーニング”のカリキュラムを紹介し、今後の課題としてコンテンツの充実と若手高専教員の裾野拡大をあげた。また、将来のリーダーを目指す各国若手の育成に向けたIAEA「原子力エネルギーマネジメントスクール」(NEMS)に関わる中園氏は、国際的視点から、オンラインを通じたイベントを開催する上で、地域間の時差を「最大の問題」と指摘。一般参加者を交えた討論では、原子力分野の遠隔教育に関し、機微情報に係るセキュリティ対策についても質疑があった。上坂原子力委員長「原子力人材育成ネットワーク」は2010年11月の発足から10年を迎えた。今回の報告会では、原子力委員会・上坂充委員長からの祝辞が紹介されたほか、ネットワーク初代の、それぞれ運営委員長、事務局長を務めた服部拓也氏(原産協会顧問)、杉本純氏(サン・フレア校長)が、当時を振り返るとともに、発足4か月後に福島第一原子力発電所事故が発生し新たな課題に対応してきた経緯を語った。花光氏(仏プロバンスにてオンライン参加)また、NEMSの日本誘致(2012年)に貢献し、現在はITER機構で活躍中の花光圭子氏がフランスよりオンライン参加。コロナの影響で厳しい外出制限が敷かれている現地の状況を述べながらも、「ネットワークを活かした実習が続いていることはとても意義深い」と、日本が主導する原子力人材育成の取組に期待を寄せた。
18 Feb 2021
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福井県の杉本達治知事は2月16日、定例県議会の開会に際し、2021年度予算案、県政を巡る諸課題などについて説明し、その中で、関西電力美浜3号機、同高浜1、2号機の再稼働について議会での議論を求めることを表明した(=写真、オンライン中継)。3基とも2016年に原子力規制委員会により60年までの運転期間延長に係る設置変更許可が得られている。杉本知事はまず、13日に発生した福島県沖を震源とする大地震の被災地に対し見舞いの言葉を述べた上で、県としても先般嶺北地方を襲った大雪に伴う被害状況に鑑み、防災対策の強化に一層努めていく考えを強調した。原子力政策に関し、知事は12日に行われた梶山弘志経済産業相、森本孝関西電力社長とのTV会談について報告。それによると、森本社長からは、県外における使用済燃料の中間貯蔵に関し、むつ中間貯蔵施設(青森県むつ市、東京電力と日本原子力発電が設立したリサイクル燃料貯蔵が建設)の共同利用への参画希望が表明され、国や電気事業連合会と一体となって地元理解に取り組むとともに、同施設以外の検討も含めあらゆる可能性を追求していく考えが述べられたとしている。さらに、森本社長は、使用済燃料の県外搬出に向け「2023年末を期限に計画地点を確定するとし、期限までに実現できない場合は、確定までの間、美浜3号機、高浜1、2号機を運転しない」方針を明示。また、資源エネルギー庁より同計画地点の確定に向けて関係者の理解確保に最善を尽くすとの考えが示されたとし、知事は、関西電力による使用済燃料対策に関し、(1)一定の回答があった、(2)計画地点の確定期限が明示された、(3)確定に向けた関西電力と国の覚悟が示された――ものとして、「新しい課題の議論に入る前提は満たしたものと考えている」と結論付けた。加えて知事は、年明け後の政府・原子力防災会議による美浜地域の緊急時対応取りまとめ(1月8日)、高浜1、2号機の新規制基準適合性に係る保安規定認可(2月15日)などに言及。「美浜3号機と高浜1、2号機に関する許認可や防災対策の手続きは整った」とし、県として、国や事業者に求めている事項への対応を確認し、原子力安全専門委員会においてプラントの安全性について審議する考えを述べるとともに、議会に対し「再稼働について慎重に議論してもらいたい」と表明した。この他、知事はエネルギーを活用した地域振興に向けて、2020年3月に策定された「嶺南Eコースト計画」を通じ、原子力ビジネスの創出や研究炉利活用のプロジェクトに取り組んでいく意欲を示した。
16 Feb 2021
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資源エネルギー庁は2月10日、小学校高学年を対象とした「わたしたちのくらしとエネルギー」をテーマとする「かべ新聞コンテスト」の2020年度優秀作品を発表した。小学生のエネルギー問題に対する当事者意識を喚起し学校や家庭・地域での実践行動を促すことを目指した取組で、子供たち自らがかべ新聞形式に研究成果をまとめた553点の応募作品のうち、35点が入賞。経済産業大臣賞を、北海道大学附属札幌小学校(札幌市)の「どさえこ新聞」(=図、エネルギー教育情報ステーションホームページより引用)が受賞した。「どさえこ新聞」では、2018年9月の北海道胆振東部地震で発生した道内全域停電(約295万戸)を振り返り、電力需給における防災対策に着目。電気自動車「日産リーフ」について調べるため、北海道日産自動車へのインタビューを行い、発災時、「日産リーフ」からの給電で道内のコンビニチェーン「セイコーマート」が営業を続け市民の生活を支えた経緯を記事化し、「エネルギーのおすそわけ」と題し称賛している。また、道内に北海道電力泊発電所が立地することをとらえ、「原発と私たちの選択」と題するコラムも掲載。高レベル放射性廃棄物処分地選定に向けた寿都町と神恵内村での文献調査の動きにも触れ、「原発を持つ日本には核のゴミをどこかが受け入れなければならないのも事実」とした上で、風評被害に対する不安などから「北海道の未来に害がないことを約束してほしいと願う」と述べている。入賞作品には水素や太陽光など、個々のエネルギー供給源を特集的に取り上げた作品も多かったが、今回6点の作品が入賞し優秀学校賞を受賞した常葉大学教育学部附属橘小学校(静岡市)の「未来に届け!!エネルギー新聞」と「今までとこれからのエネルギー新聞」(いずれも優秀賞)では、日本のエネルギー資源・需給の全体像を整理し、将来の電力構成や地球温暖化問題について、データを織り交ぜながらまとめていた。
15 Feb 2021
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原子力発電所の廃炉が進む中、放射能濃度が低く人体の健康への影響がほとんどない金属・コンクリート廃棄物の再利用を可能とする「クリアランス制度」について考えるシンポジウム(文部科学省主催)が2月10、11日、若狭湾エネルギー研究センター(敦賀市)を拠点にオンラインで開催された。原電・山内氏2005年度に始まった同制度に設計段階から長く関わっており、昨夏より国際廃炉研究開発機構(IRID)理事長も務める日本原子力発電廃止措置プロジェクト推進室長の山内豊明氏によると、110万kW級のBWRの場合、発生する撤去物の総量は約53.6万トンで、そのうち、約5%に当たる約2.8万トンがクリアランス対象物となる。原電が開発中のクリアランス測定装置、ユニット化構造によりフリーレイアウトが可能に(同社発表資料より引用)同氏は、(1)循環型社会形成への貢献、(2)原子力発電所廃止措置の円滑化、(3)放射性廃棄物の減容化――から「クリアランス制度」の必要性を強調。国内商業炉で初めて廃止措置に入った同社の東海発電所の解体工事に関しては、2006年に金属約2,000トンに係る測定・評価方法が国により認可された後、そのうちの約400トン分が確認済みとなっており、原子力施設の遮蔽体やPR館のベンチなどへの再利用が進められている。原電では、敦賀1号機でも廃止措置を進めているが、今後の作業増に備え、より作業負担・コストを軽減するクリアランス測定装置の開発にも取り組んでいる。今回のシンポジウムでは、初日にバックエンド対策が進展するスウェーデンなどの海外事例の報告を受けた後、2日日には「クリアランス制度」の定着に向けた方策について、1月に福井県内で行われた市民勉強会の参加者も招きディスカッションを行った。関西大・土田氏2日日ディスカッションの座長を務めた土田昭司氏(関西大学社会安全学部教授)はまず、「クリアランスの制度普及と国民理解」と題して講演。同氏は、人体の健康に影響がない放射能レベルの基準「クリアランスレベル」は、自然界から受ける放射線量の100分の1以下に過ぎない年間0.01mSv相当の放射能濃度であることを改めて強調。土田氏が示した経験的判断による錯誤の一例、上段の1文字目と下段の4文字目は同じ形状だが「HOME」「TODAY」という単語を知っていることからそれぞれ「H」「A」と読んでしまうその上で、リスクコミュニケーションの観点から、岸和田のだんじり祭や長野の御柱祭など、死者を出すほど危険と隣り合わせの祭が長く続いていることを例に、「安全の基準は人々の合意で成り立っている」と述べた。さらに、「自動車を使わなければ事故はなくなるが、それを使うことによって得られる利益もなくなる」として、危険と利益のバランスを考える「リスク学」の視点を提示。また、土田氏は、風評被害について「事実と異なる情報の流布」と定義し、心理学の立場から、発生のメカニズムを、経験的判断による錯誤(思い込み)の事例や流言が広まる要因・背景を分析しながら説明。昨今の新型コロナウイルスに対する人々の動きにも触れ、複雑・不確実な情報・知識に対し専門外の人は真偽判断が困難なことを述べた上で、クリアランスに関わるリスクのとらえ方に関し「一般の人たちは独力で対応できない。まずは信頼が重要」と結論付けた。福井大・柳原氏、クリアランスのビジネス化に向け「嶺南Eコースト計画」にも期待ディスカッションに移り、先の市民勉強会で学生参加者の指導に当たった柳原敏氏(福井大学附属国際原子力工学研究所特命教授)は、「学生たちはクリアランスの考え方をよく理解していたと思う。家庭での会話を通して少しずつでも広がっていけばよいと思う」と所感を語った。量研機構・鈴木氏、学校向けの副読本を示し原子力教育の重要性も強調また、広報部門での経験が豊富な鈴木國弘氏(量子科学技術研究開発機構次世代放射光施設整備開発センター総括参事)は、大強度陽子加速器施設「J-PARC」へのクリアランス物利用(遮蔽体)の報道を振り返り、「オブジェのようなものを作ればもっとPRにつながるのでは」と提案。勉強会参加者からは、高レベル放射性廃棄物処分に関し10年間理解活動を続けているという鈴木早苗氏(鯖江市)が、フィンランドの学校視察経験に触れ、「日本は原子力教育というと、腫れ物に触れるようだ。もっとフランクに語れるようになれば」などと指摘。さらに、今後の「クリアランス制度」の理解促進に向けては、「よいプレゼンターを育てることが重要」と強調した。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
12 Feb 2021
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文部科学省の原子力研究開発・基盤・人材作業部会(主査=山口彰・東京大学大学院工学系研究科教授)は2月10日、日本原子力研究開発機構の中長期事業目標(2015~21年度)の変更に関し、日本原子力産業協会と日本電機工業会よりヒアリングを行った。中長期目標の変更は、独立行政法人の目標策定に関する政府指針の改訂などに伴うもので、新たな中長期目標案には、人材確保・育成やイノベーション創出に向けた取組が追加記載されている。同機構を所管する一行政庁として文科省は、同作業部会で9日の電気事業連合会、日本原子力学会、原子力規制庁に続きヒアリングを実施した。10日の会合で、原産協会からは、人材育成部長の喜多智彦氏が産学官連携のプラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」の共同事務局を原子力機構とともに務める立場から説明。同氏は、研究開発と人材育成は「表裏一体」の関係にあるとし、効果的・効率的に進められるよう「協力と連携」をキーワードに掲げた。今後、革新炉・小型モジュール炉(SMR)などの研究開発に向け、「産官学連携研究開発プラットフォーム」のような仕組みが必要であるとし、原子力機構にその中核となる機能を期待。人材確保・育成の視点からは、同機構に対し、国際研修コースや学生実習などの取組に評価を示した上で、「大学との連携強化」、「技術系人材の確保・育成」、「長期的・継続的な人材・資金の投資」の重要性を述べた。電機工業会からは原子力部長の小澤隆氏が説明。同氏は、プラントメーカーの立場から、原子力機構に対し、新型炉の早期実用化に向けた規制対応、高速炉サイクル開発に係る海外の政府・研究機関との協力、水素製造システムの実証が期待される高温ガス炉「HTTR」の早期稼働などを要望した。原子力機構は、今後の人材育成・確保に関し、2月中にも見込まれる研究炉「JRR-3」の再稼働など、新規制基準対応より停止していた施設の再開を見据え、人・予算の1割程度増を目指していくとした。原子力産業以外でも技術基盤の維持が困難となっている現状について、喜多氏が「産業間で技術系人材の奪い合いが起きている」と述べたのに対し、産業界での経験を踏まえ佐藤順一氏(科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェロー)は、「国として真剣に考える必要がある」などと、喫緊の課題であることを改めて強調。また、原子力科学技術に係る立場から矢野安重氏(仁科記念財団常務理事)は、加速器を利用した放射性廃棄物減容化の技術開発に期待を寄せるなどした。科学技術行政に通じた寺井隆幸氏(東京大学名誉教授)は、2日間のヒアリングを振り返り、今後多分野にわたる原子力研究開発の方向性について改めて整理していく必要性を述べた。
10 Feb 2021
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【国内】▽8日 政府・原子力防災会議、美浜地域の緊急時対応を了承▽8日 西日本中心に記録的な寒波到来、火力発電利用率が約90%にまで上昇▽12日 新潟県委員会、福島第一原子力発電所事故による避難生活で検証結果を取りまとめる▽15日 学術会議他、東日本大震災発生10年で40学会参集のシンポ開催▽18日 菅首相が通常国会開会に際し施政方針演説、2050年カーボンニュートラル実現に向けた施策など示す▽20日 規制委、原子力機構人形峠ウラン濃縮原型プラントの廃止措置計画認可▽22日 小泉環境相、米バイデン新大統領のパリ協定復帰手続きに歓迎の意を表明▽23日 原子力機構が「もんじゅ」の燃料体取り出し作業を再開、2022年度の完了目指す▽25日 東京電力が柏崎刈羽7号機の取組に関する地域説明会を開始▽27日 規制委、福島第一原子力発電所事故に係る調査・分析で中間取りまとめ案▽27日 東京電力の「原子力改革監視委員会」、事故を踏まえた原子力安全改革の取組を評価▽29日 野瀬高浜町長が関西電力高浜1、2号機の40年超運転に関し梶山経産相とTV会談▽29日 農水省が中東・アフリカ地域による日本産食品の輸入規制がすべて撤廃されたと発表(イスラエルの25日付撤廃で)▽29日 原子力立地地域特措法改正案が閣議決定、延長で防災インフラ整備支援措置の継続へ 【海外】▽5日 カナダの処分場計画、建設候補地の1つで試験孔の掘削準備が進展▽11日 米国の公営電力事業体、ニュースケール社に同社製SMRのCOL申請準備を指示▽11日 英環境庁、英国版「華龍一号」の設計審査でパブコメ募集▽12日 米トランプ政権、宇宙探査と国防目的のSMR利用促進で大統領令発令 ▽12日 英国のクリーン・エネ企業、風力とSMRの複合発電所建設を米ニュースケール社と検討▽14日 米貿易開発庁、ルーマニアにおけるニュースケール社製SMR建設に向け技術支援▽20日 日英が核融合と廃止措置へのロボット工学適用で技術開発協力 ▽20日 米規制委のスビニッキ委員長が20日付けで退任▽20日 ブルガリア、コズロドイ7号機を建設する可能性を再検討▽21日 英シンクタンク、「2050年の気候中立達成には新規原子力への投資が不可欠」と提言▽23日 米規制委の委員長にハンソン委員が就任▽25日 米国で建設中のボーグル4号機でフラッシングを開始▽27日 英国のHPC計画、新型コロナの影響で送電開始が約半年遅延▽27日 英ホライズン社、新設計画の「開発合意書」申請を取り下げ▽30日 世界初の「華龍一号」、福清5号機が中国で営業運転開始 ☆過去の運転実績
08 Feb 2021
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産業技術総合研究所は2月1~5日、2020年度の成果発表会をオンラインで開催。動画とポスターを通じ200件を超える1年間の研究成果が発表された。IoT型放射線線量計その中で、分析計測標準研究部門の鈴木良一氏らは、省電力無線技術で2万時間の連続動作と効率的なデータ収集を可能にした「IoT型放射線線量計」を披露。同氏の研究グループは、原子力災害被災地のモニタリング用に被ばく線量を日々計測し記録する小型の放射線線量計(10~20g、学童・園児の名札に入るサイズ)を2012年に開発したが、無線通信の電力消費が大きく電池が消耗しやすいことが課題となっていた。このほどIoT(Internet of Things)技術を融合し開発された新たな線量計は、「Bluetooth Low Energy」とよばれる省電力無線通信技術を用い、3Vのボタン電池1個で連続2年以上(約2万時間)動作する低消費電力化を実現。年2,000時間程度の作業で使用する場合、約10年間電池交換が不要となる。さらに、過去1時間では1分ごと、過去1日では1時間ごとの線量率の時間推移をグラフ表示するディスプレイを搭載。専用の無線機構と組み合わせることで多数の線量計の時間データをリアルタイムで収集できる特長も備え、研究グループでは、「効果的な被ばく低減対策をとることが可能になる」と期待している。小型X線源、カーボンナノ構造体の持つ電子放出特性を利用また、X線・陽電子計測研究グループの加藤英俊氏らは、小型X線源を用いた非破壊検査技術について紹介。老朽化が懸念されるインフラ設備の点検増などの要請に応え、総重量2.5kgの小型X線源を開発し、これまで不可能であった狭あい箇所のX線検査を可能とした。今後はロボット・ドローンに搭載できるX線検査装置の開発に取り組んでいくとしている。
05 Feb 2021
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日本原子力研究開発機構、東京大学他による研究グループは2月4日、廃棄豚骨を原料とする安価で高効率な金属吸着剤を開発したと発表した。骨がストロンチウムなどの金属を吸着するメカニズムに炭酸が寄与していることを明らかにした上で、食品廃棄物の豚骨ガラを家庭で用いられる重曹(炭酸水素ナトリウム)水溶液に漬け込み「高炭酸含有アパタイト」を作成・分析し開発に至ったもの。〈原子力機構発表資料は こちら〉開発に当たった原子力機構物質科学研究センターの説明によると、骨の有する重金属の吸着性能を利用し、米国のハンフォードサイト(ワシントン州にある廃止措置中の原子力施設群)では、牛骨や魚骨を使ったストロンチウムやウランの拡散防止技術に関わる試験が行われているが、十分な吸着性能が得られていない状況。また、世界の食品業界では、年間75億トンもの廃棄骨が発生しており、有効な処理方法が模索されているという。研究グループでは、「骨の主成分である炭酸アパタイトに含まれる炭酸の量」に着目。豚骨を加圧加温した後、重曹水溶液に漬け込み組成・微細構造を解析したところ、骨中の炭酸アパタイトには未処理の骨より多くの炭酸が含まれ、重曹水溶液の濃度の増加に応じ多くの炭酸を含む「高炭酸含有アパタイト」が形成されることがわかった。この「高炭酸含有アパタイト」をストロンチウムが含まれる水溶液中に投入、かくはんした後、溶液を分析した結果、3分以内に99%のストロンチウムが吸着されることを確認。「高炭酸含有アパタイト」の最大吸着量は、未処理の骨および重金属吸着剤として知られる天然ゼオライト(クリノプチロライト)の約5倍に上っていた。原子力機構物質科学研究センターの関根由莉奈氏は、記者会見で、カドミウム汚染を原因とするイタイイタイ病など、大規模公害発生の歴史に触れ、有害金属の環境拡散を防ぐ重要性を強調。今後は「高炭酸含有アパタイト」の土壌中での効果を検証する考えを述べ、原子力施設や鉱山における環境浄化技術の他、有用金属回収への応用にも期待を寄せた。
04 Feb 2021
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