中国核工業集団公司(CNNC)は9月4日、福建省の福清原子力発電所で中国の独自ブランドのPWR設計「華龍一号」を採用した5号機(115万kWのPWR)に燃料を装荷する作業を開始したと発表した。同炉では今年3月初頭に温態機能試験が完了、今月4日の午後に生態環境部(省)から同炉の運転認可が発給されたのを受けて、CNNC傘下のプロジェクト企業は午後3時半に燃料集合体177体のうち最初の一体を炉心に装荷した。同炉は「華龍一号」設計としては世界で初めて2015年5月に本格着工しており、同年12月に着工した同6号機(115万kWのPWR)とともに「華龍一号の実証炉プロジェクト」に位置付けられている。燃料の初装荷を開始したことで建設工事は主要システムの起動段階に移行、今年末までには送電を開始すると見られている。「華龍一号」はCNNCと中国広核集団有限公司(CGN)双方の第3世代PWR設計である「ACP1000」と「ACPR1000+」を一本化して開発され、主要技術と機器の知的財産権は中国が保有。実証炉プロジェクトについては、CGN側もCNNCに続いてCGNバージョンの「華龍一号」設計の建設工事を開始しており、2015年12月と翌2016年12月に広西省の坊城港原子力発電所で3、4号機(各118万kWのPWR)を本格着工した。このほかCNNCは、福建省の漳州原子力発電所1、2号機(各121.2万kWのPWR)として同設計の採用を決定、2019年10月に国内5基目の「華龍一号」として同1号機の建設工事を開始している。輸出用主力設計としての海外への売り込みも積極的で、CNNCとCGNは2015年12月、「華龍一号」の国際展開を促進するため、登記資本金5億元(約78億円)の合弁事業体「華龍国際核電技術有限公司」の設立を決めた。英国では同設計をブラッドウェルB原子力発電所に採用するため、原子力規制庁(ONR)が2017年1月から同設計の英国版「UK HPR1000」について包括的設計審査(GDA)を開始。同審査は今年2月に最終段階の第4ステップに進展しており、2021年後半にも7設計容認確認書(DAC)が発給される見通しである。また、パキスタンではすでに、海外における同設計の採用初号機としてカラチ2号機(K2)と3号機(K3)(各110万kWのPWR)が2015年8月と2016年5月にそれぞれ本格着工した。K2についてCNNCは今月8日、「温態機能試験が4日付で完了し、燃料の初装荷に向けて盤石な基礎が築かれた」と発表。K3に関しても二重の格納容器の外壁で、ドーム屋根の吊り上げと設置が8月31日に完了したことを明らかにしている。(参照資料:CNNCの発表資料(中国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Sep 2020
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米国のドミニオン・エナジー社は9月4日、バージニア州で所有・運転するノースアナ原子力発電所1、2号機(99.8万kWと99.4万kWのPWR)について、運転期間を追加で20年延長する2回目の申請書を米原子力規制委員会(NRC)に提出したと発表した。1978年と1980年に送電開始した両炉は、2003年に当初の運転期間である40年間にプラス20年間の運転期間延長が認められ、現行の運転認可はそれぞれ2038年と2040年まで有効。2回目の申請が認められれば、両炉は2058年と2060年までそれぞれ80年間、バージニア州内の顧客47万3,000世帯に安全かつ信頼性の高い適正価格の電力を供給し続けることになる。同社はすでに2018年10月、同じバージニア州内のサリー原子力発電所1、2号機(各87.5万kWのPWR)について、2回目の運転期間延長を申請した。これらをそれぞれ2052年と2053年まで運転継続するための審査では、NRCが今年3月に安全性評価報告書(SER)の最終版、4月には環境影響声明書(EIS)の最終版を発行しており、まもなく最終的な判断が下されると見られている。NRCはこれまでに、フロリダ・パワー&ライト(FPL)社のターキーポイント3、4号機(各76万kWのPWR)、およびエクセロン社のピーチボトム2、3号機(各118.2万kWのBWR)に対して、2回目の運転期間延長を承認済み。ドミニオン社の保有する発電所の審査が順調に進めば、米国内で送電開始後80年間の稼働が許される商業炉としてはサリー1、2号機が3件目、ノースアナ1、2号機が4件目ということになる。ドミニオン社によると、ノースアナとサリーの両発電所はバージニア州内で合わせて250万の顧客に対して同社による発電電力の31%を供給、州内で発電される無炭素電力に至っては95%をカバーしている。これら発電所で運転期間を延長すれば、2045年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すという同州のクリーン経済法の要件を満たす上で非常に重要であり、ドミニオン社が設定した「2050年までに発電電力のCO2実質ゼロ化」という目標の達成にも寄与する。また、バージニア州の継続的な経済成長を促しつつ、中部大西洋沿岸州や南部州の中でクリーンエネルギー生産のリーダー的立場を維持することになる。さらには両発電所における高賃金の雇用900人分以上を確保し、追加の経済的利益や税制優遇策も生み出すことになると指摘している。(参照資料:ドミニオン・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
07 Sep 2020
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韓国ですべての原子力発電所を保有・運転する韓国水力・原子力会社(KHNP)は9月3日、稼働中だった新古里1、2号機(各100万kWのPWR)と古里3、4号機(各103.3万kWのPWR)が、釜山に上陸した大型台風9号(Maysak)の影響を受けて自動停止したことを明らかにした。外部電源を喪失した新古里1、2号機も含め、いずれについても非常用ディーゼル発電機が起動、発電所内外に放射能が漏れることもなく安定した状態にあるとしている。同社のウェブサイトによると、最初に自動停止したのは新古里1号機(3日午前0時59分)で、その約1時間後の1時12分に同様に2号機も停止。これは通常運転中、台風により外部電源が喪失したことによるもので、直ちにディーゼル発電機が自動起動した。また、古里3、4号機も出力100%で稼働中だったが、台風のため比率差動継電器が作動しなくなり、それぞれ3日の2時53分と3時1分に発電を停止した。4日の午前0時29分には、双方の非常用ディーゼル発電機(AとB)が自動で起動している。KHNP社は現在、原因を分析するとともに再発防止策を検討中である。(参照資料:KHNP社の発表資料(韓国語)①、②、③、④、原産新聞・海外ニュース)
07 Sep 2020
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米国のビル・ゲイツ氏が後援する原子力開発ベンチャー企業のテラパワー社は8月27日、ナトリウムを活用した商業用の発電・エネルギー貯蔵システムをGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と共同で開発すると発表した。同システムの実質的な利用開始は2020年代後半を予定しており、実用化される最初の先進的原子力技術の一つになる予定。同システムの基本設計概念は、GEH社が開発した小型モジュール式高速炉「PRISM」などの先進的ナトリウム冷却高速炉技術と、溶融塩化物高速炉(MCFR)を開発しているテラパワー社の溶融塩エネルギー貯蔵システムを組み合わせたもの。従来の原子炉規模を簡素することで電気出力34.5万kWとし、コストを抑えるために原子炉建屋の外部に非原子力システムの機械設備や電気機器を設置する。これに加えて、設備の大半を原子力グレードの規格ではなく一般的な工業規格を採用するほか使用する機器の数を削減、原子力グレードのコンクリート使用量も大型炉との比較で8割削減する。同システムはまた、50万kWの出力で5.5時間以上、熱エネルギーの貯蔵が可能になる予定で、これにより日々の電力需要量の変化にも追従。必要な時に十分な量のクリーン・エネルギーが使用できるようになるなど、同システムの低コストで柔軟性の高い発電とエネルギー貯蔵は、地球温暖化の防止目標達成にも寄与するとしている。両社はこれ以外にも今年1月、米エネルギー省(DOE)が進める多目的試験炉(VTR)の設計と建設に向けた官民パートナーシップを促進するため、連携協力することで合意している。今回、テラパワー社は「原子力技術革新を進める企業として、原子力発電の価格を可能な限り圧縮することを目指したGEH社との協力を大きなチャンスととらえている」と述べた。GEH社も「両社の経験を統合すれば、ナトリウムを使った発電・エネルギー貯蔵システムの設計・建設に向けて比類のない能力がもたらされる」と指摘。両社が保有する専門的知見と資源量の深さは、複数の原子炉の設計等でそれぞれが費やしてきた年月を反映しているとした。またこれにともない、すでにデューク・エナジー社やエナジー・ノースウエスト社など、複数の電気事業者が同システムの商業化支援で関心表明している事実に言及した。(参照資料:テラパワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Sep 2020
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は9月1日、サンクトペテルブルク西方のレニングラード原子力発電所で建設しているⅡ期工事2号機(119.9万kWのPWR)が、起動プロセスの最終段階となる最小制御可能出力(MCP)レベルに初めて到達したと発表した。MCPレベルとは、原子炉が臨界条件を達成する段階において、核分裂連鎖反応を安定した状態で維持するのに必要な1%未満の出力のこと。同炉の起動プロセスは最初の燃料を装荷した今年7月19日から段階的に進められており、MCPレベルではシステムの安全性など様々な要件が遵守できているか、50項目以上の試験を通じて炉心の物理的パラメーターを確認する。その後は連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)から起動許可を取得して、同炉で出力を徐々に上げていく試運転と包括的な試験を実施、すべての運転パラメーターについて最終確認を行う計画である。2021年に営業運転が開始されれば、同炉はロシア国内で稼働する大型商業炉としては34基目になる。レニングラード原子力発電所では、チェルノブイリ原子力発電所と同型の軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK)設計を採用した2~4号機(各100万kW)がⅠ期工事分として稼働中で、2018年末に同じ設計の1号機が永久閉鎖されている。これらは、Ⅱ期工事で建設された1号機(2018年10月から営業運転中)と今回MCPレベルに達した2号機、および計画中の3、4号機で代替していくことになっており、いずれも第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER)「AES-2006」が採用されている。「AES-2006」の初号機としてはすでに、ノボボロネジ原子力発電所のⅡ期工事1号機が2016年8月に営業運転入りしたほか、同型の2号機も2018年3月から営業運転中。また、近隣のリトアニアとポーランドに挟まれた飛び地のカリーニングラードでも、同設計を採用したバルチック原子力発電所1号機の建設が2012年2月に始まった。しかし、これに続いて同年6月に着工した同型設計の2号機は、近隣諸国への売電が見込めなくなったことから建設工事が停止されている。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Sep 2020
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米国の原子力規制委員会(NRC)は8月28日、ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)設計についての設計認証(DC)審査の最終(第6)段階を終え、安全評価報告書の最終版(FSER)を発行したと発表した。同設計はSMRとしては唯一、NRCのDC審査を受けていたもので、DCが発給されればNRCの安全・規制要件をすべて満たした米国標準設計の1つとなり、エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内における初号機の建設・運転計画が具体的に動き出すことになる。大手のエンジニアリング企業フルアー社の出資協力を受け、ニュースケール社が開発したSMRは出力5万kWのモジュール統合型PWR。このモジュールを12基連結すれば、出力を最大60万kWまで増強できる。同社によればまた、このSMRは固有の安全性を備えているため、異常な状況下でも原子炉が自動停止し、人の介入や追加の注水および外部からの電力供給なしで冷却することが可能である。ニュースケール社は2016年12月末日に同設計のDC審査をNRCに申請し、NRCは翌2017年3月にこの申請を受理した後、今回42か月間にわたった同設計の技術審査を完了した。NRCのスタッフは、「運転システム内の対流や重力を活用したこの設計では受動的安全機能により、緊急の状況下においても原子炉を安全に停止させ、そのままの状態で維持することが可能」と確認。今後は同設計の認証に向けてFSERをNRC委員に提出し、設計規則の制定準備を進めることになる。同SMRの初号機建設計画はユタ州市町村公社(UAMPS)が進めているもので、DOEは2016年2月にINLの敷地を建設用地として使用することを許可した。現地の報道によると、UAMPSは2029年6月にも同サイトで最初のモジュールの稼働を開始すると表明。運転については、西海岸ワシントン州の電力企業エナジー・ノースウエスト社が担当することになっている。実際の建設に際しては、通常の商業炉と同じく建設・運転一括認可(COL)の取得が必要で、同設計がNRCから全面的に認証された場合、UAMPSその他の電気事業者はCOL申請書にニュースケール社製SMRを明記。NRCのDC認証は発給日から15年間有効であり、追加で10年~15年間更新することが可能である。なお、ニュースケール社は2022年にも、同設計の出力を増強した6万kWモジュール版で改めて標準設計承認を申請する方針だ。NRCが5万kWモジュール版のDC審査を進めている最中の2018年6月、ニュースケール社は「固有の安全性に影響を及ぼすことなく、経済面と性能面の合理化に成功した」と発表。6万kW版のモジュールを12基連結することで、合計出力は72万kWまで拡大が可能になるとしていた。同社製SMRについては、すでにヨルダンやルーマニア、チェコが国内で建設することに関心を表明。ニュースケール社は実行可能性調査等の実施に向けて、それぞれの国の担当組織と了解覚書を交わしている。(参照資料:NRC、ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Sep 2020
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フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は8月28日、オルキルオト原子力発電所3号機(欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)の運転開始スケジュールがさらに遅れ、2021年3月から2022年2月にずれ込む見通しだと発表した。2005年から建設中の同機(OL3)では、これまで何度となくスケジュールが延期されている。TVOは今年4月に、OL3に燃料を装荷する認可申請書をフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)に提出した後、6月に燃料の初装荷実施を予定していた。しかし、建設工事を請け負っている仏アレバ社と独シーメンス社の企業連合が伝えてきた基本スケジュールの改定版によると、OL3への燃料装荷が2021年3月よりも前に行われることはなくなり、これにともない送電網への接続は同年10月に遅延、営業運転の開始日程も現行スケジュールからさらに11か月遅れることになった。この段階に来て運転開始スケジュールがさらに延期された理由について、TVOは①システム試験の進行速度が遅く、②これまでに実施した試験で技術的課題が浮上したこと、また③プロジェクトの遅れによりメンテナンス作業量が増加、④不足していたスペア・パーツの調達に時間を要したことなどを挙げた。これらのうち、技術的課題はすでに解決しており、すでに実施中の補修作業が今秋中に完了する予定。これらの具体的な内容は、加圧器安全弁のヒビ、非常用ディーゼル発電機の欠陥部品、加圧器サージラインの振動、自動機器キャビネットで探知されたケーブル絶縁体の不備などである。TVOの発表によれば、昨今は新型コロナウイルスによる感染が世界的に拡大しているが、OL3の建設現場では特別な措置を取った上で作業を続行。燃料の装荷については準備が整いつつあるほか、残っているシステム試験やメンテナンス作業、補修作業に関しても、燃料の装荷前に完了する予定だとした。また現在、原子力の専門家約1,500人がプロジェクトの仕上げに当たっており、開始当初に約3,000項目あった起動試験も、今や数10を残すのみ。OL3は送電を開始した後、定常的な運転に入るまでに様々な出力で10億~30億kWhを発電する計画である。なお、TVOが2018年3月にアレバ社の企業連合と締結した和解契約に従い、アレバ社の新しい経営幹部は現在、OL3完成までの保証期間を全面的にカバーするための資金を確保中。同企業連合に参加するアレバ社の系列企業2社とシーメンス社は、同保証期間が満了するまで契約上の法的義務を共有しており、この建設プロジェクトのためにアレバ社が設置した資金調達メカニズムを通じて、完成までにかかる経費を負担することになっている。(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 Aug 2020
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米国の原子力発電事業者としては最大手のエクセロン・ジェネレーション社は8月26日、イリノイ州で稼働するバイロン(120万kW級PWR×2基)とドレスデン(91.2万kWのBWR×2基)の両原子力発電所を2021年の秋に早期閉鎖する方針を明らかにした。信頼性の高い両発電所の運転により、同社はイリノイ州の北部約400万の世帯や事業所にCO2を排出しないクリーンな電力を供給してきたが、バイロン発電所は2021年9月、ドレスデン発電所については同年11月に永久閉鎖する計画である。米国の電力市場が自由化された地域では、独立系統運用者(ISO)や地域送電機関(RTO)が運営する容量市場で卸電力の取引が行われている。バイロン発電所では現行の運転認可が満了するまで残り約20年、ドレスデン発電所でも10年ほど残っているが、どちらも近年はエネルギー価格の低迷や、北東部の代表的なRTOである「PJMインターコネクション(PJM)」の容量オークションで化石燃料発電に競り勝つことができず、数億ドル規模の歳入不足に陥っている。また同社によると、連邦エネルギー規制委員会(FERC)が最近指示したオークション関係の価格規則はクリーン・エネルギーに対する同州の財政支援策を台無しにし、容量オークションでも化石燃料発電を優遇しているため、両発電所の財政問題はさらに悪化している。イリノイ州では2016年12月、州内の原子力発電所に対する財政支援策を盛り込んだ包括的エネルギー法案が成立しており、エクセロン社は早期閉鎖を予定していたクリントン(107.7万kWのBWR)とクアド・シティーズ(91.2万kWのBWR×2基)の両原子力発電所で今後少なくとも10年間、運転継続させることを決定した。しかし、近年はFERCの価格規則等により、今回の2つの原子力発電所のみならず同社が保有するラサール(117万kWのBWR×2基)原子力発電所とブレードウッド(120万kW級PWR×2基)原子力発電所についても、早期閉鎖のリスクは高いと同社は主張している。同社のC.クレイン社長兼CEOは「エクセロン社全体でほかの雇用を維持するために、不経済なプラントを閉鎖しなければならないことを頭ではわかっているが、お粗末なエネルギー政策によって発電所の優秀な従業員が職を失うことになるのは胸が痛む」と述べた。しかし、エクセロン社は両発電所の早期閉鎖を回避できるよう、今後も州政府の政策立案者と協議を続ける考えであり、すでに会計帳簿も開示したことを明らかにしている。バイロンとドレスデン両発電所の閉鎖により、イリノイ州は温室効果ガスの排出量削減目標の達成に向けた進展が鈍化するなど妨げられるが、エクセロン社としては正式決定後にPJMに事前連絡を行う方針である。需要のピーク時においても、両発電所の閉鎖がイリノイ州北部で発電容量不足を生じさせないことをPJMが確認できるよう、分析する猶予を与えなければならない。同社はまた、原子力規制委員会(NRC)に対して30日以内に正式な閉鎖連絡を行うほか、両発電所を長期運転する際に必要とされていた設備投資プロジェクトを終結させる。さらに、今年の秋に両発電所で予定されていた燃料交換のための停止日程を縮減するとしている。(参照資料:エクセロン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Aug 2020
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は8月26日、トムスク州セベルスクにあるシベリア化学コンビナート(SCC)で、100万kW級のロシア型PWR「VVER-1000」に装荷するレミックス(REMIX)燃料集合体の製造ラインを2023年に完成させる計画を明らかにした。レミックス燃料(=写真)は、使用済燃料からウランとプルトニウムの混合物を分離せずに回収し、最大17%の濃縮ウランを加えて製造する軽水炉用の原子燃料。ロスアトム社によると、同燃料は高速炉用のウラン・プルトニウムの混合窒化物(MNUP)燃料や混合酸化物(MOX)燃料と異なり、プルトニウムの含有量が最大で1.5%と小さい。一方、中性子スペクトルが一般的な軽水炉燃料とあまり変わらず、燃料集合体の炉内挙動が似ていることから、軽水炉への導入にあたって設計変更や追加の安全対策が不要である。このため同燃料は、軽水炉でのプルトニウム・リサイクルにより、使用済燃料の貯蔵量削減やウラン燃料の節約に寄与すると期待されている。ロスアトム社はこれを、ロシア国内で稼働する主力設計炉「VVER-1000」の全炉心に装荷することを検討している。今回、同社の投資委員会がSCCで試験用燃料製造の現場を近代化するプロジェクトを承認したことから、レミックス燃料棒が組み込まれた「TVS-2M」モデルの燃料バンドルとVVER-1000用燃料棒を組み合わせる新しい燃料集合体製造ラインの設置が可能になったもの。同ラインが設置されるSCCはロスアトム社の燃料製造部門であるTVEL社の子会社で、プルトニウム取扱専門技術をもつ中心的機関。MNUP燃料の試験集合体をベロヤルスク原子力発電所の3号機(60万kW級FBRの「BN-600」)用に製造しているが、レミックス燃料の製造ではクラスノヤルスク州ゼレズノゴルスクにある鉱山化学コンビナート(MCC)が燃料ペレットの生産等で協力する。ロスアトム社は2016年以降、6本のレミックス燃料棒を含む「TVS-2M」燃料集合体を3体、バラコボ原子力発電所3号機に装荷して、パイロット運転プログラムを実行中。今年は同炉で3回目の18か月サイクル運転が始まっているが、少量の試験用レミックス燃料棒による2サイクルの運転が成功裏に完了したことから、同社は次のステップとして、レミックス燃料集合体を原子炉にフル装荷することを検討している。こうしたことからSCCの燃料集合体製造ラインは、パイロット運転プログラムの燃料バンドル(束)に必要な量の製造規模になる模様。今のところ同燃料技術は試験の第一段階にあるが、ロスアトム社はパイロット運転の結果次第では、将来的にレミックス燃料を連続生産する産業規模の施設建設も可能になるとしている。(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
27 Aug 2020
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英国のロンドンに本拠地を置く世界原子力協会(WNA)は8月25日、世界の原子力発電所における昨年1年間の実績をまとめた「世界の原子力実績報告(World Nuclear Performance Report)2020」を公表した。2019年末に世界中で稼働する原子炉442基(3億9,200万kW)の総発電量は、ピークとなった2006年(2兆6,610億kWh)に次いで大きな値の2兆6,570億kWhだったことを明らかにしている。この発電量は世界の総電力需要の10%以上を賄うのに十分な量であるものの、WNAは新規の雇用を生み出すとともに経済を発展させ、将来的にクリーンエネルギー社会を実現するには、「新たに100基以上の原子炉建設計画を始動させるために、直ちに行動を起こす必要がある」と提言している。WNAのA.リーシング事務局長は、「世界では原子力発電所の運転実績が近年、堅調に推移しており、2019年実績により発電量は7年連続で増加したことになる」と説明。これらの発電所は、新型コロナウイルス感染症への対応を要する2020年も引き続き優れたレジリエンス(一時的な機能不全等から復帰する力)や柔軟性を発揮しており、需要量の変化に対応しつつ安定的に信頼性の高い電力供給を続けていると述べた。WNAによると、発電量の増加が著しい地域はアジアで、2019年は前年実績から17%増加している。中国の原子力発電量は2013年に1,050億kWhだったのが2019年は3倍以上の3,300億kWhに増えており、今やアジア地域における原子力発電量の半分以上が中国によるものだとした。しかし、運転実績が継続的に改善されても、新規原子炉の運転開始ペースは原子力産業界が目指す「ハーモニー・ゴール(2050年までに世界の電力需要の25%を原子力で担う)」の達成には不十分で、今後は一層拍車をかける必要がある。2016年から2020年までの新規送電開始容量の目標値として、WNAは年平均1,000万kWを掲げているが、2019年に世界で送電を開始した原子炉は6基(520万kW)に過ぎない。このほか、WNAは2019年の世界の原子力発電実績として以下の事項が判明したとしている。・新たに送電開始した6基のうち4基が大型PWRで、内訳は韓国とロシアの各1基に加えて中国の2基である。残りの2基は世界初の海上浮揚式原子力発電所で、ロシア北東部のペベクで起動した。・原子力発電量は北米と西・中欧地域でわずかに減少した一方、アフリカ、アジア、南米、東欧およびロシアでは増加した。・世界の原子炉の平均設備利用率は、前年実績の79.8%から82.5%に上昇した。・世界の原子炉の3分の2以上が80%以上の設備利用率を記録しており、1970年代以降大幅に改善されている。・2019年に世界で5基の原子炉が50年間の継続運転を達成した。・高経年化により設備利用率の下がった原子炉は皆無で、むしろ40~50年稼働している原子炉の方が平均設備利用率は上がっている。・2019年に世界で合計13基の原子炉が永久閉鎖されたが、このうち日本で閉鎖された4基は2011年以降稼働していなかった。また、韓国とドイツおよび台湾で各1基が脱原子力政策により閉鎖されている。・2019年に世界で5基の原子炉が着工しており、内訳は中国で2基、イランとロシアおよび英国で各1基である。・2019年に起動した原子炉の工事期間は中央値が117か月で、2001年以降の平均値より高くなっているが、理由の1つはこれらの多くが設計初号機だった、あるいは初号機の直後に着工した原子炉だからである。・新設計を採用したからといって必ず工事期間が長くなるわけではなく、「ACPR-1000」設計採用炉としては2基目となる中国の陽江6号機は、完成までの期間が66か月だった。(参照資料:WNAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
26 Aug 2020
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米国のホルテック・インターナショナル社は8月20日、子会社のSMR社が開発している小型モジュール炉(SMR)設計「SMR-160」(電気出力16万kW)が、カナダ原子力安全委員会(CNSC)による「予備的設計評価(ベンダー設計審査:VDR)」の第1段階を成功裏に通過したと発表した。2018年7月に開始されたVDRでSMR社は19の技術レビューの重点項目に集中的に取り組んでおり、CNSCに提出した文書は数百点にのぼる。第2段階でフォローアップの必要な分野がいくつか特定されたことから、SMR社は近々、こうしたフィードバックを踏まえて同審査の第2段階に進む予定。同設計は、事故時に運転員が現場を離れても安全性が保たれる特性(walk-away safe)を備えており、カナダ国内で同設計の許認可手続きを確実に進めるため同社はVDRを継続する考えである。VDRは建設・運転許可の取得に向けた正式な申請手続きに先立ち、当該設計がカナダの規制要件を満たしているか、CNSCがメーカー側の要請に基づいて実施する全3段階の評価審査。法的に有効な設計認証や関係認可は得られないものの、VDRによってカナダの規制要件に関する初期フィードバックが得られるほか、技術面の潜在的な課題を設計の早い段階で特定し解決策を探ることができる。CNSCは今回、VDR第1段階の審査の結論として、「SMR社は全体的にみて規制要件におけるCNSCの意図を正しく理解している」と表明。一方、今後フォローアップすべき部分として、SMR社が使用した米国のコードや基準について、詳細な選択理由の提示を求めているほか、これらの基準をどのようにカナダの要件に適合させるかについても説明を要請している。またCNSCによると、SMR社は評価の際に確率論的安全分析(PSA)を実施する必要性を認識していながら、いくつかの点についてはPSAや外部ハザードに対するリスク評価の準備を期日までにしていなかった。これらは外部事象や内部火災、洪水、複数事象の発生などの影響を評価する際に活用されるため、ベンダーによるCNSC要件の理解度を測る上で必要なものである。米国ではすでに、オレゴン州のニュースケール・パワー社が開発したSMRについて、原子力規制委員会(NRC)が米国内での建設・運転に必要な設計認証(DC)審査をSMR設計としては初めて2017年3月に開始している。ホルテック社傘下のSMR社は同様に「SMR-160」を米国内で建設・運転するため、DC審査の申請準備を進めているが、カナダでの建設については、「2020年代後半に初号機の運転が可能になる」と説明している。同設計についてはまた、ウクライナ原子力発電公社のエネルゴアトム社が同国内で6基建設することと、一部機器の国内製造を検討中。ホルテック社とエネルゴアトム社およびウクライナの国立原子力放射線安全科学技術センター(SSTC)は2019年6月、この目的を実行に移すため、国際企業連合を結成している。(参照資料:ホルテック・インターナショナル社、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Aug 2020
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カナダで原子力発電所を運転するブルース・パワー社と大手ウラン生産業者のカメコ社は8月20日、「次世代原子力技術センター」の創設を中心とする複数の共同イニシアチブを起ち上げると発表した。両社のこれまでの連携関係を活用して、新型コロナウイルス感染後のカナダ経済の再生を支援するとともに、CO2を排出しない原子力発電で地球環境を保全。世界中に蔓延したコロナウイルス感染症のような疾病との戦いにおいても、原子力サプライチェーンを使ってコミュニティの必需品を確保するなどの協力を強化する。両社は原子力技術革新によって小型モジュール炉(SMR)のような新技術を開発する基盤を築き、ガン治療に役立つ放射性同位体(RI)や水素経済への移行に向けた水素の生産技術の進展を後押しできると確信。すなわち、原子力インフラへの投資を通じて現行経済を刺激し、将来的には世界に力を与えることも可能だと考えている。原子力発電所の運転企業および燃料サプライヤーとして蓄えてきた専門的知見を一層深め、ブルース・パワー社が電力供給するオンタリオ州やカメコ社が本拠地を置くサスカチュワン州のみならず、カナダ全体の将来的な経済や輸出を支援していく考えである。両社はそれぞれ、オンタリオ州とサスカチュワン州の産業リーダー的存在であり、間接雇用も含めた従業員の総数は約2万7,000人。カナダ経済への投資額は年間90億~120億カナダドル(約7,200億~9,600億円)に達するなど、カナダ全体の原子力産業を代表する企業として、温室効果ガスを排出しない発電やガン治療用RIの生産といった科学技術革新の最前線に留まっている。今回の発表で両社は、これら2つの州政府が経済を立て直すためのチャンスをもたらしたいとしている。また、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に際しても、両社はCO2を排出しない電力をカナダ全土に安全・確実に供給し続けている。今後は、カナダ最大のインフラ・プロジェクトの1つと言われるブルース・パワー社のブルース原子力発電所(=写真)運転期間延長プログラムを活用して、国家経済の再構築を手助けしていく方針。州を跨いだ両社間の重要な連携関係を拡大・強化するため、「次世代原子力技術センター」は、両社がBWXT社やオンタリオ州のブルース郡とともに2018年に創設した「原子力技術革新協会(NII)」の付属施設とする計画。NIIは、カナダの原子力産業界で技術革新を促進することを目指した非営利組織である。なお、両社間の今回の協力では、ブルース発電所の運転期間延長プログラムと既存の長期燃料供給契約に加えて、ブルース6号機が機器の交換を終えて再起動する2024年にカメコ社が追加で1,600体の燃料バンドルをブルース・パワー社に供給することになった。これは、2017年に両社が締結した20億カナダドル(約1,600億円)の既存の燃料供給契約に基づいて決定したとしている。(参照資料:ブルース・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Aug 2020
3003
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を担当する首長国原子力会社(ENEC)は8月19日、同連邦初の商業炉となるバラカ原子力発電所1号機(140万kWの韓国製PWR「APR1400」)が初めて送電を開始したと発表した。2012年7月に本格着工した同炉では、今年3月に燃料の初装荷が完了。7月末には初めて臨界に達しており、今回、同発電所が立地するアブダビ首長国の送電送水会社(TRANSCO)と、ENEC傘下の原子力発電所運営管理会社であるNAWAHエナジー社が協力して初併入を成功させた。同炉は現在、TRANSCO が設置した952 kmの400kV架空線でUAE初のクリーンエネルギーを連邦内に配電している。2021年の営業運転開始に向けて出力を徐々に上げるプロセスに入るが、フル出力に到達するまでに国際的な先行模範事例に倣って様々な試験を実施する。これらの試験においては、独立の規制機関である連邦原子力規制庁(FANR)が継続的に同炉を監督することになる。導入初号機が安全かつ成功裏に送電開始したことについて、ENECのM.アル・ハマディCEOは「1日24時間の絶え間ないエネルギー供給により、UAEのさらなる経済成長を促すという当社のミッションが開始され、輝かしい歴史を印すことができた」と表明。「安全性や信頼性で厳しい基準を満たしつつ、ENECが長年進めてきた準備作業の賜物であり、UAEの原子力発電導入プロジェクトにおける新たな時代の幕開けになった」と述べた。今後、残り3基(各140万kWのAPR1400)の原子炉を含め4基すべてが完成すれば、少なくとも60年間、UAEの総電力需要の25%を賄うという目標を満たすことになるとしている。同CEOはまた、UAEがその他のクリーン発電技術の実施計画も進めており、これに加えて原子力導入プロジェクトを実行することで、中東地域および世界全体のエネルギー源をクリーン電力に変革することに言及。UAEを持続可能な発展と電化への道筋に導いていくとの抱負を述べた。ENECによれば、電気は世界中で最も生活の近代化に適したエネルギー源であり、人々の生活や経済など様々な側面で利用が拡大している。バラカ原子力発電所はUAEエネルギー部門の脱炭素化と電化に大きく寄与するだけでなく、持続可能な原子力産業とサプライチェーンをUAE内で構築。付加価値の高い数千人規模の雇用を生み出すなど、UAE経済の多様化にも貢献を深めている。ENECは今年7月、バラカ発電所で2号機の建設工事が完了したと発表しており、NAWAHエナジー社が現在、運転開始の準備を進めている。3、4号機の建設進捗率も、それぞれ93%と86%に達するなど最終段階に入っており、発電所全体が概ね完成(進捗率94%)に近づいたことを強調している。(参照資料:ENECの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Aug 2020
2772
カナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は8月14日、国内で使用済燃料の深地層処分場が2040年代に完成することを念頭に、各発電所の中間貯蔵施設から同処分場まで使用済燃料を輸送する計画の枠組策定で一般からの意見を募集すると発表した。NWMOは今回、同計画枠組の案文を公表しており、これに対するカナダ国民や先住民のコメントを今後数か月にわたって手紙やファックス、eメールで受け付ける。また、関係する協議に国民が加われるよう、NWMOがウェブサイト上に設定した「オンライン調査」への参加も呼びかけている。カナダでは2007年、使用済燃料を直接処分することを定めた国家方針「適応性のある段階的管理(APM: Adaptive Phased Management)」が採択され、実施主体となるNWMOは2010年から処分場建設の「サイト選定プロセス」を開始した。2012年9月末までに国内の22地点が処分場の受け入れに関心を表明し、NWMOは現時点で候補地域をオンタリオ州南部のサウスブルース地域と北西部イグナス地域の2地点まで絞り込んだ。これらのうちどちらかを、処分場建設サイトとして最も好ましい地点として2023年までに確定する方針である。鉄道やトラックを使用する使用済燃料の輸送計画に関しては、NWMOは一般国民の利益や意見を反映させるため、2016年以降に数千人規模の人々と協議。今回公表した枠組計画の案文はこうした作業の結果を盛り込んでいるほか、次の段階の重要ステップともなるため、NWMOは今回のコメント募集とオンライン調査の実施を決めた。NWMOのB.ワッツ副理事長は、「使用済燃料の安全な輸送に向けて、今こそ社会的に受容可能な枠組を策定すべきだ」と表明。NWMOはこれまで数多くの人々の意見に耳を傾けてきたが、輸送計画の枠組を最終決定し追加・変更部分の必要性を判断するには、カナダ国民に案文をレビューしてもらい意見を得ることが重要になる。副理事長は、「2040年代を迎えるまでにどのようにして安全な使用済燃料輸送を確保するか、できるだけ多くの人々に議論に加わってもらいたい」と強調した。カナダにおける使用済燃料の輸送はカナダ原子力安全委員会と連邦政府の運輸省が共同で規制することになる一方、国際的な輸送に際しては国際原子力機関(IAEA)の安全要件を満たさねばならない。NWMOの輸送プログラムでは規制要件の遵守で技術的側面が含まれるのに加え、国民の不安や質問に答えるなど国民が最優先とする事項を理解することが必要。このためNWMOは、使用済燃料の輸送に安全・確実を期すとともに、国際的な良慣行も取り入れたいとしている。(参照資料:NWMOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Aug 2020
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米国のX-エナジー社は8月11日、同社が開発している小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」について、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が提供する予備的設計評価(ベンダー設計審査)を開始したと発表した。このベンダー設計審査では建設・運転許可の取得に向けた正式な申請手続に先立ち、当該設計がカナダの規制要件を満たしているかCNSCがメーカー側の要請に基づいて評価する。法的に有効な設計認証や関係認可が得られるわけではないが、X-エナジー社は今回、カナダのパートナー企業やサプライチェーンとの協力により、同国でXe-100の建設準備を進めるには効率的と判断したもの。同設計の完成度の高さから、3段階で構成される同審査のフェーズ1と2が一まとめに実施される予定だが、審査に際してはカナダ国籍のKinectrics社がX-エナジー社を支援する。Kinectrics社は、カナダ電力部門の専門的知見やエンジニアリング・コンサルティングで100年以上の卓越した実績を誇っている。X-エナジー社はCNSCの先進的な審査を通じて、Xe-100設計がカナダの規制要件に適合していることを実証し、カナダでXe-100の許認可手続きを進める際に根本的な障害が全くないことを確認する方針。また、Xe-100設計のさらなる改善に向けて、貴重な初期フィードバックを得る考えである。同社によれば、リスク情報を活用したカナダの進歩的な規制枠組みと定評のあるサプライチェーンを組み合わせれば、カナダはXe-100初号機を建設する理想的な場所となり、その将来的な輸出に向けた連携関係も構築される。さらに、ベースロード運転や負荷追従運転が可能な同設計を使って、カナダはクリーン・エネルギーの比率を高めるという目標を達成しつつ、遠隔地域のコミュニティに十分な電力と高温の蒸気を提供、海水の脱塩や水素生産などにも活用できるとしている。 Xe-100は電気出力7.5万kWのSMRだが、これを4基連結することで出力は30万kWまで拡大が可能。X-エナジー社は同設計により、世界中で高まっているクリーン・エネルギーの需要に応えられると考えている。同設計はまた、燃料として3重被覆・粒子(TRISO)燃料を用いるため、同社は2025年までに商業規模のTRISO燃料製造加工工場「TRISO-X」を米国内で完成させる方針。この目標の達成に向けて、同社は米国のウラン濃縮企業セントラス・エナジー社や日本の原子燃料工業と協力する契約や覚書を締結している。また、ヨルダンがXe-100を2030年までに国内で4基建設することを希望しているため、同社は2019年11月にヨルダン原子力委員会と基本合意書を交わしている。(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Aug 2020
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フィンランドのフォータム社は8月13日、保有するロビーサ原子力発電所で2回目の運転期間延長を行い2050年頃まで営業運転を継続するか、あるいは現行認可の満了とともに廃止措置を取るかの両方について、周辺環境や住民の健康と安全、および近隣コミュニティの経済に及ぼす影響等の評価(EIA)手続を開始したと発表した。フィンランドは西側諸国の一員である一方、国境を接するロシアとの関係も深く、ロビーサ発電所の2基はそれぞれ出力約53万kWのロシア型PWR(VVER)である。第3世代+(プラス)より前の世代のVVERは公式運転期間が最大30年であるため、1977年2月と1980年11月に運転を開始した1号機(LO1)と2号機(LO2)は、LO1の運転開始後30年目にあたる2007年に国家評議会から20年間の運転期間延長を認められた。両機で現在認可されている運転期間は、それぞれ2027年と2030年の末までとなっている。フォータム社によると、ロビーサ発電所は2019年に設備利用率92.4%をマーク。総発電量もフィンランド全体の10%以上に相当する82億kWhになるなど技術的なトラブルは無く、安全要件も満たしている。同社は過去5年間に合計約4億5,000万ユーロ(約568億円)を同発電所に投資しており、設備の近代化を継続的に行う事により世界でも最高レベルの設備利用率が達成されたと述べた。同社はまた、CO2を排出せず天候にも左右されずに信頼性の高いエネルギーを生み出す原子力は将来的にも必要であると認識。再生可能エネルギーとともに、フィンランドのエネルギー需要を支えつつ地球温暖化の影響緩和に寄与するエネルギー源だと強調している。同発電所の2基は世界で初めて、西側諸国と東側諸国双方の原子力技術を統合して建設されたもので、原子炉やタービン発電機、その他の主要機器など設備の約50%が旧ソ連製。一方、安全系や制御系、自動化システムなどは、西側諸国の安全基準を満たせるよう西側の技術に基づいており、鋼鉄製の格納容器と関連のアイスコンデンサについては、ウェスチングハウス社のライセンスを使って製造されている。フォータム社は今回、同発電所で環境影響評価(EIA)プログラムを実施するための申請書を経済雇用省に提出。2段階構成の同プログラムは完了までに18か月を要する見通しで、調整役を担う経済雇用省は「越境環境影響評価条約(エスポー条約)」に従い同プログラムに関する公開協議を実施する。今月27日から10月26日までの期間、様々な関係当局や企業からオンラインで意見募集するとともに、一般市民やコミュニティのために公聴会を開催。聴取した意見や声明書すべてを取りまとめた上で、経済雇用省としての見解を報告書に明示することになる。(参照資料:フォータム社、経済雇用省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
17 Aug 2020
2675
ベラルーシ初の原子力発電設備となるベラルシアン発電所(VVER-1200、出力120万kWのロシア型PWR×2基)を建設中のロシア国営原子力総合企業ロスアトム社は8月7日、燃料の初装荷作業を1号機で開始したと発表した。前日の6日に連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)が燃料の装荷許可を発給しており、今月末までに合計163体の燃料集合体を装荷する。その後、同炉の出力を最小制御可能出力(MCP)レベル(臨界条件を達成する段階において核分裂連鎖反応を安定した状態に維持するのに十分な出力(1%未満)のこと)まで上げて試験を実施するが、この段階で設計パラメーター通りの信頼性と安全性を確認できれば、同炉の起動プロセスは次の段階に移行、初めて国内送電網に接続されることになる。旧ソ連邦に属していたベラルーシはウクライナと国境を接しており、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故では多大な放射線被害を被った。しかし、エネルギー資源が乏しく1次エネルギーの8割を輸入に依存する事情により、原子力の導入に関する実行可能性調査を1990年代後半に実施していた。ベラルーシ初の原子力発電所建設計画については、福島第一原子力発電所事故が発生した直後の2011年3月15日に同国のA.ルカシェンコ政権がロシアとの二国間協力に合意。総工費の低金利融資などロシア政府の全面的な支援を受けて、2013年11月に1号機がフロドナ州オストロベツで本格着工したほか、翌2014年4月には2号機の建設工事が開始されている。ロスアトム社のA.リハチョフ総裁は、「これでベラルーシも最新の第3世代+(プラス)設計「AES-2006」原子炉の保有国になった」と表明。同設計では、ロシア国内の稼働中原子炉ですでに実証・試験済みの技術が使われていると強調した。同総裁はまた、この設計では福島第一発電所事故後の安全要件すべてが満たされており、国際原子力機関(IAEA)の複数のミッションも同設計の信頼性を認めていると指摘。「この設計の原子炉がロシア以外の国で初めて、それもロシアの「良き隣人」たるベラルーシで完成したことは、ロスアトム社にとって非常に重要なことだ」と述べた。「AES-2006」設計は、ロシア国内ではノボボロネジ原子力発電所とレニングラード原子力発電所双方のⅡ期工事に2基ずつ採用され、このうち3基がすでに営業運転中。国外ではバングラデシュとトルコで建設中であるほか、エジプト、フィンランド、ハンガリーで計画中となっている。(参照資料:ロスアトム社、ASEグループの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Aug 2020
2973
中国核工業集団公司(CNNC)は8月10日、江蘇省の田湾原子力発電所で建設中だった5号機(111.8万kWのPWR)を8日の夜8時頃、初めて送電網に接続し送電したと発表した。中国国産の第3世代設計「ACP1000」を採用して2015年12月に本格着工した同炉は、7月27日に初めて臨界に達していた。(参照資料:CNNC(中国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」
11 Aug 2020
1979
ロシア国営原子力企業ロスアトム社傘下の燃料製造企業TVEL社は8月6日、ロスアトム社がトルコで請け負ったアックユ原子力発電所建設プロジェクトの原子炉4基それぞれについて、同社の設計・技術関係子会社であるCPTI社が燃料装荷機を供給すると発表した。発注したのはTITAN2 IC ICTAS INSAAT社で、同社はアックユ・プロジェクトで原子炉系統施設の建設を受注したTITAN-2社とトルコの建設大手IC ICTASグループの合弁事業体。CPTI社はこの事業体に1号機用の燃料装荷機を2022年に納めるため、すでに技術開発と製造に必要な設計文書作成に着手している。同社はまた、4基の原子炉すべての燃料装荷機納入を2025年末までに終え、2026年初頭にはこれらの据付と調整を完了する計画である。CPTI社はTVEL社の設計部門と技術開発部門を統合して設立されたエンジニアリング企業で、原子力施設の複雑な設計や包括的エンジニアリング、放射線研究、原子力・放射線設備を廃止するプロジェクトのコンセプト開発、および規格外技術機器の設計・製造および供給が主な業務である。同社が受注した燃料装荷機は重さ約55トンという大きなものだが、原子炉容器の上部に設置される予定。燃料集合体や制御棒の装荷、使用済燃料の取り出しに加えて、燃料被覆管の不具合検出が可能である。トルコ初の原子力発電設備となるアックユ発電所は、地中海沿岸のメルシン地区で2018年4月に1号機が本格着工した。第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER)を4基建設することになっており、トルコ政府は同国が建国100周年を迎える2023年中に最初の2基を起動させることを希望。ロスアトム社は昨年12月、同発電所とトルコの送電グリッドを接続する契約を国営送電会社(TEIAS)と締結したほか、今年2月には傘下の機器製造企業が1号機の原子炉容器となる上下2つの容器の胴部で溶接作業を完了した。また、2号機については、今年6月にコンクリート製のベースマットが完成している。(参照資料:TVEL社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
07 Aug 2020
2035
英国のナショナル・グリッド社は7月29日、南西部サマセット州でEDFエナジー社が建設中のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所から、北東方向に57 km離れたエイボン州エイボンマス近郊の変電所までをつなぐ新たな高圧送電ルートの設置計画で、一年後の2021年7月末までに最初の高圧鉄塔(=完成予想図)を建設できる見通しになったと発表した。ナショナル・グリッド社は英国内の送電事業を事実上独占している公益企業で、この計画は「ヒンクリー・コネクション・プロジェクト」と呼称している。HPC発電所からエイボンマス近郊のシーバンクまで、「Tパイロン」型の高圧(400kV)鉄塔を合計116基設置し、600万もの事業所や世帯にHPC発電所の無炭素エネルギーを供給するというもの。既存の送電網部分で改修を行うほか、57kmのうち48.5 km分を架空送電線でつなぐ。一方、メンディップヒル丘陵を含む8.5 km分は特別自然美観地域に指定されているため、パイロンを建てずに地下ケーブルを通すことになる。重要なインフラ・プロジェクトである同ルートの建設工事は2018年に始まったが、ルート全体は14段階に分けて接続が進められることから、完成するのはHPC発電所1号機の営業運転開始が予定されている2025年になる見通し。使用する「Tパイロン」は約100年ぶりに設計を変えた高圧鉄塔で、一本の支柱にT字型の腕が取り付けられており、両方の先端に菱形のワイヤーが吊るされている。高さは約35mと従来の格子型400kVパイロンと比べて三分の一程度低く、必要とする設置面積も少なくて済む。160万kWの欧州加圧水型炉(EPR)2基で構成されるHPC原子力発電所の建設工事は、仏国資本のEDFエナジー社が進めているもので、英国で約20年ぶりの新設原子力発電所計画となる。2018年12月に1号機の原子炉系統部分で最初のコンクリート打設を開始。今年6月に同社は、2号機用のコンクリート製ベース・マットが完成したことを明らかにしている。(参照資料:ナショナル・グリッド社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Aug 2020
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韓国原子力研究院(KAERI)は8月3日、米国のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が進めている小型モジュール式高温ガス炉(HTGR)「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」の開発に協力するため、現代エンジニアリング社を加えた3者で7月3日に相互協力協定を締結したことを明らかにした。CO2を排出せずに電力とプロセス熱、および水素の効率的な生産が可能なMMRの開発で技術協力を促進し、国内外のMMR事業を効率的に推進できるよう協力の基盤を造成する考え。超小型炉に分類されるMMRの開発と建設のみならず、熱電併給が可能なHTGRと環境に優しい水素生産を目的とした超高温ガス炉(VHTR)の各技術の開発・利用について、今年7月から5年間にわたり共同作業を進めていく。米国内の報道ではまた、MMRを韓国に建設する可能性についても3者が連携して追求する方針だと伝えられている。今回の発表の中でKAERIは、2004年から韓国政府の原子力研究開発事業の一環としてHTGRベースの原子力水素生産技術を開発中であると説明。今回の相互協力協定を切っ掛けに、産業界との協力を通じて現在進めている研究開発事業を成功に導きたいと述べた。KAERIはまた、USNCが完了したMMRの概念設計活動に参加していたことから、現在進められている基本設計活動においても技術協力を継続中。KAERIの朴院長は、「2社との協力により、原子力技術開発だけでなくビジネス・モデルを共同開発し、海外市場に進出する足場を固めたい」との抱負を述べた。現代エンジニアリング社に関しては、今年3月に現代グループ内の複数企業が共同で大型建設機器用の水素燃料開発を開始した。同社自身も原子炉で水素と熱を生産する技術を開発中であり、MMRの実証炉建設に向けた基本設計活動にはKAERIとともに参加中となっている。USNCのMMRは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWで、シリコン・カーバイドで層状に被覆されたウラン粒子を燃料に用いる第4世代の小型モジュール式HTGR。20年の運転期間中に燃料を交換する必要がなく、いかなる事故シナリオにおいても、物理的な対応なしですべての熱が受動的に環境中に放出されるという。カナダのエネルギー関係プロジェクト開発企業であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社は2019年3月、パートナー企業であるUSNC社のMMRをオンタリオ州のカナダ原子力研究所(CNL)チョークリバー・サイトで建設するため、SMRとしては初の「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会に申請。現時点では環境影響評価が行われている。また、CNLは2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」の中で、2026年までにチョークリバー・サイトでSMRを建設するという意欲的な目標を設定。2019年7月にはSMRの研究開発と建設を支援するコスト分担方式の研究開発イニシアチブ(CNRI)を設置しており、最初の支援対象として選定したUSNC社のMMRについては、今年2月に同社の子会社と協力協定を締結している。(参照資料:KAERIの発表資料(韓国語)、原産新聞・海外ニュース、ほか)
05 Aug 2020
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米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)はこのほど、月面での探査活動に使用する原子力発電(FSP)システムを設計するため、革新的技術開発に関する情報提供依頼書(RFI)を原子力産業界や宇宙産業界の上層部宛てに発出したと発表した。このRFI発出はアメリカ航空宇宙局(NASA)の後援によるもので、DOEとINLがこれに協力。実際の発出はINLの管理・運営を担当するバッテル・エナジー・アライアンス(BEA)社が行った。月面の厳しい環境下で長期的に探査活動を行うには信頼性と耐久性の高いエネルギー源が必要なことから、NASAらは月面に設置するFSPの設計の有効性を試験・実証するため、革新的技術に基づいたアプローチを取る方針。火星探査など後続のミッションに流用する考えで、INLは9月8日までの期間、このような技術に関する情報を募集するとともに提案企業と連携関係を構築する。小型モジュール炉(SMR)などの先進的原子炉は、連邦政府が関心を持っている宇宙探査ミッションに不可欠な電力供給能力を持っており、NASAは月面設備に対する信頼性と耐久性に優れたエネルギー供給源となるFSPシステムの必要性を認識。「原子力核分裂発電プロジェクト 」を管理するNASAのグレン研究センターでは、技術実証ミッションの一つとして月面用FSPの開発も担っている。RFIを通じて情報収集した後、INLは今回の計画の第一段階として「提案募集(RFP)」を発出する予定だが、ここではFSPシステムの工学実証ユニット(FSP-EDU)を予備的に設計する。また、これに続く第二段階では、FSPの最終設計を固めた上でFSP-EDUのプロトタイプを製造・建設し、試験も実施。このほか、FSPを月まで輸送する飛行システム(FSP-FS)についても、この段階で月への打ち上げサイトに納める。INLのJ.ワグナー担当副所長は、「有望な先進的原子炉の建設をINLの敷地内で推進するなど、原子力技術革新で米国が世界のリーダーシップを握る上でINLは中心的役割を担っている」と説明。「月面で先進的原子炉を建設できる可能性に胸が高鳴る思いであり、最も先見の明がある民間部門の企業らと連携すればこれを実現する一助になるだろう」と述べた。 なお、類似の月面での発電源開発は、2018年6月の中露原子力技術包括協力でも取り上げられており、原子力技術が宇宙での利用に関心がもたれていることが、今回さらに明確になった。(参照資料:INLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Aug 2020
2636
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電の導入計画を担当する首長国原子力会社(ENEC)は8月1日、同国初の商業炉であるとともにアラブ諸国においても初となるバラカ原子力発電所1号機(140万kWのPWR)が7月31日の早朝に初めて臨界に達し、安全に起動したと発表した。UAEを構成する7つの首長国のうち西側に大きく広がるアブダビ首長国のバラカで、ENEC傘下の運転管理会社で韓国電力が一部出資するNAWAHエナジー社が、規制上の要件と原子炉の安全に関わる最も厳しい国際基準を満たしつつ同炉の起動プロセスを実行したもの。NAWAH社は今後、同炉で数週間にわたり様々な試験を実施した後、UAEの国内送電網に接続、その後2021年の営業運転開始を目指して出力上昇試験などの試運転を実施する計画である。 バラカ発電所では韓国製の140万kW級PWR「APR1400」を4基建設することになっており、2012年7月に1号機が本格着工した後、約1年間隔で同型の2~4号機を順次着工してきた。1号機については2018年3月に竣工式が執り行われたが、運転員の訓練と連邦原子力規制庁(FANR)からの承認取得に時間を要することから、NAWAH社は燃料の装荷など後続の準備作業を延期した。その間、起動に向けた準備を進めながら国際原子力機関(IAEA)など複数の規制関係機関に1号機の安全評価を依頼しており、今年1月には世界原子力発電事業者協会(WANO)は同炉で起動前審査を実施。起動準備が整ったことを確認したのを受けてFANRは今年2月、同炉に対し60年間有効な運転許可を発給した。これに続いてNAWAH社も、翌3月に燃料の初装荷作業を完了していた。ENECのM.アル・ハマディCEOは、「今日という日はUAEの原子力平和利用プログラムにとって正に歴史的瞬間であり、過去数十年以上の間に我が国が策定したビジョンや戦略計画、盤石なプログラム管理の賜物である」と強調。「最近では(新型コロナウイルスによる感染という)世界的規模の課題が発生するなかで、開発チームは1号機の安全な起動を実証するため優れた忍耐力を発揮した。今後は同発電所で国内電力需要量の4分の1を賄うという目標の達成に向けて更なる一歩を刻み、安全で信頼性が高くCO2も排出しない電力を提供していきたい」と述べた。UAEの原子力開発利用計画は2009年にスタートしており、実際に商業炉を起動した国/地域としては世界で33番目(2009年末までに国内の商業炉を全廃したリトアニア含む)となった。ENECによれば、バラカ原子力発電所はUAEのエネルギー部門の電化に向けて大きく貢献。4基すべてが完成すれば年間2,100万トン以上のCO2排出を抑えつつ560万kWの電力を供給することになる。同発電所では今年2月に2号機が完成したほか、3、4号機についても建設工事が最終段階に入るなど、発電所全体の建設進捗率は94%に達している。(参照資料:ENECの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
03 Aug 2020
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中国核工業集団公司(CNNC)傘下の中国核能電力有限公司(CNNP)は7月27日、江蘇省の田湾原子力発電所で中国48基目の商業炉となる5号機(111.8万kWのPWR)が同日の午前8時20分、初めて臨界に達したと発表した。CNNCはまた28日、中国の独自ブランドとして開発した第3世代設計「華龍一号」の実証炉となる福建省の福清原子力発電所6号機(115万kWのPWR)で、25日に格納容器へのドーム屋根設置が完了したことを明らかにした。田湾原子力発電所では、営業運転中の1号機から4号機(各100万kW級)まで、および将来的に建設予定の7、8号機(各120万kW級)にロシア型PWR(VVER)設計を採用。現在建設中の5、6号機(各111.8万kW)のみが中国製の「ACP1000」設計を採用しているが、これらはCNNCが仏国のPWR技術に基づいて開発した第3世代のPWR設計である。2015年12月に本格着工した田湾5号機では、今月初頭に運転認可が交付された後、9日に燃料の初装荷作業が完了した。同月23日から24日にかけて中国北部の原子力発電所を管轄する放射線安全監督局が同炉の設備を点検した上で、26日に臨界達成に向けた作業の開始を承認。これを受けて同炉の制御棒が引き抜かれたもので、同炉は年内にも国内送電網に接続された後2021年中に営業運転入りすると見られている。福清6号機©CNNC一方、福清発電所では「華龍一号」の実証炉プロジェクトとして、CNNCが5、6号機の建設工事をそれぞれ2015年5月と12月に開始した。「華龍一号」はCNNCと中国広核集団有限公司(CGN)双方の第3世代PWR設計を統合して開発されたことから、CGNも同様にCGN版「華龍一号」の実証炉プロジェクトとして、江西省の坊城港原子力発電所3、4号機(各118万kW)をそれぞれ2015年12月と2016年12月に本格着工。これらのほかパキスタンのカラチ原子力発電所でも、「華龍一号」設計を採用した2、3号機(各110万kW)の建設プロジェクトがそれぞれ2015年8月と2016年5月から進行中である。今回の発表によると「華龍一号」の格納容器は二重構造になっているため、飛来物の衝突その他の事故に際して十分な防護能力を持つ。また、同容器の鋼鉄製ドーム屋根は重さ約420トン、直径約53m、高さ約13mで、内部の構造物を守ることができるとしている。なお、福清6号機より7か月先に着工した同5号機は、今年3月に温態機能試験が概ね完了。5、6号機はともに、今年中に送電開始可能になると予想されている。(参照資料:CNNPの発表資料(中国語)、CNNCの発表資料(英語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 Jul 2020
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