米国とブルガリアは2月12日、コズロドイ原子力発電所(100万kW級ロシア型PWRの5、6号機のみ運転中)の新設計画などの原子力プログラムの実施で、政府間協定を締結した。協定には、米エネルギー省(DOE)のA.ライト国際関係担当次官補とブルガリアのエネルギー省R.ラデフ大臣が署名。協定締結により、コズロドイ原子力発電所における新設プラントの設計・建設・試運転を支援するための作業部会の設置に加え、研究・訓練プログラムおよびブルガリアの原子力サプライチェーンの強靭化に向けた協力を進める。ブルガリアが安全で持続可能なカーボンフリーのエネルギー源として民生用原子力を開発するにあたり、透明性と一般市民の認知度向上のための協力も含む。A.ライト次官補は「米国は、ブルガリアの原子力安全・セキュリティ、核燃料供給、原子力プロジェクト開発など、民生用原子力発電計画のあらゆる側面を強化する取り組みを支援していく」と表明、R.ラデフ大臣は、「研修の実施やノウハウのシェア、人材の交流、多くのブルガリア企業によるサプライチェーンへの積極的な参加とその発展に向けた協力が重要である」と強調した。ブルガリアのコズロドイ原子力発電所が設立した新規建設会社(Kozloduy NPP – New Builds PLC=KNPP-NB)は2月2日、同発電所第Ⅱサイトで計画される米国ウェスチングハウス(WE)社製「AP1000」×2基の新規建設に係る主契約者選定で5社が関心表明を提出したことを明らかにしていた。2月16日、関心表明者が、米国のフルアー社、ベクテル・ニュクリアーパワー社、韓国の現代E&C(現代建設)社、中国の中国核工業集団(CNNC)オーバーシーズ社主導のコンソーシアム、中国能源建設股份(CEEC)の5社であることを公表。選定委員会は、各関心表明者のエンジニアリング・建設の経験や専門知識、経済・財政能力等の選定要件に照らした結果、韓国の現代E&C社を唯一の候補者に選定した。ブルガリアの国営通信社BTAによると、ブルガリアの国民議会は2月23日、現代E&C社との協議開始の承認を議決し、協議期限を4月15日とした。現代E&C社は、オフォー提出等の協議を経て主契約者に決定後、米WE社とコンソーシアムを組んで建設作業を開始する。現代E&C社の広報部門は、「アラブ首長国連邦のバラカ発電所建設受注から15年ぶりの海外市場への復帰となる。韓国政府の原子力産業復興への支援の結果であり、脱原子力政策で停滞していた韓国の原子力産業の復活のシグナルになるだろう」と指摘している。
28 Feb 2024
1905
英国の原子力部門は2月12日、今後20年間に民生用および国防用の原子力部門へ人材を募集するためのイニシアチブ「Destination Nuclear」を始動した。「Destination Nuclear」は、政府、民間の原子力部門の組織、サプライチェーン、教育機関を横断し、大きなスキルギャップを埋めることを目的としている。民生用および国防用の原子力部門のスタッフを今後20年間で倍増する必要があり、英国全体で約8万人増の技能職の雇用を見込む。業種転向の可能な技能を持ち、キャリアチェンジを検討している人材を対象とする。また、実習制度や大学卒業生向けの取り組みを支援し、業界をリードする組織や企業全体で博士課程の学生の雇用機会を増やすとしている。原子力部門は、成長とイノベーションの加速を目指し、高度な技能を持つ人材の採用と育成に投資を行う。他部門との協力や他産業から転向する可能性のある人材向けのリスキリングの訓練プログラム開発も行う。建設や製造業など他部門で働く人材が持つ技術-デジタル、ロボット、人工知能-は、原子力分野の溶接、システムエンジニア、プロジェクト計画、土木・構造エンジニアなどでも活用が可能である。英国政府は多額の投資を背景に、防衛戦略およびクリーンエネルギーへの移行のため原子力の活用に取り組んでおり、原子力を重要部門と認識。今年1月には、2050年のCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)へ向けた原子力ロードマップを発表し、2050年までに国内で合計2,400万kWの新規原子力発電所を稼働させる計画だ。英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相は、本イニチアチブの始動に際し、「英国の野心的な目標の達成には、原子力分野での採用を急速に拡大し、エンジニアから溶接工まで、新しい原子力プラントの設計と建設に十分な人材を確保する必要がある」と強調する。J.カートリッジ国防調達閣外大臣は、「人材は原子力部門のカナメであり、国防では24時間体制で貢献する。国防の原子力部門では今後数十年にわたり非常にエキサイティングな時期が続く。産業界と協力して母国での技能の可能性を実現していきたい」と語る。「Destination Nuclear」の責任者であるL.マシューズ氏は、「潜在的な候補者の多くは、原子力をキャリアとして考えていなかったかもしれない。『Destination Nuclear』は、原子力部門の豊富な雇用機会を示し、より幅広い分野出身の人材の挑戦的でやりがいのある持続可能なキャリア探しを支援する」と意気込みを語った。
28 Feb 2024
1433
米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)は2月8日、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を収納するシリンダーの一時的不足により、米エネルギー省(DOE)との契約の第2段階で予定していた900kgのHALEU燃料の年内納入は不可能との見通しを示した。DOEは契約上、製造されたHALEU燃料収納のための貯蔵用シリンダーを提供する必要があった。2023年第4四半期および通期決算報告の中で明らかにしたもので、同社の発表によると、DOEは、「サプライチェーンの問題により、必要な5B型シリンダーの確保が困難になっている」という。5B型シリンダー入手の遅れは一時的なものであるが、契約どおりの本年11月までには当初予想されていた900kgのHALEU燃料のDOEへの納入は困難との見方を示した。B型シリンダーは、濃縮ウランを含む燃料のガンマ線と中性子線からの遮蔽維持が可能な規制当局認定のキャスク。30B型シリンダーは、低濃縮ウランを燃料加工業者に輸送するために使用されるが、5%以上の濃縮ウランであるHALEU燃料には使用できない。セントラス社は昨年11月、オハイオ州パイクトンのポーツマス・サイトにある米国遠心分離濃縮プラント(ACP)で製造された20kgのHALEU燃料をDOEに初納入し、2022年に締結されたコストシェア((総費用を折半して支払う。))契約である第1段階を予算内かつ予定より早く終了した。その後、同社は第2段階のコスト・プラス・インセンティブ・フィー((原価加算契約の一種。発注者が負担すべき合理的な費用に加え、コスト削減を含め、パフォーマンス目標を達成または上回る契約に対して、成功報酬を上乗せして支払う。))契約である年間900kgのHALEU燃料製造に移行した。これら契約は、次世代原子炉用の先進燃料であるHALEU燃料を確保し、米国内のHALEU燃料のサプライチェーン構築を目的とするDOEの取り組みの一環である。製造されたHALEU燃料はサイト内の特設貯蔵施設に保管される。パイクトンでは、ポーツマス濃縮工場が1954年から2001年まで操業。当初は国の核兵器開発で濃縮ウラン製造のために建設されたが、1960年代に入り、商業的な用途に重点が置かれ、主に原子力発電所向けの濃縮ウランを供給した。冷戦終結後の1991年、兵器級ウラン濃縮は停止、1993年に濃縮施設はDOEからUSECにリースされたが、2001年に濃縮事業は中止された。USECは2014年に破産後、セントラス・エナジー社として再出発した。2019年のDOE原子力局との契約に基づき、同社はHALEU燃料製造を実証するため、ACPに新型遠心分離機「AC100M」16台連結の新しいカスケードを建設、昨年10月に濃縮役務を開始した。
27 Feb 2024
2928
米ウェスチングハウス(WE)社は2月8日、英国のコミュニティ・ニュークリア・パワー(CNP)社と、WE社製小型モジュール炉(SMR)「AP300」(電気出力30万kW)の4基建設で合意したことを明らかにした。英国初の民間出資の建設プロジェクトとなる。建設予定地はイングランド北東部、ティーズ川北岸にあるノース・ティーサイド地域。経済発展が著しい同地域では、カーボンフリーで信頼性のある電力需要が高まっており、米国のジェイコブズ社などを戦略的パートナーに、2027年までを目標に本プロジェクトのサイト開発を行っている。なお、CNP社は2022年9月に設立された原子力プロジェクト専門企業で、同社によると、プロジェクト実現のための必要な要素(土地、能力、技術、民間資本による資金調達、地域の需要)は揃っており、10年後のクリーンエネルギー供給を目指すとしている。今回のプロジェクトについて、WE社は、英国政府が今年1月に発表した「新規原子力プロジェクトの市場参入のための代替ルート(Alternative Routes to Market for New Nuclear Projects)」に関する協議(新型原子力技術に係る民間投資奨励に関する協議)に沿ったものであり、「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が昨年7月に開始したSMRの支援対象選定コンペへの「AP300」の参加を補完・支援するものと指摘。そのうえで、両社の協力により、同プロジェクトなど複数の建設プロジェクトを通じて、労働力やサプライチェーンなどのローカライゼーションの規模をさらに拡大する考えを示している。WE社が昨年5月に発表した「AP300」は、同社の「AP1000」技術をベースとした1ループ式の加圧水型原子炉で、2030年代初頭に初号機の運転開始を目指している。なお、WE社は2月13日、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)に、「AP300」の包括的設計審査(GDA)を正式に申請したことを明らかにした。DESNZはWE社のGDA申請書を事前に精査し、「AP300」のGDA開始前の評価基準適合を確認後、原子力規制庁(ONR)が同設計の安全性とセキュリティ面について、環境庁(EA)が環境影響面について、基準適合を評価する。これによりONRとEAは、「AP300」設計の安全、セキュリティ、環境への影響を、サイト特定後の建設申請とは別に評価する。WE社傘下のWEエナジー・システムズ社のD.ダーハム社長は、「AP300」の英国での建設協力についてCNP社への謝意を述べるとともに、「AP300」の英国でのタイムリーな展開を楽しみにしている、とコメントしている。
26 Feb 2024
1907
中国核工業集団(CNNC)は2月6日、中国海南省の昌江原子力発電所サイトで建設中の小型モジュール炉(SMR)「ACP100」(PWR、12.5万kW)で、格納容器の外側ドーム屋根の設置を完了した。SMRの実証プロジェクトである「ACP100」の別名は玲龍一号。原子炉建屋は、内部構造物、鋼製格納容器、コンクリート製遮蔽シェル外壁の3つの部分で構成されている。鋼製格納容器のドームは昨年11月に設置された。2月6日、重量550トンのドーム屋根の吊上げと設置作業は、1時間半ほどで完了した。CNNCによると、このACP100プロジェクトには6,000名が作業に従事。ドーム屋根の設置は原子炉建屋の主要構造物の据付完了を意味し、後続のモジュール炉開発に貴重なノウハウを残すという。CNNCは2019年7月、昌江サイトで今回のACP100×1基の建設プロジェクト開始を発表。同サイトでは1、2号機(PWR、各CNP-600、65万kW)が運転中。3、4号機(PWR、HPR1000(華龍一号)、各120万kW)が各々、2021年3月、12月に着工し、両機とも2026年末までに営業運転を開始する予定だ。ACP100へのコンクリート打設は2021年7月13日に開始され、予定工期は58か月。機器据付は2022年12月に開始、主要な炉内構造物の据付は昨年3月に完了している。なお、ACP100の開発は2010年に開始され、予備設計は2014年に完了、2016年にIAEAの安全審査をパスした初のSMRである。ACP100が完成すると、世界初の陸上型SMRとなり、年間10億kWhを発電し、年間88万トンのCO2排出を削減するという。ACP100は発電の他、熱供給、蒸気生産、海水淡水化の用途を持ち、安全性の高い分散型クリーンエネルギー源として、町や工業地域の隣接地での設置が可能である。CNNCは、ACP100をHPR1000の成功に続く、中国の原子力技術革新における重要な成果と考えており、世界市場への展開を視野にいれている。中国製HPR1000はパキスタンのカラチ発電所2、3号機(各110万kW)で運転中、チャシュマ発電所5号機で計画中の他、アルゼンチンのアトーチャ発電所3号機でも計画中である。ACP100の所有者・運転者はCNNC傘下の中国核能電力股份(CNNP)で、炉設計は中国核動力研究設計院(NPIC)、建設は中国核電工程(CNPE)等が担当。炉容器は上海電気集団(SEC)、蒸気発生器はCNNC傘下企業、他炉内構造物は中国東方電気集団(DEC)が供給している。
22 Feb 2024
10987
韓国のHD現代(ヒュンダイ)グループ傘下の韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)社は2月4日、英国のコア・パワー社と米国のサザン・カンパニーおよびテラパワー社と協力して、船舶用の小型モジュール原子炉(SMR)の開発に参画する計画を明らかにした。2022年11月、KSOE社はテラパワー社に3,000万ドル(約45億円)を出資している。四社は、テラパワー社の塩化物熔融塩高速炉(MCFR)の設計をベースに、共同開発を行う計画だ。MCFRは冷却材と燃料の両方に塩化物熔融塩を使用し、核分裂反応をより効率的に行う高速炉型原子炉。従来の原子炉よりも高温で運転できるため、発電効率が高く、プロセス熱や熱貯蔵も可能。テラパワー社は、MSFRの船舶用熔融塩炉であるm-MSRを開発中である。2023年10月、サザン・カンパニー、テラパワー社は熔融塩を用いるポンプ駆動運転等の統合効果試験(IET)に成功、MCFR開発で大きく前進している。なお、KSOE社は3月にもテラパワー社に研究開発チームを派遣し、洋上発電所や新たな用途でこれらパートナーと原子力利用の共同研究開発を進めていく。また、国際原子力機関(IAEA)や米国船級協会(ABS)、英国のロイド船級協会(LR)とともに、原子炉の船舶利用に関するシステム構築の議論にも参加する予定である。海運業界は年間約3.5億トンの化石燃料を消費し、世界の炭素排出量の約3%を占めている。2023年7月、国際海事機関(IMO)は2050年頃までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする新たな戦略を採択した。海運業界は、低排出の燃料、インフラ、技術の開発導入を急いでいる。コア・パワー社のM.ボー会長兼CEOは、KSOE社の開発プロジェクトへの参加を歓迎し、「造船とエンジニアリング部門におけるKSOE社の世界最高レベルの専門知識に、コア・パワー社の海運・エネルギー業界60社以上の株主が加わる。海運業界でも原子力なしにネットゼロは達成できないことが広く認識されている」と強調している。
21 Feb 2024
2323
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は2月6日、欧州で2030年代初頭までに小型モジュール炉(SMR)の展開を加速することを目的に「欧州SMR産業アライアンス(European Industrial Alliance on SMRs)」を立ち上げた。同アライアンスの立ち上げにより、EU大での労働力確保などサプライチェーンを確立し、SMRの早期導入を目指す。同アライアンスの主な行動計画は以下の通り。アライアンスの支援対象となるSMRの選定欧州のサプライチェーン(燃料および原材料を含む)の不安要素の特定および解決SMR開発にあたり資金調達問題の精査および新しい調達枠組みの検討SMRおよび先進的モジュール炉(AMR)に関する研究の将来ニーズの検討サプライチェーンのレベルを精査し、EU大や各国レベルで対処アライアンス参加会員の募集も行われる。なお、アライアンスの範囲、目的、活動を網羅する普及イベントが3月にブリュッセルで開催される。アライアンスの創設を主導する欧州原子力産業協会(nucleareurope)Y.デバゼイユ事務局長は、「SMRの導入は、エネルギー供給保障の確保、CO2排出量の削減、新たな雇用、経済成長など、欧州に大きな利益をもたらす。本アライアンスが欧州の原子力産業界のレベルを高める」とその意義を強調している。ECは「2050年までにEUの気候中立」という合意目標達成の可能な道筋について、最新の影響評価に基づき、2040年までに1990年比で温室効果ガス排出量を90%削減することを提案、すべての利害関係者との協議を開始するとしている。
20 Feb 2024
1768
J. ハープートリアン駐スロベニア米国大使は2月6日、小型モジュール炉(SMR)の国内建設を検討しているスロベニアに対し、米国がSMRの実行可能性調査(F/S)や技術支援などに資金提供を行うとした書簡をスロベニアのT. セルセン環境・気候・エネルギー省副大臣に手交した。今回の決定は、米国が主導する石炭火力発電所からSMRによる原子力への転換プログラムである「プロジェクト・フェニックス(Project Phoenix)」の一環。スロベニアは2023年6月、環境・気候・エネルギー省が中心となり、国内唯一のクルスコ原子力発電所(PWR×1基、72.7万kW)を所有する国営電力のGENエネルギア社、国営スロベニア電力ホールディング(HSE)、コンサルティング企業のハッチ社などの協力を得て、同プロジェクトへの助成金申請を行っていた。これまでに、同プロジェクトの支援対象となっている国は、チェコ、スロバキア、ポーランド、ルーマニアの計4か国。プロジェクト・フェニックスは、欧州での石炭火力発電所からSMRへの移行を加速させると同時に、プラント・スタッフの再訓練を通じて地元の雇用を維持する計画で、中・東欧諸国の脱炭素化とエネルギーセキュリティを支援するために、F/Sや技術支援などを米国が直接支援する。2022年11月、J. ケリー米気候問題担当大統領特使が、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)で同プロジェクトを発表、米国務省の国際支援プログラム「SMR技術の責任ある活用に向けた基本インフラ(FIRST)」の下、安全性やセキュリティ、核不拡散の最高水準に基づいて、パートナー国の能力開発支援が行われる。また、国務省は、技術、コンサルティング支援に米エンジニアリング企業のサージェント&ランディ社(Sargent & Lundy, L.L.C.)をプロジェクトの実施パートナーとして選定している。今回の米国の決定について、セルセン副大臣は、「プロジェクト・フェニックスへの参加は、スロベニアの国家エネルギー・気候計画の国際公約遵守に向けた取組に資するもの」として歓迎している。なお、欧州委員会(EC)の資料によると、2021年のスロベニアの電源構成は、再生可能エネルギー(バイオマス等含む)38%、原子力37%、化石燃料23%、天然ガス2%となっている。スロベニアは現在、既存のクルスコ原子力発電所の隣接サイトで最大240万kWの原子炉増設を計画中(JEKプロジェクト)。JEKプロジェクトをめぐっては、増設の是非を問う国民投票が今年後半にも実施される予定である。一方、既にプロジェクト・フェニックスの助成対象に選ばれているスロバキアのスロバキア電力(SE)は14日、サージェント&ランディ社のスタッフが同国を訪問し、F/S実施に向けた初期の現地調査を開始したことを明らかにした。スロバキア電力によると、2025年までにF/Sを終え、2029年までに環境影響評価(EIA)を含むSMRの初期設計と許認可手続きを完了し、2035年の運転開始をめざしている。
19 Feb 2024
1818
ブルガリアのコズロドイ原子力発電所が設立した新規建設会社(Kozloduy NPP – New Builds PLC =KNPP-NB)は2月2日、同発電所7~8号機の建設計画に5社が関心表明を提出したことを明らかにした。5社の具体名は公式には明らかにされていないが、1月下旬、ブルガリアの首都ソフィアで開催された国際会議の席上、コズロドイ発電所のV.ニコロフ所長は報道陣に対し、韓国のヒュンダイ社、米国のベクテル社とフルアー社から非公式に関心が示されたと発言している。7~8号機の採用炉型は、ウェスチングハウス(WE)社製AP1000。関心表明の募集は、エンジニアリング、建設、調達および試運転を実施する、いわゆるEPCターンキー契約の主契約者の選定を目的としている。WE社は、AP1000の全体的な設計の責任を負い、AP1000の個々のシステムおよび建物の設計に関する責任はWE社が主契約者に委任する。関心表明の募集は1月19日に開始され、2月2日に締切られた。締切後、直ちに選考を開始。関心表明者の応募資格として、少なくとも原子炉2基の建設と試運転の経験を有し、また、少なくとも2基の原子炉施設とタービン施設の建設で確かな経験があること、または過去15年以内に原子炉2基で重要機器の供給と設置経験があること、さらに2018年から2022年までの5年間の売上高が年平均60億ドル(約9, 000億円)以上であることを定めている。なお、ロシアからの応募は予め除外されており、WE社は主契約者の選定に関与しない。KNPP-NB社は、7号機を2032年~2033年、8号機を2035年をメドに運転開始させたい考えだ。ブルガリアは2007年に欧州連合(EU)に加盟した際、加盟条件として2006年までに安全上問題のあるコズロドイ1~4号機(各VVER-440、44万kW)をすべて閉鎖した。現在5、6号機(各VVER-1000、104万kW)だけが運転中で、総発電量の約32%を賄っている。5、6号機とも、60年の運転期間延長を目指し、バックフィット作業を実施している。
16 Feb 2024
1622
ポーランド環境保護総局(GDOŚ)はこのほど、オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社に対し、小型モジュール炉(SMR)建設に関して、環境影響評価(EIA)の報告書作成に向けて取り組むべき分野を提示した。これを受け、OSGE社は、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」建設に向けて環境・立地調査を開始する。2023年4月中旬、OSGE社は「BWRX-300」建設に向けて地質調査を実施する7か所の候補地として、北東部のオストロウェンカ(Ostrołęka)とブウォツワベク(Włocławek)、南部のスタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)、ドンブローヴァ・グルニチャ(Dąbrowa Górnicza)、ノバ・フタ(Nowa Huta)、南東部のタルノブジェク(Tarnobrzeg)特別経済区と首都ワルシャワを選定した。OSGE社は4月下旬、気候環境省にワルシャワを除く6か所における発電所建設に関する原則決定(decision-in-principle=DIP)を申請し、同省は12月上旬、これら発電所に対するDIPを発給した。DIPは原子力発電所建設計画に対する最初の基本的な行政判断で、DIP発給によりプロジェクトが国家のエネルギー政策に則し、国益に適うと正式に認められたことになる。今後、OSGE社は立地点の確定や建設許可の取得など、さらなる行政判断を仰ぎ手続きを進めることが可能になる。OSGE社は2023年5月、スタビ・モノフスキエ発電所建設に係るEIA報告書作成にあたり、取り組むべき分野を特定する申請をGDOŚに提出した。GDOŚは申請を受け、国境を越えた協議を開始。SMR建設をめぐっては欧州初の協議であり、越境環境影響評価条約(エスポー条約)に基づき、近隣のチェコとスロバキアとの協議を実施した。なお、OSGE社は同年、オストロウェンカとブウォツワベクで計画する発電所についても同様の申請書をGDOŚに提出している。取り組むべき分野は、発電所立地の特殊性を考慮し、個々のプロジェクトごとに決定される。スタビ・モノフスキエ発電所建設に係る要求事項では、冷却水供給源の特定、原子力安全と放射線防護を確保する具体的な技術の提示、発電所と送電網の連結方法などを取り組むべき主要分野として示している。このGDOŚによる特定を受け、OSGE社は環境と立地の両面から調査を開始する。報告書作成には最大2年を要するとみられている。OSGE社のR.カスプローCEOは、「EIA報告書作成は、原子力発電所建設に向けた投資プロセスにおいて最も重要な要素であり、最も難しい作業のひとつでもある。このGDOŚの決定により、プロジェクトを想定通りのスケジュールで実施できる」と語る。「BWRX-300」は、受動的安全システムを備えた電気出力30万kWのBWR型SMRで、2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証を受けた第3世代+(プラス)炉の「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」と同じく認可取得済みのGNF2燃料をベースにしている。2021年12月、GEH社、BWXTカナダ社、ポーランドの大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社は、ポーランドにおける「BWRX-300」建設の協力覚書を締結した。同月、SGE社は、ポーランド最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社と合弁会社OSGE社を設立した。OSGE社は2022年7月、「BWRX-300」の安全評価について、ポーランドの国家原子力機関(PAA)に予備的許認可手続きの一つである「包括的見解」を求めて申請書を提出。PAAは2023年5月、「BWRX-300」がポーランドの原子力安全基準と放射線防護基準に適合していると公表した。
15 Feb 2024
1701
先進的原子炉開発を進めている米国のオクロ社は2月1日、「オハイオ州南部の多様化イニシアチブ(SODI)」と土地権利契約を締結、土地購入のオプションと優先交渉権を獲得したことを明らかにした。オクロ社は2023年5月、同社製マイクロ高速炉「オーロラ(Aurora)」の建設サイトとしてオハイオ州南部を選定、同地域の4郡で構成されるSODIと土地利用に関する拘束力のない合意文書を交わしている。今回の土地権利契約締結は、クリーンで信頼性が高く、手頃な価格でエネルギー供給を目指すオクロ社にとって大きな前進であり、同社は同地域を、米国原子力産業界の将来を担う重要ハブとする考えだ。SODIの4郡のうち、パイク郡には、2001年まで米エネルギー省(DOE)のポーツマス・ガス拡散法ウラン濃縮施設が稼働しており、SODIは同サイトの未使用の土地や施設の再利用を通じ、4郡の市民生活向上を目指している。また、オクロ社は1月31日、DOEがアイダホ国立研究所(INL)敷地内にあるオーロラ燃料製造施設の安全設計戦略(SDS)を審査・承認したと発表した。オーロラ燃料製造施設では、閉鎖された高速実験炉EBR-Ⅱの使用済み燃料から回収したウランを再利用し、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を製造する。「オーロラ」はHALEU燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ原子炉で、電気出力は0.15~5万kW。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能なほか、放射性廃棄物をクリーン・エネルギーに転換することもできる。DOEは2019年12月、先進的原子力技術の商業化を支援するイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環として、INL敷地内で「オーロラ」の建設を許可。これを受けてオクロ社は翌2020年3月、原子力規制委員会(NRC)に「オーロラ」初号機の建設・運転一括認可(COL)を申請したが、NRCは、審査の主要トピックスに関する情報がオクロ社から十分に得られないとして、2022年1月に同社の申請を却下した。オクロ社は同年9月、「オーロラ」の将来的な許認可手続きが効率的かつ効果的に進められるよう、NRCとの事前協議を提案する「許認可プロジェクト計画(LPP)」をNRCに提出している。
14 Feb 2024
5172
米国のホルテック・インターナショナル社は1月31日、原子力と太陽熱の利点を組み合わせた新たな発電システムを発表した。この原子力・太陽熱複合発電プラント(CNSP)は、同社の小型モジュール炉「SMR-300」、太陽熱利用システム「HI-THERM HSP」、エネルギー貯蔵システム「グリーンボイラー」を搭載。ホルテック社によると、CNSPは「太陽熱発電の欠点である間欠性を解消しながら、ベースロードまたは負荷追従対応で電力を供給する」ことができるという。ホルテック社が開発する小型モジュール炉(SMR)「SMR-300」は電気出力約30万kWのPWRで、熱電併給が可能。万が一の事故時には外部電源や冷却材の供給なしで炉心冷却が可能な受動的安全系を備えている。原子炉からの蒸気と太陽熱利用システムからの熱は、熱エネルギー貯蔵装置であるグリーンボイラーで結合される。グリーンボイラーは、1. 大量の熱を貯蔵し、2. 太陽熱集熱器から高温の熱を受け取り、3. 蒸気の生成と過熱により、タービンを駆動する、という3つの機能を備えた設備である。CNSPは単独の原子力発電所よりも熱力学的効率はかなり高く、太陽熱はベースロード電源の不可欠な要素となる。またCNSPは、再生可能エネルギーのアキレス腱であるバッテリーを一切使用していない。同社は、CNSPの運転寿命は60年を超えると予測している。CNSPは、十分なサイト面積を持つ旧石炭火力サイトへの設置が最適とされており、既存インフラの活用によりコストを最小限に抑えるという。ホルテック社は、主に日射量が十分にある国・地域へCNSPの展開を想定している。赤道直下や亜熱帯の地域では、1エーカー(約4,047m2)あたり8,000kWhもの太陽熱を得ることができ、既存技術よりもかなり効率的だという。同社のK.シン社長兼CEOは、「原子力と太陽熱の組み合わせを実現したCNSPは、化石燃料からの脱却を目指す国々にとってエネルギー問題の確かな解決策になると確信している」と期待を寄せている。
13 Feb 2024
2036
チェコ政府は1月31日、同国のドコバニ原子力発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)の増設に係る入札について、1基ではなく最大4基の拘束力のある入札に変更することを決定。次の入札に参加を募るのは、フランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)の2社のみと発表した。なお、ウェスチングハウス(WE)社は、必要な条件を満たさなかったとして、除外されている。チェコでは2022年3月、ドコバニ原子力発電所Ⅱ期工事の初号機となる5号機の入札が開始された。この入札には、チェコ電力(ČEZ社)の100%子会社であるドコバニⅡ原子力発電会社(EDUⅡ社)が要求する国家安全保障での資格審査を通過した、WE社、EDF、およびKHNPが参加した。2023年10月、3社は、EDUⅡ社に5号機について入札の最終文書を提出した。なお、ドコバニ6号機とテメリン原子力発電所3、4号機(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)についても、3社は、拘束力を持たない意向表明として増設を提案している。EDFはEPRの出力を120万kW級に縮小したEPR1200を、KHNPがAPR1400の出力縮小版であるAPR1000を、WE社はAP1000をそれぞれ提案したと見られ、この3社はいずれも落札した場合、現地のサプライヤーと提携することで合意していた。政府は、今回の入札結果を受け、1基を建設する場合と複数基を建設する場合のコスト比較から、当初の入札実施計画を修正することを決定。入札は今後、拘束力のある入札としてドコバニ5、6号機、テメリン3、4号機にも拡大される。P.フィアラ首相によると「最大4基の原子炉建設を一括契約する場合、たとえ徐々に建設するにしても、1基のみを建設するよりも経済的に著しく有利であることが判明した。1基のみを建設する場合と比べ、1基あたりの価格を最大で25%引き下げることができる」という。今後、EDFとKHNPの2社は、拘束力のある入札書類を4月15日までに提出し、その後、EDUⅡ社の評価と報告書は5月末までに政府に提出され、6月末までにサプライヤーが確定する予定。ドコバニ5号機の2036年の試運転開始予定には影響しない。P.フィアラ首相は、「原子力発電開発の促進は、チェコの繁栄に極めて重要である。この決定により、市民や企業に長期にわたり電力を安全かつ安定して、手ごろな価格で供給できるようになる」とその意義を強調した。チェコでは主に輸送部門と暖房の電化により、今後、電力需要が大幅に増加し、国家エネルギー・気候計画によると、2050年には電力消費量は現在の2/3に匹敵する電力量が増加し、1,000億kWhになると予想されている。石炭火力発電所は閉鎖され、2050年に既存の発電設備で稼働するのは、テメリン1、2号機のみとなる。政府は、ドコバニとテメリン両発電所の大型炉と中小型炉の両方が間違いなく必要になるとしている。
09 Feb 2024
2113
スロベニアでは1月30日、超党派の会合で、クルスコ原子力発電所の増設計画(JEK2プロジェクト)をめぐり、すべての政党が年内に国民投票を実施することで合意した。会合には、スロベニアのN.ムサル大統領、R.ゴロブ首相の他、国民評議会(上院)議長、国民議会(下院)議長、各政党代表らが出席。スロベニアのエネルギーの自立と長期のエネルギー政策、とりわけ原子力の役割について協議し、脱炭素の未来に向けて、再生可能エネルギーと原子力の利用を進めることや、JEK2プロジェクトの継続で意見が一致した。同首相は、クルスコ発電所の増設は、スロベニアの将来にとって極めて重要なプロジェクトであり、今年の後半にも国民投票で支持を得られれば、早ければ、2027年または2028年にクルスコ発電所の増設のための投資に関する最終的な決定を下し、2030年代にはJEK2(クルスコⅡ)を稼働させたい考えだ。スロベニアは、最大出力240万kWのJEK2を、既存のクルスコ原子力発電所(PWR×1基、72.7万kW)に隣接して建設する計画だ。同発電所は、1983年1月に営業運転を開始して以来、スロベニアの電力の約3分の1を供給している。このクルスコ発電所は、国営スロベニア電力(GENエネルギア)と隣国クロアチアの国営電力会社のHrvatska elektroprivreda(HEP)が共同所有しており、2023年1月には、2043年まで20年間の運転期間延長が認可された。
08 Feb 2024
1263
カナダのオンタリオ州政府は1月30日、オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社によるピッカリング原子力発電所(B)5〜8号機の改修計画への財政支援を表明した。オンタリオ州のT.スミス・エネルギー大臣は、ピッカリングBの4基(CANDU炉)の改修により、「オンタリオ州の競争力を高め、投資が増加する。少なくとも30年間は安全で信頼できるクリーンな電力を生産し、数千人の新規雇用が創出され、電化が促進される」と述べ、改修計画への州政府の支援を表明した。州政府は、プロジェクトの開始段階においてOPG社に20億カナダドル(約2,193億円)を支援する。これは、エンジニアリングや設計作業のほか、長期調達部品の確保に充てられる。OPG社によると、2030年代半ばまでに改修作業が完了する予定。シンクタンクの分析によると、改修期間中に州のGDPは194億カナダドル(約2.1兆円)増加し、その間に年間約1.1万人の雇用を創出、改修後の運転期間中には年間6,000人以上の雇用を創出・維持する見込みである。OPG社は、ダーリントン原子力発電所1~4号機を改修する128億カナダドル(約1.4兆円)のプロジェクトの半分以上を終えており、2026年末までに完了する予定である。ダーリントンや、ブルース・パワー社が進める6基のCANDU炉の改修プロジェクトから得られた知見は、ピッカリングにも反映される。ピッカリング発電所(B)の運転認可は2028年8月31日までだが、2024年12月31日以降の商業運転は許可されていない。州政府は2025年以降の運転を支持し、OPG社は2023年6月、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に2026年末まで5〜8号機の運転延長を申請した。ピッカリング発電所は、オンタリオ州の電力の約14%を供給している。なお、ピッカリング発電所(A)の1号機と4号機は、改修工事を経て運転を再開しているが、2024年末までに閉鎖される予定。2号機と3号機はすでに閉鎖された。オンタリオ州政府は、電力需要を満たし、かつ電化による排出量削減計画の一環として、ブルース・パワー社における大規模な新規原子力発電所の建設と、ダーリントン・サイトにおける小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」3基導入に向けた事前準備作業を支援している。
07 Feb 2024
1559
ウクライナのG.ガルシェンコ・エネルギー大臣は1月29日、フメルニツキー原子力発電所への4基の増設計画を継続することを明らかにした。建設が中断している同3号機については、年内にも建設を再開したい考えだ。ガルシェンコ大臣がウクライナのテレビ番組で語ったところによると、「VVER-1000を採用した3~4号機の建設および、米ウェスチングハウス(WE)社のAP1000を採用した5~6号機の建設について、WE社と協議中」だという。3号機の工事進捗度は75%であり、最短で2年半で完成できるという。残りの号機が完成すればフメルニツキー発電所の全6基が供給する電力は欧州最大となり、ザポリージャ発電所を超える。なお、同大臣は1月25日のロイター通信社とのインタビューの中で、ブルガリアと原子炉容器や蒸気発生器等の輸入について交渉中であることを明らかにしている。未使用の機器をフメルニツキー3~4号機に利用したい考えだ。ブルガリアのベレネ原子力発電所(VVER-1000)では2基の建設計画が2023年10月に中止となっており、ロシアから購入した炉設備等が建設サイトに保管されている。ウクライナには15基の原子力発電所があり、2022年3月初旬からロシア軍の支配下にあるザポリージャの6基を含め、原子力は総発電電力量の約半分を供給している。フメルニツキー1号機(VVER-1000、100万kW)は1987年に送電網に接続されたが、他の3基の建設は1990年に中断。2号機(VVER-1000、100万kW)の建設のみ再開され、2004年に送電網に接続された。3~4号機は未完成のままである。いずれもVVER-1000を採用し、1990年から建設工事は中断している。 2023年12月、ウクライナの原子力発電事業者エネルゴアトムとWE社は、フメルニツキー5号機のAP1000機器購入に関する契約を締結した。
07 Feb 2024
1692
米国のウェスチングハウス(WE)社は1月25日、事故耐性燃料(ATF)を含む25本の照射済みの試験用燃料棒を照射後試験のため、アイダホ国立研究所(INL)に送ったことを明らかにした。この照射後試験は、新型燃料の商業用原子炉での使用認可を得るために重要なプロセスの一環。納入された燃料は、ATFと商業用原子力発電所の炉心で照射された高燃焼度燃料。照射済み燃料が試験のためにINLに納入されたのは、20年ぶりのこと。INLを含む複数の国立研究所の技術支援と米エネルギー省(DOE)の資金援助を受けてWE社が開発・製造した次世代燃料は、安全性能の向上だけでなく、原子力発電所の運転サイクル期間を現在の18か月から24か月に延長することが可能だ。燃料交換停止回数の削減、使用済燃料の減容により発電事業者は大幅なコスト削減が可能になる。また、出力も増強されるため、原子炉の増設にも匹敵する。INLでは次世代燃料が通常の使用条件下でどのような性能を発揮するか実験・分析、また、想定される事故条件下における性能を確認し、貯蔵中や再処理中における挙動を実証するために追加試験を実施する。得られたデータは、米原子力規制委員会(NRC)の燃料に関する安全基準策定に利用される。同様の照射済み燃料棒は、以前にもテネシー州のオークリッジ国立研究所(ORNL)で試験された。INLとORNLにおける高度な検査と照射後試験は、次世代燃料を世界中の商用炉に装荷する最終承認を米NRCから得るための重要なマイルストーンである。WE社、米NRC、DOE原子力局、DOE国家核安全保障局(NNSA)のほか、日本、韓国、西欧の規制機関などにもデータが提供される。
06 Feb 2024
1901
米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は1月25日、英国における自社の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の開発で英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)から補助金を獲得したことを明らかにした。英国の包括的設計審査(GDA)フェーズに入る。補助金総額は3,360万ポンド(約63億円)で、DESNZの「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund:FNEF)」から拠出される。「FNEF」は、2022年5月にビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が立ち上げた1.2億ポンド(約224.9億円)の補助金交付制度。新規原子力プロジェクトの開発を支援し、原子力産業の競争力強化を目的としている。英国政府は、2050年までにCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)の達成にむけ、国内の原子力発電設備容量を計2,400万kWとする野心的な目標を掲げている。DESNZのA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相は、「SMRはこの急速な原子力復活計画の最前線にある。GEH社への補助金拠出は「BWRX-300」の設計開発を支援するものであり、このSMRの導入により、英国の家庭や事業者はより安く、よりクリーンで、より安全なエネルギーを享受できる」と今回の補助金拠出の意義を強調する。GEH社は、ジェイコブス社、レイン・オルーク社、キャベンディッシュ・ニュークリア社などの経験豊富な英国チームと、ポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社とともに、FNEFの申請書をDESNZに提出した。申請した「BWRX-300」の開発プロジェクトにはGDA申請やSMRの商業展開にむけた企業の準備活動などが含まれている。なお、GEH社は、英国内での「BWRX-300」の建設に備えて、英国最大手の大型鋳鍛造品メーカーであるシェフィールド・フォージマスターズ社と協力の了解覚書を締結するなど、英国のサプライチェーンを開拓している。DESNZは、GEH社が提出したGDA申請書を事前に精査し、「BWRX-300」がGDA開始前の4つの評価基準をクリアしていることを確認。補助金の拠出に加え、原子力規制庁(ONR)や環境庁(EA)およびウェールズ自然保護機関(NRW)に対し、「BWRX-300」のGDAを開始するよう要請した。GDAとはONRとEAとNRWが実施するプロセスであり、英国で建設予定の原子力発電プラントについてONRが設計の安全性とセキュリティの観点から、EAとNRWが環境影響の観点から英国の基準を満たしているかを評価する。2021年5月、GDAプロセスはSMRを含む先進的原子力技術に向けて適用されている。GEH社のJ.ワイルマン社長兼CEOは、「当社の『BWRX-300』は、英国の脱炭素化とエネルギー安全保障の目標にとって理想的な解決策であると確信しており、英国政府がこれを実証するためにこのFNEFから補助金を用意してくれたことに感謝している」と述べ、補助金は英国における強固なサプライチェーンの構築の継続と、規制当局の承諾およびSMR展開に向けた準備加速に役立つだろう、と期待を表明した。GEH社は、革新的な技術を用いたSMRの開発促進に向けてDESNZが昨年7月に開始した支援対象の選定コンペにも参加。このコンペは、原子力発電所の新設計画を牽引する新しい政府機関「大英原子力(Great British Nuclear:GBN)」が担当し、SMRの開発プロジェクトへの数十億ポンド規模の官民投資の促進を目的とする。GEH社は10月に、フランス電力(EDF)、英国のロールス・ロイスSMR社、米国のニュースケール・パワー社、ウェスチングハウス(WE)社やホルテック・インターナショナルの英国法人とともに、同コンペの次の段階に進むことが決定している。支援対象は2030年代半ばまでに運転開始する可能性が高いものとし、2024年の春に選定、夏までに支援契約を締結する予定である。昨年12月初旬、ホルテック・インターナショナルの英国法人であるホルテック・ブリテン社は同社のSMR「SMR-300」のGDA審査の開始とともに、FNEFから約3,000万ポンド(約56.2億円)の補助金を授与されている。
05 Feb 2024
2606
米ウェスチングハウス(WE)社は1月23日、可搬型の原子力発電システムの開発を行うカナダのプロディジー・クリーン・エナジー社と協力し、2030年までにカナダで最初の洋上可搬型の原子力発電所の設置を目指すことを明らかにした。WE社製のマイクロ原子炉「eVinci」を搭載する。WE社とプロディジー社は、2019年からWE社製のマイクロ原子炉「eVinci」の展開について共同で検討。カナダで戦略的に価値の高い鉱物資源を扱う多国籍企業が2019~2020年に、信頼性の高いクリーンエネルギー源を特定するための研究に資金を提供したことから、この研究に従事したプロディジー社が、広範囲に展開することを目的に標準化された可搬型原子力発電所の開発の先駆者となった。マイクロ原子炉「eVinci」は、分散型の電力市場、遠隔地のコミュニティや鉱業、国防などの重要インフラや島嶼国などで電気や熱を供給することが可能。熱出力は1.4万kW、定格電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要、燃料交換は約8年おき。最小限のメンテナンスで競争力と復元力のあるエネルギー供給が可能であり、信頼性に優れた設計であるという。単一または複数の「eVinci」を搭載した可搬型の発電所を、必要とされる場所に輸送、海岸線に設置する。なお、発電所は自走式ではない。WE社とプロディジー社は2022年に契約を締結、概念設計と規制要件の調査は完了している。調査の一部は、カナダの戦略イノベーション基金からWE社が授与された助成金で実施している。次のステップは、「eVinci」搭載のための可搬型原子力発電所の設計を完了し、発電所の建造、艤装、輸送といった一連の流れの監督モデルの確立、2030年までにカナダで最初のプロジェクト実現に向けた許認可取得と立地評価の作業であるという。WE社のeVinciテクノロジー社のJ.ボール社長は、「eVinci」は当初から可搬式が重要な設計原則であり、プロディジー社の可搬型原子力発電所は「eVinci」本来の可搬性に付加価値をもたらすものである、と語る。プロディジー社のM.トロジャーCEOは、「eVinci」のコンパクト設計と簡素化された運転要件は可搬型原子力発電所への搭載に最適であり、自社の技術で「eVinci」を展開、遠隔地にクリーンで信頼性が高く、手頃な価格の電力を供給するスケジュールを加速させたい、と意欲を示す。プロディジー社はマイクロ原子炉だけでなく、石炭発電の代替と送電網へ接続規模の発電に最適で洋上設置が可能な、小型モジュール炉(SMR)を搭載する可搬型発電所も開発している。2022年10月には、米ニュースケール社と共同開発した可搬型発電所の概念設計が発表されている。ニュースケール社製のSMR「NPM」(7.7万kWe)を1基から12基搭載する。プロディジー社は、どちらの可搬型発電所も原子炉を搭載後に設置場所まで輸送し、60年後の運転終了時に撤去することで、「施設のライフサイクル全体を簡素化し、追加の建設コストや複雑な作業を大幅に削減する」と期待を寄せている。
02 Feb 2024
3083
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を主導する首長国原子力会社(ENEC社)は1月23日、燃料集合体の製造施設建設の入札を開始したことを発表した。UAEで運転中のバラカ原子力発電所(PWR×4基、各140万kW)に国産燃料を供給する計画だ。ENEC社は、UAEの今後60年間のバラカ原子力発電所への燃料供給について、18か月にわたり検討を実施し、燃料集合体の製造施設建設を決定した。ただし、UAEの原子力政策では、自国で濃縮および再処理は行わない。現在、バラカ発電所の燃料集合体は、韓国電力公社(KEPCO)が主導するコンソーシアムに参加する韓国核燃料会社(KNFC)が供給している。UAEは2008年、同国の電力需要の25%を供給する原子力発電所の導入を決定。エネルギー供給源の多様化のほか、長期的なエネルギービジョンとネットゼロ目標の達成に向け、原子力発電プログラムの実施計画に着手した。UAE初の原子力発電所であるバラカ発電所は、2012年7月からUAE北部のアブダビ首長国で建設工事が本格的に始まり、1、2、3号機はそれぞれ2021年4月、2022年3月、2023年2月から営業運転中である。最後となる4号機は昨年12月に燃料装荷を完了し、起動準備中である。いずれも韓国製のPWR(APR-1400、140万kW)を採用し、運転や保守は2016年に設立されたENEC(株式保有シェア82%)とKEPCO(同18%)の合弁企業であるNAWAHエナジー社が行っている。バラカ発電所の燃料を調達するため、ENEC社は世界の核燃料供給業者を対象に広範囲にわたる調達に向けて入札を行った。その後、ウラン精鉱、濃縮ウラン製品や関連製品・サービス、転換や濃縮役務などの提供に関する契約を6社と締結している。
01 Feb 2024
1878
フランス電力(EDF)は1月23日、傘下の英国法人EDFエナジー社が建設中のヒンクリー・ポイントC原子力発電所(HPC)建設プロジェクトについて、スケジュールの遅延ならびにコストの上昇を発表した。土木工事の資材高騰と電気機械工事の長期化がコスト上昇の主要因であるという。出力172万kWのEPR×2基から構成されるHPCでは、1号機が2018年12月に着工され、当初、2025年末までの運転開始を予定。2022年2月には、運開時期を2027年6月に修正した上で、総工費は250~260億ポンド(約4.7~4.9兆円)になると予想していた。今回EDFは、さらに運開時期を2030年頃とし、総工費は310~340億ポンド(約5.8~6.4兆円)へと上方修正した。HPCのS.クルックスCEOは、1月23日に動画によるメッセージを発信。「COVID-19パンデミックにより建設プロジェクトは15か月遅延している。2023年12月に1号機原子炉建屋にドーム屋根を設置したが、予定より2年遅れ。20年間中断していた英国の原子力産業の再開は困難な状態が続いている。新たなサプライチェーンの構築やトレーニングは、今後数十年にわたり恩恵をもたらす非常に大きなタスクであり、他のインフラプロジェクトと同様、土木工事は想定以上に遅れている。COVID-19とブレグジットの混乱に加え、インフレ、労働力不足、資材不足に直面している」と語る。一方で、2号機では同作業のパフォーマンスが20~30%向上すると指摘し、「同一の設計を反復することが成功の鍵」と強調した。英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックスCEOは「建設プロジェクトの期間を空けて一時期に1つの発電所を作るのではなく、多くの発電所を建設すればするほど、より早く、より安価になる。政府の「原子力ロードマップ」で示されるプログラム的アプローチが専門性を高め、労働力を維持し、効率の向上に不可欠である。ヒンクリー・ポイントCは、英国で過去最も重要なグリーンエネルギーのプロジェクトであり、長らく新規の発電所を建設してこなかった原子力産業の復活を象徴する。サプライチェーンを活性化し、その過程で何千人もの熟練工の雇用を創出し、他の産業にも重要な教訓をもたらす」と語る。なお、英国政府は仏EDF社によるこの発表の前日、イングランドのサフォーク州で計画しているサイズウェルC原子力発電所の建設プロジェクトに対し、今年後半に予想する最終投資判断(FID)が出るまで、サイト周辺の道路や鉄道などの必要なインフラ工事を継続できるように、13億ポンド(約2,431億円)を追加で資金拠出すると発表した。これは、2022年11月の7億ポンド(約1,309億円)と昨年夏に合意された追加5.11億ポンド(約955.6億円)の拠出に続くもの。この段階で政府のさらなる支援を約束することで、プロジェクトはスケジュール通りに進み、全体的なコストを抑えることができるという。
31 Jan 2024
2827
エジプト初の原子力発電所建設サイトであるエルダバ原子力発電所(120万kW級ロシア型PWR =VVER-1200×4基)で1月23日、4号機が着工した。同サイトでは1号機が2022年7月、2号機が同11月、3号機が2023年5月にそれぞれ着工しており、4号機で最後となる。1号機は2028年の運転開始を目指している。エルダバ原子力発電所は、カイロの北西約320km、地中海沿岸地域のエルダバ市にある。アフリカ大陸での原子力発電所建設は、南アフリカ共和国のクバーグ原子力発電所(PWR×2基、各97万kW)以来のこと。建設計画は、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が支援している。VVER-1200は、ロシアのレニングラード第Ⅱ原子力発電所(1、2号機)とノボボロネジ第Ⅱ原子力発電所(1、2号機)、ベラルーシのベラルシアン原子力発電所(1、2号機)で運転中。その他、中国とトルコで4基ずつ、バングラデシュで2基が建設中である。エジプト政府は2015年11月に、原子力発電所建設プロジェクトに関する政府間協定(IGA)をロシア政府と締結、ロシアから最大250億ドルの低金利融資を受けることになった。2017年12月に調印した4基のVVER-1200建設の契約では、ロスアトム社は発電所を建設するだけでなく、60年間の運転期間を通じて燃料を供給するほか、使用済燃料専用の貯蔵施設の建設と貯蔵用キャスクの供給も請け負う。また、運転開始後10年間は、エジプトにおける原子力分野の人材育成とこの発電所の保守に協力する。
30 Jan 2024
1549
フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)は1月18日、世界初の使用済燃料の深地層処分に関するポシバ社の操業許可申請書への見解提出の期限を2024年末まで延長するよう雇用経済省に要請したことを明らかにした。昨年9月には、当初予定していた2023年末までのレビュー完了は難しいだろうとしていた。最終処分の実施主体であるポシバ社は2021年12月30日、オルキルオトに建設中の使用済燃料封入プラントと最終処分場の操業許可を雇用経済省に申請した。2024年3月から2070年末までの操業許可を求めるもので、実際の処分事業は2020年代半ばに開始する計画である。操業許可の最終的な判断は政府が下すが、事前にSTUKが処分場の長期的な安全性評価を実施し、雇用経済相に見解を提示することが必要。肯定的な見解であれば、同省が内閣から承認を取り付ける。STUKはポシバ社からの関係資料提出を受け、2022年5月に評価作業を開始した。雇用経済省はSTUKに対し、2023年末までに見解を提出するよう求めていた。STUKは昨年の第三期(最終)報告書の中で「安全性の評価作業に大きな問題はないが、当初の想定よりも若干ペースが遅れている。審査すべき資料が膨大であり、ポシバ社が当初提出したデータでは十分な評価ができず、ポシバ社によるデータの更新が必要となった。その後の書類の審査に予想以上に時間がかかっている」と言及している。STUKは、安全性評価の作業に加え、ポシバ社が実施している作業を監督している。その監督項目は、使用済燃料の地上封入プラントへの機器の設置、同機器の試運転、最終処分場で進行中の岩盤工事など。また、最終処分場の保安体制、組織の安全文化、および最終処分事業の開始に向けたポシバ社の準備状況を確認している。政府は2015年11月にポシバ社に最終処分場の建設許可を発給、2016年12月に総工費約5億ユーロ(約803.5億円)の建設工事が開始された。操業許可が発給されれば、フィンランドで原子力発電所を運転するティオリスーデン・ボイマ社(TVO)のオルキルオト原子力発電所(BWR×2基、各92万kW)とフォータム社のロビーサ原子力発電所(ロシア型PWR=VVER-440×2基、各53.1万kW)から発生した使用済燃料の埋設を開始する。昨年5月に営業運転を開始したオルキルオト3号機(欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)の使用済燃料については同一サイトで処分場を拡張し、2090年以降の最終処分を予定する。同処分場は、2120年代までの100年間の操業を見込む。最終処分の実施主体であるポシバ社は、TVO社およびフォータム社が共同で設立した。同社は2000年、フィンランド南部のユーラヨキ地方にあるオルキルオト原子力発電所の近郊を使用済燃料の最終処分場の建設サイトに選定。2004年6月、同地点の地下450m部分の岩盤地質や水文学特性を調査するため、地下研究調査施設「ONKALO」を着工している。「ONKALO」は最終的に最終処分場の一部となる。最終処分場は地上の使用済燃料封入プラントと地下400~450mに設置される地下施設で構成されており、ポシバ社は2019年6月から封入プラントの建設に着手。2022年5月に完成している。2021年5月には、実際の使用済燃料を収納したキャニスターを定置する最初の5本の処分坑道の掘削工事を開始した。なお、同処分場の100年間の操業期間中に100本の処分坑道が掘削され、全長は約35kmになる予定。1本の坑道の最大長は350m、高さ約4.5m、幅約3.5mであり、各坑道は処分孔の数で変化するものの、平均約30本のキャニスターを定置、約65トンの使用済燃料を収容できるという。
29 Jan 2024
1989
米国のエネルギーコンサルタント会社のラディアント・エナジー・グループ社がこのほど発表したクリーンエネルギーに対する多国間世論調査結果によれば、原子力発電を支持する人の割合(46%)が反対の割合(28%)を1.5倍以上上回る結果となり、世界的に原子力に対する支持が高まっている傾向が浮き彫りになった。同調査は、ラディアント社が英国の市場調査会社サバンタ社に委託して、昨年10月17日から11月14日に20か国の成人20,122名を対象にオンラインで実施したもの。対象国には、G7やBRICS諸国のほか、2022年の原子力発電量上位14か国や、近年原子炉が3基運転中のアラブ首長国連邦(UAE)、また原子力発電を持たないオーストラリア、イタリア、ノルウェー、フィリピンの4か国が含まれている。同調査によれば、調査対象となった20か国のうち17か国は、原子力利用に対する支持が反対を上回り、なかでも、中国、ロシア、UAE、インドでは、支持が反対を3倍以上上回る結果となっている。なお、日本については、反対(40%)が支持(29%)を上回っており、調査対象国中でもブラジル、スペインと並んで支持が低い結果となった。原子力発電への好感度は、陸上風力発電、バイオマス発電、またはCO2の回収と貯蔵(CCS)を伴うガス発電より高く、「自国のエネルギー転換において重点化すべき電源」を問う設問に対しては、回答者全体の25%が、「原子力を重視すべき」と回答、大規模な太陽光発電に次ぐ支持(33%)を集めた。気候変動に取り組むために技術的に中立で前向きな見通しを持つ人々は、他のエネルギー源よりも原子力をより好む傾向にあるという。また、「将来のエネルギー供給に求めるもの」に関する設問では、「信頼性」が最も高く、回答者全体の66%が原子力を信頼できるエネルギー源として評価する一方、半数以上(53%)が「原子力は温室効果ガスをかなりの量、または大量に排出する」と回答。また、回答者の79%が安全性への懸念を示したが、うち40%が原子力利用を支持し、反対の33%を上回ったことから、「安全性や廃棄物への懸念と原子力支持との相関関係は比較的低い」と分析している。そのほか、脱原子力を達成したドイツやこれまで脱原子力を標榜していた日本、韓国、スウェーデンの4か国で、原子力が風力や太陽光以上に電気料金の削減に貢献する技術として認識されているとの調査結果が示された。また、原子力発電国では、原子力発電所の段階的廃止よりも、継続を望む回答者の方が3倍以上多く、また原子力発電を持たない4か国では、原子力発電の禁止よりも、新規建設を望む回答者の方が2倍多かったことなどが明らかとなった。なお、性別でみると男性の方がすべての対象国で原子力利用の支持が多い。年齢層別では、大半の国で若年層が原子力利用を最も支持しない傾向にあるものの一貫しておらず、原子力の仕組みについて最も詳しいと自認する人々は、一貫して原子力利用を最も支持していることが分かった。ラディアント社は、「支持または反対の指標は国民感情を示すものであり、政府がどのように行動することを国民が望んでいるかを示すものではない。どちらかというと原子力利用には反対すると答えた回答者のうち、54%が既存の原子力発電所の運転を継続する政府の政策を支持し、17%が原子力発電所の増設を望んでいる」と指摘する。
26 Jan 2024
1930