米国のジョージア・パワー社は12月10日、国内で約30年ぶりの新設計画としてジョージア州内で建設中のA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機(各110万kWのPWR)について、3号機のコンクリート製「遮へい建屋」の上部に、重さ約200万ポンド(約907トン)の円錐形の屋根を据え付けたと発表した(=写真)。遮へい建屋は、採用設計であるウェスチングハウス(WH)社製AP1000に特有の構造で、スチール製の格納容器を覆う最外壁として、原子炉を悪天候その他の外部事象から防護するとともに、放射線を遮へいする役割を担う。屋根は直径が135フィート(約41m)、高さ37フィート(約11m)という大型のもので、その据え付け作業は今年初頭、格納容器に天井部を設置したのに続いて行われた。ジョージア社は今の所、3、4号機の完成をそれぞれ2021年11月と2022年11月に予定。3号機の初装荷燃料は今年7月にすでに発注済みであり、2020年夏にもサイトに搬入されるとしている。ジョージア社は今回、3、4号機で最初の緊急時対応訓練を実施したことも明らかにした。緊急時計画では、事故等の事象に遭遇した際の対応措置が明記されており、今回の訓練は近隣住民の確実な防護に向けた包括的検証も含まれている。また、米原子力規制委員会(NRC)が来年、訓練の実施を予定していることから、これに先立ち各チームの準備作業を支援するとともに、原子炉が建設段階から運転段階に移行しつつあることを示すとした。現在、建設サイトでは8,000名以上の作業員が働いているが、運転開始後も800名分を超える雇用が確保されると同社は強調している。ボーグル3、4号機はそれぞれ、2013年3月と11月に本格着工したが、米国内では設計初号機であったため建設上の様々な問題に遭遇した。また、機器の製造からプロジェクト管理まで、建設工事を一括で請け負っていたWH社が、2017年3月に米連邦倒産法に基づく再生手続を申請したこともあり、両炉の完成日程は計画当初から約4年、遅延している。WH社の倒産申請により、米サウスカロライナ州で同様にAP1000設計を採用したV.C.サマー2、3号機の建設計画は中止が決定した。一方、中国の三門と海陽で2009年から2010年にかけて着工した4基のAP1000はすべて、世界初のAP1000として今年1月までに営業運転を開始している。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月12日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
16 Dec 2019
1514
米エネルギー省(DOE)は12月10日、カリフォルニア州を本拠地とする超小型原子炉の開発企業、オクロ(Oklo)社が設計した小型高速炉「オーロラ」(=完成予想図)を、傘下のアイダホ国立研究所(INL)敷地内で建設することを許可すると発表した。これは、先進的原子力技術の商業化支援イニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環となる措置であり、DOEはこれまでにユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)に対しても、INLの敷地を使ってニュースケール・パワー社製・小型モジュール炉(SMR)の初号機を建設することを許可している。オクロ社は、「非軽水炉型の先進的原子炉設計として、INLサイトの使用許可が下りたのは初めて」と強調しており、2020年代初頭から半ばにかけての「オーロラ」着工を目指す。同社は今のところ、「オーロラ」の設計認証(DC)審査や建設・運転一括認可(COL)などを申請していないが、その商業化に向けた重要な一歩になったとしている。オクロ社によると、「オーロラ」は電気出力0.15万kWのコンパクト設計で、米国でこれまでに開発・実証されてきた先進的な金属燃料を使用。冷却水が不要であり、少なくとも20年間は燃料交換なしで熱電併給を続けることが可能。また、究極的には燃料をリサイクルしたり、放射性廃棄物からクリーン・エネルギーを取り出すこともできる。米原子力規制委員会(NRC)はすでに2016年から、X-エナジー社の「小型モジュール式・高温ガス炉(Xe-100)」やテレストリアル・エナジー社の「小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)」などと同様、「オーロラ」設計に対して「認可申請前活動」を適用。許認可申請のガイダンス提供や、潜在的な課題の事前の指摘などで、オクロ社が申請書を提出する準備作業を支援していた。今回、DOEが発給したサイト使用許可は「オーロラ」が運転を終了するまで有効なもので、着工前にオクロ社がクリアしなければならない様々な要件や許認可手続きを明示。使用したサイトは最終的に元の状態に戻して返還しなければならないが、DOEは同許可の発給により、新しいクリーン・エネルギー技術、中でも特に、先進的核分裂技術の商業化という誓約を明確にしたとオクロ社は評価している。(参照資料:DOE、オクロ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
13 Dec 2019
1824
トルコ初の原子力発電設備となるアックユ発電所を建設中のロシア国営原子力企業ロスアトム社は12月9日、同発電所をトルコの送電グリッドと接続するための契約を国営送電会社(TEIAS)と締結したと発表した。ロスアトム社は、トルコに設置した子会社のアックユ原子力発電会社(ANPP)を通じて2018年4月から1号機を建設中で、TEIASとの契約もANPPが直接結んだもの。運転開始は2023年を予定しており、今年7月には同炉用の最初の大型機器としてコア・キャッチャーが建設サイトに到着した。2号機についても、本格的に着工する許可を今年9月にトルコの規制当局から取得済みで、これに続く3号機では部分的建設許可(LWP)を2020年第1四半期に取得できるよう、申請準備を進めている。アックユ原子力発電所建設プロジェクトは、2010年5月にトルコとロシアが結んだ政府間協力協定(IGA)に基づいて進められており、第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER)を地中海沿岸のメルシン県に4基建設する。約200億ドルと言われる総工費は差し当たりロシア側の全額負担だが、返済のため、発電所の完成後にトルコ電力卸売会社(TETAS)がANPPから12.35セント/kWhの固定価格で15年間電力を購入する予定。発電所の設計・建設から運転、保守点検、廃止措置まで、ANPPが実施することを約束するなど、原子力分野で「建設・所有・運転(BOO)」方式を採用した世界でも初の事例となっている。今回の発表によるとANPPとTEIASは契約に基づき、同発電所と国内送電網を接続する6本の高圧送電線を含め、発電所としての配電体制構築に向けた全面的な作業を開始する。同発電所で発電された電力は、発電所の開閉装置から400kVの送電線を経由して6か所の変電所に送られることになる。送電グリッドとの接続契約は、トルコ電力市場法その他の規制関連法の下で要求される重要事項で、エネルギー・天然資源省(ETKB)の管轄下にあるTEIASは、国内すべての送電網について設置と運営、修理などを担当。アックユ発電所と接続する送電線に関しても、TEIASが全面的に設置とメンテナンスを実施する。ANPPのA.ゾテエバCEOは、「今後2~3年以内にトルコは、膨大な電力を途絶なく発電することが可能なベースロード用電源として、原子力発電所を初めて国内の送電システムに組み入れるだろう」と述べた。外部送電システムとの適合性パラメーターを常に監視することで、原子力発電所では信頼性の高い安全な運転を確保できると説明。アックユ原子力発電所プロジェクトは今回の接続契約締結により、いよいよ重要ステージに到達したと強調している。(参照資料:ANPPの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月10日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Dec 2019
986
カナダ東部ニューブランズウィック(NB)州のM.ホランド天然資源・エネルギー開発大臣は12月9日、米ARCニュークリア社が開発中の先進的小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」(電気出力10万kW)について、州内唯一の原子力発電設備であるポイントルプロー発電所敷地内で、商業規模の実証炉を建設するという同社カナダ法人(ARCニュークリア・カナダ社)の計画を支持すると発表した(=写真)。大型炉から出る使用済燃料のリサイクルも可能という「ARC-100」は、第4世代のナトリウム冷却高速炉技術に基づいており、今年10月にはカナダ原子力安全委員会(CNSC)が提供する予備的設計評価サービス(ベンダー設計審査)の第1段階を完了した。ホランド大臣は、安全で信頼性が高く、経済的にも競争力のある低炭素なエネルギー源となるSMRの商業化をARC社が目指しているとした上で、優れた安全運転実績を持つポイントルプロー発電所には経験豊かな運転員もいることから、SMR実証炉の建設サイトに適していると指摘。同サイトで「ARC-100」を少なくとも2基、引き受けることが可能との考えを表明している。カナダの連邦政府はSMRのような次世代原子力技術について「国民が低炭素経済におけるエネルギー需要を満たしつつ、一層クリーンで安全な社会を構築する一助になる」と認識しており、将来は世界のSMR市場でリーダー的立場を得ることを目標としている。 カナダ国内のオンタリオ州、サスカチュワン州、NB州の州政府も今月1日、出力の拡大・縮小が可能で革新的技術を用いた多目的のSMRをカナダ国内で建設するため、3州が協力していくとの覚書を締結。NB州はこの中でも、世界水準のSMR開発で国内リーダーとなる目標を示しており、すでに2018年7月、英国籍のMoltexエナジー社が開発中の「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」について、商業規模の実証炉を2030年までにポイントルプロー原子力発電所敷地内で建設すると発表した。ARCカナダ社との協力に関してもNB州は同じく2018年の7月、州営電力のNBパワー社を通じて協力することで合意。NBパワー社はポイントルプロー原子力発電所の所有者であることから、同発電所敷地内で「ARC-100」初号機の建設可能性を探るとしていた。NB州のホランド大臣は、SMR技術導入の意義に触れ、たとえ送電網につながれていない遠隔地のコミュニティに対してもクリーンで低コストな電力を供給することであり、エネルギー多消費産業には低炭素で安定したエネルギー供給を約束できるとした。また、この技術がカナダ全土のみならず世界中で採用されれば、カナダは経済成長と輸出機会の拡大チャンスを得ることになると述べた。 州政府としては、SMR技術から同州が多大な恩恵を得ると考えており、ARCカナダ社のような企業との協力でSMR建設への道を拓くとともに、SMR開発を支援する世界的なリーダーとなる方針。また、世界レベルのSMR供給チェーンを構成する主要要素となる態勢も整いつつあると強調した。(参照資料:NB州政府、ARCカナダ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月10日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
11 Dec 2019
1436
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社傘下の燃料製造企業であるTVEL社は12月5日、シベリア化学コンビナート(SCC)で鉛冷却高速炉(LFR)のパイロット実証炉「BREST-300」(電気出力30万kW)を建設するプロジェクトについて、施設の総合建設契約を発電施設のエンジニアリング企業であるTITAN-2社と締結したと発表した。 契約総額は263億ルーブル(約449億円)で、TITAN-2社は2026年末までに「BREST-300」の原子炉建屋とタービン建屋、および関連するインフラ施設を建設する。 SCCはシベリア西部のトムスク州セベルスクに位置するTVEL社の子会社であり、ロスアトム社はSCC内で「BREST-300」のみならず専用の窒化物燃料(MNUP)製造プラント、および同炉から出る使用済燃料の再処理プラントを建設する。これは、開発実績の豊富なナトリウム冷却高速炉(SFR)に加えて、LFRの研究開発も並行して実施するという「ブレークスルー(PRORYV)プロジェクト」の一部であり、その目的は、固有の安全性を有する高速炉で天然ウランや使用済燃料を有効利用するクローズト原子燃料サイクルを確立することにある。「BREST-300」に燃料製造プラントなどを加えた施設全体は「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」(=3D完成予想図)と呼称され、同炉はその中心的設備となる。「BREST-300」が完成した後、ロスアトム社は出力を120万kWに増強した商業規模のLFRを建設することも検討中。この計画についてはトムスク州の知事が近年、州内のセベルスクに誘致するため、提案書をTVEL社に送付したと伝えられている。PDECプロジェクトの進捗状況について、ロスアトム社の担当者であるV.ペルシュコフ氏は昨年10月、原子燃料サイクルの確立に関する産業界の会議で、「日程通り順調に進展している」と発言。すでに着工したMNUP製造プラントの操業開始を2021年に予定しているほか、「BREST-300」については2026年以降の運転開始が見込まれると述べた。TVEL社は今回の契約締結により、同プロジェクトは大きな節目を迎えたと説明。MNUP製造プラント関係の作業を開始した後に「BREST-300」関連の工事に取りかかる方針で、PDEC施設の建設と操業によって、セベルスク地方では800名分以上の雇用が生み出されると強調している。 (参照資料:TVEL社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月5日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
10 Dec 2019
1028
カナダのテレストリアル・エナジー社は12月4日、米原子力規制委員会(NRC)とカナダ原子力安全委員会(CNSC)が非軽水炉型の原子炉設計に関する最初の共同技術審査で、同社が開発した小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)設計が対象に選ばれたと発表した。 同社のIMSRは第4世代のSMR設計で、電気出力は19.5万kW。同設計の技術面については2018年12月以降、カナダの規制要件に対する適合性をCNSCが予備的に評価する「ベンダー審査(VDR)」の第2フェーズに入っている。 テレストリアル社としては、IMSRの最初の商業用実証炉をカナダで建設した後、同社の米国法人がIMSRを北米その他の市場で幅広く売り込む方針で、NRCに対してはすでに2017年1月、同設計をNRCの設計認証(DC)審査にかけるため、2019年後半にも申請書を提出すると表明済み。今年2月からは米エネルギー省(DOE)の支援金を受けるとともに、NRCによる許認可手続き前の準備活動が始まり、テレストリアル社は2020年代後半にもIMSR初号機が起動できるよう、規制当局や産業界のパートナーとともに同設計のエンジニアリングを完成させるとしている。 NRCとCNSCは今年8月、新型原子炉やSMRの技術審査を共同実施する目的で、協力覚書(MOC)を締結した(=写真)ばかり。NRCが審査を実施中、あるいはかつて審査を行った設計について、ベンダーが建設・運転することを提案した場合、CNSCは同MOCの下、NRCの審査結果を取り入れることができる。同様にNRC側も、CSNSがベンダーの要請に基づいて実施するベンダー審査や許認可プロセスの結果、得られた見識を自らの審査で活用することが可能である。 このMOCは、両者が2017年に締結した了解覚書(MOU)の協力項目を拡大する内容で、新型原子炉とSMRの技術に関する規制面の活動に加えて、これらの技術開発における経験や良好事例を一層共有していくためのもの。両者が協力して技術審査にあたることで、規制面の効率性を向上させるとともに、設計面の安全・セキュリティ確保という共通の目標達成が促進されるとした。 このような協力においては、米加双方の規制枠組や許認可プロセスにおける隔たりを認めつつ、相手側の審査で判明したエンジニアリング関係事項や基礎科学的な項目を、可能な範囲内で活用することになる。 MOC調印に際してCNSCのR.ヴェルシ委員長は、「世界的に見ても新型炉やSMRの開発は急速に進展中で、これらに対する関心も高まっている。このような革新的技術の開発と建設を安全かつ効率的に進めるため、規制関係のリーダーであるCNCSとNRCは協力していく」と述べていた。 NRCのK.スビニッキ委員長も、「このような先進技術が早いペースで浮上して来るので、規制当局としては技術を最新化するイニシアチブなどに歩調を合わせていかねばならない」と説明している。 (参照資料:テレストリアル社、CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月6日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Dec 2019
1456
国際連合の専門機関の1つである世界気象機関(WMO)は11月25日、「全球大気監視(GAW)プログラム」における2018年の観測結果を解析した「温室効果ガス年報」を公表し、同年に世界では大気中の温室効果ガスの平均濃度が、解析を開始して以来最高値に達したことを明らかにした。産業革命(1750年)以前に大気中のCO2濃度は約278ppmだったが、2018年は407.8ppmに拡大。メタンと一酸化二窒素についても同様の解析結果が見られ、WMOはこれら3種の温室効果ガスが人間の活動と密接に結びついていること、陸上の生物圏や海洋とも強い相互作用がある点を指摘。このような長期傾向が続いていけば、将来世代は気温の上昇のみならず、さらに異常な気象や海面の上昇、海洋と陸上の生態系破壊といった、一層深刻な気候変動影響に直面すると警告している。米海洋大気庁(NOAA)の年次温室効果ガス指標でも、1990年から2018年までに長寿命の温室効果ガス(LLGHG)による「放射強制力(地球温暖化や寒冷化を引き起こす潜在的な能力)」が43%増加した、とWMOは引用。LLGHGのうち約80%をCO2が占めるという事実を強調した。WMOのP.ターラス事務局長は、「パリ協定の様々な誓約で各国が合意したにも拘わらず、大気中の温室効果ガス濃度は低下するどころか、上昇が鈍化する兆しさえ見られない」とコメント。パリ協定の合意を直ちに実行に移すとともに、人類の将来的な繁栄に向けて、温室効果ガスの排出を抑制する意欲を向上させる必要があると訴えている。GAWプログラムは、2008年から2015年までのGAW戦略計画に基づいて策定されており、大気中の温室効果ガスやその他の微量成分を組織的に観測・解析することが目的。参加国が報告した観測データは、日本の場合、気象庁が「温室効果ガス世界資料センター」で管理・配布している。WMOが実施した2018年の観測結果の解析によると、世界平均濃度はCO2の407.8ppmのほかに、メタンと一酸化二窒素がそれぞれ1,869ppbと331.1ppbだった。これらの値は産業革命以前のレベルに対し、それぞれ147%、259%、123%の増加となったが、2017年から2018年のCO2濃度の増加量(年平均2.3ppm)は、2016年から2017年の増加量に非常に近く、過去10年間の平均年間増加量(2.26ppm)とほぼ同じであるとした。メタンと一酸化二窒素については、2017年から2018年の濃度の増加量が2016年から2017年の増加量、および過去10年間の平均増加量より大きかった。これらとCO2の3種類は、長寿命温室効果ガスの中でも最も影響が大きく、フロン11とフロン12を合わせれば、放射強制力全体の約96%に達するとしている。WMOはまた、CO2は大気中の人為起源の温室効果ガスの中で最も重要であり、LLGHGによる放射強制力全体の約66%がCO2によるものだと指摘。過去10年間の放射強制力の増加分については約82%、過去5年間では約81%がCO2によると述べた。大気中のCO2濃度は2018年に産業革命以前の147%に増加しているが、これは主に化石燃料の燃焼とセメント生産、および森林伐採とその他の土地利用変化からの放出によるものとWMOは説明。2009年から2018年の間、人間活動によって放出されたCO2のうち、約44%が大気、22%が海洋、29%が陸上に蓄積されたが、化石燃料の燃焼により大気に残留するCO2の比率は、CO2吸収源の大きな自然増減によって年々変動するため、世界全体での変化傾向は確認されていないとしている。 (参照資料:WMOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月25日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
09 Dec 2019
901
米原子力規制委員会(NRC)は12月5日、フロリダ・パワー&ライト(FPL)社がフロリダ州で操業するターキーポイント原子力発電所3、4号機(各76万kWのPWR)に対して、2回目の運転期間延長を承認したと発表した。両炉は、1972年と1973年にそれぞれ営業運転を開始。当初の認可運転期間である40年に加えて、すでに2002年に追加で20年間の運転継続を承認されている。今回さらに、20年が追加されたことから、それぞれの合計運転期間は全米で初めて80年に延長され、3号機は2052年7月まで、4号機は2053年4月まで操業することが可能になった。 現地の報道によると、FPL社のスポークスマンが今回の判断について、「クリーンで信頼性が高く、価格も適正な原子力発電をフロリダ州で継続していく大きな節目になった」と評価。これら2基の運転継続に向けて多額の資本を機器の改修に投下したこと、確かな安全運転実績をこれまでに2基で積み重ねてきたと強調した。 FPL社が両炉について、2回目の運転期間延長を申請したのは2018年1月のことである。NRCは同年5月に申請書を受理しており、NRCの担当部門は今年7月に安全性評価報告書の最終版(FSER)を発行したほか、10月には環境影響評価について補足文書の最終版(FEIS)を発行。これらの中で、両炉の運転期間をさらに20年延長したとしても、安全面や環境影響面の問題はないと結論付けている。 また、NRCの原子炉安全諮問委員会(ACRS)と原子力安全許認可会議(ASLB)も、同申請の安全性に関わる部分を審査した。ACRSは同申請について、「一般国民の健康や安全を過度のリスクにさらすことなく、両炉は追加の期間も運転し得る」と勧告、ASLBは複数の国際環境保護団体が共同で申し立てていた同申請への異議を退けた。 米国の商業炉における運転開始当初の認可運転期間は40年だが、これは技術的な制限ではなく、経済性と独占禁止の観点からのもの。40年あれば原子力発電所は通常、電気料金によって費用の回収が完了するため、減価償却の観点から議会がこの期限を定めた。それ以降は20年間ずつ、追加の運転期間について、NRCに申請することになっている。 NRCはこれまでに、約100基の商業炉のうち91基(うち5基は早期閉鎖済み)に対して初回の運転期間延長を承認しており、運転を開始して以降60年間の運転継続が一般的。2回目の運転期間延長に関しては、FPL社のほかにエクセロン社がピーチボトム2、3号機で、ドミニオン社がサリー1、2号機で申請を行っており、NRCはそれぞれについて2018年7月と10月から審査を実施中である。 ドミニオン社はまた、ノースアナ1、2号機についても2回目の申請意思をNRCに連絡済みで、実際の申請は2020年10月から12月の間に予定されている。このほか、南北カロライナの両州で6サイト・11基の商業炉を運転するデューク・エナジー社が今年9月、これらの原子炉で2回目の運転期間延長を申請する方針を表明している。 (参照資料:米規制委の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
06 Dec 2019
1511
国連環境計画(UNEP)は11月26日、国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP25)がスペインのマドリードで開幕する直前に、世界の温室効果ガス(GHG)排出量に関する年次報告書の2018年版を公表し、「2020年から2030年の間に毎年、排出量を7.6%ずつ削減していかなければ、世界は産業革命以前と比べて気温の上昇を1.5度Cに抑えるという2015年のパリ協定の目標を達成する機会を失う」と警告した。UNEPのこの報告書は「温室効果ガス排出ギャップ報告書(Emissions Gap Report)」で、2011年から毎年発行しているもの。2030年に予想されるGHG排出量と、気温上昇の抑制目標値である1.5度Cと2度Cに相応する排出量とのギャップを評価し、このギャップを埋めるための方策に焦点を当てている。それによると、過去10年間で世界のGHG排出量は年率1.5%増加しており、2018年は森林伐採などの影響を受けて排出量が過去最高の553億トン(CO2換算)に達した。UNEPは「パリ協定における誓約がすべて実行されたとしても、世界の世界の平均気温は3.2度C上昇し、我々は地球温暖化で一層広範囲かつ壊滅的な影響を受けることになる」と説明。気温上昇を1.5度C未満に抑えるためには、各国が現行レベルから5倍以上高い削減目標値を定め、今後10年間でGHG排出量を削減していく必要があるとした。そのための行動を起こすという意味で2020年は非常に重要な年であり、英国のグラスゴーで開催されるCOP26では、このような危機を回避する努力の方向性を定めるとともに、参加各国がそれぞれの目標を大幅に強化することを目指すという。UNEPは、平均気温の上昇を抑えるために2030年の年間GHG排出量を、気温上昇2度C未満という目標達成に向けた各国の対策計画(NDC)から、CO2換算で150億トン削減する必要があると指摘。この場合、2020年から2030年まで年率2.7%でCO2を削減しなければならないとした。また、1.5度C未満に抑えるのであれば排出量の削減幅を320億トンに拡大する必要があり、年間ベースの削減率は7.6%になると説明している。国連のA.グテーレス事務総長はUNEP報告書について、「過去10年近く、この報告書は警告を発し続けてきたが、この間に世界ではGHG排出量がただ増えただけだった」と強調。「各国とも警告を聞き入れず、温暖化防止で思いきった対策も取らなかったのだから、我々は今後も致命的で最悪の熱波や荒天、公害などに苦しめられるだろう」と述べた。UNEPのI.アンダーセン事務局長も、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が「1.5度Cを越えて気温が上昇すれば、温暖化の影響頻度と強度はさらに増していく」と通告していた事実に言及。「これまで各国は揃って、地球温暖化に迅速かつ熱心に取り組んでこなかったため、今後10年間で均等割りしたとしても年に7%以上ものGHG排出量削減を強いられることになる」と説明した。同事務局長によると、このことは地球温暖化防止で新たな強化策が必要になる2020年末まで、座視し続けてはいけないということを示しており、「それぞれの市や地域、企業や個人も今、行動を起こさねばならない」と明言。差し当たり2020年に、世界では排出量を出来るだけ引き下げておく必要があり、その後、各国が一層強力な対策を始動して経済・社会を大規模に改革する。「今までグズグズ先延ばしにしていた何年かの遅れを取り戻さねばならないが、これを逃せば2030年になる前に1.5度Cという目標の達成は手の届かないものになる」と警告している。報告書では、G20諸国の合計でGHG排出量全体の78%を占めたにも拘わらず、この排出量を実質ゼロとする目標を掲げた国は、この中でわずかに5か国だと指摘。短期的に見て、先進国は公平性の観点から、発展途上国より速やかに排出量を削減する必要があるとした。しかし、削減効果を上げるためにはすべての国が努力を結集しなければならず、途上国は先進国の成功例を学ぶだけでなく、先進国を追い越してクリーン・エネルギー技術を早いペースで採用することもできる。重要なことは、すべての国がそれぞれの対策計画(NDC)で高い目標を定め、2020年以降もそのための戦略や政策を実行することだと報告書は強調。パリ協定の目標達成で解決策は存在するものの、その開発速度が追いつかない、実効規模に満たないなどの課題も残されるとしている。 (参照資料:UNEPの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月29日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
05 Dec 2019
3663
カナダのSNC-ラバリン社は12月2日、中国核工業集団公司(CNNC)傘下の中国核能電力股分有限公司(CNNP)が2021年頃に中国国内で着工予定の新型重水炉(AHWR)2基について、プロジェクトの準備作業契約をSNC社の完全子会社であるCANDUエナジー社が受注したと発表した。同契約の下、主に建設プロジェクトに備えた計画の立案と許認可手続に関わる作業を実施する。中国では現在、CNNCがカナダ原子力公社(AECL)から導入したカナダ型加圧重水炉(CANDU)が2基(各72.8万kW)、秦山原子力発電所Ⅲ期工事として稼働中で、SNC社はAHWRがCANDU炉設計に基づいて開発されている点を指摘。AHWRは第3世代の70万kW級重水炉(HWR)であり、様々な革新的技術を採用したことで、この世代の設計に要求される事項や最新の国際的な安全基準に適合している。その中でも、新たに動的と静的両方の改良型安全系が装備されたほか、メンテナンス経費や資本コストが削減された標準設計になるとした。同社のこの説明は、2016年9月に同社とCNNC、および製造集団である上海電気が「新型燃料CANDU炉(AFCR)」を共同で開発、販売、建設するため、合弁事業体の創設で原則合意した際の、AFCRの説明と同一である。同社と中国側パートナーは、すでに2011年からAFCRの開発を開始し、AFCRの最初の2基は中国で建設するとしていたことから、今回のAHWR計画はこの協力の成果と見られている。SNC社は2011年にAECLのCANDU炉事業を買収していたため、AHWRプロジェクトではその設計と解析、建設、起動、運転に適用される規制面と安全面の要件に沿って、許認可手続の概要説明文書を作成する。具体的には安全設計ガイドや、安全性に関わる設計変更部分の評価書などを準備する。一方のCNNPはこれまで、中国で稼働する原子力発電所の多くで建設と運転を担当しており、秦山発電所Ⅲ期工事については株式の過半数を保有している。また、上海核工程研究設計院(SNERDI)がAHWRプロジェクトの一般設計を担当する組織として参加。今回の契約に関しても、SNERDI はSNC社がCNNPに代わって提出する文書の受け入れと審査を担当するなど、技術管理者の役目を果たすとしている。(参照資料:SNC-ラバリン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月3日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Dec 2019
1461
カナダ・オンタリオ州のD.フォード首相、ニューブランズウィック州のB.ヒッグス首相、およびサスカチュワン州のS.モー首相は12月1日、出力の拡大・縮小が可能で革新的技術を用いた、多目的の小型モジュール炉(SMR)をカナダ国内で開発・建設するため、3州が協力覚書を締結したと発表した(=写真)。 3人の首相はともに、原子力発電は炭素を出さず信頼性が高く、安全で価格も手ごろな発電技術と認識しており、SMRは遠隔地域などを含むカナダ全土において、経済面の潜在的可能性を引き出す一助になると明言した。同覚書に法的拘束力はないものの、今後は3州のエネルギー大臣が2020年1月から3月の間に冬季会合を開催して、最良の開発・建設戦略を議論。国内の主要な発電事業者には、費用対効果検討書も含めたフィージビリティ報告書の作成で協力を求める方針であり、同年秋までにSMRの戦略的開発計画を策定するとしている。 SMRの利点について3首相は具体的に、送電系統とつながっていないコミュニティに対してもクリーンで低コストなエネルギーを供給できるとしたほか、鉱山業や製造業などエネルギー多消費産業に対して便宜を図れるなどと指摘。また、SMR技術がカナダのみならず世界中で採用されれば、カナダの経済成長を促すとともに輸出機会を拡大することにもつながるとした。こうしたことから、3州の政府はそれぞれに特有の必要性や経済面の優先事項に見合う方法で経済を成長させ、温室効果ガスの排出量を削減するために協力体制を敷く方針。力を合わせて革新的なエネルギー・ソリューションを開発し、地域の雇用や成長促進に向けた最良のビジネス環境を創出していくと述べた。今回の覚書によると3州は、カナダ連邦政府の天然資源省が昨年10月に公表した「カナダにおけるSMRの開発ロードマップ」とともに、付託された「行動要請文」の策定に貢献した。カナダは原子力産業の全領域を備えるなど最上位に位置する原子力国家であり、SMR開発で先駆的国家となることにより、このように高度な革新的技術分野で戦略面や経済面、および環境面の利益が得られるとした。3州は世界でも有数の原子力企業が多数所在する地域であり、3州それぞれが州内でSMRを導入することに関心を抱いている。このような背景から、3州は以下の点について合意し、相互協力を行うことになったもの。(1)地球温暖化や州内のエネルギー需要、経済開発などに取り組むため、それぞれの必要性に応じたSMRの開発と建設を3州が協力して進める。(2)SMR開発における重要課題――技術的な準備状況、規制上の枠組整備、経済性と資金調達、放射性廃棄物の管理、国民および先住民との関わり合い――などに一致協力して取り組む。(3)「原子力のようにクリーンなエネルギーは地球温暖化への取組みの一部として必要」という明瞭明解なメッセージが発せられるよう、3州が連邦政府に積極的に働きかける。(4)3州内のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社、ブルース・パワー社、ニューブランズウィック・パワー社、およびサスクパワー社のCEOから要請されたように、開発ロードマップで特定されたSMR開発への支援提供を、3州が協力して連邦政府に働きかける。(5)原子力やSMRが有する経済面や環境面の利点について一般国民に情報提供するため、3州が協力する。――などである。 (参照資料:オンタリオ州政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Dec 2019
1377
原子力発電を支持するスウェーデンの専門家グループ「Analysgruppen(アナリシス・グループ)」はこのほど、民間の世論調査会社であるNovus社との協力で実施した「原子力発電に対するスウェーデン国民の意識調査」結果を公表し、原子力支持派の割合が前年実績の71%から78%に増加したことを明らかにした。このうち43%は原子炉の新設に賛成するなど、同じ設問への賛成が28%だった2017年、36%に増加した2018年を経て、総発電量の約40%を賄う原子力発電の支持派は確実に増加したと強調している。この調査はアナリシス・グループが1997年から毎年行っているもので、今回Novus社は、18歳から79歳までのスウェーデン人1,027名に対し、ウェブを通じたインタビュー形式で10月下旬に調査を実施。調査への回答率は54%だったとした。同グループに所属するウプサラ大学の原子核物理学者M.ランツ博士によると、78%のうち残りの35%は「既存の原子炉が寿命を終えるまで稼働させる」ことを選択した。一方、政治的判断で既存炉を廃止することに賛成したスウェーデン人の割合は、これまで安定的に20%台をキープしていたが、今回大幅に変化して過去最低の11%に留まった。また、男女間の見解の相違は徐々に縮まっており、これまで女性は男性よりも原子力に懐疑的な傾向があったが、原子力発電を受け入れる女性の比率は徐々に高まっているとした。同博士は、昨年来、原子力を巡る議論に弾みが付き、この議論が鈍化する兆しは見うけられないとした上で、原子力発電の潜在的な危険性を一方的に取り上げるのではなく、事実に基づいた認識や原子力のもたらす恩恵が議論されるようになったと指摘。化石燃料に代わって、天候に左右されずに安定的に発電するというエネルギー部門の需要に、原子力は応えつつあるとした。これらに関する個人的な結論として、同博士は「地球温暖化に原子力が与える影響は小さいとの知識が広く普及してきたことによる」と明言。化石燃料の使用量増加にともない、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書や、その他のニュース報道が様々な警告を発しているため、温暖化の防止で原子力の果たす役割が一層明確になってきたと説明している。スウェーデンでは、TMI事故後の約30年間にわたり脱原子力政策を敷いてきたが、代替電源の見通しがたたず、2010年6月に同国の議会がこの政策を撤回。既存の原子炉10基に限り、建て替えを可能にする法案が2011年初頭から施行された。しかし、2014年9月に発足した(緑の党を含む)中道左派政権は、連立与党間のエネルギー政策合意の中で原子力発電所を将来的に全廃し、再生可能エネルギーとエネルギーの効率化で代替することを決めた。また、スウェーデン放射線安全庁(SSM)は2014年10月、原子力発電所における中長期的安全対策として、2021年までに独立の炉心冷却機能を設置するよう事業者に指示。市場においては電力価格が長期的に低迷し、1980年代に導入された原子力発電税が徐々に上昇していったことから、原子力発電事業者は経済性の低下したオスカーシャム1、2号機を2017年6月までに永久閉鎖している。リングハルス原子力発電所の事業者も、1、2号機を2020年12月までに閉鎖する方針を表明。しかし、政府は2016年6月、責任のあるやり方で2040年までに再生可能エネルギー100%のエネルギー供給システムに移行するため、「原子力発電税を今後2年間で徐々に廃止する」方針を打ち出した。新設に関しても、既存の原子力炉10基分であれば建て替えを許可すると明言。これを受けて、事業者はリングハルス3、4号機については独立の冷却システムを設置するため、合計9億クローナ(約103億円)を投資するとの判断を2017年11月に下した。フォルスマルク発電所の3基に関しても、同事業者は同様の投資を行い、2020年以降も運転を継続するとしている。 (参照資料:アナリシス・グループ(スウェーデン語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月26日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Dec 2019
1369
カナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は11月26日、使用済燃料の深地層処分場建設計画におけるサイト選定プロセスで、候補地点をいよいよ2地点に絞り込む段階に来たと発表した。使用済燃料処分の実施主体であるNWMOは、処分場の建設・操業まで含めてのサイト選定プロセスを2010年に開始しており、2012年9月末までに22地点が施設の受け入れに関心を表明した。現在は第3段階として、これらの自治体の「潜在的な適合性を予備的に評価」している。机上調査を行う第1フェーズと、地質学的調査や制限付き掘削調査などの現地調査を行う第2フェーズを通じて、選定作業を実施中。22地点のうち、9地点が2015年に第3段階・第2フェーズに進んだ後、2017年12月にはオンタリオ州内の5地点まで候補地点が絞り込まれていた。今回NWMOは、これらのうち州北西部のイグナス地域、および州南部に位置するヒューロン=キンロス地域とサウスブルース地域の合計3地点を選定しており、これらで処分場の立地可能性をさらに追求することになった。ヒューロン=キンロスとサウスブルースの2地点はほとんど隣接しており、このエリアが立地点となった場合、現在進められている土地所有者との交渉に基づいて、どちらかがサイト選定プロセスの次の段階に進むことになる。一方、州北部のホーンペインとマニトウェッジの両地域では、これ以上の評価は行わず除外するとしている。NWMOは今後、残りの3自治体と協力しながらさらに詳細な技術評価と社会調査を実施し、処分場施設が安全なものになるか見定める。また、これらの地域で住民の福祉を向上させつつ、建設プロジェクトを進めるための方法を模索。2023年までに、使用済燃料を長期的かつ安全に処分することが可能な1地点を最終決定することになる。NWMOのM.ベン=ベルファドヘル副総裁は、「最終的な判断を下すのは非常に難しく軽々には行えない」とコメント。「施設近隣の住民や環境を確実に防護しつつ、カナダの最終処分計画を進められるような、プロジェクトを十分理解した上で協力的な1地点を特定したい」と述べた。カナダでは、現在稼働中の加圧重水炉19基から出る使用済燃料を再処理せず、発電所サイト内で30年間保管し、1か所で集中管理することになった場合は、その施設でさらに30年間保管する方針。深地層に最終処分するのは原子炉から取り出して約60年後からとなるが、NWMOの最終処分場では銅をコーティングした専用キャニスターに使用済燃料を封入して、地下500mの深地層部分に埋設する計画である。サイト選定プロセスにおいては、参加自治体のみならず近隣自治体に対しても、建設プロジェクトへの貢献が認められた場合、福祉向上のための一時金が支払われるとしている。 (参照資料:NWMOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月27日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
28 Nov 2019
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米国のD.トランプ大統領と同国を訪問していたブルガリアのB.ボリソフ首相は11月25日に共同声明を発表し、原子力を含む様々なエネルギー分野で両国間の協力を一層拡大する方針を表明した(=写真)。 ブルガリアにおけるエネルギー供給保障を強化するため、米国製原子燃料をブルガリア唯一の原子力発電施設であるコズロドイ発電所5、6号機(各100万kWのロシア型PWR)で使用可能となるよう、許認可手続の迅速な進展を両国政府の協力により支援。その際は、発電所の安全性やエネルギーの多様化に関する欧州連合(EU)の厳しい要件を満たすことになるとしている。 共同声明の中で両国首脳は、「エネルギーの安定供給確保こそ、国家の安全保障そのものである」との認識で一致。エネルギー源の多様化は、その供給保障や自給、国家経済の競争力を保証することになると強調した。ブルガリアはまた、国内のエネルギー源を一層効率的かつクリーンなものに移行させたいと考えていることから、両国は信頼性の高い様々なソースから天然ガスの供給量を拡大するとともに、ブルガリアの原子力部門で(燃料の調達先等の)多様化で協力していく。協力拡大の可能性を模索するために、米国はブルガリアに技術チームを派遣することも計画している。 ブルガリアでは1989年に共産党の独裁政権が崩壊した後、1991年に民主的な新憲法を採択して民主制に移行。2004年に北大西洋条約機構(NATO)に加盟したほか2007年にはEUにも加盟したが、加盟条件としてこの年までに、西欧式の格納容器を持たない「V230モデル」のロシア型PWR(VVER)であるコズロドイ1~4号機(各44万kW)をすべて、閉鎖させている。 現在のボリソフ政権は同首相による第3次内閣で、2009年に発足した第1次内閣時には、前政権がロシアとの協力で進めていたベレネ原子力発電所建設計画は「コストがかかりすぎる」として2012年に中止を決定。親欧米派として知られる同政権は、ベレネ発電所の代わりにコズロドイ発電所7号機として、ウェスチングハウス(WH)社製「AP1000」を建設する案も、一時期検討していた。 現在は、再びベレネ発電所を建設する案が浮上しており、ブルガリア電力公社は今年3月、建設の再開を目指して戦略的投資家を募集。完成した発電所からの電力購入希望も含めて、8月下旬までに13件の関心表明があったと公表した。採用設計は第3世代の100万kW級VVER「AES-92」に決まっており、2012年に同計画が中止された際、倉庫に保管した1号機用の長納期品や2号機用の一部機器を最大限に活用するとしている。 今回、米国とブルガリアの協力案件に取り上げられた原子燃料に関しては、東欧諸国からのVVER用燃料の需要拡大にともない、米国籍のWH社が2016年にスウェーデンのバステラスにある原子燃料製造加工工場を拡張済み。ウクライナで稼働するVVERには、すでに複数の原子燃料を納入した実績がある。 (参照資料:米ホワイトハウスの発表資料、原産新聞・海外ニュース、WNAの11月26日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Nov 2019
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ロシアの民生用原子力発電公社であるロスエネルゴアトム社は11月21日、北極圏のムルマンスク地方で電力需要の約6割を賄うコラ原子力発電所(44万kWのロシア型PWR×4基)(=写真)で2号機の運転期間が15年延長され、2034年まで稼働が可能になったと発表した。 1974年に送電開始した同炉は、すでに2004年に初回の運転期間延長として15年間が認められており、今回の延長により同炉のトータルの運転期間は60年に延長。今月20日付で国内送電網に再接続されている。 第3世代+(プラス)より前の世代のロシア型PWR(VVER)の公式運転期間は最大30年だが、同国では連邦政府の原子力発電所開発プログラムや、ロスエネルゴアトム社の運転期間延長プログラム等に基づき、運転開始後30年が経過しつつある原子炉から適宜、10~25年ほど期間の延長対策が進められている。 これまでに、レニングラード原子力発電所(Ⅰ期工事)の4基(各100万kWのRBMK)それぞれについて、運転開始後30年目に15年間の運転期間延長が承認され、1号機は送電開始後45年目の2018年末に永久閉鎖、2~4号機は2020年~2026年頃まで運転の継続が可能になった。ノボボロネジやクルスクの両発電所でも、経年化したものから順に15年ずつ運転期間が延長されているほか、バラコボ発電所(100万kWのVVER×4基)では今の所1~3号機まで、追加で約30年ずつ延長が認められた模様。それぞれの合計運転期間は約60年となった。さらに、カリーニン発電所(100万kWのVVER×4基)でも今月23日から、1号機の運転期間を2044年まで60年間に拡大する大規模な設備の最新補強作業が始まっている。 コラ発電所については、1973年に送電開始した1号機の運転期間が2003年に15年間延長された。2018年に2回目の運転期間延長措置が取られたため、現在の運転認可の有効期限は2033年である。 2号機については、設備の最新補強作業が279日間にわたって行われ、すべての診断・制御システムの更新とデジタル機器や新たなハードウェアとソフトウェアの設置、受動的安全システムの導入など、すべての作業が完了したのは今年10月下旬のこと。同炉は同月26日に試運転を開始し様々な試験を実施していたが、規制当局の連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)は今月13日、同炉を一旦停止した上で、最新補強作業の品質と原子炉設備の安全運転を最終確認する手続きを指示していた。 (参照資料:ロスエネルゴアトム社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
26 Nov 2019
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中国の華能核電開発有限公司(HNNP)は11月19日、海南省・自由貿易試験区における建設プロジェクトの1つとして、昌江原子力発電所Ⅱ期工事(3、4号機)の起工式がこの前日に海南島で執り行われたと発表した。 Ⅱ期工事では総投資額394.5億元(約6,100億円)をかけて、中国が知的財産権を保有する第3世代の120万kW級PWR設計「華龍一号」を2基建設する計画。2019年の投資額は18億元(約278億円)を予定しており、3号機の原子炉系統部分で最初のコンクリート打設を2020年8月に実施した後、約60か月の工期を経て2025年の完成を目指す。4号機については、3号機の着工から10か月のインターバルを設けており、2026年に完成させたいとしている。 中国では現在、中国核工業集団公司(CNNC)と中国広核集団有限公司(CGN)、および国家電力投資集団公司(SPIC)が3大原子力発電事業者となっており、HNNPは5大電力会社の1つである華能集団公司の傘下企業。昌江原子力発電所建設計画は華能集団公司がCNNCとの共同出資で進めているもので、Ⅰ期工事の1、2号機はすでに、2015年12月と2016年8月に営業運転を開始。採用設計はCNNCが開発した第2世代PWRの「CNP600」だが、総投資額249億元(約3,850億円)というこれら2基により、すでに海南省における電力供給量の3分の1が賄われている。 HNNPはⅡ期工事を「第3世代設計・大量建設時代の先駆け」と位置付けており、昌江発電所で「華龍一号」を複数基建設することで海南島をクリーン・エネルギーの島とし、華能集団公司による原子力産業の発展を印象付ける方針。海南自由貿易試験区で建設案件が増大すれば、習近平国家主席の掲げる国家戦略に貢献することになり、海南省の包括的な経済改革を支援することにもつながる。このような支援の強化により、同省の社会経済は急速に発展するとともに、低炭素でクリーン、安全かつ効率的な近代のエネルギー・システムの建設が促進されるとHNNPは強調している。 (参照資料:華能核電開発有限公司、中国核能行業協会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
25 Nov 2019
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米エネルギー省(DOE)の国家核安全保障局(NNSA)は11月19日、サウスカロライナ(SC)州サバンナリバーサイトで昨年10月に建設工事の中止が決定した「ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料製造施設(MFFF)」に関して、契約企業のCB&IアレバMOXサービス社、およびその親会社と包括的な和解協定を結んだと発表した。中止決定の後、余剰プルトニウムを処分するための代替策や、70%まで完成したMFFFを核弾頭の中枢部分である「プルトニウム・ピット」の生産施設として活用するというNNSAの計画は、MFFFの建設契約に関わる様々な訴訟等により遅れていた。今回の協定により、これらの訴訟はすべて解決し、契約終了にともなうコストもカバーされるとNNSAは説明。和解金の額は公表していないものの、「MFFFの建設を継続した場合、(2016会計年度時点の見積額である)170億ドルのコストをかけたとしても2048年までに完成させることはできなかった」との認識を強調した。今後はプルトニウムの希釈・処分(D&D)など、納税者に負担をかけない合理的な方法によってSC州から余剰プルトニウムを取り除き、国家安全保障の使命を遂行するとしている。MFFFの目的は、米国の兵器級余剰プルトニウム34トンから不純物を取り除き、酸化ウランと混合して商業炉用のMOX燃料集合体を製造すること。米デューク・エンジニアリング社と仏コジェマ社、およびストーン&ウェブスター社で構成される企業連合(DCS)は1999年3月、MFFFの設計・建設・操業について1億3,000万ドルの契約をDOEから受注した。MFFFの建設は、米国とロシア両国の兵器級余剰プルトニウムを、双方の核兵器削減のために処分するという2000年の「米ロ・プルトニウム管理処分協定」と並行して実施されるもので、DCSは2001年2月、米原子力規制委員会(NRC)に対してMFFFの建設許可(CA)を申請。2005年3月にCAが発給されたのを受けて、2007年8月から建設工事が始まった。しかし、2004年当時に18億ドルと見積もられていた総工費は、2007年の見積で48億ドルに上昇。その後さらに、68億ドルに拡大したことから、米国会計監査院(GAO)は2013年2月の報告書で、MFFF建設計画を財政的危険性の高い政策プログラムの1つに挙げている。建設工事の遅れも指摘されており、契約企業のCB&IアレバMOXサービス社(DCSから改名)の要請を受けたNRCは2014年11月、CAを2025年3月末まで10年延長することを許可した。しかし、着工当時に操業開始が予定されていた2016年になると、当時のB.オバマ政権が「MFFFの建設を打ち切って余剰プルトニウムは希釈・処分(D&D)を検討する」と表明。後続のD.トランプ政権もこの方針を支持しており、NNSAは2018年10月、CB&IアレバMOXサービス社に対してMFFFの建設終了を通知した。NRCも、同社からのその後の要請により、今年2月にCAの終了を決めている。(参照資料:NNSAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月20日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Nov 2019
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フランス電力(EDF)は11月20日、所有していた米コンステレーション・エナジー・ニュークリア・グループ(CENG)の株式49.99%を、共同保有者であるエクセロン・ジェネレーション社に売却する方針を表明した。これにともない、CENGが米国内で保有する3サイト・5基(約400万kW)の商業炉についても、両者の今後の交渉次第ですべての所有権がエクセロン社に渡ることになる。CENGはコンステレーション・エナジー(CE)社の原子力発電子会社であり、EDFが2009年にCE社株を購入した際、CE社とEDFの合弁事業体として設立された。エクセロン社は2011年にCE社を買収しており、CENGに関しては、CE社が確保していたCENG株の50.01%をエクセロン社が引き継いだ。また、5基の商業炉(ニューヨーク州のR.E.ギネイ発電所とナインマイルポイント発電所1、2号機、およびメリーランド州のカルバートクリフス発電所1、2号機)についても、エクセロン社が2014年にEDFと結んだ「共同運転サービス協定」に基づき、同率の所有権に加えて運転認可がエクセロン社に譲渡されていた。 一方のEDFは、4億ドルの特別配当金を受け取ることになったほか、2016年1月1日から2022年6月末までの期間、CENG株を市場の適正価格でエクセロン社に売却できる権利「プット・オプション(売付け選択権)」を得ていた。EDFは今回、このオプションを行使するとエクセロン社に伝えたもので、理由としては「中核部分を除いた資産売却計画」の一部であると説明。取引価格は同オプションの契約条項に沿って後日決定されるが、取引を完了するにはニューヨーク州公益事業委員会、連邦エネルギー規制委員会(FERC)、および原子力規制委員会(NRC)の承認が必要になる。このためエクセロン社は、規制関係のこれらの手続で1~2年、あるいはそれ以上の期間を要する可能性があると説明。同社のC.クレーン社長兼CEOは、「これら5基の運転を引き継いで以降、当社の管理モデルによって全体的な運転効率と実績が向上するなど、EDFと当社には多くの利益がもたらされたが、今後はEDFが保有する株式の購入プロセスで同社と連携していきたい」と述べた。また、取引価格の交渉で両者が合意に至らなかった場合、第三者の調停により決定されるとしている。なお、EDFは2007年、CE社との折半出資による合弁事業体「ユニスター・ニュークリア・エナジー(UNE)社」を設立しており、仏アレバ社(当時)製の欧州加圧水型炉(EPR)を北米市場で販売することを計画していた。UNE社は、同設計を採用したナインマイルポイント3号機、およびカルバートクリフス3号機の建設計画について、建設・運転一括認可(COL)をNRCに申請したほか、米国企業と共同で進めていたキャラウェイ2号機とベルベンド1号機の建設計画についても、同様の申請を行った。しかし、2010年にUNE社からCE社が撤退し、外国資本であるEDFの100%出資企業となったのに加え、2014年に巨額の損失を計上した仏アレバ社の米国法人が、EPRの米国版の設計認証(DC)審査について一時停止を2015年2月にNRCに要請。これらのCOL申請は2016年9月までにすべて、取り下げられている。 (参照資料:EDFとエクセロン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月20日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
21 Nov 2019
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カナダの国立原子力研究所(CNL)は11月15日、同国内で小型モジュール炉(SMR)の研究開発と建設を促進するため、今年7月に設置した「カナダの原子力研究イニシアチブ(CNRI)」の候補となる企業4社を選定したと発表した。CNRIは世界中のSMRベンダーに対し、CNLの専門的知見や世界レベルの研究設備を提供する新しいプログラム。対象分野としては市場分析や燃料開発、原子炉物理、モデリングなどを指定しており、これらに関するプロジェクトの提案企業を毎年募集することになっている。参加企業はCNLが提供する資源を最大限に活用するとともに、技術的知見を共有。開発中のSMR技術の商業化に向けた支援を、出資金あるいは現物出資の形でCNLから受けることができる。次回の募集についても、CNLは来年初頭を予定していることを明らかにした。同イニシアチブで最初の受益者に選ばれたのは、(1)英国の原子炉開発企業モルテックス・エナジー社のカナダ支社、(2)米カリフォルニア州のKairosパワー社、(3)米ワシントン州のウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)、(4)カナダを本拠地とするテレストリアル・エナジー社。CNLは今後、研究開発費の分担等について、これら4社との最終交渉を開始する。モルテックス社は現在、カナダのニューブランズウィック大学と共同で、カナダ型加圧重水炉(CANDU)の使用済燃料をピン型溶融塩炉(SSR)の燃料に転換する試験装置について、建設と合理化を進めている。また、Kairos社の提案プロジェクトは、高温のフッ化塩で冷却する「KP-FHR」設計を実現するため、トリチウムの管理戦略を策定するというもの。片やUSNCは、同社製「Micro Modular Reactor(MMR)」の開発で浮上する様々な技術的課題について、解決に向けた作業プロジェクトを提案した。テレストリアル社は、同社製「一体型溶融塩炉(IMSR)」等に対して、安全・セキュリティや核不拡散関係の技術を適用する可能性を評価したいと提案。CNLが保有する設備の中でも特に、「ZED-2原子炉」の利用機会を得たいとしている。CNLのM.レジンスキー所長兼 CEOは今回の選定について、「CNLが実施した市場調査の結果や、カナダのSMR開発ロードマップの判明事項からも、原子力産業界がCNLの知見や設備を一層必要としていることが明確に示された」と説明。CNLのCNRIプログラムは、そのような利用機会を実現する方法として設置されたと強調した。CNLのK.マッカーシー科学技術担当副所長も、「カナダをSMR研究のハブとするため、CNLが過去3年間に実施した作業は大きく前進した」と指摘。SMRに共通する主要な技術分野で、CNLが膨大な知見を蓄積してきたという事実に言及した。SMR開発についてCNLは、2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」の中で、2026年までにCNLの管理サイト内で少なくとも1基、実証炉を建設するという目標を明示した。2017年中にSMRの開発企業から19件の関心表明を受けており、2018年4月に開始した全4段階の審査プロセスにより、提案企業の募集と選定作業を進めている。今年2月には、USNCが開発したMMR設計が同審査で唯一フェーズ3に進んだほか、テレストリアル社のIMSRもフェーズ2に移行している。MMRについては、エネルギー関係のプロジェクト開発企業グローバル・ファースト・パワー(GFP)社が今年4月、CNLのチョークリバー・サイト内で建設するため、SMRとしては初の「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。CNLの審査プロセスは、CNSCの許認可プロセスから完全に独立していることから、許認可段階に進展した建設プロジェクトには法的規制要件が課され、提案企業は一般国民や先住民コミュニティなどとプロジェクトの重要事項に関する協議を行わねばならない。 (参照資料:CNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、WNAの11月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Nov 2019
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米国のX-エナジー社は11月15日、同社製の小型ペブルベッド式高温ガス炉(HTR)「Xe-100」(熱出力20万kW、電気出力7.5万kW)(=図)を2030年までにヨルダン国内で建設するため、基本合意書(LOI)をヨルダン原子力委員会(JAEC)と交わしたと発表した。 同社とJAECは2017年11月、「Xe-100」の建設に向けて、技術的なフィージビリティと開発準備状況を評価するための了解覚書を締結。今回のLOIで建設プロセスを加速するとしており、2030年までにヘリウム冷却型の「Xe-100」を4基備えた合計電気出力30万kWの原子力発電所をヨルダンで建設し、同設計で使用する3重被覆層・燃料粒子「TRISO」の供給を目指すとしている。 X-エナジー社によると、「Xe-100」は物理的にメルトダウンの恐れがないHTR設計であり、冷却材喪失時も運転員の介入なしで安全性が保たれる。機器類を工場内で組み立てられるため工期が短縮され、コストも大幅に削減できるとした。 ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆するTRISO燃料については、元々米エネルギー省(DOE)が開発した技術に基づくことから、テネシー州のオークリッジ国立研究所内に同社のプロトタイプ製造施設が存在する。同社はさらに、商業規模の製造施設「TISO-X」を2025年までに操業開始するため、米国内のウラン濃縮企業セントラス・エナジー社(旧USEC)と予備設計を共同で進める契約を2018年11月に締結。必要な機器の供給に関しても、日本の原子燃料工業(原燃工)と協力していく覚書を今年5月に結んでいる。 今月11日のLOI締結に際しては、ワシントンDC駐在ヨルダン大使館の大使が主催する記念式で、X-エナジー社のK.ガファリアン会長とJAECのK.トゥカン委員長がLOIに署名した。これには、同社のC.セルCEOとJAECのK.アラジ副委員長が同席。このほか、両者の代表団とDOE、商務省、原子力産業界の代表者らが参加した。 JAECは、ヨルダン国内のエネルギー供給保証を目的に民生用原子力発電プログラムの開発を進めており、この要件を満たす上で最良の原子炉設計を選択するため、評価プロセスを実行中。首都アンマンの東85km地点のアムラで100万kW級のロシア型PWR(VVER)を2基建設することで、2013年10月にロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社を選定したが、その後の建設資金調達交渉が上手くいかず、2018年6月にJAECはこの取引の破棄を発表している。 一方、SMRについては海水脱塩や地域熱供給にも利用できることから、ヨルダン政府は大型炉の建設プロジェクトと並行して導入の可能性を検討していた。2016年12月には、運転員の教育訓練用を兼ねる多目的の韓国製「ヨルダン研究訓練炉(JRTR)(熱出力0.5万kW)」が、同国初の原子力設備としてヨルダン科学技術大学内に完成。ロシアとの協力においても、ロシア製SMRのフィージビリティ・スタディ(FS)を共同実施することでJAECが合意したと、2018年5月にロスアトム社が発表した。 JAECはまた、2017年3月に、韓国原子力研究所(KAERI)が中東諸国向けに開発した小型炉「SMART」(電気出力10万kW)を、ヨルダン国内で2基建設することを想定したFSの実施で合意。これ以外では、英ロールス・ロイス社や米ニュースケール・パワー社とも、それぞれが開発中のSMR設計についてFSを実施するとしている。 (参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
18 Nov 2019
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チェコのA.バビシュ首相は11月13日、自らが議長を務める「原子力発電所の建設に関する常設委員会」の第2回会合後に記者会見を開き、ドコバニ原子力発電所(51万kWのロシア型PWR×4基)で2036年にも新規原子炉を完成させる方針を明らかにした(=写真 バビシュ首相は右から2人目)。同国にとってエネルギーの供給保障は最優先事項であることから、首相は今回の会合で、エネルギーの自給を維持するために増設計画の具体的な日程が示されたことは喜ばしいとコメント。ドコバニ発電所Ⅱ期工事の最初の1基について、供給企業の選定を2022年末までに終え、遅くとも2029年までに建設工事を開始、2036年までに同炉の運転開始を目指すとしている。新規原子炉の増設に踏み切った理由の1つとして、バビシュ首相は近年、欧州で地球温暖化防止とCO2の排出量削減に関心が高まっている点を指摘。50基以上の原子炉で総発電量の75%を賄う仏国の例を挙げ、同国は2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すリーダー的存在であるとした。一方、チェコの原子力発電シェアは30%台に留まっており、2040年までに少なくとも40%に引き上げることが目標。首相は、「我々は地球温暖化を深く憂慮しており、チェコ政府にはこれに対応する明確な計画がある」と強調した。同首相はまた、国営送電会社(CEPS)が10月にまとめた「(国内の発電システムに関する2040年までの)中期的適性評価予測報告」に言及した。この報告書は、国内で既存の石炭火力発電所が閉鎖されるのにともない、チェコは2030年代初頭から徐々に電力を輸入し始めると指摘。新規電源を増設しなかった場合に、供給力不足に陥る時間数の予測値も提示していた。これらのことから、同首相は「石炭火力に代わる新規の電源が必要だ」と述べる一方、再生可能エネルギーでは国内すべての電力消費量を賄うことは出来ないと説明。K.ハブリーチェク副首相兼産業貿易大臣も、チェコの原子力発電レベルは世界的にも認められていることから、「原子炉を増設するのが論理的選択だ」と述べた。同首相はさらに、ドコバニ発電所Ⅱ期工事について今年7月、国営電力のCEZ社グループが100%子会社を通じて資金調達するという投資家モデルをチェコ政府が承認した事実に触れた。新規原子炉の建設協議は、これを持って具体的な準備段階に移行しており、政府が2015年に承認した改定版の「国家エネルギー戦略」は徐々に実行に移されつつあるとした。このことは、チェコの原子力発電開発にとって非常に重要であり、地球温暖化の防止目標を達成する上でも大きな影響があると首相は指摘。差し当たりドコバニ発電所を優先するものの、投資金の回収問題で2014年に頓挫したテメリン原子力発電所増設計画についても、協議をいずれ再開することになると強調した。なお、現地の報道によると、記者会見に同席したCEZ社のD.ベネシュCEOは「来年6月までに新規原子炉の入札準備を進め、2021年に最大で5社から提案を申し受ける」と発言した。市場の見積価格として1基あたり1,400億~1,600億チェコ・コルナ(約6,500億~7,500億円)を予想していると述べた模様。これまでに6社が入札に関心を示しており、それらは中国広核集団有限公司(CGN)、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社、韓国水力・原子力会社(KHNP)、仏電力(EDF)、米国のウェスチングハウス(WH)社、三菱重工業を含む仏ATMEA社の企業連合であると伝えられている。(参照資料:チェコ首相府(チェコ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Nov 2019
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国際エネルギー機関(IEA)は11月13日、世界のエネルギー・ミックスに関する2040年までの見通しを3通りのシナリオで解説した最新の年次報告書「ワールド・エナジー・アウトルック(WEO)2019年版」を公表した。それによると、今日のエネルギー世界は現状と到達点に大きな差異が生じており、石油市場に十分な供給量があるにも拘わらず、生産国を巡る地政学的な緊張と不確実性は増大。かつてないほど大量の温室効果ガスが排出される一方、国際的な温暖化防止目標に沿って排出量を削減するための現行政策は不十分である。また、世界中すべての人へのエネルギー供給を約束しながらも、今なお世界の8億5,000万人の人々が電気のない生活を強いられており、将来、持続的で確実なエネルギーが確保される方向に世界を向かわせるには、エネルギー・システムのあらゆる部分で、迅速かつ大規模な変革が必要になると報告書は訴えている。WEOはIEAが発行する最も重要な刊行物の1つであり、最新版はこのような差異の広がりについて詳細に分析した。今日下された政策的な判断は、将来のエネルギー・システムに影響を及ぼすとの観点から、世界的に人口が増加する中、信頼性のある適正価格のエネルギー供給に今後も大きな重点を置きつつ、地球温暖化や大気汚染の防止目標を達成するための道筋を示している。WEOによれば、各国政府による決定事項は将来のエネルギー・システムにおいて、引き続き重要なものとなる。このことは、WEOが以下の3つのシナリオで示した今後数10年間の異なる道筋においても明白であり、政策立案者が現在推し進めている政策や投資、技術などがこれに相当する。【現状政策シナリオ】:これは世界が今、正に進んでいる道筋で、各国政府が現状の政策を維持した場合、世界のエネルギー・システムがどのように発展するか、基本的な状況を描いたもの。このシナリオによると世界のエネルギー需要は2040年までに1.3%上昇し、結果としてエネルギー市場のあらゆる側面に緊張がもたらされる。エネルギー部門のCO2排出量も、大幅に上昇し続けるとした。【決定政策シナリオ】:これまで「新政策シナリオ」と呼称していたシナリオで、既存の方策に加えて、現時点の政策目標が盛り込まれている。現行計画による影響の説明を目的としたもので、このシナリオが描く将来のエネルギー像でもやはり、持続可能で確実なエネルギーという目標からは、かなり不十分なものになる。すなわち、2040年時点においても世界の何億もの人々がやはり、電気のない生活をしており、大気汚染で早死にする人の数は現状の高めのレベルに留まる。また、地球温暖化がもたらす深刻な影響も定着するとしている。【持続可能な発展シナリオ】:世界各国の政策決定者が、地球温暖化やその他のエネルギー問題で設定した目標の全面的な達成に向け、それぞれについて何をしなければならないかの抜本策を示したもの。このシナリオはパリ協定の履行と完全に一致する道筋を示したもので、世界の平均気温の上昇を2度C以下に抑えることを目的としている。ここでは、エネルギー・システム全体で大掛かりな変更を迅速に行わねばならならないが、温室効果ガスの大幅な削減は複数の燃料と発電技術を組み合わせることで可能であり、効率的かつコスト面の効果も高いサービスの提供につながる。IEAのF.ビロル事務局長は、今回のWEOが極めて明確に示した事実として、「世界のエネルギー・システムを変革する上で、ただ1つの単純な解決策というものは存在しない」という点を強調。複数の発電技術や燃料が各国経済のあらゆる部門でそれぞれの役割を担っていることから、各国政府は将来を形作るための幅広い視野を持ち、行動するという明確な責任を負う一方、政策立案者に強力なリーダーシップが求められると指摘している。(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月13日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN」)
14 Nov 2019
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南仏のサン・ポール・レ・デュランス(呼称を「カダラッシュ」から行政住所に変更)にある国際熱核融合実験炉(ITER)建設サイト(=写真)で、主要建屋の建設を担当する仏国VINCI社の企業連合は11月8日、トカマク実験炉を格納するトカマク建屋の土木工事が完了したと発表した。 このプロジェクトを主導するITER機構、および欧州連合(EU)の担当組織である「フュージョン・フォー・エナジー(F4E)」と共同で発表したもので、前日の段階で、同建屋の上部に最後のコンクリートを注入する作業がスケジュール通りに終了。建屋内では間もなく、トカマク実験炉の組立てが行われるが、この作業により建屋は屋根部分に金属フレームを設置することが可能になり、「2025年にファースト・プラズマを達成する(運転開始)」という意欲的な目標に、これまでどおり変更はないと強調している。ITER計画は、平和目的の核融合エネルギーが科学技術的に成立することを実証するため、人類初の核融合実験炉を実現しようとする超大型国際プロジェクト。日本、EU、ロシア、米国、韓国、中国、インドの7極が技術開発や機器製造を分担して進めており、2005年6月に建設サイトを決定した後、2006年11月に参加7極がITER協定に署名。翌2007年10月に同協定が発効したのを受けてITER機構が正式に設立され、建設工事が始まった。トカマク建屋は、トリチウム建屋および計測建屋とともに「トカマク複合建屋」を構成しており、複合建屋の高さは73m、幅は120mとなる。土木工事は2010年に開始されたが、用途の特殊性から、並外れて複雑なプロジェクト管理能力と最先端の専門知識を要したという。建設作業が進むにつれITER科学チームが要請してくる設計変更すべてを統合するため、VINCI社の企業連合(仏国のRazel-Bec社、スペインのFerrovial社など)の作業チームは、効率的かつ迅速に動けるようプロジェクト組織を編成した。トカマク建屋に使用する非常に特殊なコンクリートの生産にあたっては、約10通りの製造方式を開発。これらのいくつかは、核融合エネルギーが発する放射線から作業員や環境を防護する特殊機能を備えたものとなった。同建屋ではまた、通常のアパート壁で使用する補強鋼材の10倍の密度を持つ鋼材を必要とした。最終的に、同建屋中心部へのアクセスに使われる46の特注遮へい扉については、各70トンのドイツ製の扉をサイトに搬入。コンクリートを充填した上で、同建屋の中心部で組み立てたとしている。(参照資料:VINCI社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月8日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
13 Nov 2019
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国連安保理の5か国とドイツ、および欧州連合が2015年にイランと結んだ「核合意」から米国が離脱し、イランもウラン濃縮量を拡大するなど、同合意が崩壊の危機に瀕するなか、ロシアの国営通信社を母体とするRIAノーボスチ通信社は11月10日、商業規模の原子力発電所としては中東唯一というイランのブシェール発電所で、2号機(PWR、105.7万kW)の原子炉系統部分に最初のコンクリート打設が行われたと報道した。イラン駐在のロシア大使館から得られた情報だとしており、イラン原子力庁(AEOI)のA.サレヒ長官と、建設工事を受注したロシア国営原子力総合企業ロスアトム社のA.ロクシン第1副総裁は、双方が署名した記念のコンクリート・キューブ(立方体)を交換。ブシェール発電所がイランの長期計画通り、現在稼働中の1号機に続き、2、3号機が2026年までに運転開始すれば、AEOIは同国の原子力発電設備容量が300万kWを越えると指摘している。イラン南西部に位置するブシェール発電所では、2011年5月にイラン初の商業炉となる1号機(PWR、100万kW)が初めて臨界条件を達成し、同年9月から国内への送電を開始。建設工事を請け負ったロスアトム社傘下のNIAEP-ASE社は、2016年4月に同炉をイラン側に正式に引き渡した。2014年11月にロスアトム社は、同発電所Ⅱ期工事となる2、3号機の増設契約をイランの「原子力発電開発会社(NPPD)」と締結した。これと同時に、両国間の既存の協力協定を補完するための議定書にロスアトム社とAEOIは調印。ここでは、同発電所でロシア型PWR(VVER)をさらに2基、その他のサイトでも4基をターンキー契約で建設することが明記された。これら8基の原子燃料はロシアが供給するとともに、使用済燃料も再処理・貯蔵のためにロシアが引き取る約束。両国の協力は平和利用分野に限定され、国際社会が危惧する核兵器開発への転用疑惑は払拭されるとしている。ロスアトム社は、ブシェール発電所Ⅱ期工事の起工式を2016年9月に執り行っており、2、3号機は1号機と同様100万kW級のVVERになると説明。最新の安全性能を有する第3世代+(プラス)の「AES-92」設計を採用するため、動的と静的両方の安全システムや二重の格納容器が装備されるほか、欧州電力会社要求事項(EUR)の技術要件にも適合するとした。2号機用の地盤掘削作業などはすでに2017年に始まっており、これまでに300万立方m以上の土砂が掘削され、ベースマットには3,000トンの鉄筋コンクリート、35万トンものセメントを使用。最初のコンクリート打設を実施したことにより、AEOIは建設プロジェクトの約30%が完了したことになると強調している。(参照資料:RIAノーボスチ通信社(ロシア語)、AEOI(アラビア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
12 Nov 2019
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