英国で小型モジュール炉(SMR)開発の企業連合を率いるロールス・ロイス社は11月5日、同国の準自治的非政府組織で戦略的政策研究機関の「UKリサーチ・アンド・イノベーション(UKRI)」から、英国政府の「産業戦略チャレンジ基金」のうち1,800万ポンド(約25億2,000万円)を受領したと発表した。これは、国内初のSMRを予備設計している同企業連合への、4年にわたる共同投資金の初回分となるもの。ロールス・ロイス社は英国全体の計画として、2050年までに最大で16のSMR発電所を国内で建設できると考えており、これにより最大4万人分の雇用が創出されるとともに、英国経済に対する貢献は520億ポンド(約7兆3,000億円)、輸出への貢献は2,500億ポンド(約35兆円)にのぼるとした。また、必要な法制やサイト選定プロセスなど、許認可手続や支援措置が順調に進めば、2030年代初頭から最初のSMRで信頼性の高い低炭素なエネルギーを得られるとしている。UKRIは2018年4月、革新的技術開発企業に研究開発費などの助成を行う英国政府機関「イノベートUK」、科学政策を調整する政府外公共機関である国内7つの「英国研究会議(RCUK)」、および大学の研究活動や知識交換活動への助成を担当する「リサーチ・イングランド(RE)」を統合して設立された。UKRIの投資金は、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の科学予算を通じて提供されている。英国では今年6月、国内すべての温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに実質ゼロとするための法案が可決・成立した。この目標を達成するには、政府と産業界との協力が不可欠であるとの認識から、BEISは7月、新規原子力発電所建設プロジェクトの資金調達モデルとして検討中の「規制資産ベース(RAB)モデル」について、実行可能性の評価結果をパブリック・コメントに付した。また、革新的技術を用いたSMR原子力発電所の建設に対し、政府資金の中から最大で1,800万ポンドの投資を提案していた。ロールス・ロイス社の企業連合は、国際的な原子力エンジニアリング・研究開発サービス企業のアシステム社とアトキンズ社、建設土木企業のBAMナットル社とレイン・オルーク・グループに加えて、英国溶接研究所(TWI)、国立原子力研究所(NNL)、先進的原子力機器製造研究センター(NAMRC)などで構成される。ロールス・ロイス社によると、同企業連合が計画しているコンパクト設計の原子力発電所であれば、既存の原子力サイトへの輸送前に機器類を工場で製造し、サイト内の雨よけのある場所で迅速に組立てることが可能。天候による作業の中断を回避できるためコストの削減につながり、標準化・合理化された機器製造プロセスの活用により効率性も徐々に向上していくとした。また、各発電所の目標建設コストとして、同社は5つ目までは18億ポンド(約2,500億円)を設定、それぞれの運転期間は60年を想定している。今回の投資金は、規制当局が実施する包括的設計審査(GDA)の準備に宛てられるほか、革新的技術の開発推進と実現に向けた最終意思決定に活用される。ロールス・ロイス社のP.ステイン最高技術責任者は、「官民が連携することで、2050年までのGHG排出量実質ゼロ達成に向け、持続可能で適正価格かつ効率的な方策を見つけることができる」と強調。「政府との連携作業は、英国経済の低炭素化に向けた、また、英国社会にとって極めて重要な電力需要量を満たすための重要な一歩になる」と述べた。(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月7日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
08 Nov 2019
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米メリーランド州のセントラス・エナジー社(旧米国濃縮会社(USEC))は11月5日、新型原子炉用の燃料として使用が見込まれているHALEU(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)の生産能力を実証するため、遠心分離機カスケードをオハイオ州パイクトンの「米国遠心分離プラント(ACP)」に配備するという3年契約を米エネルギー省(DOE)と締結した。HALEUを国内で確保できなければ、米国が世界の新型原子炉開発市場でリーダー的立場を確立する上で、大きな障害になることは広く知られていると同社は指摘。2017年の調査によると、米国内で新型原子炉を開発している大手企業のうち67%が、「HALEUの供給確保は緊急の課題」あるいは「重要課題」と回答したという。今回の契約の下で、同社は独自に開発した新型遠心分離機「AC100M」、およびHALEU生産用のカスケードを構成するインフラについて、許認可手続と建設・組立および運転を請け負うことになる。HALEUで製造した燃料は、米国の政府と民間の両部門で開発されている数多くの新型原子炉で必要となる一方、国内で商業的に入手することは困難。典型的な既存の原子力発電所ではU235の濃縮度が5%程度のウランを燃料に使用するのに対し、HALEUではこれが最大で20%となるため、セントラス社は「技術面と経済面ともに潜在的な利点がある」とした。一例として、ウラン濃縮度が高まることによって燃料集合体や原子炉を小さくすることが出来、燃料交換の頻度は低下すると同社は指摘。原子炉内では高い燃焼度を達成できるため、燃料の必要量が少なくなり、結果的に放射性廃棄物の排出量も少なくなる。HALEUはまた、米国をはじめ世界中で稼働している既存の原子炉に対し、将来的に次世代燃料を製造する際に用いられる。HALEUをベースとするこれらの新しい燃料であれば、既存の原子炉で発電量を増やしつつ、経済性を改善し固有の安全性も得られると同社は説明している。DOEとセントラス社による今回の連携プログラムは、今年5月末に両者が調印した予備的合意書簡に基づき進められてきた。セントラス社のD.ポネマン社長兼CEOは、「(この連携により)次世代の新型原子炉への移行を米国がリードする一助になる」と指摘。官民の両部門で様々な使命を持つ新型原子炉に、同社が力を与えられると確信していると述べた。また、国産HALEU技術への投資は、新型原子炉や燃料を開発している顧客のニーズに同社が応えることを可能にすると強調した。米国内では現在、HALEUの製造が直ちに可能な商業施設が存在せず、DOEはアイダホ国立研究所(INL)内に保管中のHALEU約10トンを使って、原子燃料を製造加工するパイロット・プログラムを推進中。昨年10月に、同プログラムが周辺環境に大きな影響を及ぼすことはないとする評価結果(案文)を1か月間、パブリック・コメントに付しており、今年1月には、INL設備を使ってのHALEU燃料製造が決定している。(参照資料:セントラス・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
07 Nov 2019
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ロシアの民生用原子力発電公社であるロスエネルゴアトム社は11月1日、モスクワの南約500kmに位置するノボボロネジ原子力発電所で、II期工事2号機(PWR、115万kW)が予定より30日前倒しで営業運転を開始したと発表した(=写真)。出力3万kW以上の商業炉としては同国33基目のもので、これにより原子力発電設備容量は3,000万kWを越えた。また、ロシアで開発された第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER)「AES-2006」としては、2017年2月と2018年10月にそれぞれ営業運転を開始した同発電所II期工事1号機(118万kW)、レニングラード原子力発電所Ⅱ期工事1号機(118.8万kW)に次いで国内3基目となる。ベラルーシやバングラデシュ、トルコなどでは、すでに同設計を採用した原子炉を建設中であるほか、ハンガリーやフィンランドでも計画中。中国で建設する話も提案されている。ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は、ノボボロネジ発電所で完成した2基を参考炉として、海外で同設計をさらに建設していく考えである。ロスアトム社によると、同設計は第2世代の100万kW級VVER「VVER-1000」と比較して、経済面と安全面で数多くの利点がある。出力が20%向上した一方、必要とする運転員は30%~40%削減され、公式の運転期間も「VVER-1000」の30年から60年に倍増。さらに20年間、延長することも可能である。2009年7月に本格着工したノボボロネジII-2号機は、同発電所I期工事のVVER×5基(1号機:21万kW、2号機:36.5万kW、3、4号機:各41.7万kW、5号機:100万kW)から数えて7基目にあたるが、1号機から3号機は1984年から2016年までの間に永久閉鎖されている。II-2号機では今年2月に燃料が装荷され、3月に初めて臨界条件を達成。5月には送電を開始しており、営業運転を開始するまでに25億kWhを発電した。また同炉により、ロシア中央連邦管区の原子力発電シェアは27%に増加。同管区における経済成長を一層促進しつつ、CO2も年平均で400万トン分、排出を抑えられるとしている。(参照資料:ロスエネルゴアトム社、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月1日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
06 Nov 2019
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英国最大の産業組織で日本の経団連に相当する英国産業連盟(CBI)は11月4日、国内の温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を掲げた英国にとって、「クリーン・エネルギー産業中心の経済成長に向けた投資の促進」といった国家的なアクションが緊急に必要とする報告書を公表した。発電部門においては、再生可能エネルギーに加えて原子力に対する支援を(12月の総選挙後の)次期政権に要請する考えで、2030年までに小型モジュール炉(SMR)の初号機を完成させるため、新設計画への資金調達用に「規制資産ベース(Regulated Asset Base=RAB)モデル」を構築すべきだと強調している。英国は2020年11月の国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)を国内で開催予定であり、CBIによれば、GHGの削減で英国が世界的リーダーとなるための国際的協調活動と並行して、長期の国家的アクションの重要性を実証することになる。このため、直面している事態の複雑さと早急に動く必要性等に鑑み、ビジネス界が今後10年間で加速していくアクションに対し、政府による支援策の中でも優先すべき決定項目のいくつかを今回の報告書の中で指摘した。分野としては具体的に、(1)CO2の削減に向け輸送部門全体で必要となる(電気自動車の導入など)重要な変更事項の促進、(2)熱源の低炭素化とエネルギー効率の改善、に加えて(3)発電部門におけるCO2排出量の削減――など。(3)の中でCBIは、SMRの初号機建設を支援する資金調達の枠組整備を挙げた。政府は新規の原子炉建設に対する支援方針を明確に表明しているが、それは適正なコストでの建設であり、その他の低炭素電源に対してもコスト面の競争力を実証しなくてはならない。また、資金調達の新たなアプローチにより、将来的な原子炉建設プロジェクトでコストを削減できることも判明した。この点に関してCBIは、「RABモデル」を詳細に検討する方向性を支持しており、これにより建設期間中のリスク共有と収益確保の可能性が高まるとした。RABモデルはまた、資本コストの大幅な削減により、電気料金の削減という形でエンド・ユーザーに利益をもたらすことも可能。CBIは、政府が「環境と社会およびガバナンス(ESG)を考慮した責任投資」の中に原子力を含める努力を続けるべきだと指摘している。CBIはまた、従来の大型炉に加えてSMRも、コスト面や革新的技術の側面で英国のエネルギー・ミックスに貢献できる可能性があるとした。もちろん、2030年までに初号機の運転開始を可能とするためには、政府が時宜を得たタイミングで行動する必要がある。CBIによると、この目標の達成に向け、政府は可能な限り早急にSMRの建設サイトを特定しなければならず、SMRへの将来的な投資を支えていく政策面での支援も必要。政府はまた、今後のSMR建設プロジェクトでコストを削減するためには、サイト許可が継続的に発給されるよう規制手続の整備を確実に進める必要があるとしている。今回の報告書に関してCBIのC.フェアバーン事務局長は、「温暖化防止への取組みで残されている時間を考えると、我々はこれまで以上に迅速、かつ一層踏み込んだ取り組みが必要で、これからの10年間は非常に重要な時期だ」と指摘。「技術開発が急速に進展しコストも低下しているため、CO2排出量の実質ゼロという目標達成は可能だが、ビジネス界だけで成し遂げることはできない。目標達成までのあらゆる段階で、政府と連携することが必要だ」と訴えている。(参照資料:CBIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月4日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Nov 2019
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ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社の傘下で、核燃料の濃縮・転換・成型加工を担当するTVEL社は10月31日、同国で初めて軽水炉用に開発した事故耐性燃料(ATF)の原子炉試験で第一段階が完了したと発表した。同社は今年1月、ウリヤノフスク州ディミトロフグラードにある国立原子炉科学研究所(RIAR)で、ロシア型PWR(VVER)用と外国製PWR用の実験集合体2体を、所内のMIR材料試験炉に装荷。同炉の水流ループで設計外事象発生時のATFの耐性を試験するため、それぞれ2種類の燃料ペレットと被覆管を使って、合計4通りの異なる材料を組み合わせたATF燃料棒を1体に付き24本ずつ組み込んでいた。同社は今後、原子炉試験をさらに拡大していく方針で、2020年はATF燃料棒を含めた(取替用燃料1回分の)実験集合体を商業用の100万kW級VVERに装荷する計画。また、新たな有望材料を燃料ペレットと被覆管に組み合わせて、最適なATFを模索していくとしている。今回の原子炉試験でTVEL社は、被覆管としてジルコニウム合金にクロムをコーティングしたものと、クロムとニッケルによる合金製を使用。燃料ペレットについては、従来型の二酸化ウラン製のものに加え、高い密度と熱伝導率を持つウランとモリブデンの合金を使った。初回の照射サイクルを終えたこれらの実験集合体は、すでにMIR材料試験炉から取り出されており、モスクワにあるロシア無機材料研究所(VNIINM)の専門家が予備的な試験を実施。その結果、燃料棒の形状や被覆管表面に変化や損傷は認められなかった。また、それぞれの燃料集合体から燃料棒を何本か抽出して照射後材料科学研究を行っているほか、未照射の燃料棒をさらにMIR材料試験炉に装荷する試験も実施中だとしている。ロシアのATFコンセプトは、冷却材の喪失など、原子力発電所で過酷な設計基準外事象が発生した際の耐性を高めることが主な目的。炉心からの崩壊熱除去に失敗した場合でも、ATFは蒸気とジルコニウムの反応によって水素が発生するのを抑えつつ、長時間にわたって健全性を維持するよう設計されており、ATFは原子力発電所に全く新しいレベルの安全性と信頼性をもたらすとTVEL社は指摘している。(参照資料:TVEL社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月31日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
01 Nov 2019
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仏国のB.ル・メール経済・財務相は10月28日、北西部にあるフラマンビル原子力発電所3号機(FL3)の建設プロジェクトが大幅に遅延し、建設コストも超過していることについて、事業者であるフランス電力(EDF)のJ.-B.レビィ会長に対し「(問題解決に向けた)アクション計画を1か月以内に提示すること」を要請した(=写真)。これは、この件に関してPSA(プジョーシトロエン)グループのJ.-M.フォルツ元会長が独自に取りまとめた監査報告書が25日に公表され、「度重なる計画の遅れとコストの超過はEDFの失策」と指摘したことを受けたもの。ル・メール経済・財務相は記者会見で、「これは仏国の原子力産業界全体で挽回しなければならない問題だ」と述べ、仏国におけるエネルギー産業の存立に関わる重要問題と訴えている。フラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)設計を採用したFL3の建設は2007年12月に開始されたが、原子炉容器鋼材の品質問題など様々なトラブルにより、2012年に予定されていた完成は2023年にずれ込む見通しである。EDFは2018年3月に2次系配管で事前点検を行った際、溶接部で複数の欠陥を検知。同年7月に修理を行ったものの、格納容器の2重壁を貫通する溶接部8か所については同年12月、仏原子力安全規制当局(ASN)に「十分な品質があり破断の心配はない」と保証した上で、修理対象から外していた。しかしASNは、諮問機関らの協力によりEDFの提案内容を引き続き検証。今年6月にはEDFに対して、「FL3の運転を開始する前に8か所の修理を終えること」を命じていた。今回の監査報告書は今年7月、EDFのレビィ会長がフォルツ氏に宛てた書簡の中で、10月末までに取りまとめることを依頼していた。この中でレビィ会長は、ASNが6月にEDF提案を却下した点に触れ、「プロジェクトにEPR設計を採用した理由や、スケジュールがたびたび遅延した原因、コストの初期見通しと完成までの差額、建設に関わる様々な企業の責任等について、株主である国に対し正確かつ完全な分析結果を示したい」と説明。同型設計ですでに営業運転を開始した中国の台山原子力発電所、およびフィンランドで完成に近づいているオルキルオト3号機と比較することも求めていた。フォルツ氏はEDFの内部資料や幹部職員へのインタビュー等を通じて検証を行い、2006年5月当時に33億ユーロ(約4,000億円)と見積もられていた建設コストが、今年10月までに7回改定され、現時点で124億ユーロ(約1兆5,000億円)に増加した事実に言及。完成の遅れと合わせて、これらはEDFの失策と考えられるが、台山発電所の2基が世界初のEPRとして営業運転を開始したことにより、EPRのコンセプトと設計が妥当であることが実証されたとフォルツ氏は見ている。当然のことながらEPRのシリーズ建設再開に向けて、これまでに得られた経験を保持しつつ、EPRのコスト削減と「建設可能性」について一層の改善を図るべきだとフォルツ氏は勧告。FL3計画の遅れは、必ずしも現行のプロジェクト管理チームが原因というわけでは無いが、最新のプロジェクト管理技術を持った常勤スタッフ、および潤沢な自己資金を備えた、強力なプロジェクト・チームに立て直すべきだとした。フォルツ氏はまた、EDFに対しても、安全規制当局やサプライヤーと更なる調整を図ることを進言。産業界に対しても、より一層協調していくことで作業員の訓練、とりわけ溶接作業員の能力が改善される。要求の高い分野で質の高い専門家を多数蓄えるためには、初期の訓練と能力の維持で多大な努力を積み重ねることが必要だと強調している。(参照資料:仏経済・財務省(仏語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月29日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
31 Oct 2019
1780
国際原子力機関(IAEA)の加盟国中35か国で構成される理事会は10月29日、天野之弥事務局長の後任指名のため同日に実施した選挙で、在ウィーン国際機関アルゼンチン政府代表部のラファエル・M・グロッシ大使(58)(=写真)が過半数の24票を獲得し、新たな事務局長に決定したと発表した。今年7月に天野事務局長が任期半ばで死去した後、アルゼンチン、ブルキナファソ、ルーマニア、スロバキアの各国政府は、9月5日までに理事会に対し、それぞれの後任候補者を推薦。10月10日以降、当選に必要な3分の2以上の票数を獲得する候補者が現れるまで、理事会で非公開の投票が重ねられていた。今後は10月30日に、全加盟国の参加も可能な理事会を開催して、グロッシ大使を任期4年の新事務局長に指名。さらに、この決定を臨時総会に提出し、これら171加盟国の代表から承認を得るとしており、同大使は2019年中に6人目のIAEA事務局長に就任する。1957年にIAEAが設立されて以来、米国、スウェーデン、エジプト、日本が歴代事務局長を輩出しており、グロッシ大使は初の南米からの選出となる。グロッシ大使は学生時代、政治学で学士号、国際関係学で修士号を取得したほか、国際史と政治学および国際関係学で博士号を取得。IAEAでは2010年~2011年まで事務局長室のトップ、その後2013年までは政策関係の幹部職(Assistant Director General for Policy)も勤めた。アルゼンチン国内では、連邦計画・公的投資省の戦略計画委員会で原子力問題の特別顧問、外務省の政策調整官、アルゼンチン宇宙活動委員会(CONAE)の特別顧問などを歴任。国際機関関連では、化学兵器禁止機関(OPCW)の事務局長室や北大西洋条約機構(NATO)のアルゼンチン政府代表部で外交活動を担った。また、IAEAに加えて包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)、国連薬物犯罪事務局(UNODC)、国連工業開発機関(UNIDO)でも、アルゼンチン大使を務めている。2015年に国連安全保障理事国+ドイツが結んだイランとの核合意(「包括的共同行動計画(JCPOA)」)は、米国の離脱により、ますます危機的状態に陥っているが、現地の報道によると同大使は、この問題も含めてIAEAの役割を確実に、しかし「公平に」扱っていきたいとしている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
30 Oct 2019
4888
カナダで使用済燃料の処分事業を担当する核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は10月15日、深地層処分場の建設サイト選定のため、オンタリオ州イグナス地域で進めていた2本目の試験坑のボーリング作業が9月中旬に完了したと発表した。同処分場の受け入れ自治体については、NWMOが2010年から選定手続を開始。イグナス地域は、オンタリオ州とサスカチュワン州で関心表明していた22地点のうちの1つである。選定プロセスの第1フェーズである予備評価の結果から、同地域を含む9地点が2015年に第2フェーズに選ばれ、地質調査や制限付きボーリング調査が実施されることになったが、その後の調査で候補地点はオンタリオ州内の5地点に絞られた。NWMOは同地域でボーリング作業を継続し、最終的に施設の受け入れに協力的な1地点を2023年までに選定することになる。残っている5地点は、イグナス地域のほかにヒューロン=キンロス、サウスブルース、ホーンペイン、およびマニトウェッジの各地域。イグナス地域での試験坑掘削は2017年11月から始まっており、NWMOは掘削済みの2本で現場試験を行うほか、掘削時に掘り出した円柱形の地質サンプルや採取水等の分析・調査を国内外の研究所で進めていく。現場試験には約8週間を要するのに加えて、その後に研究所で実施する分析作業については数か月かかる見通し。しかし、このような作業を通じて地球科学や地力学、石油物理学に関する様々なパラメーターが得られ、地層に対する統合的理解が深まるとした。NWMOはまた、1本目と2本目の試験坑から2.5km離れた地点で、すでに3本目のボーリング作業を開始。さらに4本目~6本目に関しても、今月から掘削準備を始めている。地層科学に関する情報やデータ、知見を収集して、使用済燃料の長期的な安全管理のためにカナダが策定した計画を前進させたいとしている。(参照資料:NWMOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月28日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Oct 2019
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仏国のアレバ社(Areva SA)は10月25日、P.バラン会長の後任人事として、仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)の長官経験者であるヤニック・デスカタ氏(=写真)を、前日の理事会で全会一致で指名したと発表した。デスカタ氏は、11月13日に開催される総会で正式に会長職に就任する。アレバ・グループは2014年に48億ユーロ(約5,800億円)という巨額の損失を計上した後、仏国大統領の決定に従い2015年から大規模な再編計画が開始された。その結果、2017年に原子炉機器と燃料の設計・製造、関連サービス部門がフランス電力(EDF)に売却されて「フラマトム社」となったほか、ウランの採掘・濃縮・転換および使用済燃料の再処理を中核とする燃料サイクル部門は「オラノ社」として再出発した。残ったアレバ社(Areva SA)は100%仏国政府の所有となり、フィンランドで長期化しているフラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)のオルキルオト3号機(OL3)建設プロジェクト等にあたっている。発表によると、同グループの再編が完了しOL3も完成に近づいていることから、バラン会長は今後、同社の非常勤理事に退くほか、オラノ社の会長職などその他の職務に集中する方針である。デスカタ氏は仏原子力産業界で30年以上の経験を積んでおり、エリート養成機関の1つである国立理工科大学卒業後、産業省の原子力発電所建設検査事務局長などを経て、1995年のCEA長官就任をはじめ、CEAが9割出資するテクニカトム社、EDFなどで要職を歴任。2003年から2013年までは、仏国立宇宙研究センター(CNES)の理事長を務めていた。(参照資料:アレバ社(仏語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
28 Oct 2019
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チェコの産業貿易省は10月21日、国営送電会社(CEPS)が取りまとめた「(国内の発電システムに関する2040年までの)中期的適性評価予測報告(MAF CZ 2019)」で、国内の電源が今後大幅に減少していくと予測されたことを踏まえ、国内2つの原子力発電所で新規原子炉の建設準備を進めるなど、電力消費量をカバーするための努力が必要だと訴えた。CEPSの最新報告書によると、チェコにおけるエネルギーの自給と電力供給に大きな影響を及ぼす重要なファクターとして、経年化した石炭火力発電所が徐々に閉鎖されていくことや、総発電量の約3分の1を賄う既存の原子力発電所で2030年代に一部の運転期間が満了すること、再生可能エネルギー源の開発も限定的、ということがある。このまま状況が改善されなければ、チェコは早ければ2030年初頭から次第に電力を輸入するようになると指摘している。チェコ政府は2015年5月に公表した「国家エネルギー戦略」のなかで、原子力発電シェアを当時の約35%から2040年までに60%近くまで増加させる必要があると明記。同戦略のフォロー計画として、この翌月に閣議決定した「原子力発電に関する国家アクション計画(NAP)」では、化石燃料の発電シェアを徐々に削減するため、原子力と再生可能エネルギーが重要な役割を果たすとしていた。NAPはまた、既存のドコバニとテメリンの両原子力発電所で1基ずつ、可能ならば2基ずつ増設する準備の必要性を指摘。特にドコバニ発電所では、既存の全4基が2035年から2037年の間に運転を終了するため、原子炉の増設を優先的に行うとしている。 「MAF CZ 2019」は、欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO-E)が欧州全体の電源状況について取りまとめた「中期適性予測(MAF)」を補完するための、国別報告書となる。同報告書はシナリオA(基本版)とシナリオB(低炭素版)の2つを提示しているが、どちらも2040年までにドコバニ原子力発電所で全4基の運転がすでに終了していると想定。バッテリーや燃料電池等から車両の動力を得る「エレクトロモビリティ」の開発が盛り込まれている。CEPSのM.ドゥルチャク会長によると、これらのシナリオでは既存電源の閉鎖にともない、チェコは2030年以降、少しずつ電力の輸入に頼ることとなり、電力輸出を行っている現状から需給バランスは根本的に変化。2040年までに必要な輸入量はシナリオAで230億kWh、Bでは最大300億kWhに達するとした。これに加えてシナリオAでは、新規電源を増設しなかった場合、「1年間に供給力不足が生じる時間の予測値(LOLE)」が2040年までに合計678時間に達するリスクがある。シナリオBに至っては3,622時間になる危険性さえあり、現状を維持するための十分な電力の確保は決定的に重要な課題となる。これらを踏まえてK.ハブリーチェク副首相兼産業貿易大臣は、「これ以上時間を無駄にしている余裕はなく、チェコがエネルギーを自給し十分な電力供給を確保できるよう、失われる電源を埋め合わせていかねばならない」と述べた。欧州の法制に従い、チェコは2025年から2035年までの期間の「戦略的備蓄」に向けて具体的な準備を進めており、原子力発電設備の建設については明確なスケジュールを設定。これに沿って、ドコバニ発電所における新規原子炉の建設準備作業を集中的に続けるほか、テメリン原子力発電所についても、原子炉の増設に関する協議を5年以内に開始しなければならない。チェコにとって、新たな原子炉の戦略的建設計画は無くては不可欠だと強調している。(参照資料:チェコ産業貿易省(チェコ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Oct 2019
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ハンガリーでパクシュ原子力発電所5、6号機(Ⅱ期工事)の建設計画を請け負っているロシアの原子力総合企業ロスアトム社は10月22日、同社の子会社を通じて、両炉用の自動プロセス制御システム納入契約を仏フラマトム社と独シーメンス社の企業連合と締結した(=写真)。同建設計画では今年6月、サイトにおける準備作業の一環として補助建屋や事務棟、倉庫など80以上の関係施設の建設工事が始まったが、建設許可はまだ発給されておらず、原子炉系統部分で最初のコンクリート打設が行われるのは早くても2021年になると見られている。仏独の企業連合は今回、競争入札の末に自動プロセス制御システムの製造と納入を請け負っており、このほかに、情報セキュリティ関係の要件遵守など、同システムの認証手続きも実施する。フラマトム社は長年にわたり、ロシアの原子力発電所で自動システム関係のプロジェクトに携わってきたため、計測制御(I&C)系関連で同社が蓄積してきた専門的知見を、欧州で建設されるロシア型PWR(VVER)にも活かしたいと述べた。パクシュ発電所はハンガリー唯一の原子力発電施設で、出力50万kWのVVER(VVER-440)4基により、同国の総発電量の約半分を賄っている。1980年代後半に運転開始したこれらの原子炉は、すでにVVERの公式運転期間である30年が満了、プラス20年の運転期間延長手続が完了している。Ⅱ期工事で建設される第3世代+(プラス)の120万kW級VVER×2基は、最終的にⅠ期工事の4基を代替することになる。ハンガリー政府は2014年1月、この増設計画をロシア政府の融資により実施すると発表。翌月に両国は、総工費の8割に相当する最大100億ユーロ(約1兆2,000億円)の低金利融資について合意した。同年12月には、双方の担当機関が両炉のエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約など、関連する3つの契約を締結している。実際の建設工事は、ロスアトム社のエンジニアリング部門「ASEエンジニアリング社」が進めていくが、自動プロセス制御システムの機器管理など、パクシュⅡ期工事の全段階における技術管理と統合作業については、ロスアトム社傘下の「ルスアトム自動制御システムズ(RASU)社」が担当。仏独企業連合と結んだ契約も、RASU社のA.ブッコCEOがロシア側を代表して調印しており、欧州の顧客が課される高い要件を確実にクリアできるよう、同企業連合とともに全力を尽くすと述べた。RASU社は原子力発電所の電気工事分野で、自動制御システムや統合工学ソリューションの開発経験を長年にわたって蓄積。パクシュⅡ期工事では、レニングラード原子力発電所Ⅱ期工事のVVER-1200を参考炉とし、自動プロセス制御システムの製造と納入、起動までのプロジェクトを包括的に実施することになる。(参照資料:ロスアトム社、フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月23日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
24 Oct 2019
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GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は 10月21日、ポーランドで同社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」を建設する可能性を探るため、同国最大の化学素材メーカー「シントス社(Synthos SA)」と協力していくことで合意し、了解覚書を締結したと発表した。シントス社は合成ゴムなどの製造で知られる大手企業で、CO2を排出しない発電技術による電力を需要に応じて適正価格で、信頼性の高い専用電源から得ることに関心を持っている。今回の覚書で両社は具体的に、「BWRX-300」の建設可能性調査をポーランドで共同実施することで合意。また、同国におけるエネルギー部門の近代化や現実性を踏まえた脱炭素化達成など、ポーランドが抱えるエネルギー問題への取組みでSMRが果たす役割に期待をかけるとしている。一方、ポーランド政府は昨年11月、公開協議に付した「2040年までのエネルギー政策(PEP2040)」(ドラフト版)の中で、2033年までに出力100万~150万kWの原子力発電初号機の運転を開始し、その後2043年まで2年毎に、追加で5基(合計出力や600万~900万kW)建設していくと発表。これらの原子力発電設備で、国内電力需要の約10%を賄うとしていた。GEH社の発表によると、「BWRX-300」は自然循環を活用した受動的安全システムなど、画期的な技術を採用した出力30万kWの軽水炉型SMR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証を受けた第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベースとなっており、原子力産業界で深刻な課題となっているコスト面の対策として、開発設計の全段階を通じてコストが目標内に収まるよう管理するアプローチを採ったという。これにより同設計は、コンバインドサイクル・ガス発電や再生可能エネルギー、その他の発電技術に対しても、コスト面で競争力があるとGEH社は強調。1MWあたりの資本コストも、既存の大型炉やその他の軽水炉型SMRとの比較で最大60%削減するとしており、このようなSMR技術に注目し、ポーランドでクリーン・エネルギーの利用オプションも提唱しているシントス社への期待を述べた。シントス社側も、「クリーンなSMRを活用することで石炭火力から脱却する機会が増し、産業界やポーランド全体に良い影響が出る」とコメントしている。なお、GEH社は今年5月、同設計についてカナダで申請していた許認可申請前ベンダー審査が始まったと発表した。今月初旬には、バルト三国の1つであるエストニアでも同SMRが建設可能かを調査するため、同国のエネルギー企業フェルミ・エネルギア社と協力覚書を締結している。(参照資料:GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、WNAの10月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
23 Oct 2019
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国際原子力機関(IAEA)は10月17日、加盟国の民生用原子力発電所で濃縮ウランの供給を保証するため、カザフスタンに設置した「低濃縮ウラン(LEU)備蓄バンク」に、仏国のオラノ・サイクル社から最初のLEUが到着したと発表した。これにより、IAEAが保有しカザフスタンが管理する同バンクは正式に運営を開始。IAEAは1957年の創立以来、最も意欲的かつ挑戦的なプロジェクトが本格的に始動したとしている。IAEAは昨年11月、一般競争入札で選定したオラノ・サイクル社、およびカザフの国営原子力企業カザトムプロムと、原子力発電所用燃料の原料となるLEUの購入契約を締結した。今回、オラノ・サイクル社から出荷されたシリンダー32本分のLEUは、まず仏国の港までトラックで輸送され、その後海路でロシアに到着。そこから列車により、カザフスタン北東部オスケメン市にあるウルバ冶金工場(UMP)の特設貯蔵施設(=写真)に運ばれた。到着までに4週間以上を費やしたが、今回のLEUは典型的な100万kW級軽水炉に装荷される1回分の取替用燃料に十分な量。今年末までには、カザトムプロムから2回目の積荷が到着することになる。核燃料の供給を保証しつつ、核物質の拡散リスク軽減も目指すという多国間管理システムの構築は2003年にIAEAのM.エルバラダイ事務局長(当時)が初めて提唱。2010年12月にIAEA理事会は、これを設置することを決定した。IAEAのLEU備蓄バンクは、商業市場その他の既存ルートからLEU供給が途絶した場合の最終手段として、IAEA理事会の適格性基準を満たした加盟国のみが利用できる。100万kW級の軽水炉を3年間運転するのに十分な最大90トンを備蓄する方針で、施設の安全・セキュリティはカザフ政府が責任を負い、同国の法制と規制要件に準じて運営される。また、LEUはIAEAの保障措置管理下に置かれ、利用国にはIAEAの包括的保障措置協定の締結と遵守が義務付けられる。IAEAは2015年8月、同バンクのホスト国となることを希望したカザフとバンクの設立協定を締結しており、2017年8月にはUMPで同バンク用のLEU貯蔵施設が完成した。設立経費とその後20年間の運営費については、米国と同国の民間団体「核脅威イニシアチブ(NTI)」、欧州連合(EU)、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、ノルウェー、カザフスタンから合計約1億5,000万ドルが拠出されている。(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月18日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Oct 2019
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米エネルギー省(DOE)のR.ペリー長官は10月17日、今年中に長官職から退くとの意向をD.トランプ大統領宛ての書簡で明らかにした。同氏はトランプ政権発足直後の2017年3月からDOE長官を務めていたが、ここ数か月は、同大統領に対する弾劾調査の原因となったウクライナ疑惑への関与が取り沙汰され、下院からは召喚状を出されていた。(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
18 Oct 2019
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英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は10月17日、高レベル放射性廃棄物等の深地層処分インフラ設置に向けたプロセスで、プロジェクトの実施に必要な開発合意書(DCO)の発給審査の基礎となる「国家政策声明書(NPS)」を発行したと発表した。イングランド地方における同インフラ設備(深地層処分場と深地層調査用ボーリング孔)の開発については、BEISが2018年1月から4月にかけてNPSの案文を、建設サイトの選定プロセス提案文書とともに公開協議に付した。得られたコメントを勘案したNPS案文は、同年の夏に議会の上下両院、および関係委員会による精査が完了、今年7月からは改定版が再び議会審議にかけられていた。BEISのN.ザハウィ・ビジネス産業担当相はNPSの発行について、「議会審議プロセスの最終ステップであり、高レベル廃棄物の管理で英国が解決策を見出す重要な節目になる」と指摘。そのような廃棄物を安全・確実に管理するインフラの「必要性」がNPSでは明確に説明されており、計画審査庁が深地層処分インフラの開発でDCOの発給判断を下す際、適切かつ有効な枠組を提供することになるとした。 また、今回のNPSでは2008年の計画法に従い、同NPSが持続可能な開発に貢献するとともに、気候変動の影響緩和と適応、景観等への配慮がなされていることなどを保証する「持続可能性評価(AoS)」の結果と、サイト選定で考慮すべき点などを考慮する「生息環境規制評価(HRA)」の結果が含められた。ザハウィ・ビジネス産業担当相はこれら2点についても最終版を発行し、BEISのウェブサイト上に掲載したことを明らかにした。今回のNPSによると、高レベル廃棄物を深地層処分場で長期的に管理することは、技術的、倫理的および法的側面からも必要なものであり、最良の処分方法であるという点では国際的に圧倒的合意が得られている。その他の処分方法についても検討が行われたが、いくつかの側面で適切でないことが判明。仮に、高レベル廃棄物のいくつかのカテゴリーで他の管理オプションを進めた場合でも、現実的な将来シナリオにおいてはやはり、深地層処分場が必要になるとしている。(参照資料:BEISによる議会声明、発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月17日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
18 Oct 2019
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英国原子力規制庁(ONR)のM.フォイ主席原子力検査官(CNI)は10月11日、国内の原子力発電施設や原子力産業界における2018年4月から2019年3月まで1年間の実績について、自身の見解を年次報告書に取りまとめて発表した。それによると、国内の原子力発電事業者は全体として、従業員その他の国民を防護するために高い基準を満たしている。一方、産業界が一層の注意を払うべき重要分野として、既存の原子力発電施設の経年化が大きな課題になっていると指摘。同分野に引き続き重点的に取り組むとともに、災害等に適切に対処し安全・確実な運転が続けられるよう、プラントや人員、手続き等への継続的な投資が求められると訴えている。今回の報告書は、今年6月にONRとして公表した運転実績等に関する年次報告書を補う内容で、この種の報告書としては初めて。国内原子力産業の安全・セキュリティや保障措置実績に対して、権威ある独自の見解を提示している。報告書はまず、良好な進展が見られるいくつかの分野について詳細を説明。これらには、セラフィールド原子力複合施設におけるリスクと危険性の軽減、閉鎖済みのブラッドウェル原子力発電所が廃止措置作業において「安全貯蔵」期間に移行したこと、建設中のヒンクリーポイントC原子力発電所で最初のコンクリート打設に合意する文書を発行したこと、などを紹介した。これに対してフォイCNIは、今後も継続して取り組まねばならない数多くの課題の中から、以下のものを取り上げて強調した。国内で稼働する全15基の原子炉のうち14基を占める改良型ガス冷却炉(AGR)の中でも、炉心の劣化兆候が最も顕著なハンターストンB原子力発電所(64.4万kWのAGR×2基)で精査を継続した。経年化関係の広範かつ複雑な問題により、昨年2基とも運転を一時的に停止したダンジネスB原子力発電所(61.5万kWのAGR×2基)で規制上の監視を強化した。セラフィールドにある経年化が進んだプルトニウム貯蔵施設では、管理会社のセラフィールド社や原子力廃止措置機構(NDA)および政府からの継続的な投資と取組みが必要である。 フォイCNIはまた、今後の重要課題として、次の3点で実績の改善を原子力産業界に特別に提起している。それらは、(1)経年化した施設の管理、(2)原子力発電所の非原子力部分における国民の健康と安全性の確保、(3)原子力セキュリティに対する総体的アプローチの実行--である。同CNIは「安全・セキュリティ面で、原子力産業界が全体的に高い基準を遵守し続けていることには満足している」とした。その上で、「目標に達していない事業者等については、持続的な改善を求めてONRが努力を傾注する」とした。原子力産業界が今後一層留意するべき分野については、施設の経年化問題に加えて、「産業界のある部門では、発電所内の非原子力部分における国民の健康と安全の確保で実績の低下が認められ、その改善に向けた取り組みが改めて必要になっている」と同CNIは指摘した。また英国では、セキュリティ要件を満たすために原子力事業者が提案した手法をONRが評価する際の指針として、「セキュリティ評価原則(Security Assessment Principles:SyAPs)」が策定されているが、産業界全体でONRが同原則を活用することは、セキュリティ問題に関わる安全文化面の変更や組織の責任の祖h材問題などを改善する上で、実質的な機会になると同CNIは説明している。(参照資料:ONRの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月11日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」
17 Oct 2019
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中国の環境保護部は10月9日、中核国電漳州能源公司が「華龍一号」設計を採用して進めている福建省の漳州原子力発電所1、2号機(各PWR、115万kW)建設計画について、国家核安全局(NNSA)が正式に建設許可を発給したと発表した。同サイトでは当初、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000が6基建設されることになっていた。しかし、中国が知的財産権を保有する輸出用設計として、中国核工業集団公司(CNNC)と中国広核集団有限公司(CGN)両者の第3世代設計を統合した「華龍一号」をNNSAが2014年に承認した後、中核国電漳州能源公司に51%出資するCNNCが国家能源局に採用設計の変更を申請。I期工事の1、2号機に加えて、Ⅱ期工事の3、4号機、およびⅢ期工事の5、6号機まですべて、「華龍一号」で建設することになった。建設サイトに関しては、NNSAが関連の条例等に基づいて立地申請書を審査しており、2016年10月に環境保護部は環境影響評価(EIA)の結果を提示、立地点として承認すると発表した。この段階ではまだ、AP1000が採用設計になると明記されていたが、中国政府は2017年2月、「華龍一号」を4年計画で標準化するという国家重大プロジェクトの実証実施方案を公表。今年7月には国家能源局が、漳州1、2号機に「華龍一号」を採用した建設計画を、原子力発電所建設プロジェクトとして承認していた。環境保護部の発表によると、漳州1、2号機建設計画は中国の国家的な原子力安全に関する法令、および民生用原子力施設の安全管理に関わる規制などを遵守。発電所の設計原則や安全確保関係の活動についても、中国における原子力安全規制の基本要件を満たしているとした。これらに基づき、1、2号機の建設許可発給を決定したと表明。現地では現在、原子炉安全系統部分で最初のコンクリート打設を行うための準備が進展中だが、必要な調整作業が完了すれば、1号機でコンクリート打設を実施することは可能だとした。また、2号機についても、地盤の準備作業に関する点検と承認を条件に、コンクリートを打設できるとしている。「華龍一号」設計は現在、CNNCが福建省で建設中の福清原子力発電所5、6号機(各PWR、115万kW)、およびCGNが広西省で建設している防城港原子力発電所3、4号機(各PWR、118万kW)に採用されている。どちらも同設計の実証炉プロジェクトという位置づけで、今年から来年頃の完成を目指している。同設計はまた、パキスタンで2015年8月と2016年5月にそれぞれ着工したカラチ2、3号機(各PWR、110万kW)にも採用されており、海外における重要な実証炉プロジェクトとなっている。2号機についてCNNCは今月、主要機器が正常に設置されたことを公表している。(参照資料:環境保護部(中国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月15日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Oct 2019
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