DOEのグランホルム長官©DOE米エネルギー省(DOE)は2月25日、元ミシガン州知事のジェニファー・M.グランホルム氏が同省の第16代長官として議会上院で承認され、就任宣誓を行ったと発表した。DOE長官を務めた女性としては、B.クリントン政権時代のH.オレアリー長官に次いで2人目。カナダからの移民であるグランホルム長官は、1984年にカリフォルニア大学(UC)バークレー校を卒業し、1987年にはハーバード大学の法科大学院を卒業。直ちにミシガン州の第6巡回区控訴裁判所で公務についており、1990年からはデトロイトで連邦検事、1994年には同州ウェイン郡の法人弁護士となった。1998年から2002年まで同州の司法長官、2003年から2011年まで同州の州知事を2期務めた後は、UCバークレー・公共政策大学院の特別栄誉実務教授として、クリーンエネルギーや法令、政策、産業などの問題を扱った。また、非営利の非政府組織であるピュー慈善信託では、クリーンエネルギー・プログラムのアドバイザーを務めていた。就任に際してグランホルム長官は、「DOEには優秀な科学者やエンジニア、エネルギー政策のエキスパートが揃っており、DOEの責務である新たなクリーンエネルギー技術の開発や配備を進めるには最適だ」と指摘。このようなスタッフなら、J.バイデン政権が目標の一つに掲げる「2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化」を達成し、米国の未来を保証することができるとした上で、「彼らとともに米国でクリーンエネルギー革命を始動し、関係する高給雇用を数百万人規模で創出、国中の労働者やコミュニティに利益をもたらしたい」と抱負を述べた。同長官はまた、宣誓式後にビデオメッセージとDOEブログへの投稿文を公表。DOEの長官として、クリーンな電力を廉価で豊富に発電する技術を配備してクリーンエネルギー革命を進め、地球温暖化に取り組んでいく覚悟を明らかにした。DOEの発表によると、同長官はミシガン州知事時代、リーマンショック後の世界的金融不況により自動車産業や製造部門の破たんを州内で経験したが、その対応策として、州経済の多様化を図るとともに自動車産業を強化、製造部門の維持とクリーンエネルギー部門の台頭を促した。今や、北米における電気自動車バッテリーの三分の一がミシガン州で生産されているほか、クリーンエネルギー関係の特許取得で同州は上位5州の一つとなった。さらに、新型コロナウイルスによる感染の拡大前は、12万6千人の州民がクリーンエネルギー関係の職に就いていたとDOEは強調している。米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長は同日、新長官の就任を歓迎すると表明した。「CO2排出量が一層少ない発電所の建設やクリーンエネルギー関係の雇用創出、経済の全面的な脱炭素化など、バイデン政権の地球温暖化防止プログラムを進めていく上で、グランホルム長官は極めて重要な役割を果たすだろう」と指摘。また、米国の確実な脱炭素化に向けて、原子力を含む無炭素エネルギーの価値が適切に評価されるよう協力していきたいと述べた。(参照資料:DOEとNEIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Mar 2021
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仏国の原子力安全規制当局(ASN)は2月25日、国内で1980年代前半に運転開始した32基の90万kW級PWRがそれぞれ40年稼働した後、追加で10年稼働させる際の諸条件を23日付で決定したと発表した。事業者であるフランス電力(EDF)が提案したすべての対策によって、これらの原子炉で運転開始後50年間、運転を継続させる見通しが立ったとASNは説明している。仏国では商業炉の稼働にあたり政府はASNに諮問して認可を発給しているが、運転期間に制限がなく、運転開始後10年毎に詳細な安全審査を実施して、次の10年間の運転継続で課題となる設備上のリスクや対応策等を評価している。今回対象となっている90万kW級PWRは、ルブレイエ発電所の4基、ビュジェイ発電所の4基、シノンB発電所の4基、クリュアス発電所の4基、ダンピエール発電所の4基、グラブリーヌ発電所の6基、サンローラン・デゾーB発電所の2基、およびトリカスタン発電所の4基。仏国内では最も古い部類に属することから、これらで2031年までに実施が予定されている4回目の安全審査では、設計時に想定した40年という期間を超えて運転を継続するには設計面の調査や、機器の取り換え等が重要となるとASNは述べた。今回の決定(2021-DC-0706)の中でASNは、仏国内の商業炉56基すべてを保有・運転するEDFに対し、EDFが自ら提案していた大規模な安全性向上工事や追加対策を実行に移すよう指示。これには格納容器のベントや炉心溶融物質による溶け抜け防止など、炉心溶融事故時におけるリスク軽減のほか、発電所内外からこれまで想定してきた以上に激しい攻撃を受ける場合の対策、事故時の放射性物質の放出量抑制、事故等の厳しい環境下における使用済燃料貯蔵プールの管理などが含まれるとしている。10年に一度の安全審査では、対象原子炉すべてに共通する事項の「包括的審査」に加えて、「それぞれの原子炉に特有の設備の審査」が行われるが、今回ASNが決定した要件は原子炉毎に適用される予定である。90万kW級PWRの4回目の安全審査に向けた「包括的調査」の一環として、EDFは2018年9月から2019年3月までの期間、「原子力安全情報・透明性高等委員会(HCTISN)」の支援を受けながら共通対策に関するパブリックコメントを募集。また、その結果を踏まえた決定事項の案文についても、ASNは2020年12月から今年1月にかけてパブリックコメントに付して、要件の修正や明確化を行っている。(参照資料:ASNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Feb 2021
3173
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は2月24日、出力88.5万kWの「高速実証炉(BN-800)」として2016年11月から営業運転中のベロヤルスク原子力発電所4号機で、燃料交換時に初めてウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料のみを装荷したと発表した。これらの作業を終えた同炉は再び送電網に接続され、運転を再開している。運転開始当初、同炉の炉心はウラン燃料とMOX燃料のハイブリッド炉心となっており、2020年1月の初回の燃料交換時にMOX燃料集合体を18体装荷。今回新たに160体のMOX燃料集合体をウラン燃料集合体と交換したことから、同炉の炉心は三分の一までMOX燃料になった。ロスアトム社は今後の燃料交換でもMOX燃料のみを装荷していく予定で、2022年には同炉は「フルMOX炉心」で稼働することになる。高速実証炉である4号機の主な目的は、高速炉を活用した核燃料サイクルの様々な段階の技術をマスターすることで、同発電所のI.シドロフ所長は「原子力産業界における戦略的目標の実現に、また一歩近づいた」とコメント。「MOX燃料を使用することによって、燃料製造に使われない劣化ウランも含め、原子力発電の材料資源であるウランが有効活用されるほか、別の原子炉から出た使用済燃料を再利用することで長寿命核種など放射性廃棄物の排出量を削減できる」と強調した。ベロヤルスク4号機の初期炉心には、ディミトロフグラードの国立原子炉科学研究所(RIAR)が製造したMOX燃料集合体が含まれていたが、取り換え用のMOX燃料は、クラスノヤルスク地方ゼレズノゴルスクにある鉱業化学コンビナート(MCC)が製造した。原材料は、ウラン濃縮後の劣化六フッ化ウランから生成した劣化ウラン酸化物と、ロシア型PWR(VVER)の使用済燃料から生成したプルトニウム酸化物である。MCCで産業規模のMOX燃料を製造することは、2020年までを視野に入れたロシア連邦政府の目標プログラムに設定されており、ロシアの原子力産業界はMCC内にMOX燃料製造施設を設置するため、広範な協力体制を敷いている。これらの調整役を担うロスアトム社傘下の核燃料製造企業TVEL社によると、MCCでは2014年に6t/年の製造能力でMOX燃料製造施設の試運転を開始。最終的に60t/年の製造能力を目指しているが、2018年後半からは「BN-800」向けに取り換え用MOX燃料の連続製造を始めている。なお、TVEL社の担当副社長によると、MCCではBN-800用MOX燃料の製造と並行して、ロスアトム社の専門家チームが同様にMOX燃料の製造技術開発を続けている。VVERの使用済燃料から抽出したプルトニウムで新燃料を製造する技術はすでにマスター済みで、全自動の無人設備を使って最初のMOX燃料集合体が20体完成。原子炉への装荷に向け、検査もクリアしたと伝えている。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Feb 2021
5932
仏国のフラマトム社は2月22日、2020会計年度(2020年12月31日まで)における決算報告を公表した。金利・税金・償却前利益(EBITDA)が合計5億6,100万ユーロ(約719億円)と対前年比で6.4%増加した一方、収益や受注高はともに前年実績を下回る結果になったことを明らかにしている。2020年のEBITDAが拡大した理由は主に、様々なプロジェクトを円滑に遂行できたことやコストの削減で同社が努力を継続したことによる。2020年の受注高は総額28億6,900万ユーロ(約3,768億円)で、2019年実績の33億ユーロ(約4,230億円)から約13%下落したが、既存の原子力発電所や建設中原子炉に保守・エンジニアリング・サービスを提供する「設置基盤事業」、および「計測制御(I&C)系事業」に関しては、欧州や北米での活動が比較的堅調だったと指摘した。収益も32億9,500万ユーロ(約4,224億円)と前年実績から3.1%の減少となったが、これは新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大が同社の「設置基盤事業」部門と、いくつかの機器取り替えプロジェクトのスケジュールに大きく影響したためである。それでも同社はパンデミックの最中、これらの部門における作業量を顧客と調整しつつ継続。「設置基盤事業」部門では競争の激しい米国市場で実績が改善されたとしている。また、ブラジルで進められているアングラ原子力発電所3号機(140.5万kWのPWR)の建設プロジェクトでも、ドイツにある同社の製造拠点から引き続き機器類を納入したと述べた。フラマトム社はまた、「計測制御(I&C)系事業」部門では、英国や東欧、米国における新規原子炉建設や既存炉の補修事業で活動が活発に継続したと説明。機器の製造プロセスや品質向上計画に対して同社が行った投資は、「プロジェクト・機器製造(PCM)事業」部門における蒸気発生器や重機器の品質向上に繋がったほか、英国のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(172万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)建設プロジェクトと仏国内のフラマンビル3号機(165万kWのEPR)建設プロジェクトも、同部門の事業拡大に貢献した。同社はこのほか、2020年は「原子燃料事業」部門における燃料集合体の生産が順調だったと表明。これらは主に、米国の原子力発電事業者や英国唯一の軽水炉であるサイズウェルB原子力発電所(125万kWのPWR)に納入したとしている。(参照資料:フラマトム社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Feb 2021
3472
スペイン原子力安全委員会(CSN)は2月17日、同国最大の原子力発電設備で1984年8月に送電開始したコフレンテス発電所(109.2万kWのBWR)の運転期間を、2030年11月末まで9年半延長することを承認したと発表した。これにより、同発電所の運転期間は2024年時点で運転開始後40年が経過し、それ以降はいわゆる「長期運転(LTO)」期間に入る。CSNの今回の裁定は今後、環境移行・人口問題省に送られ、「原子力および放射線取扱い施設に関する規制(RINR)」に基づいて最終審査を受けることになる。スペインではTMIとチェルノブイリ両原子力発電所で事故の発生後、脱原子力政策によって新規原子炉の建設を禁止している。しかし、脱原子力の達成時期については明確に定めておらず、スペイン議会は2011年2月、CO2排出量を抑制するため、原子力発電所に課していた最大40年という運転期間の制限規定を撤廃。稼働中の商業炉(当時、合計8基)の運転期間は、規制当局などの助言に従い、政府が様々な条件を勘案して決定していくことになった。また、スペイン政府は2020年1月、欧州委員会の政策に基づき「2021年~2030年までの統合国家エネルギー・気候変動対策プラン(INECP)」を作成した。その中で、CO2排出量を2030年までに(1990年比で)少なくとも20%削減するとの目標値を設定しており、「商業炉を運転開始後40年で閉鎖するとなると、2030年を待たずにそのすべてが閉鎖され、CO2の20%削減は不可能になる」と指摘。理想的な条件の下で整然と脱原子力を進めるにはまだ十分時間があるため、現在稼働する7基のうち4基までを2030年までに段階的に閉鎖する一方、残り3基(約300万kW分)については2035年末までに閉鎖していくとの方針を明記している。CSNはコフレンテス発電所の運転継続裁定について、「同発電所の的確な運転状況や、安全レベルが適切に維持されているか等を確認して下した」と説明。発電所を所有・運転するイベルドローラ社の(CSN要件に対する)適切な対応も考慮に入れており、10年に一度の大掛かりな定期安全審査で指摘された課題に対し、同社が提案した様々な安全性改善対策が確認されたとしている。なお、CSNはこのほか、アルマラス原子力発電所についても運転期間延長を承認すると2020年5月に発表。1981年に送電開始した1号機(104.9万kWのPWR)は2027年11月1日まで合計46年間、1983年に送電開始した2号機(104.4万kWのPWR)については2028年10月末まで45年間運転することを許可した。また、2020年6月には(1987年に送電開始した)バンデリョスII原子力発電所(108.7万kWのPWR)の運転を2030年7月まで10年間追加で継続することを承認。同発電所の合計運転期間は43年間に達する見通しである。(参照資料:CSNの発表資料(スペイン語)、スペインのINECP、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Feb 2021
4258
インドの大手エンジニアリング・建設企業であるラーセン&トゥブロ(L&T)社は2月18日、同国の南端タミルナドゥ州のクダンクラム原子力発電所で建設が計画されている5、6号機の土木建築工事契約を、インド原子力発電公社(NPCIL)から獲得した。ボンベイ証券取引所に対するL&T社の同日付申告文書で明らかになったもの。正確な契約金額は公表していないが、プロジェクト規模の分類では「最大級」の100億ルピー~250億ルピー(約145億~364億円)に相当すると明記している。インドの商業炉は低出力の国産加圧重水炉(PHWR)が主流だが、クダンクラム原子力発電所では現在、同国で唯一の大型軽水炉が稼働(1、2号機)・建設(3、4号機)中である。これらはすべてロシア国営の原子力企業ロスアトム社が建設した100万kWのロシア型PWR(VVER)で、III期工事に相当する5、6号機についてもインドとロシアの両国政府は2017年6月、100万kW級VVER設計を採用して建設することで合意、一般枠組み協定(GFA)とプロジェクトの実施に必要な政府間信用議定書に調印した。同年7月には、NPCILがロスアトム社傘下のアトムストロイエクスポルト社と5、6号機の主要機器の設計・製造契約に調印。両炉の本格着工に先立ち、機器の調達手続きが始まったもので、建設プロジェクトは実質的に具体的な実施段階に移行していた。L&T社が請け負った建設工事は、5、6号機の原子炉建屋と補助建屋、タービン建屋、ディーゼル発電機棟、およびその他の安全性関係構造物で、工期は64か月を予定。同社は現在建設中の3、4号機についても、同様の土木建築工事を請け負っている。2017年に相次いで着工したこれら2基は、2023年末までに運転開始予定となっている一方、5、6号機に関しては今年後半に着工後、2030年までに運転を開始できると見込まれている。(参照資料:ボンベイ証券取引所の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Feb 2021
2653
米国のニュースケール・パワー社は2月17日、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所内で同社製の小型モジュール炉(SMR)を建設する可能性を探るため、コズロドイ原子力発電所増設会社(KNPP-NB)と協力覚書を締結したと発表した。コズロドイ発電所では現在、5、6号機(各100万kWのロシア型PWR=VVER)のみが稼働中だが、これらは同国唯一の原子力発電設備であり、総発電量の約35%を賄っている。ブルガリア内閣は昨年10月14日、欧州連合(EU)が目標に掲げる「2050年までに気候中立(CO2の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロ)を達成」を前進させるためにも、同発電所の設備容量拡大に向けた可能性調査や準備活動を実施すると閣議決定した。内閣はその際、世界の潮流に沿って、将来的にSMRを第3世代+(プラス)の大型炉に代わる選択肢として活用する方針を明示。コズロドイ発電所では設備容量の上限を定めていないため、原子炉の増設に向けて現在進めている活動の範囲を広げることや、様々な原子炉技術を考慮することなどを指示した。また、具体的な措置として、SMRのデベロッパーを含む米国企業と新たな原子炉技術の開発協力で交渉に入るなど、必要なアクションを取るようエネルギー大臣と国営エネルギー持ち株会社(BEH)に命じている。実際、ブルガリア政府は今年1月、頓挫したベレネ原子力発電所のために調達した一部機器を使って、コズロドイ発電所7号機の建設を検討すると発表している。この方法が最も経済的であり、環境面や技術面でも適していると述べた一方、SMRなどの新技術を採用した原子炉を建設する可能性についても調査を継続するとしていたニュースケール社が今回覚書を結んだKNPP-NB社は、既存のコズロドイ発電所サイトに新たな原子炉を建設するために設立された株式会社。閣議決定に沿って、KNPP-NB社は先進的な原子炉技術を同発電所に導入する方針であり、ニュースケール社のSMRについても技術的な適性を評価する。ニュースケール社側もKNPP-NB社のこのような活動に協力するため、様々な分析・調査をサポートする予定。具体的には、実行可能性調査の実施も含めた開発スケジュールの作成や費用見積もり、エンジニアリングや許認可手続きなど、ニュースケール社製SMRの導入で双方が合意した項目を支援していく。ニュースケール社は2016年12月末日、SMR設計としては初の設計認証(DC)審査を原子力規制委員会(NRC)に申請した。その後約4年半の審査を経て、NRCは2020年9月29日付けの連邦官報で、「電気出力各5万kWのモジュール×12基」で構成される同社製SMRに「標準設計承認(SDA)」を発給したと発表した。同設計の初号機については、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)がエネルギー省傘下のアイダホ国立研究所内で建設することを計画しており、ニュースケール社は2027年までに最初のモジュールを納入する考え。また、米国以外では、カナダやヨルダン、チェコ、ルーマニアで同社製SMRの建設可能性調査に関する覚書がニュースケール社と結ばれている。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、コズロドイ原子力発電所増設会社(ブルガリア語)の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Feb 2021
3427
米エネルギー省(DOE)の原子力局は2月9日、使用済燃料(SNF)と高レベル放射性廃棄物(HLW)の輸送用として予備的に設計した8軸(車輪が8対=16輪)のハイテク鉄道車両「Fortis」について、米国鉄道協会(AAR)からプロトタイプを製造し試験を開始するための許可が得られたと発表した。DOEはすでに、「Fortis」開発の次の段階であるプロトタイプの製造・試験契約の締結に向けて、契約オプションに関する情報提供依頼書(RFI)と市場調査通知(SSN)を産業界に向けて発出済み。予備設計通りのプロトタイプの製造と試験の実施で契約を2つに分けるオプションと、製造と試験を一本化したオプションの2種類について情報や意見の提供を求めている。首尾良く契約が結ばれて、試験車両が完成するまでに約18か月を要する見通しだが、DOEとしては5年以内に「Fortis」の運用を可能にする方針である。米国では「1982年放射性廃棄物政策法」に従って、DOEが全米の原子力発電所敷地内や中間貯蔵所に保管されているSNFとHLWの処分と、処分場までの輸送義務を負っている。SNF等の輸送容器(キャスク)は主に鋼鉄製の円筒型で、外部への漏洩防止のため溶接かボルトで密閉されている。重さも80~210トンに達することから、DOEは主に鉄道の利用をキャスクの輸送手段として想定している。「Fortis」はSNFキャスクのように大型のコンテナの積載に適したフラットな設計の車両で、ハイテク・センサーやモニタリング・システムを搭載。これらによって、輸送時に起こり得る11種類の状況をリアルタイムでオペレーターに伝えることができる。予備設計は今年初頭、パシフィック・ノースウエスト国立研究所の技術支援により完成しており、AARは鉄道産業界の厳しい設計基準に照らして「Fortis」を製造し、試験するようDOEに要求している。なお、DOEは「Fortis」のほかに、高レベルの放射性物質を輸送する12軸の車両「Atlas」の開発も進めている。「Atlas」ではすでに、単一車両のプロトタイプを使った試験をコロラド州プエブロで実施中。DOEは2020年代半ばまでに、これら車両の両方について運転許可をAARから取得するとしている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Feb 2021
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ロシアの原子炉機器製造企業のアトムエネルゴマシ(AEM)グループは2月12日、中国の遼寧省で中国核工業集団公司(CNNC)が建設を計画している徐大堡原子力発電所の3号機用主要機器の製造をロシアで開始したと発表した。同発電所のⅡ期工事となる3、4号機の建設工事については、2019年6月にロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が請け負うことが決定。この時、同社傘下の原子力発電所建設・輸出企業であるアトムストロイエクスポルト(ASE)社が、CNNCと一括請負契約を締結した。3、4号機の設計は第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER)を採用することになっており、CNNCは今年10月に3号機を、2022年8月に4号機を本格着工し、その後はそれぞれ、2027年と2028年の完成を目指すとしている。徐大堡発電所の建設計画では2006年当時、100万kW級PWRを最終的に6基建設することが計画されており、国家発展改革委員会は2011年1月、Ⅰ期工事の1、2号機について事前作業の実施を許可した。これを受けて基礎掘削の前段階の起工式が行われたものの、同年3月に福島第一原子力発電所事故が発生したため、政府は計画を一時凍結。2014年4月に国家核安全局(NNSA)から同計画のサイト承認が発給され、2016年10月に両炉の原子炉建屋の土木建築契約が結ばれた折は、100万kW級のウェスチングハウス社製AP1000を2基建設すると伝えられたが、これらは今のところ未着工である。今回、3号機の機器製造を開始したアトムエネルゴマシ・グループはロスアトム社のエンジニアリング部門で、実際の作業は傘下のAEMテクノロジー社のボルゴドンスク支部であるアトムマシ社が行っている。AEMテクノロジー社が中国の建設プロジェクト用に主要機器を供給するのは2件目で、今回の契約内容は2基の120万kW級VVERについて、蒸気発生器と冷却材ポンプ、加圧器などを製造・納入すること。これら機器の総重量は、合計6,000トンに達する。発表によると、現時点では1基あたり4台設置する蒸気発生器の胴部と原子炉容器のシェル部分について点検が完了し、機器製造作業が始まったところ。原子炉容器シェルの重さは92トンあるが、ノズル部分の機械加工は15日ほどかけて行われる。これと同時に、炉心に耐食性の覆いをかける準備も進展中で、1台あたり37トンの重さがある蒸気発生器・胴部の機械加工は6日間で仕上げるとしている。(参照資料:アトムエネルゴマシ・グループの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Feb 2021
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米アドバンスド・リアクター・コンセプツ(ARCニュークリア)社のカナダ法人は2月10日、カナダのニューブランズウィック(NB)州で同社製・小型モジュール炉(SMR)の建設計画を進めるため、NB州政府がこれまでの支援に加えて新たに2,000万カナダドル(約16億5,900万円)を同社に提供することになったと発表した。ARCニュークリア社は2018年7月、NB州の州営電力であるNBパワー社と協力することで合意。この合意に基づきARCニュークリア社は、NBパワー社が同州内で操業するポイントルプロー原子力発電所の敷地内で、ナトリウム冷却・プール型高速中性子炉のSMR「ARC-100」(電気出力10万kW)を建設する可能性を探っている。また、将来的には同SMRをカナダの他のサイトや世界中で建設する道を模索するほか、NB州を「ARC-100」技術に基づいた先進的SMR製品の中核的研究拠点や製造拠点とすることを目指している。ARCニュークリア社は今年1月、社名を「ARCクリーン・エナジー社」に変更しており、そのカナダ法人「ARCクリーン・エナジー・カナダ(ARCカナダ)社」の発表によると、NB州からの今回の支援金交付は、ARCカナダ社がマッチングファンドを通じて民間から3,000万加ドル(約24億9,000万円)の投資金を確保することが条件である。この投資を通じて、ARCカナダ社は確証済みの技術を用いた固有の安全性を有するSMRを2020年代後半にも建設する計画で、NB州にはこうしたSMR開発イニシアチブを成功に導く重要な諸条件――熟練した運転事業者や融通の利く労働力、将来的にサプライチェーンを構築するための基盤、技術革新の支援に適した学術的研究体制、などがすべて整っていると指摘した。NB州のB.ヒッグス首相も同日、「州政府の年次報告と将来展望」の中で、同州のSMR戦略は順調に進展中だと強調。ARCカナダ社との連携協力を続けていくと述べており、今回の支援金を通じて「ARC-100」の技術開発を次の段階に進める方針である。同首相の考えでは、ARCカナダ社に全面的に協力することでNB州の十分活用されていないサプライチェーンを再活性化し、再生可能エネルギーの間欠性を効率的に補えるクリーンエネルギーを州内で生産、これらは大規模なビジネスチャンスの創出につながると述べた。また、SMRの輸出によって、NB州では高賃金の雇用が創出されるなど利益が還元されるため、この開発イニシアチブには世界市場に道を拓く可能性があると強調した。なお、「ARC-100」の許認可手続きについては、ベンダーの要請に基づいてカナダ原子力安全委員会(CNSC)が正式な申請に先立ち実施する「予備的設計評価(ベンダー設計審査)」の第一段階がすでに完了している。ARCカナダ社のN.ソーヤー社長兼CEOは、「民間の投資家にとって公的支援がいかに重要であるか、今回の事で明らかになった」と指摘。その上で、「NB州の支援を受けてベンダー審査の第二段階が正式に始まる」としている。(参照資料:ARCカナダ社、NB州政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Feb 2021
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は2月11日、シベリア化学コンビナート(SCC)で鉛冷却高速炉(LFR)のパイロット実証炉「BREST-300」(電気出力30万kW)を建設するための許可が、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)から10日付でSCCに発給されたと発表した。SCCはロスアトム社傘下の燃料製造企業TVEL社の子会社で、シベリア西部のトムスク州セベルスクに位置している。「BREST-300」は冷却材として鉛を、燃料としてはウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料を使用することから、SCCは今年中の完成を目指して専用のMNUP燃料製造加工施設を建設中。2020年6月からは、同施設で機器の設置作業も始まっている。「BREST-300」本体については2026年末までに完成させる方針で、ロスアトム社は2019年12月、原子炉建屋とタービン建屋、および関連インフラ施設の総合建設契約をエンジニアリング企業のTITAN-2社と263億ルーブル(約373億円)で締結済みである。「BREST-300」と燃料製造加工施設、および同炉から出る使用済燃料専用の再処理施設は「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」を構成することになっており、PDECはロスアトム社が進めている戦略的プロジェクト「ブレークスルー(PRORYV)計画」の主要施設となる。同社はこのプロジェクトを通じて、天然ウランや使用済燃料を有効活用するという原子燃料サイクルの確立を目指しており、そのために開発実績の豊富なナトリウム冷却高速炉(SFR)に加えて、LFRの研究開発も並行して進めていると述べた。「BREST-300」の建設許可が降りたことについてロスアトム社は、「建設プロジェクトに関するROSTECHNADZORの課題すべてが解決したことを意味している」と説明。今後は、ロシアと独立国家共同体(CIS)の50以上の技術革新センターが参加する「ロシア技術移転ネットワーク(RTTN)」の包括的プログラムに沿って、主要なプロジェクトを実行に移す。また、建設プロジェクトの特殊性を考慮して、ロスアトム社は「BREST-300」の安全審査中に、新たな規則や基準を設定した。それらは、冷却材として鉛を使用する同炉の設計と安全な運転に関する規制、あるいは原子炉容器や機器・配管等に十分な強度があることを保証する要件など。「BREST-300」の特徴を踏まえて同社が設定したこれら合計16項目の基準は、すでに承認され発効済みとなっている。(参照資料:ロスアトム社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Feb 2021
4290
ブルガリア内閣は2月4日、米ウェスチングハウス(WH)社製の原子燃料をコズロドイ原子力発電所5号機(100万kWのロシア型PWR「VVER-1000」)に装荷するため、また、その認可手続の一環として同燃料で安全解析の実施準備を進めるための契約をWH社と同発電所が締結したと発表した。ブルガリアは現在、欧州原子力共同体供給局(ESA)の「欧州エネルギー供給保証戦略」の下で原子燃料の調達先多様化プログラムを進めている。これにともない同国の原子力規制庁は、これまで使用していた燃料メーカーの製品と異なる原子燃料を新燃料として装荷する場合、詳細かつ包括的な安全解析の実施を必須要件としている。安全解析の結果が良好であれば、原子力規制庁は原子燃料の使用許可を発給、5号機では今回の契約に基づいてWH社製の原子燃料が装荷されることになる。原子力分野におけるブルガリアと米国の協力は、2019年11月にブルガリアのB.ボリソフ首相と米国のD.トランプ大統領が会談した折、一層拡大していくことで合意。両国政府はその際、ブルガリアで唯一稼働するコズロドイ5、6号機で米国製の原子燃料が使用可能となるよう、認可手続の迅速な進展を支援するとしていた。WH社は近年、東欧諸国からVVER用原子燃料の需要が増大しているのにともない、2016年にスウェーデンのバステラスにある原子燃料製造加工工場を拡張した。同社はこれまでに、ウクライナの商業炉6基に対してVVER-1000用原子燃料を供給しており、チェコではテメリン原子力発電所に同社製燃料を装荷するための認可手続が進展中。WH社によれば、同社が製造した最新のVVER-1000用原子燃料集合体であれば、燃料の経済性が一層向上し、安全性や品質の面でも極めて優れた性能が発揮されるとしている。今回の契約では、コズロドイ発電所のN.ミーホフCEOとWH社のA.ダグ副社長が契約書に調印。調印式にはブルガリアのボリソフ首相とエネルギー省のT.ペトコワ大臣、駐ブルガリアの米国大使とスウェーデン大使が同席した(=写真)。ボリソフ首相によると、国家安全保障の確保でブルガリアが近年実行していることは戦略的地政学上重要なもの。原子燃料の調達先の多様化は、そのための必要不可欠な要素になると説明している。(参照資料: ブルガリア内閣(ブルガリア語)、コズロドイ原子力発電所、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Feb 2021
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は2月5日、国内原子力産業界の従業員向けにA.リハチョフ総裁のビデオメッセージを発信した。2021年は原子力を中心とする従来の事業を一層強化していくため2050年までの開発計画を策定するほか、新規事業の比重を高めるなど戦略的な方向に乗り出していく考えを明らかにしている。リハチョフ総裁は同社の2020年の実績を振り返り、「風力発電や核医学、デジタル製品、複合材料といった事業が十分成長しており、ロスアトム社の収益拡大に大いに貢献する見通しとなった」と述べた。その上で、今後は世界のリーダー的立場を獲得することを念頭に、新規事業の基礎固めを進めていると説明。具体的には、ロジスティクス事業の国内大手Deloグループと協力して同事業のへの参入を試みているほか、宇宙・人工衛星システムの開発で民間企業と協力、水素生産についても第一歩を踏み出そうとしている。同社はまた、国連サミットで採択された「持続可能な発展に向けたアジェンダ」に関わる海外市場に力を入れる方針で、昨年末には「国連グローバル・コンパクト・ネットワーク」にも参加した。同ネットワークは、各企業が責任ある創造的リーダーシップを発揮して、社会の良き一員として持続可能な成長を実現させるという世界的な取り組み。世界をより良い方向に変えるための、信頼できるパートナーとしてロスアトム社が認識されるよう、海外市場向けの政策を打ち立てる必要があるとしている。ミシュスチン首相(=左)とロスアトム社のリハチョフ総裁©Rosatomリハチョフ総裁はさらに、前日の4日にM.ミシュスチン首相と会見し、ロスアトム社の2020年の実績を報告するとともに2021年の戦略計画を説明したと表明。ユーラシア経済連合に所属するアルメニアやウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、ベラルーシなどとの協力についても、協議を行った。この会見の中で同総裁は、ロスアトム社の諸外国からのこれまでの受注総額が2,500億ドルを超えている事実に言及。今後の見通しについても、10年間の総額で約1,400億ドルのレベルに留まると見込まれる。一方、同社は昨年、自己資本の中から2,500億ルーブル(約3,500億円)を投資したほか、国家予算の中からは1,300億ルーブル(約1,840億円)を投資。「予算の執行はほぼ100%キャッシュで行っており、国の予算は責任ある方法で注意深く使っている」と強調した。一方のミシュスチン首相は、ロスアトム社がベラルーシを含む12か国でロシア型PWR(VVER)の建設を積極的に進めている点を高く評価。「原子力の範疇を超えて、デジタル技術やレーザー技術、量子計算などの技術にも幅広く関わっている」と指摘した。また、2020年は新型コロナウイルスによる感染が拡大するなど困難な年だったが、V.プーチン大統領が4月に「ロシア連邦における2024年までの原子力利用分野の科学・技術研究と機器開発に関する大統領令」を公布。同令に沿って、原子力産業界では各種のプログラムが進展中だと首相は述べた。(参照資料:ロスアトム社の発表資料(ロシア語)①、ロシア政府の発表資料(ロシア語)②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Feb 2021
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英グレートブリテン連合王国の一地域であるウェールズの政府は2月5日、サイズウェルC(SZC)原子力発電所(出力約167万kWの欧州加圧水型炉: EPR×2基)の建設に向けて結成された原子力サプライチェーン「サイズウェルC企業連合」と協力覚書を締結したと発表した。ウェールズでは先月27日、アングルシー島におけるウィルヴァ・ニューイッド原子力発電所建設計画について、事業者が主要認可となる「開発合意書(DCO)」の申請を取り下げると発表した。今回の覚書を通じて、ウェールズ政府はこれまで同地域で培われてきた原子力スキルを維持していく方針である。「サイズウェルC企業連合」は昨年7月、英国の原子力サプライチェーンに属する企業や労働組合など32社が結成したもので、現在の参加企業数は約200社に拡大した。英国の商業炉15基すべてを保有するEDFエナジー社のほか、大手エンジニアリング企業のアトキンズ社やアラップ社、ヌビア社、原子力事業会社のキャベンディッシュ・ニュークリア社、建設大手のレイン・オルーク社、米国籍のGEスチーム・パワー社などが参加。大手労組のGMBやユナイト・ユニオンも加わっている。今回の覚書によると、グレートブリテン島の南東部、イングランドのサフォーク州で同発電所建設計画が承認された場合、「サイズウェルC企業連合」はその全建設期間中、同島の南西部に位置するウェールズで最大約9億ポンド(約1,300億円)の投資をサプライチェーンに行うとともに、4,700人分の雇用を支援。英国では現在、EDFエナジー社がサマセット州でヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(170万kW級のEPR×2基)を建設中であることから、同社を中心とする「サイズウェルC企業連合」はHPC発電所が完成に近づいた段階で、そのサプライチェーンをSZC発電所用に移行させる可能性を検討する。ウェールズでは1960年代半ばから1990年代半ばまで、トロースフィニッド原子力発電所(23.5万kWのGCR×2基)が北西部のグゥイネズで稼働。英国の原子力部門とは長年にわたって協力し合い、数多くの地元専門家が同部門の要請に応えてきた。ウェールズ政府のK.スケーツ経済相は、「原子力に関する専門的知見やノウハウの蓄積で、ウェールズには確固たる実績があり、英国内の原子力事業は今や、世界の原子力サプライチェーンの一部分を担っている」と説明。SZC計画にゴーサインが出れば、そこから利益を得る態勢が整っていると述べた。同相はまた、「先般のウィルヴァ・ニューウィッド計画のニュースは残念だったが、今回の覚書締結により、ウェールズの専門的知見がどれほど必要とされているか明らかになった」と述べた。「サイズウェルC企業連合」のC.ギルモア広報担当は、「サイズウェルC発電所によってウェールズ全体に雇用や関係スキル、長期的な経済成長がもたらされると産業界は考えており、今回の覚書ではそれが明確に示された」と指摘。このような利益の実現に向けて、同企業連合は今後もSZC計画の承認取得プロセスを支援していくとした。EDFエナジー社は2020年5月に同建設計画の「開発合意書(DCO)」を計画審査庁(PI)に申請しており、PIは6月24日付でこの申請を受理している(参照資料:ウェールズ政府、サイズウェルC企業連合の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Feb 2021
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欧州6か国の主要な13の労働組合は2月4日、欧州委員会(EC)のU.フォンデアライエン委員長宛てに共同書簡を送った。欧州連合(EU)が2050年までに気候中立(carbon neutrality=CO2排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態)を達成するという「欧州グリーンディール」の目標を満たすのであれば、中心となるグリーン事業の分類(EUタクソノミー)に原子力を含めなくてはならないと訴えている。これらの労組は、ベルギー、ブルガリア、フィンランド、フランス、ハンガリー、ルーマニアの労働者を代表する組織で、エネルギー・原子力関係の労組も網羅。フランスの5つの主要労組連合の一つである「労働総同盟(cgt)」やベルギーの3大労組の一つ「キリスト教労働連盟(CSC-ACV)」などが含まれている。「EUタクソノミー」は見せかけの環境配慮を装った事業を廃し、環境上の持続可能性を備えた真にグリーンな事業に正しく投資が行われるよう、明確に定義づけるための枠組み。ECの「持続可能な金融に関する技術専門家グループ(TEG)」は2020年3月、「EUタクソノミー」の最終技術報告書の中で「原子力については、放射性廃棄物の管理で環境分野に悪影響が及ばないかという点で評価が非常に難しい」と表明。その時点では、原子力を「EUタクソノミー」に含めるようECに勧告することはできないとしていた。13の労組は今回の書簡の目的について、「気候中立を達成する際に原子力が果たす重要な役割について、フォンデアライエン委員長に注目してもらうことだ」と説明。これと同時に、EU域内におけるエネルギーの供給保証と新型コロナウイルスによる感染拡大からの復興も目指す。同委員長との対話を通じて、原子力の持つすべての潜在能力が発揮される状況を作り出し、経済面の効率性が高く社会的にも公正な「低炭素な欧州」を2050年までに構築したいと述べている。これらの労組の認識では、原子力はEU域内における低炭素電力の約半分を供給しており、国際エネルギー機関(IEA)と国際原子力機関(IAEA)は共同で原子力の有用性を指摘。「国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」も、地球温暖化の防止に原子力は必要欠くべからざる解決策の一つだと繰り返している。13の労組はまた、EU加盟国の多くが次世代原子炉の開発や既存炉の運転期間延長を優先事項としており、近年は小型モジュール炉(SMR)などの新技術も浮上しつつあると説明。再生可能エネルギーのように出力調整困難な電源を補いつつ、欧州電力システムの安定性を確保するには、信頼性の高い電力供給が可能な欧州原子力産業への投資は欠かせないと指摘した。もしも原子力が「EUタクソノミー」から除外された場合、再生エネの補完は引き続き化石燃料火力が担うことになり、CO2排出量の削減という目標の達成は難しくなるとしている。さらに、原子力を除外すれば、このような強い悪影響は欧州の原子力産業のみならず、電力多消費産業を中心とした全産業に及ぶ。これが確定してしまえば、欧州は気候中立の達成に向けた重要な基準を満たすことはできなくなると強調している。(参照資料:欧州労組の共同書簡、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Feb 2021
2875
仏国のフラマトム社は2月2日、同社製の改良型事故耐性燃料(EATF)を試験的に装荷した米国の商業炉が、このほど18か月の運転サイクルを完了したと発表した。この先行使用・燃料集合体(LFAs)には、ペレットと被覆管の両方に事故耐性燃料(ATF)の概念が盛り込まれており、同燃料で商業炉が1運転サイクルをフルに稼働したのは初めてだとしている。フラマトム社は今回、試験に使った商業炉名を明らかにしていないが、LFAsの装荷時期については、この商業炉で予定している3回の18か月運転の初回分として2019年4月に行ったと明記。この当時、同社はサザン・ニュークリア社がジョージア州で操業するA.W.ボーグル原子力発電所で、2号機(121.5万kWのPWR)にLFAsを装荷と公表していた。発表によると、昨年8月の燃料交換時に原子炉から4体のLFAsを取り出した後、点検を実施。その結果、LFAsで期待通りの成果と優れた性能が認められたほか、同炉で残り2回の運転サイクルが終了した後、さらに詳細な計測と点検を行う計画だとしている。フラマトム社で燃料事業を担当するL.ゲフェ上級副社長は、「当社のEATF技術で最高度の技術基準をクリアできることが確認できた」とコメント。この技術をさらに進展させ、顧客に一層安全かつ信頼性や効率性、経済性も高い燃料を提供していきたいと述べた。フラマトム社は現在、米エネルギー省(DOE)が福島第一原子力発電所の事故後に開始した「事故耐性燃料開発プログラム」に参加している。同社のほかには、GE社と日立の合弁企業であるグローバル・ニュークリア・フュエル社、ウェスチングハウス社、ライトブリッジ社などが産業界から協力中。2022年頃までに、3段階でATFを開発・実証する計画である。フラマトム社はまた、DOEプログラムの一環として独自のATF開発プログラム「PROtecht Program」も進めており、短・長期的な事故時の対応策としてPWR用に高性能で堅固な先進的EATF(GAIA)の開発を目指している。GAIA燃料集合体のコンセプトは、同社製の最新鋭ジルカロイ合金製被覆管「M5」に先進的なクロム・コーティングを施すとともに、燃料ペレットをクロム合金の酸化被膜で覆うというもの。クロムを塗布することで被覆管の高温耐酸化性が改善され、冷却水喪失時においても水素の発生を抑えることができる。このコーティングはまた、燃料が微摩耗するのを防ぐことから、通常運転時に燃料が破損する可能性も低くなるとしている。なお、今回試験したLFAsは、フラマトム社が米ワシントン州リッチランドにある同社の燃料製造工場で製造加工したものである。(参照資料:フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Feb 2021
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ポーランド政府は2月2日、気候・環境大臣が提出していた燃料・エネルギー部門における2040年までの重要政策「PEP2040」を、内閣が正式に承認したと発表した。国内エネルギー・ミックスにおける石炭火力シェアの大幅な削減を目標としたもので、原子力については出力100万~160万kWの初号機を2033年に運転開始すると明記されている。「PEP2040」の概要はすでに2020年9月、気候・環境省のM.クルティカ大臣が公の場で公表。この政策に関して実施したパブリックコメント募集や関係閣僚との協議も同年末までに完了し、内閣の開発政策調整委員会等からは肯定的な評価が得られていた。新たな政策や戦略の承認は2009年に前回のエネルギー政策を策定して以来のことであり、ポーランド国内でCO2排出量ゼロに向けてエネルギー改革を進める際の枠組となる。政策の主な柱は①クリーン・エネルギーへの移行、②CO2排出量ゼロのエネルギー供給システム確立、③大気汚染の改善。これらによって、ポーランド経済全体の近代化が円滑に進み、エネルギーの供給保証が強化されるとしている。「PEP2040」はまた、パリ協定が定めた目標の達成に貢献するとしており、ポーランドのクリーン・エネルギーへの移行を公平かつ一致団結した方法で進める一助となる。さらに、地球温暖化防止を目指した欧州連合の2050年までの工程表「欧州グリーンディール」を、ポーランド経済に適応させることにも配慮したものになっている。「PEP2040」」を通じて、ポーランドは2040年時点で国内発電設備の半分以上を無炭素電源にする予定だが、このプロセスの中で洋上風力発電と原子力発電の導入は重要な役割を担う。これら2つはポーランドがこれから構築する新しい戦略的産業であり、これらに特化した人的資源の開発や新規の雇用、付加価値の付いた国家経済が構築されるとポーランド政府は強調している。「PEP2040」における原子力発電実施プログラム「PEP2040」で戦略的プロジェクトの1つとされた原子力発電プログラムでは、2043年までに合計6基の原子炉を建設すると明記。2033年に100万kW以上の初号機が運転開始した後、2~3年毎に残り5基の運転を開始させるが、2043年という期限は、電力需要の増加にともない電力不足に陥ることを想定して設定した。「PEP2040」によれば、原子力発電は大気を汚さずに安定的にエネルギーを供給するだけでなく、エネルギーの生産構造を合理的なコストで多様化することが可能である。また、近年使われている第3世代および第3世代+(プラス)の原子炉技術は、原子力安全分野の厳しい国際基準と相まって、原子力発電所で高い水準の安全性を確保。ポーランドが進める原子力発電プログラムでは、その多くに国内企業が参加することになるとした。実際に同プログラムを進めるにあたり、関係する法の改正や資金調達モデルの確立も事前に必要になるが、ポーランド政府は原子力発電所建設サイトの選定、低・中レベル放射性廃棄物処分場の操業なども実行に移す。また、採用技術や建設工事の総合請負業者を選定するほか、発電所の建設と運転、監督等で必要な人材の育成も行う方針である。「PEP2040」ではさらに、大型軽水炉の建設とは別に高温ガス炉(HTR)を将来的に導入する可能性を明記。HTRは主に、産業用の熱供給源として使用するとしている。(参照資料:ポーランド政府の発表資料(ポーランド語)①、②、原産新聞・海外ニュース、ほか)
03 Feb 2021
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中国核工業集団公司(CNNC)は1月30日、福建省で昨年11月から試運転中だった福清原子力発電所5号機(116.1万kWのPWR)が、世界初の「華龍一号」設計採用炉として営業運転を開始したと発表した。同炉は2015年5月に本格着工、国内の商業炉としては49基目になる。中国の原子力発電開発において大きな節目となった同炉の運転開始により、中国は自らが知的財産権を保有する第3世代炉の開発国としては、米国、仏国、ロシアに次いで4番目(※)になったとCNNCは表明している。「華龍一号」は、中国で過去30年以上にわたる研究開発と機器の設計・製造、建設・運転の経験に基づき、CNNCと中国広核集団公司(CGN)双方が開発した第3世代炉設計を一本化したもの。設計上の運転期間は60年で、運転サイクル期間は18か月となっている。安全系には動的と静的両方のシステムを組み合わせており、格納容器は二重構造。これらによって、国際的に最も厳しい最新の安全基準をクリアしたとしている。同設計はまた、120万kW近い出力があるため、年間100億kWh程度の発電が可能。新興工業国であれば、これ一基で国民100万人分の電力需要に応えることができる。この発電量はさらに、標準的な石炭の消費量で年間312万トンに相当することから、CO2に換算して年間816万トンの排出を抑えられるとCNNCは指摘した。CNNCの余剣鋒董事長によると、CNNCは今後一層多くの「華龍一号」の建設を加速する。同設計の輸出促進とCO2排出量の実質ゼロ化という目標の達成に向けて、様々な技術を新たに開発していく考えである。中国国内では福清6号機もCNNCが「華龍一号」の実証炉プロジェクトとして2015年12月から建設中。同炉は年内にも運転開始が見込まれている。CGNも、CGN版の「華龍一号」実証炉プロジェクトとなる広西省の防城港3、4号機を、それぞれ2015年12月と2016年12月に着工。これらは2022年に運転を開始すると見られている。また、これらに続く「華龍一号」として、CNNCが福建省のショウ(さんずいに章)州1、2号機を2019年10月と2020年9月に、CGNが広東省の太平嶺1、2号機を2019年12月と2020年10月にそれぞれ着工した。さらに国外では、パキスタンでCNNCがカラチ2、3号機を建設中であり、2021年から2022年にかけて営業運転を開始する見通しとなっている。注※:CNNCのプレス発表原文のまま(参照資料:CNNCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Feb 2021
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日立製作所が100%出資する英国のホライズン・ニュークリア・パワー社は1月27日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)に宛てた同日付けの書簡を公表し、ウィルヴァ・ニューウィッド原子力発電所建設計画を進めるため、2018年6月に提出していた「開発合意書(DCO)」の申請書を取り下げる考えを明らかにした。 DCOは、国家的重要度の高いインフラ・プロジェクトについて取得が義務付けられている主要認可である。審査の実施機関である計画審査庁(PI)は、申請されたプロジェクトが英国政府の要件を満たしているか判定した上で、担当省のBEISに意見を勧告。最終的にBEIS大臣が、DCO発給の可否を判断することになっている。日立製作所は2019年1月、ウェールズのアングルシー島で135万kWの英国版ABWRを2基建設するというウィルヴァ・ニューウィッド計画を一旦凍結した後、2020年9月に同計画からの撤退を決めた。その直後からホライズン社はBEIS大臣宛てに複数の書簡を送っており、DCO発給の可否判断の期限を2020年12月まで延期するよう要請。その後、12月末日付けの再延期要請により、BEISは最終的な判断を今年の4月末までに発表するとしていた。ホライズン社の書簡によると、同社はこの間に、新設計画の実施に関心を持つ複数の「第三者」と協議を継続。しかし、英国政府が同プロジェクトへの資金調達で新たな方策を見いだせないなか、日立製作所は今年の3月31日付けでホライズン社におけるデベロッパーとしての活動を終了すると決定した。また、第三者との協議も、日立製作所に代わる新たなデベロッパーへの建設サイト移転など、決定的な提案に結びつかなかったことから、「非常に残念だがDCO申請の取り下げを決めた」と説明している。ホライズン社は同計画のほかに、イングランドのグロスターシャー州オールドベリーでも同出力のUK-ABWRを2基建設することを計画していた。同社としては、これら2つのサイトはともに新規の原子力発電所建設に非常に適しており、英国政府が掲げる「2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化」という目標の達成にも重要な貢献をすると考えている。今後これらのサイトは、日立製作所の子会社である日立ヨーロッパ社が管理することになるが、これは新設計画の実行を申し出るデベロッパーが現れることを期待しての措置となる。ホライズン社としても今年の3月末までは、引き続きこれを支援していく。それ以降については、日立ヨーロッパ社がこれらのサイトの取得に関心を持つ第三者との対応にあたるとしている。 (参照資料:ホライズン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Feb 2021
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米国のジョージア・パワー社は1月25日、同国で約30年ぶりの新設計画であるA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機(各110万kWのPWR)の建設工事で、4号機のフラッシングおよび各種試験を開始したと発表した。この工程では、システムの配管から原子炉容器や原子炉冷却系に水を通して洗浄と試験を行い、機器や配管の健全性を確認。プラントの安全な起動を担保する重要ステップの一つであり、今後数か月を費やす予定である。作業はまず、使用済燃料プールの冷却系などから始まり、原子炉冷却系や受動的炉心冷却系、残留熱除去系に進展。4号機ではこれ以降、起動と送電の開始に向けて広範な試験が行われる。ボーグル3、4号機は米国で初めてウェスチングハウス(WH)社製のAP1000設計を採用し、それぞれ2013年の3月と11月に建設工事が始まった。4号機では2020年初頭、格納容器に上蓋を設置しており、同年12月にはAP1000設計に特徴的な構造である「遮へい建屋」(格納容器の外側)で、重さ200万ポンド(約907トン)の丸天井を据え付けた(=写真)。またその数日前には、3号機用の初装荷燃料が建設サイトに到着し、現在燃料装荷に先立ち温態機能試験の準備中。試験の実施に際して必要になる復水器の真空試験も、タービン系で完了している。両炉ではこのほか、3号機で緊急事象の発生を想定した対応訓練を行った。ジョージア・パワー社によれば、参加チームは周辺住民の安全と健康を効率的かつ効果的に防護する能力を実証した。建設サイトでは2020年4月以降、新型コロナウイルスによる感染の影響を軽減するため、労働力を約20%削減する方針を取っている。約9,000人だった作業員の数を約7,000人に減らしたが、ジョージア・パワー社は建設プロジェクトの総資本費や、両炉の現行目標の完成日程である2021年11月と2022年11月に影響が及ぶことはないと強調。両炉が完成した後は、約800人分の雇用が創出されると表明している。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
29 Jan 2021
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英国南西部のサマセット州でヒンクリーポイントC原子力発電所(170万kW級欧州加圧水型炉:EPR×2基)を建設中のEDFエナジー社は1月27日、新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大(パンデミック)が影響し、1号機の送電開始は2026年6月に遅延する見通しになったと発表した。同計画の最終投資判断を下した2016年9月当時、同社は1号機で2025年末の送電開始を予定していたが、パンデミックの影響を綿密に評価した結果、完成が約半年遅れるほか、総工費の予測額も2019年9月時点で215億~225億ポンド(※2015年の貨幣価値、以下同様)(約3兆円~3兆2,000億円)だったのが、今回220億~230億ポンド(約3兆1,360億~3兆2,800億円)に増大。これにともない、7.6%~7.8%としていたEDFエナジー社の予測利益率(IRR)も、7.1%~7.2%に引き下げられたとしている。同社は今のところ、2022年末に1号機の格納容器でドーム屋根の設置を目指しているが、1、2号機が完成するまでに、当初スケジュールからそれぞれ15か月と9か月の遅れが発生するリスクが残っている。今年の第2四半期以降には、建設サイトもコロナ以前の状態に戻ると同社は予想しているものの、遅延リスクが現実となった場合、追加的に発生する経費は約7億ポンド(約998億円)、IRRは0.3%低下すると見込んでいる。EDFエナジー社がこの日公開した動画によると、建設サイトでは感染の拡大を防止するため、ソーシャル・ディスタンスを確保するなど数多くの対策を実行中。同サイトと周辺コミュニティにおける安全性の維持で、実施可能なことはすべて実施している。作業員の減員と資材の供給途絶という厳しい環境の下、昨年は節目となる20の目標項目中、18項目まで完了した。スケジュール管理も同社は注意深く行っているが、パンデミックの発生以降、いくつかの作業については延期を余儀なくされ、2020年の作業では約3か月の遅延が生じた。同社によれば、今年はさらに3か月遅延すると見込まれており、総工費は一層膨らむ可能性がある。しかし、2016年に計画の実施を決定して以来、同社がスケジュールを事前に調整したのは今回が初めて。パンデミックは健康にかかわる重大事項であっても建設工事上の課題というわけではなく、基本的に建設プロジェクトは良好に進展中だと強調している。(参照資料:EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Jan 2021
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英国のシンクタンクである「政策研究センター(CPS)」は1月21日に新たな報告書「Bridging the Gap :The case for new nuclear investment 」を発表し、「新規の原子力発電所建設で投資を行わなければ、英国政府が法的拘束力のある目標として掲げた『2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成』することは難しくなり、英国のエネルギー供給保証もリスクにさらされる」との結論を明らかにした。CPSは保守党のM.サッチャー元首相らが1970年代に創設した中道右派系シンクタンクで、独自に新世代の政策を打ち立てることを使命としている。今回の報告書で明確になった事項として、CPSは以下の点を指摘した。すなわち、①英国経済は着実に電化の拡大方向に向かっており、2050年までに電力需要は倍増すると予想される、②現在8サイトで稼働している原子炉15基のうち、7サイトの14基までが高経年化のため2030年までに閉鎖され、英国は莫大な量の無炭素電力を失うことになる、③電力需要の増加、特に風力や太陽光発電が稼働出来ない日に備えて、英国政府は早急に原子力発電所の設備容量を確保しなければならない――である。これらへの対処で原子力発電に投資をしなかった場合、化石燃料発電への依存度が上がってしまう。このため、英国政府はCO2排出量の実質ゼロ化を達成するのか、あるいは灯りを灯し続けるため化石燃料で発電する、のどちらかの選択を迫られることになる。CPSの今回の報告書によると、CO2排出量の実質ゼロ化と倍加した電力需要への対処を両立させるには、英国政府が原子力発電への支援を継続しなければならない。建設中のヒンクリーポイントC原子力発電所に加えて、少なくとも1つ原子力発電所を建設できれば、7サイトの発電所が閉鎖された後も英国のエネルギー供給保証は強力に後押しされる。この発電所はまた、国内で急成長している再生可能エネルギーを補うことになり、これらに特有の出力変動に対処することも可能である。新規の原子力発電所の建設を支援する方法として、CPSは「規制資産ベース(RAB)モデル」のような革新的な財政支援策を詳しく調査するよう勧告した。RABモデルを適用すれば、デベロッパーは発電所が完成する前に一定の金額を電力消費者に負わせることが出来る。このことは借入金の削減につながり、最終的に各世帯や企業が支払うエネルギー価格も安く抑えられる。CPSはまた、原子力発電への投資は原子力産業界で技術や知見の開発ルートを維持することにもなると指摘。これにより英国は、小型モジュール炉(SMR)や核融合炉など、次世代原子力技術の開発で世界の先頭に立つことも可能である。同報告書でCPSはさらに、既存の脱炭素化政策を合理化することも提案している。炭素の価格設定を今よりシンプルかつ標準化することで発電技術間の条件は平等になり、再生可能エネルギーなど環境保全技術の市場を活性化する。結果的に、英国は最も効率的かつコスト面の効果も高い方法で、CO2排出量の実質ゼロ化を達成することができると強調している。(参照資料:CPSの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
27 Jan 2021
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米原子力規制委員会(NRC)は1月23日、J.バイデン大統領が同委員会のクリストファー・T.ハンソン委員(民主党支持派)を委員長に指名したと発表した。前委員長のK.スビニッキ氏(共和党支持派)が今月20日付けで退任したことにともなうもので、NRC委員としての宣誓を昨年6月に済ませているハンソン氏は、直ちに委員長職に就任している。ハンソン委員長はNRC入りする前、エネルギー省(DOE)の原子力局で上級アドバイザーを務めたほか、主席財務官室(OCFO)では原子力・環境清浄化プログラムを監督するなど、原子力や原子燃料サイクル、放射性廃棄物の問題に取り組んだ。また、議会上院の歳出委員会では、専門家スタッフとして民生用原子力プログラムや国家安全保障関係の原子力プログラムを監督。さらに、コンサルティング企業のブーズ・アレン・ハミルトン社ではコンサルタントとして勤務した実績があり、政府と産業界両方の原子力部門で20年以上の経験を有している。委員長就任に際しハンソン氏は、「規制責任の遂行にあたり、今後も国民の安全と健康を適切に保護していく」とコメント。「原子力技術が進化し続け、放射性物質の利用も拡大するなか、前委員長の業績に基づいて新たな課題に取り組むだけでなく、新たなチャンスにも向き合いたい」との抱負を述べた。新委員長の就任について、米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長は同日、祝意を表明した。その中で、「米国議会とバイデン政権はともに地球温暖化防止政策を優先事項としており、NRCが果たす大切な役割をNRC自身が認識することは非常に重要だ」と指摘した。その上で、「バイデン政権が掲げる意欲的な温暖化防止目標を達成するには原子力が不可欠であり、当協会は解決策の一翼を担えることに誇りを感じている」と表明。「このような点を考慮しつつ、NRCが引き続き近代的な規制当局に変貌していくことは、米国が低炭素経済に移行する上で最も重要である」と述べた。同理事長はまた、「世界でも最高位の規制当局と評されるNRCは、今後も継続して原子力産業界の技術革新を牽引すべきだ」と進言。今後10年以上の間に次世代原子炉が建設されるようになれば、無炭素エネルギー関係で高い技術力を必要とする雇用が創出され、地球温暖化を阻止しつつ国家経済をも後押しする。また、規制アプローチの近代化を図ることで将来の原子炉設計は先進的なものになり、CO2を排出しない原子力発電を持続させることになると説明。「こうしたことこそ新政権と議会が目指している米国の将来のエネルギー需要を満たす上で重要な役割を果たすに違いない」と同理事長は強調している。(参照資料:NRCとNEIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Jan 2021
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ブルガリア政府は1月20日の閣議後、国内唯一の原子力発電設備であるコズロドイ原子力発電所(100万kWのロシア型PWRの5、6号機のみ稼働中)で、ロシア製の機器を使って7号機を建設する可能性を改めて検討すると発表した。新規の原子炉建設で必要とされるアクションなど、7号機の建設可能性についてエネルギー相が前日に取りまとめた調査報告書を今回、承認したもの。政府はプロジェクトが首尾良く進展すれば、10年以内に同炉で発電を開始できるとの見通しを明らかにした。また、これを実行することにより、欧州連合(EU)が目標に掲げている「2050年までに気候中立(CO2の排出と吸収がプラスマイナスゼロ)を達成」、を前進させる一助にもなるとしている。ブルガリアは2007年にEUに加盟する際、西欧式の格納容器を持たないコズロドイ発電所1~4号機(各44万kWのロシア型PWR)をすべて閉鎖しており、現在は5、6号機だけで総発電電力量の約35%を賄っている。同発電所以外では、ロシアとの協力により1980年代にベレネ原子力発電所(100万kWのロシア型PWR×2基)の建設計画に着手したが、コストがかかりすぎるため2012年に中止が決定。その代わりに、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000設計を採用したコズロドイ7号機の建設案を一時期検討した。しかし、資金不足のため計画は進展せず、WH社は2015年4月、「この件に関する株主の合意は期限切れになったが、ブルガリアとの協議は今後も継続する」と発表していた。一方、ベレネ発電所建設計画についてはその後、倉庫に保管している1号機用の長納期品や2号機の一部機器を最大限に活用して、完成させる案が浮上。ブルガリア電力公社は2019年3月に戦略的投資家を募集しており、同年12月には候補企業を5社に絞り込んだことを明らかにした。エネルギー省のT.ペトコワ大臣は今回、報告書の概要をB.ボリソフ首相に説明する際、ブルガリア内閣が2020年10月、コズロドイ7号機の建設に向けて最新技術を有する米国企業と交渉を開始するよう同発電所に命じた事実に言及した。ペトコワ大臣はこれを受けて、同発電所や国外の専門家で構成される作業グループの設置を指示。7号機の建設サイトにおける環境影響声明書では、規制当局がWH社のAP1000とロシア企業のVVER設計2種類を承認していたため、同作業グループは報告書の取りまとめ作業の中でWH社の幹部とも協議し書簡を交換したが、最終的に「コズロドイ7号機の建設では、ベレネ発電所用に調達した機器を利用するのが経済的であり、環境面や技術面でも適している」と指摘した。報告を受けたボリソフ首相は、「プロジェクトの推進で重要かつ迅速な手順を盛り込んだ素晴らしい戦略だ」と評価しており、このインフラ・プロジェクトは国家安全保障やエネルギーの供給保証、およびエネルギー源の多様化という点で非常に重要だと説明。その上で「7号機の建設では、国家予算や税金を投じて製造したベレネ計画の機器を活用する」としたほか、「7号機の後には8号機も建設する」との抱負を述べた。報告書が政府に承認されたことから、ペトコワ大臣は今後、規制当局がコズロドイ7号機の建設用に認めたサイトや、ベレネ計画用に調達した機器を7号機で合理的かつ最大限に活用するために必要な措置を取る。同相はまた、原子炉の新設に向けた資金調達モデルの構築準備を進めるほか、小型モジュール炉(SMR)など新しい技術を採用した原子力発電所を建設する可能性についても調査を継続するとしている。(参照資料:ブルガリア政府(ブルガリア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Jan 2021
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